特許第6698071号(P6698071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6698071
(24)【登録日】2020年4月30日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】送液ポンプ管理システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20200518BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20200518BHJP
【FI】
   A61M5/168 510
   A61M5/142 530
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-509178(P2017-509178)
(86)(22)【出願日】2015年12月24日
(86)【国際出願番号】JP2015086030
(87)【国際公開番号】WO2016157655
(87)【国際公開日】20161006
【審査請求日】2018年10月10日
(31)【優先権主張番号】特願2015-66861(P2015-66861)
(32)【優先日】2015年3月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 英司
【審査官】 菊地 牧子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−521191(JP,A)
【文献】 特表2013−521993(JP,A)
【文献】 特表2008−539964(JP,A)
【文献】 特開2008−167888(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/033779(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00
G16H20/00
G16H40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の麻酔薬関連薬剤を同一の患者に投与するため、それぞれ異なる種類の前記麻酔薬関連薬剤が配置される複数の送液ポンプと、
複数の前記送液ポンプをそれぞれ配置可能な送液ポンプ装着部を複数有する送液ポンプ用ラック装置と、
前記送液ポンプ用ラック装置と通信可能に接続されている管理装置と、を備える送液ポンプ管理システムであって、
複数の前記送液ポンプは、それぞれ前記麻酔薬関連薬剤の種類情報である第1薬剤種情報と、該第1薬剤種情報に対応する少なくとも1つの投与方法に関する情報であり、投与実行モデルを含む第1対応投与実行工程情報と、を記憶するポンプ側基本情報記憶部と、
対応薬剤判断部と、を有し、
前記送液ポンプ用ラック装置又は前記管理装置は、各前記送液ポンプ装着部に対応させた前記麻酔薬関連薬剤の種類情報である第2薬剤種情報と、該第2薬剤種情報に対応する投与方法に関する情報であり、投与モデルを含む第2対応投与実行工程情報を記憶するラック装置薬剤情報記憶部と、を有し、
また、前記送液ポンプ用ラック装置は、ポンプ装着部分判断部を有し、
前記ポンプ装着部分判断部により、前記送液ポンプが、前記送液ポンプ装着部に装着されたと判断されたとき、前記送液ポンプ用ラック装置は、前記送液ポンプが装着された前記送液ポンプ装着部に対応する第2薬剤種情報と該第2薬剤種情報に対応する前記第2対応投与実行工程情報を、装着された前記送液ポンプに送信し、
前記第2薬剤種情報と前記第2対応投与実行工程情報を受信した前記送液ポンプの前記対応薬剤判断部は、受信した前記第2薬剤種情報と前記第2対応投与実行情報が、それぞれ、前記送液ポンプが記憶する前記第1薬剤種情報と前記第1対応投与実行工程情報と一致した場合にのみ、前記第1薬剤種情報と前記第1対応投与実行工程情報の実行を選択する構成となっていることを特徴とする送液ポンプ管理システム。
【請求項2】
前記投与実行モデルは、前記患者の体内を3つの部分に分けて薬剤の濃度の計算を行う、3−コンパートモデルを用いたシミュレーションに基づくものであることを特徴とする請求項1に記載の送液ポンプ管理システム。
【請求項3】
前記管理装置は、入力職員情報記憶部と、職員情報確認部と、を有し、
操作者に対して前記入力職員情報記憶部を参照して、前記職員情報確認部が権限の適否を判断し、権限があると判断された操作者に対してのみ、前記ラック装置薬剤情報記憶部の前記第2薬剤種情報と前記第2対応投与実行工程情報の登録の変更を許可する構成となっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の送液ポンプ管理システム。
【請求項4】
前記第1対応投与実行工程情報の実行に必要な当該対象者の生体情報を前記送液ポンプに提供する構成となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の送液ポンプ管理システム。
【請求項5】
前記麻酔薬関連薬剤が、鎮静剤、鎮痛剤、筋弛緩薬の3種類の薬剤からなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の送液ポンプ管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送液ポンプである例えば、シリンジポンプ等を複数使用して患者に薬剤を投与する場合に用いられる送液ポンプ管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から患者に複数種類の薬剤を投与する場合は、複数の輸液ポンプ(シリンジポンプ)を配置することができるラック装置を使用している(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2014/033779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ラック装置に装着されている各シリンジポンプ等に配置されている薬剤の種類が相違し、それぞれの薬剤の投与方法が異なる場合がある。
このような場合、同時にラック装置に配置されている各シリンジポンプ内の薬剤を当該薬剤で定められている投与方法で患者に投与せねばならず、誤って、異なる投与方法を行うと薬剤によっては重篤な事態を招来するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、ラック装置に装着されている各シリンジポンプ等の送液ポンプについて、それぞれ正しい投与方法を確実に実行することができる送液ポンプ管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、本発明にあっては、複数種類の麻酔薬関連薬剤を同一の患者に投与するため、それぞれ異なる種類の前記麻酔薬関連薬剤が配置される複数の送液ポンプと、複数の前記送液ポンプをそれぞれ配置可能な送液ポンプ装着部を複数有する送液ポンプ用ラック装置と、前記送液ポンプ用ラック装置と通信可能に接続されている管理装置と、を備える送液ポンプ管理システムであって、複数の前記送液ポンプは、それぞれ前記麻酔薬関連薬剤の種類情報である第1薬剤種情報と、該第1薬剤種情報に対応する少なくとも1つの投与方法に関する情報であり、投与実行モデルを含む第1対応投与実行工程情報と、を記憶するポンプ側基本情報記憶部と、対応薬剤判断部と、を有し、 前記送液ポンプ用ラック装置又は前記管理装置は、各前記送液ポンプ装着部に対応させた前記麻酔薬関連薬剤の種類情報である第2薬剤種情報と、該第2薬剤種情報に対応する投与方法に関する情報であり、投与モデルを含む第2対応投与実行工程情報を記憶するラック装置薬剤情報記憶部と、を有し、また、前記送液ポンプ用ラック装置は、ポンプ装着部分判断部を有し、前記ポンプ装着部分判断部により、前記送液ポンプが、前記送液ポンプ装着部に装着されたと判断されたとき、前記送液ポンプ用ラック装置は、前記送液ポンプが装着された前記送液ポンプ装着部に対応する第2薬剤種情報と該第2薬剤種情報に対応する前記第2対応投与実行工程情報を、装着された前記送液ポンプに送信し、前記第2薬剤種情報と前記第2対応投与実行工程情報を受信した前記送液ポンプの前記対応薬剤判断部は、受信した前記第2薬剤種情報と前記第2対応投与実行工程情報が、それぞれ、前記送液ポンプが記憶する前記第1薬剤種情報と前記第1対応投与実行工程情報と一致した場合にのみ、前記第1薬剤種情報と前記第1対応投与実行工程情報の実行を選択する構成となっていることを特徴とする送液ポンプ管理システムにより達成される。
【0008】
好ましくは、前記送液ポンプが有する前記対応投与実行工程情報が第1対応投与実行工程情報であり、前記送液ポンプ用ラック装置又は前記管理装置は、各前記送液ポンプ装着部に対応させた投与方法に関する情報である第2対応投与実行工程情報を有し、前記送液ポンプ装着部に装着される送液ポンプの前記第1対応投与実行工程情報と、該送液ポンプが装着される前記送液ポンプ装着部に対応する前記第2対応投与実行工程情報とを比較し、前記第2対応投与実行工程情報と一致しない前記第1対応投与実行情報に従い前記薬剤の投与を実行することを、制限することを特徴とする。
【0009】
前記構成によれば、送液ポンプ装着部に配置された送液ポンプの第1対応投与実行工程情報が、第2対応投与実行工程情報(例えば、Marshモデル等)に一致しないときは制限されるので、薬剤の投与は自動的、かつ間違いなく実行される。
【0010】
好ましくは、前記送液ポンプ管理システムの前記投与実行モデルは、前記患者の体内を3つの部分に分けて薬剤の濃度の計算を行う、3−コンパートモデルを用いたシミュレーションに基づくものであることを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記送液ポンプ管理システムの前記管理装置は、入力職員情報記憶部と、職員情報確認部と、を有し、操作者に対して前記入力職員情報記憶部を参照して、前記職員情報確認部が権限の適否を判断し、権限があると判断された操作者に対してのみ、前記ラック装置薬剤情報記憶部の前記第2薬剤種情報と前記第2対応投与実行工程情報の登録の変更を許可する構成となっていることを特徴とする。
【0012】
好ましくは、前記第1対応投与実行工程情報の実行に必要な当該対象者の生体情報を前記送液ポンプに提供する構成となっていることを特徴とする。
【0013】
前記構成によれば、第1対応投与実行工程情報の実行に必要な当該対象者の生体情報を送液ポンプに提供する構成となっているので、送液ポンプでかかる生体情報をその都度、看護師等が入力する必要がなく、労力等を省くことができると共に、誤入力等の発生も未然に防止することができる。
【0014】
好ましくは、前記送液ポンプ管理システムの前記麻酔薬関連薬剤が、鎮静剤、鎮痛剤、筋弛緩薬の3種類の薬剤からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、ラック装置に装着されている各シリンジポンプ等の送液ポンプについて、それぞれ正しい投与方法を確実に実行することができる送液ポンプ管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態にかかる送液ポンプ管理システムである例えば、医療用ポンプシステムを示す概略図である。
図2図1のラック装置の主な構成を示す概略斜視図である。
図3図1に示すシリンジポンプの主な構成を示す概略図である。
図4図1及び図3のシリンジポンプの主な構成を示す概略ブロック図である。
図5図4の第1のシリンジポンプ側各種情報記憶部の主な構成を示す概略ブロック図である。
図6図4の第2のシリンジポンプ側各種情報記憶部の主な構成を示す概略ブロック図である。
図7図1及び図2に示すラック装置の主な構成を示す概略ブロック図である。
図8】ラック側各種情報記憶部の主な構成を示す概略ブロック図である。
図9】病院管理サーバの主な構成を示す概略ブロック図である。
図10図9のラック装着薬剤記憶部の主な構成を示す概略図である。
図11】本実施の形態にかかる医療用ポンプシステムの主な動作例等を示す概略フローチャートである。
図12】本実施の形態にかかる医療用ポンプシステムの主な動作例等を示す他の概略フローチャートである。
図13】本実施の形態にかかる医療用ポンプシステムの主な動作例等を示す他の概略フローチャートである。
図14】本実施の形態にかかる医療用ポンプシステムの主な動作例等を示す他の概略フローチャートである。
図15】本実施の形態にかかる医療用ポンプシステムの主な動作例等を示す他の概略フローチャートである。
図16】本実施の形態にかかる医療用ポンプシステムの主な動作例等を示す他の概略フローチャートである。
図17】本実施の形態にかかる医療用ポンプシステムの主な動作例等を示す他の概略フローチャートである。
図18】本実施の形態にかかる医療用ポンプシステムの主な動作例等を示す他の概略フローチャートである。
図19】シミュレーションに基づき薬剤が送液されている状態を示すグラフであり、(a)は、送液開始直後の状態であり、(b)は、特定の効果部位濃度d1が目標に達した状態を示し、(c)は、特定の効果部位濃度d1が、目標濃度に達した後の状態である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の好適な実施の形態を、添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態にかかる送液ポンプ管理システムである例えば、医療用ポンプシステム1を示す概略図である。
図1に示すように、医療用ポンプシステム1は、複数、例えば、3台の送液ポンプである例えば、シリンジポンプ100a、シリンジポンプ100b及びシリンジポンプ100cを有している。
このシリンジポンプ100a等は、送液ポンプ用ラック装置である例えば、ラック装置200に装着される構成となっている。
【0021】
図2は、図1のラック装置200の主な構成を示す概略斜視図である。
図1及び図2に示すように、ラック装置200は、シリンジポンプ100a、100b100cをそれぞれ装着可能な送液ポンプ装着部である例えば、上段装着部201a、中段装着部201b、下段装着部201cを有している。
【0022】
また、図2に示すように、上段装着部201a、中段装着部201b、下段装着部201cには、それぞれ、上部装着部用端子203a、中部装着部用端子203b、下部装着部用端子203cが配置され、これらが図1に示すように装着されるシリンジポンプ100a、100b、100cと接続されることで、相互に通信が可能な状態となるように構成されている。
具体的には、後述するシリンジポンプ100a等に配置されているラック接続用端子101と上部装着部用端子203a等が接続されることで、赤外線通信等で、相互に通信可能な構成となっている。
【0023】
また、図1及び図2に示すように、ラック装置200は、通信ボックス202を有し、病院内に配置される管理装置である例えば、病院管理サーバ300と通信可能に接続されている。
【0024】
図3は、図1に示すシリンジポンプ100a等の主な構成を示す概略図である。シリンジポンプ100b及び100cは、シリンジポンプ100aと同様の構成であるため説明を省略する。
図3に示すように、シリンジポンプ100aは、薬剤である例えば、薬液を充填したシリンジ108を有し、シリンジ押子102が図3の矢印T方向に移動することでシリンジ108内の薬液を押圧して、チューブ103と留置針104を介して、対象者である例えば、患者に正確に送液する構成となっている。
【0025】
また、図3に示すように、シリンジポンプ100aは、シリンジポンプ側表示部105を有すると共に、図面における右側に操作パネル部106を有している。
操作パネル部106には、電源ON/OFFボタン106a、動作インジケータ106b、早送りスイッチボタン106c、開始スイッチボタン106d、停止スイッチボタン106e、及びメニュー選択ボタン106f等が配置されている。
【0026】
図1に示すラック装置200、シリンジポンプ100a等及び病院管理サーバ300等は、コンピュータを有し、コンピュータは、図示しないCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を有し、これらは、バスを介して接続されている。
【0027】
図4は、図1及び図3のシリンジポンプ100aの主な構成を示す概略ブロック図である。
図4に示すように、シリンジポンプ100aは「シリンジポンプ制御部10」を有し、シリンジポンプ制御部110は、シリンジポンプ全体の判断・制御を行うもので、上述のシリンジポンプ側表示部105、操作パネル部106及びラック接続用端子101等を制御する他、「第1のシリンジポンプ側各種情報記憶部120」及び「第2のシリンジポンプ側各種情報記憶部130」も制御する構成となっている。
図5は、図4の第1のシリンジポンプ側各種情報記憶部120の主な構成を示す概略ブロック図であり、図6図4の第2のシリンジポンプ側各種情報記憶部130の主な構成を示す概略ブロック図である。図5及び図6の各ブロックの内容については、後述する。
【0028】
図7は、図1及び図2に示すラック装置200の主な構成を示す概略ブロック図である。図7に示すように、ラック装置200は「ラック制御部210」を有し、ラック制御部210は、通信ボックス202に配置されている、図1の病院管理サーバ300及びシリンジポンプ100a等と通信するための「ラック側通信装置204」、各種情報を表示する「ラック側表示部205」及び各種情報を入力するキーボード等「ラック側各種情報入力部206」等を制御している。
【0029】
また、ラック制御部210は上述の上部装着用端子203a、中部装着用端子203b、下部装着用端子203c等も制御する。さらに、ラック制御部210は、図6の「ラック側各種情報記憶部220」も制御する。
【0030】
図8は、ラック側各種情報記憶部220の主な構成を示す概略ブロック図である。これらの内容の説明は後述する。
【0031】
図9は病院管理サーバ300の主な構成を示す概略ブロック図である。
図9に示すように、病院管理サーバ300は、「サーバ制御部301」を有し、サーバ制御部301は、図1のラック装置200等と通信するための「サーバ側通信装置302」、各種情報を表示するための「サーバ側表示装置303」及び各種情報を入力するキーボード等の「サーバ側各種情報入力装置304」等を制御する他、図10に示す「電子カルテデータベース305」や「職員データベース306」も制御する。
また、サーバ制御部301は、「ラック装着薬剤記憶部307」、「入力職員情報記憶部308」及び「職員情報確認部(プログラム)309」も制御するが、これらの内容については後述する。
図10は、図9のラック装着薬剤記憶部307の主な構成を示す概略図である。
【0032】
図11乃至図18は、本実施の形態にかかる医療用ポンプシステム1の主な動作例等を示す概略フローチャートである。
以下、フローチャートに沿って、各動作等を説明すると共に、図1乃至図10等の構成も併せて説明する。
【0033】
本実施の形態の薬剤(薬液)は、例えば、麻酔薬であり、薬液としては麻酔薬関連薬液である例えば、「鎮静薬」、「鎮痛薬」及び「筋弛緩薬」をそれぞれ、異なるシリンジポンプ100a等から患者に静脈を介して投与する。
このとき、鎮静薬や鎮痛薬の投与量は厳格に定められており、この量を間違うと危険なため、慎重に管理される。
【0034】
従来は、これらの薬剤の投与量の調整は、薬剤の血中濃度をリアルタイムでモニターし、その結果に基づいて投与量を調節しつつ、一定の薬物血液濃度を維持し、それにより一定の薬効を期待していた。
しかし、実際の臨床で薬物濃度をリアルタイムでモニターすることは困難であるため「TCI(taget controlled infusion)」「目標制御注入法」が近年、用いられている。
【0035】
このTCIは、薬物動態モデルを用いてシリンジポンプ100a等の投与速度を調節し、望んだ値に薬物をコントロールする方法である。すなわち、TCIでは、薬物動態をコンピュータを用いてシミュレーションし、予測血中濃度を算出し、その結果に基づいて薬物投与量を調節する方法である。
【0036】
このシミュレーションは、例えば、薬物動態学に基づいて3ーコンパートメントモデルを用いて行われる。
3−コンパートモデルを用いたシミュレーションは、体内を3つの部分(以下、「コンパートメント」という。)に分けて濃度の計算を行う。3つのコンパートメントの1つは、血液をモデル化したコンパートメントである。
また、他の2つのコンパートメントは、生体内における筋肉などの血流が豊富な組織と脂肪などの血流が粗な組織をそれぞれモデル化したものである。
【0037】
薬剤は、血液をモデル化したコンパートメントに投与される。そして、血液をモデル化したコンパートメントと、他の2つのコンパートメントとの間で、薬剤が所定の移行速度で移動する。
また、薬剤は、血液をモデル化したコンパートメントを介して所定の排泄速度で体外に排泄される。
したがって、薬剤が送液される患者の情報(性別、年齢、身長、体重等)と、送液された薬剤の量、コンパートメントへの移行速度、及び、排泄速度等の関係から、血中濃度を含む各コンパートメントにおける送液された薬剤の濃度を計算することができる。
【0038】
このように、コンパートメントに、薬剤が適用される部位をモデル化したコンパートメントを含めることで、薬剤が適用される部位の濃度である効果部位濃度を演算することができる。
例えば、効果部位として鎮静薬(例えば、「プロポフォール」)や鎮痛薬(例えば、「フェンタニル」)の場合は「脳」、筋弛緩薬(例えば、「ロクロニウム」)の場合は、神経筋接合部が考えられる。送液量は、このように計算された薬剤の血中濃度または効果部位濃度と設定された目標濃度との差分に基づいて計算される。
【0039】
この3−コンパートメントモデルには、その式等の相違から複数の種類があり、例えば、鎮静薬の「プロポフォール」では「Marshモデル」「Modified Marshモデル」がある。一方、鎮痛薬の「フェンタニル」では、「Shaferモデル」等がある。
【0040】
本実施の形態では、患者Pに麻酔をかけるとき、鎮静薬として「プロポフォール」、鎮痛薬として「フェンタニル」、そして、筋弛緩薬として「ロクロニウム」を用いる例で以下、説明する。
また、「プロポフォール」は「Marshモデル」で投与され、「フェンタニル」は「Shaferモデル」で投与される例で説明する。
したがって、「Marshモデル」や「Shaferモデル」は、対応投与実行工程情報の一例となっている。
【0041】
これらの「プロポフォール」、「フェンタニル」そして、「ロクロニウム」の各薬剤は、それぞれ別のシリンジポンプ100a等に配置され、患者に投与される。
これら「プロポフォール」、「フェンタニル」そして、「ロクロニウム」の各薬剤が薬剤種情報の一例となっている。
具体的には、図1のラック装置200の上段装着部201aには、「プロポフォール」、中段装着部201bには、「フェンタニル」、そして、下段装着部201cには、「ロクロニウム」が配置されると予め定められている。
【0042】
一方、シリンジポンプ100a等には、これら「プロポフォール」、「フェンタニル」又は「ロクロニウム」のいずれかの薬剤が配置される可能性があるため、各シリンジポンプ100a等には、それぞれ、「プロポフォール」を配置したときに適用される複数のモデル「Marshモデル」「Modified Marshモデル」「Schneiderモデル」の計算式等のソフトウエア(プログラム)が格納されていると共に、「フェンタニル」が配置されたときに適用されるモデル「Shaferモデル」の計算式等も記憶されている。
【0043】
以上のような前提で、以下、具体的に実施形態を説明する。
先ず、図11のStep(以下「ST」とする。)1では、麻酔科医が、図9の「病院管理サーバ200」の「サーバ側表示装置303」等を介して、病院内で使用する図2に示す、各ラック装置200等について、各別に上段装着部201a等、中段装着部201b等、下段装着部201c等に装着すべき「薬剤名(例えば、プロポフォール等)」とその「実行モデル情報(例えば、Marshモデル)」を入力する。
具体的には、図10の「ラック装着薬剤情報記憶部307」に記憶する。
このラック装着薬剤情報記憶部307」に記憶される「実行モデル情報(例えば、Marshモデル)」が、第2対応投与実行工程情報の一例となる。
【0044】
例えば、図10の「ラック装着薬剤情報記憶部307」の「ラック番号001」のラック装置200の上段装着部201aには、薬剤「プロポフォール」、実行モデル「Marshモデル」、中段装着部201bには、薬剤「フェンタニル」、実行モデル「shaferモデル」、下段装着部201cには薬剤「ロクロニウム」、実行モデル「ロクロニウム投与モデル」と記憶する。
したがって、「ラック装着薬剤情報記憶部307」の薬剤が、第2薬剤種情報の一例となっている。
【0045】
以上で、麻酔科医等の権限のある担当者のラック装置200の上段装着部201a等の「薬剤」及び「実行モデル」の入力工程が終了する。
このように、本実施の形態では、各ラック装置200の上段装着部201a、中段装着部201b、下段装着部201cに装着すべき薬剤及び実行モデルが権限ある麻酔科医等の担当者により設定されるので、誤った情報が設定される事態の発生を未然に予防することができる。
【0046】
次いで、医療従事者である例えば、看護師又は医師が患者Pに麻酔薬を投与する準備を行う。
先ず、図12のST11で、看護師が図3及び図4のシリンジポンプ100a等をラック装置200の上段装着部201a等に装着する。
また、各シリンジポンプ100a、100b、100cには、「患者情報」が記憶されており、具体的には、図5の「シリンジポンプ側基本情報記憶部121」の「患者情報」として記憶される。
【0047】
次いで、ST12で、看護師は、シリンジポンプ100a、100b、100cを図1及び図2のラック装置200に装着する。このとき、上段装着部201aに「プロポフォール」が挿入されているシリンジポンプ100a、中段装着部201bに「フェンタニルが挿入されているシリンジポンプ100b、そして、下段装着部201cに「ロクロニウム」が挿入されているシリンジポンプ100cを装着する手順となっている。
しかし、相違が生じる可能性もあるので、本実施の形態では、以下の工程でかかる相違の発生を未然に防止する。
【0048】
先ず、ST12では、図8の「ポンプ装着部分判断部(プログラム)221」が動作し、上段装着部201a、中段装着部201b又は下段装着部201cのいずれかにシリンジポンプ100a等が接続されたか否かを判断する。
具体的には、図4のシリンジポンプ100a等のラック接続用端子101が、図2及び図7の上部装着部用端子203a、中部装着部用端子203b又は下部装着部用端子203cのいずれかに装着されたか否かを判断する。
【0049】
次いで、ST13へ進み、例えば、シリンジポンプ100a等が上部装着部201aに装着されたと判断すると、ST14へ進む。
ST14では、図8のラック装置200の「ラック側薬剤等特定部(プログラム)222」が動作し、病院管理サーバ300の図10の「ラック装着薬剤情報記憶部307」の当該ラック装置のラック番号(例えば、ラック番号001)の「上段装着部201a」の「薬剤(例えば、プロポフォール)」及び「実行モデル(例えば、Marshモデル)」の情報を取得し、シリンジポンプ100a等に送信する。
【0050】
次いで、ST15へ進む。ST15では、シリンジポンプ100a等が、ラック装置200から受信した「上段装着部201a」等の「薬剤(例えば、プロポフィール)」及び「実行モデル(例えば、Marshモデル)」の情報を図5の「シリンジポンプ側取得薬剤情報等記憶部122」に記憶する。
【0051】
次いで、ST16へ進む。ST16では、シリンジポンプ100aの図5の「対応薬剤等判断部(プログラム)123」が動作し、「シリンジポンプ側取得薬剤情報等記憶部122」と「シリンジポンプ側基本情報記憶部121」を参照する。
「シリンジポンプ側基本情報記憶部121」には、当該シリンジポンプ100a等が投与可能な「薬剤(例えば、プロポフォール)」と、実行可能な「実行モデル(Marshモデル)」が図5に示すように予め記憶されている。
したがって、「シリンジポンプ側基本情報記憶部121」の薬剤等は、第1薬剤種情報の一例となっている。
ところで、ST16では、「シリンジポンプ側取得薬剤情報等記憶部122」の「薬剤」及び「実行モデル」情報が「シリンジポンプ側基本情報記憶部121」に存在するか否かを判断する。
【0052】
ST16で「存在しない」と判断されたときは、看護師等がシリンジポンプ100a等を間違った段に装着等したと判断し、ST17へ進む。
ST17では、図4の「シリンジポンプ側表示部105」に薬剤(麻酔薬)の「実行選択」できない旨の警告を表示する。例えば、「次のステップへ進めません。」「実行選択できる薬剤がありません。」等の表示を行い、次に「取り消しますか?」等の表示を行う。
したがって、看護師等が誤った薬剤を投与等するのを未然に防止することができる。
また、上述のように原則として、各シリンジポンプ100a等は、薬剤に対応する複数の実行モデルを予め記憶され、どの実行モデルも実行可能な状態となっているが、場合によって、所定の実行モデルの一部を記憶していないシリンジポンプ100a等の存在も考えられる。
そこで、本実施の形態では、かかる欠陥を有するシリンジポンプ100a等の不動作等の発生を未然に防ぎ、麻酔薬の投与の誤り等の発生を未然に防止することができる構成となっている。
【0053】
一方、ST16で、「存在する」ときは、ST18へ進む。ST18では、図5の「シリンジポンプ側基本情報記憶部121」の対応薬剤の「選択薬剤」と、「実行モデル」の「実行選択」にフラグを立てる。
例えば、「シリンジポンプ側取得薬剤情報等記憶部122」の薬剤「プロポフォール」及び実行モデル「Marshモデル」が存在するときは、薬剤「プロポフォール」を「選択薬剤」とし、実行モデル「Marshモデル」を「実行選択」として登録する。
【0054】
したがって、これにより、上段装着部201aに装着された「シリンジポンプ100a等」の「薬剤」と「実行モデル」は、例えば、「プロポフォール」と「Marshモデル」であることが明確に記憶される。
【0055】
次いで、ST19へ進む。ST19では、図8の「ポンプ装着部分判断部(プログラム)221」が動作し、中段装着部201b,または下段装着部201cのいずれかにシリンジポンプ100a等が装着されたか否かを判断し、ST20で「中段装着部201b」に装着されたと判断されると、ST21へ進む。
【0056】
ST21では、図8のラック200の「ラック側薬剤等特定部(プログラム)222」が動作し、病院管理サーバ300の図10の「ラック装着薬剤情報記憶部307」の当該ラック装置200のラック番号(例えば、ラック番号001)の「中段装着部201b」の「薬剤(例えば、フェンタニル)」及び「実行モデル(例えば、Shaferモデル)」の情報を取得し、シリンジポンプ100b等に送信する。
【0057】
次いで、ST22へ進む。ST22では、シリンジポンプ100b等が、ラック装置200から受信した「中段段装着部201b」等の「薬剤(例えば、フェンタニル)」及び「実行モデル(例えば、Shaferモデル)」の情報を図5の「シリンジポンプ側取得薬剤情報等記憶部122」に記憶する。
【0058】
次いで、ST23へ進む。ST23では、シリンジポンプ100bの図5の「対応薬剤等判断部(プログラム)123」が動作し、「シリンジポンプ側取得薬剤情報等記憶部122」と「シリンジポンプ側基本情報記憶部121」を参照する。
「シリンジポンプ側基本情報記憶部121」には、当該シリンジポンプ100b等が投与可能な「薬剤(例えば、フェンタニル)」と、実行可能な「実行モデル(Shaferモデル)」が図5に示すように予め記憶されている。
ところで、ST23では、「シリンジポンプ側取得薬剤情報等記憶部122」の「薬剤」及び「実行モデル」情報が「シリンジポンプ側基本情報記憶部121」に存在するか否かを判断する。
【0059】
ST23で「存在しない」と判断されたときは、看護師等がシリンジポンプ100b等を間違った段に装着等したと判断し、ST24へ進む。
ST24では、図4の「シリンジポンプ側表示部105」に薬剤(麻酔薬)の「実行選択」できない旨の警告を表示する。例えば、「次のステップへ進めません。」「実行選択できる薬剤がありません。」等の表示を行い、次に「取り消しますか?」等の表示を行う。
したがって、中段装着部201bでも上段装着部201aと同様に、シリンジポンプ100b等の不動作等の発生を未然に防ぎ、麻酔薬の投与の誤り等の発生を未然に防止することができる構成となっている。
【0060】
一方、ST23で、「存在する」ときは、ST25へ進む。ST25では、図5の「シリンジポンプ側基本情報記憶部121」の対応薬剤の「選択薬剤」と、「実行モデル」の「実行選択」にフラグを立てる。
例えば、「シリンジポンプ側取得薬剤情報等記憶部122」の薬剤「フェンタニル」及び実行モデル「Shaferモデル」が存在するときは、薬剤「フェンタニル」を「選択薬剤」とし、実行モデル「Shaferモデル」を「実行選択」として登録する。
【0061】
したがって、これにより、中段装着部201bに装着された「シリンジポンプ100b等」の「薬剤」と「実行モデル」は、例えば、「フェンタニル」と「Shaferモデル」であることが明確に記憶される。
【0062】
次いで、ST26へ進む。ST26では、図8の「ポンプ装着部分判断部(プログラム)221」が動作し、下段装着部201cにシリンジポンプ100c等が装着されたか否かを判断し、装着されたと判断されると、ST27へ進む。
【0063】
ST27では、図8のラック200の「ラック側薬剤等特定部(プログラム)222」が動作し、病院管理サーバ300の図10の「ラック装着薬剤情報記憶部307」の当該ラック装置200のラック番号(例えば、ラック番号001)の「下段装着部201c」の「薬剤(例えば、ロクロニウム)」及び「実行モデル(例えば、ロクロニウム投与モデル)」の情報を取得し、シリンジポンプ100c等に送信する。
【0064】
次いで、ST28へ進む。ST28では、シリンジポンプ100c等が、ラック装置200から受信した「下段段装着部201c」等の「薬剤(例えば、ロクロニウム)」及び「実行モデル(例えば、ロクロニウム投与モデル)」の情報を図5の「シリンジポンプ側取得薬剤情報等記憶部122」記憶する。
【0065】
次いで、ST29へ進む。ST29では、シリンジポンプ100cの図5の「対応薬剤等判断部(プログラム)123」が動作し、「シリンジポンプ側取得薬剤情報等記憶部122」と「シリンジポンプ側基本情報記憶部121」を参照する。
「シリンジポンプ側基本情報記憶部121」には、当該シリンジポンプ100c等が投与可能な「薬剤(例えば、ロクロニウム)」と、実行可能な「実行モデル(ロクロニウム投与モデル)」が図5に示すように予め記憶されている。
ところで、ST29では、「シリンジポンプ側取得薬剤情報等記憶部122」の「薬剤」及び「実行モデル」情報が「シリンジポンプ側基本情報記憶部121」に存在するか否かを判断する。
【0066】
ST29で「存在しない」と判断されたときは、看護師等がシリンジポンプ100c等を間違った段に装着等したと判断し、ST30へ進む。
ST30では、図4の「シリンジポンプ側表示部105」に薬剤(麻酔薬)の「実行選択」できない旨の警告を表示する。例えば、「次のステップへ進めません。」「実行選択できる薬剤がありません。」等の表示を行い、次に「取り消しますか?」等の表示を行う。
したがって、下段装着部201cでも上段装着部201aと同様に、シリンジポンプ100c等の不動作等の発生を未然に防ぎ、麻酔薬の投与の誤り等の発生を未然に防止することができる構成となっている。
【0067】
一方、ST29で、「存在する」ときは、ST31へ進む。ST31では、図5の「シリンジポンプ側基本情報記憶部121」の対応薬剤の「選択薬剤」と、「実行モデル」の「実行選択」にフラグを立てる。
例えば、「シリンジポンプ側取得薬剤情報等記憶部122」の薬剤「ロクロニウム」及び実行モデル「ロクロニウム実行モデル」が存在するときは、薬剤「ロクロニウム」を「選択薬剤」とし、実行モデル「ロクロニウム実行モデル」を「実行選択」として登録する。
【0068】
したがって、これにより、下段装着部201cに装着された「シリンジポンプ100c等」の「薬剤」と「実行モデル」は、例えば、「ロクロニウム」と「ロクロニウム実行モデル」であることが明確に記憶される。
【0069】
ST29で、「存在する」と判断されたときは、ラック装置200に装着されているシリンジポンプ100a等は、全て適切に装着され、実行モデルのデータも有しているので、次いで、各シリンジポンプ100a等が、それぞれに実行モデルを計算するに必要な情報取得処理等を行う。
【0070】
具体的には、ST32へ進む。ST32では、ラック装置200が上段装着部201a、中段装着部201b及び下段装着部201cのシリンジポンプ100a等の図5の「シリンジポンプ側基本情報記憶部121」から「患者情報」を取得して、図8の「ラック側患者情報記憶部223」に記憶させる。
【0071】
次いで、ST33へ進む。ST33では、ラック装置200の図8の「患者生体情報取得部(プログラム)224」が動作し、「病院管理サーバ300」の「電子カルテ305」にアクセスして、図8の「ラック側患者情報記憶部223」の「患者情報」(例えば、患者番号)に基づき、当該患者の「性別、年齢、体重、身長」等の生体情報を取得して、図8の「ラック側患者生体情報記憶部225」に記憶する。
【0072】
次いで、ST34へ進む。ST34では、ラック装置200の図8の「モデル実行データ提供部(プログラム)226」が動作し、図8の「ラック側患者生体情報記憶部225」の当該患者の「性別、年齢、体重、身長」等の生体情報を各段のシリンジポンプ100a等に送信する。
【0073】
次いで、ST35へ進む。ST35では、ラック装置200から受信した「患者の生体情報」を図6のシリンジポンプ100a等の「シリンジポンプ側患者生体情報記憶部131」に記憶する。
【0074】
次いで、看護師等が、ラック装置200に装着されているシリンジポンプ100a等の全てに、指定の薬剤を収容しているシリンジ108を装着する。
次いで、ST36に進む。ST36では、シリンジポンプ100a等の図6の「シリンジ装着確認部(プログラム)132」が動作し、シリンジ108がシリンジポンプ100a等に装着されたか否かを確認する。
【0075】
装着されたことが確認されると、ST37へ進む。ST37では、シリンジポンプ側表示部105に「薬剤名」及び「実行モデル名」が表示される。
次いで、ST38へ進む。ST38では、図6の「確認入力判断部(プログラム)133」が動作して、シリンジポンプ100a等の操作パネル部106から「確認」入力があったか否かを判断する。
【0076】
したがって、本実施の形態では、シリンジポンプ100a等に、当該シリンジポンプ100a等が投与する薬剤及び実行モデルのデータを記憶させているだけでなく、更に、表示し、看護師等に確認させることで、間違い等の発生を未然に防ぐ構成となっている。
【0077】
ST38で、確認されると、ST39へ進む。ST39ではシリンジポンプ100a等の図6の「モデル実行部(プログラム)134」が動作し、図6の「シリンジポンプ側患者生体情報記憶部131」、図5の「モデル実行プログラム記憶部124」及び「シリンジポンプ側基本情報記憶部121」の「フラグ」を参照し、患者の生体情報を用いて、フラグが立っている当該モデル実行プログラム、例えば、Marshモデル実行プログラム等を実行する。
具体的には、モデル実行プログラム記憶部124に記憶されている、例えば、Marshモデルの計算式と患者の生体情報等から、薬剤の投与量等のシミュレーションを導くことになる。
【0078】
図19は、かかるシミュレーションに基づき薬剤が送液されている状態を示すグラフである。
図19(a)は、送液開始直後の状態であり、(b)は、特定の効果部位濃度d1が目標に達した状態を示し、(c)は、特定の効果部位濃度d1が、目標濃度に達した後の状態を示す。
このように、特定のモデルに基づくシミュレーションに基づいて計算される薬剤の血中濃度d0の予測線及び効果部位濃度d1の予測線をシリンジポンプ側表示部105に表示させることができると共に、そのシミュレーションに沿った効果を発揮させることができる。
【0079】
このように本実施の形態では、病院管理サーバ300からラック装置200を介して各シリンジポンプ100a等へ実行すべき「実行モデル」を限定するデータを送信する。このため、各シリンジポンプ100a等は、間違えることなく正確に薬剤を患者Pに投与することができる。
特に、麻酔薬等のように、投与間違い等が重篤な結果を招来する場合は、本実施の形態では、かかる結果の発生を確実に防止することができる。
【0080】
また、本実施の形態では、患者の生体情報を看護師等が入力することなく、ラック装置200が病院管理サーバ300から取得して、シリンジポンプ100a等へ提供し、シリンジポンプ100a等が実行モデルのシミュレーションの計算をする。したがって、看護師等の労力を軽減させることができると共に、生体情報の入力ミス等を未然に防止することができる。
【0081】
次いで、図10の病院管理サーバ300の「ラック装着薬剤情報記憶部307」の「薬剤」や「実行モデル」の登録を変更する場合について、図17及び図18のフローチャートを用いて説明する。
先ず、図17のST50では、サーバ側表示装置303が表示する「メニュー」画面から図10の「ラック装着薬剤記憶部307」の「上段装着部」「中段装着部」「下段装着部」「薬剤」と「実行モデル」の変更画面を表示させる。
【0082】
次いで、ST51で、病院管理サーバ300は、変更要求が入力されたか否かを判断し、入力されたときは、ST52で、サーバ側表示装置303が「職員ID番号」及び「パスワード」の入力画面を表示する。
次いで、ST53で、入力されたときは、ST54で、入力された「職員ID番号」及び「パスワード」を図9の「入力職員情報記憶部308」に記憶させる。
【0083】
次いで、ST55へ進む。ST55では、図9の「職員情報確認部(プログラム)309」が動作して、図9の「入力職員情報記憶部308」と「病院管理サーバ300」の図9の「職員データベース306」を参照し、当該「職員ID番号」と「パスワード」の適否を判断する。
ST56で、正しいと判断したときは、ST57へ進む。ST57では、当該「職員ID番号」の所属が「麻酔科医」等の「薬剤」や「実行モデル」を変更する権限を有する所属に該当するか否か判断し、ST58で、該当すると判断したときは、ST59へ進む。
【0084】
ST59では、サーバ側表示装置303に、上段装着部201a、中段装着部201b、下段装着部201cの「薬剤」や「実行モデル」変更画面を表示する。
次いで、ST60へ進み、変更処理が終了したときは、本工程を終了する。
【0085】
このように、本実施の形態では、権限ある麻酔科医等に限り、病院管理サーバ300の「薬剤」や「実行モデル」の登録を変更することができるので、極めて、安全性が高いシステムとなっている。
【0086】
ところで、本発明は、上述の実施の形態に限定されない。本実施の形態では、ラック装置200の上段装着部201a、中段装着部201b、下段装着部201cの全ての送液ポンプ装着部を使用する構成としたが、本発明は全ての送液ポンプ装着部を使用することに限定されるものではない。また、本実施の形態では、ラック装置200の上段装着部201a、中段装着部201b、下段装着部201cに装着されるシリンジポンプ100a等が使用可能な薬剤及び実行モデルの情報を「病院管理サーバ300」が管理する構成としたが、本発明はこれに限らず、例えば、ラック装置200が係る情報を管理しても構わない。
【符号の説明】
【0087】
1・・・医療用ポンプシステム、100a、100b、100c・・・シリンジポンプ、101・・・ラック接続用端子、102・・・シリンジ押子、103・・・チューブ、104・・・留置針、105・・・シリンジポンプ側表示部、106・・・操作パネル部、106a・・・電源ON/OFFボタン、106b・・・動作インジケータ、106c・・・早送りスイッチボタン、106d・・・開始スイッチボタン、106e・・・停止スイッチボタン、106f・・・メニュー選択ボタン、108・・・シリンジ,110・・・シリンジポンプ制御部、120・・・第1のシリンジポンプ側各種情報記憶部、121・・・シリンジポンプ側基本情報記憶部、122・・・シリンジポンプ側取得薬剤情報等記憶部,123・・・対応薬剤等判断部(プログラム)、124・・・モデル実行プログラム記憶部、130・・・第2のシリンジポンプ側各種情報記憶部、131・・・シリンジポンプ側患者生体情報記憶部、132・・・シリンジ装着確認部(プログラム)、133・・・確認入力判断部(プログラム)、134・・・モデル実行部(プログラム)、200・・・ラック装置、201a・・・上段装着部、201b・・・中段装着部、201c・・・下段装着部、202・・・通信ボックス、203・・・ラック側通信装置、203a・・・上部装着部用端子、203b・・・中部装着用端子、203c・・・下部装着用端子、204・・・ラック側通信装置、205・・・ラック側表示部、206・・・ラック側各種情報入力部、210・・・ラック制御部、220・・・ラック側各種情報記憶部、221・・・ポンプ装着部分判断部(プログラム)、222・・・ラック側薬剤等特定部(プログラム)、223・・・ラック側患者情報記憶部、224・・・患者生体情報取得部(プログラム)、225・・・ラック側患者生体情報記憶部、226・・・モデル実行データ提供部、300・・・病院管理サーバ、301・・・サーバ制御部、302・・・サーバ側通信装置、303・・・サーバ側表示装置、304・・・サーバ側各種情報入力装置、305・・・電子カルテデータベース、306・・・職員データベース、307・・・ラック装着薬剤記憶部、308・・・入力職員情報記憶部、309・・・職員情報確認部(プログラム)、P・・・患者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19