(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
定義
本明細書において使用される場合、「a」という用語は、1のみならず、少なくとも1を意味し、かかる冠詞が参照する名詞が単数であることを必ずしも限定するものではない。
【0019】
本明細書において使用される場合、「約」及び「大体」という用語は、議論されている量又は値が、示されている値であることができ、或いは、ほぼ同じであるが幾分異なる値であることができることを意味するものと意図される。この句は、類似の値が、本発明と均等の結果又は効果をもたらすことを知らせるものと意図される。
【0020】
本明細書で使用される場合、「アクリレート」という用語は、アルキル基とのアクリル酸のエステルを意味する。1〜4の炭素原子を有するアルキル基を有するアクリレートが、本発明において好ましい。
【0021】
本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリル酸」という用語は、メタアクリル酸及び/又はアクリル酸を包括的に意味する。同様に、「(メタ)アクリレート」という用語は、メタクリレート及び/又はアクリレートを意味し、且つ、「ポリ(メタ)アクリレート」は、対応する種類のモノマー両方の重合又は混合物由来のポリマーを意味する。
【0022】
本明細書で使用される場合、「コポリマー」という用語は、2つ以上のコモノマーの共重合から得られる共重合ユニットを含むポリマーを意味する。この関連においては、コポリマーは、例えば、「エチレンと、18重量パーセントのアクリル酸と、を含むコポリマー」又は類似の記載などの、その組成のコモノマー、又は、その組成のコモノマーの量に関して、本明細書において記載されることができる。共重合ユニットとしてコモノマーを意味しないという点において、例えば、国際純正応用化学連合(IUPAC)命名法などの、コポリマーの従来の命名法を含まないという点において、プロダクト−バイ−プロセスの用語を使用しないという点において、又は別の理由において、こうした記載は、非公式であるとみなされる場合がある。しかしながら、本明細書において使用される場合、その組成のコモノマー、又は、その組成のコモノマーの量に関するコポリマーの記載は、コポリマーは、特定のコモノマーの共重合ユニット(特定される場合の特定された量において)を含むことを意味する。こうした限定された状況において明確に記載されない限り、コポリマーは、所定の量における所定のコモノマーを含む反応混合物の生成物でないという結果となる。「コポリマー」という用語は、2つの異なるモノマーの共重合ユニット(ジポリマー)から基本的になるポリマー、或いは、2つを超える異なるモノマーから基本的になるポリマー(3つの異なるコモノマーから基本的になるターポリマー、4つの異なるコモノマーから基本的になるテトラポリマー等)を意味することができる。
【0023】
「酸コポリマー」という用語は、α−オレフィンの共重合ユニットと、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸と、場合により、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステルなどのその他の適切なコモノマー(複数可)と、を含むポリマーを意味する。
【0024】
「イオノマー」という用語は、前述の通り、酸コポリマーを部分的に又は完全に中和することによって生成されるポリマーを意味する。
【0025】
本発明のケーブルは、コアと、コアを囲むPCM層と、を含むことができる。PCM層は、PCM組成物からなることができる。
【0026】
本発明のPCM組成物は、PCMと、エチレンコポリマーと、を含むことができる。
【0027】
PCMは、1つ以上のアルキル炭化水素(パラフィンワックス)の中から、或いは、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸の塩、及び/又はそれらの2つ以上の組合せの中から選択される。
【0028】
パラフィンワックスは、飽和炭化水素混合物であり、一般的には、化学式CH
3−(CH
2)
n−CH
3を有するほとんど直鎖のn−アルカンの混合物からなる。−(CH
2)
n−鎖の結晶化は、大量の潜熱を放出する。融点及び融解熱はともに、鎖長の増加に伴い増加する。従って、相変化温度範囲が、PCMが適用される操作システムの温度と適合するように、石油精製の生成物であるパラフィンワックスを選択することができる。
【0029】
脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸の塩は、動物脂肪、動物グリース、植物油、植物ワックス、及び/又はそれらの2つ以上の組合せ由来の原産物を有することができる。
【0030】
脂肪酸は、12を超える炭素の尾部を有する、飽和及び不飽和両方の、「長」鎖脂肪酸であることができる。こうした脂肪酸の例としては、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、又はそれらの2つ以上の組合せが挙げられる。多くの場合に利用できる脂肪酸は、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、及び/又はそれらの2つ以上の組合せであることができる。
【0031】
脂肪酸エステルは、これらに限定されるものではないが、グリセリンのモノ、ジ、又はトリグリセリド、ペンタエリスリトールのエステル、多価アルコールのポリエステル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノールのエステル、エチレングリコールのエステル又はジエステル、及び/又はそれらの2つ以上の組合せを含む、アルコール、ジオール、及び/又はポリオールとともに形成されることができる。好ましくは、脂肪酸エステルは、グリセリンのモノ、ジ、又はトリグリセリド、及び/又はそれらの組合せである。
【0032】
本発明のPCM組成物のエチレンコポリマーは、エチレン、並びに、ビニルアセテート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、一酸化炭素、オクテン、ヘキセン、ブテン、4メチル−ペンテン−1、プロピレン、又はビニルアセテートなどのそれらの2つ以上の組合せ、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、一酸化炭素、及び/又はそれらの2つ以上の組合せであることができる少なくとも1つのコモノマー、に由来の繰り返し単位を含む、又はこれから生成される。
【0033】
好ましくは、コモノマーは、ビニルアセテート、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルアクリレート、及び/又はそれらの2つ以上の組合せである。最も好ましくは、少なくとも1つの極性コモノマーは、ビニルアセテートである。
【0034】
エチレンコポリマーは、エチレンと、エチレンコポリマーの重量に基づいて、少なくとも約28%、少なくとも約35%、又は少なくとも約40%のコモノマーからなるコポリマーであることができる。
【0035】
エチレンコポリマーの例としては、これらに限定されるものではないが、エチレンビニルアセテートコポリマー(EVA)、エチレン/(メタ)アクリレートコポリマー、エチレン/アルキル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマー、エチレン/アルキル(メタ)アクリル酸コポリマー、エチレン/ビニルアセテート/一酸化炭素コポリマー、エチレン/ブチルアクリレート/一酸化炭素コポリマー、エチレン/アクリル酸エステル/一酸化炭素コポリマー、エチレン−プロピレンコポリマー、直鎖型低密度ポリエチレン(LLDPE’s)、超低密度ポリエチレン(VLDPE’s)、及び/又はそれらの2つ以上の組合せが挙げられる。
【0036】
EVAとしては、エチレン及びビニルアセテートの共重合、或いは、エチレン、ビニルアセテート、及び更なるコモノマーの共重合から誘導されるコポリマーが挙げられる。EVAは、0.1〜60g/10分、又は0.3〜30g/10分の、ASTM D−1238に従って測定されるメルトフローレートを有することができる。2つ以上の異なるEVAの混合物が、使用されることができる。最も好ましくは、エチレンコポリマーは、エチレンビニルアセテート(EVA)である。更に最も好ましくは、エチレンコポリマーは、少なくとも約40%のビニルアセテートを含むエチレンビニルアセテートである。
【0037】
PCMとエチレンコポリマーのブレンド物は、当業者に公知の任意の手段によって生成されることができる。例えば、PCMが、室温未満の融点(即ち、20〜25℃未満)を有する場合、PCMとエチレンコポリマーのブレンド物は、PCMの融点を僅かに超える温度で、しかし、エチレンコポリマーの融点未満の温度で、異なる成分(複数可)を一斉に浸漬させることによって生成可能である。
【0038】
浸漬させることは、エチレンコポリマーによる溶融PCMの自然な吸収である。1〜10時間又は約8時間などの充分な期間、タンブルブレンダー(tumble blender)自体の回転速度の関数にて変動することができる特定の期間の間、成分は、タンブルブレンダーにおいてともに混合されることができる。
【0039】
又、低融点のPCM及びエチレンコポリマーのブレンド物は、溶融ブレンド押し出し成形によって生成可能であり、これによって、成分は、エチレンコポリマー及びPCM両方の融点を超える温度でブレンドされ、このようにして得られた混合物は、その後、顆粒に、又は直接シートに、又は任意のその他の適切な形態に押し出し成形される。
【0040】
例えば、PCMが、室温を超える融点(即ち、20〜25℃超)を有する場合、PCM及びエチレンコポリマーのブレンド物は、PCMの顆粒とエチレンコポリマーの顆粒(室温で両方とも固体である)を乾式ブレンドすることによって生成可能である。
【0041】
組成物は、PCM組成物の総重量に基づいて、0.01〜15、0.01〜10、又は0.01〜5重量パーセントの、可塑剤、粘度安定化剤及び加水分解安定化剤を含む安定化剤、一次及び二次抗酸化剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、染料、色素又はその他の着色剤、無機充填剤、難燃剤、潤滑油、ガラス繊維及びフレークなどの補強剤、合成(例えば、アラミド)繊維又はパルプ、気泡生成剤又は発泡剤、加工助剤、スリップ剤、二酸化ケイ素又はタルクなどの粘着防止剤、離型剤、粘着付与樹脂、又はそれらの2つ以上の組合せを含む添加剤を更に含むことができる。これらの添加剤は、Kirk Othmer Encyclopedia of Chemical Technologyに記載されている。
【0042】
添加剤は、乾式ブレンド、様々な成分の混合物の押し出し成形、従来のマスターバッチ技術等などの、任意の公知の方法によって組成物に組み込まれることができる。
【0043】
PCM組成物におけるエチレンコポリマーの量は、PCM組成物の総重量に基づいて、好ましくは30重量パーセント以下であり、より好ましくは10重量パーセント以下である。
【0044】
本発明は、特に、コアを囲むPCM層と、場合によりPCM層及びコアを囲む1つ以上のポリマー層(複数可)と、を含むケーブルに関する。
【0045】
ケーブルは、綿、ポリエステル、ポリアミド、又はポリフェニレンテレフタルアミド(アラミド)、及び/又はそれらの混合物又はブレンド物などの、天然又は合成重合性材料又は金属から作製される、ヤーン、ストランド、又はワイヤーに対して、PCM組成物を押し出し成形することによって作製されることができる。好ましくは、ヤーン、ストランド、又はワイヤーは、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(パラ−アラミド)から作製される。いくつかの適切なポリパラフェニレンテレフタルアミド(パラ−アラミド)のヤーン、ストランド、又はワイヤーは、商標KEVLAR(登録商標)で、E.I.du Pont de Nemours and Company of Wilmington,Delaware(「DuPont」)から市販されている。
【0046】
ヤーン、ストランド、又はワイヤーの使用は、PCM組成物の押し出し成形方法の間、全体のケーブルを適切に引くことを可能にする。
【0047】
典型的には、PCM組成物は、ワイヤー被覆押し出し成形ラインに送達され、ヤーン、ストランド、又はワイヤーに対して、所望の厚さで、その融点を超える温度で押し出し成形される。
【0048】
場合により、1つ以上のポリマー層(複数可)は、ヤーン、ストランド、又はワイヤーに対して、PCM組成物を押し出し成形することによって得られたケーブルに対して押し出し成形されることができる。
【0049】
PCMを含むケーブルを製造する場合、組成物の熱的性能は、組成物に含まれるPCMの濃度に正比例することができることから、ケーブルにおけるPCMの量は、できるだけ高いことが望ましい。本発明のケーブルにおけるPCMの量は、ケーブルの総重量に基づいて、少なくとも70重量パーセント、約70〜約95重量パーセント、又は約80〜約90重量パーセントである。
【0050】
場合により、コア及びPCM組成物から作製されるPCM層を含むケーブルは、保護ポリマーの1つ以上の層(複数可)を更に含むことができる。
【0051】
本発明の保護ポリマー(複数可)の層(複数可)は、耐熱性、耐薬品性、密閉性等などのいくつかの特性をケーブルに付与することを目的とする。保護ポリマーは、任意のポリマーからなるが、好ましくは、保護ポリマーは、イオノマー、ポリアミド、グラフト化又は非グラフト化ポリプロピレンホモポリマー、グラフト化又は非グラフト化ポリプロピレンコポリマー、ペルフルオロエチレン−プロピレン(FEP)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、50重量パーセントを超えるメチルアクリレート含有量を有するエチレンメチルアクリレートコポリマー、或いは、それらの混合物又はブレンド物である。
【0052】
一実施形態においては、保護ポリマーの層は、イオノマー及びポリアミドのブレンド物から作製されることができる。
【0053】
特に、層は、エチレン酸コポリマーのイオノマーとポリアミドのブレンド物から作製されることができる。
【0054】
イオノマーは、後述するように酸コポリマーを部分的に又は完全に中和することによって生成されるポリマーであることができる。
【0055】
適切なエチレン酸コポリマー及びイオノマーは、例えば、米国特許第7641965号明細書、Bennisonらに記載されている。しかしながら、簡潔には、エチレン酸コポリマーは、2〜10の炭素原子を有するα−オレフィンの共重合ユニットと、約8〜約30重量パーセント、好ましくは約15〜約30重量パーセント、より好ましくは約20〜約30重量パーセント、更により好ましくは約20〜約25重量パーセント、又は更により好ましくは約21〜約23重量パーセントの、3〜8の炭素原子を有するα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の共重合ユニットを含むことができる。重量パーセントは、エチレン酸コポリマーの総重量に基づく。好ましくは、α−オレフィンは、エチレンを含み、より好ましくは、α−オレフィンは、エチレンから基本的になる。又、好ましくは、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸は、アクリル酸、メタクリル酸、又はアクリル酸とメタクリル酸の組合せを含む。より好ましくは、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸は、アクリル酸、メタクリル酸、又はアクリル酸とメタクリル酸の組合せから基本的になる。
【0056】
エチレン酸コポリマーは、2〜10、又は好ましくは3〜8の炭素原子を有する不飽和カルボン酸又はその誘導体などの、その他のコモノマー(複数可)の共重合ユニットを更に含むことができる。適切な酸誘導体としては、酸無水物、アミド、及びエステルが挙げられる。エステルが、好ましい誘導体である。好ましくは、エステルは、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステルコモノマーであり、これらに限定されるものではないが、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0057】
エチレン酸コポリマーは、任意の適切な重合方法によって合成されることができる。例えば、エチレン酸コポリマーは、米国特許第3404134号明細書、米国特許第5028674号明細書、米国特許第6500888号明細書、及び米国特許第6518365号明細書に記載の通り重合されることができる。
【0058】
好ましくは、エチレン酸コポリマーは、190℃及び2.16kgでASTM法D1238によって測定される、約60g/10分以下、より好ましくは約45g/10分以下、更により好ましくは約30g/10分以下、又は更により好ましくは約25g/10分以下、又は更により好ましくは約10g/10分以下のメルトインデックス(MI)を有する。
【0059】
いくつかの適切なエチレン酸コポリマー樹脂は、商標NUCREL(登録商標)で、DuPontから市販されている。
【0060】
イオノマーを得るために、エチレン酸コポリマーの少なくとも一部のカルボン酸部位は、中和されてカルボキシレート基を形成する。エチレン酸コポリマーの総カルボン酸含有量に基づいて、好ましくは約5〜約90%、より好ましくは約10〜約50%、更により好ましくは約20〜約50%、又は更により好ましくは約20〜約35%のカルボン酸基が中和される。又、エチレン酸コポリマーを中和するための適切な手順の例は、米国特許第3404134号明細書に記載されている。
【0061】
イオノマーは、カルボキシレートアニオンに対する対イオンとしてカチオンを含む。適切なカチオンとしては、イオノマー組成物が、合成され、加工され、且つ、使用される条件下で安定である任意の正に荷電した種が挙げられる。好ましくは、カチオンは、一価、二価、三価、又は多価であることができる金属カチオンである。又、例えば、Na+とZn2+の混合物、又はNH4+とK+の混合物などの、異なる原子価を有することができる2つ以上のカチオンの組合せが、適切である。カチオンは、より好ましくは一価又は二価の金属イオンである。更により好ましくは、金属イオンは、ナトリウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛、及びカリウム、並びにそれらの2つ以上の組合せのイオンからなる群から選択される。更により好ましくは、金属イオンは、ナトリウムのイオン、亜鉛のイオン、及びそれらの組合せからなる群から選択される。更により好ましくは、金属イオンは、ナトリウムイオンを含む、又は基本的にこれからなる。
【0062】
好ましくは、イオノマーは、190℃及び2.16kgでASTM法D1238によって測定される、約10g/10分以下、より好ましくは5g/10分以下、又は更により好ましくは約3g/10分以下、約1.0g/10分以下、約0.5g/10分以下、約0.2g/10分以下、又は約0.1g/10分以下のMIを有する。又、好ましくは、イオノマーは、ASTM法D790(手順A)によって測定される、約40,000psi(276MPa)を超える、より好ましくは約50,000psi(345MPa)を超える、又は更により好ましくは約60,000psi(414MPa)を超える曲げ弾性率を有する。
【0063】
いくつかの適切なイオノマー樹脂は、商標SURLYN(登録商標)樹脂でDuPontから市販されている。
【0064】
適切なポリアミドは、150〜330℃の融点を有する、半芳香族、脂肪族ポリアミド、及びそれらのブレンド物から選択されることができる。
【0065】
ポリアミドは、全脂肪族ポリアミドであることができる。全脂肪族ポリアミド樹脂は、ジアミン、ジカルボン酸、ラクタム、アミノカルボン酸、及びそれらの反応性等価物などの、脂肪族及び脂環式モノマーから形成されることができる。適切なアミノカルボン酸としては、11−アミノドデカン酸が挙げられる。本発明の文脈においては、又、「全脂肪族ポリアミド樹脂」という用語は、2つ以上のこうしたモノマー、及び2つ以上の全脂肪族ポリアミド樹脂のブレンド物から誘導されたコポリマーを意味する。直鎖型、分岐型、及び環式のモノマーが、使用されることができる。
【0066】
全脂肪族ポリアミド樹脂に含まれるカルボン酸モノマーとしては、これらに限定されるものではないが、例えば、アジピン酸(C6)、ピメリン酸(C7)、スベリン酸(C8)、アゼライン酸(C9)、セバシン酸(C10)、ドデカンジオン酸(C12)、及びテトラデカン二酸(C14)などの脂肪族カルボン酸を挙げることができる。ジアミンは、4つ以上の炭素原子を有するジアミンから選択されることができ、これらに限定されるものではないが、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、2−エチルテトラメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、及び/又はそれらの混合物が挙げられる。全脂肪族ポリアミド樹脂の適切な例としては、PA6、PA6,6、PA4,6、PA6,10、PA6,12、PA6,14、PA6,13、PA6,15、PA6,16、PA11、PA12、PA10、PA9,12、PA9,13、PA9,14、PA9,15、PA6,16、PA9,36、PA10,10、PA10,12、PA10,13、PA10,14、PA12,10、PA12,12、PA12,13、12,14、並びに、これらのコポリマー及びブレンド物が挙げられる。
【0067】
本明細書において記載される全脂肪族ポリアミド樹脂の好ましい例としては、PA6、PA11、PA12、PA4,6、PA6,6、PA,10、PA6,12、PA10,10、並びに、これらのコポリマー及びブレンド物が挙げられる。
【0068】
イオノマー及びポリアミドのブレンド物を含む保護ポリマーの層は、50〜500μm、好ましくは50〜250μm、より好ましくは100〜200μmの厚さを有することができる。
【0069】
別の実施形態においては、保護ポリマーの層は、グラフト化又は非グラフト化ポリプロピレンホモポリマー、グラフト化又は非グラフト化ポリプロピレンコポリマー、ペルフルオロエチレン−プロピレン、ペルフルオロアルコキシアルカン、エチレンテトラフルオロエチレン、エチレンアクリレートゴム、及びそれらの2つ以上の組合せからなる群から選択されるポリマーを含むことができる。
【0070】
グラフト化又は非グラフト化ポリプロピレン、及び、ポリプロピレンのグラフト化又は非グラフト化コポリマーは、酸、無水物、及び/又はエポキシド官能基を含む有機官能基を有するプロピレンポリマー及び/又はモノマーをグラフト及び/又は共重合することによって得られることができる。ポリプロピレンを改質するために使用される酸及び無水物の例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、フマル酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、イタコン酸無水物、マレイン酸無水物、及び、例えば、ジメチルマレイン酸無水物などの置換マレイン酸無水物、又はcitrotonic無水物、ナド酸無水物、メチルナド酸無水物、及びテトラヒドロフタル酸無水物、又はそれらの2つ以上の組合せなどの、モノ、ジ、又はポリカルボン酸であり、マレイン酸無水物が好ましい。
【0071】
好ましい保護ポリマー層は、グラフト化ポリプロピレンと、プロピレンのグラフト化コポリマーと、を含む。いくつかの適切なグラフト化ポリプロピレン及びプロピレンのグラフト化コポリマーは、商標BYNEL(登録商標)でDuPontから市販されている。
【0072】
一般的には、フルオロポリマーFEP(フッ化エチレンプロピレンコポリマー)は、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマーである。通常、FEPは、87重量パーセント〜94重量パーセントのテトラフルオロエチレン、及び、6重量パーセント〜13重量パーセントのヘキサフルオロプロピレン、より好ましくは88重量パーセント〜90重量パーセントのテトラフルオロエチレン、及び、10重量パーセント〜12重量パーセントのヘキサフルオロプロピレンを含み、すべては、FEPの総重量に基づく。
【0073】
一般的には、フルオロポリマーPFA(ペルフルオロアルコキシコポリマー)は、テトラフルオロエチレンと、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、ペルフルオロエチルビニルエーテル、又はペルフルオロメチルビニルエーテルなどの、ペルフルオロアルキルビニルエーテルとのコポリマーである。通常、PFAは、90重量パーセント〜98又は99重量パーセントのテトラフルオロエチレン、及び、1又は2重量パーセント〜10重量パーセントのペルフルオロプロピルビニルエーテル、ペルフルオロエチルビニルエーテル、又はペルフルオロメチルビニルエーテルを含む。より好ましくは、92重量パーセント〜97重量パーセントのテトラフルオロエチレン、及び、3重量パーセント〜8重量パーセントのペルフルオロプロピルビニルエーテル、ペルフルオロエチルビニルエーテル、又はペルフルオロメチルビニルエーテル、すべては、FEPの総重量に基づく。
【0074】
一般的には、フルオロポリマーETFE(エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー)は、エチレンとテトラフルオロエチレンのコポリマーである。通常、ETFEは、ETFEの総重量に基づいて、15重量パーセント〜25重量パーセントのエチレン、及び、75重量パーセント〜85重量パーセントのテトラフルオロエチレン、より好ましくは15重量パーセント〜20重量パーセントのエチレン、及び80重量パーセント〜85重量パーセントのテトラフルオロエチレンを含む。
【0075】
AEMは、エチレンと、少なくとも45重量パーセントの前述のアルキル(メタ)アクリレートを含むアルキル(メタ)アクリレートのコポリマーの硬化組成物である。
【0076】
「硬化」という用語は、化学反応又は照射によって架橋されることができる材料を意味する。
【0077】
AEMは、総重量に基づいて、少なくとも45重量パーセント、好ましくは45〜70重量パーセント、より好ましくは55〜65重量パーセントのアルキル(メタ)アクリレートを含むことができる。
【0078】
硬化組成物のアルキル(メタ)アクリレートは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、及びブチル(メタ)アクリレートから選択されることができ、好ましくはメチル(メタ)アクリレートである。
【0079】
エチレンアクリレートゴム又はAEMは、商標VAMAC(登録商標)でDuPontから市販されている。
【0080】
硬化組成物は、任意の適切な手段、又は、例えば、化学添加剤又は照射などの硬化剤によって硬化されることができる。
【0081】
本発明のケーブルは、熱管理が必要であるいくつかの用途に使用可能である。建物内部の温度管理が、最も関連した用途の1つである一方、又、本発明のPCM組成物は、自動車用途(例えば、潜熱バッテリー、電気バッテリーの熱管理、車両の天井及びシート用)、エアーダクトにおけるエアーフィルター、空調機、輸送用途、食品包装(食品を冷たく又は暖かく保つために)、医療包装(例えば、臓器又はワクチンの輸送)、衣類、衣服、及びスポーツ衣服用の織布又は不織布、靴類、木ラップ(tree wraps)、ハンドルグリップ(工具、運動具、及び車両における)、寝具類、カーペット、木質複合材料、水を含む熱い媒体用の電線及びプラスチックチューブで使用されることができる。
【0082】
特に好ましい用途は、エンジンが作動中である間、エネルギーが本発明のケーブルに保存され、且つ、必要に応じて(例えば、冷たい環境又は冷たい季節における運転開始のための)、ケーブルが保存されたエネルギーを放出することができる車の潜熱バッテリーにある。このエネルギー放出は、潤滑油及び冷却流体の粘性を低下させることができ、最終的に、燃料消費量の低下及び二酸化炭素排出の減少をもたらす。
【実施例】
【0083】
実施例1:PA6−イオノマー被覆においてカプセル化されたカプセル化PCMケーブル
第1工程においては、商標名RUBITHERM(登録商標)RT70(融点70℃)でRubithermから市販されている90重量パーセントのパラフィン顆粒と、10重量パーセントのエチレンビニルアセテートEVA(40重量パーセントのビニルアセテートコモノマーを有する)の顆粒との乾燥ブレンド物を、ワイヤー被覆押し出し成形ラインに送達し、72℃の温度、1.5mmの厚さで、220デシテックスKEVLAR(登録商標)ヤーン(パラ−アラミドヤーン)に対して押し出し成形した。作製したケーブルは、約3mmの直径であった。
【0084】
第2工程においては、60重量パーセントのPA6と、40重量パーセントのイオノマー(亜鉛で中和されたメタクリル酸コポリマー)との溶融ブレンド物を、別のワイヤー被覆ラインを使用して250℃の温度で、100μmの被覆を塗布するために、3mmを超える直径ケーブルに対して押し出し成形した。その結果、最終のカプセル化PCMケーブルは、約3.2mmの直径であった。
【0085】
次いで、長さ10cmの試料を、前述のケーブルから切断し、インパルスシール装置(Audion Elektro社の「Medseal 410/610 MSI」)を使用して250℃の温度で2つの端部にて封止した。次いで、これらの試料を、以下に供した:
−24時間、130℃の温度の空気
−24時間、130℃の温度で50%のエチレングリコール(Volkswagen AG社によって卸されている製品「G12 plus plus」)と50%の脱塩水の混合物、
−24時間、130℃の温度で車用潤滑油(Michang Oil社の製品「ATF−SP4(M)」)。
【0086】
24時間の経時期間が終わると、その後、試料を慎重に点検し、以下の観察を行った:
−エチレングリコールにおける経時での試料の損傷
−熱気及び潤滑油における経時後のケーブル試料の損傷又は溶融が無かったこと
−熱気及び潤滑油における経時後の封止された端部の開口が無かったこと
−熱気及び潤滑油における経時後のケーブル試料からのPCMの滲出又は損失が無かったこと。
【0087】
これらの結果を表1に要約し、PA6−イオノマーブレンド物は、自動車の要件に従って、パラフィンPCMに耐性であり、パラフィンPCMに対する良好なバリアであり、130℃までの高温に耐性であり、且つ、潤滑油に対して耐性であるが、エチレングリコールに対して十分に耐性ではないことを示している。
【0088】
【表1】
【0089】
実施例2:PA6−イオノマー及びポリプロピレンを含む2つの層被覆においてカプセル化されたカプセル化PCMケーブル
60重量パーセントのPA6と、40重量パーセントのイオノマーの同一溶融ブレンド物からなる1つの100μm厚さの層(コアPCM材料の方)、並びに、165℃の融点を有する、非グラフト化ポリプロピレンホモポリマーの第2の100μm厚さの層(外側の方)を含む共押し出し成形された2つの層被覆で、PA6−イオノマーの100μm厚さの単層被覆を置き換えたこと以外は、3.4mm直径のカプセル化PCMケーブルを、実施例1と同一の方法で作製した。
【0090】
又、長さ10cmの試料を、前述のケーブルから切断し、インパルスシール装置(Audion Elektro社の「Medseal 410/610 MSI」)を使用して250℃の温度で2つの端部にて封止した。次いで、これらの試料を、以下に供した:
−24時間、130℃の温度の空気
−24時間、130℃の温度で50%のエチレングリコール(Volkswagen AG社によって卸されている製品「G12 plus plus」)と50%の脱塩水の混合物、
−24時間、130℃の温度で車用潤滑油(Michang Oil社の製品「ATF−SP4(M)」)。
【0091】
24時間の経時期間が終わると、その後、試料を慎重に点検し、以下の観察を行った:
−ケーブル試料のいずれかの損傷又は溶融が無かったこと(包埋媒体にかかわらず)
−封止された端部の開口が無かったこと(包埋媒体にかかわらず)
−ケーブル試料からのPCMの滲出又は損失が無かったこと(包埋媒体にかかわらず)。
【0092】
これらの結果を表2に要約し、PA6−イオノマーブレンド物の1つの層、及びポリプロピレンの1つの層を含むカプセル化した共押し出し成形された被覆は、自動車の要件に従って、パラフィンPCMに対する良好なバリアであり、且つ、パラフィンPCMに、130℃までの高温に、潤滑油に、並びに、エチレングリコールに耐性であることを示している。
【0093】
【表2】
本願は以下の発明に関するものである。
(1) コアと、前記コアを囲む相変化材料(PCM)層と、を含むケーブルであって、前記PCM層は、PCM組成物からなり、
前記PCM組成物は、PCMと、エチレンコポリマーと、を含み、且つ、前記コアは、ヤーン、ストランド、又はワイヤーからなり、それぞれは、天然若しくは合成の重合性材料又は金属から作製される、ケーブル。
(2) 前記PCM組成物におけるエチレンコポリマーの量は、前記PCM組成物の総重量に基づいて、30重量パーセント以下である、上記(1)に記載のケーブル。
(3) 前記エチレンコポリマーは、エチレンビニルアセテートである、上記(1)又は(2)に記載のケーブル。
(4) 前記ヤーン、前記ストランド、又は前記ワイヤーは、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(パラ−アラミド)から作製される、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のケーブル。
(5) 保護ポリマーの1つ以上の層(複数可)を更に含む、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のケーブル。
(6) 前記第1の層は、イオノマーとポリアミドのブレンドから作製され、且つ、前記第2の層は、グラフト化又は非グラフト化ポリプロピレンホモポリマー、グラフト化又は非グラフト化ポリプロピレンコポリマー、ペルフルオロエチレン−プロピレン、ペルフルオロアルコキシアルカン、エチレンテトラフルオロエチレン、エチレンアクリレートゴム、及びそれらの2つ以上の組合せからなる群から選択されるポリマーから作製される、保護ポリマーの2つの層を含む、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のケーブル。
(7) 保護ポリマーの前記1つ以上の層は、50〜600μmの厚さを有する、上記(1)〜(6)のいずれかに記載のケーブル。
(8) PCMの量は、前記ケーブルの総重量に基づいて、少なくとも70重量パーセントである、上記(1)〜(7)のいずれかに記載のケーブル。
(9) 前記ケーブルは、3〜6mmの直径を有する、上記(1)〜(8)のいずれかに記載のケーブル。
(10) 天然若しくは合成の重合性材料又は金属から作製される、ヤーン、ストランド、又はワイヤーからなるコアをもたらす工程と、
前記コアに対してPCM組成物を押し出し成形する工程と、
を含む、上記(1)〜(9)のいずれかに記載のケーブルを作製する方法。
(11) 保護ポリマーの1つ以上の更なる層(複数可)を、前記PCM組成物及び前記コアに対して押し出し成形する工程を更に含む、上記(10)に記載の方法。
(12) 前記更なる層は、前記PCM組成物及び前記コアに対して押し出し成形された2つの層を含み、前記第1の層は、イオノマーとポリアミドのブレンドから作製され、且つ、前記第2の層は、グラフト化又は非グラフト化ポリプロピレンホモポリマー、グラフト化又は非グラフト化ポリプロピレンコポリマー、ペルフルオロエチレン−プロピレン、ペルフルオロアルコキシアルカン、エチレンテトラフルオロエチレン、エチレンアクリレートゴム、及びそれらの2つ以上の組合せからなる群から選択されるポリマーから作製される、上記(10)又は(11)に記載の方法。
(13) 熱管理における、上記(1)〜(9)のいずれかに記載のケーブルの使用。
(14) 自動車産業における、上記(1)〜(9)のいずれかに記載のケーブルの使用。
(15) 電気及び熱バッテリーにおける、上記(1)〜(9)のいずれかに記載のケーブルの使用。