特許第6698085号(P6698085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6698085ステロイドFXRモジュレーター製造のための中間体としての6α−アルキル−6,7−ジオン−ステロイド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6698085
(24)【登録日】2020年4月30日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】ステロイドFXRモジュレーター製造のための中間体としての6α−アルキル−6,7−ジオン−ステロイド
(51)【国際特許分類】
   C07J 9/00 20060101AFI20200518BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20200518BHJP
   A61K 31/575 20060101ALI20200518BHJP
【FI】
   C07J9/00CSP
   A61P43/00 111
   A61K31/575
【請求項の数】14
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2017-527810(P2017-527810)
(86)(22)【出願日】2015年11月19日
(65)【公表番号】特表2017-534669(P2017-534669A)
(43)【公表日】2017年11月24日
(86)【国際出願番号】GB2015053519
(87)【国際公開番号】WO2016079520
(87)【国際公開日】20160526
【審査請求日】2018年11月15日
(31)【優先権主張番号】1420593.4
(32)【優先日】2014年11月19日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1420594.2
(32)【優先日】2014年11月19日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1505675.7
(32)【優先日】2015年4月1日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517174500
【氏名又は名称】エヌゼットピー ユーケー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ウェイマウス‐ウイルソン
(72)【発明者】
【氏名】ゾフィア コムスタ
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス ボーイデル
(72)【発明者】
【氏名】ローラ ウオリス
(72)【発明者】
【氏名】カール オッター
(72)【発明者】
【氏名】イユアン デイビース
(72)【発明者】
【氏名】ロブ クラークソン
【審査官】 水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0206657(US,A1)
【文献】 特表2012−509349(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/122977(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0148428(US,A1)
【文献】 特表2008−540612(JP,A)
【文献】 Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry,2004年,Vol.68,pp.1332-1337
【文献】 The Journal of Organic Chemistry,1959年,Vol.24,pp.311-313
【文献】 FINAMORE,C. et al.,Navigation in bile acid chemical space: discovery of novel FXR and GPBAR1 ligands,Scientific Reports,2016年,Vol.6, 29320,pp.1-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07J
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)の化合物、又はそれらの塩もしくは同位体変種の製造のための方法であって:
【化1】
(式中:
R1は、ハロ、OR6又はNR6R7から選択された1以上の置換基により任意に置換されたC1-4アルキルであり;
ここで、R6及びR7の各々は、H又はC1-4アルキルから独立して選択され;
R2は、H、ハロ、又はOH又は塩基性条件下で安定している保護されたOHであり;
Y1は、結合、又は炭素原子1〜20個を有し、及び1以上の基R3により任意に置換された、アルキレンリンカー基であり;
各R3は、独立して、ハロ、OR8又はNR8R9であり;
ここで、R8及びR9の各々は、H又はC1-4アルキルから独立して選択され;並びに
R4は、C(O)OR10、OC(O)R10、C(O)NR10R11、OR10、OSi(R13)3、S(O)R10、SO2R10、OSO2R10、SO3R10、又はOSO3R10であり;
ここで、各R10及びR11は、独立して:
a. 水素、あるいは
b. そのいずれかは、ハロ、NO2、CN、OR19、SR19、SO2R19、SO3R19もしくはN(R19)2、又はそのどちらかがC1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、ハロ、NO2、CN、OR19、SR19、SO2R19、SO3R19もしくはN(R19)2により任意に置換されている6〜14-員のアリールもしくは5〜14-員のヘテロアリール基から選択された1以上の置換基により任意に置換されている、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、-O-C1-20アルキル、-O-C2-20アルケニル、又は-O-C2-20アルキニル;あるいは
c. C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、ハロ、NO2、CN、OR19、SR19、SO2R19、SO3R19もしくはN(R19)2から選択された1以上の置換基により任意に置換されている6〜14-員のアリールもしくは5〜14-員のヘテロアリール基;あるいは
d. ポリエチレングリコール残基:であり;
各R19は、H、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、又はハロ、C1-6アルキルもしくはC1-6ハロアルキルにより任意に置換されている6〜14-員のアリールもしくは5〜14-員のヘテロアリール基から、独立して選択され;
各R13は、独立して、
a. ハロ、NO2、CN、OR19、SR19、SO2R19、SO3R19もしくはN(R19)2、そのどちらかがC1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、ハロ、NO2、CN、OR19、SO2R19、SO3R19もしくはN(R19)2により任意に置換されている6〜14-員のアリールもしくは5〜14-員のヘテロアリール基から選択された1以上の置換基により任意に置換されたC1-20アルキル、C2-20アルケニル、又はC2-20アルキニル;あるいは
b. C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、ハロ、NO2、CN、OR19、SR19、SO2R19、SO3R19もしくはN(R19)2から選択された1以上の置換基により任意に置換されている6〜14-員のアリール又は5〜14-員のヘテロアリール基:であり、
各R19は、H、C1-6アルキル、又はC1-6ハロアルキルから独立して選択され;
R5bは、H又はOH又は保護されたOHである。)、
該方法は、
A. 一般式(II)の化合物:
【化2】
(式中、Y1、R1、R2及びR4は、一般式(I)について定義したものであり、並びにR5は、H又はOH又は保護されたOHである)の、塩基による処理による、エピマー化;又は
B. 一般式(I)の化合物(式中、R4はC(O)OR10である)の一般式(I)の化合物(式中、R4は、C(O)NR10R11、S(O)R10、SO2R10又はOSO2R10、SO3R10、又はOSO3R10である)への変換(ここで、R10及びR11は、一般式(I)について定義したものである)
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記一般式(I)の化合物において、R1が、エチルである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記一般式(I)の化合物において、Y1が、炭素原子1〜8個を有し、且つ1以上の基R3により任意に置換されているアルキレンリンカー基であり、ここでR3は、請求項1に定義したものである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記一般式(I)の化合物において、独立して又はいずれかの組合せにおいて:
Y1が、結合、又は炭素原子1〜3個を有し、且つ1もしくは2個の基R3により任意に置換されているアルキレン基であり;
R4が、C(O)OR10、SO3R10、又はOSO3R10であり、ここでR10は、先に定義したものであり
R5bが、H又はOHである、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
前記一般式(I)の化合物において、独立して又はいずれかの組合せにおいて:
R1が、エチルであり;及び/又は
R2が、Hであり;及び/又は
Y1が、結合、-CH2-又は-CH2CH2-であり;及び/又は
R4が、C(O)OR10であり、ここでR10は、H、C1-6アルキル又はベンジルであり;及び/又は
R5bが、Hである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記一般式(I)の化合物が、(6α, 5β)-3,7-ジオキソ-6-エチル-コラン-24-酸、及びそのC1-6アルキルエステル及びベンジルエステル並びにそれらの塩から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記一般式(II)の化合物において、R4は、C(O)OR10であり、ここでR10は、C1-6アルキル又はベンジルであり、ここで塩基は、強塩基であり、且つここでエピマー化が、加水分解を伴って、一般式(I)の化合物(式中、R4はC(O)OHである)を生じる、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
前記強塩基が、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記一般式(II)の化合物において、R2及び/又はR5は、塩基性条件下で安定している保護されたOHであり、並びに、保護基を除去する追加工程を任意に含み、一般式(I)の化合物(式中、R2及び/又はR5bはOHである)を生じる、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前記一般式(I)の化合物(式中、R4はC(O)OR10であり、ここでR10は、請求項1において定義したものである)の、一般式(II)の化合物(式中、R4は同じくC(O)OR10である)からの製造のための、請求項1〜9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
一般式(XXI)の化合物の製造方法であって:
【化3】
(式中、R1、R4及びY1は、請求項1において一般式(I)に定義したものであり:
R2は、H、ハロ、又はOHであり;並びに
R5aは、H又はOHである):
i. 請求項1において定義された一般式(I)の化合物を、還元剤を使用し還元すること、並びに、R2及び/又はR5bが、保護されたOHである場合、保護基(複数可)を除去し、先に定義した一般式(XXI)の化合物を生じること(ここで、保護基の除去は、還元の前又は後に行うことができる);並びに任意に
ii. 一般式(XXI)の化合物(式中、R4はC(O)OR10である)を一般式(XXI)の化合物(式中、R4は、C(O)R10、C(O)NR10R11、S(O)R10、SO2R10、OSO2R10、SO3R10、又はOSO3R10である)へ変換すること(ここで、R10及びR11は請求項1において定義したものである):を含む、製造方法。
【請求項12】
前記還元剤が、水素化物である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記水素化物が、水素化ホウ素ナトリウムである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記式(XXI)の化合物(式中、R1はエチルであり、R2及びR5aは両方共Hであり、Y1は-CH2CH2-であり、並びにR4はC(O)OHである)の製造のための、請求項11〜13のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬理活性を伴う胆汁酸誘導体の合成における中間体である化合物に関する。特に、本発明は、オベチコール酸及びそのアナログの合成における中間体に関する。加えて、本発明は、これらの中間体を合成する方法、並びに本発明の化合物からオベチコール酸及びオベチコール酸アナログを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
胆汁酸は、哺乳動物の胆汁中に認められるステロイド酸であり、且つコール酸、ケノデオキシコール酸、リトコール酸及びデオキシコール酸などの化合物を含み、これらは全て、ヒトにおいて認められる。多くの胆汁酸は、ヒトを含む哺乳動物の肝臓及び小腸において発現されるファルネソイドX受容体(FXR)の天然のリガンドである。
【0003】
胆汁酸は、ステロイド誘導体であり、それと同じ様式で番号付けされる。以下に、ステロイドの一般的番号付けシステム及びケノデオキシコール酸における炭素原子の番号付けを示す。
【0004】
【化1】
【0005】
FXRのアゴニストは、原発性胆汁性肝硬変及び非アルコール性脂肪性肝炎を含む、胆汁うっ滞性肝障害の治療における用途があることがわかっている(Jonkerらによる文献、Journal of Steroid Biochemistry & Molecular Biology, 2012, 130, 147-158の総説を参照されたい)。
【0006】
最初にクマの胆嚢から単離された胆汁酸であるウルソデオキシコール酸(UDCA)は、現在、胆汁うっ滞性肝障害の治療に使用されているが、これはFXRでは不活性であるように見える。
【0007】
胆汁酸及びそれらの誘導体は、それらのFXRでの作用に加え、Gタンパク質共役受容体TGR5のモジュレーターでもある。これは、Gタンパク質共役受容体のロドプシン様スーパーファミリーの一員であり、且つ胆汁酸シグナル伝達ネットワークにおける重要な役割を有し、これはFXRの役割を補完する。
【0008】
胆汁うっ滞性肝障害の治療においてFXRアゴニスト及びTGR5アゴニストは重要であるので、これらの受容体でアゴニスト活性を有する新規化合物の開発に努力が払われている。特に活性のある化合物のひとつは、オベチコール酸であり、これはFXR及びTGR5の両方の強力なアゴニストである。オベチコール酸は、WO 02/072598及びEP1568706に説明されており、これらは両方共、コール酸から誘導される7-ケトリトコール酸からのオベチコール酸の製造プロセスを説明している。オベチコール酸及びその誘導体製造の更なるプロセスは、WO 2006/122977、US 2009/0062256及びWO 2013/192097に説明されており、これらのプロセスも全て、7-ケトリトコール酸から出発している。
【0009】
オベチコール酸化合物の合成は決して簡単ではなく、及び実際に現在使用されるコール酸から出発するプロセスは、12の工程及び全体収量わずかに5〜10%を有することは、オベチコール酸製造のプロセスを示す数多くの特許公報から明らかである。
【0010】
このプロセスの非効率性及び高い経費に加え、出発材料の経費及び入手可能性の問題点も存在する。オベチコール酸製造のための現在の出発材料であるコール酸は、通常ウシ及び他の動物の食肉処理から得られる天然の胆汁酸である。このことは、コール酸及び他の胆汁酸の入手可能性は、食肉処理のために利用される家畜の数により制限されること、更には胆汁酸の価格は極めて高価であることを意味している。胆汁うっ滞性肝疾患の発生率は、世界規模で増加しているので、オベチコール酸などの合成胆汁酸の需要も恐らく増大し、且つ天然由来の胆汁酸の供給は需要を満たすのに十分であり続けるかどうかは疑わしい。
【0011】
更に、動物由来の出発材料の使用は、作業者に対し有害であるだけではなく、汚染を防止する工程がとられない場合、最終製品を汚染する可能性もある、ウイルスなどの感染性物質の汚染の可能性があることを意味している。
【0012】
胆汁うっ滞性肝疾患患者の一部は、ウルソデオキシコール酸により治療され得るが、これも、天然の胆汁酸であり、且つ限定された入手可能性及び高い経費という同じ問題点に直面している。
【0013】
本発明者らは、出発材料としての胆汁酸の使用に関連した問題点を解決することを試みて、出発材料として植物性ステロールを使用する、オベチコール酸などの合成胆汁酸誘導体の合成のプロセスを考案した。
【発明の概要】
【0014】
植物性ステロールは、胆汁酸よりも著しく低い経費で、広範に入手可能であり、且つ実際、他のプロセスの廃棄物であることが多い。本発明者らは、新規中間体を介して進行する、ビス-ノルコレノール(20-ヒドロキシメチルプレグン-4-エン-3-オンとしても公知)から出発する合成胆汁酸の調製のプロセスを開発した。
【発明を実施するための形態】
【0015】
従って、本発明において、一般式(I)の化合物、又はそれらの塩もしくは同位体変種:
【化2】
(式中:
R1は、ハロ、OR6又はNR6R7から選択された1以上の置換基により任意に置換されたC1-4アルキルであり;
ここで、R6及びR7の各々は、H又はC1-4アルキルから独立して選択され;
R2は、H、ハロ、又はOHもしくは塩基性条件下で安定した保護されたOHであり;
Y1は、結合、又は炭素原子1〜20個を有し、及び1以上の基R3により任意に置換された、アルキレンリンカー基であり;
各R3は、独立して、ハロ、OR8又はNR8R9であり;
ここで、R8及びR9の各々は、H又はC1-4アルキルから独立して選択され;並びに
R4は、C(O)OR10、OC(O)R10、C(O)NR10R11、OR10、OSi(R13)3、S(O)R10、SO2R10、OSO2R10、SO3R10、又はOSO3R10であり;
ここで、各R10及びR11は、独立して:
a. 水素、あるいは
b. そのいずれかは、ハロ、NO2、CN、OR19、SR19、SO2R19、SO3R19もしくはN(R19)2、又はそのどちらかがC1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、ハロ、NO2、CN、OR19、SR19、SO2R19、SO3R19もしくはN(R19)2により任意に置換されている6〜14-員のアリールもしくは5〜14-員のヘテロアリール基から選択された1以上の置換基により任意に置換されている、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、-O-C1-20アルキル、-O-C2-20アルケニル、又は-O-C2-20アルキニルであるか;あるいは
c. C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、ハロ、NO2、CN、OR19、SR19、SO2R19、SO3R19もしくはN(R19)2から選択された1以上の置換基により任意に置換されている6〜14-員のアリールもしくは5〜14-員のヘテロアリール基;
d. ポリエチレングリコール残基:であり;
各R19は、H、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、又は、ハロ、C1-6アルキルもしくはC1-6ハロアルキルにより任意に置換されている、6〜14-員のアリールもしくは5〜14-員のヘテロアリール基から、独立して選択され;
各R13は、独立して、
a. ハロ、NO2、CN、OR19、SR19、SO2R19、SO3R19もしくはN(R19)2;そのどちらかがC1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、ハロ、NO2、CN、OR19、SO2R19、SO3R19もしくはN(R19)2により任意に置換されている6〜14-員のアリールもしくは5〜14-員のヘテロアリール基から選択された1以上の置換基により任意に置換されたC1-20アルキル、C2-20アルケニル、又はC2-20アルキニル;あるいは
b. C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、ハロ、NO2、CN、OR19、SR19、SO2R19、SO3R19もしくはN(R19)2から選択された1以上の置換基により任意に置換されている、6〜14-員のアリールもしくは5〜14-員のヘテロアリール基:であり、
各R19は、H、C1-6アルキル、又はC1-6ハロアルキルから独立して選択され;
R5bは、H又はOH又は保護されたOHである。)が提供される。
【0016】
一般式(I)の化合物は、オベチコール酸及びその誘導体などの、医薬活性化合物の合成における中間体である。
【0017】
本明細書において、言い回し又は必要な含意を示すために文脈が別に必要とする場合を除き、語句「含む」、又は「含んでなる」もしくは「含んでいる」などの変形は、包括的意味で使用され、すなわち、本発明の様々な実施態様において、言及された特徴の存在を特定するが、更なる特徴の存在又は追加を除外することなく使用される。
【0018】
本出願において、用語「C1-20」アルキルは、炭素原子1〜20個を有する、線状又は分岐した完全に飽和された炭化水素基をいう。この用語は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル及びt-ブチルを包含している。他のアルキル基、例えば、C1-20アルキル、C1-6アルキル又はC1-3アルキルは、先に定義したものであるが、異なる数の炭素原子を含む。
【0019】
用語「C1-6ハロアルキル」は、炭素原子1〜6個を有し、且つ過ハロゲン置換まで、1個以上のハロ原子により置換された、先に定義したような線状又は分岐したアルキル基をいう。例としては、トリフルオロメチル、クロロエチル及び1,1-ジフルオロエチルが挙げられる。
【0020】
用語「C2-20アルケニル」は、炭素原子2〜20個及び少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を有する、線状又は分岐した炭化水素基をいう。例としては、エテニル、プロパ-1-エニル、ヘキサ-2-エニルなどが挙げられる。
【0021】
用語「C2-20アルキニル」は、炭素原子2〜20個及び少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を有する、線状又は分岐した炭化水素基をいう。例としては、エチニル、プロパ-1-イニル、ヘキサ-2-イニルなどが挙げられる。
【0022】
用語「アルキレン」は、線状又は分岐した完全に飽和された炭化水素鎖をいう。アルキレン基の例としては、-CH2-、-CH2CH2-、CH(CH3)-CH2-、CH2CH(CH3)-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH(CH2CH3)-及び-CH2CH(CH2CH3)CH2-が挙げられる。
【0023】
用語「アルケニレン」は、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含む、線状又は分岐した炭化水素鎖をいう。アルケニレン基の例としては、-CH=CH-、-CH=C(CH3)-、-CH2CH=CH-、-CH=CHCH2-、CH2CH2CH=CH-、CH2CH=C(CH3)-及び-CH2CH=C(CH2CH3)-が挙げられる。
【0024】
用語「アルキニレン」は、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を含む、線状又は分岐した炭化水素鎖をいう。アルケニレン基の例としては、-C≡C-、-CH2C≡C-、-C≡C-CH2-、CH2CH2C≡C-、CH2C≡CCH2-及び-CH2CH≡C-CH2CH2-が挙げられる。
【0025】
用語「アリール」及び「芳香族」は、環炭素原子6〜14個を有し(別に指定しない限りは)、且つ最大3個の環を含む、芳香族の特徴を持つ環状基をいう。アリール基が2個以上の環を含む場合は、全てではないが環は、芳香族の特徴でなければならない。例としては、フェニル、ナフチル及びアントラセニル、並びに部分的に飽和された系、例えばテトラヒドロナフチル、インダニル及びインデニルが挙げられる。
【0026】
用語「ヘテロアリール」及び「ヘテロ芳香族」は、環原子5〜14個を有し(別に指定しない限りは)、その少なくとも1個はN、O及びSから選択されたヘテロ原子であり、且つ最大3個の環を含む、芳香族の特徴を持つ環状基をいう。ヘテロアリール基が2個以上の環を含む場合は、全てではないが環は、特徴が芳香族でなければならない。ヘテロアリール基の例としては、ピリジン、ピリミジン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾイミダゾール及びインドレンが挙げられる。
【0027】
用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素をいい、並びに用語「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード基をいう。
【0028】
用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素をいい、並びに用語「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード基をいう。
【0029】
用語「保護されたOH」は、任意の好適な保護基により保護されたOH基に関連している。例えば、保護されたOHは、先に定義したような基R4であってよい。
【0030】
好適な保護基は、例えば、R2及び/又はR5が保護されたOHである場合、R2及び/又はR5は独立して、基OC(O)R14であり、ここでR14は先に定義したような基R10であるような、エステルを含む。シリルエーテルも適しており、この場合、R2及び/又はR5は独立して基OSi(R16)3であり、ここで各R16は独立して先に定義したような基R13である。
【0031】
OHに関する他の好適な保護基は、当業者に周知である(Wuts, PGM及びGreene, TWの文献、(2006)、「Greenの有機合成における保護基(Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis)」、第4版、John Wiley & Sons社、ホーボーケン、NJ、米国参照)。
【0032】
塩基性条件において安定しているという保護基の言及は、この保護基は、塩基による処理で除去することができないことを意味している。
【0033】
一般式(I)の化合物の好適な塩は、Paulekuhnらの文献、J. Med. Chem. 2007, 50, 6665-6672においてまとめられているか及び/又は当業者に公知であるように、塩基付加塩であり、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム及び他の金属の塩、並びにコリン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、エチルジアミン、メグルミン及び他の周知の塩基付加塩である。
【0034】
いくつかの好適な一般式(I)の化合物又はそれらの塩において:
R1は、ハロ、OR6又はNR6R7から選択された1以上の置換基により任意に置換されたC1-4アルキルであり;
ここで、R6及びR7の各々は、H又はC1-4アルキルから独立して選択され;
R2は、H、ハロ、又はOHであり;
Y1は、結合、又は炭素原子1〜6個を有し、且つ1以上の基R3により任意に置換されているアルキレンリンカー基であり;
各R3は、独立して、ハロ、OR8又はNR8R9であり;
ここで、R8及びR9の各々は、H又はC1-4アルキルから、独立して選択され;並びに
R4は、C(O)OR10、C(O)NR10R11、S(O)R10、SO2R10、OSO2R10、SO3R10、又はOSO3R10であり:
ここで、各R10は、水素、又はそのどちらかは1以上のハロ置換基により任意に置換され得るC1-6アルキル又はベンジルであり、並びにR11は、水素、又はそのいずれかは1以上のハロ置換基により任意に置換され得るC1-6アルキル、ベンジル、-C1-4アルキレン-SO3Hもしくは-C1-4アルキレン-SO3(C1-4アルキル)であり;
R5bは、H又はOHである。
【0035】
好適な一般式(I)の化合物において、R1は、ハロ、OR6又はNR6R7から選択された1以上の置換基により任意に置換されたC1-4アルキルであってよく、ここでR6及びR7は各々独立して、H、メチル又はエチル、特にH又はメチルである。
【0036】
より好適には、R1は、非置換のC1-4アルキルである。
【0037】
特に好適な化合物において、R1はエチルである。
【0038】
いくつかの一般式(I)の化合物において、Y1は結合である。
【0039】
好適には一般式(I)の化合物において、Y1は、炭素原子1〜15個、より好適には炭素原子1〜12個、1〜10個又は1〜8個を有し、及び先に定義したように1以上の基R3により任意に置換された、アルキレンリンカー基である。典型的には、各R3は独立して、ハロ、OR8又はNR8R9であり;ここで、R8及びR9の各々は、H、メチル又はエチルから、特にH又はメチルから、独立して選択される。
【0040】
いくつかの好適な化合物において、Y1は、炭素原子1〜15個、より好適には炭素原子1〜12個、1〜10個又は1〜8個を有する、非置換のアルキレンリンカーである。
【0041】
いくつかの好適な一般式(I)の化合物において、R2は、Hである。
【0042】
他の好適な一般式(I)の化合物において、R2はOHである。
【0043】
更に別の好適な一般式(I)の化合物において、R2は、保護されたOH基である。R2が保護されたOH基である場合、これは、塩基性環境において、安定している基である。かかる基の例は、当該技術分野において周知であり、且つ先に定義したような基OSi(R16)3を含み、ここで各R16は、先に定義したような基R13である。
【0044】
一般式の化合物において、R4は、C(O)OR10、OC(O)R10、C(O)NR10R11、OR10、OSi(R13)3、S(O)R10、SO2R10、OSO2R10、SO3R10、又はOSO3R10である。
【0045】
好適には、これは、C(O)OR10、OR10、SO3R10、又はOSO3R10である。
【0046】
より好適には、R4は、C(O)OR10、SO3R10、又はOSO3R10である。
【0047】
好適には、各R10及びR11は、独立して:
a. 水素、あるいは
b. そのいずれかは、先に説明したように1以上の置換基により任意に置換されている、C1-10アルキル、C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、-O-C1-10アルキル、-O-C2-10アルケニル、又は-O-C2-10アルキニル;あるいは
c. 先に説明したように1以上の置換基により任意に置換された、6〜10-員のアリールもしくは5〜10-員のヘテロアリール基;
d. ポリエチレングリコール残基:である。
【0048】
より好適には、各R10及びR11は、独立して:
a. 水素、あるいは
b. 先に説明したように1以上の置換基により任意に置換された、C1-10アルキル、C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、又は-O-C1-10アルキル;あるいは
c. 先に説明したように1以上の置換基により任意に置換された、6〜10-員のアリール基:である。
【0049】
好適には、各R13は、独立して:
a. 先に説明したように1以上の置換基により任意に置換された、C1-10アルキル、C2-10アルケニル、又はC2-10アルキニル;あるいは
b. 先に説明したように1以上の置換基により任意に置換された、6〜10-員のアリールもしくは5〜10-員のヘテロアリール基:から選択される。
【0050】
より好適には、各R13は、独立して:
a. 先に説明したように1以上の置換基により任意に置換された、C1-10アルキル、C2-10アルケニル、又はC2-10アルキニル;あるいは
b. 先に説明したように1以上の置換基により任意に置換された、6〜10-員のアリール基:から選択される。
【0051】
更により好適には、各R13は、独立して、そのどちらかが、先に説明したように任意に置換されている、C1-10アルキル又はフェニルから選択される。
【0052】
アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルケニルオキシ及びアルキニルオキシのR10及びR11基、並びにアルキル、アルケニル及びアルキニルのR13基に関する好適な置換基は、ハロ、NO2、CN、OR19、SR19、SO2R19、SO3R19もしくはN(R19)2、又はそのどちらかがC1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、ハロ、NO2、CN、OR19、SO2R19、SO3R19又はN(R19)2により任意に置換されている6〜10-員のアリールもしくは5〜14-員のヘテロアリール基を含み;ここで、R19は先に定義したものである。
【0053】
これらのR10、R11及びR13基に関するより好適な置換基は、ハロ、OR19、N(R19)2、又は先に説明したように任意に置換された、より好適にはハロ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、-O-C1-4アルキル、-O-C1-4ハロアルキル、-NH(C1-4アルキル)もしくは-N(C1-4アルキル)2;例えば、フルオロ、クロロ、メチル、エチル、トリフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、トリフルオロメトキシ、アミノ、メチルアミノ及びジメチルアミノにより任意に置換された、6〜10-員のアリール基を含む。
【0054】
アリール及びヘテロアリールのR10、R11及びR13基に関する好適な置換基は、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、ハロ、NO2、CN、OR19、SR19又はN(R19)2を含む。
【0055】
これらのR10、R11及びR13基に関するより好適な置換基は、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、ハロ、OR19又はN(R19)2を含み;特に、ハロ、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、-O-C1-4アルキル、-O-C1-4ハロアルキル、-NH(C1-4アルキル)又は-N(C1-4アルキル)2を含む。
【0056】
アリール及びヘテロアリールのR10、R11及びR13基に関する置換基の具体例は、フルオロ、クロロ、メチル、エチル、トリフルオロメチル、メトキシ、エトキシ、トリフルオロメトキシ、アミノ、メチルアミノ及びジメチルアミノを含む。
【0057】
先に述べたように、各R19は、H、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、又は1以上のハロ、C1-6アルキルもしくはC1-6ハロアルキル置換基により任意に置換された6〜14-員のアリールもしくは5〜14-員のヘテロアリール基から、独立して選択される。
【0058】
好適には、R19は、H、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、又は1以上のハロ、C1-4アルキルもしくはC1-4ハロアルキル置換基により任意に置換された、6〜10-員のアリールもしくは5〜10-員のヘテロアリール基である。
【0059】
より好適には、R19は、H、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、又は1以上のハロ、C1-4アルキルもしくはC1-4ハロアルキル置換基により任意に置換されたフェニルである。
【0060】
R19の具体例は、H、メチル、エチル、トリフルオロメチル、又は1以上のフルオロ、クロロ、メチル、エチルもしくはトリフルオロメチル基により任意に置換されたフェニルを含む。
【0061】
いくつかの好適な一般式(I)の化合物において、R5bはHである。
【0062】
他の好適な一般式(I)の化合物において、R5bはOHである。
【0063】
更に他の好適な一般式(I)の化合物において、R5bは、保護されたOH基である。
【0064】
更に他の好適な一般式(I)の化合物において、R5bは、保護されたOH基である。R2が保護されたOH基である場合、これは、塩基性環境において安定している基である。かかる基の例としては、OSi(R16R17R18)が挙げられ、ここでR16、R17及びR19は、各々独立して先に定義したものであるが、より好適にはC1-10アルキル又はC6-10アリールである。
【0065】
好適には一般式(I)の化合物において、Y1は、炭素原子1〜6個を有し、及び1以上の基R3により任意に置換された、アルキレンリンカー基である。典型的には、各R3は独立して、ハロ、OR8又はNR8R9であり;ここで、R8及びR9の各々は、H、メチル又はエチルから、特にH又はメチルから、独立して選択される。
【0066】
いくつかの好適な一般式(I)の化合物において、独立して又はいずれかの組合せにおいて:
Y1は、結合、又は炭素原子1〜3個を有し、且つ1又は2個のR3基により任意に置換されているアルキレン基であり;
R4は、C(O)OR10、SO3R10、又はOSO3R10であり、ここでR10は、先に定義したものであるが、より好適にはH、C1-6アルキル又はベンジルであり;並びに
R5bは、H又はOHである。
【0067】
いくつかのより好適な化合物において、独立して又はいずれかの組合せにおいて:
R1は、エチルであり;及び/又は
R2は、Hであり;及び/又は
Y1は、結合、-CH2-又は-CH2CH2-であり;及び/又は
R4は、C(O)OR10であり、ここでR10は、H、C1-6アルキルもしくはベンジルであり;及び/又は
R5bは、Hである。
【0068】
いくつかの特に好適なこの型の化合物において、R1はエチルであり、及び/又はR10は、C1-6アルキル又はベンジルである。
【0069】
特に好適な本発明の化合物は:
(6α, 5β)-3,7-ジオキソ-6-エチル-コラン-24-酸、並びにそれらのC1-6アルキルエステル及びベンジルエステル、並びにそれらの塩、特にメチルエステル及びエチルエステルである。
【0070】
一般式(I)の化合物は、一般式(II)の化合物:
【化3】
(式中、Y1、R1、R2、及びR4は、一般式(I)に定義したものであり、並びにR5は、H又はOH又は保護されたOHである);
のエピマー化により、調製することができる。
【0071】
いくつかの好適な一般式(II)の化合物において、R5はHである。
【0072】
別の好適な一般式(II)の化合物において、R5はOHである。
【0073】
更に別の好適な一般式(II)の化合物において、R5は保護されたOH基である。
【0074】
R5が保護されたOH基である場合、これは、塩基性環境中で安定していない基であってよく、結果的に塩基による処理により、保護されたOH基はOHへ変換される。かかる基の例は、当該技術分野において周知であり、且つ先に定義したような基OC(O)R14(式中、R14は、一般式(I)について先に定義したような、基R10である)を含む。
【0075】
特に適しているR14基は、先にR10について定義されているものである。
【0076】
あるいは、R5は、塩基性環境中で安定している、保護されたOH基であることができる。かかる基の例は、OSi(R16)3を含み、ここで各R16は、独立して先に定義したような基R13である。
【0077】
エピマー化反応は、好適には、一般式(II)の化合物の塩基による処理を含む。一般式(II)の化合物は、任意に水と混合された、アルコール系溶媒中に溶解され、且つ塩基、例えば、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム、又はナトリウムもしくはカリウムアルコキシド、典型的にはエトキシドと接触されてよい。
【0078】
一般式(II)の化合物(式中、R4はC(O)OR10であり、ここでR10はC1-6アルキル又はベンジルである)で、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムなどの強塩基が使用される場合、エピマー化反応は、加水分解を伴って、一般式(I)の化合物(式中、R4はC(O)OHである)を生じることができる。
【0079】
一般式(II)の化合物において、R2及び/又はR5が、保護されたOH、例えば基OC(O)OR14(式中、R14は先に定義したものであるが、特にC1-6アルキル又はベンジルである)場合、これは、エピマー化反応の間に除去され、一般式(I)の化合物(式中、R2及び/又はR5bはOHである)を生じる。塩基性条件で安定している他の保護されたOH基(例えば、基OSi(R16)3(式中、各R16は独立して先に定義されているが、特にC1-6アルキル又はフェニルである)は、引き続き除去され、一般式(I)の化合物(式中、R5bはOHである)を生じることができる。
【0080】
本方法は特に、一般式(I)の化合物(式中、R4はC(O)OR10である)の、一般式(II)の化合物(式中、R4は同じくC(O)OR10である)からの調製に適しており、ここでR10は、先に定義したものであるが、特にH、C1-6アルキル又はベンジルである。
【0081】
あるいは、式(I)の化合物は、他の一般式(I)の化合物から調製することができる。例えば、一般式(I)の化合物(式中、R4は、C(O)OR10である)は、一般式(I)の化合物(式中、R4は、C(O)NR10R11、S(O)R10、SO2R10、OSO2R10、SO3R10、又はOSO3R10である)へ変換することができる。
【0082】
一般式(I)の化合物(式中、R4はSO3R10である)は、一般式(I)の化合物(式中、R4はC(O)OHである)から、WO2008/002573、WO2010/014836及びWO2014/066819に示された方法により、合成することができる。
【0083】
従って、式(I)の化合物(式中、R4はC(O)OHである)は、C1-6アルカノイルもしくはベンゾイルクロリドと、あるいはC1-6アルカン酸無水物と反応させ、OH基を保護することができる。保護された化合物は次に、カルボン酸基をOHへ還元するために、水素化物、好適には水素化リチウムアルミニウム又は水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤と、反応させることができる。アルコール基は、Classonらの文献、J. Org. Chem., 1988, 53, 6126-6130に説明された、トリフェニルホスフィン/イミダゾール/ハロゲン法を使用し、例えば臭素又はヨウ素などのハロゲンにより置き換えることができる。ハロゲン化された化合物は次に、アルコール系溶媒中で亜硫酸ナトリウムと反応させて、SO3- Na+ 置換基を持つ化合物を生じることができる。
【0084】
一般式(I)の化合物(式中、R4はOSO3R10である)は、保護されたトリエチルアンモニウム塩を生じるための、トリエチルアミンなどの塩基の存在下での、クロロ硫酸による、先に説明したような保護されたカルボン酸の還元から得られたアルコールとの反応により得ることができる。保護基は、先に説明したように塩基の加水分解を使用し、除去することができる。カルボン酸の還元、それに続く得られたアルコールのクロロ硫酸との反応は、一般式(I)の化合物(式中、R4はOSO2R10である)を生じる。
【0085】
一般式(I)の化合物(式中、R4はC(O)NR10R11である)は、カルボン酸から、好適な溶媒中加熱しながらの、式H-NR10R11のアミンとの反応により調製することができる。一般式(I)の化合物(式中、R4はC(O)NR10R11又はOSO3R10である)はまた、Festaらの文献、J. Med. Chem., 2014, 57, 8477-8495に説明された方法と類似の方法によっても調製することができる。
【0086】
他のR4基を持つ一般式(I)の化合物は、先の一般式(I)の化合物から、当業者が熟知する方法により、調製することができる。これらの方法も、本発明の態様を形成している。
【0087】
一般式(II)の化合物は、一般式(III)の化合物:
【化4】
(式中、Y1、R1、R2、及びR4は、一般式(I)に定義したものであり、並びにR5は、一般式(II)について定義したものである)から、酸化により調製することができる。
【0088】
酸化反応は、いずれか好適な方法を用い実行することができる。ひとつの好適な方法は、デス-マーチンペルヨージナン(1,1,1-トリアセトキシ-1,1-ジヒドロ-1,2-ベンゾヨードキソール)酸化であり、これは、クロロホルム又はジクロロメタンなどの塩素化された溶媒中で、温度約15〜25℃、好適には室温で実行することができる。
【0089】
代替の酸化方法は、例えば酢酸によりもたらされるような酸性条件下での、ヒポクロリット、例えば、ナトリウムヒポクロリットを使用する酸化である。この反応は、水性溶媒中で、温度0〜15℃で、より通常には約0〜10℃で実行することができる。
【0090】
他の酸化方法は、希硫酸中の二クロム酸ナトリウム、もしくはより通常には三酸化クロムを使用する、ジョーンズ反応を含む。このプロセスは、胆汁酸ヒドロキシル基の対応するケト誘導体への汚染のない(clean)変換について信頼できるものであることがわかっている(Bortoliniらの文献、J. Org. Chem., 2002, 67, 5802)。代わりの酸化は、TEMPO((2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-1-イル)オキシ)又はその誘導体を用いて実行することができる。
【0091】
本方法は特に、一般式(II)の化合物(式中、R4はC(O)OR10である)の、一般式(III)の化合物(式中、R4は同じくC(O)OR10である)からの調製に適しており、ここでR10は、先に定義したものであるが、特にH、C1-6アルキル又はベンジルである。
【0092】
一般式(III)の化合物は、一般式(IV)の化合物:
【化5】
(式中、R1、R2、R4は、一般式(I)に定義したものであり、並びにR5は、一般式(II)について定義したものであり;並びに
Yは、結合、又は、炭素原子1〜6個を有し、及び1以上の基R3により任意に置換された、アルキレンもしくはアルケニレンリンカー基であり、ここでR3は、一般式(I)について先に定義したものである)から、還元により調製することができる。
【0093】
この還元は、水素化、通常接触水素化であってよい。接触水素化のために好適な触媒は、パラジウム/炭素、パラジウム/炭酸カルシウム、パラジウム/酸化アルミニウム、白金/パラジウム又はラネーニッケル触媒を含む。この反応は、有機溶媒中で実行することができ、これは、メタノール、エタノール又はイソプロパノールなどのアルコール系溶媒;酢酸エチル;ピリジン;酢酸;シクロペンチルメチルエーテル(CPME)又はN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)であってよい。この有機溶媒は、任意に、アセトン又は水などの共溶媒と混合することができるか、及び/又はトリエチルアミンなどの塩基を添加することもできる。
【0094】
触媒及び溶媒の選択は、必要とされる一般式(III)の生成物:
【化6】
のその一般式(XXX)の異性体:
【化7】
に対する比に影響を及ぼす。
【0095】
同じく、これは、式(XXXI)の中間体:
【化8】
の生成物への変換率にも影響を及ぼす。
【0096】
より好適には、パラジウム/炭素、又はパラジウム/炭酸カルシウム触媒が、使用される。典型的には、この触媒中に、パラジウムは、マトリクス(ここで、マトリクスは、炭素、炭酸カルシウムなどである)の重量に対し、5〜10重量%の量で存在する。
【0097】
(III):(XXX)の優れた比をもたらす溶媒には、メタノール、エタノール及びDMF、特にメタノール及びDMFがある。
【0098】
メタノールが溶媒として使用される場合は、これは、単独で、又はトリエチルアミンなどの塩基の存在下で使用することができる。好適には、使用されるトリエチルアミンの量は、化学量論的な量を下回る量、典型的には一般式(IV)の出発材料の量に関して0.1〜0.5当量である。
【0099】
トリエチルアミンの存在下のメタノールは、一般式(III)の必要とされる生成物の一般式(XXX)の異性体に対する特に高い比を生じる。
【0100】
溶媒としてのメタノールにより実施される反応は、温度約−30〜25℃で実行されてよく、且つこの温度は、(III):(XXX)の比にほとんど影響を及ぼさない。
【0101】
溶媒としてDMFが使用される場合は、これは、アセトン、TBME、THF、アセトニトリル、又はアセトン/水などの共溶媒と混合することができる。任意に、この溶媒は、トリエチルアミンなどの塩基を、化学量論的な量を下回る量、典型的には一般式(IV)の出発材料の量に関して0.1〜0.5当量で含む。
【0102】
溶媒としてDMFを用いて実施される反応は、メタノール中で実行される反応よりも、温度に対してより感受性があるように見え、且つ(III):(XXX)の比は、温度の上昇により減少する。好適には、従ってこの反応は、温度−30〜0℃で、より好適には−20〜−10℃で実行される。
【0103】
水素圧は、その選択性にほとんど影響を及ぼさず、従って水素圧は約1気圧が適していることがわかっている。
【0104】
同様に希釈は、その選択性に大きな影響を持つようには見えず、従って溶媒は、いずれか好都合な量で使用することができる。
【0105】
式(IV)の化合物の水素化はまた、リンカーYにおいて、存在するならば、任意のアルケン結合も還元するであろう。
【0106】
一般式(IV)の化合物は、一般式(V)の化合物:
【化9】
(式中、R2及びR4は一般式(I)に定義したものであり、R5は一般式(II)に定義したものであり、並びにYは一般式(IV)に定義したものである)から、有機金属試薬による選択的アルキル化により、調製することができる。
【0107】
好適な有機金属試薬は、式(XXIV)のアルキルリチウム化合物:
R1-Li (XXIV)
(式中、R1は、一般式(I)に定義したものである);
と、銅(I)塩、特にヨウ化銅(I)などの、ハロゲン化銅(I)の反応により形成された、ギルマン試薬を含む。
【0108】
この反応は、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどの他のエーテル、又はそれらの混合物などの有機溶媒中で実行されてよい。
【0109】
あるいは、添加は、グリニャール試薬R1MgX(式中、R1は、一般式(I)に定義したものであり、及びXは、例えば臭化エチルマグネシウムなどの、ハロゲン化物である)を用いて実行することができ、並びにこの反応は好適には、例えば塩化亜鉛などの亜鉛(II)塩、及び触媒量の銅(I)又は銅(II)塩又は錯体、例えば、塩化第一銅、塩化第二銅、又は銅(I)もしくは銅(II)とアセチルアセトネート(acac)の錯体の存在下で実行される。
【0110】
この反応は、有機溶媒中で、例えば、THF、2-メチルTHF、メチルtert-ブチルエーテル(tBME)、ジエチルエーテルなどのエーテルの中で実行されてよい。驚くべきことに、反応温度は、特に重要ではなく、場合によっては、この反応は、低温、例えば約−25〜0℃で実行されてよいが、最高約55℃の比較的高い温度でも、うまく実行される。
【0111】
式(V)の化合物から式(IV)の化合物を調製するプロセスは、新規であり、且つそれ自身本発明の一部を形成している。
【0112】
この方法は、一般式(IV)の化合物(式中、R4はC(O)OR10である)の、一般式(V)の化合物(式中、同じくR4はC(O)OR10であり、ここでR10は、先に定義したものであるが、特にH、C1-6アルキル又はベンジルである)からの調製に特に適している。
【0113】
一般式(V)の化合物は、式(VI)の化合物:
【化10】
(式中、R2及びR4は、一般式(I)に定義したものであり、R5は一般式(II)に定義したものであり、並びにYは一般式(IV)に定義したものである);
から、例えば、モノペルオキシフタル酸エステル(MMPP)又は3-クロロペルオキシ安息香酸(mCPBA)を使用する酸化により、調製することができる。
【0114】
MMPPを使用する反応は、酢酸エチルなどの有機溶媒中で実行されてよく、並びにmCPBAが使用される場合、この反応は、ジクロロメタン又はトルエンなどの溶媒中で実行されてよい。好適には、この反応は、この溶媒の還流温度で又はその少し低い温度で実行される。
【0115】
一般式(VI)の化合物は、一般式(VII)の化合物:
【化11】
(式中、R2及びR4は一般式(I)に定義したものであり、R5は一般式(II)に定義したものであり、並びにYは、一般式(IV)に定義したものである);
から、クロルアニルなどの酸化剤との反応により、調製することができる。
【0116】
この反応は、酸性条件下、例えば酢酸の存在下、及びトルエンなどの有機溶媒中で実行することができる。
【0117】
一般式(V)、(VI)及び(VII)の化合物のいくつかは、公知であり、且つ例えば、Uekawaらの文献、Biosci. Biotechnol. Biochem., 2004, 68, 1332-1337は、スチグマステロールからの(22E)-3-オキソ-4,22-コラジエン-24-酸エチルエステルの合成、それに続く下記式を有する、(22E)-3-オキソ-4,6,22-コラトリエン-24-酸エチルエステルへのその変換を説明している:
【化12】
【0118】
その後Uekawaらは続けて、この化合物の、(6α, 7α, 22E)-6,7エポキシ-3-オキソ-4,22-コラジエン-24-酸エチルエステルへの変換を説明し、これは一般式(V)の化合物(式中、R2及びR5はHであり、Yは-CH=CH-であり、並びにR4はC(O)OCH2CH3である)である。
【0119】
他の一般式(V)、(VI)及び(VII)の化合物は、スチグマステロールに類似しているフィトステロールから類似の方法により調製することができる。
【0120】
スチグマステロール及び他のフィトステロールは、植物性ステロールであり、且つ容易に入手可能であるか、又は公知の経路により調製することができる。
【0121】
一般式(VII)の化合物はまた、一般式(VIIIa)の化合物:
【化13】
(式中、R2及びR4は、一般式(I)に定義したものであり、R5は一般式(II)に定義したものであり、並びにYは、一般式(IV)に定義したものである)から、臭化リチウム及び炭酸リチウムなどの塩基との反応により、調製することができる。この反応は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)などの溶媒中で、温度約120〜180℃で実行することができる。
【0122】
一般式(VIIIa)の化合物は、一般式(VIII)の化合物:
【化14】
(式中、R2及びR4は、一般式(I)に定義したものであり、R5は一般式(II)に定義したものであり、並びにYは、一般式(IV)に定義したものである)の、例えば、酢酸中の臭素を使用する臭素化により得ることができる。
【0123】
一般式(VIII)の化合物は、一般式(IX)の化合物:
【化15】
(式中、R2及びR4は一般式(I)に定義したものであり、R5は一般式(II)に定義したものであり、並びにYは、一般式(IV)に定義したものである)から、典型的にはクロム-ベースの酸化剤による、又はナトリウムヒポクロリットによる酸化により、調製することができる。
【0124】
一般式(IX)の化合物(式中、R4はC(O)OR10であり、ここでR10はC1-6アルキル又はベンジルである)は、一般式(IX)の化合物(式中、R4はC(O)OHである)から、エステル化、典型的には酸性条件下での好適なアルコールとの反応により、調製することができる。
【0125】
一般式(IX)の化合物(式中、R4はC(O)OHであり、及びR5はHである)は、一般式(X)の化合物:
【化16】
(式中、R2、一般式(I)に定義したものであり、かつYは、一般式(IV)に定義したものであり
R4はC(O)OR10であり、ここでR10はC1-6アルキル又はベンジルであり;並びに
R12は保護されたOHである)から、塩基性条件下、及びアルコール系又はグリコール系の溶媒、例えば、ジエチレングリコール中で、還元剤、典型的にはヒドラジンとの反応により、調製することができる。
【0126】
R12が塩基性条件下で安定である保護されたOH基である場合、この反応には、OH基が残るように、保護基R12を除去する反応が続くことができる。
【0127】
OHの保護基は、先に考察されており、且つ例えば、R12は、基C(O)R14であることができ、ここでR14は先に定義したものであり、特に、C1-6アルキル又はベンジルである。シリルエーテルもまた適しており、且つこの場合、R2及び/又はR5は独立して、基Si(R16)3であり、ここでR16は先に定義したものであるが、しかし特にC1-6アルキル又はフェニルである。OHに関する他の好適な保護基は、当業者に周知である(Wuts, PGM及びGreene, TWの文献、(2006)、「Greeneの有機合成における保護基」、第4版、John Wiley & Sons社、ホーボーケン、NJ、米国を参照されたい)。
【0128】
特に好適なR12基は、塩基の存在下で安定していない基を含み、その理由はこれは、保護基を除去する追加の工程が必要ないからである。塩基性条件で安定していない基R12の例は、基C(O)R14であり、ここでR14は先に定義されており、且つ特にC1-6アルキル又はベンジルである。
【0129】
あるいは、この反応は、一般式(X)の化合物を、一般式(XXXII)の化合物:
R20-NH-NH2 (XXXII)
(式中、R20は、トルエンスルホニル又はメタンスルホニルなどの脱離基である)と反応させ、一般式(XXXIII)の化合物:
【化17】
を生じ、それに続けて好適な還元剤により還元する、2工程で実行することができる。この反応で使用することができる還元剤の例は、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウムなどの水素化物を含む。
【0130】
一般式(X)の化合物は、一般式(XI)の化合物:
【化18】
(式中、R2は、一般式(I)に定義したものであり、並びに、Yは一般式(IV)に定義したものであり;
R4はC(O)OR10であり、ここでR10はC1-6アルキル又はベンジルであり;並びに
R12は、先に定義したもの、特に-C(O)C1-6アルキルである)から、酸化剤、例えば、ナトリウムヒポクロリットとの反応により調製することができる。この反応は、酸性条件下で、例えば、酢酸の存在下で、酢酸エチルなどの有機溶媒中で、実行することができる。
【0131】
一般式(XI)の化合物は、一般式(XII)の化合物:
【化19】
(式中、R2は、一般式(I)に定義したものであり、並びに、Yは一般式(IV)に定義したものであり;
R4は、C(O)OR10であり、ここでR10はC1-6アルキル又はベンジルである)から、保護基R12の導入に適した試薬との反応により、調製することができる。例えばR12がC(O)R14である場合、一般式(XII)の化合物は、カルボン酸無水物又は酸クロリドと、ピリジンなどの弱塩基の存在下で、好適には4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)により触媒され、反応することができる。この反応は、酢酸エチルなどの溶媒中で実行することができる。
【0132】
一般式(XII)の化合物は、一般式(XIII)の化合物:
【化20】
(式中、R2は、一般式(I)に定義したものであり、並びに、Yは一般式(IV)に定義したものである)のエステル化により調製することができる。
【0133】
この反応は、一般式(XIII)の酸を、酸性条件下で好適なアルコールと反応することにより、実行することができる。
【0134】
一般式(XIII)の化合物は公知である。例えば、Yが-CH2CH2-であり、及びR2がHである一般式(XIII)の化合物は、デオキシコール酸であり、これは多くの供給業者から容易に入手することができる。
【0135】
Y及びR2の異なる値を伴う他の胆汁酸を、代わりの出発材料として使用することができる。
【0136】
一般式(VII)の化合物への代替経路は、スキーム1に示しており、ここでアンドロステンジオンは、一般式(V)の化合物(式中、R2及びR5はHであり;R4は-C(O)OCH3であり、及びYは-CH2CH2-又は-CH=CH-のいずれかである)へ変換される。
【0137】
(スキーム1)
【化21】
【0138】
一般式(VI)の化合物(式中、Yはアルケニレン基である)への代替経路は、オレフィン化反応の使用、例えば、一般式(XIV)の化合物:
【化22】
(式中、R2は一般式(I)について定義したものであり、及びR5は一般式(II)について定義したものである);
の、一般式(XV)の化合物:
【化23】
(式中、R10は、一般式(I)について定義したものである)
を使用する、ホーナー・ワズワース・エモンス(HWE)オレフィン化の使用による。
【0139】
この反応は、標準のHWE条件下、例えば、水素化ナトリウムなどの塩基を使用し、実行することができる。
【0140】
一般式(XV)の化合物は、容易に入手可能であるか、又は当業者に公知の方法により調製することができる。
【0141】
テッベオレフィン化、ウィティッヒ反応又はジュリア・コシエンスキーオレフィン化などの、他のオレフィン化反応も、一般式(VI)の化合物(式中、Yはアルケニレン基である)を生じるであろう。これらのオレフィン化反応は、当該技術分野の化学者は熟知している。
【0142】
一般式(XIV)の化合物は、一般式(XVI)の化合物:
【化24】
(式中、R2は一般式(I)に定義したものであり、R5は一般式(II)に定義したものであり、且つR15はC1-6アルキルである)の、オゾンとの反応により調製することができる。
【0143】
この種の反応の例は、US 2,624,748に開示されている。
【0144】
一般式(XVI)の化合物は、一般式(XVII)の化合物:
【化25】
(式中、R2は一般式(I)に定義したものであり、R5は一般式(II)に定義したものであり、且つR15はC1-6アルキルである)の、メタノールなどの溶媒中での、酸との反応により調製することができる。
【0145】
一般式(XVII)の化合物は、一般式(XVIII)の化合物:
【化26】
(式中、R2及びR5は、一般式(I)に定義したものであり、且つR15はC1-6アルキルである)の、オッペンナウアー酸化を使用する、酸化により調製することができる。
【0146】
一般式(XVIII)の化合物から一般式(XVI)の化合物への変換の例は、Shepherdらの文献、J. Am. Chem. Soc. 1955, 77, 1212-1215及びGoldsteinの文献、J. Med. Chem. 1996, 39, 5092-5099に記載されている。
【0147】
一般式(XVIII)の化合物の一例は、エルゴステロールであり、これは真菌のステロールであり、且つ下記スキーム2は、エルゴステロールの、一般式(VI)の化合物(式中、R2及びR5は両方ともHであり、YはCH=CH2であり、並びにR4はC(O)OR10であり、ここでR10はエチルである)への変換を示している。
【0148】
(スキーム2)
【化27】
【0149】
一般式(I)の化合物のように、一般式(II)から(XIII)、(VIIIa)及び(XXXIII)の化合物(式中、R4は、C(O)R10、C(O)NR10R11、S(O)R10、SO3R10、又はOSO3R10である)は、当業者に周知の方法を用い、好適な試薬との反応により、対応する化合物(式中、R4はC(O)OR10である)から、調製することができる。例えば、これらの方法は、WO2008/002573及びWO2010/014836、又はClassonらの文献、J. Org. Chem., 1988, 53, 6126-6130、及びFestaらの文献、J. Med. Chem., 2014, 57, 8477-8495に説明された方法に類似した方法に説明された。
【0150】
一般式(I)の化合物は、一般式(XXI)の化合物:
【化28】
(式中、R1、R4及びY1は、一般式(I)に定義したものであり;
R2は、H、ハロ、又はOHであり;並びに
R5aは、H又はOHである)の合成前駆体である。
【0151】
一般式(I)の化合物は、それ自身本発明の一部である、以下に説明するような一般式(XXI)の化合物へ、変換することができる。
【0152】
従って、本発明の更なる態様において、一般式(XXI)の化合物の調製のプロセスが提供され、このプロセスは:
i. 一般式(I)の化合物を、好適な還元剤を使用し還元し、並びにR2及び/又はR5bが保護されたOHである場合、この保護基(複数可)を除去し、先に定義したような一般式(XXI)の化合物を生じ、ここで保護基の除去は、還元の前又は後に行うことができること:並びに任意に
iii. 一般式(XXI)の化合物を別の一般式(XXI)の化合物へ変換すること:を含む。
【0153】
一般式(XXI)の化合物は、FXR及びTGR5の強力なアゴニストであり、且つ式(XXI)の化合物(式中、R1はエチルであり、R2及びR5aは両方共Hであり、Y1は-CH2CH2-であり、並びにR4はC(O)OHである)であるオベチコール酸を含む。
【0154】
一般式(XXI)の化合物において、Y1、R1及びR4についてより適した値は、一般式(I)について定義したものである。
【0155】
還元剤は典型的には、テトラヒドロフランと水の混合物などの溶媒中で使用することができる、水素化ホウ素ナトリウムなどの水素化物である。典型的には、この反応は、塩基性条件下、例えば水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムなどの強塩基の存在下などで、温度約0〜110℃、より通常には60〜100℃で実行することができる。一般式(XXI)の化合物(式中、R4はC(O)OHである)は、一般式(I)の化合物(式中、R4はC(O)OHである)の還元により生成することができる。
【0156】
一般式(XXI)の化合物(式中、R4は、C(O)R10、C(O)NR10R11、S(O)R10、SO2R10、又はOSO2R10である)は、対応する化合物(式中、R4はC(O)OR10である)から、当業者に周知の方法を用い、好適な試薬との反応により、調製することができる。
【0157】
一般式(XXI)の化合物(式中、R4はSO3R10である)は、WO2008/002573、WO2010/014836及びWO2014/066819に開示された方法により、一般式(XXI)の化合物(式中、R4はC(O)OHである)から合成されてよい。
【0158】
従って、式(XXI)の化合物(式中、R4はC(O)OHである)は、C1-6アルカノイルもしくはベンゾイルクロリドと、又はC1-6アルカン酸無水物と反応させ、OH基を保護することができる。この保護された化合物は、次に、カルボン酸基をOHへ還元するために、還元剤、例えば水素化物、好適には水素化ホウ素ナトリウムと反応されてよい。Classonらの文献、J. Org. Chem., 1988, 53, 6126-6130に説明されたトリフェニルホスフィン/イミダゾール/ハロゲン法を使用し、アルコール基は、ハロゲン、例えば、臭素又はヨウ素により置き換えられてよい。このハロゲン化された化合物は次に、アルコール系溶媒中で亜硫酸ナトリウムと反応させて、SO3- Na+ 置換基を持つ化合物を生じることができる。
【0159】
一般式(XXI)の化合物(式中、R4はOSO3R10である)は、保護されたトリエチルアンモニウム塩を生じるための、トリエチルアミンなどの塩基の存在下での、クロロ硫酸による、保護されたカルボン酸の還元から得られたアルコールとの反応により、得ることができる。保護基は、先に説明したように塩基の加水分解を用い、除去することができる。カルボン酸の還元、それに続く生じたアルコールのクロロ硫酸との反応は、一般式の化合物(式中、R4はOSO2R10である)を生じる。
【0160】
一般式(XXI)の化合物(式中、R4はC(O)NR10R11である)は、カルボン酸から、好適な溶媒中で加熱しながらの、式H-NR10R11のアミンとの反応により、調製することができる。一般式(XIX)から(XXI)の化合物(式中、R4はC(O)NR10R11又はOSO3R10である)はまた、Festaらの文献、J. Med. Chem., 2014, 57(20), 8477-8495に説明された方法に類似の方法により調製することもできる。これらの方法も、本発明の態様を形成している。
【0161】
一般式(XXI)の化合物(式中、R4はC(O)R10である)は、R4がC(O)Hであるアルデヒドを得るために、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)の1当量を使用する、R4はC(O)OR10である化合物の還元により得ることができる(例えば、WO2011/014661参照)。
【0162】
あるいは、このアルデヒドは、先に説明したように調製された保護された化合物(式中、R4はOHである)の酸化により調製することができる。この酸化は、塩化オキサリル及びジメチルスルホキシド、引き続きトリエチルアミンを使用して実行されるスウェルン酸化であることができる(例えば、Xiang-Dong Zhouらの文献、Tetrahedron, 2002, 58, 10293-10299参照)。あるいは、この酸化は、Carnellらの文献(J. Med. Chem., 2007, 50, 2700-2707)に説明されたように、クロロクロム酸ピリジニウム(PCC)などの酸化剤を使用し、実行することができる。
【0163】
一般式(XXI)の化合物(式中、R4はC(O)R10であり、ここでR10は水素以外である)は、公知の方法により、例えば、アルデヒド(式中、R4はC(O)Hである)の好適なグリニャール試薬との反応、それに続く酸化により得ることができる。かかる方法は、当業者には周知である。
【実施例】
【0164】
本発明はここで、実施例を参照し、より詳細に説明される。
【0165】
本実施例において、下記の略号を使用する:
AcOH 酢酸
CPME シクロペンチルメチルエーテル
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
IPA イソプロピルアルコール
MeOH メタノール
NEt3 トリエチルアミン
nBuOAc 酢酸n-ブチル
TBME t-ブチルメチルエーテル
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー。
【0166】
(実施例1から4−スチグマステロールからの(6β, 5β, 7α)-6-エチル-7-ヒドロキシ-3-オキソ-コラン-24-酸エチルエステルの合成)
【0167】
(実施例1−(22E)-3-オキソ-4,6,22-コラトリエン-24-酸エチルエステルの合成)
【化29】
出発材料(22E)-3-オキソ-4,22-コラジエン-24-酸エチルエステルを、Uekawaらの文献(Biosci, Biotechnol, Biochem., 2004, 68, 1332-1337)に記載された方法に従い、スチグマステロールから調製した。
【0168】
(22E)-3-オキソ-4,22-コラジエン-24-酸エチルエステル(1.00kg, 2.509mol;1当量)を、反応容器に投入し、引き続きAcOH(3容積, 3.0L)及びトルエン(1容積, 1.0L)を攪拌しながら投入した。次にクロルアニル(0.68kg, 2.766mol;1.1当量)を投入し、反応混合物を100℃まで加熱し、この温度で1〜2時間維持した(シリカ上のTLCによるIPC、溶離液3:7のEtOAc:ヘプタン;出発材料:Rf 0.50、生成物:Rf 0.46;アニスアルデヒド染色により可視化)。次にこの混合物を、氷/水浴中で、10℃まで冷却し、生じた固形物を濾過した。フィルターケーキを、予め混合した3:1のAcOH:トルエン(4×0.5容積)により、5℃±4℃で洗浄し、濾液を真空において最高70℃で濃縮した。残渣を、アセトン(3容積)中に溶解し、次に3重量/重量%の水性NaOH(10容積)を、温度を30℃以下に維持し(発熱性)、攪拌しながら液滴で投入した。生じた懸濁液を、10〜15℃に冷却し、30分間攪拌した。固形物を濾過により収集し、フィルターケーキを、予め混合した1:1のアセトン:水(1×2容積、次に3×1容積)で洗浄した。このフィルターケーキ(褐色固形物)を、真空下、70〜75℃で乾燥させ、672g(収率68%)を得た。この化合物の特徴決定は、文献において公表されたデータと一致した。
【0169】
(実施例2−(6α, 7α, 22E)-6,7-エポキシ-3-オキソ-4,22-コラジエン-24-酸エチルエステル)
【化30】
【0170】
EtOAc(1.0L)中の(22E)-3-オキソ-4,6,22-コラトリエン-24-酸エチルエステル(58.0g, 146.3mmol)の溶液へ、還流しながら、80%MMPP(ビス(モノペルオキシフタル酸)マグネシウム六水和物、197.0g, 約318.6mmol)を、30分間隔で、4つの等量部分で、添加した。この懸濁液を、還流しながら5時間、及び外界温度で更に16時間、激しく攪拌した。次に反応物を、加熱して還流させ、更に6時間攪拌した。この混合物を、約50℃まで冷却し、固形物を濾過し、温EtOAc(200mL)ですすいだ。濾液を、20%水性NaHSO3(100mL)、1M水性NaOH(100mL、次に200mL)及び10%水性NaCl(250mL)で続けて洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、真空において濃縮した。残渣(黄色固形物)を、最小容積のEtOAcにより60℃で晶出させ、エポキシド生成物をオフホワイト/淡黄色結晶(25.7g, 収率43%, 柱状)として生じた。この化合物の特徴決定は、文献において公表されたデータと一致した。
【0171】
(実施例3−(6β, 7α, 22E)-6-エチル-7-ヒドロキシ-3-オキソ-4,22-コラジエン-24-酸エチルエステルの合成)
【化31】
【0172】
(方法1:)
アルゴンブランケット下で-78℃まで冷却した、ジエチルエーテル(10mL)中のCuI(1.40g, 7.35mmol)の懸濁液へ、EtLi(28.8mL, 14.4mmol, ベンゼン/シクロヘキサン中の0.5M溶液)を投入した。形成された粘稠な白色懸濁液を、0℃まで温め、5分間攪拌し(暗色溶液を形成する)、-78℃まで冷却した。ジエチルエーテル/THF(24mL, 3:1)中の(6α, 7α, 22E)-6,7-エポキシ-3-オキソ-4,22-コラジエン-24-酸エチルエステル(1.00g, 2.42mmol)の溶液を調製し、有機クプラートを含む容器へ投入した。THF(1mL)を使用し、エポキシドの溶液を含む容器をすすぎ、これをまた有機クプラートへ投入した。この反応混合物を、30分かけて、-4℃まで温め、その後反応を、TLC(シリカ, 1:1 EtOAc:ヘプタン)により完了させた。約−4℃で更に30分間攪拌した後、水性飽和NH4Cl溶液を投入し、この混合物を30分間攪拌した。この混合物を、分液漏斗に移し、水相を、境界面に存在する固形物質と共に、除去した。有機相を、5重量%水性NaHCO3(2×50mL)及び水(1×50mL)により洗浄した。TBME(50mL)を使用し、反応からの当初の水相及び一緒にした洗浄液を抽出した。一緒にした有機相を濃縮し、残渣を、固定相としてシリカ(25g)を使用するクロマトグラフィーにより精製し(ヘプタン中の0〜30%EtOAcで勾配溶出)、(6β, 7α, 22E)-6-エチル-7-ヒドロキシ-3-オキソ-4,22-コラジエン-24-酸エチルエステル(0.63g, 59%)を生じた。
【化32】
【0173】
【化33】
HRMS (ESI-TOF) m/z: (M+H)+ C28H43O4の計算値:443.3161;実測値:443.3156。mp=59.4〜62.9℃。
【0174】
(方法2)
ZnCl2(32.84g, 240.9mmol)を、180℃でゆっくり攪拌しながら、2時間かけて、真空下で乾燥した。このフラスコを、アルゴン大気下で、室温まで冷却し、残渣をTHF(520mL)中に溶解し、カニューレにより、機械攪拌子及び温度探子を装着した三首反応フラスコへ移した。この溶液を、氷浴中で、0〜3℃まで冷却し、Et2O中のEtMgBrの3M溶液(80mL, 240.0mmol)を、内部温度を10℃以下に維持しながら、20分間かけて滴加した。約1/3のグリニャール溶液の添加後、白色沈殿(活性亜鉛酸塩種)の形成が認められた。この混合物を、0℃で1.2時間攪拌した後、THF(300mL)中のエポキシド(6α, 7α, 22E)-6,7-エポキシ-3-オキソ-4,22-コラジエン-24-酸エチルエステル(43.0g, 104.2mmol)の溶液を、内部温度を10℃以下に維持しながら、滴加した。次に固形のCuCl(1.03g, 0.104mmol)を、2つの等量部分で、激しく攪拌しながら添加した。10分後、冷却浴を取り外し、外界温度で更に1.2時間攪拌を継続した。飽和水性NH4Cl(800mL)の<15℃での滴加により、反応をクエンチし、且つ0.5時間攪拌した。この混合物を濾過し、固形物をTBME(150mL)ですすいだ。これらの相を分離し、水相を、TBME 2×250mLで抽出した。一緒にした有機抽出液を、10%水性NaCl(2×200mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮し、粗(6β, 7α, 22E)-6-エチル-7-ヒドロキシ-3-オキソ-4,22-コラジエン-24-酸エチルエステル43.7gを黄色泡状物として生じた。
【0175】
(方法3)
THF中のZnCl2の溶液(0.5M, 8.7mL, 4.85mmol, 0.9当量)へ、無水THF(8.0mL)を投入し、次に内容物を−25℃まで冷却した。TBME中のEtMgBrの溶液(1.0M, 8.7mL, 8.70mmol, 1.8当量)を、30分かけて添加し、この混合物を−25℃で45分間攪拌した。固形CuCl(24mg, 0.49mmol, 0.05当量)を、一気に添加し、THF(8.0mL)中の(6α, 7α, 22E)-6,7-エポキシ-3-オキソ-4,22-コラジエン-24-酸エチルエステル(2.0g, 4.85mmol)の溶液を、30分かけて滴加した。残りの固形CuCl(24mg, 0.49mmol, 0.05当量)を、(6α, 7α, 22E)-6,7-エポキシ-3-オキソ-4,22-コラジエン-24-酸エチルエステルの添加の途中で添加した。この反応物を、−25℃で1時間攪拌し(TLC 1:1のヘプタン:EtOAc、UVにより可視化、及びモリブデン酸セリウムアンモニウム染色を使用し発色)、その後追加のTBME中のEtMgBr(1.0M, 2.9mL, 2.91mmol, 0.6当量)を10分間かけて添加した。この反応物を、−25℃で0.5時間攪拌し、その後温度を-5℃以下に維持しながら、飽和水性NH4Cl(5mL)の添加によりクエンチした。この無機塩を濾過し、TBMEですすぎ、濾液相を分離した。水層を、TBMEで抽出し、次に一緒にした有機抽出液を、飽和水性NH4Cl(3×5mL)及び10%ブライン(3×6mL)で洗浄した。有機相を、真空において、40℃で濃縮し、粗(6β, 7α, 22E)-6-エチル-7-ヒドロキシ-3-オキソ-4,22-コラジエン-24-酸エチルエステルを黄色泡状物(1.91g)として生じた。
【0176】
(方法4)
THF中のZnCl2の溶液(0.5M, 8.7mL, 4.85mmol, 0.9当量)へ、無水THF(8.0mL)を投入し、次に内容物を40℃まで加熱した。TBME中のEtMgBrの溶液(1.0M, 8.7mL, 8.70mmol, 1.8当量)を、30分かけて添加し、この混合物を40℃で45分間攪拌した。固形CuCl(24mg, 0.49mmol, 0.05当量)を、一気に添加し、THF(8.0mL)中の(6α, 7α, 22E)-6,7-エポキシ-3-オキソ-4,22-コラジエン-24-酸エチルエステル(2.0g, 4.85mmol)の溶液を、30分かけて滴加した。残りの固形CuCl(24mg, 0.49mmol, 0.05当量)を、(6α, 7α, 22E)-6,7-エポキシ-3-オキソ-4,22-コラジエン-24-酸エチルエステルの添加の途中で添加した。この反応物を、40℃で1時間攪拌し(TLC 1:1のヘプタン:EtOAc、UVにより可視化、及びモリブデン酸セリウムアンモニウム染色を使用し発色)、その後飽和水性NH4Cl(5mL)の添加によりクエンチした。この無機塩を濾過し、TBMEですすぎ、濾液相を分離した。水層を、TBMEで抽出し、次に一緒にした有機抽出液を、飽和水性NH4Cl(3×5mL)及び10%ブライン(3×6mL)で洗浄した。有機相を、真空において、40℃で濃縮し、粗(6β, 7α, 22E)-6-エチル-7-ヒドロキシ-3-オキソ-4,22-コラジエン-24-酸エチルエステルを黄色泡状物(2.08g)として生じた。
【0177】
(方法5)
THF中のZnCl2の溶液(0.5M, 8.7mL, 4.85mmol, 0.9当量)へ、無水THF(8.0mL)を投入し、次に内容物を-15℃まで冷却した。THF中のEtMgBrの溶液(1.0M, 8.7mL, 8.70mmol, 1.8当量)を、30分かけて添加し、この混合物を-15℃で45分間攪拌した。固形CuCl(24mg, 0.49mmol, 0.05当量)を、一気に添加し、THF(8.0mL)中の(6α, 7α, 22E)-6,7-エポキシ-3-オキソ-4,22-コラジエン-24-酸エチルエステル(2.0g, 4.85mmol)の溶液を、30分かけて滴加した。残りの固形CuCl(24mg, 0.49mmol, 0.05当量)を、(6α, 7α, 22E)-6,7-エポキシ-3-オキソ-4,22-コラジエン-24-酸エチルエステルの添加の途中で添加した。この反応物を、-15℃で1時間攪拌し(TLC 1:1のヘプタン:EtOAc、UVにより可視化、及びモリブデン酸セリウムアンモニウム染色を使用し発色)、次に追加のTHF中のEtMgBr(1.0M, 4.35mL, 4.36mmol, 0.9当量)を15分かけて添加し、その後飽和水性NH4Cl(5mL)の滴加によりクエンチした。この無機塩を濾過し、TBMEですすぎ、濾液相を分離した。水相をTBMEで抽出し、次に一緒にした有機抽出液を、飽和水性NH4Cl(3×5mL)及び10%ブライン(3×6mL)で洗浄した。有機相を、真空において、40℃で濃縮し、粗(6β, 7α, 22E)-6-エチル-7-ヒドロキシ-3-オキソ-4,22-コラジエン-24-酸エチルエステルを黄色泡状物(1.94g)として生じた。
【0178】
(実施例4−(6β, 5β, 7α)-6-エチル-7-ヒドロキシ-3-オキソ-コラン-24-酸エチルエステルの合成)
【化34】
【0179】
(方法1)
DMF(2mL)中の10重量% Pd/C(50%湿潤, 20mg, 8.6mol%)の懸濁液へ、DMF(3mL)中の(6β, 7α, 22E)-6-エチル-7-ヒドロキシ-3-オキソ-4,22-コラジエン-24-酸エチルエステル(50mg, 0.11mmol)の溶液を添加し、この反応混合物を、0℃まで冷却した。このフラスコを脱気し、次に激しく攪拌しながら水素を3回充填した。3時間後、フラスコを脱気し、次にアルゴンを充填し、混合物を、シリンジフィルターにより濾過した。この混合物を、TBME(30mL)とH2O(20mL)の間で分配した。有機相を乾燥させ(Na2SO4)、真空で濃縮した。粗生成物(50mg)は、(6β, 5β, 7α)-6-エチル-7-ヒドロキシ-3-オキソ-コラン-24-酸エチルエステルの5β対5α異性体の14:1混合物(1H NMRにより分析)であり、収率92%であった。
【0180】
【化35】
HRMS (ESI-TOF) m/z: (M−H2O+H)+ C28H45O3の計算値:429.3369:; 実測値:429.3363。
【0181】
(方法2)
(6β, 7α, 22E)-6-エチル-7-ヒドロキシ-3-オキソ-4,22-コラジエン-24-酸エチルエステル(20.0g)を、DMF(400mL)中に溶解し、アルゴン下で、固形10重量%Pd/C(50%湿潤、10.0g)へ添加した。この混合物を、氷-塩浴内でおよそ-15℃まで冷却し、フラスコを脱気し、次に激しく攪拌しながら水素を3回充填した。この混合物を水素大気下で6時間攪拌し、次にフラスコを脱気し、アルゴンを充填し、セライトパッドを通して濾過した。触媒を、400mLのTBMEですすいだ。濾液を、10%水性NaCl(400mL)で洗浄し、水相をTBME(400mL)で抽出した。一緒にした有機相を、10%水性NaCl(3×200mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮し、粗(6β, 5β, 7α)-6-エチル-7-ヒドロキシ-3-オキソ-コラン-24-酸エチルエステル(20.0g、5Hβ:5Hαの比約28:1)の淡黄色油状物を生じた。
【0182】
(方法3)
10%Pd/Cを、ステンレス鋼製ジャケット付き反応容器へ、アルゴン大気下で投入し:DMFを添加し(20mL)、引き続きDMF(130mL)中の実施例3由来の粗(6β, 7α, 22E)-6-エチル-7-ヒドロキシ-3-オキソ-4,22-コラジエン-24-酸エチルエステル(およそ72.6mmol)の溶液を添加した。この反応混合物を、激しく攪拌(1200rpm)しながら、−25℃まで冷却した(およそ40分かけて)。反応容器を脱気し、水素(10〜12bar)を3回投入した。この混合物を、水素大気(10〜12bar)下で16時間攪拌した。容器を脱気し、アルゴンを掃流し、攪拌しながら20℃まで温めた。反応混合物のTLC(1:1ヘプタン:EtOAc、モリブデン酸セリウムアンモニウム又はバニリン浸漬を使用し発色、Rf値:出発材料=0.42、生成物=0.67)は、出発材料の完全な消費を示した。この懸濁液を、CH3CN(120mL)及びH2O(30mL)で希釈し、懸濁液を、二重のGFA濾紙により濾過し、フィルターケーキをCH3CN(60mL)ですすいだ。混合物を、更に精製することなく次工程に移した(telescoped)。混合物は、およそ5%の5Hα異性体を含んでいた。
【0183】
(最適化)
この実施例の水素化反応は、以下に示した中間体を介して進行し、且つ必要とされる5Hβ化合物及びその5Hα異性体の両方を生成する。溶媒及び触媒のスクリーニングを、最高収率及び5Hβ異性体の5Hα異性体に対する最高比に繋がる反応条件を決定するために、実行した。
【化36】
【0184】
溶媒スクリーニングは、10重量%Pd/C触媒を用いて実行し、且つ反応は、水素大気圧下で、室温で試行した。NEt3の存在下、MeOH中で試行した反応は、純MeOH中で試行した反応よりも、より選択的であったのに対し、10%H2Oの添加は、5βHの選択性を低下した。DMF中の反応は、最良のβ:α比をもたらした。ピリジン中の反応は、混合物中に主に出発材料及び中間体が存在し、必要な生成物への変換は悪かった。
【0185】
【表1】
【0186】
DMF及びMeOH中の反応を、ある範囲の温度で試験した。DMF中で試行した反応に関して、温度は、選択性に対し実質的影響を有する(選択性は、温度が上昇するにつれて減少する)のに対し、MeOH中の反応は、ほとんど差異が認められなかった。
【0187】
DMF及びMeOH中の反応を、市販の炭素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム及び酸化アルミニウム支持体上に担持されたPd触媒の5重量%及び10重量%の範囲で試験した。
【0188】
これらの反応は、大気圧の水素ガス下で、−15℃で、10容積の溶媒中で試行した。DMF中で試行した反応に関して、圧力は、温度よりも、選択性に対する影響が少なかった。選択性に対する希釈の作用は、無視できるものである。
【0189】
(実施例5から14−デオキシコール酸からの(6β, 5β, 7α)-6-エチル-7-ヒドロキシ-3-オキソ-コラン-24-酸エチルエステルの合成)
【0190】
(実施例5−(3α, 5β)-3-アセトキシ-12-オキソ-コラン-24-酸メチルエステルの合成)
【化37】
MeOH(1.5L)中のデオキシコール酸(500g, 1.27mol)の溶液へ、H2SO4(0.68mL, 12.7mmol)を投入し、反応が完了するまで、64℃で加熱した。この反応物を55℃まで冷却し、ピリジン(2.06mL, 25.4mmol)を投入した。MeOH(800mL)を、蒸留により除去し、反応物を50℃まで冷却した。EtOAc(500mL)を投入し、蒸留を継続した。この共蒸発を、MeOH含量が<0.5%となるまで繰り返した。この反応物を40℃まで冷却し、EtOAc(1.0L)を投入し、引き続きピリジン(134mL, 1.65mol)及びDMAP(1.1g, 8.89mmol)を投入した。無水酢酸(150mL, 1.58mmol)を滴加し、反応容器を、完了するまで、40℃で攪拌した。
この反応物を、22℃まで冷却し、温度を25℃以下に維持しながら、2M水性H2SO4(1500mL)を添加した。水相を除去し、有機相を、水(1.2L)、飽和水性NaHCO3溶液(1.2L×2)及び水(1.2L)で洗浄した。この有機層へ、AcOH(1.0L)を、引き続きNaBr(6.6g, 63.5mmol)を投入した。水性の16.4%NaOCl溶液(958mL, 2.54mol)を、反応温度を25℃以下に維持しながら、液滴で投入した。反応が完了するまで攪拌し、次に10℃まで冷却し、90分間攪拌した。得られた固形物を、濾過により収集し、水(3×500mL)で洗浄し、フィルターケーキを、真空下、40℃で乾燥させた。固形物を、MeOH(10容積)から晶出させ、(3α, 5β)-3-アセトキシ-12-オキソ-コラン-24-酸メチルエステルをオフホワイトの固形物(268g)として生じた。
【0191】
(実施例6−(3α, 5β)-3-アセトキシ-コラン-24-酸メチルエステルの合成)
【化38】
【0192】
(3α, 5β)-3-アセトキシ-12-オキソ-コラン-24-酸メチルエステル(268g, 0.6mol)を、アルゴン下で、反応容器に投入し、引き続きAcOH(1.8L)を投入した。次にトシルヒドラジド(190g, 1.02mol)を、反応温度を25℃に維持しながら、添加した。反応が完了するまで、攪拌し、次に温度を25℃以下に維持しながら、NaBH4(113.5g, 3.00mol)を、少量ずつ投入した。反応混合物を、完了するまで攪拌し、次に温度を25℃以下に維持しながら、水(1.34L)を滴加することにより、クエンチした。反応混合物を30分間攪拌し、生じる固形物を濾過により収集し、水(3×270mL)で洗浄し、固形物を、真空下、40℃で乾燥させた。固形物を、MeOH(3容積)から晶出させ、(3α, 5β)-3-アセトキシ-コラン-24-酸メチルエステルをオフホワイトの固形物(214.5g)として生じた。
【0193】
(実施例7−(3α, 5β)-3-ヒドロキシ-コラン-24-酸(リトコール酸)の合成)
【化39】
【0194】
IPA(536mL)中の(3α, 5β)-3-アセトキシ-コラン-24-酸メチルエステル(214.5g, 0.50mol)の溶液へ、水(536mL)及び50重量%NaOH(99g, 1.24mol)を投入した。この反応物を、50℃まで加熱し、完了するまで攪拌した。pH2〜3が得られるまで、激しく攪拌しながら、2M H2SO4をゆっくり投入し、次にこの反応物を、20℃まで冷却した。生じる固形物を、濾過により収集し、水(3×215mL)で洗浄し、生じた固形物を、真空下、40℃で乾燥させ、(3α, 5β)-3-ヒドロキシ-コラン-24-酸(176.53g)を生じた。
【0195】
(実施例8−(5β)-3-オキソコラン-24-酸エチルエステルの合成)
【化40】
【0196】
EtOH(50mL)中の(3α, 5β)-3-ヒドロキシ-コラン-24-酸(10g, 26.5mmol)の溶液へ、96%H2SO4(14μL, 0.27mmol)を投入し、次に反応混合物を加熱して16時間還流させた。次にピリジンを投入し、この混合物を30分間攪拌し、真空において、40℃で、濃縮した。残渣を、EtOAc(30mL)及びAcOH(10mL)に溶解し、且つ次にNaBr(136mg, 1.33mmol)を投入した。この溶液を、5℃まで冷却し、9%NaOCl(27mL, 39.8mmol)を温度を10℃以下に維持しながら、液滴で投入した。生じる懸濁液を、外界温度まで温め、1時間攪拌した。反応混合物を、0℃で10分間冷却し、固形物を濾過により収集し、水(3×3容積)で洗浄した。生じた固形物を、真空下、40℃で乾燥させ、(5β)-3-オキソコラン-24-酸エチルエステル(7.83g)を生じた。
【0197】
(実施例9−(4α, 5β)-3-オキソ-4-ブロモ-コラン-24-酸エチルエステルの合成)
【化41】
【0198】
AcOH(84mL)中の(5β)-3-オキソコラン-24-酸エチルエステル(8.0g, 19.9mmol)の溶液へ、AcOH中のBr2(16mL, 21.9mmol)を、15分間かけて滴加した。この反応混合物を10分間攪拌し、次にEtOAc(250mL)で希釈し、水(2×200mL)で洗浄し、真空において、40℃で濃縮した。この粗物質を、カラムクロマトグラフィー(30%ヘプタン:EtOAc)により精製し、真空において、40℃で濃縮し、(4α, 5β)-3-オキソ-4-ブロモ-コラン-24-酸エチルエステルを淡色結晶固形物(7.49g)として生じた。
【0199】
(実施例10−3-オキソ-4-コレン-24-酸エチルエステルの合成)
【化42】
【0200】
DMF(40mL)中の(4α, 5β)-3-オキソ-4-ブロモ-コラン-24-酸エチルエステル(4.0g, 8.33mmol)の溶液へ、Li2CO3(4.0g, 1質量当量)及びLiBr(2.0g, 0.5質量当量)を投入した。この混合物を、150℃で2時間加熱し、次に外界温度まで冷却させ、水及び氷の混合物(200g, 50容積)及びAcOH(8mL)へと注いだ。生じる懸濁液を15分間攪拌し、固形物を濾過により収集し、次にカラムクロマトグラフィー(30%ヘプタン:EtOAc)により精製し、3-オキソ-4-コレン-24-酸エチルエステルを淡色結晶固形物(1.68g)として生じた。
【0201】
(実施例11−3-オキソ-4,6-コラジエン-24-酸エチルエステルの合成)
【化43】
【0202】
3-オキソ-4-コレン-24-酸エチルエステル(2.23g, 5.57mmol)を、反応容器に投入し、引き続きAcOH(6.7mL)及びトルエン(2.23mL)を投入した。クロルアニル(1.5g, 6.13mmol)を投入し、この反応混合物を100℃で2時間加熱した(TLCによるIPC、3:7 EtOAc:ヘプタン;アニスアルデヒド染色による可視化)。反応混合物を、10℃で10分間冷却し、生じる固形物を濾過により除去した。フィルターケーキを、DCM(9容積)で洗浄し、その後生じる濾液を、真空において、40℃で濃縮した。残渣を、アセトン(9容積)中に溶解し、次に3重量%水性NaOH(27容積)を、温度を30℃以下に維持しながら、滴加した。得られる混合物を、氷浴中で10分間冷却し、固形物を濾過により収集した。フィルターケーキを、水(2×9容積)及びアセトン:水 2:1(4容積)で洗浄した。カラムクロマトグラフィーによる精製(0〜30%ヘプタン:EtOAc)は、3-オキソ-4,6-コラジエン-24-酸エチルエステルを、淡色結晶固形物(1.45g)として生じた。
【0203】
(実施例12−(6α, 7α)-6,7-エポキシ-3-オキソ-4-コレン-24-酸エチルエステルの合成)
【化44】
【0204】
3-オキソ-4,6-コラジエン-24-酸エチルエステル(1.37g, 4.27mmol)を、反応容器に投入し、引き続き攪拌しながら、BHT(23mg, 0.13mmol)、EtOAc(11mL)及び水(3.4mL)を投入した。この溶液を、80℃まで加熱し、次にEtOAc(7.5mL)中のmCPBA 70%(1.5g, 7.51mmol)の溶液を、15分間かけて滴加した。反応混合物を、70℃で2時間攪拌し(TLCによるIPC、3:7 EtOAc:ヘプタン;アニスアルデヒド染色による可視化)、外界温度まで冷却し、次に1M水性NaOH(2×20mL)、引き続き10%水性NaS2O3:2%NaHCO3(3×20mL)により洗浄した。有機相を、Na2SO4上で乾燥させ、真空において、40℃で濃縮した。粗固形物を、EtOAc(3容積)から、60℃で晶出させ、オフホワイトの固形物を生じ、これを真空下、40℃で乾燥させ、(6α, 7α)-6,7-エポキシ-3-オキソ-4-コレン-24-酸エチルエステル(0.90g)を生じた。
【0205】
(実施例13−(6β,7α)-6-エチル-7-ヒドロキシ-3-オキソ-4-コレン-24-酸エチルエステルの合成)
【化45】
【0206】
ZnCl2(600mg, 4.25mmol)を、反応容器へ投入し、真空下、180℃で1時間乾燥させた。この反応容器を外界温度まで冷却し、THF(15mL)を投入し、反応容器の内容物を、3℃まで冷却した。Et2O中の3M EtMgBr(1.5mL, 4.25mmol)の溶液を、反応容器へ、温度を5℃以下に維持しながら、40分かけて投入した。次にこの反応混合物を、1時間攪拌した。THF(6mL)中の(6α, 7α)-6,7-エポキシ-3-オキソ-4-コレン-24-酸エチルエステル(0.80g, 1.93mmol)を、温度を5℃以下に維持しながら、この反応容器へ、40分かけて投入した。CuCl(20mg, 0.19mmol)を、一気に投入し、反応物を、外界温度で16時間攪拌した(TLCによるIPC、3:7 EtOAc:ヘプタン;アニスアルデヒド染色による可視化)。反応混合物を、氷浴中で冷却し、飽和水性NH4Clを、温度を10℃以下に維持しながら、滴加した。反応混合物を濾過し、フィルターケーキを、TBME(12.5容積)で洗浄した。濾液の有機相を分離し、水相を、TBME(2×12.5容積)で抽出した。一緒にした有機相を、5%NaCl(3×12.5容積)で洗浄し、真空において、40℃で濃縮した。
【0207】
(実施例14−(6β, 5β, 7α)-6-エチル-7-ヒドロキシ-3-オキソ-コラン-24-酸エチルエステルの合成)
【化46】
【0208】
10%Pd/C(70mg)を、アルゴン大気下、反応容器へ投入し、引き続きDMF(14.6mL)中の実施例13からの粗物質を投入した。この混合物を、-10℃まで冷却し、反応容器を脱気し、その後激しく攪拌しながら、水素を3回充填した。この混合物を、温度を-10℃で維持しながら、水素大気下で24時間攪拌し(TLCによるIPC、溶離液1:1 EtOAc:ヘプタン;アニスアルデヒド染色による可視化)、次にフラスコを脱気し、アルゴンを充填し、セライトパッドを通して濾過し、DMF(7mL)ですすいだ。10%Pd/C(70mg)を、アルゴン大気下で、反応容器へ再投入し、引き続きDMF反応混合物を投入した。この混合物を、およそ-10℃まで冷却し、反応容器を脱気し、その後激しく攪拌しながら水素を3回充填した。この混合物を、水素大気下で、-10℃で、24時間攪拌し(TLCによるIPC、1:1 EtOAc:ヘプタン;アニスアルデヒド染色による可視化)、その後フラスコを脱気し、アルゴンを充填し、セライトパッドを通して濾過し、TBME(62.5容積, 50mL)で洗浄した。濾液を、10%水性NaCl(4×25容積)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、真空において、40℃で濃縮した。カラムクロマトグラフィー(SiO2、0〜30%ヘプタン:EtOAc)による精製は、(6β, 5β, 7α)-6-エチル-7-ヒドロキシ-3-オキソ-コラン-24-酸エチルエステル(0.17g)を生じた。この生成物は、植物起源から得られた物質(6β, 7α, 22E)-6-エチル-7-ヒドロキシ-3-オキソ-4,22-コラジエン-24-酸エチルエステル(実施例4参照)と同一であった。
【0209】
(実施例15から17−(6β, 5β, 7α)-6-エチル-7-ヒドロキシ-3-オキソ-コラン-24-酸エチルエステルの(3α, 5β, 6α, 7α)-6-エチル-3,7-ジヒドロキシ-コラン-24-酸への変換)
【0210】
(実施例15−(6β, 5β)-3,7-ジオキソ-6-エチル-コラン-24-酸エチルエステルの合成)
【化47】
(方法1)
H2SO4(1.4mL)中のCrO3(1.10g, 11mmol)から調製し水で5mLとしたジョーンズ試薬の溶液を、アセトン(10mL)中の(6β, 5β, 7α)-6-エチル-7-ヒドロキシ-3-オキソ-コラン-24-酸エチルエステル(0.18g, 0.40mmol)の溶液へ、オレンジ色が持続するまで、液滴により投入した。反応混合物を、IPA(1mL)によりクエンチし、0.45μmナイロンシリンジフィルターを通して濾過し、フィルターをアセトン(10mL)により洗浄した。一緒にした濾液と洗浄液を濃縮し、残渣をEtOAc(20mL)に溶解し、水(2×10mL)で洗浄した。水相を、EtOAc(20mL)により抽出し、一緒にしたEtOAc相を濃縮し、残渣を溶解し、トルエン(20mL)、次にアセトン(20mL)から濃縮し、(6β, 5β, 7α)-6-エチル-7-ヒドロキシ-3,7-ジオキソ-コラン-24-酸エチルエステル(185mg)を含有する透明な油状物を得た。
【化48】
HRMS (ESI-TOF) m/z: (M+H)+ C28H45O4の計算値:445.3318;実測値:445.3312:
【0211】
(方法2)
無水CH2Cl2(600mL)中の(6β, 5β, 7α)-6-エチル-7-ヒドロキシ-3-オキソ-コラン-24-酸エチルエステル(41.0g 粗質量)の溶液へ、0℃で、固形DMP(34.0g, 80.2mmol)を少量ずつ、20分かけて添加した(発熱性)。この混合物を、0〜5℃で2時間攪拌し、その後DMP(4.0g, 9.4mmol)の更なる部分を添加し、反応物を0〜5℃で1時間攪拌した。この混合物を、GFAフィルターを通して濾過し、固形物をCH2Cl2(50mL)ですすぎ、濾液を、10%水性Na2S2O3及び2%水性NaHCO3(100mL)と共に、20分間激しく攪拌した。これらの相を分離し、水相(aq.)を、CH2Cl2(2×100mL)により抽出した。一緒にした有機抽出液を、1M NaOH(100mL)により洗浄した。この混合物を、CH2Cl2(300mL)で希釈し、相を分離した。有機層を、減圧下で濃縮し、残渣(濁った茶色の油状物)を、TBME(600mL)中に溶解し、1M NaOH(100mL)及びNaCl(3×100mL)により洗浄した。有機相を、真空において濃縮し、粗質量38.1gの暗黄色の粘性の低い油状物を生じた。この油状物を、EtOH(400mL)に溶解し、活性炭(10g)と共に50℃で攪拌し、その後この混合物を濾過し、活性炭をEtOH(200mL)ですすぎ、濾液を真空において濃縮し、(6β, 5β)-3,7-ジオキソ-6-エチル-コラン-24-酸エチルエステルを黄色油状物(35.9g)として得た。
【0212】
(方法3)
DMF(450ml)、CH3CN(540mL)及びH2O(90mL)中の(6β, 5β, 7α)-6-エチル-7-ヒドロキシ-3-オキソ-コラン-24-酸エチルエステル(218mmol)の溶液を、2L容器の中に投入し、9℃に冷却し、次にAcOH(180mL)を投入し、引き続きNaBr(4.1g)を投入した。ナトリウムヒポクロリット(〜10.5重量/容量%, 450mL)の溶液を、内部温度を5〜6℃に維持しながら、1.5時間かけて滴加し、次に混合物を7℃で5時間攪拌した。反応混合物のTLCは、出発材料の完全な消費を示した(TLCによるIPC、溶離液EtOAc/ヘプタンの3:7;(6β, 5β, 7α)-6-エチル-7-ヒドロキシ-3-オキソ-コラン-24-酸エチルエステルに関するRf=0.34:(6β, 5β)-3,7-ジオキソ-6-エチル-コラン-24-酸エチルエステルに関するRf=0.45)。水性10重量/容量%Na2SO3(360mL)の溶液を、激しく攪拌し、内部温度を8〜10℃に維持しながら、液滴で投入し、次にH2O(270mL)を滴加し、この混合物を、5℃で16時間攪拌した。固形物を濾過し、H2O(720mL)により洗浄した。この固形物を次に、TBME(1.1L)中に溶解し、引き続き水性NaHCO3(300mL)及び10%ブライン(300mL)により洗浄した。次に有機相を、活性炭(10g)と共に、40℃で20分間攪拌し、無水MgSO4(5g)により処理し、GFA濾紙により濾過し、フィルターケーキを、TBME(50mL)によりすすぎ、濾液を真空において濃縮し、(6β, 5β)-3,7-ジオキソ-6-エチル-コラン-24-酸エチルエステルを明茶色油状物として得、これを静置して固化させた(82.7g)。
【0213】
(実施例16−(6α, 5β)-3,7-ジオキソ-6-エチル-コラン-24-酸の合成)
【化49】
【0214】
500mLフラスコへ、0.5M NaOH(9mL)の0.5容積、引き続き実施例15からの(6β, 5β)-3,7-ジオキソ-6-エチル-コラン-24-酸エチルエステル(18.00g, 1当量)、次にIPA(180mL, 10容積)を投入した(最初のNaOH投入は、C3-ケタール形成の可能性を回避するためであった)。この混合物を、60±2℃まで温め、溶液が得られるまで静置した(10〜15分間)。残りの0.5M NaOH溶液(171mL, 9.5容積)を、20分間かけて投入し、次にこの反応物を、更に3.5時間、60±2℃で攪拌した。IPAを、真空下、60℃で除去し、次に2M HCl(8mL)を、pH9となるまで投入した。EtOAcを、投入し(90mL, 5容積)、引き続き2M HCl(54mL)をpH1となるまで投入した。激しく混合し、続けて相分離させた。水相を、追加のEtOAc(90mL, 5容積)により逆抽出し、次に一緒にした有機相を、水(54mL, 3容積)、引き続き10%水性NaCl(3×54mL, 3×3容積)の3つの部分で洗浄した。有機相を、活性炭(100メッシュ粉末、3.37g、〜0.20質量当量)で12分間処理し、次にGF/Bを通して濾過した。真空における50℃での濃縮は、(6α, 5β)-3,7-ジオキソ-6-エチル-コラン-24-酸を、定量的収量で明黄色泡状物として生じた。
【0215】
【化50】
【化51】
HRMS (ESI-TOF) m/z: (M+H)+ C26H41O4に関する理論値:417.3005;実測値:417.2997;mp=71.2〜75.9℃。
【0216】
(実施例17−(3α, 5β, 6α, 7α)-6-エチル-3,7-ジヒドロキシ-コラン-24-酸の合成)
【化52】
【0217】
H2O(260mL)及び50%NaOH(15.2mL)中の粗(6α, 5β)-6-エチル-3,7-ジオキソ-コラン-24-酸(21.7g 粗質量)の溶液へ、90℃で、水性NaOH(25mLのH2O及び0.8mLの50%NaOHから調製)中のNaBH4(4.4g, 116.3mmol)の溶液を滴加した。この混合物を、加熱して還流させ、3時間攪拌した。次に混合物を60℃まで冷却し、HClの2M溶液(200mL)を、激しく攪拌しながら滴加した。次にnBuOAc(100mL)を、この反応フラスコへ投入し、この混合物を更に20分間攪拌した。これらの相を分離し、水相(pH=1/2)を、nBuOAc (100mL)により抽出した。一緒にした有機相を、2M HCl(50mL)及び10%水性NaCl(100mL)で洗浄した。有機溶媒を、減圧下、70〜80℃で蒸留除去した。残渣(濃厚な油状物)を、nBuOAc(60mL)中に70℃で溶解させ、穏やかに室温まで冷却し、次に6℃で2時間貯蔵した。この固形物を、濾過により収集し、冷nBuOAc(20mL)によりすすぎ、その後真空下、70℃で5時間乾燥させ、(3α, 5β, 6α, 7α)-6-エチル-3,7-ジヒドロキシ-コラン-24-酸を白色固形物(8.2g)として得た。
本件出願は、以下の構成の発明を提供する。
(構成1)
一般式(I)の化合物、又はそれらの塩もしくは同位体変種:
(化1)
(式中:
R1は、ハロ、OR6又はNR6R7から選択された1以上の置換基により任意に置換されたC1-4アルキルであり;
ここで、R6及びR7の各々は、H又はC1-4アルキルから独立して選択され;
R2は、H、ハロ、又はOH又は塩基性条件下で安定している保護されたOHであり;
Y1は、結合、又は炭素原子1〜20個を有し、及び1以上の基R3により任意に置換された、アルキレンリンカー基であり;
各R3は、独立して、ハロ、OR8又はNR8R9であり;
ここで、R8及びR9の各々は、H又はC1-4アルキルから独立して選択され;並びに
R4は、C(O)OR10、OC(O)R10、C(O)NR10R11、OR10、OSi(R13)3、S(O)R10、SO2R10、OSO2R10、SO3R10、又はOSO3R10であり;
ここで、各R10及びR11は、独立して:
a. 水素、あるいは
b. そのいずれかは、ハロ、NO2、CN、OR19、SR19、SO2R19、SO3R19もしくはN(R19)2、又はそのどちらかがC1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、ハロ、NO2、CN、OR19、SR19、SO2R19、SO3R19もしくはN(R19)2により任意に置換されている6〜14-員のアリールもしくは5〜14-員のヘテロアリール基から選択された1以上の置換基により任意に置換されている、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、-O-C1-20アルキル、-O-C2-20アルケニル、又は-O-C2-20アルキニル;あるいは
c. C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、ハロ、NO2、CN、OR19、SR19、SO2R19、SO3R19もしくはN(R19)2から選択された1以上の置換基により任意に置換されている6〜14-員のアリールもしくは5〜14-員のヘテロアリール基;あるいは
d. ポリエチレングリコール残基:であり;
各R19は、H、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、又はハロ、C1-6アルキルもしくはC1-6ハロアルキルにより任意に置換されている6〜14-員のアリールもしくは5〜14-員のヘテロアリール基から、独立して選択され;
各R13は、独立して、
a. ハロ、NO2、CN、OR19、SR19、SO2R19、SO3R19もしくはN(R19)2、そのどちらかがC1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、ハロ、NO2、CN、OR19、SO2R19、SO3R19もしくはN(R19)2により任意に置換されている6〜14-員のアリールもしくは5〜14-員のヘテロアリール基から選択された1以上の置換基により任意に置換されたC1-20アルキル、C2-20アルケニル、又はC2-20アルキニル;あるいは
b. C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、ハロ、NO2、CN、OR19、SR19、SO2R19、SO3R19もしくはN(R19)2から選択された1以上の置換基により任意に置換されている6〜14-員のアリール又は5〜14-員のヘテロアリール基:であり、
各R19は、H、C1-6アルキル、又はC1-6ハロアルキルから独立して選択され;
R5bは、H又はOH又は保護されたOHである。)。
(構成2)
前記R1が、エチルである、構成1記載の化合物。
(構成3)
前記Y1が、炭素原子1〜8個を有し、且つ1以上の基R3により任意に置換されているアルキレンリンカー基であり、ここでR3は、構成1に定義したものである、構成1又は2記載の化合物。
(構成4)
独立して又はいずれかの組合せにおいて:
前記Y1が、結合、又は炭素原子1〜3個を有し、且つ1もしくは2個の基R3により任意に置換されているアルキレン基であり;
R4が、C(O)OR10、SO3R10、又はOSO3R10であり、ここでR10は、先に定義したものであるが、より好適には、H、C1-6アルキル又はベンジルであり;
R5bが、H又はOHである、構成1〜3のいずれか1記載の化合物。
(構成5)
独立して又はいずれかの組合せにおいて:
前記R1が、エチルであり;及び/又は
R2が、Hであり;及び/又は
Y1が、結合、-CH2-又は-CH2CH2-であり;及び/又は
R4が、C(O)OR10であり、ここでR10は、H、C1-6アルキル又はベンジルであり;及び/又は
R5bが、Hである、構成4記載の化合物。
(構成6)
(6α, 5β)-3,7-ジオキソ-6-エチル-コラン-24-酸、及びそのC1-6アルキルエステル及びベンジルエステル並びにそれらの塩、特にメチルエステル及びエチルエステルから選択される、構成1記載の化合物。
(構成7)
構成1〜6のいずれか1記載の化合物の製造方法であって:
A. 一般式(II)の化合物:
(化2)
(式中、Y1、R1、R2及びR4は、一般式(I)について定義したものであり、並びにR5は、H又はOH又は保護されたOHである)の、塩基による処理による、エピマー化;又は
B. 一般式(I)の化合物の別の一般式(I)の化合物への変換:を含む、方法。
(構成8)
前記一般式(II)の化合物において、R4は、C(O)OR10であり、ここでR10は、C1-6アルキル又はベンジルであり、ここで塩基は、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムなどの強塩基であり、且つここでエピマー化が、加水分解を伴って、一般式(I)の化合物(式中、R4はC(O)OHである)を生じる、構成7記載の方法。
(構成9)
前記一般式(II)の化合物において、R2及び/又はR5は、塩基性条件下で安定している保護されたOHであり、並びに、保護基を除去する追加工程を任意に含み、一般式(I)の化合物(式中、R2及び/又はR5bはOHである)を生じる、構成7又は8記載の方法。
(構成10)
前記一般式(I)の化合物(式中、R4はC(O)OR10であり、ここでR10は、構成1において定義したものである)の、一般式(II)の化合物(式中、R4は同じくC(O)OR10である)からの製造のための、構成1〜9のいずれか1記載の方法。
(構成11)
一般式(XXI)の化合物の製造方法であって:
(化3)
(式中、R1、R4及びY1は、一般式(I)に定義したものであり:
R2は、H、ハロ、又はOHであり;並びに
R5aは、H又はOHである):
i. 一般式(I)の化合物を、好適な還元剤を使用し還元し、並びにここで、R2及び/又はR5bが、保護されたOHである場合、この保護基(複数可)を除去し、先に定義した一般式(XXI)の化合物を生じ、ここで保護基の除去は、還元の前又は後に行うことができること;並びに任意に
ii. 一般式(XXI)の化合物を別の一般式(XXI)の化合物へ変換すること:を含む、製造方法。
(構成12)
前記還元剤が、水素化ホウ素ナトリウムなどの水素化物である、構成11記載の方法。
(構成13)
前記式(XXI)の化合物(式中、R1はエチルであり、R2及びR5aは両方共Hであり、Y1は-CH2CH2-であり、並びにR4はC(O)OHである)の製造のための、構成11又は12記載の方法。