(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
未使用の前記薬剤カートリッジが前記カートリッジホルダに収納された状態で、前記ピストンは、前記ピストンの先端と前記ガスケットとの間に所定間隔を隔てて位置する最も後退した第1の位置と、前記ピストンの前記先端と前記ガスケットとが接触し、前記シリンダ内に前記ガスケットが最も挿入された第2の位置との間を移動可能である、
請求項8に記載のカートリッジアダプタ。
前記アダプタ空間に配置された前記カートリッジアダプタと係合する係合部材と、前記係合部材と前記カートリッジアダプタとの係合を解除する解除レバーとを含むロック機構をさらに備える請求項13に記載の薬剤注入装置。
前記ロック機構が解除された状態で前記カートリッジアダプタの前記アダプタ空間から脱落を抑制すために前記カートリッジアダプタと係合する脱落防止機構をさらに備える、請求項19に記載の薬剤注入装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述した用途の薬剤注入装置では、1つの薬剤カートリッジに充填されている薬剤は、複数回にわたって注射される。このため、異なる薬剤を注射する場合、使用途中の2以上の薬剤カートリッジを交換しながら1つの薬剤注入装置を使用することになる。
【0013】
薬剤の注入量は複数の異なる薬剤カートリッジにおいて、同じではない場合があるため、薬剤カートリッジから薬剤を押し出すためのピストンは、薬剤カートリッジを交換するたびに、薬剤カートリッジから退避させる必要がある。その結果、薬剤カートリッジを交換する場合には注射が可能となるまでに時間を要する。また、正しい容量の注射を行うためには、薬剤カートリッジ交換のたびに、ピストンの原点等を正しく設定し、ピストンの移動を正確に制御する必要がある。さらに交換のたびにピストンを移動させるため、薬剤注入装置に備えられる電池の消耗が激しくなる。
【0014】
本願発明者はこの様な課題に鑑み、複数種類の薬剤カートリッジに対応した、新規な薬剤注入装置、カートリッジアダプタ、薬剤注入システムおよび薬剤注入システムの制御方法を想到した。
【0015】
本開示の薬剤注入装置、カートリッジアダプタ、薬剤注入システムおよび薬剤注入システムの制御方法の概要は以下の通りである。
[項目1]
長手方向に伸びる筒状の内空間を有するシリンダ、前記内空間において前記長手方向に移動可能に支持されるガスケットおよび前記内空間に保持される薬剤を含む薬剤カートリッジを収納可能な空間を有するカートリッジホルダと、
前記ガスケットを前記シリンダの前記内空間において前記長手方向に移動させるピストンと、
前記ピストンを移動可能に支持し、前記カートリッジホルダに接続されたピストンガイドと、
前記ピストンを前記長手方向に駆動するピストン駆動機構と、
を備えたカートリッジアダプタ。
[項目2]
前記ピストン駆動機構は、前記ピストンの外周に位置する雄ねじと、
前記雄ねじと噛み合う雌ねじが位置する内側面と、歯車が位置する外側面とを有するピストンギアと
を含む項目1に記載のカートリッジアダプタ。
[項目3]
前記収納する薬剤カートリッジの種別に応じた第1識別情報をさらに備える、
項目1に記載のカートリッジアダプタ。
[項目4]
前記第1識別情報は、前記カートリッジアダプタの外形の一部に位置する切り欠きまたは突起である、項目3に記載のカートリッジアダプタ。
[項目5]
前記薬剤カートリッジは、前記薬剤に応じた固有の外観的特徴を有し、
前記カートリッジアダプタは前記薬剤カートリッジの前記固有の外観的特徴に類似した外観的特徴を有する項目1から4のいずれかに記載のカートリッジアダプタ。
[項目6]
前記外観的特徴は色、模様および記号から選ばれる少なくとも1つである項目5に記載のカートリッジアダプタ。
[項目7]
前記薬剤カートリッジは、前記薬剤に応じた固有の第2識別情報を有し、
前記カートリッジホルダは、前記薬剤カートリッジの前記第2識別情報の少なくとも一部
を露出させる開口を有する、項目1から6のいずれかに記載のカートリッジアダプタ。
[項目8]
前記第2識別情報は、固有の色が付された着色領域である、
項目7に記載のカートリッジアダプタ。
[項目9]
未使用の前記薬剤カートリッジが前記カートリッジホルダに収納された状態で、前記ピストンは、前記ピストンの先端と前記ガスケットとの間に所定間隔を隔てて位置する最も後退した第1の位置と、前記ピストンの前記先端と前記ガスケットとが接触し、前記シリンダ内に前記ガスケットが最も挿入された第2の位置との間を移動可能である、
項目7に記載のカートリッジアダプタ。
[項目10]
前記ピストンが前記第1の位置から前記ガスケットと接触する第3の位置まで移動するのに伴って前記長手方向に移動するスライド部材をさらに備え、
前記スライド部材は、前記カートリッジホルダの前記開口の一部を覆う遮蔽部と、前記遮蔽部に位置するスリットとを有し、
前記スライド部材が前記開口中で移動することにより、前記スリットが、前記薬剤カートリッジの前記着色領域を長手方向に走査する、項目9に記載のカートリッジアダプタ。
[項目11]
前記スライド部材を前記薬剤カートリッジの前記シリンダの一端側へ付勢するばねをさらに含み、
前記スライド部材が前記シリンダの前記一端と接触した状態で、前記ばねは前記シリンダを前記シリンダの他端側へ付勢している、項目10に記載のカートリッジアダプタ。
[項目12]
前記カートリッジホルダは、前記薬剤カートリッジを挿入するための開口を有する本体と、前記開口を開閉可能に可動する蓋とをさらに含み、
前記スライド部材は、前記スライド部材が前記シリンダの前記一端と接触した状態で、前記蓋の一部と接触し前記蓋をロックする、
項目11に記載のカートリッジアダプタ。
[項目13]
項目1に記載のカートリッジアダプタを装填可能なアダプタ空間と、前記アダプタ空間に連通する開口とを有する筐体と、
前記アダプタ空間に装填された前記カートリッジアダプタの前記ピストン駆動機構と係合し、駆動力を伝達する駆動部と、
前記駆動部を制御する演算回路と、
メモリと
を備えた薬剤注入装置。
[項目14]
前記カートリッジアダプタの前記ピストン駆動機構は、前記ピストンの外周に位置する雄ねじと、
前記雄ねじに嵌合する雌ねじが位置する内側面と、歯車が位置する外側面とを有するピストンギアとを含み、
前記駆動部は、モータと、前記モータから駆動力を受けて回転する駆動ギアとを含み、
前記カートリッジアダプタが前記アダプタ空間に装填された状態で、前記駆動部の駆動ギアは、前記ピストン駆動機構のピストンギアとかみ合う、項目13に記載の薬剤注入装置。
[項目15]
前記筐体の前記開口を開閉自在に可動する扉をさらに備え、
前記カートリッジアダプタが装填される際、前記扉が前記開口を開放し、
前記カートリッジアダプタが抜き取られると、前記扉が前記開口を閉塞する、
項目13に記載の薬剤注入装置。
[項目16]
装填検出器および第1識別情報検出器をさらに備え、
前記カートリッジアダプタは前記収納する薬剤カートリッジの種別に応じた第1識別情報をさらに備え、
前記装填検出器は、前記カートリッジアダプタが装填されたことを検出し、
前記第1識別情報検出器は、前記薬剤カートリッジの第1識別情報を検出する、
項目13に記載の薬剤注入装置。
[項目17]
表示部をさらに備え、
前記演算回路は、前記第1識別情報検出器の検出結果に基づき、前記表示部に前記薬剤カートリッジおよび前記カートリッジアダプタの外観的特徴に類似した特徴を表示させる、
項目16に記載の薬剤注入装置。
[項目18]
前記メモリは、注射スケジュールの情報を記憶しており、
前記演算回路は、注射スケジュールの情報と、前記装填検出器および前記第1識別情報検出器の検出結果に基づき、前記カートリッジアダプタが装填されていない場合および前記注射スケジュールと異なる薬剤のカートリッジアダプタが装填されている場合、装填すべき薬剤の種類に応じた前記外観的特徴に類似した表示を前記表示部に表示させる、
項目16に記載の薬剤注入装置。
[項目19]
前記アダプタ空間に配置された前記カートリッジアダプタと係合する係合部材と、前記係合部材と前記カートリッジアダプタとの係合を解除する解除レバーとを含むロック機構をさらに備える項目13に記載の薬剤注入装置。
[項目20]
前記ロック機構が解除された状態で前記カートリッジアダプタの前記アダプタ空間から脱落を抑制すために前記カートリッジアダプタと係合する脱落防止機構をさらに備える、項目19に記載の薬剤注入装置。
[項目21]
第2識別情報検出器をさらに備え、
前記薬剤カートリッジは、前記薬剤に応じた固有の第2識別情報を有し、
前記第2識別情報検出器は、前記薬剤カートリッジの前記第2識別情報を検出する、
項目13に記載の薬剤注入装置。
[項目22]
前記第2識別情報は前記薬剤に応じた固有の色が付された着色領域であり、
前記第2識別情報検出器は前記薬剤カートリッジの着色領域の色を検出する、
項目21に記載の薬剤注入装置。
[項目23]
前記第2識別情報検出器は、基台と、前記基台に位置する光検出器および発光素子とを含み、
前記カートリッジホルダは、前記薬剤カートリッジの前記着色領域の少なくとも一部を露出させる開口を有し、
未使用の前記薬剤カートリッジが前記カートリッジホルダに収納された状態で、前記ピストンは、前記ピストンの先端と前記ガスケットとの間に所定間隔を隔てて位置する最も後退した第1の位置と、前記ピストンの前記先端と前記ガスケットとが接触し、前記シリンダ内に前記ガスケットが最も挿入された第2の位置とを移動可能であり、
前記カートリッジアダプタは、前記ピストンが前記第1の位置から前記ガスケットと接触する第3の位置まで移動するのに伴って前記長手方向に移動するスライド部材をさらに備え、
前記スライド部材は、前記カートリッジホルダの前記開口の一部を覆う遮蔽部と、前記遮蔽部に位置するスリットとを有し、
前記スライド部材が移動することにより、前記スリットが、前記薬剤カートリッジの前記着色領域を長手方向に走査し、
前記第2識別情報検出器の基台が、前記カートリッジアダプタの前記スライド部材に連動して前記長手方向に移動することにより、前記第2識別情報検出器は、前記スライド部材の前記スリットから入射する光に基づき、前記色を検出する、
項目22に記載の薬剤注入装置。
[項目24]
項目1に記載のカートリッジアダプタと、
項目13に記載の薬剤注入装置と
をそなえた薬剤注入システム。
【0016】
以下、図面を参照しながら、本実施形態の薬剤注入システムの一例を詳細に説明する。以下で説明する薬剤注入システムは実施形態の一例である。実施形態は以下の形態に限られず、種々の改変が可能である。以下の説明で参照する図面において、分かり易さのため、説明で言及しない図面における参照符号を省略する場合がある。
【0017】
(薬剤注入システムの構成)
[薬剤注入システムの外観]
図1は、本実施形態の薬剤注入システムの一例の外観を示す斜視図である。
図1に示すように、薬剤注入システム100は、薬剤注入装置11とカートリッジアダプタ101とを含む。カートリッジアダプタ101は以下において説明するように薬剤カートリッジを収納する。
図1は、カートリッジアダプタ101が薬剤注入装置11に装填された状態を示している。
【0018】
薬剤注入装置11は、カートリッジアダプタ101を収納するアダプタ空間を有する筐体12を含む。薬剤注入装置11は、筐体12に設けられ、薬剤注入装置11を操作するための種々のボタンおよび薬剤注入装置11の状態を示したり、操作者への指示を示したりするための表示部15を備える。例えば、
図1に示すように、筐体12には、電源ボタン13、注射(薬剤投与)ボタン14、操作ボタン16などが設けられる。電源ボタン13は、例えば、薬剤注入装置11の起動および停止を行うために用いられる。注射ボタン14は、薬剤を注射するために用いられる。操作ボタン16は、例えば、表示部に表示されたアイコンを移動させることによって表示部15に表示された条件を選択したり、表示部に表示された数値を変化させたりするために用いられる。また、選択した条件あるいは数値を確定させるために用いられる。表示部15は、例えば、液晶表示パネル、有機ELパネル等である。また、表示部15はタッチパネルであってもよく、電源ボタン13、注射ボタン14および操作ボタン16の機能の少なくとも1つがタッチパネルで実現されてもよい。
【0019】
薬剤注入装置11は、筐体12に設けられたロック解除レバー18を備えていてもよい。ロック解除レバー18は、カートリッジアダプタ101を取り外すために用いられる。ロック解除レバー18の構造は以下に詳述する。また、薬剤注入装置11は、筐体12に設けられ確認窓17を備えていてもよい。確認窓17は筐体12の開口であってもよいし、筐体12の開口および開口に設けられたガラス、樹脂などの透明材料からなる部材であってもよい。確認窓17は、装填されたカートリッジアダプタ101の位置に対応しており、確認窓17から装填されたカートリッジアダプタ101の一部が見える。このため、操作者は、薬剤注入装置11の電源がOFFであり、表示部15に何の情報が表示されていない状態でも、カートリッジアダプタ101が装填されていること、あるいは、装填されていないことを確認することができる。
【0020】
なお、図示していないが、薬剤注入装置11は、ブザー43(
図9)、スピーカー等の発音デバイスをさらに備えていてもよい。ブザーあるいはスピーカーなどから、警告音を発したり、上述した種々のボタンが押下され、入力が受け付けられたことを示す音声等を発することにより、より高い操作性を提供することができる。
【0021】
図2(a)は、カートリッジアダプタ101が薬剤注入装置11に装填された薬剤注入システム100を
図1とは別の角度から見た斜視図である。
図2(a)に示すように、カートリッジアダプタ101の先端には、針を取り付けるための針取付部102が設けられている。カートリッジアダプタ101を正しく薬剤注入装置11に装填した状態において、針取付部102は筐体12から突き出ている。針取付部102には患者の皮膚に挿入される針が取り付けられる。
【0022】
図2(b)は、カートリッジアダプタを取り外した状態の薬剤注入システム100の斜視図である。筐体12は、カートリッジアダプタ101を収納するアダプタ空間に連通する開口12aを有している。カートリッジアダプタ101を取り外した状態では、開口12aは、扉20によって閉じられる。これにより、カートリッジアダプタ101を取り外した状態において、開口12aから筐体12の内部へ異物が侵入するのを抑制することができる。
【0023】
[カートリッジアダプタ101]
図3(a)および(b)は、カートリッジアダプタ101の外観の一例を示す斜視図である。カートリッジアダプタ101は、針取付部102と、カートリッジホルダ103と、ピストンガイド部104とを含む。カートリッジホルダ103は薬剤カートリッジを収納する内空間を有している。カートリッジホルダ103およびピストンガイド部104は、収納される薬剤カートリッジの長手方向に伸びた形状を有している。カートリッジホルダ103の一端は、ピストンガイド部104の一端と接続されている。ピストンガイド部104は後述するピストンの移動をガイドする空間を有する。
【0024】
カートリッジホルダ103の外面には、収納する薬剤カートリッジの種別に応じた外観的特徴を表示するために領域103r1および領域103r2を有する。領域103r1および領域103r2には、上述した外観的特徴が表示される。この外観的特徴は主として、操作者に呈示される。外観的特徴については以下において詳述する。
【0025】
カートリッジアダプタ101は、上述したロック解除レバー18が解除された状態で、カートリッジアダプタ101が重力などによって容易に薬剤注入装置11から脱落するのを防止するための凹部104rが設けられている。
図3(a)では凹部104rは、ピストンガイド部104の外面に設けられているが、カートリッジホルダ103に設けられていてもよい。ピストンガイド部104の外面であって、凹部104rの反対側の面には他の凹部104qが設けられている。
【0026】
図3(c)および(d)は、ピストンガイド部104の長手方向の一端を拡大して示す斜視図である。カートリッジアダプタ101全体からみて、針取付部102が設けられていない端部、つまりピストンガイド部104の端部に、装填情報104hおよび第1識別情報104gおよびが設けられている。装填情報104hは、薬剤注入装置11におけるカートリッジアダプタ101の装填の有無を検出するために用いられ、カートリッジアダプタ101が薬剤注入装置11に装填された状態で、装填情報104hが薬剤注入装置11に呈示される。薬剤注入装置11は、装填情報104hの形態に対応した装填検出器を備える。
図3(c)および(d)に示す例では、装填情報104hは、カートリッジアダプタ101の外形に設けられた凸部である。この場合、装填検出器として例えばマイクロスイッチを用いることができ、凸部によってマイクロスイッチが押下されるとマイクロスイッチがONになり、装填検出器が装填を示す信号を出力する。
【0027】
第1識別情報104gは、カートリッジアダプタ101の種別を識別するために用いられる。第1識別情報104gも、カートリッジアダプタ101が薬剤注入装置11に装填された状態で、薬剤注入装置11に呈示され、薬剤注入装置11は、第1識別情報104gの形態に対応した第1識別情報検出器を備える。
図3(c)および(d)に示す例では、第1識別情報104gは、それぞれ、カートリッジアダプタ101の外形に設けられた凹部および凸部である。第1識別情報104gが凹部か凸部であるかによって、2つの種別の薬剤カートリッジの情報を薬剤注入装置11に呈示できる。この場合も第1識別情報検出器として、例えば、マイクロスイッチを用いることができる。
【0028】
装填情報104hおよび第1識別情報104gは上述した例のように、構造的形状に限られず、種々の情報であってよい。例えば、装填情報104hおよび第1識別情報104gは、カートリッジアダプタ101の外面に設けられた導電体(領域)であったり、磁力(磁気領域)であったり、光学的特性であってもよい。具体的には、装填情報104hおよび第1識別情報104gとして導電体を設けるか否か、磁石を配置するか否か、遮光領域あるは反射領域を設けるか否かによって、これらの情報を付与してもよい。この場合、導電性、磁力および透光性を検出することにより、カートリッジアダプタの装填および種別を判別してもよい。また、装填情報104hおよび第1識別情報104gが付与される位置もピストンガイド部104の一端に限られず、他の位置であってもよい。
【0029】
薬剤注入システム100において、カートリッジアダプタ101と収納される薬剤カートリッジ200と固有の対応関係を有しており、ある薬剤カートリッジ200はこれに専用のカートリッジアダプタ101に収納される。しかし、ある薬剤用のカートリッジアダプタ101に他の薬剤カートリッジ200を収納させることが可能である。この場合、カートリッジアダプタ101の上述した第1識別情報104gだけでは、正しい薬剤が注入されるかどうかを判断できない。以下において詳述するように、薬剤注入装置11は、新しい(未使用の)薬剤カートリッジ200がカートリッジアダプタ101に挿入された場合、最初に薬剤カートリッジ200とカートリッジアダプタ101とが正しい対応関係にあるかどうかを判定する。このために、
図3(b)に示すように、カートリッジアダプタ101は、カートリッジホルダ103に設けられた開口103gを有する。開口103gは収納された薬剤カートリッジ200の外観の一部を露出させる。以下で説明するように薬剤カートリッジは、薬剤に応じた固有の第2識別情報205(
図4(a))を外観に有し、この第2識別情報の少なくとも一部が開口103gから露出する。
【0030】
外観的特徴が主として操作者に呈示されるのに対し、第2識別情報は、主として薬剤注入装置11が検出するために用いられる。第2識別情報は、例えば、薬剤に固有の色が付された着色領域であってもよいし、薬剤に固有の数値に対応する1次元あるいは2次元のバーコードであってもよい。また、RFIDなどのICタグであってもよい。第2識別情報は例えばシリンダ201の外側面に設けられる。薬剤カートリッジ200をカートリッジアダプタ101に収納する際、薬剤カートリッジ200の長手方向に沿う中心軸周りの角度に特に制限がない場合には、どのような角度で薬剤カートリッジ200を収納させても、開口103gから第2識別情報が露出するように、第2識別情報は、シリンダ201の外側面の全周にわたって帯状に設けられていてもよい。着色された帯の領域は1本であってもよいし、複数であってもよい。
【0031】
図4(a)から(c)はカートリッジアダプタ101に薬剤カートリッジ200を装填する3つの状態を示す斜視図である。
図4(a)に示すように、カートリッジアダプタ101のカートリッジホルダ103は、薬剤カートリッジ200を挿入するための開口103cを有する本体103aと、蓋103bとを含む。蓋103bは回動軸を中心に回動可能であり、回動することによって、開口103cを開放したり閉じたりすることができる。蓋103bには側面が設けられており、薬剤カートリッジ200を収納する空間103fが形成されている。
【0032】
蓋103bを開けた状態で、薬剤カートリッジ200は、針が取り付けられる先端200aを下にした状態、つまり先端200aから蓋103bの空間103fに挿入される。
図4(b)に示すように、蓋103bを本体103a側に倒すように回動軸を中心として回転させることにより、蓋103bが開口103cを閉じ、カートリッジアダプタ101内に薬剤カートリッジ200が収納される。逆の手順をとることによって、薬剤カートリッジ200をカートリッジアダプタ101から取り出すことができる。
【0033】
図5は、カートリッジアダプタ101の構成部品を示す分解斜視図である。カートリッジアダプタ101は、カートリッジホルダ103、ピストンガイド部104、ピストンギア105、ギア押さえ106、ばね107、スライド部材108およびピストン109を含む。
【0034】
ピストンガイド部104はピストンを摺動可能に支持する孔104aを有する。ピストンギア105は、ピストンガイド部104およびギア押さえ106によって挟まれ、回転可能に支持される。ギア押さえ106はピストン109が挿入される貫通孔を有する。ピストンギア105の内側面には雌ねじ105eが設けられている。また、外側面にはギア105fが設けられている。
【0035】
スライド部材108は、遮蔽部108aと遮蔽部108aに設けられたスリット108bを有する。また、ピストンを挿入する貫通孔を有する。
【0036】
ピストン109は棒形状を有し、外側面に雄ねじ109eが設けられている。雄ねじ109eには、長手方向にそって、平坦部109fが設けられている。また、ピストン109の一端には薬剤カートリッジ200のガスケット202を押下するための台座109a位置している。
【0037】
ピストン109の台座109aが位置していない一端から、スライド部材108、ばね、ギア押さえ106、ピストンギア105およびピストンガイド部104が順に挿入されている。この状態でピストンガイド部104は、カートリッジホルダ103の一端と接合されている。
【0038】
カートリッジアダプタ101において、ピストン109の雄ねじ109eはピストンギア105の雌ねじ105eと噛み合う。薬剤注入装置11から伝達される回転力によって、ピストンギア105が回転すると、回転力が雌ねじ105eと雄ねじ109eとの噛み合いによって、ピストン109に伝えられる。このため、ピストン109が回転する方向に力が働く。しかし、ピストン109の雄ねじ109eには平坦部109fが設けられており、平坦部109fと当接する規制面が例えば、ギア押さえ106またはピストンガイド部104の孔に設けられている。このため、ピストン109自体の回転が抑制され、ピストン109が長手方向に送られる。つまり、ピストンギア105が受けた回転力がピストン109の長手方向の駆動力に変換される。このように、ピストンギア105とピストン109の雄ねじ109eとはピストン駆動機構110を構成している。ピストン駆動機構110はこの構成に限られず、例えば、回転運動を往復運動に変換する公知の機械要素の組み合わせによって実現してもよい。例えば、ピストン109の側面にラックを設け、薬剤注入装置11の駆動用ギアが直接ラックと噛み合うことによって、ピストン駆動機構110を構成してもよいし、さらにピニオンギアをカートリッジアダプタ101にそなえていてもよい。
【0039】
[薬剤カートリッジ200]
図6(a)を参照しながら、薬剤カートリッジ200の構造を説明する。
図6(a)に示すように薬剤カートリッジ200は、シリンダ201、ガスケット202、キャップ203およびパッキン204を含む。シリンダ201は長手方向に伸びる筒状の内空間を有し、先端200aがすぼめられている。シリンダ201の内空間には、ガスケット202が位置しており、ガスケット202はシリンダ201内を摺動可能である。先端200aはパッキン204で封止され、さらにキャップ203で覆われている。ガスケット202で閉塞された内空間には、薬剤が保持されている。
図6(a)に示されるように、ピストン109の台座109aはガスケット202とのみ当接し、シリンダ201とは当接しない。
【0040】
注射針210は、キャップ212と針管211とを有する。カートリッジアダプタ101の針取付部102に取り付けられる。針管211の後針が薬剤カートリッジ200のキャップ203およびパッキン204に挿入される。
【0041】
[カートリッジアダプタ101の動作]
図6(b)から
図6(d)を参照しながら、カートリッジアダプタ101の動作を説明する。カートリッジアダプタ101に薬剤カートリッジ200が収納される際には、ピストン109は薬剤カートリッジ200と干渉しないよう、最も退避した位置にある。
【0042】
この時、ピストン109の台座109aの先端は位置P1にあり、薬剤カートリッジ200の端部から所定の距離を隔てている。以下、ピストンの位置という場合には、台座109aの先端の位置を意味する。ピストン109はピストンギア105と噛み合っているため、ピストンギア105が回転しない限り、長手方向には移動しない。この状態において、ばね107は圧縮されており、ばね107の力によって、スライド部材108を薬剤カートリッジ側へ付勢している。しかし、ピストン109の台座109aがスライド部材108の貫通孔よりも大きいため、ピストンの台座109aによって薬剤カートリッジ200へ移動することはできない。
【0043】
図6(c)は、ピストンギア105が回転することによってピストン109が薬剤カートリッジ200側へ送り出され、台座109aの先端がガスケット202と接触した状態を示している。この時、ピストン109の台座109aの先端は位置P3にある。
【0044】
スライド部材108は、ばね107の力によって台座109aが移動した分だけ薬剤カートリッジ200側へ移動する。その結果、スライド部材108が薬剤カートリッジ200のシリンダ201の端部と接触する。この状態でばね107は完全に復元しておらず、まだ圧縮された状態である。このため、ばね107の力がスライド部材108を介して薬剤カートリッジ200のシリンダに加わり、薬剤カートリッジ200のシリンダ201は針取付部102側へ付勢される。この付勢は以降、ピストン109が退避し、台座109aがガスケット202から離れるまで続く。一方、ガスケット202は、ピストンが退避するまで、ピストン109の台座109aと接触した状態を保つ。
【0045】
この構造のため、ピストン109の台座109aがガスケットと接触している間、シリンダ201もばね107の力で保持された状態となり、カートリッジアダプタ101内で薬剤カートリッジ200は全体が移動しないように保持された状態を維持される。その結果、この状態で注射針210を薬剤注入装置11に取り付ける際、注射針210の後針211aのパッキン204に挿入される穿刺抵抗が生じても、抵抗は薬剤カートリッジ200全体に抗力としておよび、シリンダ201の内圧は変化しない。よって後針211aが薬剤カートリッジ200のパッキン204に挿入されても、保持されている薬剤が針管211から吐出することが抑制される。その結果、薬剤カートリッジ200内の薬剤が注射針の取り付けによって減少することが抑制され、薬剤注入装置11における薬剤カートリッジ200内の薬剤量の管理精度が高められる。
【0046】
また、
図6(c)に示すように、スライド部材108がシリンダ201と接触するようにピストン109の台座109aが位置P3へ移動すると、カートリッジホルダ103の蓋103bに設けられた凹部103dにスライド部材108に設けられた凸部108dが嵌合する。その結果、蓋103bがロックされ、蓋103bを回転させることができなくなる。これにより、操作者が誤って蓋103bを開け、使用中の薬剤カートリッジ200を他の種類の薬剤カートリッジ200と交換することを防止することができる。また、ピストン109が薬剤カートリッジ200に挿入された状態で、蓋103bが開けられ、無理やり薬剤カートリッジ200が取り外されることにより、カートリッジアダプタ101や薬剤カートリッジ200が破損することを防止することができる。
【0047】
ピストン109がP3の位置にある状態から、1回の投与量に相当する分だけピストン109がシリンダ201内に挿入され、シリンダ201内に保持されている薬剤が注射される。1回分の薬剤が排出された後、ピストン109はその位置を維持し、この状態で、カートリッジホルダ103を薬剤注入装置11から取り外すことが可能である。上述したように、カートリッジアダプタ101の蓋103bは、通常の操作では開けることができない。また、ピストン109はピストンガイド部104によって保護された状態にあるため、カートリッジアダプタ101が取り外されても、通常の使用においては、ピストン109が移動することはない。このため、取り外したカートリッジアダプタ101を安全および安定して保管することが可能である。また、取り外す際ピストン109を退避させる必要がないため、薬剤の投与後、比較的短時間で、カートリッジアダプタ101を取り外すことができる。
【0048】
また、再度カートリッジアダプタ101を薬剤注入装置11に装填する場合、ピストン109はすぐに薬剤を投与できる位置にある。したがって、カートリッジアダプタ101の再装填時に、投与可能な位置までピストンを移動させる必要がなく、薬剤注入装置11を起動させた後、比較的短時間で注射を行うことができる。したがって、複数のカートリッジアダプタ101を交換しながら1日に複数回、薬剤注入装置11を用いて注射を行う場合でも、カートリッジアダプタ101の装填や取り外しに要する時間が短いことによって、1回の注射に要する時間を短くすることができ、操作者に負担が少ない操作性を提供することができる。また、ピストン109の移動量が少ないため、薬剤注入装置11に備える電池の容量を小さくすることができ、携帯性に優れた小型の薬剤注入装置11を実現することができる。
【0049】
図6(d)は、複数回の投薬の結果、ガスケット202がシリンダ201内に最も押し込まれた状態を示す。この状態で、ピストン109の台座109aの先端は位置P2にある。シリンダ201の形状等に依存し、ガスケット202が移動可能な範囲をすべて移動しても、シリンダ201内に排出できない薬剤が残っていてもよい。
【0050】
利用可能な薬剤がすべて注射され、使用中の薬剤カートリッジ200を新しい薬剤カートリッジと交換する場合には、ピストン109が
図6(b)の状態つまり位置P1まで退避するように、薬剤カートリッジ200が装填された薬剤注入装置11がピストン109を駆動させる。
【0051】
また、以下において詳述するように、薬剤カートリッジ200中の薬剤の使用期限が超えた場合、あるいは、1回の投与量よりも薬剤カートリッジ200中の薬剤の残量が少ない場合には、ピストン109がP2の位置に達していなくても薬剤カートリッジ200を交換してもよい。この場合にも、ピストン109を
図6(b)に示す位置P1まで退避させることによって、薬剤カートリッジ200をカートリッジアダプタ101から取り出すことができる。
【0052】
図7(a)および(b)は、ピストン109が位置P1から位置P3まで移動する際にスライド部材108の移動を示す斜視図である。スライド部材108は遮蔽部108aを有し遮蔽部108aにスリット108bが設けられている。薬剤カートリッジ200のシリンダ201の側面には、帯状の第2識別情報が付されている。上述したように、位置P1からピストン109の移動にともない、スライド部材の遮蔽部108aに設けられたスリット108bが第2識別情報205を走査する。スリット108bを介して薬剤注入装置11側に設けた発光素子および光検出素子で第2識別情報205から反射する光を検出することによって、第2識別情報205を検出することができる。詳細については後述する。
【0053】
[薬剤注入装置11の構造]
図8(a)および(b)は筐体12を水平な方向で分割し、上半分の筐体12を取り除いた状態の薬剤注入装置11の構造を示す斜視図である。
図9は薬剤注入装置11のブロック図の一例を示す。薬剤注入装置11は、筐体12内に設けられた電池21、駆動部32、第2識別情報検出器24、ロータリーエンコーダ25、原点検出器24d、装填検出器29、第1識別情報検出器28および制御基板31を含む。
【0054】
電池21は、駆動部32、制御基板31等に電力を供給する。電池21は、1次電池であってもよいし、2次電池であってもよい。2次電池を用いる場合には、薬剤注入装置11は、充電回路等、2次電池を充電するための回路をさらに備えている。
【0055】
駆動部32は駆動力を発生し、カートリッジアダプタのピストンギア105を回転駆動させる。駆動部32は、例えば、モータ22と、変速機23と駆動ギア35とを含む。モータ22には種々の小型モータを用いることができる。変速機23は、モータ22の回転速度を減じ、回転力を駆動ギア35に伝達する。モータ22または変速機23にはロータリーエンコーダ25が設けられていることが好ましい。ロータリーエンコーダ25は、モータ22または変速機23の1つのギアの回転数をパルス信号に変換し、出力する。モータ22が、ブラシレスモータである場合には、ブラシレスモータに備えられているホール素子からモータの回転数を検出してもよい。
【0056】
第2識別情報検出器24は薬剤カートリッジ200の外側面に位置する第2識別情報205を検出する。詳細は以下で説明する。制御基板31は、制御部(演算回路、CPU)41、メモリ42、カレンダークロック46、モータドライバ44を含む。演算回路41は、メモリ42から読み込まれたコンピュータプログラムを実行することにより、コンピュータプログラムの手順にしたがって他の回路および構成要素に命令を送る。命令を受けた各構成要素は、本明細書において説明されるように動作して、各機能を実現する。コンピュータプログラムの手順は、以下において説明する添付の図面におけるフローチャートによって示されている。
【0057】
メモリ42は、揮発性であってもよいし、不揮発性であってもよい。メモリ42は、好ましくは不揮発性RAMである。メモリ42は一時的でない(non-transitory)、コンピュータ読み取り可能な記録媒体の例である。メモリ42は、薬剤注入システム100を使用するものに適切な薬剤の注射スケジュールがあらかじめ記憶されている。注射スケジュールは、1日あるいは1週間等、所定の期間における、注射すべき薬剤の種類および投与量、注射のタイミング等に関するデータを含む。注射スケジュールは例えば、投薬の処方に従い、患者、医師、技師等が入力を行う。
【0058】
カレンダークロック46は、時計およびカレンダ機能を備え、注射スケジュールにおける時間軸の基準となる日付および時刻情報を提供する。モータドライバ44は、演算回路41から出力される制御信号に基づき、モータ22を駆動する電力を電池21から生成する。
【0059】
この他、
図1を参照して説明したように、演算回路41は、電源ボタン13、注射ボタン14、操作ボタン16からの入力を受け付ける。また、演算回路41は、表示部15へ種々の情報を出力し、表示部15に情報を表示させる。さらに、演算回路41は原点検出器24d、装填検出器29および第1識別情報検出器28から検出信号を受け付ける。
【0060】
薬剤注入装置11において、カートリッジアダプタ101のピストン109の位置は、ロータリーエンコーダ25から得られるパルスカウント等のモータ22の回転に関する情報に基づき決定される。このピストン109の位置は、複数のカートリッジアダプタ101が交換して用いられる場合には、カートリッジアダプタ101ごとに決定され、メモリ42に記憶される。具体的には、モータ22の回転数からピストン109がどの位置にあるかが決定される。また、所定の薬剤を注射するためのピストン109の移動量が決定され、それに必要なモータ22の回転数が決定される。ピストン109の位置およびモータ22の回転数は原点検出器24dの検出信号による原点(ピストン109の位置およびタイミング)を基準として決定される。
【0061】
図8(a)および(b)に示すように、筐体12はカートリッジアダプタ101の大部分を収納するアダプタ空間12bと、アダプタ空間12bに連通する開口12aを含む。開口12a近傍の筐体1内部には扉20が設けられており、
図8(a)に示すように、付勢体33によって、扉20が常時閉まる方向に付勢されている。付勢体33は例えば、引っ張りばねである。
図8では回転軸を中心に回動する扉20を示しているが、扉20はスライドすることにより開口12aを開閉してもよい。また、扉20は例えば2分割されており、両開き扉であってもよい。
【0062】
筐体12内のアダプタ空間12bに近接して、係合部材30および脱落防止部材26が設けられている。係合部材30は付勢体27により付勢されている。また、係合部材30は筐体12に設けられロック解除レバー18に機械的に接合されている。係合部材30は
図8に示す例では爪である。また、付勢体27は板ばねである。これらの構造はカートリッジアダプタ101の取り外しをロックしたり、カートリッジアダプタ101が意図せずに脱落するのを抑制する。
【0063】
図8(c)は、分割された筐体12の反対側に位置する薬剤注入装置11の構造を示す斜視図である。
図8(c)に示すように、アダプタ空間12bの最も奥の部分に、装填検出器29および第1識別情報検出器28が設けられている。
【0064】
図10は、筐体12に挿入されたカートリッジアダプタ101の先端部分を拡大して示す斜視図である。
図10に示すように、ピストンガイド部104の先端には、第1識別情報104gおよび装填情報104hが設けられている。上述したように第1識別情報104gおよび装填情報104hはカートリッジアダプタ101の外形に設けられた凹部または凸部である。第1識別情報検出器28および装填検出器29は例えば、それぞれ微小なボタン28aおよび微小ボタン29aを有するマイクロスイッチであり、第1識別情報104gおよび装填情報104hに対応する領域にそれぞれ位置している。
図10では、第1識別情報104gは凹部であり、ボタン28aが押し下げられないことによって、第1識別情報検出器28は、検出信号を出力しない。また、装填情報104hは凸部であり、ボタン29a押し下げられることによって、装填検出器29が検出信号を出力する。
【0065】
これにより、薬剤注入装置11は、カートリッジアダプタ101の装填を検出することができる。また、異なる薬剤カートリッジが収納されたカートリッジアダプタ101の種類を識別することができる。
【0066】
カートリッジアダプタ101の外形に設けられた凹部または凸部によって第1識別情報104gを構成する場合、第1識別情報104gが1つであれば、1つの第1識別情報104gにつき、2種類のカートリッジアダプタ101を識別できる。したがって、2つの第1識別情報104gを設ければ4種類のカートリッジアダプタ101を識別できる。第1識別情報104gの数は、必要に応じて設ければよく、また、第1識別情報104gを設ける位置も
図10に示す例に限られない。
【0067】
また、装填情報104hおよび第1識別情報104gが導体である場合には、検出器として、例えば、導体と接触する位置に配置される2つの端子を用いることができる。装填情報104hおよび第1識別情報104gが磁力である場合には、検出器として磁気センサ等を用いることができる。さらに装填情報104hおよび第1識別情報104gが光学的特性である場合には、検出器として発光素子と発光素子から出射する光を検出する光センサを用いることができる。
【0068】
[カートリッジアダプタ101の薬剤注入装置11へ装填・取り外し]
次に
図11から
図14を参照しながら、カートリッジアダプタ101の薬剤注入装置11へ装填、取り外しと、薬剤注入装置11における、カートリッジアダプタ101のロック機構および脱落防止機構とを説明する。
図11(a)から(d)は薬剤注入装置11内に装填された状態のカートリッジアダプタ101を取り外す過程における薬剤注入装置11の構造を示している。
【0069】
図11(a)に示すように、カートリッジアダプタ―101が装填された状態において、係合部材30はカートリッジアダプタ101に設けられた凹部104qと係合している。係合部材30は、ロック解除レバー18と機械的に接続されている。これらはロック機構を構成している。
図12(a)はロック機構を拡大して示す斜視図である。
【0070】
また、脱落防止部材26がカートリッジアダプタ101の凹部104rと係合している。これらは脱落防止機構を構成している。
図13(a)は脱落防止機構を拡大して示す斜視図である。これら2つの機構はカートリッジアダプタ101のピストンガイド部104を挟むように配置されている。このため、この状態では、カートリッジアダプタ101を
図11(a)におい示す矢印の方向に引き抜こうとしても、2つの機構の係合によってカートリッジアダプタ101は移動できない。よって、例えば、操作者が誤ってカートリッジアダプタ101を取り外そうとしても、カートリッジアダプタ101が移動するのを防止することできる。
【0071】
図11(b)に示すように、カートリッジアダプタ101を取り外す場合には、操作者がロック解除レバー18を矢印で示す方向にスライドさせる。これにより、ロック解除レバー18に接続した係合部材が、回動軸を中心に回動し、
図12(b)に示すように、係合部材の爪がカートリッジアダプタ101の凹部104qから離間する。つまり、ロックが解除される。しかしこの状態では、脱落防止部材26と凹部104qとは係合したままであり、ロック機構を解除しただけでは、カートリッジアダプタ101は脱落することはない。このため、操作者がカートリッジアダプタ101を取り外そうとして、ロック機構を解除しただけで、予期せずに重力等によってカートリッジアダプタ101が脱落するのを抑制することができる。
【0072】
図11に示す形態では、係合部材30は、付勢体27により付勢されている。このため、ロック解除レバー18を矢印の方向にスライドさせ、ロックを解除した後、ロック解除レバー18から手指を離すと、付勢体27の付勢力によって、係合部材30の爪は再び凹部104qに挿入される。また、ロック解除レバー18も矢印と反対の方向に移動する。このため、ロックされた状態に戻る。
【0073】
図11(c)に示すように、ロック解除レバー18をスライドさせた状態でカートリッジアダプタ101を矢印の方向に引っ張ると、
図13(b)に示すように、脱落防止部材26がカートリッジアダプタ101の凹部104rの壁をのり越え、脱落防止機構の係合が解除される。また、ロック機構の係合部材30の爪が凹部104qから離間し、凹部104qの外へ出る。この状態で、カートリッジアダプタ101をさらに矢印の方向に引っ張ると、
図11(d)に示すように、カートリッジアダプタ101を完全に取り外すことができる。カートリッジアダプタ101の全体が完全にアダプタ空間12b外に位置するように取り外すと、付勢体33の付勢力によって、開口12aを扉20が自動的に閉塞する。このため、操作者が扉20を閉め忘れることがなく、また、扉20の開閉を操作者が気にする必要がない。
【0074】
カートリッジアダプタを薬剤注入装置11に装填する場合、カートリッジアダプタ101のピストンガイド部104の先端を開口12aの扉20へ押し当て、筐体12の内部へカートリッジアダプタ101を挿入する。この場合には、脱落防止部材26および付勢体27の付勢力に抗してカートリッジアダプタ101を挿入することにより、
図11(a)に示すように、カートリッジアダプタ101の挿入が完了する。この時、係合部材30はカートリッジアダプタ101の凹部104qと係合し、脱落防止部材26がカートリッジアダプタ101の凹部104rと係合している。
【0075】
図14(a)および(b)は、カートリッジアダプタ101のピストンギア105および薬剤注入装置11の駆動ギア35の近傍を拡大して示す斜視図である。カートリッジアダプタ101を薬剤注入装置11に挿入する場合、カートリッジアダプタ101のピストンギア105を薬剤注入装置11の駆動ギア35と噛み合わせる必要がある。しかし、ピストンギア105および駆動ギア35の停止状態の回転角度によっては、2つのギアの歯が当接し、カートリッジアダプタ101が挿入できなかったり、不適切な状態で挿入されることが考えられる。
【0076】
このような不具合を避けるため、
図14(a)に示すように駆動ギア35の各歯の開口12a側の端面にはテーパー35aを設けることが好ましい。また、
図14(b)に示すようにピストンギア105の各歯のピストンガイド部104側の端面にはテーパー105faを設けることが好ましい。これにより、カートリッジアダプタ101の挿入時に、ピストンギア105の歯が駆動ギア35の歯と当接する状態であっても、駆動ギア35のテーパー35aとピストンギア105のテーパー105faとが当接し、カートリッジアダプタ101の挿入の力が、少なくとも一方のギアを少し回転させるように働く。よって、一方のギアの歯が他方のギアの溝に挿入され、カートリッジアダプタ101のピストンギア105を薬剤注入装置11の駆動ギア35と正しく噛み合わせることができる。その結果、カートリッジアダプタ101の薬剤注入装置11への装填の際、操作者がこれらのギアの回転角度位置を注意することなく、短い時間でカートリッジアダプタ101をスムーズに挿入することができる。つまり、カートリッジアダプタ101の装填時における操作者の負担を軽減することができる。
【0077】
このように、本実施形態によれば、薬剤注入装置11へのカートリッジアダプタ101の装填および取り外しに際し、高い安全性および操作性が提供される。また、カートリッジアダプタ101の交換に要する時間が短く、かつ、交換が容易であるため、カートリッジアダプタ101の交換回数が増えても、操作者に与える負担が少ない。
【0078】
[第2識別情報検出器24の構造および動作]
図15から
図17を参照しながら、第2識別情報検出器24の構造および動作を詳細に説明する。上述したように、本実施形態において、カートリッジアダプタ101の種類と収納される薬剤カートリッジ200の種類とは1対1で対応しており、あるカートリッジアダプタ101に挿入される薬剤カートリッジ200の種類は決められている。しかし、対応していない薬剤カートリッジ200を収納させることも可能である。このため、薬剤注入装置11は、カートリッジアダプタ101の薬剤カートリッジ200が交換された場合、薬剤カートリッジ200に付された第2識別情報205、つまり、薬剤に固有の色を検出し、薬剤カートリッジ200の種別を特定する。
【0079】
図15(a)、(b)および(c)はそれぞれ、カートリッジアダプタ101のピストン109の台座109aが位置P1(最も退避した位置)にあるとき、位置P1と位置P3との間の位置にあるとき、および、位置P3にある時の、第2識別情報検出器24近傍を拡大して示す図である。
【0080】
図15(a)に示すように、第2識別情報検出器24は基台24cと基台24cに設けられた光検出器24aと、発光素子24bと原点検出器24dとを含む。基台24cは、筐体12において、ピストン109の移動方向である長手方向にスライド可能に支持され、付勢体34によって、開口12a側に付勢されている。本実施形態では、発光素子24bは赤、青、緑の光を出射し、光検出器24aは白色光の領域で光の強度を検出することができる。発光素子24bは例えば、RGBの光を別々に発光させることのできるLEDであり、光検出器24aは、フォトダイオードなどである。
【0081】
カートリッジアダプタ101が薬剤注入装置11に挿入されると、カートリッジアダプタ101のスライド部材108の遮蔽部108aの一端と、基台24cの突起24eと当接することによって、基台24cは
図15(a)において矢印の方向へ移動させられる。この状態で、遮蔽部108aのスリット108bは、光検出器24aおよび発光素子24bの位置と対応しており、スリット108bを介して、発光素子24bが光をカートリッジアダプタ101の薬剤カートリッジ200のシリンダ201の側面を照射し、側面から反射することにより得られた光を、スリット108bを介して光検出器24aが検出する。
【0082】
薬剤カートリッジの交換時には、ピストン109が位置P1にあり、ピストン109が最も退避している。このため、交換した薬剤カートリッジ200が収納されたカートリッジアダプタ101が装填された状態でもピストン109は位置P1にある。この時、ピストン109の台座109aはガスケット202と接触しておらず、スライド部材108もシリンダ201から離れている。シリンダ201の外側面には色領域である第2識別情報205が付されている。遮蔽部108aのスリット108bは、第2識別情報205よりも薬剤カートリッジ200の端部側に位置している。また、原点検出器204dは、筐体12に設けられた当接部36と当接している。
【0083】
図15(b)に示すように、駆動ギア35の回転によって、ピストンギア105が回転し、ピストン109を矢印の方向に移動させる。これに伴い、ばね107で付勢されたスライド部材108も矢印方向に移動する。その結果、付勢体34で付勢された第2識別情報検出器24の基台24cも矢印の方向へ移動する。スライド部材108は基台24cと矢印方向へ一緒に移動するため、遮蔽部108aのスリット108bを介して、光検出器24aおよび発光素子24bがシリンダ201の外側面を走査する。
図16に示すように、基台24cの移動に伴い、原点検出器24dと当接部36との当接状態が解除される。この時の原点検出器24dからの信号に基づき、例えば、ロータリーエンコーダ25の回転数と、ピストン109の位置とを対応させ、ピストン109の位置の原点およびモータの回転数原点(ゼロ)に設定することができる。原点検出器24dと当接部36との当接の解除は位置P1と位置P3との間であれば、どこであってよい。つまり、ピストンが位置P3に達し、薬剤の注入可能な状態になるまでに原点が決定さればよい。
【0084】
図15(c)に示すように、ピストン109をさらに移動させると、台座109aがガスケット202に当接し、スライド部材108がシリンダ201の端部と当接し、ピストン109が位置P3に達する。この状態で、遮蔽部108aのスリット108bは第2識別情報205を超えてシリンダ201の先端201a側に位置している。このため光検出器24aおよび発光素子24bの第2識別情報205の走査が完了する。また、モータの回転を停止し、ピストン109の移動を停止させる。これにより、ピストン109の薬剤の注入の行える位置へ移動が完了する。位置P3でピストン109を停止させるのは、例えば、上述の原点検出からモータの回転数をカウントし、あらかじめ定められた距離だけピストン109を移動させることによって行うことができる。
【0085】
光検出器24aおよび発光素子24bによる第2識別情報205の検出は、例えば、赤、青、緑の光を照射し、それぞれの色で照射した時の光検出器24aの検出強度と位置(時間)とを取得する。ピストン109を例えば微小量Δxだけ移動させ、ピストンの移動を停止した状態で赤、青、緑の順で光を照射し、それぞれの光の照射した時の光の強度を取得する。これを、位置P1と位置P3との間で繰り返して行う。あるいは、位置P1から位置P3へピストンを移動させながら、まず赤の光を連続的に照射し、それぞれの光の照射した時の光の強度を取得する。ピストンが位置P3まで達したら、ピストンの位置を位置P1まで戻す。これを、青および緑についても繰り返し行ってもよい。
【0086】
図17は、第2識別情報検出器24の検出結果の一例を示す。図に17に示すように、赤(R)、緑(G)および青(B)の光を照射した場合の光の強度を示す。横軸は、スリット108bの位置を示し縦軸は強度を示す。第2識別情報205の領域において、照射する光により強度が異なっている。これは、第2識別情報205に色が付されており、反射光の強度が、使用する光と付された色との組み合わせで異なるからである。
図17の例では、第2識別情報205は異なる2色の帯の領域を含む。第2識別情報205の両端では、色が付されていない部分の影響を受けるため、検出結果は、2色の帯の色以外の影響を含んでいる。また、2色の帯が接する領域近傍では2つの色の影響を受けている。しかし、
図17において、例えば、B1およびB2で示す領域はこれらの影響が少ない。このため、B1およびB2における3色の検出結果を用いれば、第2識別情報205に付された色を識別することができる。
【0087】
例えば、B1あるいはB2における、赤(R)、緑(G)および青(B)の信号強度の大小のみで色を識別してもよい。具体的には、それぞれの色での検出強度をSR、SG、SBで示す場合、3つの信号の強度の大小関係、例えば、SR>SG>SB、SG>SR>SB、SB>SR>SG等のどの関係が満たされるかによって、色を識別し得る。第2識別情報205に付された色そのものを判別する必要はなく、あらかじめ使用される色が決まっているので、使用される色がどのような信号強度の大小関係を満たすかで識別し得る。
【0088】
このように構成された第2識別情報検出器24を用いることにより、薬剤カートリッジ200を交換した後、最初にカートリッジアダプタ101を薬剤注入装置11に装填し、ピストン109を薬剤が注入可能な位置にまで移動させる間に、第2識別情報を識別することができる。したがって、薬剤カートリッジ200の識別に余分な時間をかけることがなく、薬剤カートリッジ200を交換した場合でも短い時間で薬剤注入装置11を使用することができる。
【0089】
また、第2識別情報検出器24により、第2識別情報の色を識別する際、スライド部材108の遮蔽部108aのスリット108bを介して検出を行う。このため、光検出器24aに入射する光を制限することができ、種々の使用環境にあっても周囲の照明環境や明るさ等に影響されず、正確な第2識別情報の識別を行うことができる。よって、使用環境による影響を受けず、正確に薬剤管理を行うことができる。
【0090】
[外観的特徴の呈示]
図18(a)および(b)は、薬剤カートリッジ200,200’およびカートリッジアダプタ101、101’に付される外観的特徴の例を示す。上述したように外観的特徴は主として操作者のために呈示される。
【0091】
外観的特徴は、色、模様および記号から選ばれる少なくとも1つであり、これらの組み合わせでもよい。例えば、
図18(a)に示すように、薬剤カートリッジ200および200’は、所定の色で白抜きの数字が示された外観的特徴220aおよび220b(色と記号の組み合わせ)を有していてもよい。
図18(a)では異なる色を白黒の濃淡で示している。操作者は外観的特徴220aと外観的特徴220bとの数字および色がことなることにより、薬剤カートリッジ200’と薬剤カートリッジ200とは異なる薬剤が充填されていることを直感的に認識できる。
【0092】
図18(b)に示すように、カートリッジアダプタ101および101’の領域103r2に付される外観的特徴120aおよび120bは、それぞれ外観的特徴220aおよび220bと同じ数字が付されており、また、同じ色が用いられている。また、領域103r1には、外観的特徴220aおよび外観的特徴220bとおなじ外観的特徴121aおよび外観的特徴121bが付されている。これによって、操作者は、カートリッジアダプタ101には、薬剤カートリッジ200を使用し、カートリッジアダプタ101’には薬剤カートリッジ200’を使用すべきであることを容易に理解できる。
【0093】
外観的特徴120aおよび120bは、挿入方向を示す記号および文字が示されており、外観的特徴220aおよび外観的特徴220bと同一ではない。しかし、同じ数字が示されており、同じ色が用いられているため、外観的特徴120aと外観的特徴220aとは類似しており、操作者はこれらの特徴が対応していることを理解する。
【0094】
薬剤カートリッジ200およびカートリッジアダプタ101にこのような外観的特徴を付すことにより、操作者による薬剤の取り違えの可能性を低減することができる。また、認識および識別しやすい外観的特徴を用いることにより、判断に時間を要することなく、適切な薬剤カートリッジを選択することができる。
【0095】
また、薬剤注入装置11の表示部15に上述した外観的特徴またはこれに類似する外観的特徴を表示してもよい。
図19(a)および(b)に示すように、カートリッジアダプタ101を薬剤注入装置11に装填した状態では、カートリッジアダプタ101の外観の大部分は薬剤注入装置11から露出しない。このため、たとえば、薬剤注入装置11は、カートリッジアダプタ101の第1識別情報を検出した結果に基づき、上述した外観的特徴を表示してもよい。これにより、操作者は、カートリッジアダプタ101がほとんど見えない状態でも、装填されているカートリッジアダプタ101を確認することができる。また、
図19(a)および(b)に示すように、カートリッジアダプタ101の外観的特徴121aが露出している場合には、表示部15に表示された外観的特徴と、カートリッジアダプタ101の外観的特徴121aとが一致していることにより、薬剤注入装置11が正しく動作していることも確認できる。
【0096】
また、
図19(c)および(d)に示すように、表示部15は、メモリ42に記憶された注射スケジュールの情報および第1識別情報検出器28の検出結果に基づき、カートリッジアダプタ101が装填されていない場合および注射スケジュールと異なる薬剤のカートリッジアダプタ101が装填されている場合、装填すべき薬剤の種類に応じた外観的特徴またはこれに類似した特徴を表示させてもよい。
【0097】
(薬剤注入システム100の動作)
以下、
図1および
図20から
図26に示すフローチャートを参照して、カートリッジアダプタ101および薬剤注入装置11を含む薬剤注入システム100の動作を説明する。薬剤注入装置11のメモリ42には、あらかじめ、注射スケジュールのデータが記憶されている。また、カレンダークロック46には正しい日付および時刻が設定されている。
図20から
図26に示すフローチャートに従う以下の動作の手順は、1または複数のコンピュータプログラムとしてメモリ42に記憶されており、処理に応じてメモリ42から呼び出されたコンピュータプログラムが演算回路41によって実行されることにより、以下の動作を行う。このため、薬剤注入装置11の制御の主体は演算回路41であるが、演算回路41には特に言及せず説明を行う。また、以下の動作で表示とは表示部15に表示させることを言う。
【0098】
[メインフロー、
図20]
まず使用者が、電源ボタン13を押すことによって(S1)、薬剤注入装置11が起動する。薬剤注入装置11が起動すると、カレンダークロック46の日付および時刻および注射スケジュール、第1識別情報検出器28による検出結果、装填検出器29による検出結果に基づき、次に注射する薬剤のカートリッジアダプタ101が装填されているかどうかを判断する(S2)。装填されていない場合には、薬剤種別交換フロー(S11)を実行する。
【0099】
次に注射する薬剤のカートリッジアダプタ101が装填されている場合、薬剤カートリッジ200の薬剤が使用期限内であるかどうかを判断する。使用期限は、装填されたカートリッジアダプタ101が最初に薬剤注入装置11に装填された日付をメモリ42に記憶しておき、これを参照することにより判断する。
【0100】
薬剤が使用期限を超えている場合には、その旨を表示し(S12)、新品薬剤に交換するフロー(S13)を実行する。
【0101】
薬剤が使用期限内であれば、投与量表示し、投与量の変更が必要か否かを表示する(S4)。投与量変更が操作ボタン16によって選択された場合には、投与量変更処理フロー(S14)を実行する。投与量の変更がない場合、または、投与量変更処理フロー(S14)を実行した後、カートリッジアダプタ101内の薬剤カートリッジ200に投与量以上の薬剤が残っているかどうかを判断する。薬剤カートリッジ200の薬剤の量は、注射を行うたびに、投与量をメモリ42に記憶しておき、これを参照することにより求められる。
【0102】
投与量以上の薬剤が残っていない場合には、薬剤が不足していることを表示し(S15)、新品薬剤に交換するフロー(S13)を実行する。
【0103】
投与量以上の薬剤が残っている場合には、空気抜き処理フロー(S7)を行い、注射処理フロー(S8)を行う。
【0104】
注射の終了後、薬剤の残量および次回の注射スケジュール(次回の薬剤および必要に応じて時刻)を表示する(S9)。
【0105】
その後、操作者が電源ボタン13を押し下げ、薬剤注入装置11を停止させる。これによりメインフローが終了する。
【0106】
[空気抜き処理フロー、
図21]
空気抜きが必要な場合、まず、空気抜きを行うこと、注射針を取り付けることおよび注射針を上に向けた状態で保持することを促す表示を行う(S21)。
【0107】
操作者が注射針210を針取付部102に取り付け(S22)操作ボタン16の決定ボタン(例えば丸形のボタン)を押し下げる(S23)。
【0108】
空気抜き中である旨の表示を行い(S24)、モータ22を回転させることによって、駆動ギア35およびピストンギア105を回転させ、所定量、ピストン109を前進方向に移させる(S25)。所定量の空気抜き量に達するまでピストンを移動させ(S26)、モータ22を停止させる(S27)。
【0109】
空気抜きを完了させるかどうか、さらに空気抜きを行うかどうか確認を促す表示を行う(S28)。さらに空気抜きが必要であるかどうかは、一般的には、操作者が針先から液体が出たかどうかを確認することによって判断する。
【0110】
操作ボタン16の決定ボタンが押下されたかどうかを判断し(S29)、押された場合には、空気抜き処理フローを終了する。さらに空気抜きを行うことを示す操作ボタン16(例えば下を示す逆三角形のボタン)が押された場合には、ステップS24からS29までを繰り返す。これにより空気抜き処理フローが終了する。
【0111】
[注射処理フロー、
図22]
注射処理を行う場合、まず、注射を行うことを表示し、刺針を行い、注射ボタン14を押すように表示する(S31)。
【0112】
操作者が刺針を行い(S32)、注射ボタン14を押す(S33)と、注射中である旨の表示を行う(S34)。モータ22を回転させることによって、駆動ギア35およびピストンギア105を回転させ、所定量、ピストン109を前進方向に移させる(S35)。所定量の投与量に達するまでピストンを移動させ(S36)、モータ22を停止させる(S37)。
【0113】
その後、しばらく抜針を行わず、保持することを促す表示を行う(S38)。薬剤の注入はモータ22の停止後もしばらく続く場合があり、早く抜針することにより、規定量の薬剤が注入されなくなることを防ぐためである。
【0114】
所定時間(数秒〜10秒程度)の経過後(S39)、抜針後・注射針を取り外し、決定ボタンを押すことを促す表示を行う(S40)。
【0115】
操作者は抜針を行い(S41)、注射針を取り外し(S42)、決定ボタンを押す(S43)。これにより、注射処理フローが終了する。
【0116】
[投与量変更処理フロー、
図23]
投与量変更処理を行う場合、現在設定されている投与量表示し、投与量の値を操作ボタン16で変更し、決定ボタンを押すように表示する(S51)。
【0117】
操作ボタン16の上ボタン(三角形のボタン)が押された場合(S52)、変更される投与量が設定された上限を超えていないかどうか判断する(S56)。上限を超えない場合、投与量を1単位増加させ(S57)、ステップ51に戻る。上限を超える場合、これ以上投与量を増やせない旨の表示を行い(S58)、ステップ51に戻る。
【0118】
操作ボタン16の下ボタンが押された場合(S53)、変更される投与量が設定された下限を下回っていないかどうか判断する(S59)。下限を下回っていない場合、投与量を1単位減少させ(S60)、ステップ51に戻る。下限よりも小さい場合、これ以上投与量を減らせない旨の表示を行い(S61)、ステップ51に戻る。
【0119】
決定ボタンが押下されたかどうかを判断する(S54)。決定ボタンが押されるまで、ステップ51に戻る。決定ボタンが押下された場合、投与量が変更されたことを表示する(S55)。これにより、投与量変更処理フローが終了する。
【0120】
[薬剤種別交換フロー、
図24]
薬剤種別を交換する場合、カートリッジアダプタを取り外すことを促す表示を行う(S71)。
【0121】
カートリッジアダプタ101が取り外されたかどうかを、装填検出器29からの信号に基づき判断する(S72)。
【0122】
カートリッジアダプタ101が取り外された場合、次に装填すべき薬剤のカートリッジアダプタを装填するよう促す表示を行う(S73)。
【0123】
装填検出器29からの信号に基づき、カートリッジアダプタ101が装填されたかどうかを判断する(S74)。
【0124】
カートリッジアダプタ101が装填された場合、装填すべき種別のカートリッジアダプタ101であるかどうかを、第1識別情報検出器28からの信号に基づき判断する(S75)。
【0125】
正しいカートリッジアダプタ101ではない場合、間違いである旨の表示を行い(S77)、ステップ71へ戻る。
【0126】
正しいカートリッジアダプタ101が装填された場合、装填されたカートリッジアダプタ101の種別を表示する(S76)。これにより、薬剤種別交換フローが終了する。
【0127】
[新品薬剤に交換するフロー、
図25]
新品薬剤に交換する場合、モータ22を回転させることによって、駆動ギア35およびピストンギア105を回転させ、ピストン109を後退させる(S81)。原点検出器24dが原点を検出したかどうかを判断し(S82)、検出した場合には、ロータリーエンコーダ25からの信号に基づくモータの回転数をリセットする。
【0128】
ピストンが薬剤交換の位置(位置P1)まで後退したら(S84)、モータ22を停止させる(S85)。
【0129】
カートリッジアダプタを取り外すように表示し(S86)、カートリッジアダプタ101が取り外されたかどうかを、装填検出器29からの信号に基づき判断する(S87)。
【0130】
カートリッジアダプタ101が取り外された場合、カートリッジアダプタから使用済みの薬剤カートリッジ200を取り出し、同種の新しい薬剤カートリッジを挿入し、カートリッジアダプタ101を装填するよう促す表示を行う(S88)。
【0131】
装填検出器29からの信号に基づき、カートリッジアダプタ101が装填されたかどうかを判断する(S89)。
【0132】
カートリッジアダプタ101が装填された場合、装填すべき種別のカートリッジアダプタ101であるかどうかを、第1識別情報検出器28からの信号に基づき判断する(S90)。
【0133】
正しいカートリッジアダプタ101ではない場合、間違いである旨の表示を行い(S93)、薬剤種別交換フローを実行する(S94)。その後、ステップ90へ戻る。
【0134】
正しいカートリッジアダプタ101が装填された場合、薬剤識別処理フローを実行する(S91)。
正しい薬剤カートリッジ200が挿入されている場合には、処理を終了する。間違った薬剤カートリッジ200が挿入されている場合には、その旨を表示し(S95)ステップ81へ戻る。
【0135】
[色判別フロー、
図26]
色判別フローを行う場合、まず、検出のための操作の分解能Δxを設定する(S101)。モータ22を回転させることによって、駆動ギア35およびピストンギア105を回転させ、ピストン109を前進方向に移させる(S102)。ピストンの移動量がΔxになったかどうかを判断し(S103)、Δxだけピストン109が移動したら、モータ22を停止させる(S104)。
【0136】
発光素子24bから赤色の光を発光させ(S105)、光検出器24aからの出力信号をメモリ42に記憶する(S106)。その後発光を停止する(S107)。
【0137】
発光素子24bから緑色の光を発光させ(S108)、光検出器24aからの出力信号をメモリ42に記憶する(S109)。その後発光を停止する(S110)。
【0138】
発光素子24bから青色の光を発光させ(S111)、光検出器24aからの出力信号をメモリ42に記憶する(S112)。その後発光を停止する(S113)。
【0139】
ピストン109が位置P3にまで到達したかどうかを原点検出器24dからの信号およびロータリーエンコーダ25からの信号に基づくモータの回転数に基づき判断(S124)し、位置P3に達していなければ、ステップS102へ戻る。
【0140】
位置P3に達している場合、メモリ42のデータから色情報に変換し(S115)、色情報を薬剤カートリッジ200の第2識別情報と対応させ、薬剤の種別を決定する(S126)。
【0141】
これにより、色判別フローが終了する。
【0142】
(カートリッジアダプタ101が装填された薬剤注入装置11の他の意匠)
薬剤注入装置11の外観は、上記実施形態に限られず、他の外観を有していてもよい。例えば、
図27から
図29または
図30に示す形態を有していてもよい。
図27から
図29に示す形態では、薬剤注入装置11にカートリッジアダプタ101が装填された状態で、針取付部102を保護するために、回動式のキャップを備えている。
図28(a)に示すように、回動式のキャップを開けた状態において、矢印Aで示す部分を皮膚(肌)に当接させることにより、注射時に薬剤注入装置を安定して保持させることができる。
図30に示す形態では取り外し式のキャップを備えている。
【0143】
(その他の形態)
上記実施形態では、2種類の薬剤がそれぞれ含まれるカートリッジアダプタを交換しながら、投薬を行う例を説明した。しかし、本開示の薬剤注入装置、カートリッジアダプタおよび薬剤注入システムは3種以上の薬剤およびこれに対応する3つのカートリッジアダプタを交換しながら、投薬を行ってもよい。
【0144】
また、上記実施形態では、第2識別情報205が薬剤に固有の色が付された着色領域であるため、第2識別情報検出器24は、色を検出するための構成を備えていた。第2識別情報205が薬剤に固有の数値に対応する1次元または2次元のバーコード、あるいは、RFIDなどのICタグである場合には、これらの情報を検知し得る構造を備えた第2識別情報検出器24を設ければよい。第2識別情報205が1次元バーコードである場合には、上記実施形態と同様の構成、あるいは1色のみを発光させる発光素子24bを用いて、第2識別情報を検出することができる。第2識別情報205が1次元バーコードである場合には、光検出器24aとしてラインセンサを用い、上記実施形態と同様のスキャンを行うことによって、第2識別情報を検出することができる。あるいは、第2識別情報検出器24は、1次元あるいは2次元バーコードリーダーであってもよい。第2識別情報205がICタグである場合には、薬剤注入装置は、第2識別情報検出器24としてICタグリーダを備えていればよい。この場合、第2識別情報の検出にICタグを走査する必要はない。また、ICタグの種類や性能に応じて、ICタグリーダは、薬剤注入装置に装填されたカートリッジアダプタの第2識別情報の位置から離間して配置することもでき、カートリッジホルダの開口103gはなくてもよい。
【0145】
また、上記実施形態で説明した、ロック機構、脱落防止機構、カートリッジアダプタの蓋をロックする構造は一例であり、種々の改変が可能である。特に、凹部や凸部を設ける位置は実施形態の例と逆であってもよい。また、付勢体には、コイルばね、引きばね、板ばね、捩じりばね等種々のばねを用いることができる。また、金属のばね以外に、樹脂で構成される種々のばねを用いてもよい。
【0146】
また、駆動ギアおよびピストン駆動機構も実施形態で説明した構造に限られず、他の機械要素によって実現してもよい。
【0147】
つまり、ロック機構、脱落防止機構、カートリッジアダプタの蓋をロックする構造、ピストン駆動機構は実施形態で説明した機能を備えた種々の構造や機構であってよく、これらを包含するロック手段、脱落防止手段、カートリッジアダプタの蓋をロックする手段および、ピストン駆動手段であってもよい。