特許第6698211号(P6698211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6698211
(24)【登録日】2020年4月30日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】インパクトツール
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/02 20060101AFI20200518BHJP
【FI】
   B25B21/02 J
【請求項の数】19
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-503453(P2019-503453)
(86)(22)【出願日】2017年8月25日
(65)【公表番号】特表2019-520998(P2019-520998A)
(43)【公表日】2019年7月25日
(86)【国際出願番号】US2017048626
(87)【国際公開番号】WO2018039564
(87)【国際公開日】20180301
【審査請求日】2019年1月22日
(31)【優先権主張番号】62/379,393
(32)【優先日】2016年8月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598073073
【氏名又は名称】ミルウォーキー エレクトリック ツール コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100133983
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 均
(72)【発明者】
【氏名】カールソン,ミッチェル
(72)【発明者】
【氏名】フー,ディン,フェン
(72)【発明者】
【氏名】ユー,チーチャン
(72)【発明者】
【氏名】ゼン,ファンビン
【審査官】 山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−033734(JP,A)
【文献】 特開2010−269424(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0068936(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0343622(US,A1)
【文献】 登録実用新案第3066194(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主ハウジングと、
モータと、
該主ハウジングに連結される変速装置ハウジングであって、変速装置ハウジングの正面に対して開放され、径方向に内向きに延びるフランジによって少なくとも部分的に定められる、ベアリングポケットを含む、変速装置ハウジングと、
出力シャフトと、
前記モータからトルクを受け取って、前記出力シャフトを回転させる、前記出力シャフトについて同心状に配置される、シリンダと、
前記変速装置ハウジング内で前記出力シャフトを回転可能に支持するために、前記径方向に内向きに延びるフランジに隣接し、前記径方向に内向きに延びるフランジと当接関係にある、前記ベアリングポケット内に位置付けられるベアリングと、
前記径方向に内向きに延びるフランジとは反対の前記ベアリングの側にある前記ベアリングの少なくとも一部分と径方向に重なり合う、前記出力シャフト上の径方向に外向きに延びるフランジとを含み、
前記出力シャフトに加えられる軸方向反作用力の作用線が、前記径方向に外向きに延びるフランジ、前記ベアリング、及び前記径方向に内向きに延びるフランジを介して、前記変速装置ハウジングに向けられ
前記シリンダは、反復的な回転衝撃を前記出力シャフトに対して付与し、
前記変速装置ハウジングに向けられる前記作用線の結果として、前記シリンダと前記出力シャフトの後方端との間の軸方向クリアランスが、前記出力シャフトに対する前記軸方向反作用力の適用に応答して維持される
インパクトパワーツール。
【請求項2】
前記ベアリングは、前記径方向に内向きに延びるフランジに隣接し且つ前記径方向に内向きに延びるフランジと当接関係にある外側レースと、内側レースとを含み、前記径方向に外向きに延びるフランジは、前記内側レースと径方向に重なり合う、請求項1に記載のインパクトパワーツール。
【請求項3】
前記径方向に外向きに延びるフランジは、前記出力シャフトに対して軸方向に取り付けられるクリップである、請求項1に記載のインパクトパワーツール。
【請求項4】
前記径方向に外向きに延びるフランジは、前記出力シャフトとの一体成形品として一体的に形成される、請求項1に記載のインパクトパワーツール。
【請求項5】
前記ベアリングと前記出力シャフトとの間に配置されるスリーブを更に含み、前記径方向に外向きに延びるフランジは、前記スリーブとの一体成形品として一体的に形成される、請求項1に記載のインパクトパワーツール。
【請求項6】
前記スリーブは、締まり嵌めを介して前記出力シャフトに対して軸方向に取り付けられる、請求項に記載のインパクトパワーツール。
【請求項7】
前記出力シャフトに対して軸方向に取り付けられるクリップを更に含み、リアランスが前記出力シャフトと前記スリーブとの間に存在し、前記クリップは、前記出力シャフトに加えられる前記軸方向反作用力の前記作用線が、前記クリップ、前記スリーブの前記径方向に外向きに延びるフランジ、前記ベアリング、及び前記径方向に内向きに延びるフランジを介して、前記変速装置ハウジングに向けられるよう、前記出力シャフトに加えられる前記軸方向反作用力の適用に応答して生じる前記出力シャフトの変位に応答して、前記径方向に外向きに延びるフランジと当接可能である、請求項に記載のインパクトパワーツール。
【請求項8】
前記出力シャフトは、円周溝を含み、前記クリップは、前記円周溝内で前記出力シャフトに対して軸方向に取り付けられる、請求項に記載のインパクトパワーツール。
【請求項9】
前記ベアリングは、前記径方向に内向きに延びるフランジに隣接し且つ前記径方向に内向きに延びるフランジと当接関係にある外側レースと、内側レースとを含み、前記径方向に外向きに延びるフランジは、前記内側レースと径方向に重なり合う、請求項に記載のインパクトパワーツール。
【請求項10】
前記スリーブは、前記内側レースに締まり嵌めされる、請求項に記載のインパクトパワーツール。
【請求項11】
主ハウジングと、
モータと、
前記主ハウジングに連結される変速装置ハウジングであって、変速装置ハウジングの正面に対して開放され、径方向に内向きに延びるフランジによって少なくとも部分的に定められる、ベアリングポケットを含む、変速装置ハウジングと、
ワークピースに対して作業を行うためにツールビットを取り付け可能である出力シャフトと、
前記モータからの連続的なトルク出力を前記出力シャフトに対する不連続的な回転衝撃に変換するために前記モータと前記出力シャフトとの間に配置される衝撃機構であって、前記モータからトルクを受け取る前記出力シャフトについて同心状に配置されるシリンダを含む、衝撃機構と、
前記変速装置ハウジング内で前記出力シャフトを回転可能に支持するために、前記径方向に内向きに延びるフランジに隣接し、前記径方向に内向きに延びるフランジと当接関係にある、前記ベアリングポケット内に位置付けられるベアリングと、
前記径方向に内向きに延びるフランジとは反対の前記ベアリングの側で前記ベアリングの少なくとも一部分と径方向に重なり合う前記出力シャフト上の径方向に外向きに延びるフランジとを含み、
前記出力シャフトに加えられる軸方向反作用力の作用線が、前記径方向に外向きに延びるフランジ、前記ベアリング、前記径方向に内向きに延びるフランジを介して、前記変速装置ハウジングに向けられ、
前記シリンダは、前記出力シャフトに対して反復的な回転衝撃を付与し、
前記変速装置ハウジングに向けられる前記作用線の結果として、前記出力シャフトの後方端と前記シリンダとの間の軸方向クリアランスが、前記出力シャフトに対する前記軸方向反作用力の適用に応答して維持される、
回転式パワーツール。
【請求項12】
前記ベアリングは、前記径方向に内向きに延びるフランジに隣接し且つ前記径方向に内向きに延びるフランジと当接関係にある外側レースと、内側レースとを含み、前記径方向に外向きに延びるフランジは、前記内側レースと径方向に重なり合う、請求項11に記載の回転式パワーツール。
【請求項13】
前記径方向に外向きに延びるフランジは、前記出力シャフトに対して軸方向に取り付けられるクリップである、請求項11に記載の回転式パワーツール。
【請求項14】
前記径方向に外向きに延びるフランジは、前記出力シャフトとの一体成形品として一体的に形成される、請求項11に記載の回転式パワーツール。
【請求項15】
前記ベアリングと前記出力シャフトとの間に配置されるスリーブを更に含み、前記径方向に外向きに延びるフランジは、前記スリーブとの一体成形品として一体的に形成される、請求項11に記載の回転式パワーツール。
【請求項16】
主ハウジングと、
モータと、
前記主ハウジングに連結され、径方向に内向きに延びるフランジを含む、変速装置ハウジングと、
ワークピースに対して作業を行うためにツールビットを取り付け可能である出力シャフトと、
前記変速装置ハウジング内で前記出力シャフトを回転可能に支持するために前記変速装置ハウジング内に配置され、前記径方向に内向きに延びるフランジと当接関係にある、ベアリングと、
前記モータからの連続的なトルク出力を前記出力シャフトに対する不連続的な回転衝撃に変換するために前記モータと前記出力シャフトとの間に配置される衝撃機構であって、前記モータからトルクを受け取る、前記出力シャフトについて同心状に配置されるシリンダを含む、衝撃機構と、
前記径方向に内向きに延びるフランジとは反対の前記ベアリングの側にある前記出力シャフト上の径方向に外向きに延びるフランジとを含み、
該径方向に外向きに延びるフランジは、前記出力シャフトに加えられる軸方向反作用力の作用線が、前記径方向に外向きに延びるフランジ部分、前記ベアリング、及び前記径方向に内向きに延びるフランジを介して、前記変速装置ハウジングに向けられるよう、前記出力シャフトに加えられる前記軸方向反作用力の適用に応答して生じる前記出力シャフトの変位に応答して前記ベアリングと当接可能であり、
前記シリンダは、反復的な回転衝撃を前記出力シャフトに対して付与し、
前記変速装置ハウジングに向けられる前記作用線の結果として、前記シリンダと前記出力シャフトの後方端との間の軸方向クリアランスが、前記出力シャフトに対する前記軸方向反作用力の適用に応答して維持される
インパクトパワーツール。
【請求項17】
前記径方向に外向きに延びるフランジは、前記出力シャフトに対して軸方向に取り付けられるクリップである、請求項16に記載のインパクトパワーツール。
【請求項18】
前記径方向に外向きに延びるフランジは、前記出力シャフトとの一体成形品として一体的に形成される、請求項16に記載のインパクトパワーツール。
【請求項19】
前記ベアリングと前記出力シャフトとの間に配置されるスリーブを更に含み、前記径方向に外向きに延びるフランジは、前記スリーブとの一体成形品として一体的に形成される、請求項16に記載のインパクトパワーツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
この出願は、2016年8月25日に出願された米国仮特許出願第62/379,393号の優先権を主張し、その全文を本明細書中に参照として援用する。
【0002】
本発明は、パワーツール(動力工具)に関し、より具体的には、インパクトパワーツール(衝撃動力工具)に関する。
【背景技術】
【0003】
インパクトパワーツールは、回転する質量中にエネルギを蓄積して、それを出力シャフトに伝達することによって、回転衝撃をワークピース(被加工物)に高速で送達することができる。そのようなインパクトパワーツールは、一般的に、出力シャフトを有し、出力シャフトは、ツールビット(工具ビット)を保持し得ることがあり、保持し得ないことがある。電気、オイルパルス、機械パルス、又はそれらの任意の適切な組み合わせのような、様々な技術を使用して、出力シャフトを通じて、回転衝撃を伝達することができる。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、1つの態様において、主ハウジングと、主ハウジングに連結される変速装置ハウジング(transmission housing)とを含む、回転式パワーツールを提供する。変速装置ハウジングは、変速装置ハウジングの正面に対して開放され、径方向に内向きに延びるフランジによって少なくとも部分的に定められる、ベアリングポケットを含む。回転式パワーツールは、出力シャフトや、変速装置ハウジング内で出力シャフトを回転可能に支持するために径方向に内向きに延びるフランジに隣接し、径方向に内向きに延びるフランジと当接関係にある、ベアリングポケット内に位置付けられるベアリングや、径方向に内向きに延びるフランジとは反対のベアリングの側でベアリングの少なくとも一部分と径方向に重なり合う出力シャフト上の径方向に外向き延びるフランジも含む。出力シャフトに加えられる軸方向反作用力の作用線が、径方向に外向きに延びるフランジ、ベアリング、及び径方向に内向きに延びるフランジを介して、変速装置ハウジングに向けられる。
【0005】
本発明は、他の態様において、主ハウジングと、モータと、主ハウジングに連結される変速装置ハウジングとを含み、変速装置ハウジングは、変速装置ハウジングの正面に対して開放され、径方向に内向きに延びるフランジによって少なくとも部分的に定められる、ベアリングポケットを含む、回転式パワーツールを提供する。パワーツールは、ワークピースに対して作業を行うためにツールビットを取り付け可能である出力シャフトや、モータからの連続的なトルク出力を出力シャフトに対する不連続的な(discrete)回転衝撃に変換するためにモータと出力シャフトとの間に配置される衝撃機構も含み、衝撃機構は、モータからトルクを受け取る出力シャフトについて同心状に配置されるシリンダを含む。パワーツールは、変速装置ハウジング内で出力シャフトを回転可能に支持するために、径方向に内向きに延びるフランジに隣接し、径方向に内向きに延びるフランジと当接関係にある、ベアリングポケット内に位置付けられるベアリングも含む。パワーツールは、径方向に内向きに延びるフランジとは反対のベアリングの側でベアリングの少なくとも一部分と径方向に重なり合う出力シャフト上の径方向に外向きに延びるフランジを更に含む。出力シャフトに対して加えられる軸方向反作用力の作用線が、径方向に外向きに延びるフランジ、ベアリング、径方向に内向きに延びるフランジを介して、変速装置ハウジングに向けられ、シリンダは、出力シャフトに対して反復的な回転衝撃を付与する。出力シャフトの後方端とシリンダとの間の公称軸方向クリアランスが、出力シャフトに対する軸方向反作用力の適用に応答して維持される。
【0006】
本発明は、更に他の態様において、主ハウジングと、モータと、主ハウジングに連結される変速装置ハウジングとを含み、変速装置ハウジングは、径方向に内向きに延びるフランジを含む、インパクトパワーツールを提供する。インパクトパワーツールは、ワークピースに対して作業を行うためにツールビットを取り付け可能である出力シャフトと、変速装置ハウジング内で出力シャフトを回転可能に支持するために変速装置ハウジング内に配置されるベアリングとを更に含み、ベアリングは、径方向に内向きに延びるフランジと当接関係にある。インパクトパワーツールは、モータからの連続的なトルク出力を出力シャフトに対する不連続的な回転衝撃に変換するためにモータと出力シャフトとの間に配置される衝撃機構と、径方向に内向きに延びるフランジとは反対のベアリングの側にある出力シャフト上の径方向に外向きに延びるフランジとを含む。径方向に外向きに延びるフランジは、出力シャフトに加えられる軸方向反作用力の作用線が、径方向に外向きに延びるフランジ部分、ベアリング、及び径方向に内向きに延びるフランジを介して、変速装置ハウジングに向けられるよう、出力シャフトに加えられる軸方向反作用力の適用に応答して生じる出力シャフトの変位に応答してベアリングと当接可能である。
【0007】
本発明は、更なる態様において、モータと、ワークピースに対して作業を行うためにツールビットを取り付け可能である出力シャフトと、モータからの連続的なトルク出力を出力シャフトに対する不連続的な回転衝撃に変換するためにモータと出力シャフトとの間に配置される衝撃機構とを含む、回転式パワーツールを提供する。衝撃機構は、出力シャフトについて同心状に配置されるシリンダアセンブリと、作動液を収容するシリンダアセンブリ内に定められるキャビティと、第1の閉塞端と、第1の閉塞端とは反対の第2の閉塞端と、第1及び第2の閉塞端の間に定められ、ガスで満たされる、内部容積とを有する、折り畳み可能な嚢とを含む。嚢は、第1及び第2の閉塞端が互いから分離された状態で、キャビティ内の適合によってキャビティの形状と一致する形状に維持される。第1及び第2の閉塞端の各々は、シームレスである。
【0008】
本発明の他の構成及び態様は、以下の詳細な記述及び添付の図面を考察することによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のある実施形態に従ったインパクトパワーツールの正面斜視図である。
【0010】
図2図1のインパクトパワーツールの一部分の組立断面図である。
【0011】
図3図1のインパクトパワーツールの液圧トルク衝撃機構の分解斜視図である。
【0012】
図4図3に示す衝撃機構の出力シャフトの断面図である。
【0013】
図5図1のインパクトパワーツールの一部分の他の組立断面図である。
【0014】
図6】衝撃機構の折り畳み可能な空気嚢の斜視図である。
【0015】
図7図6の折り畳み可能な空気嚢の断面図である。
【0016】
図8図1のインパクトパワーツールの他の実施形態の一部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のいずれかの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の記述に説明し且つ以下の図面に例示する構造の詳細及びコンポーネント(構成要素)の配置に限定されないことが理解されるべきである。本発明は他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施又は実行され得る。本明細書で使用する表現及び用語は記載の目的のためにあり、限定と考えられてならないことも理解されるべきである。
【0018】
図面の図1を参照すると、インパクトパワーツール10(衝撃動力工具)又はインパクトドライバ(衝撃ドライバ)が示されている。インパクトドライバ10は、主ハウジング14と、主ハウジング14に取り付けられた変速装置ハウジング18と、変速装置ハウジング18内の液圧トルク衝撃機構22(図2及び図3)とを含む。インパクトドライバ10は、電気モータ24(例えば、ブラシレス直流モータ)や、電気モータ24と衝撃機構22との間に位置付けられた変速装置(例えば、単段又は多段の遊星変速装置)も含む。衝撃機構22は、変速装置の出力部との共回転(co-rotation)のために連結されたシリンダ26を含み、変速装置ハウジング18内で回転するように構成される。従って、シリンダ26は、変速装置の出力部と同軸の長手軸34(図3)について回転可能である。衝撃機構22は、長手軸34についてシリンダと共回転するためにシリンダ26に取り付けられた、カムシャフト38も含み、カムシャフトの目的は、以下に詳細に説明される。カムシャフト38は、シリンダ26とは別個のコンポーネントとして示されているが、カムシャフト38は、代替的に、シリンダ26との一体成形品(single piece)として、一体的に形成されてよい。
【0019】
図5を参照すると、シリンダ26は、キャビティ46を部分的に定める円筒形の内面42と、長手軸34の両側で内面42からに延びる一対の径方向に内向きに延びる突起50とを含む。換言すれば、突起50は、互いから180°だけ離間している。衝撃機構22は、出力シャフト54(図2図4)を更に含み、その後方部分58は、キャビティ46内に配置されており、その前方部分62は、変速機ハウジング18から延びており、ツールビットを受け入れる六角形のレセプタクル66(図5)を備えている。衝撃機構22は、出力シャフト54から突出してシリンダ26の内面42に当接する一対のパルスブレード70(図3)を含み、一対の玉軸受74が、カムシャフト38とそれぞれのパルスブレード70との間に位置付けられている。出力シャフト54は、二重の入口オリフィス78(図4)を有し、その各々は、キャビティ46と出力シャフト54内の別個の高圧キャビティ82との間に延在し、それらを選択的に流体連通させる。出力シャフト54は、二重の出口オリフィス86(図4)も含み、出口オリフィス86は、オリフィスネジ90(図2及び図3)によって可変的に遮断されることにより、出力シャフトキャビティ82からオリフィス86を通じてシリンダキャビティ46に放出されることがある作動液(hydraulic fluid)の体積流量を制限する。カムシャフト38は、出力シャフトキャビティ82内に配置され、入口オリフィス78を選択的にシールするように構成されている。
【0020】
図2を参照すると、キャビティ46は、嚢キャビティ94と連通し、嚢キャビティ94は、キャビティ26に隣接して配置され且つキャビティ46,94の間で作動液を連通させる孔108を有するプレート102によって分離される、シリンダ26と共回転するように取り付けられるエンドキャップ98(集合的に「シリンダアセンブリ」と呼ぶ)によって定められる。大気温度及び大気圧にある空気のようなガスで満たされた内部容積142(図7)を有する折り畳み可能な嚢104(collapsible bladder)が、嚢キャビティ94内に位置付けられている。嚢104は、性能特性に否定的な影響を及ぼし得る衝撃機構22の動作中の作動液の熱膨張を補償するよう、折り畳み可能に構成されている。
【0021】
折り畳み可能な嚢104をゴム又は任意の他の適切なエラストマから形成することができる。一例として、折り畳み可能な嚢104は、75±5のショアAデュロメータを有するフルオロシリコーンゴムから形成される。折り畳み可能な嚢104を形成するために、ゴムを押し出して、両端が開放した概ね真っ直ぐな中空のチューブを形成する。次に、中空チューブは、製造後の加硫プロセスを受け、加硫プロセスにおいて、開放した両端は、その上、ヒートシールされて(heat-sealed)或いはヒートステークされて(heat-staked)閉じられる。このようにして、両端は、以前に開口端部が存在していた(図6及び図7参照)目に見える継ぎ目を残すことなく、並びに接着剤を使用して2つの以前に開放していた両端を閉塞することなく、閉塞される。封止プロセス中、大気温度及び大気圧にある空気のようなガスが、折り畳み可能な嚢104の第1の閉塞端146と第2の閉塞端150との間に定められる内部容積142内に閉じ込められる(図7を参照)。しかしながら、内部容積142は、他のガスで満たされてよい。閉塞端146、150は、シームレスであるので、内部容積142内のガスは、閉塞端を通じて漏れることができず、キャビティ46、94内の作動液の反復的な熱サイクル後に閉塞端が再び開放する可能性は極めて低い。
【0022】
図2及び図3に示すように、エンドキャップ98がシリンダ26内にネジ込まれる前に、折り畳み可能な嚢104は、環状の形状に曲げられ、同様に環状である嚢キャビティ94内に設置される。代替的に、折り畳み可能な嚢104は、嚢がキャビティ94との嵌合によって設置されて、キャビティ46、94内の作動液の熱膨張を依然として効果的に補償されることを可能にする、任意の形状を取ることができる。エンドキャップ98がシリンダ26に螺合された後、折り畳み可能な嚢104は、キャビティ94内の嵌合を介して捕捉されて、その環状形状をキャビティ94自体の形状によって維持させる。
【0023】
折り畳み可能な嚢104は、第1及び第2の閉塞端146、150がキャビティ94内である距離だけ分離され、キャビティ94内で交わり、或いはキャビティ94内で重なり合うように、キャビティ94内に配置されてよい。折り畳み可能な嚢104がどんな形状を取るかに拘わらず、並びに第1及び第2の閉塞端146、150の間の空間的な関係に拘わらず、第1及び第2の閉塞端146、150は、独立したままであり、互いから分離されている。換言すれば、嚢104の閉塞端146、150は、連続的なリングを定めるように(例えば、接着剤を使用して)接続されないか或いは他の方法で一体化されない。代替的に、ヒートシール(heat-sealing)又はヒートステーキング(heat-staking)プロセスを使用して閉塞端146,160を相互接続して、閉塞端146,160を恒久的に接合することにより、環状キャビティ94内への挿入のためのリングを形成してよい。
【0024】
図2を参照すると、変速装置ハウジング18は、変速装置ハウジング18の正面で開口するベアリングポケット106を含み、ベアリング30が、出力シャフト54を回転可能に支持するために、ベアリングポケット106内に収容される。ベアリングポケット106は、変速装置ハウジングの正面から突出する円筒形の軸方向に延びリム110と、リム110に隣接する径方向に内向きに延びるフランジ114とによって定められる。インパクトドライバの例示の実施形態において、ベアリング30は、ベアリングポケット106に締まり嵌めされ且つ変速装置ハウジング18の径方向に内向きに延びるフランジ114に当接させられる外側レース118と、球面ローラ124によって外側レースから分離される内側レース122とを有する、ラジアル球面ローラベアリングとして構成される。代替的に、ベアリング30は、非球面ローラ(例えば、円筒形ローラ)を有してよい。或いは、ベアリング30を中実ブッシュとして構成して、ローラを完全に省略してよい。
【0025】
引き続き図2を参照すると、インパクトドライバ10は、ベアリング30の少なくとも一部分と径方向に重なり合い、径方向に内向きに延びるフランジ114とは反対のベアリング30の側に配置される、径方向に外向きに延びるフランジ126を更に含む。具体的には、ベアリングの外側レース118は、径方向に内向きに延びるフランジ114に隣接し且つ径方向に内向きに延びるフランジ114と当接関係にあり、径方向に外向きに延びるフランジ126が、ベアリングの内側レース122と重なり合っている。例示の実施形態において、径方向に外向きに延びるフランジ126は、円筒形スリーブ130と一体的に形成されており、次いで、円筒形スリーブ130は、ベアリング30の内側レース122と出力シャフト54との間に配置されている。スリーブ130は、ベアリングの内側レース122と出力シャフト54との間の径方向間隙を占めるスペーサとして機能する。そして、公称径方向クリアランスC1が、出力シャフト54とスリーブ130との間に維持される一方で、スリーブ130は、ベアリング30の内側レース122に締まり嵌めされる。
【0026】
出力シャフト54は、スリーブ130の直ぐ前方に周方向溝134を含み、クリップ138(例えば、Cクリップ)が、溝134内で出力シャフト54に対して軸方向に固定される。公称クリアランスC1が出力シャフト54とスリーブ130との間に存在するので、クリップ138は、出力シャフト54の後方への変位(即ち、図2の基準フレームから左への変位)に応答して、スリーブ130上で径方向に外向きに延びるフランジ126と当接可能である。出力シャフト54のそのような後方への変位は、ファスナ打込み動作中の出力シャフト54に対する反力の適用に応答して生じる。ベアリングの内側レース122と径方向に外向きに延びるフランジ126との間の径方向のオーバーラップの結果として、そのような反力Fの作用線140が、クリップ、スリーブの径方向に外向きに延びるフランジ126、ベアリング30を通じて、変速装置ハウジングの径方向に内向きに延びるフランジ114に向けられる。
【0027】
インパクトドライバ10の他の実施形態では、クリップを省略することができ、スリーブ130を(例えば、締まり嵌めを用いて)出力シャフト54に対して軸方向に取り付けることができる。この実施形態において、出力シャフト54に対する軸方向反作用力Fの作用線は、スリーブの径方向に外向きに延びるフランジ126、ベアリング30を通じて、変速装置ハウジングの径方向に内向きに延びるフランジ114に向けられる。
【0028】
インパクトドライバ10の更に他の実施形態では、クリップ138は使用されてよいが、スリーブ130は取り除かれるので、ベアリング30自体は、出力シャフト54と直接的に接触し、それらの間に径方向の公称クリアランスを可能にする。この実施形態において、クリップ138の直径は、ベアリング30の少なくとも一部分と径方向に重なり合うことにより、上述の径方向に外向きに延びるフランジ126の機能を遂行するよう、十分に大きい。従って、この実施形態において、出力シャフト54に対する軸方向反作用力Fの作用線は、(径方向に外向きに延びるフランジとして機能する)クリップ138、ベアリング30を通じて、変速装置ハウジング18の径方向に内向きに延びるフランジ114に向けられる。
【0029】
図8に示すインパクトドライバの更なる実施形態では、スリーブ130及びクリップ138の両方を省略することができ、径方向に外向きに延びるフランジ126は、出力シャフト54との一体成形品として一体的に形成される。例えば、径方向に外向きに延びるフランジ126は、ベアリング30によって支持される出力シャフト54の部分よりも大きい直径を有する(図2の基準フレームから)ベアリング30の前方にある出力シャフト54上の肩部によって定められてよい。従って、この実施形態では、出力シャフト54に対する軸方向反作用力Fの作用線は、(径方向に外向きに延びるフランジ126として機能する)肩部、ベアリング30を通じて、変速装置ハウジング18の径方向に内向きに延びるフランジ114に向けられる。
【0030】
動作中、(例えば、トリガを押すことによる)電気モータ24の起動後、モータ24からのトルクは、変速装置を介してシリンダ26に伝達され、シリンダ26上の突起50がそれぞれのパルスブレード70に衝突して出力シャフト54及び作業が行われているワークピース(例えば、ファスナ)に第1の回転衝撃を送達するまで、シリンダ26及びカムシャフト38を出力シャフト54に対して一致して回転させる。第1の回転衝撃の直前に、入口オリフィス78は、カムシャフト38によって遮断されることにより、比較的高い圧力で出力シャフトキャビティ82内の作動液を封止し、それはボールベアリング74及びパルスブレード70を径方向に外向きに付勢して、パルスブレード70をシリンダの内面42と接触状態に維持する。突起50とパルスブレード70との間の最初の衝突に続く短い時間期間(例えば、1ms)に亘って、シリンダ26及び出力シャフト54は一致して回転して、ワークピースにトルクを加える。
【0031】
また、この時点で、作動液は、オリフィスネジ90の位置によって決定される比較的遅い速度で出口オリフィス86を通じて排出され、それにより、パルスブレード70の径方向に内向きの移動を減衰させる。ボールベアリング74が突起50の大きさに対応する距離だけ内向きに変位すると、パルスブレード70は、突起50を越えて移動し、トルクは、もはや出力シャフト54に伝達されない。カムシャフト38は、この時点の後に再び出力シャフト54とは無関係に回転し、それがもはや入口オリフィス78を封止しない位置に移動し、それにより、流体を出力シャフトキャビティ82内に引き込ませ、ボールベアリング74及びパルスブレード70が再び径方向に外向きに変位することを可能にする。次に、シリンダ260が回転し続けるに応じて、サイクルが繰り返され、トルク伝達はシリンダの各360度の回転の間に2回生じる。このようにして、出力シャフト54は、シリンダ26からのトルクの不連続的な(discrete)パルスを受け取り、ワークピース(例えば、ファスナ)に対して作業を行うよう回転することができる。
【0032】
出力シャフト54が回転させられ、ツールビットを支持する出力シャフトの前方部分62が表面又は物体(例えば、ファスナ)に加えられると、物体又は表面からの軸方向反作用力Fは、図2に示すように作用線40に沿って後方軸方向に出力シャフト54に沿って向けられる。インパクトドライバ10の例示の実施形態において、軸方向反作用力Fの作用線140は、出力シャフト54を通じて、クリップ138、スリーブ上の径方向に外向きに延びるフランジ126、ベアリング30に、そして、主ハウジング14に取り付けられる変速装置ハウジング18の径方向に内向きに延びるフランジ114に向けられる。主ハウジング14は使用者によって把持されるので、軸方向反作用力Fは、然る後、使用者の手によって吸収される。上記で議論したように、クリップ138、スリーブ130、出力シャフト54上の肩部、又はそれらの任意の組み合わせを使用して、径方向に外向きに延びるフランジ126を実施する、様々な選択肢がある。これらの選択肢の各々は、ベアリング30の少なくとも一部分と重なり合う径方向に外向きに延びるフランジをもたらし、それにより、出力シャフト54に加えられる軸方向反作用力Fの作用線を、ベアリング30を通じて、変速装置ハウジング18の径方向に内向きに延びるフランジ114に向け、軸方向の反作用力は、ユーザが主ハウジング14を把持することによって、変速装置ハウジング18の径方向に内向きに延びるフランジ114で最終的に吸収される。
【0033】
軸方向反作用力は、径方向に外向きに延びるフランジ126を介して変速装置ハウジング18に向けられるので、シリンダ26に対する出力シャフト54の軸方向移動は制限される。これは、さもなければ摩擦を生じさせて、モータ24の電流引込みを増大させて、インパクトドライバ10の時期尚早の停止を引き起こすことがある、出力シャフト54の後方部分58とシリンダ26との間の偶発的な望ましくない接触を防止する。代わりに、軸方向反作用力Fは、径方向に外向きに延びるフランジ126を介して変速装置ハウジング18に向けられるので、公称軸方向クリアランスC2が、出力シャフト54の後方部分58とシリンダ26との間に維持される。これはシリンダ26が出力シャフト54について自由に回転することを可能にし、それはインパクトドライバ10がより効果的かつ効率的に作動することを可能にする。
【0034】
本発明の様々な構成は、以下の請求項に示される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8