【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係わる基材ないしは部品に塗料を塗布ないしは印刷すると、該基材ないしは該部品に
、触媒作用を発揮する金属ないしは金属酸化物からなる微粒子の集まりと強磁性金属の微粒子の集まりが積み重なった2種類の微粒子の積層体が形成される塗膜ないしは印刷膜となる第一の塗料を製造する製造方法は、
触媒作用を有する金属ないしは金属酸化物を熱分解で析出する第一の金属化合物と、強磁性の金属を熱分解で析出する第一の性質と、前記第一の金属化合物の熱分解温度より高い温度で熱分解する第二の性質を兼備する第二の金属化合物とを、アルコールに分散し、該2種類の金属化合物の各々がアルコールに分子状態で分散されたアルコール分散液を作成し、前記アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、沸点が前記第一の金属化合物の熱分解温度より低い第二の性質と、前記アルコールの粘度の5倍以上の粘度を持つ第三の性質を兼備する有機化合物を、前記アルコール分散液に25重量%以下の割合で混合し、該有機化合物が前記アルコールに溶解ないしは混和し、該有機化合物が前記アルコール分散液と均一に混ざり合った混合液を作成する、これによって、該混合液を基材ないしは部品に塗布ないしは印刷すると、触媒作用を発揮する金属ないしは金属酸化物からなる微粒子の集まりと強磁性金属の微粒子の集まりが積み重なった2種類の微粒子の積層体が、前記基材ないしは前記部品に形成される塗膜ないしは印刷膜になる前記混合液からなる第一の塗料が製造される、基材ないしは部品に塗布ないしは印刷すると、触媒作用を発揮する金属ないしは金属酸化物からなる微粒子の集まりと強磁性金属の微粒子の集まりが積み重なった2種類の微粒子の積層体が、前記基材ないしは前記部品に形成される塗膜ないしは印刷膜になる第一の塗料を製造する製造方法。
【0007】
つまり、2種類の金属化合物をアルコールに分散すると、2種類の金属化合物の各々が10重量%程度の割合でアルコールに分子状態で分散される。これによって、金属ないしは金属酸化物の原料が液相化される。次に、有機化合物をアルコール分散液に25重量%以下の割合で混合すると、有機化合物がアルコールに溶解ないしは混和するため、有機化合物はアルコール分散液と均一に混ざり合う。この混合液は、アルコールの高い混合割合によって、粘度の低い塗料となり、この塗料を塗布ないしは印刷すると、数ミクロン程度の膜厚からなる塗膜ないしは印刷膜が形成される。
いっぽう、第一の塗料がアルコールに近い粘度である場合は、第一の塗料を基材ないしは部品に塗布ないしは印刷しても、塗膜ないしは印刷膜は崩れてしまう。このため、第一の塗料が一定の粘度を持つことで、塗膜ないしは印刷膜が形成できる。また、有機化合物の粘度は、一般に有機化合物の沸点が低くなるほど低い。これは、分子量が小さい有機化合物ほど沸点は低く粘度も低いことに依る。ところで、有機化合物の沸点は、第一の金属化合物の熱分解温度より低いため、第一の金属化合物の熱分解温度が低ければ粘度も低い。このため、有機化合物を金属化合物のアルコール分散液に混合する混合割合を、25重量%以下であるが25重量%に近づけることで、第一の塗料は一定の粘度を持つ。これに対し、第一の金属化合物の熱分解温度がより高ければ、より粘度が高い有機化合物を用いることになり、有機化合物の混合割合を下げることで、前記した粘度に近づく。このように、第一の金属化合物の熱分解温度に応じて、有機化合物の粘度が変わるため、2種類の金属化合物のアルコール分散液に有機化合物を混合する混合割合を変えることで、第一の塗料に低い粘度を持たせることができ、数ミクロンの膜厚の塗膜ないしは印刷膜が形成される。
このような方法で製造した第一の塗料を、基材ないしは部品に塗布ないしは印刷する際に、基材ないしは部品の形状や大きさに応じて、刷毛塗り、ローラー塗り、吹き付け塗装、浸漬塗装、ロールコーターなどからなる塗布方法を、ないしは、バーコート、リバースコート、グラビア印刷、スクリーン印刷などからなる印刷方法を選択すれば、全ての基材ないしは部品に、第一の塗料からなる塗膜ないしは印刷膜が形成される。いっぽう、基材ないしは部品に塗布ないしは印刷した第一の塗料は粘度が低いため、基材ないしは部品の表面の凹凸に入り込み、基材ないしは部品に塗膜ないしは印刷膜を形成する。
なお、基材ないしは部品が、板やシート、平面状のフィルター、ワイヤを編んだメッシュやシートのように、2次元的な平面形状の基材で構成される場合は、前記した様々な塗布方法や様々な印刷方法を用いて、第一の塗料を塗布ないしは印刷すれば、基材の外部の表面に塗膜ないしは印刷膜が形成される。これに対し、基材ないしは部品が、ハニカム構造、多孔質フィルター構造、ハニカムフィルター構造のように、内部に空洞を持つ3次元的な構造物の部品で構成される場合は、浸漬塗装の方法を用いて、第一の塗料を塗布すれば、部品の外部の表面のみならず、内部の空洞の表面にも塗膜が形成される。
以上に説明した第一の塗料は、2種類の金属化合物とアルコールと有機化合物とからなる汎用的な工業用薬品を原料として用いる。また、2種類の金属化合物をアルコールに分散し、このアルコール分散液に有機化合物を混合するだけの極めて簡単な処理で、第一の塗料が製造される。従って、安価な原料を用いて、安価な費用で大量の第一の塗料が製造される。また、基材ないしは部品の形状や大きさに拘わらず、全ての基材ないしは部品に、低粘度からなる第一の塗料を、塗布ないしは印刷することができる。この結果、第一の塗料は、5段落で説明した第一の課題と第二の課題とを同時に解決する。
【0008】
前記した第一の塗料を用いて、基材ないしは部品に
、触媒作用を発揮する金属ないしは金属酸化物からなる微粒子の集まりと強磁性金属の微粒子の集まりが積み重なった2種類の微粒子の積層体を形成する方法は、
前記した第一の塗料を、基材ないしは部品に塗布ないしは印刷し、該基材ないしは該部品を、前記第一の塗料を構成する第二の金属化合物が熱分解する温度まで昇温する、これによって、最初にアルコールが気化し、前記第一の塗料を構成する2種類の金属化合物の微細結晶の集まりが、前記第一の塗料を構成する有機化合物中に均一に析出する、次に前記有機化合物が気化し、前記第一の塗料の塗膜ないしは印刷膜は、2種類の金属化合物の微細結晶が均一に分散された混合物になる、さらに、前記第一の塗料を構成する第一の金属化合物が熱分解し、第二の金属化合物の微細結晶の集まりに、触媒作用を有する金属ないしは金属酸化物からなる第一の微粒子の集まりが析出する、この後、前記第一の塗料を構成する第二の金属化合物が熱分解し、前記第一の微粒子の集まりに、強磁性の金属からなる第二の微粒子の集まりが均一に析出し、該第二の微粒子同士に作用する磁気吸引力で、前記第一の微粒子が前記第二の金属微粒子に接合し、該磁気吸引力で接合した前記2種類の微粒子の集まりからなる2種類の微粒子の積層体が、前記基材ないしは前記部品に形成され、該2種類の微粒子の積層体の表面を形成する前記2種類の微粒子の表面が、50%より広い表面を直接外界に晒し、該2種類の微粒子の積層体の表面は前記第一の微粒子を構成する材質に基づく固有の触媒作用を発揮する、これによって、前記基材ないしは前記部品に、触媒作用を発揮する金属ないしは金属酸化物からなる微粒子の集まりと強磁性金属の微粒子の集まりが積み重なった2種類の微粒子の積層体が形成される、前記した第一の塗料を用いて、基材ないしは部品に触媒作用を発揮する金属ないしは金属酸化物からなる微粒子の集まりと強磁性金属の微粒子の集まりが積み重なった2種類の微粒子の積層体を形成する方法である。
【0009】
つまり、第一の塗料を基材ないしは部品に塗布ないしは印刷すると、塗料が低い粘度の液体であるため、基材ないしは部品が、板やシート、平面状のフィルター、ワイヤを編んだメッシュやシートのように、2次元的な平面形状の基材である場合は、基材の表面の凹凸に入り込んで、数ミクロンの膜厚の塗膜ないしは印刷膜が基材の表面に形成される。これに対し、基材ないしは部品が、ハニカム構造、多孔質フィルター構造、ハニカムフィルター構造のように、内部に空洞を持つような3次元的な構造物の部品である場合は、部品の表面の凹凸のみならず、内部の空洞の表面の凹凸に塗料が入り込んで、数ミクロンの膜厚の塗膜ないしは印刷膜が形成される。この後、基材ないしは部品が、アルコールの沸点に達すると、塗膜ないしは印刷膜の大部分を占めるアルコールが気化し、厚みが1μm程度の膜厚の塗膜ないしは印刷膜になる。この際、2種類の金属化合物が、アルコールに分散するが有機化合物に分散しないため、2種類の金属化合物の微細結晶の集まりが、有機化合物中に均一に析出する。さらに、基材ないしは部品が有機化合物の気化点に達すると有機化合物が気化し、塗膜ないしは印刷膜は、2種類の金属化合物の微細結晶が均一に分散された混合物になる。いっぽう、金属化合物の微細結晶の大きさが、基材ないしは部品の外部の表面と内部の表面との凹凸に比べ1桁以上小さいため、凹凸に入り込んで基材ないしは部品を覆う。なお、金属化合物の微細結晶は、熱分解で析出する金属ないしは金属酸化物の微粒子の大きさに相当する。さらに、基材ないしは部品が、第一の金属化合物が熱分解する温度に達すると、第二の金属化合物の微細結晶の集まりに、触媒作用を有する金属ないしは金属酸化物からなる第一の微粒子の集まりが均一に析出し、塗膜ないしは印刷膜は、第二の金属化合物の微細結晶の集まりと、第一の微粒子の集まりとからなる混合物になる。さらに、基材ないしは部品が、第二の金属化合物が熱分解する温度に達すると、第一の微粒子の集まりに、強磁性の金属からなる第二の微粒子の集まりが均一に析出し、第二の微粒子同士に作用する磁気吸引力で、第一の微粒子が第二の微粒子に接合し、磁気吸引力で接合した2種類の微粒子が5層前後の厚みで積み重なった積層体として、基材ないしは部品に形成される。いっぽう、第一の微粒子と第二の微粒子とは、いずれも40−60nmの大きさからなる粒状の微粒子であり、積層体は500nm未満の膜厚で形成される。この積層体の表面は、同程度の大きさからなる粒状の微粒子が磁気吸引力で接合したため、微粒子の表面が50%より広い表面を直接外界に晒さらし、微粒子を構成する材質に基づく固有の触媒作用を効率よく発揮する。また、磁気吸着した微粒子は、基材ないしは部品の外部の表面と内部の表面との凹凸に入り込んで積層体を形成するため、膜厚が500nm未満の積層体は、アンカー効果で基材ないしは部品から剥がれない。また、積層体には常時、第二の微粒子の磁気吸引力が作用し、基材ないしは部品に積層体が形成され続ける。
なお、第一の金属化合物として、熱分解で白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどの白金族の金属、銅、銀などの銅属の金属、熱分解で酸化チタン、酸化バナジウムなどの金属酸化物を析出する金属化合物を用いると、第一の微粒子が触媒作用を発揮する。
また、触媒作用と強磁性の性質とを兼備する金属として、コバルトとニッケルが存在する。従って、第二の金属化合物として、熱分解でコバルトを析出するコバルト化合物を用いると、コバルトの磁気キュリー点が1115℃と高く、コバルト微粒子同士の磁気吸引力で磁気吸着した積層体は、自動車の排気浄化触媒装置のような高温に晒される触媒として用いることができる。この際、コバルト微粒子は触媒作用を発揮する。第二の金属化合物として、熱分解でニッケルを析出するニッケル化合物を用いると、ニッケルの磁気キュリー点は354℃とコバルトに比べれば低いが耐食性に優れるため、ニッケル微粒子同士の磁気吸引力で磁気吸着した積層体は、屋外の壁や屋根の汚れ防止に用いる光触媒のような野外に長期間使用される触媒として用いることができる。この際、ニッケル微粒子は触媒作用を発揮する。なお、鉄に依る新たな触媒作用が見いだされれば、第二の金属化合物として熱分解で鉄を析出する鉄化合物を用いることができる。この際、鉄は磁気キュリー点が770℃と高い強磁性材料であるため、高温でも鉄に依る触媒作用が発揮される。
この結果、基材ないしは部品が、板やシート、平面状のフィルター、ワイヤを編んだメッシュやシートのように、2次元的な平面形状の基材である場合は、基材の表面の凹凸に入り込んで触媒作用を発揮する積層体が形成される。これに対し、基材ないしは部品が、ハニカム構造、多孔質フィルター構造、ハニカムフィルター構造のように、内部に空洞を持つ3次元的な構造物の部品である場合は、触媒作用を発揮する積層体は、部品の表面のみならず、内部の空洞の表面にも形成される。
以上に説明したように、基材ないは部品に形成された積層体の表面は、2種類の微粒子を構成する材質に基づく固有の触媒作用を効率よく発揮する。また、積層体は1150℃に近い耐熱性を持つことができ、また、野外に長期に晒しても経時変化しない耐久性を持つこともできる。さらに、第一の塗料に依る塗膜ないしは印刷膜の膜厚は数ミクロンであり、大型の基材ないしは部品であっても、第一の塗料の塗布量ないしは印刷量が極わずかである。また、積層体の形成は、第一の塗料の塗布ないしは印刷と、熱処理だけの処理である。この結果、5段落で説明した第三と第四との課題とが同時に解決できた。
【0010】
前記した第一の塗料を用いて、基材ないしは部品の互いに異なる複数の部位の各々の部位に、ないしは、基材ないしは部品の互いに異なる複数の領域の各々の領域に、互いに異なる触媒作用を発揮する金属ないしは金属酸化物からなる微粒子の集まりと強磁性金属の微粒子の集まりが積み重なった2種類の微粒子の積層体を形成する方法は、
前記した第一の塗料は、前記第一の金属化合物を、触媒作用を有し、かつ、互いに異なる材質からなる金属ないしは金属酸化物を同じ熱分解温度で析出する複数種類の金属化合物で構成し、前記第二の金属化合物を、請求項1に記載した第二の金属化合物で構成し、前記複数種類の金属化合物の1種類ずつを、請求項1に記載した第一の金属化合物として用い、請求項1に記載した第一の塗料の製造方法に従って、互いに異なる種類の前記第一の金属化合物と前記第二の金属化合物とからなる複数種類の塗料を作成する、この後、基材ないしは部品の互いに異なる複数の部位の各々の部位に、ないしは、基材ないしは部品の互いに異なる複数の領域の各々の領域に、前記複数種類の塗料の1種類ずつの塗料を塗布ないしは印刷する、さらに、該基材ないしは該部品を、前記第二の金属化合物が熱分解する温度まで昇温する、これによって、触媒作用を有する金属ないしは金属酸化物の材質が互いに異なる1種類ずつの第一の微粒子の集まりと、強磁性の金属の第二の微粒子の集まりとが、積み重なった2種類の微粒子の積層体が、前記基材ないしは前記部品の互いに異なる複数の部位の各々の部位に、ないしは、基材ないしは部品の互いに異なる複数の領域の各々の領域に、前記第一の微粒子の材質が互い異なる該第一の微粒子の集まりと前記第二の微粒子の集まりからなる2種類の微粒子が析出し、前記第二の微粒子同士に作用する磁気吸引力で、前記第一の微粒子が前記第二の金属微粒子に接合し、該磁気吸引力で接合した2種類の微粒子の集まりからなる積層体が、材質が互いに異なる前記第一の微粒子で構成された1種類ずつの該第一の微粒子の集まりと前記第二の微粒子の集まりが積み重なった2種類の微粒子の積層体として、前記基材ないしは前記部品の互いに異なる複数の部位の各々の部位に形成され、ないしは、前記基材ないしは前記部品の互いに異なる複数の領域の各々の領域に形成され、該2種類の微粒子の積層体の表面を形成する前記2種類の微粒子の表面が、50%より広い表面を直接外界に晒し、該2種類の微粒子の積層体の表面は前記第一の微粒子を構成する材質に基づく固有の触媒作用を発揮する、これによって、前記基材ないしは前記部品の互いに異なる複数の部位の各々の部位に、ないしは、前記基材ないしは前記部品の互いに異なる複数の領域の各々の領域に、互いに異なる触媒作用を発揮する金属ないしは金属酸化物からなる微粒子の集まりと強磁性金属の微粒子の集まりが積み重なった2種類の微粒子の積層体が形成される、前記した第一の塗料を用いて、基材ないしは部品の互いに異なる複数の部位の各々の部位に、ないしは、基材ないしは部品の互いに異なる複数の領域の各々の領域に、互いに異なる触媒作用を発揮する金属ないしは金属酸化物からなる微粒子の集まりと強磁性金属の微粒子の集まりが積み重なった2種類の微粒子の積層体を形成する方法である。
【0011】
つまり、基材ないしは部品の互に異なる複数の部位における各々の部位に、ないしは、基材ないしは部品の互いに異なる複数の領域における各々の領域に、前記した第一の塗料において、互いに異なる第一の金属化合物からなる複数種類の塗料の1種類ずつの塗料を、塗布ないしは印刷することは容易である。例えば、基材ないしは部品が、板やシート、平面状のフィルター、ワイヤを編んだメッシュやシートのように、2次元的な平面形状の基材である場合は、複数種類の塗料の1種類ずつの塗料を、基材の互いに異なる部位の各々の部位に塗布ないしは印刷する度に、基材の表面を部分的にマスキングする領域をその都度変えれば、基材の異なる部位の各々の部位に、複数種類の塗料の1種類ずつの塗料が塗布ないしは印刷できる。また、基材ないしは部品が、ハニカム構造、多孔質フィルター構造、ハニカムフィルター構造のように、内部に空洞を持つ3次元的な構造物の部品である場合は、2種類の塗料を部品に浸漬する際に、部品の上下の方向を変え、また、塗料に浸漬する深さを変えると、部品の内部の空洞の異なる領域の各々の表面に、2種類の塗料の1種類ずつの塗料が塗布できる。さらに、3種類以上の塗料を塗布する場合は、3種類以上の塗料からなる1種類ずつの塗料に、部品を浸漬する度に、浸漬する深さをその都度浅くすれば、部品の内部空洞の互いに異なる複数の領域の表面は、互いに異なる第一の金属化合物からなる塗料が塗布される。
また、第一の金属化合物の材質が異なる複数種類の塗料は、触媒作用を有する異なる材質の金属ないしは金属酸化物を、同じ熱分解温度で析出する複数種類の第一の金属化合物について、1種類ずつの第一金属化合物と第二の金属化合物とを原料に用いて、6段落に記載した第一の塗料の製造方法に従って塗料を製造すれば、第一の金属化合物の材質が互いに異なる複数種類の塗料を容易に製造することができる。
こうした複数種類の塗料の1種類ずつを、基材ないしは部品の互に異なる複数の部位の各々の部位に、ないしは、基材ないしは部品の互いに異なる複数の領域の各々の領域に、塗布ないしは印刷し、この後、第二金属化合物が熱分解する温度まで昇温すると、基材ないしは部品の互い異なる複数の部位の各々の部位に、ないしは、基材ないしは部品の互いに異なる複数の領域の各々の領域に、互いに異なる触媒作用を発揮する微粒子の集まりからなる積層体が形成される。これによって、一つの基材ないしは部品は、複数種類の触媒作用を発揮する。この結果、複数種類の触媒作用を複数の基材ないしは部品で発揮させるより、安価な費用で基材ないしは部品が製造できる。なお、第一の塗料が塗布ないしは印刷された基材ないしは部品を、第二の金属化合物が熱分解する温度まで昇温し、触媒作用を発揮する積層体が形成される過程は、9段落で説明した触媒作用を発揮する積層体を形成する過程と同様であるため、説明を省略した。
このような複数種類の触媒作用を発揮する一例を示すと、内部に多数の細長い空洞を有するハニカムセラミックを部品として用い、ハニカムセラミックの互いに異なる複数の領域に、互いに異なる触媒作用を発揮する積層体を形成する事例がある。すなわち、白金ないしはパラジウムが熱分解で析出する第一の金属化合物と、コバルトを熱分解で析出する第二の金属化合物とで、第一の塗料を製造する。また、ルテニウムが熱分解で析出する第一の金属化合物と、コバルトを熱分解で析出する第二の金属化合物とで、第二の塗料を製造する。次に、ハニカムセラミックの一方の端部から第一の塗料を含浸し、この後、もう一方の端部から第一の塗料に依る塗膜と重ならない領域に第二の塗料を含浸させ、この後、コバルト金属化合物が熱分解する温度まで昇温する。これによって、コバルト微粒子の磁気吸引力で接合した2種類の微粒子の集まりからなる積層体が、2種類の積層体としてハニカムセラミックの内部空洞の異なる領域に形成される。このハニカムセラミックを、例えば、自動車の排気浄化装置に用いると、ルテニウム微粒子とコバルト微粒子とからなる積層体が、排気浄化装置の上流側になり、白金ないしはパラジウムの微粒子とコバルト微粒子とからなる積層体が、排気浄化装置の下流側になるように配置すると、ルテニウム微粒子が一酸化炭素を二酸化炭素に酸化する触媒作用を持つため、白金ないしはパラジウムの微粒子は一酸化炭素ガスの接触によって被毒されない効果がもたらされる。
さらに、前記したハニカムセラミックからなる内部の空洞の互いに異なる3つの領域に、互いに異なる3種類の触媒作用を発揮する積層体を形成することも可能である。すなわち、ルテニウムが熱分解で析出する第一の金属化合物と、コバルトが熱分解で析出する第二の金属化合物とで、第一の塗料を製造する。また、パラジウムが熱分解で析出する第一の金属化合物と、コバルトが熱分解で析出する第二の金属化合物とで、第二の塗料を製造する。さらに、ロジウムが熱分解で析出する第一の金属化合物と、コバルトが熱分解で析出する第二の金属化合物とで、第三の塗料を製造する。次に、ハニカムセラミックを第一の塗料に浸漬する。さらに、ハニカムセラミックを第一の塗料に浸漬した際の深さより浅い深さで、ハニカムセラミックを第二の塗料を浸漬する。さらにまた、ハニカムセラミックを第二の塗料に浸漬した際の深さよりさらに浅い深さで、ハニカムセラミックを第三の塗料を浸漬する。これによって、ハニカムセラミックの内部空洞は、互いに異なる3つの領域の表面に、第一から第三の塗料の各々が塗布される。この後、コバルト金属化合物が熱分解する温度まで昇温する。これによって、ハニカムセラミックの内部空洞は、互いに異なる3つの領域の各々の表面に、互いに異なる性質を持つ積層体が形成される。つまり、ルテニウム微粒子とコバルト微粒子とからなる第一の積層体と、パラジウム微粒子とコバルト微粒子とからなる第二の積層体と、ロジウム微粒子とコバルト微粒子とからなる第三の積層体とが、互いに異なる3つの領域の表面に形成され、一つのハニカムセラミックは互いに異なる3種類の触媒作用を発揮する。なお、第二の塗料の内側には、第一の塗料が塗布されたため、第二の積層体の内側に第一の積層体が形成されるが、第二の積層体は第二の塗料に依る触媒作用を発揮する。また、第三の塗料の内側には、第一と第二の塗料が塗布されたため、第三の積層体の内側に、第一と第二との積層体が形成されるが、第三の積層体は第三の塗料に依る触媒作用を発揮する。同様に、一つのハニカムセラミックによって、4種類以上の触媒作用を発揮する積層体の形成も可能である。
以上に説明した一つのハニカムセラミックに、複数種類の触媒作用を発揮する積層体を形成する事例は、3次元的な構造を持つハニカムセラミックに限定されない。前記したように、基材ないしは部品の互に異なる複数の部位における各々の部位に、ないしは、基材ないしは部品の互いに異なる複数の領域における各々の領域に、互いに異なる第一の金属化合物からなる複数種類の塗料の1種類ずつの塗料を、塗布ないしは印刷することが容易にできる。この基材ないしは部品を、第二の金属化合物が熱分解する温度に昇温すれば、基材ないしは部品の互いに異なる複数の部位の各々の部位に、ないしは、基材ないしは部品の互いに異なる複数の領域の各々領域に、互いに異なる触媒作用を発揮する微粒子の集まりからなる積層体が形成できる。この結果、一つの基材ないしは一つの部品は、複数種類の触媒作用を発揮する。
【0012】
8段落ないしは10段落に記載した基材ないしは部品に形成した触媒作用を発揮する金属ないしは金属酸化物からなる微粒子の集まりと強磁性金属の微粒子の集まりが積み重なった2種類の微粒子の積層体と、前記基材ないしは前記部品との接合力を増大させる方法は、
強磁性の材質からなる基材ないしは部品を用い、8段落に記載した基材ないしは部品に2種類の微粒子の積層体を形成する方法に従って、前記基材ないしは前記部品に、前記2種類の微粒子の積層体を磁気吸着させる、この後、前記基材ないしは前記部品に磁場を加える、
ないしは、
強磁性の材質からなる基材ないしは部品を用い、10段落に記載した基材ないしは部品の互いに異なる複数の部位の各々の部位に、ないしは、基材ないしは部品の互いに異なる複数の領域の各々の領域に、互いに異なる触媒作用を発揮する金属ないしは金属酸化物からなる微粒子の集まりと強磁性金属の微粒子の集まりが積み重なった2種類の微粒子の積層体を形成する方法に従って、前記基材ないしは前記部品の互いに異なる複数の部位の各々の部位に、ないしは、前記基材ないしは前記部品の互いに異なる複数の領域の各々の領域に、互いに異なる触媒作用を発揮する金属ないしは金属酸化物からなる微粒子の集まりと強磁性金属の微粒子の集まりが積み重なった2種類の微粒子の積層体を磁気吸着させる、この後、前記基材ないしは前記部品に磁場を加える、
これによって、
前記2種類の微粒子の積層体を構成する前記強磁性の金属微粒子の集まりが発する磁力で、該積層体が強磁性の材質からなる前記基材ないしは前記部品に磁気吸着するとともに、前記強磁性の金属微粒子の磁化方向が前記磁場の印加方向に揃うことで、該強磁性の金属微粒子の磁力が増大され、前記積層体と前記基材ないしは前記部品との磁気吸着力が増大し、8段落ないしは10段落に記載した基材ないしは部品に形成した触媒作用を発揮する金属ないしは金属酸化物からなる微粒子の集まりと強磁性金属の微粒子の集まりが積み重なった2種類の微粒子の積層体と、該基材ないしは該部品との接合力が増大される、8段落ないしは10段落に記載した基材ないしは部品に形成した触媒作用を発揮する金属ないしは金属酸化物からなる微粒子の集まりと強磁性金属の微粒子の集まりが積み重なった2種類の微粒子の積層体と、該基材ないしは該部品との接合力を増大させる方法である。
【0013】
つまり、強磁性の金属ないしは合金からなる基材ないしは部品を用い、8段落と10段落との各々の段落に記載した触媒作用を発揮する微粒子の積層体を基材ないしは部品に形成する方法に従って、強磁性の金属ないしは合金からなる基材ないしは部品に積層体を形成すると、積層体を構成する強磁性の金属微粒子の集まりが発する磁力で、積層体が基材ないしは部品に磁気吸着する。この後、基材ないしは部品に磁場を加える。これによって、強磁性の金属微粒子の磁化が磁場方向に揃えられて磁力が著しく増大するとともに、基材ないしは部品の磁化の方向も磁場方向に揃えられ、膜厚が僅かに500nm未満の触媒作用を発揮する微粒子の積層体と、基材ないしは部品との磁気吸着力が著しく増大し、積層体に物理的な応力が加えられても、積層体は基材ないしは部品の表面から剥がれない。
なお、基材ないしは部品が、板やシート、平面状のフィルター、ワイヤを編んだメッシュやシートのように、2次元的な平面形状の基材で構成される場合は、積層体が基材の表面に平面形状として形成されるため、積層体の厚み方向に磁場を加える。これに対し、基材ないしは部品が、ハニカム構造、多孔質フィルター構造、ハニカムフィルター構造のように、内部に空洞を持つ3次元的な部品である場合は、内部の空洞を形成する壁の表面に積層体が形成されるため、積層体の長さ方向、つまり、部品の長さ方向に磁場を加える。
すなわち、基材ないしは部品を、鉄やニッケルからなる金属、あるいは、鉄に少量のケイ素を加えた各種ケイ素鋼、鉄と様々な金属ととからなる各種鉄合金、鉄とニッケルとの各種ニッケル合金、マルテンサイト系、フェライト系、ないしはオーステナイト・フェライト系からなるステンレス鋼、あるいは、セラミック材料である各種の強磁性フェライトなど、様々な強磁性材料によって基材ないしは部品を構成することができる。
また、基材ないしは部品は、板やシートといった単純な形状のみならず、強磁性ワイヤを繊維状に編んだメッシュやシートからなる基材や、強磁性の金属箔ないしは合金泊を加工したハニカム、あるいは、強磁性のフェライトセラミックの粉体を面状フィルター、多孔質フィルター、ハニカムフィルターに押出成形した成形品など様々な形状や構造に加工した基材ないしは部品を用いることができる。
さらに、前記したように第一の塗料が低い粘度であるため、刷毛塗り、ローラー塗り、吹き付け塗装、浸漬塗装、ロールコーターなどからなる塗布方法を、ないしは、バーコート、リバースコート、グラビア印刷、スクリーン印刷などからなる印刷方法を選択すれば、全ての基材ないしは部品に、数ミクロンの膜厚の塗膜ないしは印刷膜が形成される。この後、熱分解で強磁性の金属を析出する金属化合物が熱分解する温度に昇温し、基材ないしは部品に積層体を磁気吸着させ、さらに、基材ないしは部品に磁場を加えれば、様々な大きさや形状からなり、かつ、強磁性の材質からなる基材ないしは部品と、膜厚が500nm未満の触媒作用を発揮する微粒子の積層体との磁気吸着力が著しく増大し、積層体に物理的な応力を加えられても、膜厚が極薄い積層体は磁気吸着力によって基材ないしは部品から剥がれない。
【0014】
前記した第一の塗料を製造する第一の製造方法は、前記した第一の金属化合物として、無機物の分子ないしはイオンからなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物を用い、前記した第二の金属化合物として、オクチル酸金属化合物を用い、前記したアルコールとして、メタノールを用い、前記した有機化合物として、グリコール類ないしはグリコールエーテル類に属するいずれか1種類の有機化合物を用い、前記した第一の塗料を製造する製造方法に従って第一の塗料を製造する第一の製造方法である。
【0015】
つまり、無機物の分子ないしはイオンからなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物は、180−220℃の還元雰囲気で熱分解して金属を析出する。また、メタノールに10重量%近くまで分散する。従って、このような無機金属化合物の中で、触媒作用を有する白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどの白金族の金属を熱分解で析出する無機金属化合物と、触媒作用を有する銀、銅などの銅族の金属を熱分解で析出する無機金属化合物は第一の塗料の原料になる。
いっぽう、オクチル酸金属化合物は、無機金属化合物の熱分解温度より高い290℃で熱分解して金属を析出する。また、メタノールに10重量%程度まで分散する。こうしたオクチル酸金属化合物の中で、強磁性の鉄とニッケルとコバルトとの各々を熱分解で析出するオクチル酸鉄(C
7H
15COO)
3Feと、オクチル酸ニッケル(C
7H
15COO)
2Niと、オクチル酸コバルト(C
7H
15COO)
2Coとは第一の塗料の原料になる。
さらに、グリコール類ないしはグリコールエーテル類に属する有機化合物の中に、沸点が180℃より低く、メタノールの粘度の5倍以上の粘度を持ち、メタノールに溶解ないしは混和する性質を持つ有機化合物が存在する。このような有機化合物は、第一の塗料の原料になる。
つまり、前記した金属錯イオンを有する無機金属化合物は、無機物の分子ないしはイオンからなる配位子と、金属錯イオンと結合する無機物とが低分子量の物質である。このため、還元雰囲気で熱処理すると、最初に、配位子と金属イオンとの配位結合部が比較的低い温度で分断され、無機物と金属とに分解される。さらに昇温すると、低分子量の無機物が容易に気化し、無機物が180−220℃の温度で気化を完了し、金属が析出する。つまり、無機金属化合物を構成するイオンの中で、分子の中央に位置する金属イオンが最も大きい。このため、金属イオンと配位子との距離が最も長くなる。従って、このような無機金属化合物を還元雰囲気で熱処理すると、配位結合部が最初に分断される。こうした無機金属化合物の中に、熱分解でパラジウムを析出するパラジウム錯イオンを有する無機パラジウム化合物、熱分解で白金を析出する白金錯イオンを有する無機白金化合物、熱分解でロジウムを析出するロジウム錯イオンを有する無機ロジウム化合物、熱分解でルテニウムを析出するルテニウム錯イオンを有する無機ルテニウム化合物、熱分解で銀を析出する銀錯イオンを有する無機銀化合物、熱分解で銅を析出する銅錯イオンを有する無機銅化合物が存在する。こうした金属錯イオンと無機物とが結合した無機金属化合物は、金属錯イオンを有する金属錯塩の中で、配位子と金属錯イオンと結合する無機物との双方の分子量が小さいため、合成が容易であり、最も安価な金属錯塩である。
また、オクチル酸金属化合物を構成するイオンの中で、金属イオンが最も大きい。従って、オクチル酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合するオクチル酸金属化合物は、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの距離が、他のイオン同士の距離より長い。こうした分子構造を持つオクチル酸金属化合物を熱処理すると、オクチル酸の沸点を超える温度で、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの結合部が最初に分断され、オクチル酸と金属とに分離する。さらに昇温すると、オクチル酸が気化熱を奪って気化し、気化が完了する290℃で金属が析出する。こうした熱分解で金属を析出するカルボン酸金属化合物として、オクチル酸金属化合物の他に、ラウリン酸金属化合物、ステアリン酸金属化合物などが存在する。なお、このようなカルボン酸金属化合物は、窒素雰囲気での熱分解反応は、大気雰囲気での熱分解反応と同様に進む。いっぽう、大気圧でのオクチル酸の沸点は228℃で、ラウリン酸の沸点は296℃で、ステアリン酸の沸点は361℃であり、オクチル酸金属化合物の熱分解温度が最も低い。
さらに、オクチル酸金属化合物は、容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、汎用的な有機酸であるオクチル酸を強アルカリと反応させると、オクチル酸アルカリ金属化合物が生成される。この後、オクチル酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させると、様々な金属からなるオクチル酸金属化合物が合成される。従って、有機金属化合物の中で最も安価な有機金属化合物である。
さらに、グリコール類ないしはグリコールエーテル類に属する有機化合物の中に、アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、沸点が180℃より低い第二の性質と、粘度がメタノールの5倍以上の粘度を持つ第三の性質とからなる3つの性質を兼備する有機化合物が存在する。このような有機化合物はいずれも汎用的な工業用薬品である。従って、このような有機化合物を、2種類の金属化合物のメタノール分散液に混合すると、有機化合物がメタノールに溶解ないしは混和するため、有機化合物は2種類の金属化合物のメタノール分散液と均一に混ざり合って、第一の塗料が製造される。
以上に説明したように、2種類の金属化合物とメタノールと有機化合物とからなる汎用的な工業用薬品を原料として用い、第一の塗料が安価な費用で製造される。この結果、5段落で説明した第一の課題と第二の課題とを同時に解決する第一の塗料が製造できる。
【0016】
前記した第一の塗料を製造する第二の製造方法は、前記した第一の金属化合物として、安息香酸金属化合物ないしはナフテン酸金属化合物を用い、前記した第二の金属化合物として、ラウリン酸金属化合物を用い、前記したアルコールとして、メタノールを用い、前記した有機化合物として、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類に属するいずれか1種類の有機化合物を用い、前記した第一の塗料を製造する製造方法に従って第一の塗料を製造する第二の製造方法である。
【0017】
つまり、安息香酸金属化合物は、大気雰囲気の310℃で熱分解して金属酸化物を析出し、メタノールに10重量%近くまで分散する。従って、安息香酸チタン(C
6H
5COO)
4Tiは、触媒作用を有する酸化チタンTiO
2の原料になる。また、ナフテン酸金属化合物は、大気雰囲気の330℃で熱分解して金属酸化物を析出し、メタノールに10重量%近くまで分散する。従って、ナフテン酸バナジウム(C
9H
17COO)
4Vは、触媒作用を有する酸化バナジウムV
2O
5の原料になる。
いっぽう、ラウリン酸金属化合物は、安息香酸金属化合物とナフテン酸金属化合物との熱分解温度より高い360℃で熱分解して金属を析出し、メタノールに10重量%近くまで分散する。従って、ラウリン酸鉄(C
11H
23COO)
3Feと、ラウリン酸ニッケル(C
11H
23COO)
2Niと、ラウリン酸コバルト(C
11H
23COO)
2Coとは、強磁性の鉄、ニッケル、コバルトの各々を熱分解で析出する原料になる。
さらに、カルボン酸エステル類、グリコール類、グリコールエーテル類に属する有機化合物の中に、沸点が310℃より低く、メタノールの粘度の5倍以上の粘度を持ち、メタノールに溶解ないしは混和する有機化合物が存在する。このような有機化合物は、第一の塗料の原料になる。
つまり、安息香酸金属化合物とナフテン酸金属化合物はカルボン酸金属化合物であるが、オクチル酸金属化合物とラウリン酸金属化合物とからなるカルボン酸金属化合物とは異なり、安息香酸ないしはナフテン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが配位子になり、金属イオンに近づいて配位結合する有機金属化合物からなる錯体である。この錯体は、最も大きいイオンである金属イオンに酸素イオンが近づいて配位結合するため、両者の距離は短くなる。これによって、金属イオンに配位結合する酸素イオンが、金属イオンの反対側で共有結合するイオンとの距離が最も長くなる。こうした分子構造上の特徴を持つ安息香酸金属化合物ないしはナフテン酸金属化合物は、安息香酸ないしはナフテン酸の沸点を超えると、安息香酸ないしはナフテン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンの反対側で共有結合するイオンとの結合部が最初に分断され、金属イオンと酸素イオンとの化合物である金属酸化物と安息香酸ないしはナフテン酸とに分解する。さらに昇温すると、安息香酸ないしはナフテン酸が気化熱を奪って気化し、気化が完了すると、金属酸化物が析出して熱分解を終える。こうした熱分解で金属酸化物を析出するカルボン酸金属化合物として、酢酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、安息香酸金属化合物、ナフテン酸金属化合物などがある。いっぽう、大気圧での酢酸の沸点は118℃で、カプリル酸の沸点は237℃で、安息香酸の沸点は249℃である。また、ナフテン酸は5員環をもつ飽和脂肪酸の混合物で、一般式がC
nH
2n−1COOHで示され、主成分の沸点が268℃で、分子量が170のC
9H
17COOHからなる。従って、これらのカルボン酸金属化合物は、配位結合するカルボン酸の分子量と、配位結合するカルボン酸の数とに応じて、180−330℃の温度で熱分解が完了する。このようなカルボン酸金属化合物の中で、安息香酸チタンは合成が容易で、配位結合が安定な物質で、熱分解で酸化チタンを析出する。また、カルボン酸金属化合物の中で、ナフテン酸バナジウムは合成が容易で、配位結合が安定な物質で、熱分解で酸化バナジウムを析出する。なお、カルボン酸金属化合物からなる錯体に、配位結合が不安定な錯体が存在し、このような錯体は、熱分解で金属酸化物を析出しない。
また、ラウリン酸金属化合物は、前記したオクチル酸金属化合物と同様に、熱分解で金属を析出するカルボン酸金属化合物である。いっぽう、ラウリン酸金属化合物が熱分解する温度は、オクチル酸金属化合物が熱分解する温度より70℃ほど高く、また、安息香酸金属化合物の熱分解温度より50℃ほど高く、ナフテン酸金属化合物の熱分解温度より30℃ほど高い。従って、熱分解で鉄を析出するラウリン酸鉄、熱分解でニッケルを析出するラウリン酸ニッケル、熱分解でコバルトを析出するラウリン酸コバルトは、第一塗料の原料になる。
さらに、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類に属する有機化合物の中に、メタノールに溶解ないしは混和する第一の性質と、沸点が310℃より低い第二の性質と、粘度がメタノールの5倍以上の粘度を持つ第三の性質とからなる3つの性質を兼備する有機化合物が存在する。このような有機化合物はいずれも汎用的な工業用薬品である。従って、このような有機化合物を、2種類の金属化合物のメタノール分散液に混合すると、有機化合物は2種類の金属化合物のメタノール分散液と均一に混ざり合って、第一の塗料が製造される。
以上に説明したように、安息香酸金属化合物ないしはナフテン酸金属化合物とラウリン酸金属化合物とメタノールと有機化合物とからなる汎用的な工業用薬品を原料として用いることで、第二の塗料が安価な費用で製造される。この結果、5段落で説明した第一の課題と第二の課題とを同時に解決する第一の塗料が製造できる。
【0018】
本発明における基材ないしは部品に塗料を塗布ないしは印刷すると、該基材ないしは該部品に、触媒作用を発揮する
性質と強磁性の性質とを兼備する金属からなる金属微粒子同士が金属結合した該金属微粒子の集まりからなる金属微粒子の積層体が形成される塗膜ないしは印刷膜となる第二の塗料を製造する製造方法は、
熱分解で触媒作用を発揮する性質と強磁性の性質とを兼備する金属を析出する金属化合物を、アルコールに分散し、該金属化合物がアルコールに分子状態で分散されたアルコール分散液を作成し、前記アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、沸点が前記金属化合物の熱分解温度より低い第二の性質と、前記アルコールの粘度の5倍以上の粘度を持つ第三の性質を兼備する有機化合物を、前記アルコール分散液に25重量%以下の割合で混合し、該有機化合物が前記アルコールに溶解ないしは混和し、該有機化合物が前記アルコール分散液と均一に混ざり合った混合液を作成する、これによって、該混合液を基材ないしは部品に塗布ないしは印刷すると、触媒作用を発揮する
性質と強磁性の性質とを兼備する金属からなる金属微粒子同士が金属結合した該金属微粒子の集まりからなる金属微粒子の積層体が形成される塗膜ないしは印刷膜となる前記混合液からなる第二の塗料が製造される、基材ないしは部品に塗料を塗布ないしは印刷すると、該基材ないしは該部品に、触媒作用を発揮する
性質と強磁性の性質とを兼備する金属からなる金属微粒子同士が金属結合した該金属微粒子の集まりからなる金属微粒子の積層体が形成される塗膜ないしは印刷膜となる第二の塗料を製造する製造方法である。
【0019】
つまり、熱分解で触媒作用と強磁性の性質とを兼備する金属を析出する金属化合物をアルコールに分散すると、金属化合物が分子状態となって10重量%近い割合でアルコールに分散される。これによって、触媒作用と強磁性の性質とを兼備する金属の原料が液相化される。次に、有機化合物をアルコール分散液に25重量%以下の割合で混合すると、有機化合物がアルコールに溶解ないしは混和するため、有機化合物はアルコール分散液と均一に混ざり合い、アルコールの高い混合割合によって、粘度の低い塗料となり、この塗料を塗布ないしは印刷すると、数ミクロンの膜厚からなる塗膜ないしは印刷膜が形成される。また、触媒作用と強磁性の性質とを兼備する金属として、コバルトとニッケルが存在し、金属化合物は熱分解によってコバルトないしはニッケルを析出する。
なお、7段落で説明したように、有機化合物の粘度は有機化合物の沸点に応じて変わる。従って、7段落で記載した第一の塗料を製造する際と同様に、熱分解で触媒作用を発揮する性質と強磁性の性質を兼備する金属を析出する金属化合物の熱分解温度に応じて、金属化合物のアルコール分散液に有機化合物を混合する割合を変えれば、第二の塗料の粘度は第一の塗料の粘度に近づき、基材ないしは部品の大きさや形状に拘わらず、第二の塗料からなる塗膜ないしは印刷膜が数ミクロンの膜厚で形成される。
このような方法で製造した第二の塗料を基材ないしは部品に塗布ないしは印刷する際に、基材ないしは部品の形状や大きさに応じて、刷毛塗り、ローラー塗り、吹き付け塗装、浸漬塗装、ロールコーターなどからなる塗布方法を、ないしは、バーコート、リバースコート、グラビア印刷、スクリーン印刷などからなる印刷方法を選択すれば、全ての基材ないしは部品に、塗膜ないしは印刷膜が形成される。いっぽう、基材ないしは部品に塗布ないしは印刷した低粘度の塗料は、基材ないしは部品の表面の凹凸に入り込み、基材ないしは部品に塗膜ないしは印刷膜を形成する。
なお、7段落で説明したように、基材ないしは部品が、板やシート、平面状のフィルター、ワイヤを編んだメッシュやシートのように、2次元的な平面形状の基材で構成される場合は、前記した様々な塗布方法や印刷方法を用いて、基材に第二の塗料を塗布ないしは印刷すれば、基材の表面に塗膜ないしは印刷膜が形成される。これに対し、基材ないしは部品が、ハニカム構造、多孔質フィルター構造、ハニカムフィルター構造のように、内部に空洞を持つ3次元的な構造物の部品で構成される場合は、前記した浸漬塗装の方法を用い、部品の表面のみならず、内部の空洞の表面にも塗膜が形成される。
以上に説明した第二の塗料は、熱分解で触媒作用を発揮する性質と強磁性の性質を兼備する金属を析出する金属化合物とアルコールと有機化合物とからなる汎用的な工業用薬品を原料として用いる。また、第二の塗料の製造方法は、金属化合物をアルコールに分散し、このアルコール分散液に有機化合物を混合するだけの極めて簡単な処理である。従って、安価な原料を用いて、安価な費用で大量の第二の塗料が製造される。また、基材ないしは部品の形状や大きさに拘わらず、全ての基材ないしは部品に、低い粘度からなる第二の塗料を、塗布ないしは印刷することができる。この結果、第二の塗料は、5段落で説明した第一の課題と第二の課題とを同時に解決する。
【0020】
前記した第二の塗料を用いて、基材ないしは部品に触媒作用を発揮する
性質と強磁性の性質とを兼備する金属からなる金属微粒子同士が金属結合した金属微粒子の積層体を形成する方法は、
前記した第二の塗料を、基材ないしは部品に塗布ないしは印刷し、該基材ないしは該部品を、前記第二の塗料を構成する金属化合物が熱分解する温度まで昇温する、これによって、最初にアルコールが気化し、前記第二の塗料を構成する金属化合物の微細結晶の集まりが、前記第二の塗料を構成する有機化合物中に均一に析出する、次に前記有機化合物が気化し、前記第二の塗料の塗膜ないしは印刷膜は、前記微細結晶が均一に分散された該微細結晶の集まりになる、さらに、前記金属化合物が熱分解し、触媒作用を有し、かつ、強磁性の性質を有する金属からなる金属微粒子の集まりが積み重なって前記基材ないしは前記部品に析出し、隣接する前記金属微粒子同士が金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりからなる積層体が、前記基材ないしは前記部品に形成され、該積層体の表面を形成する前記金属微粒子の表面が、50%より広い表面を直接外界に晒し、該積層体の表面は前記金属微粒子を構成する材質に基づく固有の触媒作用を発揮する、これによって、前記基材ないしは前記部品に、前記触媒作用を発揮する
性質と強磁性の性質とを兼備する金属からなる金属微粒子同士が金属結合した金属微粒子の積層体が形成される、前記した第二の塗料を用いて、基材ないしは部品に触媒作用を発揮する
性質と強磁性の性質とを兼備する金属からなる金属微粒子同士が金属結合した金属微粒子の積層体を形成する方法。
【0021】
つまり、第二の塗料を基材ないしは部品に塗布ないしは印刷すると、塗料が低い粘度の液体であるため、基材ないしは部品が、板やシート、平面状のフィルター、ワイヤを編んだメッシュやシートのように、2次元的な平面形状の基材である場合は、基材の表面の凹凸に入り込んで、厚みが薄い塗膜ないしは印刷膜が、基材の表面に形成される。これに対し、基材ないしは部品が、ハニカム構造、多孔質フィルター構造、ハニカムフィルター構造のように、内部に空洞を持つような3次元的な構造物の部品である場合は、部品の表面の凹凸のみならず内部空洞の表面の凹凸にも塗料が入り込み、厚みが薄い塗膜が外部の表面と内部の表面とに形成される。この後、基材ないしは部品が、アルコールの気化点に達すると、塗膜ないしは印刷膜の大部分を占めるアルコールが気化し、厚みが1μm程度の膜厚からなる塗膜ないしは印刷膜になる。この際、金属化合物がアルコールに分散するが有機化合物に分散しないため、金属化合物の微細結晶の集まりが有機化合物中に析出する。さらに、基材ないしは部品が、有機化合物の沸点に達すると、有機化合物が気化し、塗膜ないしは印刷膜は金属化合物の微細結晶の集まりになる。いっぽう、金属化合物の微細結晶の大きさが、基材ないしは部品の表面ないしは内部の表面の凹凸に比べ1桁以上小さいため、微細結晶は凹凸に入り込んで基材ないしは部品を覆う。なお、金属化合物の微細結晶は、熱分解で析出する金属微粒子の大きさに相当する。さらに、基材ないしは部品が、金属化合物が熱分解する温度に達すると、基材ないしは部品に、触媒作用と強磁性の性質とを兼備し、大きさが40−60nmの粒状の微粒子の集まりが5層前後積み重なって析出する。この際、析出する金属微粒子が不純物を持たない活性状態で析出するため、隣接する金属微粒子同士が接触部位で金属結合し、金属結合した金属微粒子の集まりからなる500nm未満の膜厚からなる積層体が形成される。この積層体の表面は、大きさが40−60nmの粒状の微粒子同士が互いの接触部位で金属結合するため、50%より広い微粒子の表面が外界に直接晒され、微粒子は効率よく触媒作用を発揮する。こうした金属結合した金属微粒子は、基材ないしは部品の表面の凹凸に入り込むとともに、基材ないしは部品の表面を覆うため、アンカー効果で積層体は基材ないしは部品から剥がれない。
なお、触媒作用と強磁性の性質とを兼備する金属として、ニッケルとコバルトが存在する。このため、金属化合物として、熱分解でコバルトを析出するコバルト化合物を用いれば、コバルトの磁気キュリー点が1115℃と高く、コバルト微粒子の集まりからなる積層体は、高温に晒される触媒装置に用いることができる。あるいは、金属化合物として、熱分解でニッケルを析出するニッケル化合物を用いれば、ニッケルの磁気キュリー点は354℃とコバルトに比べれば低いが耐食性に優れるため、ニッケル微粒子の集まりからなる積層体は、野外に長期間晒される触媒として用いることができる。なお、鉄に依る新たな触媒作用が見いだされれば、金属化合物として熱分解で鉄を析出する鉄化合物を用いることができる。この際、鉄は磁気キュリー点が770℃と高い強磁性材料であるため、高温でも鉄に依る触媒作用が発揮される。
この結果、9段落で説明した第一の塗料を用いて、基材ないしは部品に触媒作用を発揮する微粒子の積層体を形成した場合と同様に、基材ないしは部品が、板やシート、平面状のフィルター、ワイヤを編んだメッシュやシートのように、2次元的な平面形状の基材で構成される場合は、触媒作用を発揮する微粒子の積層体は、基材の表面に形成される。これに対し、基材や部品が、ハニカム構造、多孔質フィルター構造、ハニカムフィルター構造のように、内部に空洞を持つ3次元的な構造物の部品で構成される場合は、部品の表面のみならず、内部の空洞の表面にも、触媒作用を発揮する微粒子の積層体が形成される。
以上に説明したように、基材ないは部品に形成した積層体の表面は、金属微粒子を構成する材質に基づく固有の触媒作用を効率よく発揮する。また、積層体は1150℃に近い耐熱性を持つことができ、また、野外に長期に晒しても経時変化しない耐久性を持つこともできる。さらに、大型の基材ないしは部品であっても、第二の塗料に依る塗膜ないしは印刷膜は数ミクロンであり、塗料の使用量が極わずかである。さらに、積層体の形成は熱処理だけである。この結果、5段落で説明した第三の課題と第四の課題とが同時に解決できた。
【0022】
前記した第二の塗料を用いて、基材ないしは部品の互いに異なる複数の部位の各々の部位に、ないしは、基材ないしは部品の互いに異なる複数の領域の各々の領域に、触媒作用を有する2種類の強磁性金属からなる1種類ずつの金属に依って、金属微粒子同士が金属結合した該金属微粒子の集まりからなる金属微粒子の積層体を形成する方法は、
前記した第二の塗料は、前記金属化合物を、触媒作用を有する異なる材質からなる2種類の強磁性金属が同じ熱分解温度で析出する2種類の金属化合物で構成し、該2種類の金属化合物の1種類ずつの金属化合物を用い、前記した第二の塗料の製造方法に従って2種類の塗料を作成する、この後、基材ないしは部品の互いに異なる複数の部位の各々の部位に、ないしは、基材ないしは部品の互いに異なる複数の領域の各々の領域に、前記2種類の塗料のうちの1種類ずつの塗料を塗布ないしは印刷する、さらに、該基材ないしは該部品を、前記金属化合物が熱分解する温度まで昇温する、これによって、触媒作用を有する強磁性金属からなる2種類の金属のうちの1種類ずつの金属からなる微粒子の集まりが、前記基材ないしは前記部品の互いに異なる複数の部位の各々の部位に積み重なって析出し、ないしは、前記基材ないしは前記部品の互いに異なる複数の領域の各々の領域に積み重なって析出し、隣接する前記金属微粒子同士が金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりからなる微粒子の積層体が、前記2種類の金属のうちの1種類ずつの金属が金属結合した金属微粒子の集まりからなる金属微粒子の積層体として、前記基材ないしは前記部品の互いに異なる複数の部位の各々の部位に形成され、ないしは、前記基材ないしは前記部品の互いに異なる複数の領域の各々の領域に形成され、該積層体の表面を形成する前記金属微粒子の表面が、50%より広い表面を直接外界に晒し、該積層体の表面は前記金属微粒子を構成する金属の材質に基づく固有の触媒作用を発揮する、これによって、前記基材ないしは前記部品の互いに異なる複数の部位の各々の部位に、ないしは、前記基材ないしは前記部品の互いに異なる複数の領域の各々の領域に、前記2種類の金属からなる1種類ずつの金属に依る触媒作用を発揮する金属微粒子の積層体が形成される、前記した第二の塗料を用いて、基材ないしは部品の互いに異なる複数の部位の各々の部位に、ないしは、基材ないしは部品の互いに異なる複数の領域の各々の領域に、触媒作用を有する2種類の強磁性金属からなる1種類ずつの金属に依って、金属微粒子同士が金属結合した該金属微粒子の集まりからなる金属微粒子の積層体を形成する方法である。
【0023】
つまり、基材ないしは部品の互いに異なる複数の部位における各々の部位に、ないしは、互いに異なる複数の領域における各々の領域に、前記した第二の塗料を構成する金属化合物が異なる2種類の塗料の1種類ずつの塗料を、塗布ないしは印刷することは容易である。例えば、基材ないしは部品が、板やシート、平面状のフィルター、ワイヤを編んだメッシュやシートのように、2次元的な平面形状の基材である場合は、基材の互いに異なる複数の部位の各々の部位に、2種類の塗料の1種類ずつの塗料を塗布ないしは印刷する度に、基材の表面を部分的にマスキングする領域をその都度変えれば、基材の互いに異なる複数の部位の各々の部位に、2種類の塗料の1種類ずつの塗料が塗布ないしは印刷できる。また、基材ないしは部品が、ハニカム構造、多孔質フィルター構造、ハニカムフィルター構造のように、内部に空洞を持つ3次元的な構造物の部品である場合は、2種類の塗料の1種類ずつの塗料に部品を浸漬する度に、塗料に浸漬する深さをその都度浅くすれば、部品の内部空洞の互いに異なる複数の領域の各々の領域の表面に、2種類の塗料の1種類ずつの塗料が塗布できる。
また、2種類の塗料は、触媒作用と強磁性の性質を兼備するニッケルとコバルトを、同じ熱分解温度で析出する2種類の金属化合物を、1種類ずつの金属化合物として用い、16段落に記載した第二の塗料を製造する方法に従って2種類の塗料が製造される。
こうした2種類の塗料の1種類ずつを、基材ないしは部品の互いに異なる複数の部位の各々に、ないしは、互いに異なる複数の領域の各々の領域に、塗布ないしは印刷し、金属化合物が熱分解する温度まで昇温すると、11段落で説明した第一の塗料を用いた場合と同様に、基材ないしは部品の互い異なる複数の部位の各々の部位に、ないしは、互いに異なる複数の領域の各々の領域に、ニッケルないしはコバルトからなる1種類ずつの触媒作用を発揮する金属結合した金属微粒子の集まりからなる微粒子の積層体が形成される。これによって、一つの基材ないしは部品が発揮する触媒作用が2種類に増大する。この結果、2つの基材ないしは部品によって、2種類の触媒作用の各々を発揮させるより、安価な費用で2種類の触媒作用を発揮する一つの基材ないしは部品が製造できる。
【0024】
20段落ないしは22段落に記載した基材ないしは部品に形成した触媒作用を発揮する
性質と強磁性の性質とを兼備する金属からなる金属微粒子の積層体と、該基材ないしは該部品との接合力を増大させる方法は、
強磁性の材質からなる基材ないしは部品を用い、20段落に記載した基材ないしは部品に触媒作用を発揮する
性質と強磁性の性質とを兼備する金属からなる金属結合した金属微粒子の集まりからなる積層体を形成する方法に従って、前記基材ないしは前記部品に、触媒作用を発揮する
性質と強磁性の性質とを兼備する金属からなる金属微粒子の積層体を磁気吸着させる、この後、前記基材ないしは前記部品に磁場を加える、
ないしは、
強磁性の材質からなる基材ないしは部品を用い、22段落に記載した基材ないしは部品の互いに異なる複数の部位の各々の部位に、ないしは、基材ないしは部品の互いに異なる複数の領域の各々の領域に、
触媒作用を有する2種類の
強磁性金属からなる1種類ずつの金属に依る触媒作用を発揮する金属微粒子の積層体を形成する方法に従って、前記基材ないしは前記部品の互いに異なる複数の部位の各々の部位に、ないしは、前記基材ないしは前記部品の互いに異なる複数の領域の各々の領域に、
触媒作用を有する2種類の
強磁性金属からなる1種類ずつの金属に依る触媒作用を発揮する金属微粒子の積層体を磁気吸着させる、この後、前記基材ないしは前記部品に磁場を加える、
これによって、
前記積層体を構成する
触媒作用を有する強磁性の金属微粒子の集まりが発する磁力で、該積層体が強磁性の材質からなる前記基材ないしは前記部品に磁気吸着するとともに、該積層体を構成する前記
触媒作用を有する強磁性の金属微粒子の磁化方向が前記磁場の印加方向に揃い、該
触媒作用を有する強磁性の金属微粒子の磁力が増大し、前記積層体と強磁性の材質からなる前記基材ないしは前記部品との磁気吸着力が増大され、20段落ないしは22段落に記載した基材ないしは部品に形成した触媒作用を発揮する
強磁性金属からなる金属微粒子の積層体と、該基材ないしは該部品との接合力を増大させる方法である。
【0025】
つまり、強磁性の金属ないしは合金からなる基材ないしは部品を用い、20段落と22段落との各々の段落に記載した触媒作用を発揮する
性質と強磁性の性質とを兼備する金属からなる金属微粒子の積層体を基材ないしは部品に形成する方法に従って、強磁性の金属ないしは合金からなる基材ないしは部品に積層体を形成すると、積層体を構成する強磁性の金属微粒子の集まりが発する磁力で、積層体が基材ないしは部品に磁気吸着する。この後、基材ないしは部品に磁場を加える。これによって、強磁性の金属微粒子の磁化が磁場方向に揃えられて磁力が著しく増大するとともに、基材ないしは部品の磁化の方向も磁場方向に揃えられ、膜厚が僅かに500nm未満の触媒作用を発揮する
強磁性の金属の微粒子の積層体と、基材ないしは部品との磁気吸着力が著しく増大し、積層体に物理的な応力が加えられても、積層体は基材ないしは部品の表面から剥がれない。
なお、基材ないしは部品が、板やシート、平面状のフィルター、ワイヤを編んだメッシュやシートのように、2次元的な平面形状の基材で構成される場合は、積層体が基材の表面に平面形状として形成されるため、積層体の厚み方向に磁場を加える。これに対し、基材ないしは部品が、ハニカム構造、多孔質フィルター構造、ハニカムフィルター構造のように、内部に空洞を持つ3次元的な部品である場合は、内部の空洞を形成する壁の表面に積層体が形成されるため、積層体の長さ方向、つまり、部品の長さ方向に磁場を加える。
すなわち、
強磁性の材質からなる基材ないしは部品を、鉄やニッケルからなる金属、あるいは、鉄に少量のケイ素を加えた各種ケイ素鋼、鉄と様々な金属ととからなる各種鉄合金、鉄とニッケルとの各種ニッケル合金、マルテンサイト系、フェライト系、ないしはオーステナイト・フェライト系からなるステンレス鋼、あるいは、セラミック材料である各種の強磁性フェライトなど、様々な強磁性材料によって
強磁性の材質からなる基材ないしは部品を構成することができる。
また、
強磁性の材質からなる基材ないしは部品は、板やシートといった単純な形状のみならず、強磁性ワイヤを繊維状に編んだメッシュやシートからなる基材や、強磁性の金属箔ないしは合金泊を加工したハニカム、あるいは、強磁性のフェライトセラミックの粉体を面状フィルター、多孔質フィルター、ハニカムフィルターに押出成形した成形品など様々な形状や構造に加工した
強磁性の材質からなる基材ないしは部品を用いることができる。
さらに、前記したように第一の塗料と第二の塗料とが低い粘度であるため、刷毛塗り、ローラー塗り、吹き付け塗装、浸漬塗装、ロールコーターなどからなる塗布方法を、ないしは、バーコート、リバースコート、グラビア印刷、スクリーン印刷などからなる印刷方法を選択すれば、全ての
強磁性の材質からなる基材ないしは部品に、数ミクロンの膜厚の塗膜ないしは印刷膜が形成される。この後、熱分解で強磁性の金属を析出する金属化合物が熱分解する温度に昇温し、
強磁性の材質からなる基材ないしは部品に積層体を磁気吸着させ、さらに、
強磁性の材質からなる基材ないしは部品に磁場を加えれば、様々な大きさや形状からなり、かつ、強磁性の材質からなる基材ないしは部品と、膜厚が500nm未満の触媒作用を発揮する
性質と強磁性の性質とを兼備する金属からなる金属微粒子の積層体との磁気吸着力が著しく増大し、積層体に物理的な応力を加えられても、膜厚が極薄い積層体は磁気吸着力によって
強磁性の材質からなる基材ないしは部品から剥がれない。
【0026】
前記した第二の塗料を製造する製造方法は、前記した金属化合物として、オクチル酸ニッケルないしはオクチル酸コバルトを用い、前記したアルコールとして、メタノールを用い、前記した有機化合物として、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類に属するいずれか1種類の有機化合物を用い、前記した第二の塗料を製造する製造方法に従って第二の塗料を製造する製造方法である。
【0027】
つまり、オクチル酸金属化合物は290℃で熱分解して金属を析出し、また、メタノールに10重量%程度分散する。このような、オクチル酸金属化合物に、触媒作用と強磁性の性質を兼備するニッケルとコバルトとをそれぞれ析出する、オクチル酸ニッケルとオクチル酸コバルトとが存在する。従って、オクチル酸ニッケルないしはオクチル酸コバルトは、第二の塗料の原料になる。
さらに、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類に属する有機化合物の中に、沸点が290℃より低く、メタノールの粘度の5倍以上の粘度を持ち、メタノールに溶解ないしは混和する有機化合物が存在する。従って、このような有機化合物を、オクチル酸ニッケルないしはオクチル酸コバルトのメタノール分散液に混合すると、有機化合物がメタノールに溶解ないしは混和するため、有機化合物は金属化合物のメタノール分散液と均一に混ざり合って、第二の塗料が製造される。
以上に説明したように、オクチル酸ニッケルないしはオクチル酸コバルトとメタノールと有機化合物とからなる汎用的な工業用薬品を原料として用い、第二の塗料が安価な費用で製造される。このため、5段落で説明した第一と第二との課題とを同時に解決する第二の塗料が製造できる。