(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6698327
(24)【登録日】2020年5月1日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】衣服とその製造方法
(51)【国際特許分類】
A41D 27/24 20060101AFI20200518BHJP
【FI】
A41D27/24 C
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-240789(P2015-240789)
(22)【出願日】2015年12月10日
(65)【公開番号】特開2017-106139(P2017-106139A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2018年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】594137960
【氏名又は名称】株式会社ゴールドウイン
(73)【特許権者】
【識別番号】592019523
【氏名又は名称】株式会社ゴールドウインテクニカルセンター
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 宗治
(72)【発明者】
【氏名】坂田 由美子
【審査官】
住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】
実開平02−090607(JP,U)
【文献】
米国特許第03585951(US,A)
【文献】
実開昭63−027408(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D27/00−27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定形状にカットした第1生地と第2生地を縫合ラインで縫い合わせ一対の縫い代を互いに重ねて前記縫合ラインの片側に倒した縫目が設けられ、前記縫目と前記生地の端部が交差する部分は、前記縫合ラインの両側で前記縫い代が同じ層数に設けられ、前記縫合ラインの両側の厚みが等しい平坦な縫目端部構造が設けられ、
前記縫目端部構造は、前記第1生地と前記第2生地が、前記縫合ラインを一致させて中表にして縫い代同士がロックミシン線で縫い合わされ、前記ロックミシン線は、前記縫合ラインが交差する前記端部に近づくにつれて前記縫合ラインから離れる方向に逃がされ、前記縫合ラインの、前記端部に近い部分には、前記ロックミシン線の一部に重なるように直線ミシン線が設けられて前記第1生地と前記第2生地が縫い合わされ、
前記第1生地の縫い代には、前記直線ミシン線に対して交差する切断線が設けられ、前記第1生地の前記縫い代の、前記切断線よりも前記端部に近い部分は、前記直線ミシン線で折り返されて、前記第2生地の前記縫い代から開かれて前記第1生地の裏面に重ねられ、
前記直線ミシン線で連結された前記第1生地と前記第2生地を、前記端部に沿う端部仕上がりラインで、前記第1生地と前記第2生地の裏面へ折り返して前記端部が仕上げられていることを特徴とする衣服。
【請求項2】
所定形状にカットした第1生地と第2生地を縫合ラインで縫い合わせ一対の縫い代を互いに重ねて前記縫合ラインの片側に倒した縫目が設けられ、前記縫目と前記生地の端部が交差する部分は、前記縫合ラインの両側で前記縫い代が同じ層数に設けられ、前記縫合ラインの両側の厚みが等しい平坦な縫目端部構造が設けられ、
前記縫目端部構造は、前記第1生地と前記第2生地の、前記縫合ラインと、前記端部に沿う端部仕上がりラインの外側に位置する縫い代は、前記縫合ラインと前記端部仕上がりラインが交差する角部の近傍が、前記縫合ラインに対して交差する縫合ライン側縁部と、前記端部仕上がりラインに対して交差する端部仕上がりライン側縁部で囲まれた形状に切除され、
前記第1生地と前記第2生地は、前記縫合ラインを一致させて前記縫合ライン側縁部に達して縫い合わされ、前記一対の縫い代は、前記端部仕上がりライン側縁部で互いに突き合わされて平行に隣接し、開き止めミシン線が設けられて互いに面一となって縫い合わされ、
前記開き止めミシン線で縫い合わされた一対の縫い代を、前記端部仕上がりラインで、前記第1生地と前記第2生地の裏面へ折り返して前記端部が仕上げられていることを特徴とする衣服。
【請求項3】
所定形状にカットした第1生地と第2生地を縫合ラインで縫い合わせ、一対の縫い代を互いに重ねて前記縫合ラインの片側に倒して縫目を形成し、前記第1生地と前記第2生地の前記縫合ラインを一致させて中表にして縫い代同士をロックミシン線で縫い合わせ、前記ロックミシン線を、前記縫合ラインが交差する前記生地の端部に近づくにつれて前記縫合ラインから離れる方向に逃がして形成し、前記縫合ラインの、前記端部に近い部分に、前記ロックミシン線の一部に重なるように直線ミシン線を形成して、前記第1生地と前記第2生地を縫い合わせ、前記第1生地の縫い代に前記直線ミシン線に対して交差する切断線を設け、前記第1生地の前記縫い代の、前記切断線よりも前記端部に近い部分を、前記直線ミシン線で折り返して前記第2生地の前記縫い代から開いて前記第1生地の裏面に重ね、前記直線ミシン線で連結された前記第1生地と前記第2生地を、前記端部に沿う端部仕上がりラインで、前記第1生地と前記第2生地の裏面へ折り返して前記端部を仕上げることを特徴とする衣服の製造方法。
【請求項4】
所定形状にカットした第1生地と第2生地を縫合ラインで縫い合わせ、一対の縫い代を互いに重ねて前記縫合ラインの片側に倒して縫目を形成し、前記生地の端部に沿う端部仕上がりラインの外側に位置する縫い代を、前記縫合ラインと前記端部仕上がりラインが交差する角部の近傍で、前記縫合ラインに対して交差する縫合ライン側縁部と、前記端部仕上がりラインに対して交差する端部仕上がりライン側縁部とで囲まれた形状に切除し、前記第1生地と前記第2生地を、前記縫合ラインを一致させて前記縫合ライン側縁部に達して縫い合わせ、前記一対の縫い代は、前記端部仕上がりライン側縁部で互いに突き合わされて平行に隣接させ開き止めミシン線を設けて互いに面一となって縫い合わせ、前記開き止めミシン線で縫い合わせた一対の縫い代を、前記端部仕上がりラインで、前記第1生地と前記第2生地の裏面へ折り返して前記端部を仕上げることを特徴とする衣服の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水着やフィットネスウエア等身体に密着する衣服とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水着やフィットネスウエアは、伸縮性を有する生地のパーツを複数個縫い合わせて作られている。色や柄が異なる生地を切り替えてデザイン性を向上させたものもある。しかし、生地を切り替える縫合ラインの縫目は、生地の縫い代をロックミシン線でオーバー合わせをして一方の生地の裏面に倒して縫製すると、縫目の両側で厚みが異なって段差が生じる。特に、縫合ラインが袖ぐりや襟ぐり等の端部まで達した場合、端部に沿って折り返して端部処理をすると縫目の段差が2倍になり、端部に突起が形成される。折返してゴム付けをしたり、生地の厚いものを用いたりすると、この突起がより大きくなると言う問題があった。衣服の端部にこのような段差による突起があると、着用者が運動をする際にこの突起が皮膚に当たり、内出血や擦過傷等の皮膚障害が起きることがある。
【0003】
そこで従来、縫目の段差を少なくするためにいろいろな技術が提案されている。特許文献1に開示されている衣類は、複数の生地部品の突合せ部の少なくとも片面に低融点樹脂シートと高融点樹脂シートとが積層一体化された熱融着テープが配置され、前記高融点樹脂シートと前記複数の生地部品とが前記低融点樹脂シートにより融着接合されている。これにより、接合部を薄くすることができるものである。
【0004】
また、特許文献2に開示されているリバーシブルダウンジャケットおよびリバーシブルダウンベストは、脇縫着部や肩縫着部等で、縫着部を形成する2つの部片の上にその縫着部を覆うように帯状布を配置し、帯状布の一側を縫着部を形成する一方の部片に縫着し、帯状布の他側を縫着部を形成する他方の部片に縫着したものである。これにより、従来製品に比べて縫着部のゴロゴロ感が少なく、表面と裏面がほぼ同じ外観を呈し、また、縫着部の端処理をきれいに行うことができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−226175号公報
【特許文献2】特開2008−111199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記背景技術の引用文献1の衣類は、熱融着テープが必要であり、部品点数が多く、コストがかかるものである。また縫目に糸がないため、縫目を特徴とするデザインの衣服には、特徴を生かすことができない。
【0007】
引用文献2のダウンジャケット及びダウンベストは、従来のリバーシブルダウン製品よりは薄いが、ダウンを使用しない水着やフィットネスウエアには不要の構造であり、水着やフィットネスウエアの縫目を薄くするものではない。その他、縫目をオーバー合わせではなくフラットシーマにすることで突起の解消はできるが、デザイン性に影響を与えるものである。
【0008】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で安価であり、縫目を使ったデザインも可能であり、縫目に交差する端部が平坦で、着用者が快適に着用することができる衣服とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、所定形状にカットした第1生地と第2生地を縫合ラインで縫い合わせ一対の縫い代を2枚に重ねて前記縫合ラインの片側に倒した縫目が設けられ、前記縫目と、襟ぐりや袖ぐり等の端部が交差する部分は、前記縫合ラインの両側で前記縫い代が同じ層数に設けられ
、前記縫合ラインの両側の厚みが等しい平坦な縫目端部構造が設けられている衣服である。
【0010】
前記縫目端部構造は、前記第1生地と前記第2生地が、前記縫合ラインを一致させて中表にして縫い代同士がロックミシン線で縫い合わされ、前記ロックミシン線は、前記縫合ラインが交差する前記端部に沿う端部仕上がりラインに近づくにつれて前記縫合ラインから離れる方向に逃がされている。前記縫合ラインの、前記端部仕上がりラインに近い部分には、前記ロックミシン線の一部に重なるように直線ミシン線が設けられて前記第1生地と前記第2生地が縫い合わされている。前記第1生地の縫い代には、前記直線ミシン線に対して交差する切断線が設けられ、前記第1生地の前記縫い代の、前記切断線よりも前記端部仕上がりラインに近い部分は、前記直線ミシン線で折り返されて、前記第2生地の前記縫い代から開かれて前記第1生地の裏面に重ねられている。そして、前記直線ミシン線で連結された前記第1生地と前記第2生地を、前記端部仕上がりラインで、前記第1生地と前記第2生地の裏面へ折り返して縫い、端部が仕上げられている。
【0011】
また、前記縫目端部構造は、前記第1生地と前記第2生地の、前記縫合ラインと、前記端部に沿う端部仕上がりラインの外側に位置する縫い代は、前記縫合ラインと前記端部仕上がりラインが交差する角部の近傍が、前記縫合ラインに対して交差する縫合ライン側縁部と、前記端部仕上がりラインに対して交差する端部仕上がりライン側縁部で囲まれた形状に切除されている。前記第1生地と前記第2生地は、前記縫合ラインを一致させて前記縫合ライン側縁部に達して縫い合わされ、前記一対の縫い代は、前記端部仕上がりライン側縁部で互いに突き合わされて平行に隣接し、開き止めミシン線が設けられて互いに面一となって縫い合わされている。そして、前記開き止めミシン線で縫い合わされた一対の縫い代を、前記端部仕上がりラインで、前記第1生地と前記第2生地の裏面へ折り返して縫い、端部が仕上げられている。
【0012】
またこの発明は、所定形状にカットした第1生地と第2生地を縫合ラインで縫い合わせ、一対の縫い代を互いに重ねて前記縫合ラインの片側に倒して縫目を形成し、前記第1生地と前記第2生地の前記縫合ラインを一致させて中表にして縫い代同士をロックミシン線で縫い合わせ、前記ロックミシン線を、前記縫合ラインが交差する前記
生地の端部に近づくにつれて前記縫合ラインから離れる方向に逃がして形成し、前記縫合ラインの、前記端部に近い部分に、前記ロックミシン線の一部に重なるように直線ミシン線を形成して、前記第1生地と前記第2生地を縫い合わせ、前記第1生地の縫い代に前記直線ミシン線に対して交差する切断線を設け、前記第1生地の前記縫い代の、前記切断線よりも前記端部に近い部分を、前記直線ミシン線で折り返して前記第2生地の前記縫い代から開いて前記第1生地の裏面に重ね、前記直線ミシン線で連結された前記第1生地と前記第2生地を、前記端部に
沿う端部仕上がりラインで、前記第1生地と前記第2生地の裏面へ折り返して前記端部を仕上げる衣服の製造方法である。
【0013】
またこの発明は、所定形状にカットした第1生地と第2生地を縫合ラインで縫い合わせ、一対の縫い代を互いに重ねて前記縫合ラインの片側に倒して縫目を形成し、前記
生地の端部に沿う端部仕上がりラインの外側に位置する縫い代を、前記縫合ラインと前記端部仕上がりラインが交差する角部の近傍で、前記縫合ラインに対して交差する縫合ライン側縁部と、前記端部仕上がりラインに対して交差する端部仕上がりライン側縁部とで囲まれた形状に切除し、前記第1生地と前記第2生地を、前記縫合ラインを一致させて前記縫合ライン側縁部に達して縫い合わせ、前記一対の縫い代は、前記端部仕上がりライン側縁部で互いに突き合わされて平行に隣接させ開き止めミシン線を設けて互いに面一となって縫い合わせ、前記開き止めミシン線で縫い合わせた一対の縫い代を、前記端部仕上がりラインで、前記第1生地と前記第2生地の裏面へ折り返して前記端部を仕上げる衣服の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の衣服とその製造方法によれば、簡単な構造で安価であり、縫目を使って自由にデザインすることができ、縫目に交差する襟ぐりや袖ぐり、裾等の端部が平坦であり、着用者が快適に着用することができる衣服を容易に提供することができる。さらに、この発明の衣服は端部が平坦であるため、着用者が運動する時に皮膚に与える影響がなく、皮膚障害を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明の第一実施形態の衣服の縫目端部構造を形成する第1生地と第2生地を縫い合わせる前の状態(a)と、縫い合わせて縫い代を開いた状態(b)と、端部仕上がりラインを折り返した状態(c)を示す正面図である。
【
図3】この発明の第一実施形態の衣服の正面図(a)と背面図(b)である。
【
図4】この発明の第一実施形態の衣服の傾斜した端部に設けられた縫目端部構造を形成する第1生地と第2生地を縫い合わせる前の状態(a)と、縫い合わせた状態(b)と、端部仕上がりラインを折り返した状態(c)を示す正面図である
【
図5】この発明の第二実施形態の衣服の縫目端部構造を形成する第1生地と第2生地を縫い合わせる前の状態(a)と、縫い合わせた状態(b)と、端部仕上がりラインを折り返した状態(c)を示す正面図である。
【
図7】この発明の第二実施形態の衣服の傾斜した端部に設けられた縫目端部構造を形成する第1生地と第2生地を縫い合わせる前の状態(a)と、縫い合わせた状態(b)と、端部仕上がりラインを折り返した状態(c)を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1〜
図3はこの発明の第一実施形態を示すもので、この実施形態の衣服10は、スポーツクラブ等で使用する女性用の水着である。衣服10は柔軟で伸縮性が高い編地等の生地11で作られ、
図3に示すように上半身10aと下半身10bに分割されたセパレート形である。上半身10aは、襟ぐり12と袖ぐり14が広く開けられたタンクトップ形であり、裾16はウエストの位置に達している。身体の前中心には、着脱用のファスナ18が設けられている。身体の両側には、色や柄が異なる生地を帯状にカットして切り替えて取り付けた装飾部20が設けられている。
【0017】
装飾部20は、袖ぐり14の前側から胸の横を通過して下方に延出しさらに脇を通過して裾の後ろ側に達している。装飾部20の周縁部は、各々縫目22で切り替えられている。身体の腹部の両脇には、身体の前を覆うパーツと、腰の横を覆うパーツを縫い合わせた縫目22が設けられ、縫目22は縦方向に形成され、上端部は装飾部20に達し、下端部は裾16に達している。下半身10bは、ウエストから大腿部の中間付近を覆うものであり、身体の中心の前後と、大腿部の横側と後側に、各パーツを縫い合わせた縫目22が設けられている。
【0018】
各縫目22の、襟ぐり12や袖ぐり14等の端部に交差する部分は、縫目22の両側の厚みの段差が少なくて平坦な縫目端部構造30が設けられている。
図1(c)は、縫目端部構造30を生地11の裏面から見た図である。
【0019】
縫目端部構造30は、
図1(a)に示すように生地11を所定形状にカットした第1生地24と第2生地26を、縫目22で縫い合わせて作られている。第1生地24と第2生地26は、縫目22が位置する縫合ライン32の外側と、縫合ライン32に交差し襟ぐり12や袖ぐり14、裾16等となる端部仕上がりライン28の外側は、縫い代24a,26aである。第1生地24と第2生地26が、縫合ライン32を一致させて中表にして縫い代24a,26a同士がロックミシン線34で縫い合わされている。ロックミシン線34は、端部仕上がりライン28に近づくにつれて、例えば5cm程度の位置で、縫合ライン32から離れる方向に逃げて設けられている。縫合ライン32の、端部仕上がりライン28に近い部分でロックミシン線34が無い部分には、ロックミシン線34の一部に重なるように直線ミシン線36が設けられて第1生地24と第2生地26が縫い合わされている。第1生地24の縫い代24aには、直線ミシン線36に対して交差する切断線38が設けられ、切断線38は、直線ミシン線36から離れるにつれて端部仕上がりライン28に近づくように傾斜している。縫い代24aの、切断線38よりも端部仕上がりライン28に近い部分は、直線ミシン線36で折り返されて、第2生地26の縫い代26aから開かれ、第1生地24の裏面に重ねられている。そして、直線ミシン線36で連結された第1生地24と第2生地26を、端部仕上がりライン28で第1生地24と第2生地26の裏面へ折り返して縫い、端部が仕上げられている。
【0020】
縫目端部構造30の厚さは、
図2に示すように、縫目22の両側で生地の層数が同じ数となり、両側はいずれも4枚分の生地11で等しい厚みを有している。
【0021】
次に、衣服10の縫目端部構造30を作る工程について説明する。まず、
図1(a)に示すように、第1生地24と第2生地26に、縫合ライン32と端部仕上がりライン28を決め、縫合ライン32同士を中表にして合わせ、縫い代24a,26a同士をロックミシン線34で縫合ライン32に沿って縫い代24a,26aを縫い合わせるとともにほつれ止め処理を行う。ロックミシン線34は、端部仕上がりライン28に近い位置で例えば5cm手前の位置で縫合ライン32から離れ、縫い代24a,26aから逃がす。縫合ライン32の、端部仕上がりライン28に近い部分でロックミシン線34が無い部分には、ロックミシン線34の一部に重なるように直線ミシン線36をかけ、縫い代24a,26aの側縁部まで縫い合わせる。
【0022】
第1生地24の縫い代24aに、直線ミシン線36に対して交差する切断線38を設け、縫い代24aの、切断線38よりも端部仕上がりライン28に近い部分を、直線ミシン線36で折り返して、
図1(b)に示すように第2生地26の縫い代26aから開き、第1生地24の裏面に重ねる。切断線38よりも端部仕上がりライン28から離れた部分は、縫い代24a,26aがロックミシン線34により縫い合わせられた状態で第2生地26の裏面に倒す。倒した状態でさらに図示しないミシン線で第2生地26に縫い付けてもよい。
【0023】
そして、連結された第1生地24と第2生地26を、端部仕上がりライン28で縫い代24a,26aを第1生地24と第2生地26の裏面へ折り返して縫い、
図1(c)に示すように、端部を仕上げる。
【0024】
縫目端部構造30は、衣服10の襟ぐり12や袖ぐり14、裾16等の端部に、縫目22が交差するどの部分にも設けることができる。例えば装飾部20の周縁部を生地11に取り付ける縫目22にも設けることができる。装飾部20の縫目22は、袖ぐり14に対して鋭角に交差し、鋭角に交差している場合でも、
図4に示すように、上述の場合と同様の縫目端部構造30を同様の工程で設ける。ここでは、端部仕上がりライン28が袖ぐり14であり、端部仕上がりライン28の外側に袖ぐり14用の図示しない平ゴムを縫い合わせ、端部仕上がりライン28で二つ折りする。このように縫目端部構造30は、縫目22に対する端部の角度や湾曲の強さにかかわらず、設けることができる。
【0025】
この実施形態の衣服10とその製造方法によれば、簡単な構造で安価であり、縫目22を使って自由にデザインすることができ、縫目22に交差する襟ぐり12や袖ぐり14、裾16等の端部が平坦であり、着用者が快適に着用することができる。縫目22で縫い合わされた第1生地24と第2生地26を折り返して端部を仕上げても、縫目22の両側で同じ層数で厚みが同じであり、端部に、縫目22の厚みの差による突起が生じることがない。端部が平坦であるため、着用者が運動する時に皮膚に与える影響がなく、内出血や擦過傷等の皮膚障害を防ぐことができる。縫目22に対する端部の角度や湾曲の強さにかかわらず、縫目端部構造30を作ることができ、衣服10のいろいろな部分に縫目端部構造30を設けることができる。ロックミシン線34で縫い合わされた縫い代24a,26aを、図示しないミシン線で第2生地26に縫い付ける場合、図示しないミシン線の糸の厚みが第2生地26に加えられるが、縫目22の両側で厚みが同じであるため、大きく影響を受けることがなく、平坦となり、自由にミシン線を用いてデザインや補強をすることができる。また、熱融着テープ等他部材を必要とせずに安価に製造することができる。
【0026】
次にこの発明の第二実施形態について
図5に基づいて説明する。なお、ここで、上記実施形態と同様の部材は同様の符号を付して説明を省略する。この実施形態の衣服40は、水着やフィットネスウエア等、何でもよい。衣服40は、生地11を所定形状にカットした第1生地42と第2生地44を縫目46で縫い合わせて作られている。各縫目46の、衣服40の端部に交差する部分は、縫目46の両側の厚みの段差が少なくて平坦な縫目端部構造48が設けられている。
図5(c)は、縫目端部構造48を生地11の裏面から見た図である。
【0027】
縫目端部構造48は、
図5(a)に示すように生地11を所定形状にカットした第1生地42と第2生地44を縫目46で縫い合わせて作られている。第1生地42と第2生地44は、縫目46が位置する縫合ライン50の外側と、縫合ライン50に交差し襟ぐり12や袖ぐり14、裾16等となる端部仕上がりライン52の外側は、縫い代42a,44aである。縫い代42a,44aの、縫合ライン50と端部仕上がりライン52が交差する角部の近傍は、縫合ライン50に対して略直角に位置する縫合ライン側縁部50aと、端部仕上がりライン52に対して略直角に位置する端部仕上がりライン側縁部52aで囲まれた矩形に切り除されている。
【0028】
第1生地42と第2生地44は、縫合ライン50を一致させて中表にして縫い代24a,26a同士がロックミシン線54で縫い合わされている。ロックミシン線54は、縫い代42a,44aの、縫合ライン50に対して略直角に位置する縫合ライン側縁部50aに達している。縫い代42a,44aの、端部仕上がりライン52に対して略直角に位置する端部仕上がりライン側縁部52aは、互いに突き合わされて平行に隣接し、開き止めミシン線56が設けられて縫い代42a,44aが互いに面一となるように縫い合わされている。そして、開き止めミシン線56で縫い合わされた縫い代42a,44aを、端部仕上がりライン52で第1生地42と第2生地44の裏面へ折り返して縫い、端部が仕上げられている。
【0029】
縫目端部構造48の厚さは、
図6に示すように、縫目46の第2生地44側が4枚重ねとなり、第1生地42側は2枚重ねとなり、第2生地44側が少し厚くなる。しかし、縫い代42a,44aの、縫合ライン50と端部仕上がりライン52で囲まれた角部の近傍があるときには、第2生地44側が6枚重ねとなり、第1生地42側の2枚重ねとの段差がより高いものとなる。これに対して、縫目端部構造48は、比較的段差が小さいものとなる。
【0030】
次に、衣服40の縫目端部構造48を作る工程について説明する。まず、
図5(a)に示すように、第1生地42と第2生地44に、縫合ライン50と端部仕上がりライン52を決め、縫い代42a,縫い代44aの、縫合ライン50と端部仕上がりライン52が交差する角部の近傍を切除する。この時、縫合ライン50に対して略直角に位置する縫合ライン側縁部50aと、端部仕上がりライン52に対して略直角に位置する端部仕上がりライン側縁部52aで囲まれた矩形に切り取る。
【0031】
次に、第1生地42と第2生地44を縫合ライン50同士を中表にして合わせ、縫い代24a,26a同士をロックミシン線54で縫合ライン50に沿って縫い代42a,44aを縫い合わせるとともにほつれ止め処理を行う。ロックミシン線54は縫合ライン側縁部50aに達して設ける。
図5(b)に示すように縫い代42a,44aは、ロックミシン線54で合わせられた状態で第2生地44の裏面に倒す。倒した状態でさらに図示しないミシン線で第2生地44に縫い付けてもよい。
【0032】
次に、突き合わされた端部仕上がりライン側縁部52aに、開き止めミシン線56をかけて縫い合わせる。そして、連結された第1生地42と第2生地44を、端部仕上がりライン52で縫い代42a,44aを第1生地42と第2生地44の裏面へ折り返して縫い、
図5(c)に示すように、端部を仕上げる。なお、突き合わされた縫合ライン側縁部50aは、開き止めミシン線56以外に、ホットメルトで閉じてもよい。
【0033】
縫目端部構造48は、衣服40の襟ぐりや袖ぐり、裾等の端部に、縫目46が交差するどの部分にも設けることができる。縫目46が端部に対して鋭角に交差している場合でも、
図7に示すように、同様の縫目端部構造48を同様の工程で設ける。縫目端部構造48は、縫目46に対しる端部の角度や湾曲の強さにかかわらず、設けることができる。
【0034】
この実施形態の衣服40とその製造方法によれば、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。縫目46の第1生地42側の厚みを生地11の2枚分にすることができ、薄形にすることができる。袖ぐり14等を薄くすることができ、身体を動かしやすくし、運動しやすいものとなる。作業工程がより少なく、生産効率が良好である。
【0035】
この発明の衣服は、上記実施の形態に限定されるものではなく、ロックミシン線や開き止めミシン線は上記以外の種類のミシン線で縫い合わせてもよい。衣服の縫目の配置や長さ、形状等は、機能やデザインに合わせて自由に変更することができる。衣服は水着以外でもよく、下着等いろいろな用途の衣服にすることができる。伸縮性を持たない生地で作られたものでもよい。半袖や長袖の袖ぐりや、ウエスト等にも縫目端部構造を設けることができる。衣服以外に帽子や靴下等の小物でもよい。
【符号の説明】
【0036】
10,40 衣服
11 生地
12 襟ぐり
14 袖ぐり
22 縫目
24,42 第1生地
24a,42a,26a,44a 縫い代
26,44 第2生地
28,52 端部仕上がりライン
30,48 縫目端部構造
32,50 縫合ライン
34,54 ロックミシン線
36 直線ミシン線
38 切断線
50a 縫合ライン側縁部
52a 端部仕上がりライン側縁部
56 開き止めミシン線