特許第6698339号(P6698339)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6698339
(24)【登録日】2020年5月1日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】光学系及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/04 20060101AFI20200518BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20200518BHJP
【FI】
   G02B13/04 D
   G02B13/18
【請求項の数】14
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2015-252997(P2015-252997)
(22)【出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2017-116763(P2017-116763A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2017年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】100124327
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】山中 久幸
(72)【発明者】
【氏名】平川 祥一朗
【審査官】 殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−345970(JP,A)
【文献】 特開2007−226142(JP,A)
【文献】 特開2004−077801(JP,A)
【文献】 特開2005−215518(JP,A)
【文献】 特開昭60−057813(JP,A)
【文献】 特開2000−305016(JP,A)
【文献】 特開2003−241088(JP,A)
【文献】 特開2004−061677(JP,A)
【文献】 特開2006−215257(JP,A)
【文献】 特開2002−244037(JP,A)
【文献】 特開2004−226740(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/006844(WO,A1)
【文献】 特開2015−200845(JP,A)
【文献】 特開2015−118212(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/006843(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/097550(WO,A1)
【文献】 特開平01−319009(JP,A)
【文献】 特開昭63−161421(JP,A)
【文献】 特開2011−242520(JP,A)
【文献】 特開2011−209377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 − 17/08
G02B 21/02 − 21/04
G02B 25/00 − 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群とから構成され、
前記第1レンズ群を光軸方向に固定し、前記第2レンズ群を移動させることで無限遠物体から有限距離物体への合焦を行い、
前記第1レンズ群は、少なくとも3枚の負レンズと、正レンズLA及び正レンズLBとを含み、
前記第1レンズ群は、物体側の面が物体側に凹である物体側凹面を少なくとも一面有すると共に、物体側から順に、負の屈折力を有する第1Aレンズ群と、正の屈折力を有する第1Bレンズ群とから構成され、当該第1Bレンズ群において最も物体側に配置される面が、当該第1レンズ群に含まれる物体側凹面のうち最も曲率の大きな物体側凹面であり、
前記第2レンズ群は、負の屈折力を有する空気レンズを少なくとも1枚含み、
以下の条件を満足することを特徴とする光学系。
νd1b1 < 35.0 ・・・(1)
νd1b2 > 65.0 ・・・(2)
νd1n < 40 ・・・(13)
0 < Cr2f/f1 ・・・(9)
但し、
νd1b1は、前記第1レンズ群に含まれる前記正レンズLAのd線に対するアッベ数であり、
νd1b2は、前記第1レンズ群に含まれる前記正レンズLBのd線に対するアッベ数であり、
νd1nは、前記第1レンズ群に含まれる少なくとも3枚の負レンズのうち、最も物体側に配置される負レンズを負レンズL1nとしたとき、当該負レンズL1nのd線に対するアッベ数であり、
Cr2fは、前記第2レンズ群において最も物体側に配置される面の曲率半径であり、
f1は、前記第1レンズ群の焦点距離である。
【請求項2】
前記第1Bレンズ群に、前記正レンズLA及び前記正レンズLBが含まれる請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記第1Aレンズ群と前記第1Bレンズ群とが以下の条件を満足する請求項1又は請求項2に記載の光学系。
−0.95 < f1a/f1b < −0.40 ・・・(3)
但し、
f1aは、前記第1Aレンズ群の焦点距離であり、
f1bは、前記第1Bレンズ群の焦点距離である。
【請求項4】
前記第1レンズ群に含まれる物体側凹面のうち最も曲率の大きな物体側凹面が以下の条件を満足する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光学系。
0.48 < Cr1bf / f1a < 1.70 ・・・(4)
但し、
Cr1bfは、前記第1レンズ群に含まれる物体側凹面のうち最も曲率の大きな物体側凹面の曲率半径であり、
f1aは、前記第1Aレンズ群の焦点距離である。
【請求項5】
前記第1Aレンズ群と、前記第1Bレンズ群との間の空気間隔からなる空気レンズが以下の条件を満足する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光学系。
−0.5<(Cr1ar+Cr1bf)/(Cr1ar−Cr1bf)<1.0・・・(5)
但し、
Cr1arは、前記第1Aレンズ群において最も像側に配置される面の曲率半径であり、
Cr1bfは、前記第1Bレンズ群において最も物体側に配置される前記物体側凹面の曲率半径である。
【請求項6】
前記第1Bレンズ群と前記第1レンズ群とが以下の条件を満足する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光学系。
0.10 < f1b/f1 < 0.47 ・・・(6)
但し、
f1bは、前記第1Bレンズ群の焦点距離である。
【請求項7】
前記第1Aレンズ群が以下の条件を満足する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の光学系。
−0.40 < f1a/f1 < −0.05 ・・・(7)
但し、
f1aは、前記第1Aレンズ群の焦点距離である。
【請求項8】
前記第1レンズ群と前記第2レンズ群とが以下の条件を満足する請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の光学系。
3.2 < f1 /f2 < 9.0 ・・・(8)
但し、
f2は、前記第2レンズ群の焦点距離である。
【請求項9】
前記第2レンズ群が以下の条件を満足する請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の光学系。
1.75 < f2/f < 3.00 ・・・(10)
但し、
f2は、前記第2レンズ群の焦点距離であり、
fは、当該光学系全系の焦点距離である。
【請求項10】
前記負の屈折力を有する空気レンズは以下の条件を満足する請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の光学系。
−0.5 < (R1+R2)/(R1−R2) < 0.5 ・・・(11)
但し、
R1は、前記第2レンズ群に含まれる負の屈折力を有する空気レンズの物体側面の曲率半径であり、
R2は、前記第2レンズ群に含まれる負の屈折力を有する空気レンズの像側面の曲率半径である。
【請求項11】
前記第1レンズ群において最も物体側に配置される面が以下の条件を満足する請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の光学系。
0 < Cr1f/f ・・・(12)
但し、
Cr1fは、前記第1レンズ群において最も物体側に配置される面の曲率半径であり、
fは、当該光学系全系の焦点距離である。
【請求項12】
前記第1レンズ群に含まれる少なくとも3枚の負レンズのうち、最も物体側に配置される負レンズが物体側に凸の形状を有するメニスカスレンズである請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項13】
前記第1レンズ群に含まれる少なくとも3枚の負レンズのうち、最も物体側に配置される負レンズよりも像側に配置される負レンズを負レンズL2nとしたとき、当該負レンズL2nが以下の条件を満足する請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の光学系。
νd2n > 54.0 ・・・(14)
但し、
νd2nは、前記負レンズL2nのd線に対するアッベ数である。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の光学系と、当該学系の像側に、当該光学系によって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、光学系及び撮像装置に関し、特に、広角撮像に適した大口径の光学系及び当該光学系を備えた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ等の固体撮像素子を用いた撮像装置が普及している。それに伴い、当該撮像装置に用いられる光学系の高性能化も急速に進展している。光学系の高性能化に加えて、近年では、光学系の大口径化及び広角化に対する要望も大きい。特に、単焦点光学系に対する大口径化、広角化への要望は大きい。例えば、単焦点光学系においては、Fnoが2.8よりも小さい明るい光学系が求められている。同様に、単焦点光学系においては、60度を超える画角(2ω)を有する広角撮像が可能な光学系が求められている。
【0003】
このような光学系として、例えば、特許文献1に記載の広角レンズが知られている。特許文献1に記載の広角レンズは、正の屈折力を有する第1レンズ群と正の屈折力を有する第2レンズ群とから成り、第1レンズ群の位置を固定した状態で、第2レンズ群を後物体側に移動させることで有限距離物体への合焦を行うものとしている。当該広角レンズは、83°〜84°の画角と、1.4程度のFnoとを有し、広角化及び大口径化を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−59290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の広角レンズでは、軸上色収差及び倍率色収差の補正が不十分であり、十分に高性能化が図られているとはいえない。
本発明の課題は、広角化及び大口径化を図ると共に、高い光学性能を実現することのできる光学系及び当該光学系を備える撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本件発明の光学系は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群とから構成され、前記第1レンズ群を光軸方向に固定し、前記第2レンズ群を移動させることで無限遠物体から有限距離物体への合焦を行い、前記第1レンズ群は、少なくとも3枚の負レンズと、正レンズLA及び正レンズLBとを含み、以下の条件を満足することを特徴とする。
【0007】
νd1b1 < 35.0 ・・・(1)
νd1b2 > 65.0 ・・・(2)
νd1n < 40 ・・・(13)
0 < Cr2f/f1 ・・・(9)
【0008】
但し、
νd1b1は、前記第1レンズ群に含まれる前記正レンズLAのd線に対するアッベ数であり、
νd1b2は、前記第1レンズ群に含まれる前記正レンズLBのd線に対するアッベ数であり、
νd1nは、前記第1レンズ群に含まれる少なくとも3枚の負レンズのうち、最も物体側に配置される負レンズを負レンズL1nとしたとき、当該負レンズL1nのd線に対するアッベ数であり、
Cr2fは、前記第2レンズ群において最も物体側に配置される面の曲率半径であり、
f1は、前記第1レンズ群の焦点距離である。
【0009】
また、本件発明の撮像装置は、上記本件発明に係る光学系と、当該光学系の像側に、当該光学系によって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本件発明によれば、広角化及び大口径化を図ると共に、高い光学性能を実現することのできる光学系及び当該光学系を備える撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本件発明の実施例1の光学系の無限遠合焦時におけるレンズ構成例を示す断面図である。
図2】実施例1の光学系の無限遠合焦時における縦収差図である。但し、図面に向かって左から順に球面収差、非点収差及び歪曲収差を示す。縦収差図に関して、以下同じである。
図3】実施例1の光学系の無限遠合焦時におけるコマ収差を表す横収差図である。
図4】実施例1の光学系の0.5m合焦時における縦収差図である。
図5】実施例1の光学系の0.5m合焦時におけるコマ収差を表す横収差図である。
図6】本件発明の実施例2の光学系の無限遠合焦時におけるレンズ構成例を示す断面図である。
図7】実施例2の光学系の無限遠合焦時における縦収差図である。
図8】実施例2の光学系の無限遠合焦時におけるコマ収差を表す横収差図である。
図9】実施例2の光学系の0.5m合焦時における縦収差図である。
図10】実施例2の光学系の0.5m合焦時におけるコマ収差を表す横収差図である。
図11】本件発明の実施例3の光学系の無限遠合焦時におけるレンズ構成例を示す断面図である。
図12】実施例3の光学系の無限遠合焦時における縦収差図である。
図13】実施利3の光学系の無限遠合焦時におけるコマ収差を表す横収差図である。
図14】実施例3の光学系の0.5m合焦時における縦収差図である。
図15】実施例3の光学系の0.5m合焦時におけるコマ収差を表す横収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本件発明に係る光学系及び撮像装置の実施の形態を説明する。
【0013】
1.光学系
1−1.光学系の構成
本件発明の実施の形態の光学系は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群とを備え、第1レンズ群を光軸方向に固定し、第2レンズ群を移動させることで無限遠物体から有限距離物体への合焦を行い、第1レンズ群は、少なくとも3枚の負レンズと、正レンズLA及び正レンズLBとを含み、後述する条件を満足することを特徴とする。まず、本実施の形態に係る光学系の構成について説明した後で、条件式に関する事項を説明する。
【0014】
当該光学系は、物体側から順に正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群とを備えている。像側に配置される第2レンズ群に正の屈折力を持たせることにより、像側の群で光束を収束させることができる。そのため、当該光学系の大口径化を達成することができる。
【0015】
当該光学系は広角撮像が可能な広角レンズとして用いることができる。一般に、広角レンズでは、大きな入射角度で入射した軸外光束を第1レンズ群により収斂する。そのため、第1レンズ群において最も物体側に配置されるレンズのレンズ面に対する軸外光束の入射角は大きく、収差が発生しやすく、その収差量も大きくなりやすい。そこで、当該光学系では、第1レンズ群を少なくとも3枚の負レンズと、正レンズLA及び正レンズLBとを含む構成とすることにより、収差の発生を抑制し、広角化と高い光学性能の実現を可能とした。また、軸外光束についても良好に補正することができるため、画面全体において高い光学性能を実現することができる。
【0016】
さらに、当該光学系では、第1レンズ群を光軸方向に固定し、第2レンズ群のみを移動させることで無限遠物体から有限距離物体への合焦を行う。第1レンズ群は正の屈折力を有するため、第1レンズ群において収束させた光束を第2レンズ群に入射させることができる。従って、第2レンズ群の小径化を図ることが容易である。また、当該第2レンズ群のみをフォーカスの際の移動群とすることにより、無限遠から近距離に至るまでフォーカスによる収差変動を小さくすることができる。そのため、物体距離によらず、フォーカス全域において良好な光学性能を実現することができる。また、第2レンズ群の小径化により、フォーカス群の軽量化を図ることができ、迅速なフォーカス動作を行わせることができる。これと同時にフォーカス駆動機構の小型化及び軽量化を図ることができる。以下、各レンズ群の構成をより詳細に説明する。
【0017】
(1)第1レンズ群
第1レンズ群は正の屈折力を有し、少なくとも3枚の負レンズと正レンズLA及び正レンズLBとを含む限り、その具体的な構成は特に限定されるものではない。しかしながら、第1レンズ群は、物体側の面が物体側に凹である物体側凹面を少なくとも一面有することが好ましい。第1レンズ群内に配置される物体側凹面では、軸上収差に対する軸外収差の影響度が大きい。換言すれば、軸上収差に対して影響を及ぼすことなく、軸外収差の発生量、特にコマ収差の発生量を小さくすることができる。そのため、より良好な光学性能を有する光学系を得ることが容易になる。
【0018】
このとき、第1レンズ群に含まれる少なくとも3枚の負レンズのうち、最も物体側に配置されるレンズが物体側に凸の形状を有するメニスカスレンズであることが好ましい。第1Aレンズ群の最も物体側に、このようなメニスカスレンズを配置することで、このメニスカスレンズに大きな入射角で軸外光線が入射しても、諸収差の発生を抑制することができ、より高い光学性能を実現することが容易になる。このとき、当該メニスカスレンズが負の屈折力を有することがより好ましい。
【0019】
また、当該第1レンズ群は、物体側から順に負の屈折力を有する第1Aレンズ群と正の屈折力を有する第1Bレンズ群とから構成されることが好ましい。このとき、当該第1Bレンズ群において最も物体側に配置される面が、当該第1レンズ群に含まれる物体側凹面のうち最も曲率の大きな物体側凹面であることが好ましい。
【0020】
第1レンズ群を上記構成とすることにより、当該光学系の物体側に負の屈折力を配置し、像側に正の屈折力を配置することができる。すなわち、いわゆるレトロフォーカス型の屈折力配置を採用することにより、当該光学系の広角化を図ることが容易になる。また、当該屈折力配置を採用することで、前玉径の小型化を図ることができる。また、レトロフォーカス型の屈折力配置を採用することにより、当該光学系の広角化を図ったときも、一眼レフカメラの交換レンズ等、当該光学系に要求される所定のバックフォーカスを確保することが容易になる。
【0021】
このとき第1Aレンズ群は少なくとも1枚の正レンズを含み、第1Bレンズ群は少なくとも1枚の負レンズを含むことが好ましい。当該構成を採用することにより、軸上色収差と倍率色収差を良好に補正することができ、当該光学系の高性能化を実現することができる。
【0022】
i)第1Aレンズ群
ここで、第1Aレンズ群に含まれる少なくとも1枚の正レンズが、第1Aレンズ群内における最も広い空気間隔よりも像側に配置されることが好ましい。第1Aレンズ群における正レンズの配置をこのようにすることにより、当該第1Aレンズ群の物体側に負の屈折力を配置し、像側に正の屈折力を配置することができる。すなわち、第1Aレンズ群内においても、さらにレトロフォーカス型の屈折力配置を採用することができ、当該光学系の広角化を図ることが容易になる。また、当該屈折力配置を採用することで、前玉径の一層の小型化を図る上でも有効である。
【0023】
また、第1Aレンズ群において最も物体側に配置される面は物体側に凸の物体側凸面であることが好ましい。この場合、歪曲収差や像面収差の補正に有効である。
【0024】
ii)第1Bレンズ群
第1Bレンズ群において、最も物体側に配置される面は物体側に凹である物体側凹面であり、当該第1レンズ群に含まれる物体側凹面のうち最も曲率の大きい面であることが好ましい。このようにすることで、軸外収差、特に、大口径広角レンズに特有のサジタルコマ収差を良好に補正することができる。
【0025】
また、第1Bレンズ群の最も物体側に配置される当該物体側凹面を有するレンズ成分は負の屈折力を有する負レンズ成分であることが好ましい。ここで、レンズ成分とは、単レンズ、レンズの片面又は両面に非球面形状の樹脂を成形した複合レンズ等をいうものとする。また、レンズ成分は、二以上のレンズを接合した接合レンズであってもよい。但し、接合レンズの場合、接合レンズの最も物体側に配置されるレンズをレンズ成分と称するものとする。
【0026】
また、第1Bレンズ群に、上記正レンズLA及び正レンズLBが含まれることが好ましい。第1Bレンズ群がこれら二枚の正レンズを含む構成とすることにより、サジタルコマフレアの補正をさらに良好に行うことができる。
【0027】
(2)第2レンズ群
第2レンズ群は、全体でみたときに正の屈折力を有する限り、その具体的なレンズ構成は特に限定されるものではない。しかしながら、本件発明に係る課題を解決する上で、以下の構成であることが好ましい。
【0028】
第2レンズ群において、最も物体側に配置される面が、物体側に凸の物体側凸面であることが好ましい。本件発明に係る光学系において、第1レンズ群は正の屈折力を有する。そのため、第1レンズ群によって収束された光束が第2レンズ群に入射する。このとき、第2レンズ群の最も物体側に配置される面を物体側凸面とすることで、球面収差の補正が容易になる。そのため、より良好な光学性能を実現することができる。これと同時に第2レンズ群を構成するレンズ枚数を少なくすることができ、当該光学系の小型化を図ることが容易になる。また、第2レンズ群をより少ないレンズ枚数で構成することにより、フォーカス群の小型化及び軽量化を図ることができ、迅速なフォーカス動作が可能になる。
【0029】
さらに、当該物体側凸面を含むレンズ成分は正の屈折力を有する正レンズ成分であることが好ましい。この場合、第2レンズ群に入射した光速の光線高さを低くすることができるため、球面収差の補正をより有効に行うことができる。
【0030】
また、当該第2レンズ群を二つ以上の部分レンズ群に分割し、フォーカスの際に各部分レンズ群をそれぞれ移動させてもよい。この際、各部分レンズ群の移動量が異なっていても本件発明の課題を達成することができる。なお、フォーカスの際に、各部分レンズ群を異なる移動量で移動させれば、物体距離によらず、フォーカス全域においてより良好な収差補正を行うことが容易になる。
【0031】
(3)開口絞り
本件発明に係る光学系において、第2レンズ群内に開口絞りを有することが好ましい。第2レンズ群に入射する軸上光束の光束径は、上述のとおり第1レンズ群により収束されているため、開口絞りの小型化を図ることができる。また、開口絞りを駆動するための駆動機構の小型化及び軽量化も図ることができる。そのため、当該光学系の小型化、軽量化を図ることが容易になる。なお、開口絞りの前後において、第2レンズ群を上記のように部分レンズ群に分割してもよい。
【0032】
1−2.レンズ群構成
当該光学系は、上述した第1レンズ群及び第2レンズ群を備えていればよく、第2レンズ群の像側に後続レンズ群を備えていてもよい。例えば、第2レンズ群の像側に、正又は負の屈折力を有する第3レンズ群等を配置することができる。このとき、後続レンズ群の具体的なレンズ構成等は特に限定されるものではない。
【0033】
また、当該光学系を構成するレンズ群の数に特に限定はないが、当該光学系の一層の小型化を図るという観点から、当該光学系は上記第1レンズ群と上記第2レンズ群から構成されることがより好ましい。
【0034】
1−3.合焦時の動作
本件発明に係る光学系において、第1レンズ群を光軸方向に固定し、第2レンズ群を光軸に沿って移動させることにより、無限遠物体から有限距離物体への合焦を行う限り、第2レンズ群に後続する後続レンズ群の固定/移動の別は特に限定されるものでない。しかしながら、フォーカス群の軽量化等の観点から、第2レンズ群の像側にレンズ群を備える場合、フォーカスの際に当該後続レンズ群は光軸方向に固定されることが好ましい。
【0035】
1−4.条件式
次に、当該光学系が満足すべき条件、又は、満足することが好ましい条件について説明する。当該光学系は以下の条件を満足するものとする。
【0036】
条件式(1):νd1b1 < 35.0
条件式(2):νd1b2 > 65.0
【0037】
但し、
νd1b1は、第1レンズ群に含まれる正レンズLAのd線に対するアッベ数であり、
νd1b2は、第1レンズ群に含まれる正レンズLBのd線に対するアッベ数である。
【0038】
1−4−1.条件式(1)
【0039】
条件式(1)は、第1レンズ群に含まれる正レンズLAのd線に対するアッベ数を規定する式である。当該正レンズLAは、第1レンズ群に含まれる正レンズのうちいずれの正レンズであってもよい。条件式(1)を満足することにより、倍率色収差の補正が容易になり、良好な光学性能を有する光学系を得ることができる。
【0040】
上記効果を得る上で、条件式(1)の上限値は33.0であることが好ましく、32.0であることがより好ましく、28.0であることがさらに好ましい。
【0041】
1−4−2.条件式(2)
条件式(2)は、第1レンズ群に含まれる正レンズLBのd線に対するアッベ数を規定する式である。当該正レンズLBは、第1レンズ群に含まれるいずれかの正レンズであって、上記正レンズLAとは異なるレンズをいうものとする。条件式(2)を満足することにより、軸上色収差の補正が容易になり、良好な光学性能を有する光学系を得ることができる。
【0042】
上記効果を得る上で、条件式(2)の上限値は68.0であることが好ましい。
【0043】
当該光学系において、第1レンズ群が条件式(1)を満足する正レンズLAと、条件式(2)を満足する正レンズLBとを共に含むことにより、軸上色収差の補正と倍率色収差の補正とを同時に行うことができる。なお、第1レンズ群内における正レンズLAと正レンズLBの配列順序は特に限定されるものでない。すなわち、正レンズLAが正レンズLBよりも物体側に配置されていてもよいし、像側に配置されていてもよい。いずれの場合においても上記効果を奏する。しかしながら、第一レンズ群が物体側から順に負の屈折力を有する第1Aレンズ群と、正の屈折力を有する第1Bレンズ群とから構成されるとき、正レンズLA及び正レンズLBは、第1Bレンズ群に含まれることが好ましい。
【0044】
1−4−3.条件式(3)
当該光学系において、第1レンズ群が上記第1Aレンズ群と上記第1Bレンズ群とから構成されるとき、以下の条件を満足することが好ましい。
【0045】
条件式(3):−0.95 < f1a/f1b < −0.40
【0046】
但し、
f1aは第1Aレンズ群の焦点距離であり、
f1bは、第1Bレンズ群の焦点距離である。
【0047】
条件式(3)は、第1Bレンズ群の焦点距離に対する第1Aレンズ群の焦点距離の比を規定する式である。条件式(3)を満足する場合、像面湾曲及びコマ収差の補正を良好に行うことができる。また、サジタルコマフレアの補正も良好に行うことができる。これらのため、より高い光学性能を有する光学系を得ることが容易になる。
【0048】
これに対して、当該条件式(3)の数値が上限値以上になると、すなわち第1Aレンズ群の屈折力が適切な範囲を超えて強くなると、像面湾曲とコマ収差の補正が困難となり、好ましくない。一方、条件式(3)の数値が下限値以下になると、すなわち第1Bレンズ群の屈折力が適切な範囲を超えて強くなると、サジタルコマフレアの補正が困難となり、好ましくない。
【0049】
上記効果を得る上で、条件式(3)の下限値は−0.90であることがより好ましく、−0.85であることがさらに好ましく、−0.80であることが一層好ましく、−0.75であることが最も好ましい。また、条件式(3)の上限値は−0.45であることがより好ましく、−0.50であることがさらに好ましい。
【0050】
1−4−4.条件式(4)
第1レンズ群が上記第1Aレンズ群と上記第1Bレンズ群とから構成されるとき、第1レンズ群に含まれる物体側凹面のうち最も曲率の大きな物体側凹面が以下の条件を満足することが好ましい。
【0051】
条件式(4):0.48 < Cr1bf/f1a < 1.70
【0052】
但し、
Cr1bfは、第1レンズ群に含まれる物体側凹面のうち最も曲率の大きな物体側凹面の曲率半径であり、f1aは上記と同様である。
【0053】
条件式(4)は、第1レンズ群に含まれる物体側凹面のうち最も曲率の大きな物体側凹面、すなわち、第1Bレンズ群において最も物体側に配置される物体側凹面に関する式である。具体的には、第1Aレンズ群の焦点距離に対する当該物体側凹面の曲率半径の比を規定している。条件式(4)を満足させることにより、第1レンズ群に含まれる物体側凹面のうち、最も曲率の大きい物体側凹面に入射する光束が大きな屈折を生じないこととなる。すなわち、当該物体側凹面において球面収差の発生を抑制することができると共に、軸上収差に対する軸外収差の影響度を高くすることができる。そのため、軸外収差、特にコマ収差の補正がより容易になる。
【0054】
上記効果を得る上で、条件式(4)の下限値は0.50であることがより好ましい。また、条件式(4)の上限値は1.50であることがより好ましく、1.30であることがさらに好ましく、1.20であることが一層好ましい。
【0055】
1−4−5.条件式(5)
当該光学系において、第1レンズ群が上記第1Aレンズ群と上記第1Bレンズ群とから構成されるとき、第1Aレンズ群と、第1Bレンズ群との間の空気間隔からなる空気レンズが以下の条件を満足することが好ましい。
【0056】
条件式(5):
−0.5<(Cr1ar+Cr1bf)/(Cr1ar−Cr1bf)<1.0
【0057】
但し、
Cr1arは、第1Aレンズ群において最も像側に配置される面の曲率半径であり、
Cr1bfは、第1Bレンズ群において最も物体側に配置される物体側凹面の曲率半径である。
【0058】
条件式(5)は、当該光学系において、第1Aレンズ群と第1Bレンズ群との間の空気間隔からなる空気レンズの物体側面の曲率半径と、像側面の曲率半径とに関する式である。但し、当該空気レンズの像側面とは、上記第1Bレンズ群において最も物体側に配置される物体側凹面であり、当該物体側凹面の曲率は第1レンズ群に含まれる物体側凹面のうち最も大きい。
【0059】
条件式(5)を満足する場合、第1Aレンズ群と第1Bレンズ群との間の空気間隔からなる空気レンズが両凸形状となり、コマ収差、サジタルコマフレアの補正が容易になり、より良好な光学性能を有する光学系を得ることが容易になる。
【0060】
上記効果を得る上で、条件式(5)の下限値は−0.3であることがより好ましく、−0.2であることがさらに好ましい。また、条件式(5)の上限値は0.9であることがより好ましい。
【0061】
1−4−6.条件式(6)
当該光学系において、第1レンズ群が上記第1Aレンズ群と上記第1Bレンズ群とから構成されるとき、第1Bレンズ群と第1レンズ群とが以下の条件を満足することが好ましい。
【0062】
条件式(6):0.10 < f1b/f1 < 0.47
【0063】
但し、f1b及びf1は上記と同様である。
【0064】
条件式(6)は、第1レンズ群の焦点距離に対する第1Bレンズ群の焦点距離の比を規定する式である。条件式(6)を満足する場合、第1Bレンズ群の屈折力が適正な範囲内となる。そのため、当該光学系の広角化を図ったときも、球面収差、サジタルコマフレアの発生を抑制することができ、より良好な光学性能を有する光学系を得ることが容易になる。また、少ないレンズ枚数で当該光学系を構成することができるため、当該光学系をコンパクトに構成することができる。
【0065】
これに対して、条件式(6)の数値が下限値以下になると、すなわち第1Bレンズ群の屈折力が適正な範囲を超えて強くなると、球面収差、サジタルコマフレアの発生量が大きくなってしまい、好ましくない。また、条件式(6)の数値が上限値以上になると、すなわち第1Bレンズ群の屈折力が適正な範囲を超えて弱くなると、レトロフォーカス型のレンズ構成が弱くなり、広角化と径方向の小型化とを両立することが困難になる。また、一眼レフカメラ等に要する所定のバックフォーカスを確保することが困難になる。
【0066】
上記効果を得る上で、条件式(6)の下限値は0.12あることがより好ましく、0.14であることがさらに好ましい。また、条件式(6)の上限値は0.46であることがより好ましい。
【0067】
1−4−7.条件式(7)
当該光学系において、第1レンズ群が上記第1Aレンズ群と上記第1Bレンズ群とから構成されるとき、第1Aレンズ群が以下の条件を満足することが好ましい。
【0068】
条件式(7):−0.40 < f1a/f1 < −0.05
但し、f1a及びf1は上記と同様である。
【0069】
条件式(7)は、当該光学系全系の焦点距離に対する第1Aレンズ群の焦点距離を規定する式である。条件式(7)を満足する場合、像面湾曲及びコマ収差の補正を良好に行うことができる。また、サジタルコマフレアの補正も良好に行うことができる。これらのため、より高い光学性能を有する光学系を得ることが容易になる。また、この場合、レトロフォーカス型のレンズ構成となるため、広角化と径方向の小型化とを両立することが容易になり、一眼レフカメラ等に要する所定のバックフォーカスを確保することが容易になる。
【0070】
これに対して、当該条件式(7)の数値が上限値以上になると、すなわち第1Aレンズ群の屈折力が適切な範囲を超えて強くなると、像面湾曲とコマ収差の補正が困難となり、好ましくない。一方、条件式(7)の数値が下限値以下になると、すなわち第1Bレンズ群の屈折力が適正な範囲を超えて弱くなると、レトロフォーカス型のレンズ構成が弱くなり、広角化と径方向の小型化とを両立することが困難になる。また、一眼レフカメラ等に要する所定のバックフォーカスを確保することが困難になる。
【0071】
上記効果を得る上で、条件式(7)の下限値は−0.38であることがより好ましく、−0.34であることがさらに好ましい。また、条件式(7)の上限値は−0.06であることがより好ましく、−0.07であることがさらに好ましい。
【0072】
1−4−8.条件式(8)
当該光学系において、第1レンズ群と第2レンズ群とが以下の条件を満足することが好ましい。
【0073】
条件式(8):3.2 < f1/f2 < 9.0
【0074】
但し、
f1は上記と同様であり、f2は第2レンズ群の焦点距離である。
【0075】
条件式(8)は、第2レンズ群の焦点距離に対する第1レンズ群の焦点距離の比を規定する式である。条件式(8)を満足する場合、第2レンズ群の屈折力が適正な範囲内となり、フォーカスの際に第2レンズ群を移動させたときの収差変動を抑制することができる。また、フォーカスの際の第2レンズ群の移動量を適切な範囲内にすることができる。そのため、フォーカス全域において良好な結像性能を実現することができ、当該光学系全体をコンパクトに構成することができる。
【0076】
これに対して、条件式(8)の数値が上限値以上になると、すなわち第2レンズ群の屈折力が適正な範囲を超えて強くなると、フォーカスの際の第2レンズ群の移動に伴う収差変動が大きくなり、物体距離によっては良好な結像性能を得ることが困難になる。また、良好な結像性能を得るには収差補正に要するレンズ枚数が増加するため、当該光学系をコンパクトに構成することが困難になる。一方、条件式(8)の数値が下限値以下になると、すなわち第2レンズ群の屈折力が適正な範囲を超えて弱くなると、フォーカスの際の第2レンズ群の移動量が大きくなるため、当該光学系の全長が長くなり、好ましくない。
【0077】
上記効果を得る上で、条件式(8)の下限値は3.4であることがより好ましく、3.5であることがさらに好ましい。また、条件式(8)の上限値は8.0であることがより好ましく、7.5であることがさらに好ましく、7.0であることが一層好ましい。
【0078】
1−4−9.条件式(9)
本件発明に係る光学系では、第2レンズ群において、最も物体側に配置される面が以下の条件を満足することが好ましい。
【0079】
条件式(9):0 < Cr2f/f1
【0080】
但し、
Cr2fは、第2レンズ群において最も物体側に配置される面の曲率半径であり、f1は上記と同様である。
【0081】
条件式(9)は、第1レンズ群の焦点距離に対する第2レンズ群において最も物体側に配置される面の曲率半径の比を規定する式である。条件式(9)を満足する場合、第2レンズ群において最も物体側に配置される面が物体側に凸の物体側凸面となる。そのため、上述したとおり、球面収差の補正が容易になり、より良好な光学性能を実現することができる。これと同時に第2レンズ群を構成するレンズ枚数を少なくすることができ、当該光学系の小型化を図ることが容易になる。
【0082】
これに対して、条件式(9)の数値が下限値以下である場合、すなわち第2レンズ群において最も物体側に配置される面が平面若しくは物体側に凹である場合、球面収差の補正が困難になり、好ましくない。また、この場合、当該第2レンズ群はフォーカス群であるため、フォーカスの際の収差変動が大きくなり、好ましくない。
【0083】
上記効果を得る上で、当該光学系は下記の条件式(9)’を満足することがより好ましい。
【0084】
条件式(9)’:0.02 < Cr2f/f1 < 20.0
【0085】
また、上記効果を得る上で、条件式(9)’の下限値は0.1であることがより好ましく、0.3であることがさらに好ましい。また、条件式(9)’の上限値は5.0であることがより好ましく、4.0であることがさらに好ましく、3.0であることが一層好ましく、2.7であることが最も好ましい。
【0086】
このとき、上述したとおり、球面収差の補正をより良好に行うことができるという観点から、当該物体側凸面を含むレンズ成分は正の屈折力を有する正レンズ成分であることが好ましい。
【0087】
1−4−10.条件式(10)
当該光学系において、第2レンズ群が以下の条件を満足することが好ましい。
【0088】
条件式(10):1.75 < f2/f < 3.00
【0089】
但し、
f2は、第2レンズ群の焦点距離であり、fは上記と同様である。
【0090】
条件式(10)は、当該光学系全系の焦点距離に対する第2レンズ群の焦点距離の比を規定する式である。条件式(10)を満足する場合、第2レンズ群の屈折力が適正な範囲内となり、フォーカスの際に第2レンズ群を移動させたときの収差変動を抑制することができる。また、フォーカスの際の第2レンズ群の移動量を適切な範囲内にすることができる。そのため、フォーカス全域において良好な結像性能を実現することができ、当該光学系全体をコンパクトに構成することができる。
【0091】
これに対して、条件式(10)の数値が上限値以上になると、すなわち第2レンズ群の屈折力が適正な範囲を超えて強くなると、フォーカスの際の第2レンズ群の移動に伴う収差変動が大きくなり、球面収差や色収差の補正が困難になり、物体距離によっては良好な結像性能を得ることが困難になる。また、良好な結像性能を得るにはこれらの収差補正に要するレンズ枚数が増加するため、当該光学系をコンパクトに構成することが困難になる。一方、条件式(10)の数値が下限値以下になると、すなわち第2レンズ群の屈折力が適正な範囲を超えて弱くなると、フォーカスの際の第2レンズ群の移動量が大きくなるため、当該光学系の全長が長くなり、好ましくない。
【0092】
上記効果を得る上で、条件式(10)の下限値は1.78であることがより好ましい。また、条件式(10)の上限値は2.70であることがより好ましく、2.50であることがさらに好ましく、2.30であることが一層好ましい。
【0093】
1−4−11.条件式(11)
当該光学系において、第2レンズ群は、負の屈折力を有する空気レンズを少なくとも1枚含み、当該負の屈折力を有する空気レンズは以下の条件を満足することが好ましい。
【0094】
条件式(11):−0.5 < (R1+R2)/(R1−R2) < 0.5
【0095】
但し、
R1は、第2レンズ群に含まれる負の屈折力を有する空気レンズの物体側面の曲率半径であり、
R2は、第2レンズ群に含まれる負の屈折力を有する空気レンズの像側面の曲率半径である。
【0096】
条件式(11)は、第2レンズ群に含まれる負の屈折力を有する空気レンズの物体側面の曲率半径と、像側面の曲率半径とに関する式である。条件式(11)を満足する場合、第2レンズ群内に両面の曲率半径が近似する両凸形状の空気レンズが含まれることになり、当該第2レンズ群がダブルガウス型のレンズ構成となる。そのため、少ないレンズ枚数で球面収差、コマ収差、サジタルコマフレアの補正が容易になり、より良好な光学性能を有する光学系を得ることが容易になる。また、当該構成を採用することにより、第2レンズ群内における収差発生量を小さくすることができるため、フォーカスの際の第2レンズ群の移動に伴う収差変動を小さくすることができる。なお、両凸形状の空気レンズは負の屈折力を有する。
【0097】
上記効果を得る上で、条件式(11)の下限値は−0.3であることがより好ましく、−0.2であることがさらに好ましい。また、条件式(11)の上限値は0.3であることがより好ましく、0.2であることがさらに好ましい。
【0098】
1−4−12.条件式(12)
当該光学系では、第1レンズ群において最も物体側に配置される面が以下の条件を満足することが好ましい。
【0099】
条件式(12):0 < Cr1f/f
【0100】
但し、
Cr1fは、第1レンズ群において最も物体側に配置される面の曲率半径であり、
fは、当該光学系全系の焦点距離である。
【0101】
条件式(12)は、当該光学系の焦点距離に対する、第1レンズ群において最も物体側に配置される面の曲率半径の比を規定する式である。条件式(12)を満足する場合、第1レンズ群において最も物体側に配置される面が物体側に凸の物体側凸面となり、上述したとおり、歪曲収差や像面湾曲の補正を行う上で有効であり、より良好な光学性能を実現することができる。これと同時に第1レンズ群を構成するレンズ枚数を少なくすることができ、当該光学系の小型化を図ることが容易になる。
【0102】
これに対して、条件式(12)の数値が下限値以下である場合、すなわち第1レンズ群において最も物体側に配置される面が平面若しくは物体側に凹である場合、歪曲収差や像面湾曲の補正が困難になり、好ましくない。
【0103】
上記効果を得る上で、当該光学系は下記の条件式(12)’を満足することがより好ましい。
【0104】
条件式(12)’:0.2 < Cr1f/f < 200.0
【0105】
また、上記効果を得る上で、条件式(12)’の下限値は0.5であることがより好ましく、1.0であることがさらに好ましい。また、条件式(12)’の上限値は100.0であることがより好ましく、30.0であることがさらに好ましく、8.0であることが一層好ましく、4.0であることが最も好ましい。
【0106】
1−4−13.条件式(13)
当該光学系において、第1レンズ群に含まれる少なくとも3枚の負レンズのうち、最も物体側に配置される負レンズを負レンズL1nとしたとき、当該負レンズL1nが以下の条件を満足することが好ましい。
【0107】
条件式(13):νd1n < 40
但し、
νd1nは、負レンズL1nのd線に対するアッベ数を表す。
【0108】
条件式(13)は、上記負レンズL1nのd線に対するアッベ数を規定する式である。当該条件式(13)を満足させることにより、例えば、80°程度の画角を維持しつつ、大口径化を図ろうとしたときも倍率色収差を良好に補正することができ、光学性能の高い小型の広角レンズを実現することができる。
【0109】
上記効果を得る上で、条件式(13)の上限値は35.3であることがより好ましく、34.0であることがさらに好ましく、32.0であることが一層好ましく、30.0であることが最も好ましい。
【0110】
1−4−14.条件式(14)
当該光学系において、第1レンズ群に含まれる少なくとも3枚の負レンズのうち、上記負レンズL1nよりも像側に配置される負レンズを負レンズL2nとしたとき、当該負レンズL2nが以下の条件を満足することが好ましい。
【0111】
条件式(14): νd2n > 54.0
【0112】
但し、
νd2nは、負レンズL2nのd線に対するアッベ数を表す。
【0113】
条件式(14)は、負レンズL2nのd線に対するアッベ数を規定する式である。当該条件式(14)を満足する負レンズL2nを用いて第1レンズ群を構成することにより、倍率色収差、特にF線とC線の幅を小さくすることが容易になり、より高い光学性能を実現することが容易になる。一方、条件式(14)の数値が下限値以下になると、倍率色収差、特に、F線とC線の幅を小さくすることが困難になるため、好ましくない。但し、当該負レンズL2nは、第1レンズ群に含まれる負レンズのうち、最も物体側に配置される上記負レンズL1n以外であれば、どの負レンズであってもよい。
【0114】
上記効果を得る上で、条件式(14)の下限値は58.0であることがより好ましく、63.0であることがさらに好ましく、66.0であることが一層好ましく、70.0であることが最も好ましい。
【0115】
2.撮像装置
次に、本件発明に係る撮像装置について説明する。本件発明に係る撮像装置は、上記本件発明に係る光学系と、当該光学系の像側に設けられた、当該光学系によって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする。ここで、撮像素子等に特に限定はなく、CCDセンサやCMOSセンサなどの固体撮像素子等も用いることができる。本件発明に係る撮像装置は、デジタルカメラやビデオカメラ等のこれらの固体撮像素子を用いた撮像装置に好適である。また、当該撮像装置は、レンズが筐体に固定されたレンズ固定式の撮像装置であってもよい。本件発明に係る光学系は、一眼レフカメラ、ミラーレス一眼カメラ等のレンズ交換式の撮像装置に要求されるバックフォーカスを確保することができるから、これらのレンズ交換式の撮像装置の交換レンズとして好適である。
【0116】
次に、実施例を示して本件発明を具体的に説明する。但し、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。以下に挙げる各実施例の光学系は、デジタルカメラ、ビデオカメラ、銀塩フィルムカメラ等の撮像装置(光学装置)に用いられる撮像光学系である。また、各レンズ断面図において、図面に向かって左方が物体側、右方が像側である。
【実施例1】
【0117】
(1)光学系の構成
図1は、本件発明に係る実施例1の光学系の無限遠合焦時におけるレンズ構成を示すレンズ断面図である。当該光学系は、物体側から順に、正の屈折力の第1レンズ群G1と、正の屈折力の第2レンズ群G2とから構成されている。無限遠物体から近距離物体への合焦の際、第1レンズ群G1が光軸方向に固定された状態で、第2レンズ群G2が光軸に沿って物体側に移動する。開口絞りSは第2レンズ群G2の内部に配置されている。
【0118】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、負の屈折力の第1Aレンズ群G1Aと、正の屈折力の第1Bレンズ群G1Bとから構成されている。
【0119】
第1Aレンズ群G1Aは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL1と、両凸形状の正レンズL2と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL3と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL4とから構成されている。負メニスカスレンズL4は両面を非球面形状としたガラスモールド型非球面レンズ、又は研削加工による非球面レンズである。
【0120】
第1Bレンズ群G1Bは、物体側から順に、像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL5と、両凸形状の正レンズL6と、両凸形状の正レンズL7及び像側に凸面を向けた正メニスカスレンズL8を接合した正の屈折力の接合レンズとから構成されている。第1Bレンズ群G1Bの最も物体側のレンズ面(負メニスカスレンズL5の物体側面)は、第1レンズ群G1に含まれる物体側凹面のうち最も曲率の大きな物体側凹面である。
【0121】
第2レンズ群G2は、両凸形状の正レンズL9と、両凸形状の正レンズL10及び両凹形状の負レンズL11を接合した負の屈折力の接合レンズと、開口絞りSと、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズL12及び像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL13を接合した負の屈折力の接合レンズと、両凸形状の正レンズL14と、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズL15とから構成されている。正メニスカスレンズL15は物体側の面を非球面形状としたガラスモールド型非球面レンズ、又は研削加工による非球面レンズである。
【0122】
なお、図1において、「IP」は像面であり、具体的には、CCDセンサやCMOSセンサなどの固体撮像素子の撮像面、或いは、銀塩フィルムのフィルム面等を示す。また、IPの物体側にはカバーガラス等(符号略)を備える。この点は、実施例2及び実施例3で示す各レンズ断面図においても同様である。
【0123】
(2)数値実施例
次に、当該光学系の具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表1に当該光学系のレンズデータを示す。表1において、「面番号」は物体側から数えたレンズ面の順番、「r」はレンズ面の曲率半径、「d」はレンズ面の光軸上の間隔、「nd」はd線(波長λ=587.6nm)に対する屈折率、「νd」はd線に対するアッベ数をそれぞれ示している。また、面番号の次の欄に表示する「ASP」は当該レンズ面が非球面であることを表し、「S」開口絞りを表している。
【0124】
表2に、当該光学系の緒元表、非球面データ、光軸上の可変間隔、各レンズ群の焦点距離を示す。緒元表には、無限遠物体合焦時における当該光学系全系の焦点距離「f」、Fナンバー「Fno.」、半画角「ω」、像高「Ym」を示す。
【0125】
非球面データは、当該非球面形状を下記式で定義した場合の非球面係数を示す。但し、表において、「E−a」は「×10−a」を示す。また、下記式において、「x」は光軸方向の基準面からの変位量、「r」は近軸曲率半径、「H」は光軸に垂直な方向の光軸からの高さ、「k」は円錐係数、「An」はn次の非球面係数とする。
【0126】
【数1】
【0127】
可変間隔は、無限遠合焦時及び0.5m合焦時における各レンズ面間の間隔を示している。また、各条件式(1)〜条件式(14)の数値を表7に示す。なお、各表中の長さの単位は全て「mm」であり、画角の単位は全て「°」である。これらの表に関する事項は実施例2及び実施例3で示す各表においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0128】
図2及び図3に当該光学系の無限遠合焦時における縦収差図及び横収差図を示す。また、図4及び図5に当該光学系の0.5m合焦時における縦収差図及び横収差図を示す。
【0129】
各縦収差図において、図面に向かって左から順に、球面収差、非点収差、歪曲収差を表している。球面収差を表す図では、縦軸は開放F値との割合、横軸にデフォーカスをとり、実線がd線(波長λ=587.6nm)、点線がg線(波長λ=435.8nm)における球面収差を示す。非点収差を表す図では、縦軸は像高、横軸にデフォーカスをとり、実線がd線に対するサジタル像面(ds)、点線がd線に対するメリジオナル像面(dm)を示す。歪曲収差を表す図では、縦軸は像高、横軸に%をとり、歪曲収差を表す。
【0130】
各横収差図において、上段から順に最大像高の100%の像点(1.0ω)、90%の像点(0.9ω)、70%の像点(0.7ω)、50%の像点(0.5ω)、軸上点(0.0ω)における横収差を示している。各横収差図において、横軸は瞳面上での主光線からの距離を表し、実線がd線、点線がg線におけるコマ収差を示している。
【0131】
これらの各図に関する事項は実施例2及び実施例3で示す縦収差図及び横収差図においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0132】
また、当該光学系の無限遠合焦時におけるバックフォーカス「BF」は以下のとおりである。但し、以下の値は、厚さ2mmのカバーガラスを含む値であり、他の実施例に示すバックフォーカスも同様である。
BF= 39.0331
【0133】
【表1】
【0134】
【表2】
【実施例2】
【0135】
(1)光学系の構成
図6は、本件発明に係る実施例2の光学系の無限遠合焦時におけるレンズ構成を示すレンズ断面図である。当該光学系は、物体側から順に、正の屈折力の第1レンズ群G1と、正の屈折力の第2レンズ群G2とから構成されている。無限遠物体から近距離物体への合焦の際、第1レンズ群G1が光軸方向に固定された状態で、第2レンズ群G2が光軸に沿って物体側に移動する。開口絞りSは第2レンズ群G2の内部に配置されている。
【0136】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、負の屈折力の第1Aレンズ群G1Aと、正の屈折力の第1Bレンズ群G1Bとから構成されている。
【0137】
第1Aレンズ群G1Aは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL1と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL2と、両凸形状の正レンズL3及び両凹形状の負レンズL4を接合した負の屈折力の接合レンズとから構成されている。負メニスカスレンズL2は両面を非球面形状としたガラスモールド型非球面レンズ、又は研削加工による非球面レンズである。
【0138】
第1Bレンズ群G1Bは、物体側から順に、両凹形状の負レンズL5及び両凸形状の正レンズL6を接合した負の屈折力の接合レンズと、両凸形状の正レンズL7と、両凸形状の正レンズL8及び両凹形状の負レンズL9を接合した負の屈折力の接合レンズとから構成されている。第1Bレンズ群G1Bの最も物体側のレンズ面(負レンズL5の物体側面)は、第1レンズ群G1に含まれる物体側凹面のうち最も曲率の大きな物体側凹面である。
【0139】
第2レンズ群G2は、両凸形状の正レンズL10と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL11と、開口絞りSと、両凹形状の負レンズL12と、両凸形状の正レンズL13及び物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL14を接合した正の屈折力の接合レンズと、両凸形状の正レンズL15とから構成されている。正メニスカスレンズL14は像側の面を非球面形状としたガラスモールド型非球面レンズ、又は研削加工による非球面レンズである。
【0140】
(2)数値実施例
次に、当該光学系の具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表3は、当該光学系のレンズデータであり、表4は、当該光学系の緒元表、非球面データ、光軸上の可変間隔、各レンズ群の焦点距離である。また、表7に条件式(1)〜条件式(14)の数値を示す。さらに、図7図10は、当該光学系の無限遠合焦時及び0.5m合焦時の縦収差図及び横収差図である。
【0141】
また、当該光学系の無限遠合焦時におけるバックフォーカスは以下のとおりである。
BF= 39.0353
【0142】
【表3】
【0143】
【表4】
【実施例3】
【0144】
(1)光学系の構成
図11は、本件発明に係る実施例3の光学系の無限遠合焦時におけるレンズ構成を示すレンズ断面図である。当該光学系は、物体側から順に、正の屈折力の第1レンズ群G1と、正の屈折力の第2レンズ群G2とから構成されている。無限遠物体から近距離物体への合焦の際、第1レンズ群G1が光軸方向に固定された状態で、第2レンズ群G2が光軸に沿って物体側に移動する。開口絞りSは第2レンズ群G2の内部に配置されている。
【0145】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、負の屈折力の第1Aレンズ群G1Aと、正の屈折力の第1Bレンズ群G1Bとから構成されている。
【0146】
第1Aレンズ群G1Aは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL1と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL2と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL3と、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズL4及び両凹形状の負レンズL5を接合した負の屈折力を有する接合レンズとから構成されている。負メニスカスレンズL3は両面を非球面形状としたガラスモールド型非球面レンズ、又は研削加工による非球面レンズである。
【0147】
第1Bレンズ群G1Bは、物体側から順に、両凹形状の負レンズL6及び両凸形状の正レンズL7を接合した負の屈折力を有する接合レンズと、両凸形状の正レンズL8とから構成されている。第1Bレンズ群G1Bの最も物体側のレンズ面(負レンズL6の物体側面)は、第1レンズ群G1に含まれる物体側凹面のうち最も曲率の大きな物体側凹面である。
【0148】
第2レンズ群G2は、両凸形状の正レンズL9と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL10と、開口絞りSと、両凹形状の負レンズL11と、両凸形状の正レンズL12及び像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL13を接合した正の屈折力の接合レンズと、両凸形状の正レンズL14とから構成されている。接合レンズを構成する負メニスカスレンズL13は像側の面を非球面形状としたガラスモールド型非球面レンズ、又は研削加工による非球面レンズである。
【0149】
(2)数値実施例
次に、当該光学系の具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表5は、当該光学系のレンズデータであり、表6は、当該光学系の緒元表、非球面データ、光軸上の可変間隔、各レンズ群の焦点距離である。また、表7に条件式(1)〜条件式(14)の数値を示す。さらに、図12図15は、当該光学系の無限遠合焦時及び0.5m合焦時の縦収差図及び横収差図である。
【0150】
また、当該光学系の無限遠合焦時におけるバックフォーカスは以下のとおりである。
BF= 39.0376
【0151】
【表5】
【0152】
【表6】
【0153】
【表7】
【0154】
なお、上述の実施例では当該光学系が2群構成である場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、当該光学系が第2レンズ群に後続する第3レンズ群等を備えていても同様の効果を奏する。また、当該光学系が第1レンズ群と第2レンズ群とから構成される場合であっても、第2レンズ群と像面との間にカバーガラスやフィルター等の光学要素を含んでいてもよいのは勿論であり、屈折力の殆どない単レンズ等、当該光学系に対して本質的な影響を成さない光学要素を含んでもよいのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本件発明によれば、広角化及び大口径化を図ると共に、高い光学性能を実現することのできる光学系及び当該光学系を備える撮像装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0156】
G1 ・・・第1レンズ群
G1A ・・・第1Aレンズ群
G1B ・・・第1Bレンズ群
G2 ・・・第2レンズ群
S ・・・開口絞り
IP ・・・像面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15