特許第6698406号(P6698406)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6698406
(24)【登録日】2020年5月1日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0668 20160101AFI20200518BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20200518BHJP
   H01M 8/0662 20160101ALI20200518BHJP
   H01M 8/0612 20160101ALI20200518BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20200518BHJP
【FI】
   H01M8/0668
   H01M8/04 J
   H01M8/0662
   H01M8/0612
   H01M8/04 Z
   H01M8/12
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-72120(P2016-72120)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-183199(P2017-183199A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】多久 俊平
(72)【発明者】
【氏名】井出 卓宏
(72)【発明者】
【氏名】中島 達哉
(72)【発明者】
【氏名】道幸 立樹
(72)【発明者】
【氏名】白井 麻理恵
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 慶
【審査官】 西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−024155(JP,A)
【文献】 特開平11−329457(JP,A)
【文献】 特開2006−024484(JP,A)
【文献】 特開2016−018639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04 − 8/0668
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを用いて発電を行う燃料電池セルを有する第1燃料電池と、
前記第1燃料電池から排出された未反応の前記燃料ガスを含むオフガス中の二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を除去し、再生オフガスとする燃料再生手段と、
前記再生オフガスを用いて発電を行う燃料電池セルを有する第2燃料電池と、
ブロワを備え、前記ブロワにより前記第2燃料電池から排出されたオフガスを循環させて前記燃料再生手段に供給するオフガス循環経路と、
を備え、
前記オフガス循環経路にて循環させた前記第2燃料電池から排出されたオフガスを、前記オフガス中の二酸化炭素及び水蒸気を分離せずに前記燃料再生手段に供給し、前記オフガス中の二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を前記燃料再生手段にて除去し、
前記第1燃料電池及び前記第2燃料電池は、固体酸化物形燃料電池である燃料電池システム。
【請求項2】
前記第2燃料電池の燃料利用率をX(%)としたとき、前記第1燃料電池の燃料利用率が、100X/(X+100)(%)よりも大きい請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
以下の(1)〜(3)のいずれかの条件を満たす請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。
(1)前記第2燃料電池における前記燃料電池セルの数が、前記第1燃料電池における前記燃料電池セルの数よりも少ない。
(2)前記第1燃料電池及び前記第2燃料電池が複数の前記燃料電池セルが積層してなる燃料電池スタックをそれぞれ1つ以上有し、前記第2燃料電池における前記燃料電池スタックの数が、前記第1燃料電池における前記燃料電池スタックの数よりも少ない。
(3)前記第2燃料電池における前記燃料電池セルの表面積の合計が、前記第1燃料電池における前記燃料電池セルの表面積の合計よりも小さい。
【請求項4】
原料ガスを改質して前記燃料ガスを生成する改質器をさらに備え、
前記第1燃料電池は、前記改質器から供給された前記燃料ガスを用いて発電を行う請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常600℃以上の温度で作動する固体酸化物形燃料電池、溶融炭酸塩形燃料電池などの高温作動形燃料電池のシステムでは、高効率化を図るため、高温作動形燃料電池のアノードから排出されるアノード排ガスを再利用することが検討されている。例えば、アノード排ガス中の水蒸気を除去し、そのガスを再利用することで、システム全体の燃料利用率を向上させる技術が提案されている。
【0003】
例えば、燃料吸入流が供給された燃料電池スタックを運転して電気と200℃を超える温度の燃料排気流とを生成し、前記燃料排気流の温度を200℃以下に下げ、前記燃料排気流を第一の燃料排気分流と第二の燃料排気分流とに分割した後、前記第一の燃料排気分流を前記燃料吸入流へとリサイクルする燃料電池システムの運転方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、固体酸化物形燃料電池のアノードオフガスから水蒸気を除去してアノードオフガスを再生し、再生オフガスを固体酸化物形燃料電池の燃料として再利用することにより固体酸化物形燃料電池それ自体での燃料利用率を改善する固体酸化物形燃料電池による発電方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5542332号公報
【特許文献2】特開2006−31989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に記載されている発電システムでは、オフガスを再利用することにより燃料電池での燃料利用率を高めることが可能であるが、前段の燃料電池にて排出されたオフガスを再利用する際にブロワに大きな負荷がかかる。そのため、ブロワにおける負荷圧力が大きくなり、システムの発電効率が低下するという課題がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ブロワにおける負荷圧力を低減し、高い発電効率を有する燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、例えば以下の手段により解決される。
<1> 燃料ガスを用いて発電を行う燃料電池セルを有する第1燃料電池と、前記第1燃料電池から排出された未反応の前記燃料ガスを含むオフガス中の二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を除去し、再生オフガスとする燃料再生手段と、前記再生オフガスを用いて発電を行う燃料電池セルを有する第2燃料電池と、ブロワを備え、前記ブロワにより前記第2燃料電池から排出されたオフガスを循環させて前記燃料再生手段に供給するオフガス循環経路と、を備える燃料電池システム。
【0009】
本形態に係る燃料電池システムは、第1燃料電池と、燃料再生手段と、第2燃料電池とを備える多段式の燃料電池システムである。本形態のような多段式の燃料電池システムは、第1燃料電池から排出されたオフガス中の二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を燃料再生手段にて除去し、燃料ガスの濃度を高めた再生オフガスを用いて第2燃料電池にて発電を行う。そのため、高い発電効率を得ることができる。
【0010】
さらに、本形態に係る燃料電池システムは、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方が燃料再生手段にて除去された再生オフガスを第2燃料電池に供給し、そして、オフガス循環経路を通じて第2燃料電池から排出されたオフガスを循環させて燃料再生手段に供給する。そのため、本形態に係る燃料電池システムでは、オフガス循環経路を通じて第1燃料電池から排出されたオフガスを循環させる場合と比較して、より少量のオフガスを循環させればよい。従って、ブロワにおける負荷圧力及び消費電力を低減することができる。これにより、補機損失が低減されて燃料電池システムの正味の発電量が増加し、システムの発電効率を高めることができる。
【0011】
<2> 前記第2燃料電池の燃料利用率をX(%)としたとき、前記第1燃料電池の燃料利用率が、100X/(X+100)(%)よりも大きい<1>に記載の燃料電池システム。
【0012】
第2燃料電池の燃料利用率がX(%)、かつ第1燃料電池の燃料利用率が100X/(X+100)(%)となるとき、電流密度等の条件が一定と仮定すれば、第1燃料電池及び第2燃料電池における燃料電池セル数、燃料電池セルの表面積の合計や燃料電池スタックの数が等しくなる。そのため、本形態に係る燃料電池システムでは、第1燃料電池において、第2燃料電池よりも燃料電池セル数、燃料電池セルの表面積の合計や燃料電池スタックの数が多くなる。
【0013】
ここで、燃料電池に供給されるガスの圧力損失は、ガスの流量、燃料電池セルの数、燃料電池スタックの数、燃料電池セルの表面積の合計などにより影響を受け、これらの値を小さくすることで燃料電池に供給されるガスの圧力損失を小さくすることができる。そのため、本形態に係る燃料電池システムでは、第1燃料電池に供給されるガスの圧力損失に対する第2燃料電池に供給されるガスの圧力損失の比を小さくすることができる。
【0014】
<3> 以下の(1)〜(3)のいずれかの条件を満たす<1>又は<2>に記載の燃料電池システム。(1)前記第2燃料電池における前記燃料電池セルの数が、前記第1燃料電池における前記燃料電池セルの数よりも少ない。(2)前記第1燃料電池及び前記第2燃料電池が複数の前記燃料電池セルが積層してなる燃料電池スタックをそれぞれ1つ以上有し、前記第2燃料電池における前記燃料電池スタックの数が、前記第1燃料電池における前記燃料電池スタックの数よりも少ない。(3)前記第2燃料電池における前記燃料電池セルの表面積の合計が、前記第1燃料電池における前記燃料電池セルの表面積の合計よりも小さい。
【0015】
ここで、燃料電池に供給されるガスの圧力損失は、ガスの流量、燃料電池セルの数、燃料電池スタックの数、燃料電池セルの表面積の合計などにより影響を受け、これらの値を小さくすることで燃料電池に供給されるガスの圧力損失を小さくすることができる。そのため、本形態に係る燃料電池システムでは、上記(1)〜(3)のいずれかの条件を満たすときに、第1燃料電池に供給されるガスの圧力損失に対する第2燃料電池に供給されるガスの圧力損失の比を小さくすることができる。
【0016】
<4> 原料ガスを改質して前記燃料ガスを生成する改質器をさらに備え、前記第1燃料電池は、前記改質器から供給された前記燃料ガスを用いて発電を行う<1>〜<3>のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
【0017】
本形態に係る燃料電池システムは、原料ガスを改質して燃料ガスを生成する改質器をさらに備えており、改質器にて生成された燃料ガスを用いて第1燃料電池にて発電を行う。
【0018】
<5>前記第1燃料電池及び前記第2燃料電池は、固体酸化物形燃料電池である<1>〜<4>のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
【0019】
本形態に係る燃料電池システムでは、第1燃料電池及び第2燃料電池が固体酸化物形燃料電池であるため、燃料電池の動作温度が高く、燃料電池から排出されるオフガスの温度も高くなり、高温下でも動作する構造や材質で構成された特殊なブロアが必要であり、かつブロワの耐久性が低下しやすい。本形態に係る燃料電池システムでは、ブロワの負荷を軽減することができるため、動作温度が高い固体酸化物形燃料電池を用いた場合におけるブロワの耐久性の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ブロワにおける負荷圧力を低減し、高い発電効率を有する燃料電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
図2】比較対象に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0023】
[燃料電池システム]
以下、本発明の燃料電池システムの一実施形態について図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。本実施形態に係る燃料電池システム10は、原料ガスを改質して燃料ガスを生成する改質器5と、燃料ガスを用いて発電を行う第1燃料電池1と、未反応の燃料ガスを含むオフガスから二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を除去し、再生オフガスとする燃料再生器(燃料再生手段)2と、再生オフガスを用いて発電を行う第2燃料電池3と、ブロワ4により第2燃料電池3から排出されたオフガス(アノードオフガス)を循環させて燃料再生器2に供給するオフガス循環経路15と、を備える。
【0024】
本実施形態に係る燃料電池システム10は、第1燃料電池1と、燃料再生器2と、第2燃料電池3とを備える多段式の燃料電池システムである。本実施形態のような多段式の燃料電池システムは、第1燃料電池1から排出されたオフガス中の二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を燃料再生器2にて除去し、燃料ガスの濃度を高めた再生オフガスを用いて第2燃料電池3にて発電を行う。そのため、高い発電効率を得ることができる。
【0025】
さらに、燃料電池システム10は、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方が燃料再生器2にて除去された再生オフガスを第2燃料電池3に供給し、そして、オフガス循環経路15を通じて第2燃料電池3から排出されたオフガスを循環させて燃料再生器2に供給する。そのため、燃料電池システム10では、オフガス循環経路を通じて第1燃料電池から排出されたオフガスを循環させる場合と比較して、より少量のオフガスを循環させればよい。従って、ブロワ4における負荷圧力及び消費電力を低減することができる。これにより、補機損失が低減されて燃料電池システム10の正味の発電量が増加し、システムの発電効率を高めることができる。
【0026】
また、ブロワ4への負荷も軽減できるため、ブロワ4の耐久性を向上させることができ、交換や保守のコストを低減できる。特に、第1燃料電池1及び第2燃料電池3として高温型の燃料電池を使用した場合、オフガスが高温となり、ブロワ4の耐久性が低下しやすくなる。本実施形態に係る燃料電池システム10では、ブロワ4の負荷を軽減できるため、例えば、動作温度が高い固体酸化物形燃料電池を用いた場合におけるブロワ4の耐久性の低下を抑制できる。
【0027】
さらに、本実施形態に係る燃料電池システム10では、ブロワ4への負荷を軽減できるため、ブロワ4の騒音及び振動を抑制できる。
【0028】
以下、本実施形態に係る燃料電池システム10の各構成について説明する。
【0029】
(改質器)
本実施形態に係る燃料電池システム10は、原料ガスを改質して燃料ガスを生成する改質器5を備え、原料ガス供給経路11を通じて原料ガスが供給される。改質器5は、例えば、バーナ又は燃焼触媒を配置した燃焼部6と、改質用触媒を備える改質部7とにより構成される。
【0030】
原料ガスとしては、改質が可能なガスであれば特に限定されず、例えば、炭化水素ガスが挙げられる。炭化水素ガスとしては、天然ガス、LPガス(液化石油ガス)、石炭改質ガス、低級炭化水素ガス、バイオガスなどが例示される。低級炭化水素ガスとしては、メタン、エタン、エチレン、プロパン、ブタン等の炭素数4以下の低級炭化水素が挙げられ、特にメタンが好ましい。なお、炭化水素ガスとしては、上述したガスを2種以上混合したものであってもよい。
【0031】
原料ガスの改質としては、水蒸気改質、二酸化炭素改質、部分酸化改質、シフト反応改質などが挙げられ、改質器5は、原料ガスの二酸化炭素改質及び水蒸気改質の少なくとも一方を行う構成であってもよく、また、部分酸化改質、シフト反応改質などにより燃料ガスを生成する構成であってもよい。本実施形態では、原料ガスとしてメタンガス(CH)を用い、改質器5にてメタンを水蒸気改質し、燃料ガスを生成する構成について以下に説明する。
【0032】
改質部7は、上流側にて原料ガス供給経路11、及び水蒸気を供給する水蒸気供給経路12と接続しており、下流側にて燃料ガス供給経路13と接続している。原料ガス供給経路11を通じてメタンなどの原料ガスが改質部7に供給され、かつ水蒸気供給経路12を通じて水蒸気が改質部7に供給される。そして、改質部7にて原料ガスを水蒸気改質した後に、生成された燃料ガスが燃料ガス供給経路13を通じて第1燃料電池1に供給される。
【0033】
燃焼部6は、上流側にてオフガス供給経路14及び空気供給経路16と接続しており、下流側にて排気経路17と接続している。燃焼部6は、第2燃料電池3のアノード側から排出され、オフガス供給経路14を通じて供給されたオフガスと、第2燃料電池3のカソード側から排出され、空気供給経路16を通じて供給された未反応の酸素を含むガスと、の混合ガスを燃焼させ、改質部7を加熱する。燃焼部6からの排気は、排気経路17を通じて排出される。
【0034】
排気経路17及び空気供給経路16には熱交換器8が設置されており、熱交換器8により、排気経路17を流通する排気と、空気供給経路16を流通する空気(酸素を含むガス)と、の間で熱交換を行う。これにより、排気経路17を流通する排気は冷却された後に排出され、空気供給経路16を流通する空気は、第1燃料電池1の作動温度に適した温度に加熱された後に第1燃料電池1のカソードに供給される。
【0035】
改質部7で起こる水蒸気改質は大きな吸熱を伴うので、反応の進行のためには外部から熱の供給が必要である。そのため、燃焼部6で発生する燃焼熱により改質部7を加熱することが好ましい。あるいは、燃焼部6で発生する燃焼熱に各燃料電池から放出される熱を加えてもよく、燃焼部6を設置せずに各燃料電池から放出される熱を用いて改質部7を加熱してもよい。
【0036】
原料ガスとしてメタンなどの炭化水素ガスを水蒸気改質させた場合、改質部7にて、一酸化炭素及び水素が生成される。
【0037】
改質部7内に設置される改質用触媒としては、水蒸気改質反応の触媒となるものであれば特に限定されないが、Ni、Rh、Ru、Ir、Pd、Pt、Re、Co、Fe及びMoの少なくとも一つを触媒金属として含む水蒸気改質用触媒が好ましい。
【0038】
改質器5の改質部7に供給される単位時間当たりの水蒸気の分子数Sと、改質器の改質部7に供給される単位時間当たりの原料ガスの炭素原子数Cとの比であるスチームカーボン比S/Cは、1.5〜3.5であることが好ましく、2.0〜3.0であることがより好ましく、2.0〜2.5であることがさらに好ましい。スチームカーボン比S/Cがこの範囲にあることにより、原料ガスが効率よく水蒸気改質され、水素及び一酸化炭素を含む燃料ガスが生成される。さらに、燃料電池システム10内での炭素析出を抑制することができ、燃料電池システム10の信頼性を高めることができる。
【0039】
また、燃焼部6は、水蒸気改質を効率よく行う観点から、改質部7を、600℃〜800℃に加熱することが好ましく、600℃〜700℃に加熱することがより好ましい。
【0040】
本発明に係る燃料電池システム(特に、高温型の燃料電池を備える燃料電池システム)では、改質器が第1燃料電池の外部に取り付けられている必要はなく、第1燃料電池に原料ガスならびに水蒸気及び二酸化炭素の少なくとも一方を直接供給し、第1燃料電池の内部で改質(内部改質)を行い、生成された燃料ガスを第1燃料電池での発電に用いる構成であってもよい。特に第1燃料電池が高温型の燃料電池である場合、内部での反応温度は550℃以上と高温であるため、第1燃料電池内で水蒸気改質を行うことが可能である。
【0041】
なお、改質器にて二酸化炭素改質を行う場合、改質部に供給される原料ガス(好ましくはメタン)の炭素原子数(A)と二酸化炭素の分子数(B)との比(A:B)は、二酸化炭素改質を効率よく行なう観点から、例えば700℃なら、1:2.7〜5.0が好ましく、1:2.7〜4.0がより好ましい。さらに、炭素析出を抑制する観点から、水蒸気を一部添加してもよい。
【0042】
なお、改質器は、本発明において必須の構成ではなく、第1燃料電池の上流側に改質器を配置することなく、水素及び一酸化炭素の少なくとも一方を含む燃料ガスを第1燃料電池に供給して発電を行う構成であってもよい。
【0043】
(第1燃料電池)
本実施形態に係る燃料電池システム10は、燃料ガス供給経路13を通じて改質器5から供給された燃料ガスを用いて発電を行う第1燃料電池1を備えている。第1燃料電池1は、例えば、カソード(空気極)、電解質及びアノード(燃料極)を備える燃料電池セルであってもよく、燃料電池セルを複数積層した燃料電池スタックであってもよく、さらに燃料電池スタックを複数個接続してもよい。また、第1燃料電池1としては、600℃〜1000℃程度で作動する高温型の燃料電池及び、60℃〜200℃程度の温度で作動する低温型の燃料電池が挙げられる。高温型の燃料電池としては、固体酸化物形燃料電池(SOFC)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)が挙げられ、低温型の燃料電池としては、60℃〜100℃程度で作動する固体高分子形燃料電池(PEFC)、150℃〜200℃程度で作動するリン酸形燃料電池(PAFC)が挙げられる。
【0044】
第1燃料電池1での燃料ガスの電気化学的な反応により、発電が行われ、第1燃料電池1が固体酸化物形燃料電池である場合にはアノード側にて主に水蒸気が生成され、第1燃料電池1が溶融炭酸塩形燃料電池である場合にはアノード側にて主に水蒸気及び二酸化炭素が生成される。なお、固体酸化物形燃料電池であっても、一部の一酸化炭素が発電に用いられることで、二酸化炭素が生成される。
【0045】
第1燃料電池1のカソードから排出された未反応の酸素を含むガスは、下流側の空気供給経路16を通じて、第2燃料電池3のカソード(図示せず)に供給される。
【0046】
一方、第1燃料電池1のアノードから排出された未反応の燃料ガスを含むオフガスは、オフガス供給経路14を通じて燃料再生器2へ供給される。ここで、未反応の燃料ガスを含むオフガスは、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、メタンなどを含む混合ガスである。
【0047】
(燃料再生器)
本実施形態に係る燃料電池システム10は、第1燃料電池1から排出された未反応の燃料ガスを含むオフガス中の二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を除去し、燃料ガスの濃度を高めて再生オフガスとする燃料再生器2を備えている。燃料再生器2としては、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を除去することができる構成であれば限定されない。また、除去する方法についても特に限定されず、吸着、吸収、分離(例えば、膜分離)、凝縮、分解などが挙げられる。
【0048】
燃料再生器2としては、例えば、水凝縮器、水蒸気吸着材、二酸化炭素吸着材、水蒸気吸収剤、二酸化炭素吸収材、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を分離する分離膜などが挙げられ、これらを単独で、あるいは組み合わせて用いてもよい。
【0049】
燃料再生器2として分離膜を設ける場合、分離膜のガス供給側にオフガスが供給されるように分離膜を設ける。分離膜のガス供給側にオフガスが供給されると、オフガスに含まれる二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方が分離膜により分離されて燃料ガスの濃度を高めることができる。このとき、オフガスに含まれる二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方が分離膜を透過してガス透過側に移動するようにして二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を分離膜により分離してもよい。あるいは、オフガスに含まれる水素及び一酸化炭素の少なくとも一方が分離膜を透過してガス透過側に移動するようにして二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を分離膜により分離し、ガス透過側に移動したガスが再生オフガスとして第2燃料電池3に供給される構成となっていてもよい。
オフガスに含まれる二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を分離膜に透過させる際、分離膜でのガス透過を促進させる点から、分離膜のガス透過側にスイープガスを供給する構成であることが好ましい。
【0050】
分離膜のガス透過側にスイープガスを供給する場合、別途スイープガスを供給する供給経路を分離膜のガス透過側に設けてもよいが、燃料電池システム10の各構成に供給されるガス、あるいは燃料電池システム10の各構成から排出されるガスをスイープガスとし、別途スイープガスを供給する供給経路を設けなくてもよい。
【0051】
例えば、(1)空気供給経路16を流通する空気若しくはカソードオフガス、(2)排気経路17を流通する排気をスイープガス、又は(3)原料ガス供給経路11を流通する原料ガスをスイープガスとし、それぞれ、空気供給経路16、排気経路17又は原料ガス供給経路11をスイープガス供給経路としてもよい。これにより、別途スイープガスを供給する供給経路を設ける必要がない。そのため、システムを複雑化させることなく、簡易な構成で水蒸気透過性及び二酸化炭素透過性を向上させることができる。
【0052】
分離膜としては、二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方を分離する膜であれば特に限定されず、例えば、有機高分子膜、無機材料膜、有機高分子−無機材料複合膜、液体膜などが挙げられる。また、水蒸気分離膜は、ガラス状高分子膜、ゴム状高分子膜、イオン交換樹脂膜、アルミナ膜、シリカ膜、炭素膜、ゼオライト膜、セラミック膜、アミン水溶液膜又はイオン液体膜であることがより好ましい。
【0053】
なお、燃料再生器2として、水凝縮器を設ける場合、水蒸気透過性又は二酸化炭素透過性が低温にて向上する分離膜を設ける場合などは、オフガスは燃料再生器2に供給される前に冷却されることが好ましい。そのため、燃料再生器2に供給されるオフガスと、燃料再生器2から排出されオフガス供給経路14を通じて第2燃料電池3に供給される再生オフガスとの間で熱交換を行う熱交換器を、オフガス供給経路14に配置してもよい。これにより、オフガス供給経路14を流通するオフガスは、水凝縮若しくは水蒸気分離又は二酸化炭素分離に適した温度まで冷却され、かつ、オフガス供給経路14を流通する再生オフガスは、第2燃料電池3の作動温度に適した温度に加熱される。そのため、システム全体において、発電効率及び熱効率がより向上する。
【0054】
燃料再生器2にて二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方が除去され、燃料ガスの濃度が上昇したオフガスは、再生オフガスとしてオフガス供給経路14を通じて第2燃料電池3のアノード(図示せず)に供給される。
【0055】
(第2燃料電池)
本実施形態に係る燃料電池システム10は、燃料再生器2の下流に、再生オフガスを用いて発電を行う第2燃料電池3を備えている。第2燃料電池3としては、例えば、カソード、電解質及びアノードを備える燃料電池セルであってもよく、燃料電池セルを複数積層した燃料電池スタックであってもよく、さらに燃料電池スタックを複数個接続してもよい。
【0056】
ここで、第2燃料電池3の燃料利用率をX(%)としたとき、第1燃料電池1の燃料利用率が、100X/(X+100)(%)よりも大きい構成としてもよい。
【0057】
第2燃料電池3の燃料利用率がX(%)、かつ第1燃料電池1の燃料利用率が100X/(X+100)(%)となるとき、電流密度等の条件が一定と仮定すれば、第1燃料電池1及び第2燃料電池3における燃料電池セル数、燃料電池セルの表面積の合計や燃料電池スタックの数が等しくなる。そのため、本実施形態に係る燃料電池システム10では、第1燃料電池1において、第2燃料電池3よりも燃料電池セル数、燃料電池セルの表面積の合計や燃料電池スタックの数が多くなる。
【0058】
ここで、燃料電池に供給されるガスの圧力損失は、ガスの流量、燃料電池セルの数、燃料電池スタックの数、燃料電池セルの表面積の合計などにより影響を受け、これらの値を小さくすることで燃料電池に供給されるガスの圧力損失を小さくすることができる。そのため、本実施形態に係る燃料電池システム10では、第1燃料電池1に供給されるガスの圧力損失に対する第2燃料電池3に供給されるガスの圧力損失の比を小さくすることができる。
【0059】
第2燃料電池3は、例えば、(1)第2燃料電池3における燃料電池セルの数が、第1燃料電池1における燃料電池セルの数よりも少ない構成、(2)第2燃料電池3における燃料電池スタックの数が、第1燃料電池3における燃料電池スタックの数よりも少ない構成、又は(3)第2燃料電池3における燃料電池セルの表面積の合計が、第1燃料電池1における燃料電池セルの表面積の合計よりも小さい構成としてもよい。
【0060】
本実施形態に係る燃料電池システムでは、上記(1)〜(3)のいずれかの条件を満たすときに、第1燃料電池1に供給されるガスの圧力損失に対する第2燃料電池3に供給されるガスの圧力損失の比を小さくすることができる。
【0061】
さらに、本実施形態に係る燃料電池システム10では、第2燃料電池3に供給されるガスの流量を第1燃料電池1に供給されるガスの流量よりも少なくなるように調整してもよい。上記(1)〜(3)のいずれかの条件を満たし、かつ第2燃料電池3に供給されるガスの流量を第1燃料電池1に供給されるガスの流量よりも少なくすることで、第2燃料電池3に供給されるガスの圧力損失を、第1燃料電池1に供給されるガスの圧力損失よりも小さくすることができる。
【0062】
例えば、第1燃料電池1及び第2燃料電池3における燃料利用率を調整することで、第2燃料電池3に供給されるガスの流量を第1燃料電池1に供給されるガスの流量よりも少なくすることが可能である。第2燃料電池3には、第1燃料電池1から排出されたオフガスが燃料再生器2にて再生された再生オフガス、及び、第2燃料電池3から排出されたオフガスがオフガス循環経路15を通じて燃料再生器2に供給され、燃料再生器2にて再生された再生オフガスが供給される。したがって、第2燃料電池3に供給されるガスの流量は、第1燃料電池1及び第2燃料電池3における燃料利用率に応じて変動し、調整することが可能である。
【0063】
例えば、第1燃料電池1の燃料利用率をより高めて第1燃料電池1での燃料消費量を増加させることで、第2燃料電池3に供給されるガスの流量を少なくすることができる。その結果、第2燃料電池3に供給されるガスの流量を第1燃料電池1に供給されるガスの流量よりも少なくすることが可能である。
【0064】
なお、燃料電池における燃料利用率は、例えば、燃料電池セルの数、燃料電池スタックの数、燃料電池セルの表面積の合計、燃料電池における電流値、燃料電池における電圧値などの各数値を変動させて調整すればよい。例えば、燃料電池における燃料利用率を増加させるためには、上記各数値の少なくともいずれかを増加させればよい。
【0065】
第1燃料電池1における燃料の燃料電池セルの数、燃料電池スタックの数又は燃料電池セルの表面積の合計と、第2燃料電池3における燃料の燃料電池セルの数、燃料電池スタックの数又は燃料電池セルの表面積の合計との比はそれぞれ、1.5:1〜10:1であることが好ましく、2:1〜5:1であることがより好ましい。
【0066】
第2燃料電池3としては、600℃〜1000℃程度で作動する高温型の燃料電池が挙げられる。高温型の燃料電池としては、固体酸化物形燃料電池(SOFC)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)が挙げられる。
【0067】
燃料電池システム10では、第2燃料電池3は、水蒸気及び二酸化炭素の少なくとも一方が除去された再生オフガスを用いて発電を行う。そのため、第2燃料電池3では、電極間の酸素分圧差に起因する理論電圧が向上するとともに、オフガス中の水蒸気又は二酸化炭素に起因する濃度過電圧が低減され、特に高電流密度時に高い性能を発揮することができる。さらに、第2燃料電池3にて高い起電力(電圧)を発揮することができるため、高い燃料利用率での運転が可能となる。よって、燃料電池システム10は、後段の燃料電池にて水蒸気及び二酸化炭素が分離されていないオフガスを用いて発電を行う多段式の燃料電池システムと比較して、高い発電効率を得ることができる。なお、再生オフガスは、水蒸気及び二酸化炭素の少なくとも一方が、完全に除去されているガスだけでなく、一部が除去されているガスも包含する。
【0068】
第2燃料電池3のカソードから排出された未反応の酸素を含むガスは、下流側の空気供給経路16を通じて改質器5の燃焼部6へ供給される。一方、第2燃料電池3のアノードから排出されたオフガスは、一部はオフガス循環経路15を通じて燃料再生器2に供給されてリサイクルされ、残りはオフガス供給経路14を通じて改質器5の燃焼部6へ供給される。
【0069】
オフガス循環経路15は、第2燃料電池3から排出されたオフガスを循環させて燃料再生器2に供給するための経路であり、第2燃料電池3の下流から燃料再生器2の上流に第2燃料電池3から排出されたオフガスを供給する。オフガス循環経路15は、配置されたブロワ4により第2燃料電池3から排出されたオフガスを循環させて燃料再生器2に供給する。
【0070】
オフガス循環経路15は、第1燃料電池1から排出されたオフガスを循環させる場合と比較して、より少量のオフガスを循環させればよいため、ブロワ4への負荷が低減される。そのため、ブロワ4の耐久性向上を図ることができる。
【0071】
また、第1燃料電池1の燃料利用率をより高めて第1燃料電池1での燃料消費量を増加させることが好ましい。これにより、第1燃料電池1から排出されたオフガス中の未反応の燃料ガスの濃度が低下し、オフガス中の二酸化炭素及び水蒸気の濃度が増加するが、燃料再生器2にてオフガス中の二酸化炭素及び水蒸気の少なくとも一方がより多く除去されるため、第2燃料電池3に供給される再生オフガスの流量が小さくなる。その結果、第2燃料電池3から排出されるオフガスの流量も小さくなり、オフガス循環経路15により循環させるオフガスの流量をより削減することができ、ブロワ4への負荷をより低減することができる。
【0072】
オフガス循環経路15により循環させるオフガスの流量をより削減し、ブロワ4への負荷をより低減する点から、第1燃料電池1の燃料利用率は、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、75%以上であることがさらに好ましい。
【0073】
[実施の一例]
以下、本発明の燃料電池システムの実施の一例について説明する。ここでは、図1に示される本実施形態に係る燃料電池システム10の一例では、図2に示される比較対象となる燃料電池システム20の一例に対して発電効率が向上していることを示す。
【0074】
まず、図2は、比較対象に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。図2に示す燃料電池システム20は、オフガス循環経路15の代わりにオフガス循環経路18が配置されている点で、燃料電池システム10と相違する。オフガス循環経路18は、第1燃料電池1から排出されたオフガスを一部循環させて改質器5の改質部7に供給するための経路である。なお、燃料電池システム20において、前述の燃料電池システム10と同様の構成については、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0075】
燃料電池を2つ有する多段式の燃料電池システムについて、前段の燃料電池及び後段の燃料電池の燃料利用率をそれぞれ以下の通りと仮定する。
前段の燃料電池の燃料利用率(以下、「Uf」とする)・・・75%
後段の燃料電池の燃料利用率(以下、「Uf」とする)・・・60%
【0076】
前段の燃料電池から排出されたオフガス及び後段の燃料電池から排出されたオフガスを循環させない場合、上記Uf及びUfから、システム全体の燃料利用率ならびに前段の燃料電池及び後段の燃料電池におけるセル比を以下のようにして計算する。
システム全体の燃料利用率(Uf)・・・Uf=Uf+(1−Uf)×Uf=90%
セル比・・・Uf:(1−Uf)×Uf=5:1
【0077】
したがって、システム全体の燃料利用率は90%であり、前段の燃料電池のセル数:後段の燃料電池のセル数=5:1であることが算出される。ここで、図1、2における燃料電池システム10、20についても、第1燃料電池1のセル数:第2燃料電池3のセル数=5:1とし、システムの発電効率についてそれぞれ検討する。
【0078】
次に、比較対象となる燃料電池システム20について、DC発電効率(発電端)を73.0%(LHV:低位発熱量)、インバータによる損失を5%、補機損失を6%と仮定すると、AC発電効率は、以下の式により65.2%と算出される。
AC発電効率=DC発電効率×(1−インバータ損失)×(1−補機損失)=73.0%×(100%−5%)×(100%−6%)=65.2%
【0079】
補機としては燃料ブロワ(図示せず)、空気ブロワ(図示せず)、燃料リサイクルブロワ(ブロワ4)等が想定され、主な補機損失としてはこれらブロワの運転に必要な電力が挙げられる。これらのブロワのうち、燃料リサイクルブロワは基本的に高温で動作させる必要があるので、大きな損失割合が想定される。そこで、燃料リサイクルブロワによる補機損失を全体の半分、すなわち3%であると仮定する。以下、実施の一例の性能向上効果を検討する。
【0080】
実施の一例である燃料電池システム10について、DC発電効率(発電端)を73.0%(LHV:低位発熱量)、インバータによる損失を5%と仮定する。燃料電池システム10では、ブロワの負荷圧力の低下により燃料リサイクルブロワの補機損失がどの程度低下するかは、ブロワの種類に依存する。例えば、実施の一例にて、燃料リサイクルブロワの補機損失を比較対象の三分の一に低減できたと仮定すれば、燃料リサイクルブロワによる補機損失は3%×1/3=1%となる。したがって、全体の補機損失は、3%(燃料リサイクルブロワ以外)+1%(燃料リサイクルブロワ)=4%となる。
【0081】
以上により、実施の一例に係る燃料電池システム10について、AC発電効率は、以下の式により66.6%となり、比較対象に対して発電効率として1.4%の向上効果が見込まれる。
AC発電効率=DC発電効率×(1−インバータ損失)×(1−補機損失)=73.0%×(100%−5%)×(100%−4%)=66.6%
【符号の説明】
【0082】
10、20…燃料電池システム、1…第1燃料電池、2…燃料再生器(燃料再生手段)、3…第2燃料電池、4…ブロワ、5…改質器、6…燃焼部、7…改質部、8…熱交換器、11…原料ガス供給経路、12…水蒸気供給経路、13…燃料ガス供給経路、14…オフガス供給経路、15、18…オフガス循環経路、16…空気供給経路、17…排気経路
図1
図2