(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施例を図面を用いて説明する。洗濯工程においては、ドラム式洗濯機でも洗濯乾燥機でも同じ工程であるため、以下の実施例ではドラム式洗濯乾燥機を用いて説明する。
【0018】
図1は、本発明の第1の実施例に係るもので、ドラム式洗濯乾燥機の外観斜視図を示す。また
図2は、本発明の第1の実施例に係るもので、ドラム式洗濯乾燥機の内部構造を示す右側面の概略断面図である。
【0019】
まず外観について説明する。ベース1hの上部に、主に鋼板と樹脂成形品で作られた側板1a及び補強材(図示せず)を組合わせて骨格を構成し、さらにその上に前面カバー1c、下部前面カバー1f、上面カバー1eを取り付けることで筐体1を形成している。前面カバー1cには洗濯物207を出し入れするドア9が設けられており、背面には背面カバー1dがとりつけられている。
【0020】
つぎに、洗濯乾燥機の概略構造および洗濯から乾燥工程までを簡単に説明する。
図1に示す筐体1の内側には
図2のごとく、ほぼ中央部に外槽2が備えられている。外槽2は下部の複数個のダンパ5により支持されている。外槽2の内側に回転可能に設けたドラム3には、ドア9を開けて洗濯物207を投入する。ドア9自体は、ドア枠9bにドアガラス9aを固定したものであり、ヒンジ9cにより、筐体1に取り付けられている。回転可能なドラム3の開口部の外周には、脱水時の洗濯物207のアンバランスによる振動を低減するための、流体バランサー208が設けられている。また、ドラム3の内側には洗濯物207を持ち上げる複数個のリフター209が設けられている。回転可能なドラム3は金属製フランジ210に連結された主軸211を介して、ドラム駆動用のモータM10aに直結されている。外槽2の開口部には弾性体からなるゴム製のベローズ10が取付けられている。このゴム製のベローズ10は、外槽2内とドア9との水密性を維持する役割をしている。これにより、洗い,すすぎ及び脱水時の水漏れの防止が図られている。回転可能なドラム3は、側壁である円筒部に遠心脱水および通風用の多数の小孔(図示せず)を有する。
【0021】
図3は、洗濯乾燥機の内部基本構造を示す右斜め前方からの斜視図である。洗濯水を外槽2の上部までくみ上げて、ドラム3内の洗濯物207に散布するための循環ポンプ18は、外槽2よりも下部のベース1h側に固定されている。洗濯水は、外槽下部に設けられた水受け部54の排水口21から、糸くずフィルタ222を通して循環ポンプ18の吸込口側に入り、循環ポンプ18で昇圧されたのち、散水ノズル223(
図4参照)からドラム3内に向けて散水される。また水受け部54の底部に排水のために設けた排水口21は、糸くずフィルタ222と排水弁V1を介して、排水ホース26に通じており、水受け部54内の水を排水できる。
【0022】
一方、オーバーフローホース205は、通風経路である送風ダクト29から排水孔240へ分岐させるように、排水弁V1よりも下流側で排水ホース26と連通させる構成としている。即ちオーバーフローホース205が取り付けてある所定の水位よりも水量が増えてしまった場合には、いかなる場合でも強制的に排水できる構成としている。
【0023】
ドラム3内の洗濯物207に気流を導く送風ダクト29と、送風手段である送風ファン20は、外槽2から離して筐体1に固定(図示せず)されている。吹出しノズル203は、外槽2に、洗濯乾燥機正面からみて回転可能なドラム3の中心軸よりも上側且つ、洗濯乾燥機側面からみて、正面寄りの前側の位置に固定されている。前記吹出しノズル203と温風ヒータ213の出口は、柔軟構造のゴム製の蛇腹管212で、その長手伸縮方向が外槽2に対して略垂直となる配置で接続しており、外槽2の振動を吸収している。排水口21,送風ファン20の吸気口(図示せず)及び吐出口(図示せず)には温度センサ(図示せず)が設けてある。本実施例の加熱手段の一つである補助ヒータ213は必要に応じて、送風温度を調節するのに用いる。
【0024】
洗濯もしくは洗濯乾燥コースを選んで運転を開始すると、投入された洗剤を溶かして洗濯物に散布する洗剤溶かし工程を実行する。洗濯工程の初期は、洗濯工程終了までに使用する全水量よりも少ない給水量で洗剤を溶かし、この高濃度洗剤液をドラム3を回転させて、洗濯物207を攪拌させながら循環ポンプ18にて満遍なく散布する。このため通常は、外槽2内には洗剤液のしみこんだ洗濯物207と、外槽2底部の水受け部54に少量の洗剤液が存在する。ドラム3を回転させることで、洗濯物207をドラム3上部に持ち上げた後、重力により底部まで落下させるタンブリング動作に基づくたたき洗いを行い続けると、洗濯物207にしみこんだ洗剤液が搾り出てくるので、必要に応じて間欠的に循環ポンプ18を駆動させて、再び洗濯物207に洗剤液を散布する。この動作中においても、洗濯水と洗濯物のいわゆる洗浄温度を上げると、洗浄性能を向上できる。本実施例では、洗濯工程においてヒートポンプ230を用いて給水もしくは外槽底部の水受け部54の洗濯水を昇温させ、洗浄性能を高める。
【0025】
図3は、洗濯乾燥機を背面側からみた基本構成図である。ヒートポンプ230は蒸発器233、凝縮器231、圧縮機237、水−冷媒熱交換器236、第1膨張弁232と第2膨張弁235、2方弁234a〜234cとこれらを結ぶ冷媒配管245から主に構成されている。圧縮機237はドラム3の回転による振動とは別に、自らも振動を発生させるため、筐体1下部のベース1hに設置している。送風ダクト29内に設けた蒸発器233と凝縮器231は、その上流側に設ける乾燥フィルタ8のメンテナンス性確保や温風の放熱損失の低減、蒸発器233からのドレンの排水し易さなどから、送風ダクト29とともに筐体1の上部に固定している。これらと冷媒配管245で結ぶ水−冷媒熱交換器236も、ドラム3の回転に対して直接影響を受けないように、筐体1背面の上部に設置している。
【0026】
水−冷媒熱交換器236への給水には、給水電磁弁16のうちの第2の制御弁16bから注水経路241を介しての給水と、循環ポンプ18で外槽2底部の水受け部54から汲み上げた洗濯水を第2の通水経路244を介しての給水を備え、水−冷媒熱交換器236からの温水は、外槽2底部の温水供給口239(
図4参照)に送る構成としている。即ち洗浄初期は、外部からの給水をそのまま加熱することができ、洗浄工程の途中に洗濯水の再加熱(追い炊き)を必要とした場合においても、循環ポンプ18出口の流路切替弁238を通常の散水ノズル223側から水−冷媒熱交換器236側に切り替えて、供給し加熱することができる。
【0027】
温水生成時の空気は、蒸発器233と外槽2底部とを結ぶ送風ダクト29に設けた開閉機構204から、筐体1内を通過してきた外気を流入させ、ヒートポンプ230で熱交換させた後、ドラム3内を横切らせてオーバーフローホース205から排気させる。このとき開閉機構204は全開にし、送風ダクト29の外槽2底部と連通する側の開口端部246を塞いでおくので、送風ダクト29に流入させた外気の全量を排気できる。
図5(a)は本発明の実施形態に係るヒートポンプの洗濯における温水生成時の標準外気条件に対するシステムフローであり、(b)は冷媒状態を模式的に示したモリエル線図である。温水を用いた洗濯工程においては、圧縮機237から吐出された高温高圧の冷媒は、水−冷媒熱交換器236に送られ、水と熱交換して温水温度レベルに冷却される。このときの2方弁234bは、水−冷媒熱交換器236側に切り替えておく。また第2膨張弁235は、所望の水温とするための熱交換量に調節するように絞りを与える。水−冷媒熱交換器236から流出された冷媒は、2方弁234cを介して第1膨張弁232を通って凝縮器231に送られる。凝縮器231において冷媒は、蒸発器233で吸熱された低温の空気を、常温レベルに戻すだけの熱を与える。即ち第1膨張弁232では、熱交換量に見合った絞りを与えることで、凝縮圧を調節する。過冷却液となった冷媒は、蒸発器233において、送風ダクト29内の空気から吸熱することで低圧ガスとなり、圧縮機237吸込み側に戻される。蒸発器233での熱交換量と圧縮機237での断熱圧縮仕事の熱当量の合計は、水−冷媒熱交換器236と凝縮器231での熱交換量の合計とが熱収支としてつりあう。例えば、外気20℃、65%RH、2.5m
3/minを筐体1内を通すことで、メインモータM10aや圧縮機237の排熱などにより、23℃に昇温されて送風ダクト29内に導入された場合は、圧縮機237入力約230Wのもとで蒸発能力約820Wを確保でき、凝縮器231での空気温度を常温レベルに戻すための再加熱量約370Wを差し引いた680Wが、水−冷媒熱交換器236での温水生成に利用できる。
一方、外気が高温多湿の環境では、蒸発器233での空気からの吸熱における潜熱割合を多くできるので、蒸発器233出口の空気を再加熱する必要がなくなる。
図6(a)は本発明の実施形態に係るヒートポンプの洗濯における温水生成時の高湿度外気条件に対するシステムフローであり、(b)は冷媒状態を模式的に示したモリエル線図である。凝縮器231での空気の再加熱を必要としないため、水−冷媒熱交換器236から流出された冷媒は、2方弁234cを通って、第1膨張弁232を介して蒸発器233に流入されるフローとなる。このため、水−冷媒熱交換器236での温水加熱量には、圧縮機237入力の約190Wと蒸発器233での冷却能力約670Wの合計860Wを費やすことができる。
【0028】
以上のような構成とすることにより、温水生成時にドラム3内を冷やすことなく温水を生成し、効率よく昇温による洗浄ができる。
【0029】
その後の洗濯工程において、外槽2内に追加給水して、洗濯水を通常の洗濯水量まで増やすと、外槽2底部の水受け部54にも十分な水量が確保される。もし、洗濯負荷に応じた追加水量が多い場合や給水温度が低い場合には、洗濯水温度が下がりすぎてしまう。この場合には、循環ポンプ18出口の流路切替弁238を水−冷媒熱交換器236側に切り替えて、前述のように追加加熱させることができる。
【0030】
また、ヒートポンプ230の凝縮温度は、高圧冷媒などを除いて、通常は冷媒の潜熱を確保して循環流量を抑える主旨から、臨界点よりも低温とするのが好ましい。このため、例えばHFC-134aでは、臨界点約101.1℃に対して、凝縮温度は90℃未満に抑えるのが望ましい。冷媒と熱交換により上昇する温風温度は、それよりも低くなり、洗濯物207の加熱温度はさらに低くなる。このため、洗浄温度で90℃クラスの高温を必要とする洗濯コースなどでは、加熱初期はヒートポンプ230を用いて効率よく加熱し、後半は送風ファン20出口内に設けた補助ヒータ213を用いて温風温度をさらに上げて、洗濯物207を加熱するのが好ましい。
【0031】
以上のように、乾燥運転時の除湿空気を生成させるヒートポンプ230に、水−冷媒熱交換器236と、送風ダクト29内に外気を導入し、排水孔240へ排気するための開閉機構204を追加することで、洗浄時の洗濯物の洗浄温度を上げる熱源の一つとして、ヒートポンプ230を利用できる。また本実施例では、第1膨張弁232に冷媒配管245を全閉できるものを使用すれば、第1膨張弁232を閉じることで流路切替手段に流用できるので、2方弁234bは省いても機能上は何ら差し支えない。
【0032】
このように構成したドラム式洗濯乾燥機における洗濯工程を運転パターンと温風タイミングの観点から詳述する。回転可能なドラム3内に洗濯物207を投入し、排水弁V1を閉じた状態で給水して、ドラム3を回転させて洗濯物207を洗濯する。洗濯工程は、さらに洗剤溶かし工程、前洗い工程、本洗い工程からなる。洗剤溶かし工程は、洗濯開始時の布量センシングで提示し、投入された洗剤を水で溶かして、ドラム3内の洗濯物207に散布する工程である。給水電磁弁16の第1の制御弁16aを介して洗剤投入部7に給水する(
図3参照)。給水された水は、洗剤とともにドラム3底部に位置する水受け部54に導かれる。循環ポンプ18を駆動すると、水受け部54の水は,排水口21から糸くずフィルタ222を介して循環ポンプ18の吸込口(図示せず)に入る。循環ポンプ18で昇圧された洗濯水は、循環ポンプ18の出口と連通する循環吐出口54bから再び水受け部54に戻される(洗剤溶かし工程の循環経路)。この循環を繰り返すことで、少ない水で洗剤を溶かした高濃度洗剤液を生成する。循環ポンプ18の出力は、最大洗濯負荷に応じた洗濯水を、外槽2の上方に設けた散水ノズル231まで、くみ上げるに十分な仕様となっている。このため、前述の洗剤溶かし工程の循環経路で循環させると、循環ポンプ18の所要動力は最終的には熱エネルギーに変わり、高濃度洗剤液の温度を上昇させる。生成された高濃度洗剤液は、外槽2の上方に設けた散水ノズル231までくみ上げられて、ドラム3内の洗濯物207へ散布される。このとき、循環ポンプ18の出口には、外槽2上方まで導く経路と、上述のように散布せずに水受け部54に戻す経路が必要となるが、本実施例では、循環ポンプ18のケーシング外周に各々の経路につながる吐出口(
図2参照)を設けておき、循環ポンプ18の回転方向を替えることで、回転方向に応じて最初に連通する吐出口側から吐出させることで経路を切り替えている。あるいは循環ポンプ18の吐出口は一箇所として、その下流側で分岐させて流路を切り替えても、機能としてはなんら差し支えない。給水温度が低く、循環ポンプ18の損失熱だけでは十分に温められない場合には、ヒートポンプ230を用いて加熱する。本実施例では、循環ポンプ18の回転方向を散水ノズル223へ導く側とし、さらに循環ポンプ18出口に設けた流路切替弁238を水−冷媒熱交換器236側に切り替えて、高濃度洗剤液を水−冷媒熱交換器236に送って加熱して、再び外槽2底部の水受け部54に戻すことで、昇温できる。
【0033】
前洗い工程では、高濃度洗剤液が散布された洗濯物207をドラム3の回転によりドラム3上方まで持ち上げた後、重力によりドラム3下方へ落下させることを繰り返すことで、洗濯物207に機械力を与える。洗濯物207は高濃度洗剤液を保水した状態であるため、機械力により、洗濯物207を構成する繊維から分離できた汚れは、洗濯物207に保水された高濃度洗剤液内に迅速に分散されるので、再び凝集して洗濯物207を構成している繊維に再付着することを防ぐことができる。この工程内でヒートポンプ230を駆動させて、外槽2底部に温水を貯湯しておく。さらに所望の温水を確保できた後は、ドラム3を横切らせる空気の加熱量を多くして、温風をドラム3内に送ることで、必要に応じて洗濯物207を温めておく。
【0034】
また汚れによっては、洗濯物207にかけた洗濯水の水量が少ない(洗剤濃度が濃い)ほうがよく落ちる場合と、逆に洗濯水の水量が多い(洗剤濃度が薄い)ほうが良く落ちる場合とがある。両者に作用する汚れ落ちの原動力には違いがあり、以下のように解釈できる。洗剤の主成分の一つである界面活性剤は、繊維の濡れを促進して、さらに汚れや布の表面電位を、界面活性剤のマイナス極性に引き寄せることで、負に帯電させる働きがある。これにより、洗濯物から浮かせた汚れ同士や繊維と汚れの間の反発力を増す効果がある。このため、ファン・デル・ワールス力を主体として付着している固形の汚れの洗浄には、界面活性剤の濃度が濃いほうが、ファン・デル・ワールス力に対抗させる前述の反発力を増強できる。よって固形汚れなどは、一般的に界面活性剤濃度が濃いほうがよく落とせる。一方、水や洗濯水に溶け易いいわゆる水溶性の汚れは、溶媒である洗濯水に対する溶質となる汚れの濃度によって、溶解速度が変わる。汚れの濃度が薄い液では溶解速度が大きいが、濃い液では溶解速度が低下する。このため洗濯物207が保水する洗濯水中に分散している汚れの濃度を薄めておけば、さらに洗濯物207から汚れが落ちやすい。換言すれば、洗濯物207の保水する洗濯水は、汚れの濃度の極めて低い洗濯水に置き替えてやるか、汚れの濃度を薄めてやる処置が必要となる。即ち、この種の汚れに対する界面活性剤の役割は、洗濯物207からはがした汚れを分散保持して、凝集や再付着を防ぐ役割が大きいので、ある程度の洗剤濃度が満たされていれば、汚れ落ちに対する洗剤濃度の依存性は小さい。
【0035】
また、どちらの汚れに対しても、洗浄温度を上げることは、結果的に洗浄力を増すことにつながる。前者に対しては、温度を上げることで、洗濯水中の分子拡散が促進されるので、布表面や汚れ表面に、より多くの界面活性剤を付着させることができ、反発力を増強できる。後者に対しても、洗剤溶液中での界面活性剤の拡散が向上し、布表面の濡れを促進できる。さらに分離させた汚れも効果的に拡散できる。
【0036】
その後の本洗い工程では、前洗い工程が終了した時点で、予め水受け部54を含む外槽2底部に貯湯しておいた温水を、循環ポンプ18を駆動させて散水ノズル223からドラム3内の洗濯物207に温水を散布する。さらに水位を上げる場合には追加給水して、水受け部54の水量を増やして、水位を上げる。このときもヒートポンプ230を運転して水−冷媒熱交換器236で加熱した温水を供給しても良い。また循環ポンプ18により水受け部54から洗濯水をくみ上げて、外槽2上部の散水ノズル231から連続して散布しても間欠であってもよい。間欠の場合には、散布しないときにヒートポンプ230を運転して、循環ポンプ18出口の流路切替弁238を水−冷媒熱交換器236側に切り替えて、追加加熱してもよい。具体的には、洗濯物207の裏側などに多くの汚れがまだ付着している間は、連続で散布して洗濯水の攪拌を促進することで、洗濯物207が保水する洗濯水を、常に汚れ濃度の低い洗濯水に入れ替えることができる。その後、汚れがほとんど落ちた後は、たたき洗いの機械力を主体として残りの汚れを落とすほうが洗浄効率がよい。よって後半の散布は、機械力を妨げないように間欠散布とするのが好ましい。
【0037】
なお散水ノズル231は、外槽2に、洗濯乾燥機正面からみて回転可能なドラム3の中心軸よりも上側且つ、洗濯乾燥機側面からみて、正面寄りの前側の位置に固定されており、散水ノズル231からの噴出範囲を、ドラム3の半径方向に対して広角にして散布する構造としている。この本洗い工程では、広範囲の散布とともに、ドラム3の回転によりドラム3内の下方に溜まった洗濯物207を持ち上げて、ドラム3内の上方から落下させることにより、洗濯物207に機械的な力を与えてたたき洗いをする。ドラム径が大きいほど、広範囲の散布とたたき洗いの相乗効果が得られ、本洗い工程の時間を短縮できる。
【0038】
また必要に応じて、前記本洗い工程は、第1本洗い工程および前記第1本洗い工程の後に実行される第2本洗い工程を有し、第1本洗い工程の終了時に給水して前記第2本洗い工程の水量は、前記第1本洗い工程の水量よりも多くして、前記第2本洗い工程の前記循環ポンプ18の循環流量は、前記第1本洗い工程での前記循環ポンプ18の循環流量よりも大きくする。さらに、前記第2本洗い工程の前記ドラム駆動のモータM10aの回転速度は、前記第1本洗い工程のモータM10aの回転速度よりも低くする。
【0039】
本洗い工程は主に、水量の少ない前洗い工程では洗いにくい衣類の内側やポケットの中などの汚れを洗濯物207から分離させるために行う。このためさまざまな汚れを落とすために、前述のように水量とドラム駆動のモータM10aの回転速度を変えた、少なくとも2つ以上の工程の組み合わせとするのがより好ましい。第1本洗い工程では、ドラム3の回転速度を高くするため、ドラム3の回転とともに上方に持ち上げられた洗濯物207は、全て下方に落ちずに、大半は遠心力により、ドラム3の内壁にへばり着いた状態で、ドラム3とともに回転している。そこに循環ポンプ18から洗濯水を散布させるので、洗濯物207への洗濯水の貫通流速を速くしている。これにより、汚れを洗濯物から溶け出しやすくしている。これに続く第2本洗い工程では、ドラム3の回転速度を第1本洗い工程よりも低くして、遠心力を弱めて前述の洗濯物207のドラム3へのへばりつきを極力抑えて、ドラム3の上方から下方に叩き落すたたき洗いを重視した工程としている。これにより、洗濯物207に機械力を作用させることで、主に疎水性の汚れを落としやすくできる。洗濯物207をドラム3の上方から下方に叩き落とす際に、ドラム3の下方に停留している洗濯水の水位を高くして、かつ循環水量も多くすることで、必要以上に洗濯物207どうしが直接ぶつかり合って、繊維を圧迫させることを防ぐこともできる。
【0040】
すすぎ工程では、排水弁V1を開けて、洗濯水を排水した後、排水弁V1を閉じて、外槽2内に所定の水位まですすぎ水を給水する。その後、ドラム3を回転させて、洗濯物207とすすぎ水を攪拌してすすぐ。洗浄運転での温風生成時に、水冷媒熱交換器236aにて吸熱されて低温となった水は、このすすぎ工程内において、外槽2の内側やドラム3の外側の洗浄に用いる。より詳細な工程内容は、本実施例の運転工程の説明(後述)の中で詳述する。
【0041】
また、脱水工程においては、排水弁V1を開いて外槽2内のすすぎ水を排水した後、ドラム3を回転させて洗濯物207を遠心脱水する。脱水回転数は、洗濯物207のバランスがとれずにモータM10aの電流値が所定の上限を超えるなどしない限り、負荷に応じた設定回転数まで上昇させる。脱水回転数を上げて、ドラム3が高速回転すると、外槽2にも振動が伝わり、外槽2自身も僅かながら振動する。送風ダクト29は筐体1に固定されているため、乾燥フィルタ8と外槽2側面部をつなぐジャバラホース215が連動して、振動の一部を吸収する。
【0042】
乾燥工程では、再びヒートポンプ230を駆動させて、乾燥空気をドラム3内に送る。
図7は本発明の実施形態に係るヒートポンプの乾燥における高温低湿の温風生成時のシステムフロー図である。乾燥時は、圧縮機237からの高温高圧冷媒を凝縮器231に送り、第1膨張弁232で低圧とした後に蒸発器233で吸熱させて圧縮機237の吸込側に戻す構成とする。即ち、熱収支を空気側からみると、蒸発器233で冷却除湿され、その熱量分と圧縮機237での冷媒の断熱圧縮仕事当量分を、凝縮器231にて与えられて温風となる。運転中は、負荷レベルに応じてより少ない消費電力量と乾燥度、仕上がりの良さを両立できるように、気流の温湿度の最適化を行う。ここで乾燥度とは、完全に乾燥させた布本来の質量を試験終了後の布の質量で除した値を百分率表示したものである。乾燥の前半は、布表面での蒸発速度が支配的となる定率乾燥であるため、低湿度の循環空気を効率よく作るヒートポンプ運転が好ましい。乾燥後半は、布内部に残留する水分を蒸発させる減率乾燥となるため、前半よりも温風温度を確保して布内部まで熱を伝え易くするのが好ましい。
【0043】
なお、乾燥時間をより短縮させたい場合には、送風ダクト29内の蒸発器233上流側に設けた開閉機構204の開口量を調節して、送風ダクト29内の循環空気と筐体1内に取り込まれている外気とを入れ替える。本来、乾燥速度を上げるには、ドラム3とヒートポンプ230間の循環風量を増やす必要があるが、そのために必要とする除湿能力に従って、ヒートポンプ230の冷却能力も上げる必要がある。冷却能力を上げるには、冷媒循環量を増やす必要があり、これにより圧縮機237での断熱圧縮仕事が増える。凝縮器熱量と断熱圧縮仕事の熱当量の和と、冷却能力との差が大きくなり、循環風量の温度レベルが上がり続けるため、強制的に放熱させる必要がある。そこで、循環風量の一部を外気と入れ替えることで、循環風量の温度レベルの上昇を抑える。
【0044】
乾燥終了後は、排水孔240側の圧力より排水ホース26側の圧力を高く保ちながら、水封じを破らない圧力レベルまで送風ファン20の回転数を下げて、給水電磁弁16を開いて水を流し、排水トラップ202の水封じを回復させて乾燥工程終了となる。
【0045】
以上のように、洗濯から乾燥までの運転が可能な洗濯乾燥機や洗濯を行う洗濯機によれば、洗濯水の洗浄温度を、乾燥用のヒートポンプ230の凝縮器231の一部として水−冷媒熱交換器236を設けて温水を作ることで、効率よく昇温できる。このとき、送風ダクト29内に筐体1内を介して外気を取り込み、外気のもつ潜熱相当分の熱量を温水生成に利用するため、ドラム3内を横切らせて排水孔240へ排気させる外気は、ドラム3内を冷やす心配もなく、さらに洗濯乾燥機の周囲に排気しないので、周囲環境も冷やしたり乾燥気味にしてしまう心配がない。なお乾燥工程時には、従来どおり、送風ダクト29内の放熱器231をヒートポンプ230の凝縮器とし、第1膨張弁232を介して冷媒が流れる熱交換器233を蒸発器とすることで、除湿空気をドラム3内に送ることができる。
【0046】
次に制御装置100および駆動装置M10の構成について説明する。
図8は、本発明の実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機の制御装置100の構成を示すブロック図である。制御装置100(運転制御手段)は、モータM10a(駆動装置M10)および給水ユニット15およびヒートポンプ230を制御して洗い運転を実行可能にすると共に、電導度検出手段4で検出した外槽2内の液体の電導度から電導度の算出、液体内に含有している柔軟仕上剤の有無の判定(基準濃度に対する判別)、脱水工程の短縮の判定、すすぎ工程の短縮の判定等を行う装置である。
図8に示すように、制御装置100は、マイクロコンピュータ(以下「マイコン」と称する)110、駆動回路、操作スイッチ12,13や電導度検出手段4や各種センサからの入力回路等で構成される。マイコン110は、使用者の操作や、洗濯工程、乾燥工程での各種情報信号を受ける。マイコン110は、駆動回路を介して、駆動装置M10(モータM10a)、給水電磁弁16、排水弁V1、送風ファン20等に接続され、これらの開閉、回転、通電を制御する。また、使用者にドラム式洗濯機に関する情報を知らせるために、表示器14やブザー(図示せず)等を制御する。
【0047】
図2に示すように、駆動装置M10は、ドラム3を回転駆動させる装置であり、外槽2の底面の外側中央に設置されている。駆動装置M10は、モータM10aと取付具M10b(
図2参照)とを有している。モータM10aの回転軸は、外槽2を貫通し、ドラム3に結合されている。モータM10aは、その回転を検出するホール素子あるいはフォトインタラプタなどで構成される回転検出装置28と、モータM10aに流れる電流を検出するモータ電流検出装置(図示省略)とを備えている。
【0048】
このように制御装置100は、マイコン110を中心に構成される。マイコン110は、運転パターンデータベース111と、工程制御部112と、回転速度算出部113と、衣類重量算出部114と、電導度測定部115と、洗剤量・洗い時間決定部116と、濁度判定部117と、閾値記憶部118と、を備えている。
【0049】
操作スイッチ12,13は、使用者により運転コースを入力することができるように構成されており、入力された信号をマイコン110に出力する。また、水位センサ34は、外槽2の内部に貯留された水の水位を検出することができるようになっており、検出された信号をマイコン110に出力する。
【0050】
温度センサT1は、外槽2の下部(例えば、排水口21)に設けられ、外槽2の内部に貯留された水の温度を検出することができるようになっている。温度センサT2は、送風ファン20の吸気側に設けられ、ヒートポンプから送風ファン20に吸気される空気の温度を検出することができる。温度センサT3は、送風ファン20の排気側かつ補助ヒータ213よりも下流側に設けられ、送風ファン20からドラム3内に吹き出される空気の温度を検出することができるようになっている。温度センサT4は、乾燥フィルタ8下流側且つヒートポンプの熱交換器の上流側に設けられ、ドラムからヒートポンプに戻る循環空気の温度を検出することができる。なお、温度センサT1〜T4で検出された信号は、マイコン110に出力される。加速度センサ27は外槽2に取り付けられ、外槽2(ドラム3)の振動を検知する。加速度センサで検知された信号は、マイコン110に出力される。
【0051】
回転検出装置28は、例えばレゾルバ(回転角センサの一種)で構成され、モータM10aの回転を検出することができ、検出された信号はマイコン110に出力される。モータ電流検出装置25は、モータM10aの電流値を検出することができ、検出された信号は、マイコン110に出力される。電導度検出手段4は、外槽2の内部に貯留された水の電導度を検出することができ、検出された信号はマイコン110に出力される。
【0052】
マイコン110は、操作スイッチ12,13から入力された運転コースに対応する運転パターンを運転パターンデータベース111から呼び出し、洗濯、すすぎ、脱水、乾燥の何れかから開始する機能を有する。工程制御部112は、運転パターンデータベース111から呼び出された運転パターンに基づき、洗い工程、すすぎ工程、脱水工程、乾燥工程の各工程を運転制御する機能を有する。各工程において、工程制御部112は、表示器14、給水ユニット15、給水電磁弁16、排水弁V1を制御する機能を有する。また、工程制御部112は、モータ駆動回路121を介して駆動装置M10のモータM10aを駆動制御し、補助ヒータを設けた機種においては、温風ヒータスイッチ123のON/OFFを制御することにより温風ヒータ213への通電を制御し、補助ヒータスイッチ122のON/OFFを制御することにより補助ヒータ240への通電を制御する。ファン駆動回路124を介して送風ファン20を制御し、循環ポンプ駆動回路125を介して循環ポンプ18を駆動制御する機能を有する。さらに、循環ポンプ出口に設けた流路切替弁の駆動回路にて流路切替弁240の切替えを行う。圧縮機駆動回路126を介して圧縮機237を制御し、第1膨張弁駆動回路127を介して第1膨張弁232の開度を制御し、第2膨張弁駆動回路128を介して第2膨張弁235の開度を制御する。ヒートポンプの構成要素に含まれる2方弁234a〜234cも、2方弁制御回路129を介して、運転パターンに応じて予めくみあわせた切替動作を制御する。
【0053】
ここで、循環ポンプ18は、排水口21から吸い込んだ水を窪み部54の循環吐出口54bから吐出させる洗剤溶かし動作と、排水口21から吸い込んだ水を外槽2の開口部に設けられた散水ノズル231からドラム3の内部に吐出させる循環動作と、を切り替えて
行うことができるようになっている。なお本実施例においては、循環ポンプ18の回転方向を切り替えることにより回転方向に応じて連通する吐出口を切り替えることができる構成としている。
【0054】
回転速度算出部113は、モータM10aの回転を検出する回転検出装置28からの検出値に基づき、モータM10aの回転速度を算出する機能を有する。衣類重量算出部114は、回転速度算出部113で算出された回転速度と、モータ電流検出装置25の検出値に基づいて、ドラム3(
図2参照)内の洗濯物207の重量を算出する機能を有する。洗濯物207の重量が増加することによりドラム3を回転させるための負荷が大きくなり、モータM10aに流れるモータ電流が多く必要になることから、モータM10aのモータ電流と回転速度により洗濯物207の重量を算出することができる。
【0055】
電導度測定部115は、水受け部54に設けた電導度検出手段4からの検出値を用いて水道水、洗濯水の電導度を測定する機能を有する。洗剤量・洗い時間決定部116は、電導度測定部115が測定した電導度等に基づいて、洗剤量および洗濯物のすすぎ時間を決定する機能を有するものであり、詳細は後述する。
【0056】
濁度判定部117は、電導度測定部115が測定した電導度に基づいて、衣類の汚れ具合(以下、濁度とする)を判定する機能を有する。閾値記憶部118は、濁度判定部117が衣類の汚れ具合(濁度)を判定する際に用いる閾値を記憶する機能を有する。ちなみに、濁度判定部117および閾値記憶部118は、本実施例では、以下のように本洗い工程時の制御に使用している。第1本洗い工程の前後において、電導度測定部115により、洗浄水の電導度EC1を計測する。なお、電導度を計測する際は、給水電磁弁16による外槽2への給水、循環ポンプ18による循環、モータM10aによるドラム3の回転は停止されていることが望ましい。濁度判定部117において、第1本洗い工程の前後で測定した電導度EC1の差が、閾値記憶部118に記憶された閾値以上か否かを判定する。もし否(閾値よりも低い)であれば汚れが少ないと判断し、以上であれば汚れが多いと判断して、その後の第2本洗い工程に進む。第2本洗い工程は、前述のように第1本洗い工程よりも水位を高くして、さらに循環ポンプ18の循環流量も多くしたたたき洗いとしている。即ち、洗濯物207がドラム3上方に持ち上げられて、下方にたたき落とされた際に、洗濯物207どうしがぶつかり合って、繊維を圧迫するのを防いでいる。しかしながらこの工程が長いほど、洗濯物207のごわつきは増大する傾向にある。したがって、汚れが比較的少ない場合は、第2本洗い工程を極力短くしたい。そこで、汚れが少ないと判断できた場合には、第2本洗い工程の運転時間を短く調整する。なお、濁度の判定は、他の工程間の切り替えタイミングや各工程の運転時間の見直しにも使用できる。
【0057】
次に、第1実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機の運転工程について説明する。
図9は、第1実施形態例に係るドラム式洗濯乾燥機における洗濯運転(洗い〜すすぎ〜脱水)の運転工程を説明する工程図である。
【0058】
ステップS1において、工程制御部112は、ドラム式洗濯乾燥機の運転工程のコース選択の入力を受け付ける(コース選択)。ここで、使用者は、ドア9を開けて、ドラム3の内部に洗濯する洗濯物207を投入し、ドア9を閉じる。そして、使用者は、操作スイッチ12,13を操作することにより、運転工程のコースを選択し入力する。操作スイッチ12,13が操作されることにより、選択された運転工程のコースが工程制御部112に入力される。工程制御部112は、入力された運転工程のコースに基づいて、運転パターンデータベース111から対応する運転パターンを読み込み、ステップS2に進む。なお、以下の説明において、40℃温水洗濯コース(洗い〜すすぎ2回〜脱水)が選択されたものとして説明する。
【0059】
ステップS2において、工程制御部112は、ドラム3に投入された洗濯物の重量(布量)を検出する工程を実行する(布量センシング)。具体的には、工程制御部112は、モータM10aを駆動してドラム3を回転させるとともに、衣類重量算出部114が注水前の洗濯物207の重量(布量)を算出する。
【0060】
ステップS3において、工程制御部112は、洗剤量・運転時間を算出する工程を実行する(洗剤量運転時間算出)。具体的には、工程制御部112は、給水電磁弁16を制御して、外槽2の給水口2aに直接給水する。電導度測定部115は、給水された水の電導度(硬度)を検出する。また、センサT1で、給水された水の温度を検出する。その後、給水電磁弁16を制御して、外槽2への給水を終了する。
【0061】
洗剤量・洗い時間決定部116は、ステップS2で検出した布量、水の電導度(硬度)、水の温度に基づいて、マップ検索により、投入する洗剤量と運転時間を決定する。そして、工程制御部112は、決定された洗剤量・運転時間を表示器14に表示する。ここで洗剤量を決定するマップは、温水洗濯コース専用のマップとしてもよい。温水洗濯コースでは洗濯物207が保水する洗剤液の濃度が、汚れ落ちに大きく影響する。もし、ドラム径とモータトルクのバランスから機械力の強い場合には、通常の洗濯コースにおいては、洗剤量が少なくて済む。しかしながら、本コースでは、水量の少ないままで洗浄温度を上げるので、移染(色移り)防止の観点から布のこすれあいを抑えるために、機械力の依存を小さくする。このため温水洗濯コース時には、洗剤量が逆に少なすぎてしまう場合では、通常の機械力に応じた濃度レベルとしておくべきである。なお、外槽2に給水して水の電導度(硬度)および水温を検出するものとして説明したが、これに限られるものではない。例えば、前回運転時の水の電導度(硬度)および水温をマイコン110の記憶部(図示せず)に記憶しておき、それを用いてもよい。
【0062】
ステップS4において、工程制御部112は、洗剤投入待ち工程を実行する(洗剤投入待ち工程)。例えば、工程制御部112は、所定時間待機して、ステップS5に進む。なお、工程制御部112は、洗剤投入部7の開閉を検知する手段(図示せず)により、洗剤投入部7が開けられた後に閉じられた場合、洗剤が投入されたものとして、ステップS5に進む構成であってもよい。
【0063】
ステップS5において、工程制御部112は、洗剤溶かし工程を実行する(洗剤溶かし工程)。例えば、工程制御部112は、給水電磁弁16を制御して、給水管P1を介して粉末洗剤投入室73および液体洗剤投入室74に給水する。粉末洗剤投入室73および液体洗剤投入室74の洗剤と水は、給水経路(図示せず)を介して、外槽2の水受け部54に流入する。所定水量まで給水すると、工程制御部112は、給水電磁弁16を制御して、給水を停止させる。そして、工程制御部112は、洗剤溶かし動作を実行する(洗剤溶かし動作)。具体的には、工程制御部112は、循環ポンプ18を制御して、排水口21から吸い込んだ水と洗剤を、水受け部54の循環吐出口54bから吐出させる。循環吐出口54bから吐出された水と洗剤は、水受け部54を流れ、排水口21へと向かい、循環するようになっている。これにより、水と洗剤が攪拌され、洗剤が水に溶かされるようになっている。所定時間(例えば、10秒)が経過した後、生成した高濃度洗剤液を洗濯物207に散布する前に、ヒートポンプ230にて温める。具体的には循環ポンプ18の回転方向を逆転させて、散水ノズル223側に通じる循環ポンプ18の吐出口から吐出させ、さらにその先に設けてある流路切替弁238を水―冷媒熱交換器236側に制御することで、高濃度洗剤液を水―冷媒熱交換器236にて温める。ただしこの動作(高濃度洗剤液を温める動作)は、洗剤を溶かした水量が極端に少ない時などは、省略しても何ら差し支えない。その後、所定時間の経過もしくは所望の水温に達したと判断できた場合は、流路切替弁238を散水ノズル223に通じる側に切り替えて、外槽2上部の散水ノズル223までくみ上げて、散布する。少ない高濃度洗剤液を、極力、洗濯物207に均一に散布するために、散布直前にドラム3を高速で回転させて、遠心力でドラム3内面に洗濯物207を張り付かせておく。ドラム3の回転を保ちながら、循環ポンプ18で外槽2上部の散水ノズル231までくみ上げた高濃度洗剤液を散布する。高濃度洗剤液は散水時の速度エネルギーと、洗濯物207に到達してから働く遠心力により、ドラム3内壁に向かって洗濯物207に浸透していく。またドラム3は洗濯物207が遠心力で張り付く回転速度で回っているため、たとえばドラム3を80r/minで回した場合、散布時間が20秒でも、ドラム上の同一点に対して約26回散水された水を浴びせることができる。
【0064】
ステップS6において、工程制御部112は、前洗い洗浄工程を実行する(前洗い洗浄工程)。前洗い洗浄工程では、高濃度洗剤液を散布された洗濯物207をドラム3の回転により上方に持ち上げた後、重力により下方へ落下させるいわゆるたたき洗いを基本とする。このたたき洗い動作を繰り返していくと、洗濯物207から高濃度洗剤液が搾取され、外槽2底部の水受け部54に貯水される。ある程度貯水されたタイミングにおいてヒートポンプ230を駆動させて、水−冷媒熱交換器236に高濃度洗剤液を導入させて温める。温めた高濃度洗剤液を再び循環ポンプ18により、散水ノズル223から洗濯物207に散布させる。高濃度洗剤液の温度を上げることで、表面張力と粘度をさげることができて、さらに温められた高濃度洗剤液の散布により、洗濯物207の繊維を膨潤させるので、高濃度洗剤液の繊維内部への浸透をより促進できる。これにより、繊維から汚れを効率よく分離できる。分離できた汚れは、保水された高濃度洗剤液内に迅速に分散されるので、再び凝集して再付着することを防ぐことができる。工程を開始してから所定時間が経過すると、給水電磁弁16を制御して、外槽2内の洗濯水の水位を上昇させる。そして外槽2内の洗濯水の水位が、洗剤溶かし工程時の水位WL0に対して所定の水位WL1(WL0<WL1)まで上昇すると、給水を停止させ、前洗い工程を終了し、ステップS7に進む。なお、このときの給水もヒートポンプ230を駆動させて、給水電磁弁16から水−冷媒熱交換器236へ給水して、温めた後に外槽2へ送水してもよい。
【0065】
ステップS6の前洗い工程が終了すると、工程制御部112は、本洗い工程を実行する。ここで、本洗い工程もとは、ドラム3の回転によりドラム3内の下方に溜まった洗濯物207を持ち上げて、ドラム3内の上方から落下させることにより、洗濯物207に機械的な力を与えてたたき洗いを基本とする工程である。本洗い工程は、さらにステップS7の本洗い1工程(第1本洗い工程)と、ステップS8の本洗い2工程(第2本洗い工程)と、で構成されている。
【0066】
ステップS7において、工程制御部112は、第1本洗い工程を実行する(第1本洗い工程)。具体的には、工程制御部112は、循環ポンプ18を所定の流量PF1となるように制御して、排水口21から吸い込んだ洗濯水を外槽2の開口部に設けられた散水ノズル231からドラム3の内部に散水させるとともに、モータM10aを制御してドラム3を所定の回転速度DR1で回転させることにより、ドラム3の内部の洗濯物207をたたき洗いする。このとき水温が所望の温度よりも低くなる場合には、適宜、流路切替弁238を水−冷媒熱交換器236側に切り替えて、ヒートポンプ230を駆動させて水温を上げる。また、流路切替弁238を、水−冷媒熱交換器236側と散水ノズル223側に対して、ある流量配分で双方に流せる制御弁とすることで、ドラム3内への散水と温水生成(昇温)を連続的に行える構成としてもよい。
【0067】
また設定温度が高い場合や洗濯負荷が大きい場合にも本コースの選択を可とした場合には、送風ファン20出口部に補助ヒータ213を用いて、温水とともに温風をつくって洗濯物207自体も直接温めることで昇温させるのがよい。このときは小流量の循環ポンプ(図示せず)を別置し、水受け部54から汲み上げて送風ファン20出口近傍に散布することで、温風に液滴を混ぜて、洗濯物207に散布させてもよい。
【0068】
所定の時間(T1)が経過すると、工程制御部112は、第1本洗い工程を終了し、ステップS8に進む。ステップS8において、工程制御部112は、第2本洗い工程を実行する(第2本洗い工程)。具体的には、工程制御部112は、給水電磁弁16を制御して、所定の水位WL2(WL1<WL2)まで外槽2に給水する。このときの給水もヒートポンプ230を駆動させて、給水電磁弁16から水−冷媒熱交換器236へ給水して、温めた後に外槽2へ送水してもよい。また、工程制御部112は、循環ポンプ18を所定の流量PF2(PF1<PF2)となるように制御して、排水口21から吸い込んだ洗濯水を外槽2の開口部に設けられた散水ノズル231からドラム3の内部に散水させるとともに、モータM10aを制御してドラム3を所定の回転速度DR2(DR1>DR2)で回転させることにより、ドラム3の内部の洗濯物207をたたき洗いする。水温の調節に関しては、ステップS7の第1本洗い工程のときと同様にヒートポンプを駆動させて、水−冷媒熱交換器236において、断続もしくは連続的に温水生成(昇温)動作を取り入れる。所定の時間(T2)が経過すると、工程制御部112は、モータM10aおよび循環ポンプ18を停止させ、排水弁V1を開弁して外槽2内の洗濯水を排水する。
【0069】
ステップS9において、工程制御部112は、第1すすぎ工程を実行する(第1すすぎ工程)。例えば、第1すすぎ工程において、工程制御部112は、給水電磁弁16および排水弁V1を制御して、給水と排水を繰り返すとともに、モータM10aを制御してドラム3を回転させ、循環ポンプ18を制御して、排水口21から吸い込んだすすぎ水を外槽2の開口部に設けられた散水ノズル231からドラム3の内部に散水させて、衣類をすすぐ。そして、所定の時間が経過すると、工程制御部112は、モータM10aおよび循環ポンプ18を停止させ、排水弁V1を開弁して外槽2内のすすぎ水を排水する。
【0070】
ステップS10において、工程制御部112は、第2すすぎ工程を実行する(第2すすぎ工程)。例えば、第2すすぎ工程において、工程制御部112は、排水弁V1を閉弁し、給水電磁弁16を制御して、所定の水位まで外槽2に給水する。また、工程制御部112は、モータM10aを制御してドラム3を回転させ、循環ポンプ18を制御して、排水口21から吸い込んだすすぎ水を外槽2の開口部に設けた散水ノズル223からドラム3の内部に散水させて、洗濯物207をすすぐ。そして、所定の時間が経過すると、工程制御部112は、モータM10aおよび循環ポンプ18を停止させ、排水弁V1を開弁して外槽2内のすすぎ水を排水する。
【0071】
ステップS11において、工程制御部112は、脱水工程を実行する(脱水工程)。具体的には、工程制御部112は、排水弁V1を開弁させるとともに、モータM10aを制御してドラム3を本洗い工程時よりも高速で回転させ、洗濯物207を遠心脱水する。そして、所定の時間が経過すると、工程制御部112は、モータM10aを停止させ、排水弁V1を閉弁して、洗濯コース(洗い〜すすぎ〜脱水)を終了する。
【0072】
なお、ステップS7及びステップS8における本洗い工程においては、洗濯物207の黒ずみ、ごわつきを抑制させる運転特性としており、以下にそのメカニズムを中心に説明する。第1本洗い工程(ステップS7)の後に第2本洗い工程(ステップS8)を行うが、第2本洗い工程の水位WL2は、第1本洗い工程の水位WL1よりも高くなっている(WL1<WL2)。即ち、外槽2内の洗浄水の水量を増やすことにより、洗濯物207から剥がされた汚れを洗浄水に分散させることができ、洗濯物207から剥がされた汚れが再び洗濯物207に付着することにより生じる「洗濯物の黒ずみ」を抑制することができる。
【0073】
また、第2本洗い工程のドラム3の回転速度DR2は、第1本洗い工程のドラム3の回転速度DR1よりも遅くなっている(DR1>DR2)。ドラム3の回転速度DR2を回転速度DR1より遅くすることにより、ドラム3の回転によりドラム3内の下方に溜まった洗濯物207を持ち上げてドラム3内の上方から落下させる際、落下を開始する位置が低くなる。即ち、たたき洗いされる洗濯物207に加わる落下衝撃(機械力)が抑制され、「洗濯物のごわつき」を抑制することができる。また、水位WL2を高くすることによっても、落下衝撃(機械力)が抑制され、「洗濯物のごわつき」を抑制することができる。一方ドラム3の回転速度DR1は、遠心力によってドラム3内壁に張り付いた洗濯物207が、上方に持ち上げられるまでに、重力により全て剥がれ落ちてしまうよりも速い回転速度で回して(遠心力>重力)、すべての洗濯物に対して、たたき洗いのような落下をさせない運転としても、差支えない。即ち、たたき洗いを極力抑えつつ、通常の洗濯運転よりも多い循環量を洗濯物207に通過させることで、洗浄する運転としてもよい。しかしながら、たたき洗いによる洗浄性能が低下するおそれがあるが、これに対し、第2本洗い工程の循環ポンプ18の流量PF2を、第1本洗い工程の循環ポンプ18の流量PF1よりも大きくすることで(PF1<PF2)、水流による洗浄性能を確保させることができる。たとえば循環ポンプ18の循環流量は、30L/min以上80L/min以下とすることが望ましい。また、第1本洗い工程の運転時間(T1)と第2本洗い工程の運転時間(T2)は、第2本洗い工程の運転時間(T2)の方が第1本洗い工程の運転時間(T1)よりも長くなるように設定するのが望ましい(T1<T2)。このようにすることにより、「洗濯物のごわつき」をより抑制することができる。
【0074】
以上のように、第1実施形態例に係るドラム式洗濯乾燥機の運転工程によれば、周囲環境に影響を与えずに、さらにはドラム内の洗濯物も投入時の温度以下に冷却することを防いで、より少ない消費電力量で効率よく温水をつくることができ、洗浄性能を向上させることができる。さらに衣類の黒ずみと衣類のごわつきを抑制することができる。
【0075】
また温度に対して色落ち、色あせが気になる洗濯物や、加温により繊維の縮みが目立ってしまう洗濯物に関しては、通常の洗濯コースを選ぶことができる。この場合には消費電力量が少なくて済む。さらに、黒ずみが気になる白物や薄い柄物、ごわつきが気になるタオルなど以外の洗濯物で、どちらかというと節水を望む洗濯では、節水洗濯コースを選ぶことができる。この場合は、前記本洗い工程において水位を上げず、循環流量も、15〜20L/minに設定することで、洗濯全体の使用水量を抑えることができる。