特許第6698495号(P6698495)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6698495
(24)【登録日】2020年5月1日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】内燃機関用のローラリフタ
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/14 20060101AFI20200518BHJP
【FI】
   F01L1/14 E
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-201772(P2016-201772)
(22)【出願日】2016年10月13日
(65)【公開番号】特開2018-62900(P2018-62900A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2019年5月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000185488
【氏名又は名称】株式会社オティックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】柵木 清史
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−001706(JP,A)
【文献】 実公昭50−003863(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/00− 1/32
F01L 1/36− 1/46
F02M 39/00−71/04
F01M 1/00− 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダの内壁に対して摺動する摺動面を外周側に備えた筒状のリフタ本体と、
該リフタ本体に対して軸支ピンを介して回動可能に取り付けられると共に、回動するカムに当接するローラとを有し、
上記リフタ本体は、上記摺動面を備えた外周壁部と、該外周壁部の内側の空間を摺動方向に仕切る仕切壁部とを有し、
該仕切壁部は、上記外周壁部の内部空間を、上記摺動方向における上記ローラの配設側である下側の下方空間と、その反対側である上側の上方空間と、に仕切っており、
上記外周壁部には、上記上方空間と外周側とを繋ぐように貫通した連通孔が形成されており、
上記リフタ本体は、上記摺動面より径方向外側へ張り出した回り止め部を有し、該回り止め部の周囲に上記連通孔が隣接配置されており、
上記回り止め部は、上記摺動方向における上側から下側へ向かうにつれて外側に張り出すように形成されており、上記回り止め部の下側に上記連通孔が形成されている、内燃機関用のローラリフタ。
【請求項2】
シリンダの内壁に対して摺動する摺動面を外周側に備えた筒状のリフタ本体と、
該リフタ本体に対して軸支ピンを介して回動可能に取り付けられると共に、回動するカムに当接するローラとを有し、
上記リフタ本体は、上記摺動面を備えた外周壁部と、該外周壁部の内側の空間を摺動方向に仕切る仕切壁部とを有し、
該仕切壁部は、上記外周壁部の内部空間を、上記摺動方向における上記ローラの配設側である下側の下方空間と、その反対側である上側の上方空間と、に仕切っており、
上記外周壁部には、上記上方空間と外周側とを繋ぐように貫通した連通孔が形成されており、
上記リフタ本体は、上記摺動面より径方向外側へ張り出した回り止め部を有し、該回り止め部の周囲に上記連通孔が隣接配置されており、
上記連通孔は、2つ形成されており、一方の上記連通孔は、上記回り止め部の周囲に隣接配置され、他方の上記連通孔は、上記リフタ本体の中心軸を挟んで上記回り止め部の反対側に形成されている、内燃機関用のローラリフタ。
【請求項3】
上記回り止め部は、上記摺動方向における上側から下側へ向かうにつれて外側に張り出すように形成されており、上記回り止め部の下側に上記連通孔が形成されている、請求項に記載の内燃機関用のローラリフタ。
【請求項4】
上記連通孔は、上記リフタ本体の中心軸に対する形成位置が、上記軸支ピンの配設方向である軸支方向と上記摺動方向との双方に直交する前後方向の位置である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関用のローラリフタ。
【請求項5】
上記連通孔は、上記リフタ本体の中心軸に対して上記前後方向の双方の位置に形成されている、請求項に記載の内燃機関用のローラリフタ。
【請求項6】
上記連通孔は、上記上方空間側の開口部の少なくとも一部が、上記仕切壁部の上面と、上記摺動方向における同じ位置に配置されている、請求項1〜のいずれか一項に記載の内燃機関用のローラリフタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエンジン等に使用する内燃機関のローラリフタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のエンジン等の内燃機関において燃料供給ポンプに用いるポンプリフタ等として、特許文献1に開示されているように、回動するカムに当接する部分をローラにて構成したローラリフタが用いられる。ローラリフタは、外周側に摺動面を備えたリフタ本体と、リフタ本体に回動可能に取り付けられたローラとを有する。かかるローラリフタは、カムとの摩擦抵抗を小さくすることができ、また、カムとの接触面の耐摩耗性を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−138596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ローラリフタには、以下の課題がある。
すなわち、シリンダ内においてローラリフタが往復運動する際に、リフタ本体が若干傾いて、シリンダの内壁面に当たるという現象が生じることがある。これにより、リフタ本体が部分的に摩耗し、また、スラップ音が発生する。つまり、カムのノーズ部がローラの表面を通過するたびに、リフタ本体の傾き方向が変化する。それゆえ、カムの回転に伴い、リフタ本体とシリンダの内壁面との当接が繰り返され、上記の摩耗及びスラップ音の原因となる。
【0005】
このようなリフタ本体の摩耗やスラップ音を低減するために、リフタ本体とシリンダの内壁面との間における潤滑油の供給量を増やすことが考えられる。ところが、内燃機関の設計上、リフタ本体とシリンダの内壁面との間への潤滑油の供給量を単純に増やすことは困難な場合もある。その一方で、ローラへの潤滑油の供給は充分に行われることが多い。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、リフタ本体の摩耗及びスラップ音を抑制することができる、内燃機関用のローラリフタを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、シリンダの内壁に対して摺動する摺動面を外周側に備えた筒状のリフタ本体と、
該リフタ本体に対して軸支ピンを介して回動可能に取り付けられると共に、回動するカムに当接するローラとを有し、
上記リフタ本体は、上記摺動面を備えた外周壁部と、該外周壁部の内側の空間を摺動方向に仕切る仕切壁部とを有し、
該仕切壁部は、上記外周壁部の内部空間を、上記摺動方向における上記ローラの配設側である下側の下方空間と、その反対側である上側の上方空間と、に仕切っており、
上記外周壁部には、上記上方空間と外周側とを繋ぐように貫通した連通孔が形成されており、
上記リフタ本体は、上記摺動面より径方向外側へ張り出した回り止め部を有し、該回り止め部の周囲に上記連通孔が隣接配置されており、
上記回り止め部は、上記摺動方向における上側から下側へ向かうにつれて外側に張り出すように形成されており、上記回り止め部の下側に上記連通孔が形成されている、内燃機関用のローラリフタにある。
本発明の他の態様は、シリンダの内壁に対して摺動する摺動面を外周側に備えた筒状のリフタ本体と、
該リフタ本体に対して軸支ピンを介して回動可能に取り付けられると共に、回動するカムに当接するローラとを有し、
上記リフタ本体は、上記摺動面を備えた外周壁部と、該外周壁部の内側の空間を摺動方向に仕切る仕切壁部とを有し、
該仕切壁部は、上記外周壁部の内部空間を、上記摺動方向における上記ローラの配設側である下側の下方空間と、その反対側である上側の上方空間と、に仕切っており、
上記外周壁部には、上記上方空間と外周側とを繋ぐように貫通した連通孔が形成されており、
上記リフタ本体は、上記摺動面より径方向外側へ張り出した回り止め部を有し、該回り止め部の周囲に上記連通孔が隣接配置されており、
上記連通孔は、2つ形成されており、一方の上記連通孔は、上記回り止め部の周囲に隣接配置され、他方の上記連通孔は、上記リフタ本体の中心軸を挟んで上記回り止め部の反対側に形成されている、内燃機関用のローラリフタにある。
【発明の効果】
【0008】
上記ローラリフタにおいては、上記外周壁部に、上方空間と外周側とを繋ぐように貫通した連通孔が形成されている。そのため、上方空間に到達した潤滑油を、リフタ本体の外周側へ導くことができる。つまり、ローラリフタにおいては、ローラへの潤滑油の供給は充分に行われることが多く、この潤滑油が周辺に飛散する。飛散した潤滑油の一部は、リフタ本体の上方空間に移動し、場合によっては上方空間に溜まることもある。その上方空間における潤滑油を、上記連通孔を介して、リフタ本体の外周側へ供給することができる。
【0009】
そうすると、リフタ本体の摺動面とシリンダの内壁との間への潤滑油の供給量を増やすことができる。つまり、特に当該部分へ潤滑油を直接供給するなどの設計を行うことなく、リフタ本体の摺動面とシリンダの内壁との間に潤滑油を集めることができる。その結果、リフタ本体とシリンダの内壁との間の衝突を緩和し、リフタ本体の摩耗及びスラップ音を低減することができる。
【0010】
以上のごとく、上記態様によれば、リフタ本体の摩耗及びスラップ音を抑制することができる、内燃機関用のローラリフタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1における、ローラリフタの側面図。
図2】実施形態1における、ローラリフタの縦断面図。
図3図1のIII視図。
図4図1のIV視図。
図5図1のV−V線矢視断面図。
図6図1のVI−VI線矢視断面図。
図7】実施形態1における、ローラリフタをポンプリフタとして用いた場合の摺動機構を示す断面説明図。
図8】実施形態1における、潤滑油の流れを示す説明図。
図9】実施形態1における、リフタ本体の傾斜を示す説明図。
図10】実施形態1における、リフタ本体の傾斜を示す他の説明図。
図11】実施形態2における、ローラリフタの縦断面図。
図12参考形態における、ローラリフタの縦断面図。
図13参考形態における、ローラリフタの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記内燃機関用のローラリフタは、例えば、自動車のエンジン等の内燃機関における燃料供給ポンプに用いるポンプリフタとして用いることができる。
【0013】
上記連通孔は、上記リフタ本体の中心軸に対する形成位置が、上記軸支ピンの配設方向である軸支方向と上記摺動方向との双方に直交する前後方向の位置であることが好ましい。この場合には、より効果的に、リフタ本体の摩耗及びスラップ音を抑制することができる。すなわち、リフタ本体は、シリンダ内における往復運動に伴って、軸支ピンに平行な軸を中心に傾斜しようとする。したがって、リフタ本体とシリンダの内壁との接触は、上記前後方向において生じることとなる。それゆえ、リフタ本体の中心軸に対して前後方向の位置に連通孔が形成されていることにより、当該位置に潤滑油を効率的に供給することができる。その結果、より効果的に、リフタ本体の摩耗及びスラップ音を抑制することができる。
【0014】
また、上記連通孔は、上記リフタ本体の中心軸に対して上記前後方向の双方の位置に形成されていることがより好ましい。この場合には、上述のようにリフタ本体とシリンダの内壁との接触が生じやすい前後方向の双方の位置に潤滑油を効率的に供給することができる。その結果、より効果的に、リフタ本体の摩耗及びスラップ音を抑制することができる。
【0015】
また、上記連通孔は、上記上方空間側の開口部の少なくとも一部が、上記仕切壁部の上面と、上記摺動方向における同じ位置に配置されていることが好ましい。この場合には、上方空間における潤滑油を、円滑に連通部を通じてリフタ本体の外周側へ導くことができる。
【0016】
また、上記リフタ本体は、上記摺動面より径方向外側へ張り出した回り止め部を有し、該回り止め部の周囲に上記連通孔が隣接配置されていることが好ましい。この場合には、回り止め部の加工に伴って、連通孔を形成することができる。それゆえ、ローラリフタの生産効率を向上させることができる。
【0017】
また、上記回り止め部は、上記摺動方向における上側から下側へ向かうにつれて外側に張り出すように形成されており、上記回り止め部の下側に上記連通孔が形成されていることが好ましい。この場合には、連通孔からリフタ本体の外周側へ円滑に潤滑油を導くことができる。
【0018】
また、上記連通孔は、2つ形成されており、一方の上記連通孔は、上記回り止め部の周囲に隣接配置され、他方の上記連通孔は、上記リフタ本体の中心軸を挟んで上記回り止め部の反対側に形成されていることが好ましい。この場合には、回り止め部の加工に伴って、連通孔の一方を形成することができるため、生産効率を向上させやすい。さらに、リフタ本体の摺動面の互いに反対側の2か所に向かって開口させることができる。そのため、潤滑油を摺動面に充分に導くことができる。
【0019】
また、上記仕切壁部は、その上面の位置が、上記ローラリフタ全体の重心よりも、上記摺動方向の上側であることが好ましい。この場合には、連通孔から摺動面に導かれる潤滑油を、リフタ本体とシリンダの内壁との接触部に効率的に導くことができる。すなわち、仕切壁部の上面の位置がローラリフタの重心よりも上側にある場合、リフタ本体の下端が比較的大きく揺動することとなる。そうすると、リフタ本体の下端が特に強くシリンダの内壁に当接することとなる。一方、連通孔から摺動面に導かれる潤滑油は、摺動面の下端に向かって垂れるため、摺動面の下端へ導かれやすい。その結果、リフタ本体の下端とシリンダの内壁との当接部へ潤滑油を効率的に導くことができるため、より効果的に、リフタ本体の摩耗及びスラップ音を抑制することができる。
【0020】
なお、上記仕切壁部には、貫通孔が形成されていないことが好ましい。すなわち、上方空間における潤滑油が直接下方空間へ導かれることがない構成となっていることが好ましい。これにより、上方空間における潤滑油を、効率的に、連通孔を通じて摺動面へ導くことができる。
【0021】
(実施形態1)
内燃機関用のローラリフタの実施形態につき、図1図7を参照して説明する。
本実施形態のローラリフタ1は、筒状のリフタ本体2と、リフタ本体2に対して軸支ピン4を介して回動可能に取り付けられたローラ3とを有する。図1図6に示すごとく、リフタ本体2は、図7に示すごとく、シリンダ5の内壁51に対して摺動する摺動面210を外周側に備えている。ローラ3は、回動するカム6に当接する。
【0022】
図2に示すごとく、リフタ本体2は、摺動面210を備えた外周壁部21と、外周壁部21の内側の空間を摺動方向Zに仕切る仕切壁部22とを有する。
仕切壁部22は、外周壁部21の内部空間を、摺動方向Zにおけるローラ3の配設側である下側の下方空間201と、その反対側である上側の上方空間202と、に仕切っている。
【0023】
図2図4図6に示すごとく、外周壁部21には、上方空間202と外周側とを繋ぐように貫通した連通孔23が形成されている。
【0024】
図2図5に示すごとく、ローラ3は、リフタ本体2における下方空間201に配置されている。ただし、ローラ3の一部は、外周壁部21の下端よりも下方に突出している。また、図5に示すごとく、リフタ本体2は、軸支ピン4を支持する一対の支持部24を有する。また、軸支ピン4は、一対の支持部24に設けた支持孔241に両端部40を嵌入すると共にかしめ固定されている。そして、図2に示すごとく、ローラ3は、軸支ピン4にベアリング41を介して回転可能に取り付けられている。なお、図5においては、ベアリングを省略してある。
【0025】
図6に示すごとく、連通孔23は、リフタ本体2の中心軸Cに対する形成位置が、軸支ピン4の配設方向である軸支方向Xと摺動方向Zとの双方に直交する前後方向Yの位置である。本実施形態においては、連通孔23は、2つ形成されている。そして、連通孔23は、リフタ本体2の中心軸Cに対して前後方向Yの双方の位置に形成されている。すなわち、摺動方向Zから見たとき、中心軸Cに直交する直線が2つの連通孔23を通過するように、2つの連通孔23が配置されている。
【0026】
図1図3図6に示すごとく、リフタ本体2は、摺動面210より径方向外側へ張り出した回り止め部25を有する。回り止め部25の周囲に連通孔23が隣接配置されている。回り止め部25は、摺動方向Zにおける上側から下側へ向かうにつれて外側に張り出すように形成されている。回り止め部25の下側に連通孔23が形成されている。
【0027】
回り止め部25は、筒状のリフタ本体2の外周壁部21の一部を打ち抜くように鍛造成形してなる。すなわち、回り止め部25は、前後方向Yから見た形状において、図3に示すごとく、長方形状の上辺以外の輪郭を周囲から切り離すように、外周側へ突出している。これに伴い、リフタ本体2における回り止め部25の下側に、外周壁部21を貫通する開口部が形成される。この開口部が、連通孔23の一つとなる。
【0028】
本実施形態においては、図2図4に示すごとく、連通孔23は、2つ形成されている。一方の連通孔231は、回り止め部25の周囲に隣接配置されている。他方の連通孔232は、リフタ本体2の中心軸Cを挟んで回り止め部25の反対側に形成されている。この連通孔232は、例えば、ドリル等を用いて外周壁部21を加工することにより、形成することができ、例えば、円形状とすることができる。ただし、連通孔232の形状は、特に限定されるものではない。
【0029】
図2に示すごとく、連通孔23は、上方空間202側の開口部の少なくとも一部が、仕切壁部22の上面と、摺動方向Zにおける同じ位置に配置されている。本実施形態においては、2つの連通孔23は、いずれも、仕切壁部22の上面と、摺動方向Zにおける同じ位置に配置されている。
また、連通孔23は、その下端面が前後方向Yに平行に形成されている。そして、連通孔23の下端面が、仕切壁部22の上面と同じ摺動方向Zの位置に形成されている。
【0030】
仕切壁部22は、その上面の位置が、ローラリフタ1全体の重心よりも、摺動方向Zの上側である。また、仕切壁部22には、貫通孔が形成されていない。
【0031】
図1図4に示すごとく、摺動面210は、回り止め部25よりも上方に形成された上方摺動面212と、回り止め部25よりも下方に形成された下方摺動面211とに分割されている。
そして、上方摺動面212と下方摺動面211との問に、摺動面210よりも径方向内側にくびれたくびれ部213が形成されている。
【0032】
また、図1図3に示すごとく、くびれ部213から回り止め部25が張り出している。この回り止め部25は、回り止め部25の輪郭の一部において、リフタ本体2の一部を打ち抜いて径方向外側へ張り出させるように形成されている。
また、回り止め部25の下端部は、摺動面210よりも径方向外側へ突出している。これにより、回り止め部25の下端面250及び一対の側端面251の一部が、くびれ部213から露出する。
また、リフタ本体2は、略円筒形状をなし、摺動面210は摺動方向Zに直交する断面の形状が真円、又は真円の一部によって構成されている。
【0033】
また、摺動面210のうち、下方摺動面211は、リフタ本体2の下端部付近から中央部付近まで形成されており、上方摺動面212は、リフタ本体2の前端部付近に形成されている。上方摺動面212は、リフタ本体2の外周面の全周にわたり形成されている。一方、下方摺動面211は、リフタ本体2の外周面の周方向の一部に形成されている。
【0034】
そして、上方摺動面212と下方摺動面211との間に、くびれ部213が形成されている。くびれ部213は、摺動方向Zの長さが上方摺動面212よりも短く、下方摺動面211よりも長い。また、くびれ部213は、摺動面210に対して例えば約100μm以上内側に窪んでいる。
【0035】
また、リフタ本体2の上端部と下端部とには、それぞれ面取り部214が形成されている。
また、一対の支持部24は、リフタ本体2の下端部からくびれ部213の下端部の下側まで形成されている。一対の支持部24は、その外側面を互いに平行な平坦面として形成してなる。支持部24の外側面は、軸支方向Xに垂直な面となっている。また、支持部24の外側面は、摺動面210よりも中心軸Cに近い位置に配置されている。
【0036】
本例のローラリフタ1は、例えば、図7に示すごとく、自動車のエンジン等の内燃機関における燃料供給ポンプ7に用いるポンプリフタとして用いることができる。
そして、本例におけるローラリフタ1は、図7に示すように、摺動面210を備えたリフタ本体2が、例えば、燃料供給ポンプ7におけるシリンダ5の内壁51に対して摺動し、かつローラ3が回動するカム6に当接するように取付られる。
【0037】
燃料供給ポンプ7は、レシプロエンジンのカムシャフト61に設けた燃料用のカム6の回転に同調して、燃料タンク(図示略)から供給される燃料Fを加圧して、この加圧した燃料Fをインジェクタ(図示略)へ供給するように構成されている。
燃料供給ポンプ7において、ポンプリフタ(ローラリフタ1)は、カム6の回転を受けてローラ3を従動回転させながら、レシプロエンジンのシリンダヘッド73に設けたシリンダ5内を摺動するよう構成してある。
【0038】
ポンプリフタ(ローラリフタ1)は、シリンダヘッド73に摺動可能に配置されたプランジャ75の下端部751に当接して、プランジャ75を摺動させるよう構成されている。これにより、プランジャ75の上端部752によって、シリンダヘッド73に形成した加圧室76内の燃料Fが加圧される。加圧室76は、燃料タンク71とインジェクタ72とを連通するようシリンダヘッド73に形成した燃料供給通路79の途中に形成してある。
ポンプリフタ(ローラリフタ1)は、リフタ本体2の仕切壁部22の上面がプランジャ75の下端部751に当接するように配置されている。
【0039】
また、プランジャ75の外周にはリテーナ77が固定してあり、仕切壁部22と当接するように構成されている。さらに、リテーナ77とシリンダヘッド73の間には、ポンプリフタ(ローラリフタ1)をカム6の方向に付勢するためのスプリング78が配置してある。
なお、同図に示すごとく、リフタ本体2の回り止め部25は、シリンダヘッド73に設けたシリンダ5の軸方向に沿って形成された回り止め溝53に、摺動方向Zに沿って摺動可能に係合する。
【0040】
本実施形態において、ローラリフタ1は、軸方向が略鉛直方向となるように配設されている。そして、ローラリフタ1の上側が鉛直方向の上側、ローラリフタ1の下側が鉛直方向の下側となる。
【0041】
次に、本実施形態の作用効果につき説明する。
上記ローラリフタ1においては、外周壁部21に、上方空間202と外周側とを繋ぐように貫通した連通孔23が形成されている。そのため、上方空間202に到達した潤滑油を、リフタ本体2の外周側へ導くことができる。つまり、ローラリフタ1においては、ローラ3への潤滑油の供給は充分に行われることが多く、この潤滑油が周辺に飛散する。飛散した潤滑油の一部は、リフタ本体2の上方空間202に移動し、場合によっては上方空間202に溜まることもある。その上方空間202における潤滑油Gを、図8に示すごとく、連通孔23を介して、リフタ本体2の外周側へ供給することができる。
【0042】
そうすると、リフタ本体2の摺動面210とシリンダ5の内壁51との間への潤滑油の供給量を増やすことができる。つまり、特に当該部分へ潤滑油を直接供給するなどの設計を行うことなく、リフタ本体2の摺動面210とシリンダ5の内壁51との間に潤滑油を集めることができる。その結果、リフタ本体2とシリンダ5の内壁51との間の衝突を緩和し、リフタ本体2の摩耗及びスラップ音を低減することができる。
【0043】
また、仕切壁部22には、貫通孔が形成されていない。すなわち、上方空間202における潤滑油Gが直接下方空間201へ導かれることがない構成となっている。これにより、上方空間202における潤滑油Gを、効率的に、連通孔23を通じて摺動面210へ導くことができる。
【0044】
また、連通孔23は、リフタ本体2の中心軸Cに対する形成位置が、前後方向Yの位置である。それゆえ、より効果的に、リフタ本体2の摩耗及びスラップ音を抑制することができる。すなわち、図9図10に示すごとく、リフタ本体2は、シリンダ5内における往復運動に伴って、軸支ピンに平行な軸を中心に傾斜しようとする。なお、図9図10は、便宜上、リフタ本体2の傾斜を実際よりも大きくして描いている。
【0045】
より具体的には、カム6の位相に応じて、リフタ本体2は、仕切壁部22とプランジャ75の下端部751との当接部を通り、軸支方向Xに平行な軸Lxを中心に傾斜しようとする。つまり、カム6のノーズ部62がローラ3の表面を通過するたびに、リフタ本体2の傾き方向が変化する。そして、リフタ本体2とシリンダ5の内壁51との接触は、前後方向Yにおいて生じることとなる。それゆえ、リフタ本体2の中心軸Cに対して前後方向Yの位置に連通孔23が形成されていることにより、図8に示すごとく、当該位置に潤滑油Gを効率的に供給することができる。その結果、より効果的に、リフタ本体2の摩耗及びスラップ音を抑制することができる。
【0046】
また、図2図6に示すごとく、連通孔23は、リフタ本体2の中心軸Cに対して前後方向Yの双方の位置に形成されている。これにより、上述のようにリフタ本体2とシリンダ5の内壁51との接触が生じやすい前後方向Yの双方の位置に潤滑油を効率的に供給することができる。その結果、より効果的に、リフタ本体2の摩耗及びスラップ音を抑制することができる。
【0047】
また、連通孔23は、上方空間202側の開口部の少なくとも一部が、仕切壁部22の上面と、摺動方向Zにおける同じ位置に配置されている。これにより、上方空間202における潤滑油を、円滑に連通23を通じてリフタ本体2の外周側へ導くことができる。
【0048】
また、一方の連通孔231は、回り止め部25の周囲に隣接配置されている。これにより、回り止め部25の加工に伴って、連通孔231を形成することができる。それゆえ、ローラリフタの生産効率を向上させることができる。
【0049】
また、回り止め部25は、摺動方向Zにおける上側から下側へ向かうにつれて外側に張り出すように形成されており、回り止め部25の下側に連通孔231が形成されている。これにより、連通孔23からリフタ本体2の外周側へ円滑に潤滑油を導くことができる。
【0050】
また、一方の連通孔231は、回り止め部25の周囲に隣接配置され、他方の連通孔232は、リフタ本体2の中心軸Cを挟んで回り止め部25の反対側に形成されている。それゆえ、リフタ本体2の摺動面210の互いに反対側の2か所に向かって連通孔23を開口させることができる。そのため、潤滑油を摺動面210に充分に導くことができる。
また、回り止め部25を形成するにあたり、先に形成された連通孔232から押圧治具を挿入して、外周壁部21の一部を径方向外側へ張り出させて回り止め部25を形成するような加工を行うことも可能となる。これにより、ローラリフタ1の生産効率を向上させることも可能となる。
【0051】
また、仕切壁部22は、その上面の位置が、ローラリフタ全体の重心よりも、摺動方向Zの上側である。これにより、連通孔23から摺動面210に導かれる潤滑油を、リフタ本体2とシリンダ5の内壁51との接触部に効率的に導くことができる。すなわち、仕切壁部22の上面の位置がローラリフタの重心よりも上側にある場合、リフタ本体2の下端が比較的大きく揺動することとなる。そうすると、リフタ本体2の下端が特に強くシリンダ5の内壁51に当接することとなる。一方、連通孔23から摺動面210に導かれる潤滑油は、摺動面210の下端に向かって垂れるため、摺動面210の下端へ導かれやすい。その結果、リフタ本体2の下端とシリンダ5の内壁51との当接部へ潤滑油を効率的に導くことができるため、より効果的に、リフタ本体2の摩耗及びスラップ音を抑制することができる。
【0052】
以上のごとく、本実施形態によれば、リフタ本体の摩耗及びスラップ音を抑制することができる、内燃機関用のローラリフタを提供することができる。
【0053】
(実施形態2)
本実施形態においては、図11に示すごとく、前後方向Yにおいて回り止め部25と反対側に形成した連通孔232を、前後方向Yに対して摺動方向Zに傾斜させている。
すなわち、連通孔232は、内側から外側へ向かうほど、摺動方向Zの下側へ向かうように傾斜している。
その他の構成は、実施形態1と同様である。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0054】
本実施形態においては、上方空間202における潤滑油を、連通孔232を通じて、摺動面210に、より円滑に導きやすい。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0055】
参考形態
本形態は、図12図13に示すごとく、回り止め部25を、リフタ本体2の下端部に設けたローラリフタ1の参考形態である。
本形態においては、回り止め部25が、リフタ本体2の下端から下方へ延設すると共に前後方向Yの外方へ屈曲している。
【0056】
これに伴い、2つの連通孔23は、いずれも、回り止め部25に隣接する位置とは異なる位置に設けられる。本形態においては、2つの連通孔23は、同様の形状に形成されている。すなわち、例えば、2つの連通孔23は、図13に示すごとく、前後方向Yから見た形状において円形の貫通孔として形成されている。ただし、この形状は特に限定されるものではない。また、必ずしも2つの連通孔23の形状が同じ形状である必要もない。
また、本形態においては、図13に示すごとく、一対の軸支部24がリフタ本体2の下端から下方へ突出している。
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0057】
本形態においては、ローラリフタ1をシリンダ内に配置したときに回り止め部25を係合させる回り止め溝53(図7参照)の形成領域を、短くすることができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0058】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 ローラリフタ
2 リフタ本体
201 下方空間
202 上方空間
21 外周壁部
210 摺動面
22 仕切壁部
23、231、232 連通孔
3 ローラ
4 軸支ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13