特許第6698539号(P6698539)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6698539
(24)【登録日】2020年5月1日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】容器詰め嚥下困難者用飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/52 20060101AFI20200518BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20200518BHJP
   A23F 3/16 20060101ALI20200518BHJP
   A23F 5/24 20060101ALI20200518BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20200518BHJP
   C12G 3/00 20190101ALI20200518BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20200518BHJP
【FI】
   A23L2/00 E
   A23L2/00 V
   A23F3/16
   A23F5/24
   A23L2/02 A
   A23L2/00 T
   C12G3/00
   A23L29/269
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-555153(P2016-555153)
(86)(22)【出願日】2015年9月30日
(86)【国際出願番号】JP2015077827
(87)【国際公開番号】WO2016063698
(87)【国際公開日】20160428
【審査請求日】2018年8月16日
(31)【優先権主張番号】特願2014-214073(P2014-214073)
(32)【優先日】2014年10月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000208455
【氏名又は名称】大和製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(72)【発明者】
【氏名】馬鳥 裕史
(72)【発明者】
【氏名】赤地 利幸
(72)【発明者】
【氏名】金澤 智子
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 啓司
(72)【発明者】
【氏名】玉井 友恵
(72)【発明者】
【氏名】梅津 孝允
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 浩志
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 良成
(72)【発明者】
【氏名】山本 和夫
(72)【発明者】
【氏名】河盛 萌子
(72)【発明者】
【氏名】中本 光
【審査官】 牧野 晃久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−087031(JP,A)
【文献】 特開2008−043311(JP,A)
【文献】 特表2006−516995(JP,A)
【文献】 特開2003−081356(JP,A)
【文献】 特開2012−000096(JP,A)
【文献】 特開2012−239403(JP,A)
【文献】 特表2005−507649(JP,A)
【文献】 特開2006−212006(JP,A)
【文献】 藤谷 順子ら,日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013,日摂食嚥下リハ会誌,2013年,Vol.17, No.3,p.255-267
【文献】 古内 幸雄,加熱したq13140多糖類希薄液の粘性について,長野県短期大学紀要,日本,1975年,No.30,p.14-20
【文献】 片山豪ほか著,食品多糖類の物性に及ぼす電子線照射の影響,日本食品科学工学会誌,2005年 8月,第52巻、第8号,第373〜379頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00− 2/84
A23L 21/00− 21/25
A23L 29/20− 29/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
増粘剤として主にキサンタンガムを含有し、E型粘度計により測定した粘度が50 mPa・s以上500 mPa・s以下の粘度を有する飲料が、90%以上の遮光性を有する密閉容器に充填されたことを特徴とする、容器詰め嚥下困難者用飲料。
【請求項2】
前記密閉容器が金属缶であることを特徴とする、請求項に記載の容器詰め嚥下困難者用飲料。
【請求項3】
前記飲料が、前記増粘剤として、キサンタンガムのみを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の容器詰め嚥下困難者用飲料。
【請求項4】
前記飲料が、前記増粘剤として、ゲル化する増粘多糖類を含まないことを特徴とする、請求項1〜の何れか一項に記載の容器詰め嚥下困難者用飲料。
【請求項5】
前記飲料が、水、茶飲料、スポーツ飲料、果汁飲料、コーヒー飲料、乳酸菌飲料、炭酸飲料及びアルコール飲料から選択される飲料である、請求項1〜の何れか一項に記載の容器詰め嚥下困難者用飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嚥下機能障害を有する対象が摂取しやすいように開発された容器詰め飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
嚥下機能障害を有する嚥下困難者のために調整された食品を「嚥下調整食」と称することが、日本摂食・嚥下リハビリテーション学会により提唱されている。嚥下調整食は、ゼリー状食品と、とろみを有する食品とに分けられる。ゼリー状食品とは、ゼリー又はプリンなどのゲル状の食品であり、凝集性や硬さによって性状が評価される。このゲル状食品は、不均一であったり、離水が生じたりするという問題を有している。一方、とろみを有する食品とは、ゾル状の食品であり、粘度によって性状が評価される。
【0003】
嚥下困難者用飲料のうち、とろみを有する飲料は、摂取する際に増粘剤を添加して所望のとろみを付与する必要がある。そのため、臨床においては、嚥下困難者に飲料を供する際に手間がかかるという問題がある。
【0004】
また、増粘剤は、添加してからとろみが付くまでに数十秒〜数分を要する場合が多いため、混ぜながらとろみの加減をみるのではなく、所定の量をよく溶けるように十分混ぜながら加え、時間がたってからとろみの程度を評価して、適切かどうか判断する必要がある。そのため、飲料を実際に摂取できるまで時間を要するという問題がある。また、増粘剤の種類や、液体の温度や種類によっても粘度の付き方が異なる場合がある。そのため、提供される飲料の品質が一定しないという問題もある。
【0005】
そこで、例えば特開2011−217759号では、適度なとろみが付された、低温でも離水を生じない透明な水飲料を開示している。この特開2011−217759号における水飲料は、普通寒天とキサンタムガムとを含有しているものであり、離水を生じないと記載されているように、ゲル状食品に分類できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、容器詰めの嚥下困難者用飲料を提供すべく鋭意研究を行った結果、ゲル状ではなくゾル状のとろみ付き飲料が嚥下困難者に好まれることを見いだした。さらに、増粘剤によってとろみを付与されたゾル状の嚥下困難者用飲料は、光に暴露されることにより粘度が低下し、異臭を生ずることを見出した。よって、本願発明は、光による粘度の低下と異臭の発生が防止された容器詰め嚥下困難者用飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明に従って、増粘剤を含有し、50 mPa・s以上の粘度を有し、遮光性容器に充填されたことを特徴とする容器詰め嚥下困難者用飲料が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本願発明によれば、光による粘度の低下と異臭の発生が防止された容器詰め嚥下困難者用飲料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】光照射試験の模式図。
図2】光照射時間と可視光照度の積算値との関係を示すグラフ。
図3】光照射時間と紫外線照度の積算値との関係を示すグラフ。
図4】試験1の照射時間と粘度との関係を示すグラフ。
図5図4のグラフの一部拡大図。
図6】試験2における照射時間と粘度との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願発明の容器詰め嚥下困難者用飲料は、増粘剤を含有し、50 mPa・s以上の粘度を有し、遮光性容器に充填されたことを特徴とする。
【0011】
増粘剤として、主にキサンタンガムを用いることが好ましい。増粘剤としてキサンタンガムのみを用いてもよいが、他の増粘剤と併用してもよい。他の増粘剤としては、例えば、グアガム、カラギーナン、ジェランガム、サイリウムシードガム、ペクチン、デンプン、デキストリン等の増粘多糖類が挙げられる。一方、本願発明の容器詰め嚥下困難者用飲料は、ゼラチン、寒天などのゲル化する増粘多糖類を含まない。これらの成分を含むと、飲料がゲル状になるため好ましくない。また、飲料が温度によって影響を受けやすくなる恐れがある。但し、前記のゲル化する増粘多糖類であっても、飲料がゲル化しない濃度や条件であれば、本願発明の容器詰め嚥下困難者用飲料に含まれていてもよい。
【0012】
容器詰め嚥下困難者用飲料における増粘剤の総濃度は、増粘剤及び飲料の種類によって異なるが、0.1〜5.0質量%の範囲であることが好ましく、0.5〜3.0質量%の範囲であることがより好ましい。例えば、増粘剤としてキサンタンガムのみを用いた場合、その濃度は、0.1〜5.0質量%の範囲であることが好ましく、0.3〜4.0質量%の範囲であることがより好ましく、0.5〜2.0質量%の範囲であることがさらにより好ましい。
【0013】
上記のような増粘剤を用いてとろみを付与された本願発明の容器詰め嚥下困難者用飲料は、ゾル状の飲料である。本発明において飲料とは、流動性を有し、咀嚼せずに嚥下することが可能である食品を指す。ゾル状の飲料を含むゾル状の食品は、例えば、蜂蜜のように、粘性を有するものの固化してはいない食品である。ゾル状の食品は、ゲル状の食品とは異なって離水が生じない。よって、長期保存によって離水が生じることにより、食品が不均一になる恐れがない。これに対して、ゼリーなどのゲル状食品は、固化したものであり、流動性を有していない。また、ゲル状食品は、長期間保存すると離水が生じるという特徴を有している。
【0014】
本願発明の容器詰め嚥下困難者用飲料は、50 mPa・s以上の粘度を有する。そのため、嚥下困難者も該飲料を安全に摂取することができる。また、嚥下機能障害と診断された対象も該飲料を誤嚥しにくく、通常の粘性のない飲料に比べて安全に摂取することができる。一方、飲料の粘度は、500 mPa・s以下であることが好ましい。粘度が500 mPa・s以下であれば、飲料を容器からスムーズに流出させることができる。飲料の粘度が150 mPa・s以下である場合、嚥下機能障害がより軽度の対象に適した飲料が提供できる。よって、一つの態様において、飲料の粘度は50 mPa・s以上、150 mPa・s以下であることが好ましい。なお、本明細書における粘度は、液温20℃における粘度を指す。
【0015】
一般に提供されているとろみ付き飲料は、15〜25 mPa・s程度の粘度を有している。例えば、カルピスの原液では、20 mPa・s程度の粘度を有し、カルーアミルクでは、15 mPa・s程度の粘度を有する。また、25 mPa・s程度の粘度を有する飲料の例として甘酒などがあげられる。100 mPa・s程度の粘度を有する飲料としては、缶詰のココナッツミルクなどが挙げられるが、そのまま飲用する物ではなく適宜希釈して使用するものである。これらのことから分かるように、本願の嚥下困難者用飲料は、一般に供されているとろみ付き飲料より顕著に高い粘度を有している。
【0016】
本願発明の容器詰め嚥下困難者用飲料は、水、茶飲料、スポーツ飲料、果汁飲料、コーヒー飲料、乳酸菌飲料、炭酸飲料、アルコール飲料などから選択される飲料であることが好ましい。これらの飲料に増粘剤を添加して本願発明に従った容器詰め嚥下困難者用飲料とすることにより、本飲料を嚥下困難者が日常的に広く飲用することができ、また、病院などの臨床現場においても汎用的に使用することができる。
【0017】
本発明の嚥下困難者用飲料は、遮光性を有する容器に充填される。この遮光性を有する容器は、密閉容器であることが好ましい。遮光性を有する密閉容器としては、アルミニウム又はスチールなどの金属製の密閉容器、又は、金属と樹脂などの複合材料からなる密閉容器を用いることができる。容器の形状としては、例えば、缶及びチアパックなどのパウチ容器を用いることができる。これらの容器壁は、遮光性を付与するために十分な厚さを有するように設計される。
【0018】
本発明者らは、増粘剤を含有するゾル状の嚥下困難者用飲料を光に暴露すると、飲料の粘度が変化することを発見した。この粘度の変化は、特に粘度の低下として現れる。従って、遮光性を有さない容器に充填した場合、飲料の粘度が低下して同じ品質の商品を提供することが出来なくなる。そのため、嚥下障害の程度にあわせて所望の粘度を有する飲料を飲用しようとするときに、期待した粘度より低い粘度の飲料を飲用し、誤嚥を生じる原因ともなり得る。
【0019】
しかしながら、本願発明に従って、増粘剤を含有し、50 mPa・s以上の粘度を有する嚥下困難者用飲料を遮光性容器に充填することにより、飲料に光が当たることを防ぎ、粘度の低下と異臭の発生を防止することができる。よって、飲料の粘度を一定の状態に保つことが可能であり、嚥下困難者が安心して飲める商品を提供することができる。
【0020】
本願発明の容器詰め嚥下困難者用飲料は、少なくとも飲用時に50 mPa・s以上500 mPa・s以下の粘度を有する。また、該飲料は、飲料調製時の粘度を100%としたとき、飲用時の粘度が80%以上であることが好ましい。なお、飲料調製時の粘度より飲用時の粘度が上昇する場合、飲用時の粘度は110%以下であることが好ましい。
【0021】
上記のような範囲の粘度を有する飲料は、上述したように、増粘剤を0.1〜5.0質量%の範囲で原料液に添加し、遮光容器に充填することによって調製することができる。
【0022】
遮光性の密閉容器は、90%以上の遮光性を有することが好ましく、99%以上の遮光性を有することがより好ましく、完全遮光であることがさらに好ましい。ここで遮光性のパーセントは、容器に照射される光の照度(lux)に対する、容器を透過した光の照度の割合を指す。遮光性の密閉容器は、完全遮光ではない場合、紫外線を遮光する容器であることが好ましい。具体的には、約320 nmまでの波長の紫外線を遮断する容器であることが好ましく、約400 nmまでの波長の紫外線を遮断する容器であることがより好ましい。
遮光性の密閉容器としては、例えば、UVカットシールを貼った瓶、紙パック、金属缶などを用いることができるが、遮光性が高いことから紙パック又は金属缶を用いることが好ましく、金属缶を用いることがより好ましい。金属缶は、遮光性が高く、気密性も良好に保つことができ、酸素の透過を抑制できるため、より安定して飲料の粘度を保つことができ、異臭の発生を効果的に防止することができる。
【実施例】
【0023】
[試験1]
容器詰め嚥下困難者用飲料を調製し、光を照射して粘度の変化を測定した。
まず、水にエコーガムRD(キサンタンガム:DSPフード&ケミカル社製)を1.3質量%の濃度で添加し、加熱しながら混合してエコーガムRDの溶解液を得た。得られた溶解液の粘度を測定した。E型粘度計による測定結果は、20℃、ずり速度50/sec.、120秒の測定条件において、212.7 mPa・sであった。
【0024】
得られた溶解液の120 gをポリプロピレン製の透明なパウチ容器に充填して密封した。次いで、レトルト釜を用いて125℃で15分間、加圧加熱殺菌し、複数のパウチサンプルを作製した。
【0025】
加圧加熱殺菌したパウチサンプルの半数を光照射に供した。光照射は、図1に示すような光照射庫1を用いて行った。光照射庫1の台3にパウチサンプルを置き、矢印の方角から光を照射した。温度は20℃とした。照射条件は、2500 luxの設定で行った。台3の点Pにおいて継続的に照度測定を行った。開始時の実測値は、可視光が2552〜3201 luxであり、紫外線が0.030〜0.037 μW/cm2であった。この条件での光照射を連続して60日間行った。表1に、可視光照度及び紫外線照度の積算値を示す。図2に、光照射時間と可視光照度の積算値との関係を示した。図3に光照射時間と紫外線照度の積算値との関係を示した。
【0026】
比較対象として、パウチサンプルの残りの半数を、同じ照射庫内の光が当たらない条件で保管した。
【0027】
【表1】
【0028】
連続照射の7日後、14日後、30日後及び60日後に、パウチサンプル中の溶解液の粘度をE型粘度計により測定した。3回の測定値とその平均値を表2に示す。60日後のpHは5.780であり、Brixは1.3%であった。測定時の溶解液の温度は20.0℃であった。60日後の溶解液はきつい増粘剤臭を有した。
【0029】
【表2】
【0030】
一方、光を照射しなかったパウチサンプルについても溶解液の粘度をE型粘度計により測定した。3回の測定値とその平均値を表3に示す。60日後のpHは4.526であり、Brixは1.3%であった。測定時の溶解液の温度は20.0℃であった。60日後の溶解液は、軽い増粘剤臭を有した。
【0031】
【表3】
【0032】
光を照射したパウチサンプルと照射しなかったパウチサンプルについて、溶解液の色を観察した。その結果を表4に示す。表4において、Lは明るさを示し、数値が高い方が明るいことを意味する。a及びbは色味を示す。bの値が低下するほど黄色から青色になることを意味する。60日後において、光を照射した溶解液は透明に近く、色みが抜けていた。一方、非照射の溶解液は元の色調を維持していた。
【0033】
【表4】
【0034】
光照射サンプルと、非照射サンプルのそれぞれについて、1日後、7日後、14日後、30日後及び60日後の溶解液の粘度を表5にまとめた。
【0035】
【表5】
【0036】
表5の値に基づくグラフを図4に示す。図5は、図4の一部拡大図である。図4及び図5から、光に暴露された溶解液は粘度が低下することが示されている。一般に、商店の最も明るい場所では、照度が2000 lux以上であり、その光源が普通白色ランプであると紫外線照度は7 μW/cm2以上となり得る。さらに、窓際に陳列された場合、商品はより強い紫外線にさらされる。よって、光を透過する容器に充填された飲料は、粘度が低下し、当初に設定された粘度を有していない可能性があることが示された。
【0037】
[試験2]
容器詰め嚥下困難者用飲料を調製し、紫外線の照度の異なる光を照射して粘度の変化を測定した。
まず、水にエコーガムRD(キサンタンガム:DSPフード&ケミカル社製)を1.3質量%の濃度で添加し、加熱しながら混合してキサンタンガムの溶解液を得た。得られた溶解液の粘度を測定した。E型粘度計による測定結果は、20℃、ずり速度50/sec.、120秒の測定条件において、191.1 mPa・sであった。
【0038】
得られた溶解液の120 gをポリプロピレン製の透明なパウチ容器に充填して密封した。次いで、レトルト釜を用いて125℃で15分間、加圧加熱殺菌し、複数のパウチサンプルを作製した。
【0039】
加圧加熱殺菌したパウチサンプルの半数ずつを異なる条件による光照射に供した。光照射は、図1に示すような光照射庫1を用いて行った。光照射庫1の台3にパウチサンプルを置き、矢印の方角から光を照射した。温度は20℃とした。照射条件は、条件1を可視光:1500 lux、紫外線:40 μW/cm2とし、条件2を可視光:1700 lux、紫外線:10 μW/cm2とした。各条件により光照射を連続して14日間行った。連続照射の14日後に、パウチサンプル中の溶解液の粘度をE型粘度計により測定した。測定時の溶解液の温度は20.0℃であった。3回の測定の平均値を表6に示す。
【0040】
【表6】
【0041】
表6の値に基づくグラフを図6に示す。図6から、紫外線を照射すると粘度が低下し、紫外線の照度が大きいほど、粘度がより低下することが示された。
また、14日後の溶解液における異臭の発生を確認した。その結果、条件1のサンプルは、きつい増粘剤臭を有した。条件2のサンプルは、軽い増粘剤臭を有した。
【0042】
本願発明によれば、嚥下困難者用飲料を遮光性容器に充填されるため、粘度の低下を抑制することが可能である。よって、所定の粘度を有し、嚥下困難者が安全に摂取できる飲料を簡便に提供することが可能である。
以下に、本願の出願当初の請求項を実施の態様として付記する。
[1]
増粘剤を含有し、E型粘度計により測定した粘度が50 mPa・s以上の粘度を有し、遮光性容器に充填されたことを特徴とする、容器詰め嚥下困難者用飲料。
[2]
前記粘度が50 mPa・s以上500 mPa・s以下の範囲であることを特徴とする、[1]に記載の容器詰め嚥下困難者用飲料。
[3]
前記遮光性容器が密閉容器であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の容器詰め嚥下困難者用飲料。
[4]
前記遮光性容器が金属缶であることを特徴とする、[1]〜[3]の何れか一に記載の容器詰め嚥下困難者用飲料。
[5]
前記増粘剤がキサンタンガムを含むことを特徴とする、[1]〜[4]の何れか一に記載の容器詰め嚥下困難者用飲料。
[6]
前記嚥下困難者用飲料が、水、茶飲料、スポーツ飲料、果汁飲料、コーヒー飲料、乳酸菌飲料、炭酸飲料及びアルコール飲料から選択される飲料である、[1]〜[5]の何れか一に記載の容器詰め嚥下困難者用飲料。
図1
図2
図3
図4
図5
図6