(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る自律走行型電気掃除機を左前方から見た斜視図である。
図2は、自律走行型電気掃除機の下面図である。なお、自律走行型電気掃除機Sが進行する向きのうち、サイドブラシ7を設けた側を前方、鉛直上向きを上方、駆動輪2、3が対向する方向であって駆動輪2側を左方、駆動輪3側を右方とする。すなわち
図1等に示すように前後、上下、左右方向を定義する。
【0010】
自律走行型電気掃除機Sは、所定の掃除領域(例えば、部屋の床面Y)を自律的に移動しながら自動的に掃除する電気機器である。
【0011】
自律走行型電気掃除機Sは、外郭を成すケース1(1u、1s)と、下部の一対の駆動輪2、3(
図2参照)および補助輪4とを備えている。また、自律走行型電気掃除機Sは、下部に回転ブラシ5、ガイドブラシ6およびサイドブラシ7を備え、周囲に障害物検知手段としての前方用測距センサ8(
図2、
図3、
図4参照)を備えている。
【0012】
駆動輪2、3は、駆動輪2、3自体が回転することで自律走行型電気掃除機Sを前進、後退、旋回させるための車輪である。駆動輪2、3は、直径上左右両側に配置され、それぞれ走行モータおよび減速機で構成される車輪ユニット20、30により回転駆動される。補助輪4は、従動輪であり自由回転するキャスタである。駆動輪2、3は、自律走行型電気掃除機Sの前後方向の中央側、左右方向の外側に設けられており、補助輪4は前後方向の前方側、左右方向の中央側に設けられている。
【0013】
サイドブラシ7は、自律走行型電気掃除機Sの前方側、左右方向の外側に設けられており、
図1の矢印α1のように、自律走行型電気掃除機Sの前方外側の領域を、左右方向外側から内側に向かう方向に掃引するよう回転して、床面上の塵埃を中央の回転ブラシ5(
図2参照)側に集める。2つのガイドブラシ6は、それぞれ駆動輪2、3に対して左右方向内側に設けられており、サイドブラシ7で集められた塵埃を回転ブラシ5の幅内から外側に逃げないようにガイドする固定ブラシである。
【0014】
回転ブラシ5は、自律走行型電気掃除機Sの駆動輪2、3に対して後方に設けられている。回転ブラシ5の左右側端部の左右方向位置は、それぞれ駆動輪2、3より内側、又はガイドブラシ6より内側にできる。例えば、本実施形態に示す自律走行型電気掃除機Sは、本体横幅及び縦長さは約250mm、本体高さは約90mmである。
【0015】
図3は、
図1のA−A断面図である。
図4は、自律走行型電気掃除機のケースを外した内部構成を示す斜視図である。なお、
図4は、集塵ケース12を外した状態を示す。
【0016】
図3に示すように、自律走行型電気掃除機Sは、内部に充電池9と制御装置10と吸引ファン11と集塵ケース12とを備えている。集塵ケース12は入口として回転ブラシ5の上方に吸込み口12iが形成されている。また、集塵ケース12は出口に集塵フィルタ13が取り付けられている。
【0017】
充電池9は、例えば、充電することで再利用可能な二次電池であり、電池収容部1s6に収容されている。充電池9は自律走行型電気掃除機Sの左右端部に亘って配置されている。
【0018】
充電池9からの電力は、各種障害物検知手段(8、15、16)、制御装置10、駆動輪2,3や各種ブラシ(5、7)のモータ、及び吸引ファン11等に供給される。
【0019】
自律走行型電気掃除機Sは、制御装置10により統括的に制御される。
【0020】
(吸引ファン11)
図4に示すように、吸引ファン11は下ケース1sの中心付近に配置されている。吸引ファン11による空気の流路には、吸口14(
図3参照)から下流側に向かって順に、集塵ケース12、集塵フィルタ13、吸引ファン11、及び、排気口1s5(
図2参照)が設けられている。排気口1s5は、回転ブラシ5の前方、駆動輪2、3の左右方向内側に設けられている。吸引ファン11(
図3参照)を駆動することで集塵ケース12内の空気を排気口1s5から外部に排出して負圧を発生させ、床面Yから吸口14を介して塵埃を集塵ケース12内に吸い込む。
【0021】
吸口14付近には、床面上の塵埃を掻き込む回転ブラシ5(
図3参照)が設けられている。吸引ファン11は、下ケース1sとの間に弾性体(図示せず)を介して設置されている。弾性体を介在させることで、吸引ファン11の振動が減衰して下ケース1sに伝わりにくく、振動、騒音を低減できる。
【0022】
吸引ファン11、及び、回転ブラシモータ5m(
図4参照)が駆動すると、回転ブラシ5(
図3参照)によって床面等の塵埃が掻き込まれる。掻き込まれた塵埃は、吸口14、吸込み口12iを介して集塵ケース12内に導かれる。集塵フィルタ13で塵埃が取り除かれた空気は、排気口1s5(
図2参照)を通して排出される。なお、集塵ケース12は、上ケース1uに設けられた蓋1u1(
図1参照)を開けることで着脱可能であり、集塵フィルタ13を外して塵埃が廃棄される。
【0023】
(自律走行型電気掃除機Sの動作概要)
自律走行型電気掃除機Sは、駆動輪2、3と補助輪4(
図2参照)とにより自律的に移動され、前進、後進、左右旋回、超信地旋回等が可能である。そして、自律走行型電気掃除機Sは、サイドブラシ7、ガイドブラシ6で集塵して回転ブラシ5の周りに付着した塵埃を、吸口14を介して、吸引ファン11の吸込み力により、集塵ケース12入口の吸込み口12iから集塵ケース12内に吸込み、出口の集塵フィルタ13により集塵ケース12内に滞留させる。
【0024】
集塵ケース12内に塵埃が溜まると、適宜、利用者により集塵ケース12が本体部Shより取り出され、集塵フィルタ13が取り外され、塵埃が廃棄される。
【0025】
(ケース1)
ケース1は、外郭を成し、車輪ユニット20、30、回転ブラシモータ5m、吸引ファン11、集塵ケース12、制御装置10等を収容する筐体である。
【0026】
ケース1は、上壁を成す上ケース1uと、底壁(及び一部の側壁)を成す下ケース1sと、ケース1の前下部に設置されるバンパ1bとを備えている。
【0027】
上ケース1uには、集塵ケース12(
図3参照)を出し入れするための蓋1u1(
図1参照)が設けられている。
【0028】
図2に示すように、下ケース1sには、車輪ユニット収容部1s1とサイドブラシ取付部1s3と吸込部1s4と排気口1s5と電池収容部1s6とが形成されている。
【0029】
車輪ユニット収容部1s1は、
図2の平面視で略円形を呈する下ケース1sの中央左右両側に形成されている。車輪ユニット収容部1s1には、駆動輪2、3が支持、駆動される車輪ユニット20、30が収容される。
【0030】
排気口1s5は、下ケース1sの中央付近であり、左右の車輪ユニット収容部1s1に挟まれた位置に複数形成される。
【0031】
電池収容部1s6は、下ケース1sの中心よりも前側に形成されている。電池収容部1s6には、充電池9が収納される。電池収容部1s6の左右には、サイドブラシ7を取り付けるサイドブラシ取付部1s3が形成されている。
【0032】
下ケース1sの後側、つまり、排気口1s5、及び、車輪ユニット収容部1s1の後側に吸込部1s4(
図2参照)が設けられる。
【0033】
バンパ1b(
図1、
図2参照)は、壁等の障害物に衝突した際に外部から作用する力に応じて前後方向に移動可能に設置されている。バンパ1bは、左右一対のバンパばね(図示省略)によって外向きに付勢されている。
【0034】
バンパ1bを介して障害物と衝突した際の作用力がバンパばねに作用すると、バンパばねは平面視で内側に倒れ込むように変形し、バンパ1bを外向きに付勢しつつバンパ1bの後退を許容する。バンパ1bが障害物から離れて前記した作用力がなくなると、バンパばねの付勢力によってバンパ1bは元の位置に復帰する。ちなみに、バンパ1bの後退(つまり、障害物との接触)は、後記するバンパセンサ15(
図4参照)によって検知され、その検知結果が制御装置10に入力される。
【0035】
(吸込部1s4)
図3に示す吸込部1s4は、吸引ファン11で吸引する塵埃を含む空気の流路の一部を形成する。吸込部1s4から下流の流路は、順に、集塵ケース12、集塵フィルタ13、吸引ファン11及び、排気口1s5(
図2参照)に連通する。
【0036】
吸込部1s4には、塵埃を掻き込む回転ブラシ5が配置され、回転ブラシ5を駆動する回転ブラシモータ5m(
図4参照)が固定される。吸込部1s4は、回転ブラシ5で掻き込まれた塵埃を集塵ケース12に吸込む吸口14が形成されている。なお、回転ブラシ5(
図2参照)は、吸込部1s4と略同じ長さを有している。
【0037】
図3に示すように、吸口14は、集塵ケース12の開口の吸込み口12iと連通し、塵埃が吸口14、吸込み口12iを介して集塵ケース12に集められる。
【0038】
吸込部1s4には、回転ブラシ5を収容する回転ブラシ収容部14bが下ケース1sに形成され、回転ブラシ収容部14bに上述の回転ブラシ5が配置される。回転ブラシ5は、吸込部1s4に回転可能に取り付けられる。回転ブラシ5は、吸込部1s4に取り外し可能に取り付けられる。
【0039】
(集塵ケース12)
図3に示す集塵ケース12は、床面Yから、吸込部1s4に形成される吸口14を介して吸いこまれた塵埃を回収する容器である。集塵ケース12は、回転ブラシ5と略同じ左右方向寸法を有している。
【0040】
集塵ケース12は、回収した塵埃を収容する本体と、回収した塵埃を取出し可能とする蓋と、本体上部の折り畳み可能な取っ手とを備える。集塵ケース12の本体は、下面が吸込部1s4の上部の形状に対応する形状であり、吸口14に対向して略同じ開口形状の吸込み口12iを備えている。蓋は、吸引ファン11の吸引口に対向し、前記した集塵フィルタ13を備えている。
【0041】
(障害物検知手段8、15、16)
障害物検知手段として
図4に示すバンパセンサ15と、前方用測距センサ8と、床面用測距センサ16を設けている。前記バンパセンサ15は、バンパ1b(
図1参照)が障害物と接触したことをバンパ1bの後退で検知するセンサ、例えばフォトカプラである。バンパ1bに障害物が接触した場合、バンパ1bの後退でセンサ光が遮られる。この変化に応じた検知信号が制御装置10に出力される。
【0042】
前記前方用測距センサ8は、赤外線を用いて障害物までの距離を計測する測距センサで、バンパ1bの表面から5〜15mmの内側に設置させている。なお、バンパ1bの測距センサ8の近傍は、赤外線を透過させる樹脂又はガラスで形成されている。
【0043】
前記前方用測距センサ8は、障害物からの赤外線の反射光を感知するもので、反射光の強度により距離を計測するものである。反射光の強度が強い場合は近く、弱い場合は遠いと判断する。つまり、障害物からの距離は0,1の2値で判定されるものではなく、障害物からの距離を複数の段階で(アナログ的に)判定できる測距センサである。
【0044】
このような前方用測距センサ8を、本体正面8a、左側面8b、右側面8c、正面と左側面の間の左正面8d、正面と右側面の間の右正面8eの計5個設けている。本実施形態では5個とも“距離”を複数の段階で計測できる測距センサとしているが、少なくとも左側面8b、右側面8cのどちらか一方のみが、“距離”を複数の段階で計測できる測距センサでも構わない。
【0045】
なお、前方用測距センサ8として可視光、紫外線、レーザーを用いてもよい。また、赤外線の強度を計測するタイプの測距センサではなく、反射光の受光位置を感知することで距離を計測するタイプでも、反射光が戻ってくる時間から距離計測するタイプでもよい。
【0046】
図2に示す床面用測距センサ16は、床面までの距離を計測する赤外線を用いた測距センサであり、下ケース1sの下面前後左右4か所(16a、16b、16c、16d)に設置されている。床面用測距センサ16によって階段等の大きな段差を検知することで、自律走行型電気掃除機Sの落下を防止できる。例えば、段差高さを「通常」に設定した場合、床面用測距センサ16によって前方に30mm程度以上の段差が検知された場合、制御装置10(
図3参照)は駆動輪2,3を制御して本体部Shを後退させ、自律走行型電気掃除機Sの進行方向を転換させる。
【0047】
(制御装置10)
図3に示す制御装置10は、例えばマイコン(Microcomputer)と周辺回路とが基板に実装され、構成される。マイコンは、ROM(Read Only Memory)に記憶された制御プログラムを読み出してRAM(Random Access Memory)に展開し、CPU(Central Processing Unit)が実行することで各種処理が実現される。周辺回路は、A/D・D/A変換器、各種モータの駆動回路、センサ回路、充電池9の充電回路等を有している。
【0048】
制御装置10は、利用者による操作ボタンbuの操作、及び、各種障害物検知手段(センサ8、15、16)から入力される信号に応じて演算処理を実行し、各種モータ、吸引ファン11等と信号を入出力する。
【0049】
(補助輪4)
図2に示す補助輪4は、下ケース1sの前方の左右方向の中央に設けられている。補助輪4は、駆動輪2、3とともに本体部Shを所定高さで保って自律走行型電気掃除機Sを円滑に移動させるための車輪である。補助輪4は、本体部Shの移動に伴い床面Yとの間で生じる摩擦力によって従動回転し、さらに向きが水平方向に360°回転するように、下ケース1sに軸支されている。
【0050】
図5は掃除時の走行軌跡を示す自律走行型電気掃除機Sは、部屋50内を走行している。部屋50は壁51で囲まれており、その左下側に机があり、
図5には机の脚55を記載している。部屋50内の点線52は走行軌跡を示している。
【0051】
反射走行は、前方測距用センサ8又はバンパセンサ15により障害物を検出したら進行方向を変える走行である。自律走行型電気掃除機Sは図中P1より出発し、障害物となる部屋50の壁51bに近づくと(P2)、左回りにその場で回転(超信地旋回)することで進行方向を変え、壁51bで反射しているかのような走行軌跡を示す。
【0052】
その後も壁51に近づいては進行方向を変える動作(その場回転の角度はランダムに変更)を繰り返し、机の脚55aに近づく(P3)。机の脚55aのように細い(小さい)障害物と判断したら、その障害物のごく近い所を回り込むように本体を旋回させ、その障害物の先をさらに掃除する。
その後、壁51cに近づき、進行方向を変え、壁51aに近づき、さらに進行方向を変え、机の脚55cに近づく(P4)。机の脚55cのように細い(小さい)障害物と判断したら、その障害物のごく近い所を一周以上旋回するように本体を移動させる。
【0053】
上記では机の脚55aに近づいた場合と55cに近づいた場合とで旋回距離(角度)が異なっているが、本実施形態ではランダム的に変化させているが、細い障害物の検出頻度を基準に旋回距離を変化させても良い。細い障害物がたくさんある状況、たとえば食卓の下など複数の椅子がある場合、椅子の脚まわりのごみをしっかり掃除するためにも旋回距離を長くして、しつこく掃除させるほうが望ましい。このように、自律走行型電気掃除機Sは直進以外にも、その場で回転したり、障害物近傍を旋回したりしている。
【0054】
その場で回転する時の詳細な動作を
図6に示す。
図6は自律走行型電気掃除機Sを簡略化して示しており、本体Shと右の駆動輪2、左の駆動輪3のみを示し、P11は本体Shの前方(先頭)を示している。また、図中の破線は本体Shがその場で回転した後の車輪位置を示し、P12は移動後の本体の先頭の位置を示している。
図6は反時計回りにその場で回転する場合を示しており、右の車輪2を前方向に、左の車輪3を後ろ方向に略同じ角速度で回転させる。この回転時の車輪の角速度を直進時の車輪の角速度より速くすることで、本体の回転速度を高め、短時間で回転させる。
【0055】
具体的には
図7に車輪(右側)の角速度の変化を示す。直進時の移動速度は300mm/sであり、左右の車輪2、3はともに前向きに約510deg/s(L1)で回転している(車輪直径68mm)が、回転時では右の車輪2は前向きに約630deg/s(L2)、左の車輪3は後ろ向きに約630deg/sで回転させる。直進時の角度速度に対して、回転時の車輪の角速度は約1.2倍となっている。
【0056】
また、本体Shの動きとして本体先頭P11の移動速度も直進時に比べて速く移動しており、回転時には約550mm/sとなる。
【0057】
このように回転時の車輪速度を直進時の車輪の角速度と略同等、又はより速くすることにより、時間を短縮することができる。もし、その場回転時における車輪の角速度を直進時における車輪の角速度より減速した場合、たとえば35%減速した場合、本体を150度回転させるのに要する時間は約1.2秒であるが、本実施形態のように車輪の角速度を速めた場合は約0.6秒となり、約0.6秒の時間を短縮できる。自律走行型電気掃除機Sによる1回の掃除運転中の反射回数は約200回あり、走行距離を約36m長くすることができる。
【0058】
なお、
図7に示すように直進時およびその場回転時の角速度は床面の状態等により、一定ではなく、時間とともに直進時はL1a〜L1b、その場回転時はL2a〜L2bの範囲で上下しており、その場回転時の角速度L2bは少なくともL1aより高くする。
【0059】
図8は旋回動作の例として、本体幅より狭い障害物61の周りを回り込む動作を示す。まず、本体は障害物61に近接又は接触し(
図8の実線Sh1)、障害物61が本体Sh1の左右どちらかにあるか測距センサ8および/又はバンパセンサ15で確認する。
図8では本体Sh1の左側にあり、その場合は時計回りにその場回転を行う(矢印A)。このとき、測距センサ8を監視しながら、障害物61が本体の略側面に位置するまでその場回転させる。その後、本体外周より外側の点を回転中心として反時計回りに旋回する(矢印B)。
【0060】
図9は旋回時の自律走行型電気掃除機Sを簡略化して示しており、本体Shと右の駆動輪2、左の駆動輪3のみを示し、P21は本体Shの前方(先頭)を示している。また、図中の破線は旋回した後の本体および車輪位置を示し、P22は移動後の本体Shの先頭の位置を示している。反時計回りの旋回時において、左右の車輪は前方向に回転させているが、右の車輪2のほうが、左の車輪3より速い角速度で回転させる。
【0061】
本体の側面に設けた測距センサ8により障害物までの距離を把握し、旋回時の回転半径(旋回半径)Rを決め、その旋回半径に基づいて左右車輪の角速度を制御しながら旋回させる。このとき障害物61と本体Sh外郭の隙間が約5mm程度となるように、旋回半径Rを設定する。
【0062】
この旋回半径Rに基づいて旋回する時、旋回方向とは逆側の車輪(
図9では右車輪2)の角速度を、直進時における右車輪の角速度より速くすることにより、旋回に要する時間を短縮させる。
【0063】
具体的には旋回時の本体先頭の移動速度を、直進時の本体先頭の移動速度と略同等、又はより速い速度にする。直進時の本体先頭の移動速度300mm/sに対して、旋回時の本体先頭の移動速度は320mm/sとした。回転中心Oから旋回方向とは逆側の車輪(右車輪2)までの距離は、回転中心Oから本体先頭P21までの距離とほぼ同じ又は若干短く、右車輪2の移動速度も約320mm/sである。
【0064】
図10に右側の車輪2の角速度の変化を示す。旋回時の右車輪2の角速度は約540deg/s(L4)で回転し(車輪直径68mm)、直進時の車輪の角速度約510deg/s(L1)より速い。
【0065】
特許文献1
図10Bのように直進時の移動速度(約310mm/s)に対して、旋回時の移動速度を減速(約150mm/s)した場合に比べて、大幅に時間を短縮できることがわかる。
【0066】
なお、
図10に示すように直進時および旋回時の角速度は床面の状態等により、一定ではなく、時間とともに直進時はL1a〜L1b、旋回時はL4a〜L4bの範囲で上下しており、旋回時の角速度L4bはすくなともL1aより高くする。
【0067】
ただし、本実施形態のように、その場回転時および旋回時における本体Shの移動速度を速めた状態で障害物に接触すると、障害物に大きな衝撃を与えてしまう恐れがある。そこで、本体Shの前面から側面にかけて設けた測距センサ8を用いて、本体Sh近傍の障害物を検知することが望ましい。その場回転および旋回中に障害物に本体が近づいたら停止又は減速させ、障害物に接触しない、又は接触時の衝撃を弱めるようにすることができる。
【0068】
また、本実施形態における旋回動作として、左右の車輪が前方向に回転する場合を記載したが、片側の車輪を停止した旋回、片側をゆっくりと逆向きに回転させた旋回においても同様である。
【0069】
なお、旋回時の動作として、本体の側面に設けた測距センサ8により障害物までの距離を把握せずに、所定の回転半径で旋回してもよい。また、旋回時の動作として、本体の側面に設けた測距センサにより障害物までの距離を時々刻々と把握しながら、その都度、旋回半径を変化させながら旋回してもよい。
【0070】
反射走行を複数回行った後に、
図11のように壁51に沿って移動する壁ぎわ走行を行う。
図12にその詳細な動作を示す。
【0071】
壁ぎわ走行は本体側面に設けた測距センサ8を用いて壁51から約10mm離れた状態を保つように走行する。この壁ぎわ走行の時の本体Shの移動速度は、実施形態の反射走行中の直進時の速度と略同等、又はより速くする。
【0072】
壁ぎわ走行の理想は
図12の破線Cのように壁51と平行に直進することであるが、実際には図中実矢印線Dのように壁51に近づいたり、壁51から離れたりし、蛇行している。これは測距センサ8により壁51までの距離を計測し、壁51に近づいたら遠ざけるように、壁51から離れたら近づくように走行制御をしているためである。壁51に近づけたり、壁51から遠ざけたりするときには左右の車輪2、3の角速度を異ならせている。本体Shの左側の壁51に対して、本体Shを近づける場合には、右側の車輪2の角速度を左側の車輪3の角速度より速くする。また、本体Shを壁51から遠ざける場合には左側の車輪3の角速度を右側の車輪2の角速度より速くする。
【0073】
図13に左側の車輪3の角速度の変化を示す。実施形態と同様に、300mm/sで本体Shが直進している場合、左右の車輪2、3はともに前向きに約510deg/s(L1)で回転している。壁51近傍まで移動したら左右の車輪2,3の回転を停止させ、その後、その場回転して壁51と本体進行方向を略平行に向ける。その状態から壁ぎわ走行に移行する。
【0074】
壁ぎわ走行中、本体Shが壁51に対して目標値である約10mm離れた状態のときは左右の車輪2、3はともに前向きに約510deg/s(
図13のV1)で回転させる。壁から10mmより少し近い場合(壁から5mm以上10mm未満の場合)は、右側の車輪2の角速度を495deg/s、左側の車輪3の角速度を525deg/s(
図13のV2)で回転させ、旋回半径約1500mmで緩やかに壁51から遠ざける。このときの本体Shの先頭の移動速度は約300mm/sとなり、直進時とほぼ同じ速度となる。
【0075】
また、10mmより離れている場合は右側の車輪2の角速度を525deg/s、左側の車輪3の角速度を495deg/s(
図13のV3)で回転させ、旋回半径約1500mmで緩やかに壁51に近づける。この場合も本体Shの先頭の移動速度は約300mm/sとなり、直進時とほぼ同じ速度となる。
【0076】
また、壁51により近い場合(壁から5mm未満の場合)は、右側の車輪2の角速度を440deg/s、左側の車輪3の角速度を580deg/s(
図13のV4)で回転させ、旋回半径約300mmで急速に壁51から遠ざける。このときの本体Shの先頭の移動速度は約330mm/sとなり、直進時より速い速度となる。
【0077】
このように、壁からの距離を一定に保つように制御する壁ぎわ走行の旋回時における少なくとも一方の車輪の角速度を直進時より高くすることで、壁ぎわ走行においても、直進時と同様な速い速度で移動させることができる。これにより、直進時よりも速度を落とさずに走行することができ、走行距離が短くなることを防ぎ、未通過な領域の面積を少なくすることができる。
【0078】
なお、測距センサ8を用いて、上記のように壁51と本体Shの距離に応じて動作(旋回半径)を変更させることで高速で壁ぎわを走行しても壁に接触することを防ぐことができる。
また、本実施形態の自律走行型電気掃除機は略円形で示したが、略円形でなくてもよい。
【0079】
以上のように、その場回転、旋回、壁ぎわ走行時の少なくともどちらか一方の車輪の角速度を、直進時の車輪の角速度とほぼ同等又はより高くすることで、走行距離を長くすることができ、広い面積を掃除することができ、未通過な領域の面積を少なくすることができる。
【0080】
<<段差乗り越え動作>>
自律走行型電気掃除機Sは、床面用測距センサ16を用いて、床面との距離を検知することができる。例えば、通常状態(略水平な床面に自律走行型電気掃除機Sが載置されている状態)での床面用測距センサ16の検知値とは異なる値を検知し続けている場合、好ましくはさらに駆動輪2,3が回転し続けているにも拘らずそのような検知をし続けている場合、段差に差し掛かっているにも関わらず段差を登りきれていないと推定することができる。
【0081】
自律走行型電気掃除機Sは、段差を登れていないことを検知した際、例えば以下の3つの動作を行う。(1)(2)(3)をこの順で行っても良いし、異なる順で行っても良いし、一部のみを行っても良い。
【0082】
(1)段差乗り越え動作1
図14に示すように、自律走行型電気掃除機Sが段差に対して斜めに進入しようとする動作である。まず、「段差検知」するとともに自律走行型電気掃除機Sが段差に対して真直ぐ(段差の延在方向と自律走行型電気掃除機Sの進路方向とが略垂直)であるのか斜めであるのかを区別する。これは、前方右側及び前方左側の床面用測距センサ16それぞれが段差を検知しているか片方しか検知していないかで区別可能である。段差検知後、段差に対して真直ぐであれば斜め後方に、段差に対して斜めであれば後方に「後退」する。本実施形態では駆動輪2,3を道程にして5mm後退させて本体を段差に対して45度の状態にする。後退する距離は任意だが、段差に乗り上げたサイドブラシ7が段差から落ちない距離が好ましい。
【0083】
その後、駆動輪2,3を回転させることで例えば500mm「前進」し、段差を乗り越えることを試行する。前進前にサイドブラシ7が段差から落ちた状態(段差より低い位置にある状態)だと、前進に伴ってサイドブラシ7が段差に接触して押し上げられ、回転が止められることがある。サイドブラシ7は床面用測距センサ16に対して段差よりも近い位置にあるため、サイドブラシ7の回転が止まった時の位置が床面用測距センサ16の検知範囲内にあると、現在目の前にしている段差よりもさらに大きな段差として検出される虞がある。このため、サイドブラシ7の回転が止まることを抑制すべく、サイドブラシ7の回転速度又はトルクを通常よりも高くすることが望ましい。実施形態では、回転速度を2倍としている。
【0084】
「前進」後、自律走行型電気掃除機Sは超信地旋回を行い段差を背にするように進路を変更することが望ましい。このような超信地旋回は、「段差検知」時の段差に対する角度及び「後退」時の後退方向の情報に基づいて推定することができる。
【0085】
(2)段差乗り越え動作2
図15に示す。上記と同様に「段差検知」後、段差と真直ぐに例えば300mm「後退」する。その後、補助輪4の回転軸(自転軸)を段差と略平行にするため、例えば10度ずつ左右に超信地旋回する「首ふり」動作をした後、通常の自律駆動速度より速い、例えば1.3倍の速度で600mm「前進」する。
【0086】
(3)段差回避動作
「段差検知」した後、例えば180度回転して段差から離れる方向に進む。
【0087】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の思想を変更しない範囲において適宜変更することができる。例えば、段差検知の手段は、床面用測距センサ16でなくても良い。また、吸口ブラシ5や回転ブラシ7を設けない構成としても良い。