【実施例】
【0070】
実施例1.試薬保存および放出
本発明のバイオチップは、様々な処理を行うための試薬を必要とし、およびこれらの試薬は、それらが曝されるバイオチップ材料、操作条件および環境条件に対して適合しなければならない。
【0071】
本発明の試薬は、いくつかの方法でバイオチップの中で導入できる。
最初に、試薬は、通常使用直前にバイオチップに手作業で添加することができる。手作業による添加の利点は、バイオチップは試薬を長期間保持する必要がないので、バイオチップ上での長期安定性を最小限にすることができる。手作業による装填の欠点は、オペレータが技術教育を受けおよび専門知識を有することが必要であること、正確に配置されていない試薬は適切な処理を妨げること、および試薬を置くことが汚染源になる可能性があることである。配置の第2の方法は、機器の中または機器の近くの容器に試薬を貯蔵することである;配管または他の流路が、所望の処理時間で試薬をバイオチップに移送する。この方法の利点は、一度試薬容器を設けると、システムの複数の分析の実行を可能にすることである。欠点は、機器内に実質的な移送流路が必要であり、流路を通る妥協による流れは、例えば乾燥して流路上の残留物となり、また機器を開く必要があるので、損傷または汚染の可能性があり、複数の分析の実行のための試薬の貯蔵を可能とするためには、機器の大きさを相対的に増加させる必要があること、およびオペレータが技術教育を受けおよび専門知識を有することが必要であることである。
【0072】
好ましい方法は、バイオチップの中に試薬を配置することであり、予め搭載された試薬はバイオチップの必須部分であり、オペレータは実質的にさわることができない。この方法の利点は、オペレータが決して試薬に接する必要がないか、技術教育または専門知識を必要とせず、および、バイオチップが閉鎖システムの場合、汚染の可能性を最小限にできる。さらに、機器はバイオチップを受け容れるが、別の試薬管または試薬カートリッジを配置するために開く必要はない。チップ上の試薬が機器と接触しないようにする駆動システムと組み合わせる場合、バイオチップは閉鎖システムであり、汚染の可能性を最小限にしながらさらに使い易さを向上させることができる。
【0073】
チップ上に試薬を貯蔵するために、試薬は接触するすべてのバイオチップ材料に対して適合性を有する必要があり、および必要に応じ処理に対して利用可能でなければならない。発明者らは、これら要求に対する1つのアプローチを「試薬貯蔵および放出(RSR)」と名付け、これは、試薬がバイオチップの中に貯蔵および隔離され、処理時には必要に応じて放出されることを示している。
【0074】
RSRへのアプローチは、ブリスターパック、チューブインチューブ(tube-in-tube)構造(試薬を含む管がバイオチップ試薬槽の中に挿入されている)、および単一チューブ構造(試薬がバイオチップ試薬槽の中に直接充填されている)。動作方法は、圧力を用いる方法(必要に応じ切れ目をいれた箔の使用を含んでもよい)、ピンを用いる方法(機械的または空気圧的に作動させたピンが箔シールを刺す)、および機械的方法(機器要素が貯蔵された試薬に圧力を加える)、を含む。
【0075】
ブリスターパック。
このアプローチでは、アルミ箔でシールされたブリスターパックまたはスティックパックを用いて試薬を貯蔵する。機械的力をパックに加えて中身を試薬槽に放出させる。
【0076】
チューブインチューブ構造。
このアプローチでは、試薬チューブは熱可塑性プラスチックで作製され、箔シールは試薬充填の前にチューブの底部に適用され、第2の箔シールは充填後にチューブの上部に適用される。封止された試薬チューブは、次にバイオチップの適切な試薬チャンバーの中に挿入される。積層されたアルミニウム製の封止用箔のいずれを選択しても、熱封止に使用できる。これらの箔の特徴は、アルミニウム薄膜に積層されたポリマー性熱封止表面にある。保護のためにアルミニウム箔上に用いられた被膜は、試薬自身、熱、およびかき傷に対して耐性のあるものが選択される。保護皮膜は、熱封止表面としても作用してよい。
【0077】
単一チューブ構造。
このアプローチでは、バイオチップ自身内部のチャンバーが貯蔵媒体である。このアプローチでは、利点は、バイオチップが比較的小さいこと(チューブインチューブはさらに壁を必要とする)、および作製し易いことである。
図1は、単一チューブRSRアプローチを示している。箔シール(101)は、各試薬貯蔵チャンバー(102)の上部と底部に結合されている(熱的に、超音波溶接により、または接着剤により)。底部の箔がまず結合され、液体試薬が充填され(102の陰影で示される)、そして上部箔が結合され、試薬貯蔵チャンバーが封止される。上部カバー(103)は、箔を破裂させるのに必要な圧力を付与する空気圧駆動ラインを含んでいる。凍結乾燥された試薬(104)は、箔の間に貯蔵することもできる。
【0078】
上部箔と底部箔を破裂させるのに必要な圧力が、試薬を試薬チャンバーから速やかに流出させる。試薬の流れを減少させるために、試薬チャンバーの底部に流量制御オリフィスが作製されている。オリフィスの直径は、適用される箔破裂圧力で所望の流れが得られるように寸法が調整されている。実施例2に記載されているように、流体の流れと並んだ液体を制御するために、バルブ膜と排出膜を用いることもできる。さらに、RSRチャンバーに空気圧駆動圧力が加えられる場合、箔は、破裂するに先立って膨張するのに十分な空間を持つ必要がある。この空間要求に対応するため(厚さ25ミクロン、直径8mmの箔に対して約1mm)、破裂用の膨張空間を付与するためにRSRスペーサープレートが設計された。RSRスペーサープレートは、試薬チャンバーの大径(この場合8mm)の出口と、バイオチップの小径(0.5〜1mm)の入口穴とを結合する接続部を提供し、およびテーパーを有する2つの界面の間の試薬の流れの移行部を提供する。入口穴は、流体サブアセンブリーの特徴に届く、空気圧サブアセンブリーの中のスルーホールでもよく、あるいは流体サブアセンブリーまたは分離および検出サブアセンブリーに直接結合してもよい。
図2は、5試料のバイオチップに使用されるスペーサープレート105の写真であり、RSR破裂を必要とする液体試薬チャンバーと結合させるためのRSR移行部106を示している。従来の移行部107は、混合と保持に用いられる処理チャンバー(膨張空間を必要としないので試薬貯蔵に用いられるものではない)を、バイオチップの入口穴に結合させる。
図3は、RSRチャンバー接続部108、円錐テーパー部109、およびバイオチップ接続部110を含むRSR移行部106の断面図である。また、示すように、従来の移行部107は、処理チャンバーと別のバイオチップサブアセンブリーとの間のスルーホール移行部である。スペーサープレートは、感圧性接着剤と機械的留め具により試薬チャンバーに取り付けられている。他の取り付け方法は、接着剤を用いる場合と用いない場合のガスケット、ねじ、熱かしめ、およびリベットの使用を含む。
【0079】
動作させるのに空気圧しか必要でないので、箔の空気圧破裂は好ましい方法である。バイオチップ内の空気圧駆動ラインを介してチューブの上部に供給される空気圧により箔シールは破裂する。この構造では、試薬チャンバーに適用される圧力は、箔上部に加えられ、それを破裂させる。破裂すると、チューブ内の試薬に直接圧力が加えられる。これにより、箔の底部が破裂し、処理用の溶液が放出される。空気圧破裂に用いる箔の選定にはいくつかの要素を検討する必要がある。空気圧破裂に適合するためには、破裂圧力が、バイオチップの構造に対して適切であり、バイオチップの許容範囲内である必要がある。本発明のバイオチップは、熱結合、溶剤結合、および接着剤結合により組み立てられており、望ましい破裂圧力は約20〜500psigである。10〜500ミクロンの薄い箔フィルムがこの目的に適しており、好ましくは10〜30ミクロンである。
【0080】
図4は、直径2〜8mmのチャンバーに結合した、12ミクロン(実線)と18ミクロン(破線)のアルミニウム箔に必要な空気圧破裂圧力を示している。破裂に必要な圧力は、箔の厚さの増加とともに増加し、チャンバー/箔の直径の増加とともに減少する。各点は、破裂に必要な平均圧力を示している(直径2mmではn=2、直径3mmではn=6、直径4mmではn=10、直径5mmではn=9、直径6mmではn=10、直径7mmではn=4、直径8mmではn=4)。破裂圧力は、箔材料の種類により影響を受ける。
【0081】
必要により、薄い箔への切り込みは破裂圧力を低下させる;箔上の様々な大きさおよび形状の切り込みを用いることができる。例えば、レーザーダイまたは機械ダイを用いた、様々な深さのライン、十字、円からなる切り込みを用いて、さらに破裂圧力を調整することができる。
図5は、6チャンバーを備えたRSRユニットを示している(各チャンバーは、直径が8mmで、高さが50mmである)。25ミクロンのアルミニウム箔にレーザー切り込みを入れ(4.5mmの十字で、中心に深さ約10ミクロンのラインを設けた)、熱かしめにより前期ユニットに熱結合された。底箔は最初に配置され、食品着色剤を有する液体試薬が各チャンバーに充填され、上部箔が結合された(
図6)。
【0082】
試薬チャンバーの両面破裂は、
図6のチャンバーの中に2mlの試薬を充填し封止することにより実施された。該チャンバーの封止に使用された箔には切り込みが入れられ(4.5mmの十字で、中心に深さ約10ミクロンのラインを設けた)、32psigのわずかな破裂圧力であった。各チャンバーはRSRスペーサープレートに取り付けられ、該プレートは次にマイクロ流体流路に取り付けられた。空気は破裂部からベント部へ移動するが、前記チャンバーから放出される流体は阻止されないように、マイクロ流体流路の出口は排出膜で封止された。カバーは、前記チャンバーの上部に固定された。該カバーは、6チャンバーの各チャンバーを空気圧駆動ラインに結合する。空気圧システムは、一度に1チャンバーだけに圧力を加えるように構成されている。液体がマイクロ流体流路の中へ流入するのが観察されるまで、空気圧駆動圧力を徐々に増加させ、この圧力を記録した。試験に用いた24枚の箔すべて(4RSRユニット)が、32psig±3psigで破裂した。
図7は、破裂後の箔を示している。破裂時に箔の破片がバラバラにならないようにして、潜在的に試薬の出口流路を塞ぐように、箔材料、切れ込み深さおよび構造、および破裂圧力が、協同して選択される。本明細書に示した切り込み箔は、箔の破片を発生させない。
【0083】
第2の実験では、試薬チャンバーは、切り込み箔を用いて上述のように充填されおよび封止された。該チャンバーは、マイクロ流体流路に取り付けられているRSRスペーサープレートに取り付けられた各マイクロ流体流路の出口は排出膜で封止された。カバーは前記チャンバーの上部に固定され、すべての試薬チャンバーに対して45psigの圧力が1秒間加えられた。すべての箔は破裂し、試薬がマイクロ流体流路に流入し、排出膜で止まることが観察された。流路内の液体は、泡無の単一充填物から構成されていた。
【0084】
同時に、これらの実験は、RSRがチャンバーの中に封止する試薬を含むこと、封止箔の空気圧破裂、チャンバー直径と切れ込みによる破裂の制御、マイクロ流体チャンネへの試薬の移行、および排出膜を用いた試薬の待ち合わせ(queuing)を示している。
【0085】
RSRへの関連するアプローチは、箔を破裂させるのに、空気圧力よりむしろ機械的力を用いる。この方法は、箔封止された試薬チューブの上部と底部に、プラスチック製の鋭いピンを形成する(同じ目的のために金属ピンを挿入することもできる)。両方の箔は、ピンにより貫通され、必要な処理時間で試薬を放出する。
【0086】
実施例2.バイオチップにおける流れ制御
本発明のバイオチップは、細かい特徴を含み、解析結果の生成に必要な一連の処理工程を実行するためには、流れの制御が必要である。流れの制御要素の使用を必要とする流体の機能は以下のものを含む:
・バイオチップの中の流路を介して、流体の流れを1つの特徴から別の特徴へと向けること。
駆動ライン、バルブ、および排出膜の設定通りの使用は、バイオチップ内の特別な流路と特徴を通るように液体および気体を向ける。例えば、精製フィルター(
図39,12)は、流体流路により試薬チャンバーおよび処理チャンバーに接続されている。流体の流れと、精製フィルターへの流入と流出を制御するバルブの順序は、実施例5のDNA結合工程、洗浄工程、乾燥工程、排出工程に記載されている。これらの工程では、流体の流れがこのチャンバーを通るように、いくつかの排出膜、バルブ(
図39、46,47,43,42および44)、および空気圧駆動ラインが用いられている。
・チャンバーの封止。
熱サイクルや連続サイクル等の特定の反応は、高温を必要とする。かかる環境では完全な封止が重要であり、それは、反応が加熱されると、チャンバー内の流体の圧力が増加するからである。不十分な封止は、チャンバー外への流体の漏れをもたらし、反応内部のガスが抜け、泡を発生させる。チャンバーを封止することはこれらの問題を最小限にし、反応効率を向上させる。例えば、実施例5と6の熱サイクルチャンバーは、熱サイクル処理の間、バルブV13とV14(
図40,52,53)により封止されている。
・往復混合(reciprocal mixing)。
往復混合は、2液を空気バラストに対して押し付け、逆流を可能とするように圧力を放出することに基づく混合に対するアプローチである。加圧を繰り返し、およびその圧力を減少させることにより、溶液を前後に移動させて混合させることができる。このアプローチは、実施例6のバイオチップにおいて示されており、空気チャンバー(
図70、610)をバネとして用いており、該空気チャンバーは、流体に圧力が加えられた時は、流体の圧力により最初は圧縮され、圧力が解放された時は、流体を押し戻す。空気チャンバーは往復混合の間はバルブV13(
図69、52)により密閉され、そこでは圧力が0から15psigに直線的に増加し、次いで15から0psigが加えられる。混合後、V13を開き、混合溶液をPCRチャンバーの中へと流入させる。
・待ち合わせ排出膜―所定のバイオチップの中で並列処理される複数の試料の流速の変化は、試料の粘度(例えば、DNA含有量)や流路の寸法(すなわち伝導性)を含む要因に起因する。待ち合わせ機能の使用は、バイオチップ内の並列流路を通る複数の試料の流体流れの変化に適応する。このアプローチでは、所定の工程の最大可能時間が、工程時間として用いられる。早く排出膜に到着した試料は、流速の遅い別の試料が待ち合わせポイントに到着する間、停止し待つことなる。このアプローチは、複数の試料を確実に同期させることにより、同時に該複数の試料を処理することを許容する。流体の待ち合わせは、実施例5および6の「熱サイクルチャンバーへの移送」で実行され、そこでは、複数試料用のPCR溶液を共通位置で停止させるために、排出膜(
図40と
図69、100)とバルブ(V29)(
図40と
図69、99)を用いている。複数試料を同期させるための別法ではあるが、より複雑なアプローチは、各試料を別々に制御するとともに、所定の試料がバイオチップ上の所定のポイントに到着した時、スクリプトがフィードバックを受けることができるような検出特徴(例えば、光学的、熱的、化学的、機械的)を組み入れることである。
・チャンバーの計量―溶液は処理フローの中の複数の例において計量される。実施例5および6の計量例は、「溶出液計量」工程であり、計量チャンバー(
図40と70、8)、バルブV12(
図40と70、51)および排出膜VM(
図40と70、100)を用いる。
・間に空気充填物のある溶液の結合。
試料処理において、異なる入口からのものであり、かつ空気で分離されている2つの別々の流体充填物を結合する必要がある場合がある。この例は、「PCR生成物とホルムアミドとの結合」工程である。この工程では、結合チャンバー(
図41および71、78)、排出膜、およびバルブ(
図41、要素100、56、81)が用いられる。結合機能は、チャンバーの中へ各流体充填物を受け入れ、流体間の空気を除去し、結合した流体充填物を前進させるために上記の要素を用いる。この工程では、液体と空気の流れを停止させるためにバルブが用いられる。流体充填物間の空気を排出させるために排出膜が用いられる。
・廃棄チャンバーの充填。
バイオチップ内の廃棄チャンバーは、過剰の溶液、特に計量工程時の過剰の溶液を受け入れるように設計されている。廃棄物の取り扱い例は、「計量ホルムアミド」工程である。この工程では、廃棄チャンバー(
図41および71、77)は、上面全体とバルブV15(
図41および71、54)を密閉する排出膜を有するチャンバーから成る。バルブと廃棄チャンバーのデザインは、体積が変化し、および空気泡を含む可能性のある(そのため流体充填物が不連続である試料)過剰流体に対応している。完全に放出された廃棄チャンバーの使用は、流体充填物の中に存在する空気を排出させることができ、バルブの使用は、廃棄物を廃棄チャンバー内に入れて密閉することができる。
・受動的試料分裂。
空気により分離されている2つの流体の流れを2つの経路に吐き出させるための、受動的伝導差特徴の使用には利点がある。このデザインでは、単一の流路が、排出されたチャンバーが終点となる2つの流路に分裂する。第1の流路の流れ伝導性(flow conductance)は、その流路に沿って受動的流れ制限を組み入れることにより顕著に減少させることができる。流れ制限は抵抗を発生させ、分岐点に流れる液体は、排出されたチャンバーが充填されるまで、あるいは排出膜が完全に湿るまで、伝導性のより高い流路を流れる。いずれかが起こった場合、この流れ流路の制限が高くなり、追加の液体は第2の流路に流入する(流れ制限要素があっても)。このデザインは、伝導性に基づく2つの経路の間の流体の流れの制御に受動的に用いられる。流路内の2つの液体が空気充填物により分離されている場合には特に有用である;第1の液体は第1の経路に流れ、第2の液体は第2の経路に向けられる。
・マクロ流体チャンバーの排出。
実施例5および6の「無秩序な泡生成」工程は、大量の溶液を強力に撹拌することにより行う。泡生成のために適切な空気流を生成させるために大量の空気を放出させる必要がある一方で、バイオチップから試薬が飛散し機器内に無くなることを防ぐために、無秩序な泡生成における分解溶液は、チャンバー内に含有されなくてはならない。これは、カバー内に排出膜を用いることにより達成され、該排出膜は、流体の流れに対しては障壁となるが、無秩序な泡生成からの空気が放出されることを可能とする。無秩序な泡生成を行うか、あるいは何らかの理由で実質的な空気流に曝す必要のあるチャンバーの排出を行うために、同様のデザインを用いることができる。
・駆動ラインの分離―バイオチップ内の流体から機器の駆動ラインを分離するため、カバーおよびバイオチップの他の部分の中にも排出膜を組み入れる。
【0087】
バルブ構造
上記の機能は、2つの流れ制御構造に依存している:バルブおよび排出膜。バイオチップは、バルブを流れ制御に用い、流路内の流体の流れを停止または可能にする。バルブは受動的でも能動的でもよく、受動的バルブはインライン重合ゲル、受動的充填物、および疎水性バルブを含んでもよい。能動的バルブ構造は、機械的バルブ(熱空気圧および形状記憶合金)、非機械的バルブ(ハイドロゲル、ゾルゲル、パラフィン、および氷)、および外部バルブ(組み込みモジュール、空気圧、および非空気圧)を含む。空気圧バルブ構造および機械的バルブ構造は、弾性体膜または非弾性体膜のいずれかを用いることもできる。いずれの場合も、最適な密閉性を付与できるように前記の膜を処理してもよい。
【0088】
多くのタイプのバルブ構造を本発明のバイオチップに用いることができ、およびいくつかのタイプを個々のバイオチップに組み入れてもよい。バルブ構造の選択は、機器へのアプローチと調整しながら、容易に作製できおよび組み立てられるかに、まず基づいている。例えば、バイオチップの特徴を作動させる線材により制御される機械的バルブは、高度な機械的な配列機構および制御機構を備えた機器には適しているであろう。同様に、ワックスの局所的な融解に基づくバルブは、制御された特別の加熱機構を備えた機器が必要である。実施例5および6では、機器は高度な空気圧制御が可能であり、組み入れられたバルブのタイプ(以下に示す)は、空気圧作動に基づいている。他の空気圧および非空気圧(例えば、機械的、液体、ワックス、電気的)作動機構および対応するバルブは、本発明のバイオチップに用いることができる。
【0089】
空気圧作動の弾性体バルブ構造の上面図を
図8に示す。上面図は、感圧性接着剤(PSA)テープと正常時開放バルブ用の弾性体膜を示している。流体および空気を制御するための空気圧作動バルブの断面図を
図9に示す。バルブ構造の要素は、バルブ膜202、バルブシート203、空気圧チャンバー204、流体チャンバー205、両面PSAテープ206、流体スルーホール208、流体流路209、および空気圧流路210を含んでいる。このバルブは3つの要素を組み立てることにより作製できる。
【0090】
流体サブアセンブリー。
このサブアセンブリーは流体209(液体または空気)の流れの流路を含んでいる。流路は、貫通して表面に至る一連のスルーホール208により中断されている。表面では、これらのスルーホールは、バルブアセンブリーのためのバルブシート203を形成する。それは、熱可塑性シート(
図33)に、流路やスルーホールをCNC機械加工することにより作製され、両面を薄いプラスチック膜で覆っている。膜自身、CNC機械加工によりパターンを付与され、流体サンドイッチ層に対する接続を提供するために、CNC機械加工層上の対応する特徴に対して配列されているスルーホールを含む特徴を有している。同様に、流体層と空気圧層の中の同じ特徴も射出成形により作製できる。
【0091】
空気圧サブアセンブリー。
このサブアセンブリーは、機器の空気圧駆動装置を流体サブアセンブリーに結合し、流体サブアセンブリー内の流体を空気圧的に駆動させ、およびバイオチップ内のバルブを空気圧的に作動させる。空気圧流路210は、空気圧駆動装置をバルブチャンバーに接続する。このサブアセンブリーは、熱可塑性シート(
図44)の両面のそれぞれに流路とチャンバーをCNC機械加工することにより作製される。空気圧サンドイッチ層への接続を提供するために、薄いプラスチック膜の特徴は、CNC機械加工層上の対応する特徴に対して配列するスルーホールを含んでいる。結合は、熱的に行うことができるが、超音波的に、溶媒を用いて、および接着剤を用いて行うこともできる。同様に、流体層および空気圧層内の同じ特徴も射出成形により作製できる。
【0092】
バルブサブアセンブリー―このサブアセンブリーは、空気圧サブアセンブリーと流体サブアセンブリーとの間に配置されている。この構造物においては、バルブアセンブリーは、厚さが0.005“である弾性体膜202から成る。空気圧で作動させると、この層は反ることにより、流体層内の流体(空気を含む)の流れを制御する。上部の感圧性接着剤層206は、膜を上部空気圧層に結合するために用いられる。底部の感圧性接着剤は、膜層206を流体層に結合させるために用いる。感圧層は、レーザ切断によりパターン形成される。感圧性接着剤層も、型抜きまたは打ち抜きを含む方法によりパターン形成される。弾性体膜は、厚さが0.005“〜0.015”であり、材料はシリコーン等のゴムを用いることができる。
【0093】
バルブは、3つのサブアセンブリーを一つに組み立てることにより製造された。流体アセンブリーおよび空気圧アセンブリーを熱結合で一体固定される。同様に、空気圧プレートおよび流体プレートは、ネジ、リベット、加熱かしめおよび超音波溶接を含む多数の機械的固定手段を用いることにより一体固定できる。
【0094】
これらのバルブは通常開いている。流体は、流体層の中の流路を通って、スルーホールを上がり、バルブ本体に入り、第2のスルーホールから出て、流体層内の流路に戻る。空気圧流路に圧力が加えられると、圧力はバルブ膜を反らし、バルブ膜およびバルブ流体チャンバーの床に対してこの膜を押し付ける。これによりスルーホール間の経路が密閉され、バルブを通る流れを止める。バルブ構造は膜要素とPSA要素を組み入れており、組立時に、結合させる2つの部品の平坦性の局所的なバラツキに対してそれらの圧縮が適応できるように、それらは高いコンプライアンスを有している。この適応性は、バルブ周辺の効果的な密閉を形成する能力を高める。
【0095】
バルブの密閉圧力を評価するために実験が行われた。バルブの空気圧流路が空気圧駆動装置VDに接続された。所定体積の染色液体(水)が、バルブに接続する流体流路の一部の中に投入された。流体流路への入力は、別の空気圧駆動装置FDに接続された。VDの圧力は、実験を通して、一定に設定されかつ保持された。FDの圧力は、流路内への流体の流れが観察されるまで徐々に増加させた。流体が流れ始める圧力は、所定のバルブ密閉圧力に対するバルブの破裂圧力である。バルブ密閉圧力5、15および22psigに対するバルブの破裂圧力は、それぞれ3、13.5および20psigである。このデータは、流体駆動圧力に比べて2psigを超えて大きい空気圧密閉圧力が、密閉には好ましいことを示している。実施例5および6のバイオチップでは、ほとんどの処理工程では、共通の圧力(22psig)に設定されている。複数のバルブを同時に制御し、および圧力18psigまで流れ流路を制御するには、これは有効である。バルブ駆動圧力を固定することはほとんどの機能に対して適切ではないが、バルブ膜を作動させた時の流体の撹拌を最小限にするために、様々なシステムはバルブ圧力を増加させたり(流体駆動圧力の要求が高い場合)、減少させたり(バルブを開く前)することを可能とする。
【0096】
真空処理工程でバルブが使用され、流体がバルブを通して流体が吸引される場合、バルブを開放状態に保持するために、流体ラインと空気圧ラインの両方にも真空を適用する必要がある。このバルブを閉じると、上述のように圧力が加えられる。
【0097】
実施例4,5,6のバイオチップのすべてのバルブは、通常は開放状態であるが、それらのバルブおよび本実施例のいくつかのタイプのバルブは、通常は閉鎖状態に設計することができる。例えば、
図10は、通常は閉鎖状態にあるPSAテープと弾性体膜バルブの上面図である。
図11は、通常は閉鎖状態にあるPSAテープと弾性体膜バルブの断面図である。このバルブの構造は、
図8および9のバルブ構造とは、非作動状態では、バルブ膜層と密に接触するように、バルブシートが高くなっている点で相違している。作製のためバルブシートを備えたバルブ膜は、作製時および組立時において、伸長状態に置かれている。バルブを開くため、真空にしてバルブ膜をバルブシートから離れるように引っ張る。本実施例(
図10および11の構造を除く)のすべてのバルブは、通常開放状態であることに注意する必要がある。いくつかの用途では、1回使用のバルブ、すなわち、アッセイプロセスの間、開放と閉鎖とを繰り返すようには設計されていないが、例えば、アッセイプロセスの間、開放状態でプロセスを開始させ、1回だけ閉じるバルブを組み入れることが好ましい。
【0098】
剛直なバルブ膜を備え通常は開放状態である空気圧作動バルブの上面を
図12に示す。液体および空気の制御のために、剛直なバルブ膜を備えた空気圧作動バルブの断面図を
図13に示す。バルブ構造の要素には、バルブ膜202、バルブシート203、空気圧チャンバー204、流体チャンバー205、流体スルーホール208、流体流路209、および空気圧流路210が含まれる。このバルブは、3個の要素を組み立てることで作製される。
【0099】
流体サブアセンブリー。
このサブアセンブリーは、流体(液体または空気)の流れのための流路を含んでいる。流路は、表面に至る一連のスルーホール208で中断される。これらのスルーホールはバルブアセンブリーのためのバルブシート203を形成する。あるいは、流路は流体プレートの上面に沿って伸び、バルブを通過する時に中断される。流路の末端はこのアセンブリーのバルブシートを形成する。このアセンブリーは、熱可塑性物に流路とスルーホールを射出成形することにより作製される。この場合、バルブ膜202は、結合される薄膜の熱可塑性膜である。この構造の流体チャンバー205は、密閉効果を発揮するために、最大に反った状態の剛直膜の形状に合わせて作製される。
【0100】
空気圧サブアセンブリー。
このサブアセンブリーは、流体サブアセンブリー内の流体を空気圧で駆動させ、およびバイオチップ内のバルブを空気圧で作動させるために、機器の空気圧駆動装置を流体サブアセンブリーに結合する。空気圧流路は、空気圧駆動装置をバルブチャンバーに結合する。このサブアセンブリーは、熱可塑性物に流路特徴とチャンバー特徴を射出成形することにより作製される(
図72および73)。薄いプラスチック膜の特徴は、空気圧サブアセンブリーへの接続を提供する、射出成形された層上の対応する特徴に合わせて配列されるスルーホールを含んでいる。結合は熱的に行われるが、超音波的、溶媒を用いて、および接着剤を用いて行うこともできる。
【0101】
バルブサブアセンブリー。
このサブアセンブリーは、空気圧サブアセンブリーと流体サブアセンブリーとの間に配置された。この構造では、バルブアセンブリーは薄い熱可塑性膜から成る。膜の厚さは、10〜250ミクロンの間である。実施例6では、厚さが40ミクロン、50ミクロン、および100ミクロンの熱可塑性物の膜を用いた。空気圧で作動させると、流体層内の流体(空気を含む)の流れを制御するために、この層が反る。バルブは3つのサブアセンブリーを一体に組み立てることにより製造された。流体アセンブリーと空気圧アセンブリーは、熱的または溶媒により一体的に結合された。あるいは、上方と下方のサブアセンブリーを一体に結合するために、両面接着剤を用いることもできる。薄い熱可塑性の剛直なバルブ膜は流体層には不可欠であり、バイオチップの組立時には大きな利点をもたらす。
【0102】
これらのバルブは通常開いている。流体は、流体層内の流路を流れ、スルーホールを上がり、バルブ本体に入り、第2のスルーホールから出て、流体層内の流路に戻る。空気圧流路に圧力が加えられると、圧力は剛直なバルブ膜を反らせ、およびこの膜をバルブシートおよびバルブ流体チャンバーの床に押し付けて、スルーホール間の通路を密閉し、バルブを通る流れを止める。
【0103】
100ミクロンの膜を備えたバルブを上述の方法を用いて作製することにより、バルブ密閉圧力を評価するために実験が行われた。バルブの空気圧流路が空気圧駆動装置VDに接続された。所定体積の染色液体(水)が、バルブに結合した流体流路の一部に投入された。流体流路の入口は、別の空気圧駆動装置FDに接続された。FDの圧力は、実験を通して一定に設定および保持された。流路内の流体の流れが観察されるまで、VDの圧力を高レベルの80psigから徐々に減少させた。FDを1,2,3,4および5psigに保持するのに必要なバルブ密閉圧力は、それぞれ14,6、28、54、65.5、および81.5psigであった。このバルブ構造に用いた剛直膜は、流体の流れを閉じるのに高い圧力を加えることを要した。バルブ膜の厚さを、100ミクロンから50ミクロンおよび40ミクロンへ減少させると、流体の流れを閉じるのに必要な圧力に対する要求を実質的に減少させた。流体が流路を通して吸引される真空操作では、バルブを開放状態に保持するために、真空がバルブに適用される。
【0104】
図14は、固定され、通常開放状態にある弾性体膜バルブの上面図を示している。流体および空気を制御するためのこの空気圧作動バルブの断面図を
図15に示す。バルブ構造の要素には、バルブ膜202、バルブシート203、空気圧チャンバー204、流体チャンバー205、流体スルーホール208、流体流路209、空気圧流路210、および圧縮リング212が含まれる。このバルブは3つのサブアセンブリーを組み立てることにより作製される。この構造の利点は、非常に簡単で、PSAテープを必要としないことである。
【0105】
流体サブアセンブリー ―このサブアセンブリーは、流体209(液体または空気)の流れのための流路を含んでいる。流路は、表面に至る一連のスルーホール208により中断されている。表面ではこれらのスルーホールは、バルブアセンブリーのためのバルブシート203を形成する。熱可塑性シートにCNC機械加工により流路とスルーホールを形成し(
図33)、両面を薄いプラスチック膜で覆う(
図36および
図37)ことにより作製される。この場合、薄膜プラスチックは、結合される熱可塑性膜である。膜は、CNC機械加工によりパターン形成され、流体サンドイッチ層への接続を提供する、CNC機械加工された層上の対応する特徴に合わせて配列されるスルーホールを含んでいる。同様に、流体層と空気圧層の内部の同じ特徴も、射出成形により作製可能である。一連のバルブ膜圧縮リングは、流体チャンバー212の周囲に形成されている。
【0106】
空気圧サブアセンブリー ―このサブアセンブリーは、流体サブアセンブリー内の流体を空気圧駆動させ、およびバイオチップ内のバルブを空気圧作動させるために、機器の空気圧駆動装置を流体サブアセンブリーに結合する。空気圧流路210は、空気圧駆動装置をバルブチャンバーに結合する。このサブアセンブリーは、熱可塑性シートの両面のそれぞれの上に流路とスルーホールをCNC機械加工することにより作製される(
図12)。薄いプラスチック膜の中の特徴は、CNC機械加工された層上の対応する特徴に合わせて配列されるスルーホールを含み、該スルーホールは空気圧サンドイッチ層への接続を提供する。結合は、熱的に行われるが、超音波的、溶媒を用いて、および接着剤を用いて行うこともできる。同様に、流体層と空気圧層の内部の同じ特徴を、射出成形により作製することもできる。一連のバルブ膜圧縮リングは、空気圧チャンバー211の周囲に形成される。流体チャンバーおよび空気圧チャンバーの圧縮リングは、互いに一致し、互いに位置合わせして配列する。
【0107】
バルブサブアセンブリー ―このサブアセンブリーは、空気圧サブアセンブリーと流体サブアセンブリーとの間に配置されている。この構造では、バルブアセンブリーは、厚さが0.005”であるシリコーン膜から成る。空気圧で作動させると、この層は反ることにより、流体層内の流体(空気を含む)の流れを制御する。
【0108】
バルブは、3つのサブアセンブリーを一体的に組み立てることにより製造される。流体アセンブリーと空気圧アセンブリーは熱結合により一体的に固定される。同様に、空気圧プレートおよび流体プレートは、ネジ、リベット、加熱かしめ、および超音波溶接を含む多数の機械的固定方法を用いて一体的に固定される。空気圧層と流体層は、圧縮リング(212)間の膜層が圧縮されるように結合される。圧縮度は、5%〜60%であり、バルブ膜の硬度計(durometer)と厚さの関数である。圧縮度は、空気圧駆動装置が空気圧チャンバー内に密閉され、流体が流体チャンバーから漏れなければ十分である。
【0109】
排出構造
装置のマイクロ流体要素は、空気を排出し、流体の流れに対する障壁として作用するために、排出膜を用いる。実施例5および6のバイオチップに使用された排出膜は、移送される液体の表面張力および表面自由エネルギーに基づいて選択された。その2つの間に大きな差が存在すると、固体表面と液体との間の接触角が大きく、液滴が膜に反発し膜を汚すことがない。別の検討は、膜を通過する空気流速である。空気が制限なく排出されるためには、その値は十分に高くなければならない。典型的には、所定の材料では、ポートの大きさが小さくなると、表面自由エネルギーと表面張力との差は大きくなるが、空気流速はポートの大きさに反比例する。例えば、水の表面張力は73dynes/cm、イソプロピルアルコールは22dynes/cm、およびオイルは30dynes/cmである。
【0110】
バイオチップに使用される排出膜は、以下の材料から成るものを含む:ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、医療用の排出および気体濾過に広く使用されている材料。それは不活性な材料であり、優れた流れ特性と高い化学的抵抗性を提供する。この膜タイプの切断形状の寸法不安定性は、オーバーモールド操作時のロボットによるハンドリングに困難を生じさせる場合がある。PTFEは、ガンマ線またはE線殺菌には不適当であり、それはイオン化放射線に晒されると、鎖が切断されて分解するからである;ポリビニリデンフロライド(PVDF)は、良好な流れ特性および広い耐薬品性を提供する丈夫な材料である。それは、そのままおよび超疎水形態の両方で利用可能である;超高分子量ポリエチレン(UPE)は、医療用の排出および気体濾過の市場により最近上市されたものである。それは、そのままで疎水的な材料であり、優れた流れ特性と広い耐薬品性を提供する;疎水化処理された変性アクリル膜は、排出用途に対しては経済的な選択である。それは、疎油性であり、疎水性であり、および化学的適合性がある。
【0111】
図16は、実施例15のバイオチップに使用された排出膜構造の断面図を示している。排出膜(
図16、213)は、該構造に組み入れられ、該膜は空気圧層と流体層との間に熱結合により配置されている。
図17は、実施例16のバイオチップに使用された排出膜構造(
図17、213)の断面図を示している。この排出膜構造では、排出膜は流体層に溶接リッジを用いて溶接されている。
【0112】
実施例3.バイオチップインターフェイス
バイオチップは機器と相互作用する。機器は、試料の分析達成に必要なすべてのサブシステムを提供するものであり、
図58に示すように、高電圧および低電圧の電力サブシステム、熱サイクルシステム、空気圧サブシステム、磁気サブシステム、機械サブシステム、光学サブシステム、補強サブシステム、プロセス制御サブシステム、およびコンピュータサブシステムを含んでいる。バイオチップインターフェイスへの機器は、マイクロ流体駆動装置およびバイオチップ内で実行される一連の処理に応じて、これらのサブシステムの1種または複数種を含む。本明細書の実施例では、以下の通り、バイオチップと機器とのインターフェイスは、空気圧的、電気的、光学的、および機械的である:
【0113】
空気圧サブシステムインターフェイス
空気圧サブシステムは、空気圧マニホールドを介してバイオチップに結合する。
図18は、実施例5のバイオチップ用のものであり、空気圧プレートの上面上に配置された一連の空気圧ポートからなる空気圧マニホールド領域を示している。5つのタイプのポートが空気圧インターフェイスと一体化されている:
低流動駆動装置。低流動ポートは、バルブの作動のために空気を供給し、流体を駆動させてバイオチップに流すために使用される。
高流動駆動装置。高流動ポートは、泡による撹拌や精製膜の乾燥等の処理に必要な空気を供給するために使用され、19SLPMまでの流れを必要とする。圧力低下を最小限にするために、ポートの寸法は大きくされている。
高圧駆動装置。このポートは、マトリックス充填物をふるいにかけるために必要な、400psigまでの供給に使用される。
凝縮物ポート。機器内の機械的ポンプにより生成する凝縮物は、空気圧インターフェイスを介してバイオチップのチャンバーの中へ必要に応じて運ばれる。
【0114】
機器試験ポート。
試験ポートは、機器空気圧システムを試験するため、および機器の空気圧マニホールドの配列をバイオチップの配列に対して確認するために、空気圧マニホールドの中に組み入れることができる。
【0115】
空気圧ポートは、34個の低流動ポートと7個の高流動ポートを有し、配列されている。この空気圧マニホールドの配置は、一部は以下の検討に基づき選択された。
【0116】
インターフェイスサイトの表面積の最小限化。空気圧インターフェイス領域をより圧縮すれば、射出成形時の局所的収縮や反りがインターフェイスの妨げとなることがより少なくなり、配列が向上する。
【0117】
すべての空気圧ポートを一つのインターフェイスサイトに集める。このアプローチは機器を単純化するもので、システムを頑丈にして実験室の外でも使用することができる利点がある。典型的には、単一のインターフェイスが、バイオチップのフットプリント内の中心に配置されるが、バイオチップの端部に配置されてもよい。代わりに、複数のインターフェイスをバイオチップ全体に分散させてもよい。実施例5および6のバイオチップでは、空気圧ポートは、1つの位置に集中させ、機器とバイオチップとの間の密な結合点を可能にしている。マニホールドのこの構成と配置は、中心にポートがない場合またはバイオチップの末端部にすべてのポートが配置されている場合のいずれと比較しても、バイオチップ内への空気圧ラインの通路決定を単純化する。これは、マニホールドと空気圧ポートとの間の配列の許容度を増加させるとともに、機器内の空気圧配管の通路決定を単純化する。
【0118】
特徴密度に基づくバイオチップ上のポートの配置―流体プレートと空気圧プレートの上には特徴密度が低い領域がある。可能であれば、これらの領域に空気圧マニホールドを配置することが最適である。一般に、バイオチップ上の空間の最適な使用(すなわち、すべてのマイクロ流体特徴およびマクロ流体特徴の理想的な詰め方)は、与えられた寸法のバイオチップの特徴密度と処理の複雑さを最大化するためには、重要である。実施例5および6のバイオチップでは、空気圧ポートは空気圧層の上面上に配置される。同様に、空気圧ポートは、流体層の底面上にも配置することができ、およびチップホルダーを介して機器に結合することもできる。ポートの絶対的は特徴密度、機能有用性、およびデザインの容易性により決定される。実施例5および6のバイオチップでは、熱サイクル領域は、流体サブアセンブリーの底面上に配置され、熱循環器との効率的な熱接触を確保するために、上からの固定圧力が必要である。したがって、単一の固定機構が、バイオチップと熱的および空気圧的に同時に相互作用するように機能するように、集中された空気圧ポートは空気圧サブアセンブリーの上面上に配置された。
【0119】
閉鎖システム−上述のように、本発明のバイオチップは、処理中および処理後にすべての液体がバイオチップ内に配置される、閉鎖システムである。排出膜(実施例2に記載されているように)は、バイオチップからの流体が不注意で機器の空気圧マニホールドの中へ流入するのを防ぐために使用される。
【0120】
空気圧流れと空気圧マニホールドの説明として、実施例5の「分解工程」用のマクロ流体処理サブシステム内に流体を動かすアプローチが提示される。この工程を実施するため、分解溶液を分解試薬チャンバー(
図39、20)からスワブチャンバー(
図39、19)へ移動させるために、分解駆動ラインDL1(
図39、68)を作動させた。プロセスコントローラーは、空気圧インターフェイス上の駆動ラインDL1に所望の圧力を加える、機器のソレノイドリレーを作動させた(
図39、20)。空気圧マニホールドのDL1ポート(
図18、301)における空気圧インターフェイスを通り、空気圧プレートの空気圧流路(
図18、302)に沿って、空気圧プレート内のマイクロ流体インターフェイスポート(
図19、303)へと空気を移動させる。このインターフェイスポートは、空気圧駆動圧力を、マクロ流体処理ブロック(
図47、26)内の空気圧流路を通って、マクロ流体処理サブアセンブリー(
図48、27)のカバーの中へと届けた。次にカバーは、流路(
図48および53、304)に沿って、分解試薬チャンバー(
図47、20)の中へと空気圧駆動圧力を届けた。まとめると、結果としての工程は、分解試薬チャンバーから流体サブアセンブリーを通過し、最終的にスワブチャンバー(
図20、20)に分解試薬を移送する工程である。
【0121】
同様に、チャンバー内の試薬が実施例1のように箔により密閉される場合、空気圧駆動装置は2段階動作し、第1段階では、箔を破裂させるパルスを発生させ、第2段階では、上述のように非RSRと同様である。
【0122】
高電圧サブシステムインターフェイス
高電圧サブシステムは、一連の電極ピンとワイヤハーネスを介してバイオチップと結合している。あるいは、エッチングした一連の薄い金属電極を作製することもできる。この構成では、取付具をバイオチップの中に押し込むことにより、電極ピンがアノードとカソードの中に挿入される。電極ピンは、空気圧サブアセンブリーの上部上に配置された電極片に接触し、かつ取付具を押し込むことにより挿入される。この電極片は、機器上の一連のバネ付き電極により機器に結合されている。電極片は、幅広い部品に使用されている高性能金属である、ベリリウム銅(BeCu)を用いて製造されている。その機械的および電気的特性により、その金属は、EMI/RFIシールド製品用の理想的な材料である。電極片は、別の金属から製造することもできる。
【0123】
光学サブシステムインターフェイス
2009/00229983として公開され、名称が「核酸およびタンパク質分析用の補強された装置」である出願No.12/396,110、および2009/0020427として公開され、名称が「プラスチック製のマイクロ流体分離プラットホームおよび検出プラットホーム」である出願No.12/080,745の特許出願に記載されているように、両方とも出典明示により本明細書に組み入れられるものであるが、チップホルダーの開口を介して、空気圧−バルブ−流体スタック(実施例5および6)の分離および検出窓と、レーザーが組み合わされている。レーンが分離および検出バイオチップ内のレーンを見つけ出せるように、一連のフォトダイオードが使用されている。
【0124】
熱サブシステムインターフェイス
2009/0023603として公開され、名称が「標的核酸の迅速多重増幅方法」であり、出典明示により本明細書に組み入れられる出願No.12/080,746に記載されているように、熱サイクルチャンバーがTEC要素の中の中心に位置するように、熱循環器およびバイオチップが配置されている。温度サイクルプロファイルを正確に生成させるため、熱サイクルチャンバーとTECとの間に良好な接触を確保するには、固定力90lbsが必要である。固定圧力は、固定アームとシリコーンパッドの圧縮により生成させる。固定アームはシリコーンパッド上に押し倒すのに必要な圧力を加える。
【0125】
効率的な熱移動に必要な固定力を評価するための実験が行われた。PCRバイオチップ(
図21、305)に対して制御された力を加えるために、空気圧作動シリンダー(
図21、305)が使用された。いろいろな力のレベルで、標準プロトコル[ギースら(2009)、「慣用およびマイクロ流体STR分析のための迅速多重PCR」、J.Forensic Sci,54(6):1287-96、出典明示により本明細書に組み入れられる]に基づきPCRが実施され、およびSTRプロファイルが解析された。データによれば、75lbsより小さな力では、矛盾するSTRプロファイルが得られた。75lbsを越える力が加えられた場合、整合し効果的な増幅が認められた(
図22)。
【0126】
分離および検出サブシステムは、チップホルダー上のヒーターに結合されて温度を50℃に維持する。均一な温度は重要であり、ヒータープレート上にバイオチップを固定することは、温度の均一性の確立および維持に寄与する。
【0127】
機械的配列
バイオチップを機器インターフェイスに合わせて配列するため、一連の機械的配列ガイドを含む機器のチップホルダー上にバイオチップが配置される。これらのガイドは、バイオチップのインターフェイス特徴を機器に対して±0.020”の範囲内で配列させる。ガイドは、原点と配向を決めるため、角の近くに、空気圧プレートの端に沿って3つの位置を決める。この配置において、ガイドは、空気圧層のみに対して配置される切り欠け部を有している(これは、流体層と空気圧プレート層との間のわずかな配列のずれによる影響を最小限にする)。
【0128】
実施例4.DNAとPCR試薬を受容および混合し、および同時に16の試料に対して、17分で16重増幅反応を行うCNC機械加工バイオチップ
図23のPCRバイオチップ401がスライド形式に射出成形され、迅速多重PCRに対して旨く試験された。このバイオチップは、25mm×75mm×1.1mm(厚さ)である。システムは、ギースら(2009)の「慣用およびマイクロ流体STR分析のための迅速多重PCR」、J.Forensic Sci,54(6):1287-96、に記載されているように、ヒトDNA(DNA6pg、実質的に単一コピーの検出限界)相当の単一ゲノムからのSTRフラグメントの多重増幅を可能とする。
【0129】
その結果に基づき、バイオチップ(76.2mm×127mmのフットプリント)が設計され、およびCNC機械加工により製造された。流体層1(
図24、403)および流体層2(
図25、404)、空気圧層1(
図26、405)および空気圧層2(
図27、406)が、熱可塑性シートからCNC機械加工により製造された。流体サブアセンブリー(
図28、407)は、流体層1(
図24、403)、流体層2(
図25、404)およびパターン化されていない薄い熱可塑性膜を組み合わせて熱結合することにより製造された。空気圧サブアセンブリー(
図29、408)は、空気圧層1(
図26、405)と空気圧層2(
図27、406)を熱結合することにより製造された。バイオチップアセンブリー(
図30、409)は、流体サブアセンブリー(
図28、407)を空気圧サブアセンブリー(
図30、409)に結合し、弾性体の、実施例2に記載された通常開放状態のバルブアセンブリーを組み入れることにより製造された。
【0130】
バイオチップを試験するため、16試料の増幅に十分な160μLのPCR試薬のマスターミックスが調製され、CNC機械加工されたバイオチップのマスターミックス試薬槽(
図28、410)の中に挿入された。9.3μLのDNA(全テンプレート1ng)が各試料ウェル(
図28、411)の中に挿入された。バイオチップが空気圧/熱サイクル機器(
図31)に接続された。以下の工程を有する自動化されたスクリプトが実行された:
・開始
すべてのバルブが閉じられた。
・試料と試薬の待ち合わせ
駆動ラインDR(
図28、419)に1psigを加えることにより、バイオチップのPCR計量チャンバー(
図28、412)の中にPCR試薬を空気圧で移動させた。マスターミックスの体積9μLが計量された。駆動ラインDS(
図28、418)に各経路の試料は1psigを加えることにより、各経路の試料を排出膜で待ち合わせさせた。
・過剰のPCR試薬の除去
バルブWV(
図28、413)を開き、駆動ラインDR(
図28、419)に1psigを加え、試薬廃棄チャンバー(
図28、414)へ流入させることにより、過剰のPCRマスターミックスを供給流路から除去した。試薬廃棄チャンバー(
図28、414)は、バルブWV(
図28、413)を閉じることにより密閉され、駆動ラインDR(
図28、419)を停止させた。
・結合チャンバーへの試薬の移動(JC)
バルブRV(
図28、416)を開き、DR(
図28、418)に1psigの空気圧駆動圧力を30秒間加えることにより、PCRマスターミックスを結合チャンバー(
図28、415)の中へ空気圧で移動させた。試薬バルブRV(
図28、416)を閉じ、DR(
図28、418)を停止させた。
・結合チャンバーへの試料の移動(JC)
バルブSV(
図28、415)を開き、DS(
図28、419)に1psigの空気圧駆動圧力を30秒間加えることにより、結合チャンバー(
図28、415)の中へ試料を空気圧で移動させた。試料とPCRマスターミックスは結合チャンバーの中で一体となりPCR溶液を形成した。バルブSV(
図28、415)を閉じ、駆動ラインDS(
図28、419)を停止させた。
・混合チャンバーへのPCR溶液の移動(MC)
バルブJVC(
図28、420)とRV(
図28、416)を開き、DR(
図28、418)に1psigの圧力を30秒間加えることにより、混合チャンバー(
図28、421)の中へPCR溶液を導入した。
・試料と試薬の混合
バルブRV(
図28、416、バルブJCVはすでに開いている)を開き、0から15psigへは直線的に増加し、次いで15から0psig(30秒間)になる駆動圧力をDR(
図28、418)に加えることにより、PCR溶液を空気チャンバーAC(
図28、422)に移動させることにより、往復混合が行われた。これは2回繰り返された。バルブJCV(
図28、420)とRV(
図28、416)を閉じ、DR(
図28、418)を停止させた。
・PCRチャンバーへのPCR溶液の移動(PC)
バルブPV1(
図28、424)、PV2(
図28、425)、JVC(
図28、420)およびRV(
図28、416)を開き、駆動ラインDR(
図28、418)に0.5psigの圧力を30秒間加えることにより、PCRチャンバー(
図28、423)の中へPCR溶液を移動させた。バルブPV1(
図28、424)、PV2(
図28、425)、JCV(
図28、420)およびRV(
図28、416)を閉じた。
・熱サイクル
バルブPV1(
図28、424)とPV2(
図28、425)を閉じ、17分を要する28サイクルプロトコルに従い熱サイクルを行った。
・PCR生成物の回収
バルブOV1(
図28、426)、PV1(
図28、424)、PV2(
図28、425)、JCV(
図28、420)およびRV(
図28、416)を開いた。ポートOP(
図29、427)からPCR生成物を手作業で回収するために、ピペットチップを用いた。PCR生成物が、16バイオチップ試料から回収された。
【0131】
結果
スクリプトの実施に続いて、PCR反応物を各流路から除去し、ジーンベンチ(Genebench)で分離と検出を行った。反応物の代表的なSTRプロファイルを
図32に示す。
【0132】
実施例5.核酸を精製し、精製されたDNAを増幅し、増幅されたDNAを電気泳動で分離し、および自動化されたスクリプトを用いてSTRプロファイルを生成させる、CNC機械加工された完全統合バイオチップ
5つの頬スワブを受け容れ、STRプロファイルを生成させる、固定型で単一構造のプラスチックバイオチップは、以下の部分から成る:
【0133】
流体サブアセンブリー ―このサブアセンブリーは、流体をバイオチップの中へ移送して処理し、空気圧サブアセンブリー、マクロ流体処理サブアセンブリー、バルブサブアセンブリー、並びに分離および検出サブアセンブリーと相互作用をする。COPシートの「上面および底面の両面上に相互接続された流路とチャンバーをCNC機械加工することにより、流体サブアセンブリーの流体プレートが製造された。流体プレートの寸法は、276mm×117mm×2.5mmである。
図33は、流体プレート1の上面を示し、
図34は流体プレート1の底面を示し、
図35は流体プレート1の透視図を示し、両面からの特徴を示している。CNC機械加工された流体プレートは、厚さ2.5mmの射出成形された素材を機械加工することにより製造された。プレートの上面および底面の両方は、パターンを付与された薄いプラスチック膜で覆われている。
図36は上部にパターンを付与された薄膜2を示し、
図37は底部にパターンを付与された薄膜3を示し;それらの薄膜の厚さは100ミクロンである。流体プレートの上部と底部の両方に存在する特徴を持つことの利点は、組み立てのためには、1つの流体プレートだけでよいことである(そうでなければ2つのプレートが必要となる)。一般的に、アセンブリーに用いるプレートの数を最小限にすることには、大きな利点があり、すなわち、要素の配列をより真っ直ぐにするとともにより信頼性の高いものとし、ひずみ差や収縮差の影響を最小限にし、それにより、より少ないコストでより効果的な組み立てを可能とする。
【0134】
バイオチップの流路の特徴は以下の通りである:1)試料処理流路。分析される各頬スワブは、DNA精製、PCR増幅、分離および検出、並びにこれら核酸操作を行う、一連の独特な流路に対応する。各試料に対する該一連の独特な流路は、他の試料の一連の流路とは接続していない。すなわち、流路は、試料から試料へとは接続しておらず、およびチャンバー(アノードチャンバー以外)、フィルター領域、または他の試料に関係する膜領域を共有していないので、各試料の純度は保証され、および不注意による試料の混合または相互汚染を防ぐことができる。所定の空気圧駆動ラインは分かれて複数の試料を平行に移動させるが、移動は空気圧的に達成され、各試料の完全性は保証される。さらに、各試料に固有の一連の流路は閉鎖通路である;空気のみが空気圧駆動ラインからバイオチップに入り、および空気のみが排出膜を通過してバイオチップから出る−液体試薬はバイオチップにより用意され、液体はバイオチップから出ない。
図38は、流路4において単一の試料が流体プレートを通って流れることを示している。
図39は精製領域5を通るこの通路4の拡大図を示し、
図40は増幅領域6を通るこの通路4の拡大図を示し、および
図41は分離および検出領域7を通るこの通路4の拡大図を示している。電気泳動の方向が精製および増幅の方向と反対であることに留意することは重要である。直ぐ下の分離および検出層へ試料を回す流体層内のスルーホールによって、この方向の変化が促進される。2)ゲル処理流路。これらの流路は、分離および検出の準備において、分離および検出サブアセンブリーを篩い用マトリックスおよびバッファーで満たすのに使用される。すなわち、流路は、共通の試薬槽から充填される。精製後、増幅および予備電気泳動が終了すると、各流路は、試料に特定のカソードを介して1つの試料を受容する。各試料は、1つのカソードチャンバーと分離流路を有し、およびすべての試料は、単一のアノードチャンバーを共有しており、それを通して電気泳動試薬が装填される。
【0135】
流体プレートは、特定のフィルター領域、精製膜領域、および、いくつかのタイプのチャンバーを含んでおり、該チャンバーは、計量チャンバー、再構成チャンバー、混合チャンバー、結合チャンバー、廃棄チャンバー、並びにカソードチャンバーおよびアノードチャンバーを含んでいる。これらのチャンバーと領域は、流路に沿って位置し、要求される機能に応じて決定される形状および寸法を有している。例えば、試薬計量チャンバー(
図40、8)の特徴は、カソードチャンバー(
図41、9)または再構成チャンバー(
図40、10)とは異なる寸法および体積にある。
【0136】
流路、チャンバー、フィルター領域および膜領域は、この場合、薄い熱可塑性膜を結合することにより覆われている(CNC機械加工または射出成形されたプレートもカバーを形成する)。薄膜−流体層−薄膜のサンドイッチは、「流体サブアセンブリー」と呼ばれる。
【0137】
膜自身がCNC機械加工によりパターンを付与されており、本発明の薄膜も、型抜きまたは打ち抜きおよびレーザー切断を含む多くの処理法を用いてパターンを付与できる。これらの薄膜は、CNC機械加工された流体層上の対応する特徴に合わせて配列され、流体層の特徴への接続を可能にするスルーホールを含む特徴を有している。例えば、試料は、流体層から、底面にパターンを付与された薄膜の中のスルーホールを通り、分離および検出サブアセンブリーに到達する。上部薄膜および下部薄膜をプレートに結合する前に、微粒子濾過(
図39、11)、DNA精製(
図39、12)、および排出(
図41、13)を含む機能のために追加の構成要素も組み入れられる。パターンを付与された薄膜の流体プレートへの結合は、熱的に達成されるが、超音波的に、溶媒を用いて、および接着剤を用いて行うこともできる。結合方法を容易にするためにプレート上および膜上の特徴を追加することができる;例えば、超音波溶接の場所にエネルギー指向リッジ(energy director ridges)を配置することができる。
【0138】
空気圧サブアセンブリー ―このサブアセンブリーは、機器の空気圧駆動装置(実施例3に記載されているように)を、流体サブアセンブリー、マクロ流体処理サブアセンブリー、バルブサブアセンブリー、並びに分離および検出サブアセンブリーに結合して、流体を空気圧で移動させ、およびバイオチップ内のバルブを作動させる。COPシートの両面のそれぞれに、相互接続された一連の空気圧駆動ラインをCNC機械加工することによりこのサブアセンブリーが製造される。駆動ラインのいくつかは試料に特有のものであり、他のものは、ゲル充填等の試料を選ばない機能に関係するものである。
図42は、空気圧プレート14の上面を示し、
図43は空気圧プレート14の底面を示し、
図44は空気圧プレート14の透視図を示し、両面の特徴を示している。空気圧プレートの大きさは、276.7mm×117.3mm×2.50mmである。CNC機械加工された空気圧プレートは、厚さ2.5mmの射出成形素材を機械加工することにより製造された。空気圧プレートの上面は、パターンを付与された薄いプラスチック膜15(
図45)で覆われている。空気圧プレートの底面は、完全な薄膜16に覆われ、薄膜の特定の領域が、結合後に(
図46)バルブサブアセンブリーからのプレートに接続できるように切り抜かれている。パターンを付与された薄膜およびパターンを付与されていない薄膜の両方の厚さは100ミクロンである。パターンは、結合の前(上部空気圧膜の場合のように)または結合の後で(底部空気圧膜の場合のように)に形成することができる。結合後のパターン付与工程が選択された理由は、大きな切り抜き領域は結合後簡単に除去できるからである。空気圧プレートへの薄膜の結合は、熱的に達成されたが、超音波的に、溶媒を用いて、および接着剤を用いて行うこともできる。結合方法を容易にするため、プレート上および膜上の特徴を追加することができる;例えば、エネルギー指向リッジを超音波溶接の場所に配置することができる。最後に、空気圧プレートは、流体特徴等も有することができる。これは有用であり、例えば、流体プレートが特徴で満たされ、空気圧プレートが利用可能な空間を有している。この場合の空気圧プレートは、バイオチップ全体におけるその位置およびその特徴の大部分が空気圧的であるという事実により、まだ空気圧プレートと呼ばれる。それらの位置に関係なく、空気圧ラインと空気圧流路は空気のみを含む。これに対し、流体特徴は、液体と空気を含んでもよい。
【0139】
薄いプラスチック膜における特徴は、CNC機械加工された空気圧層上の対応する特徴に合わせて配列され、空気圧層への直接接続または空気圧層を介する流体層への間接接続を提供する、スルーホールを含む。例えば、マクロ流体処理サブアセンブリーのチャンバーの中の試薬は、流体サブアセンブリーへの途中で、空気圧サブアセンブリー(薄膜および空気圧プレート)のスルーホールを通る。パターンを付与された薄膜の空気圧プレートへの結合は、熱的に達成されたが、超音波的に、溶媒を用いて、および接着剤を用いて行うこともできる。
【0140】
バルブサブアセンブリー ―このサブアセンブリーは、空気圧サブアセンブリーと流体サブアセンブリーとの間に配置されている。それは弾性体材料から成り、空気圧で作動させると、変形し、流体層内の流体(空気を含む)の流れを止める。このサブアセンブリーは、曲げることの可能な弾性体膜から成るが、実施例2に記載されたバルブアセンブリーはいずれも組み入れることができる。
【0141】
空気圧―バルブ―流体スタック ―このサブアセンブリーは、空気圧サブアセンブリー、バルブサブアセンブリー、および流体サブアセンブリーを組み合わせ、一体となるようにスタックを熱結合することにより製造される。排出膜(
図44、17)は、流体サブアセンブリー(
図35、13)の排出特徴および空気圧サブアセンブリーの対応する特徴の上にそれらを配置することにより、このサブアセンブリーの中に組み入れられる。排出膜は、単一片の形状であり、複数の試料の排出特徴を同時に覆うために使用される。1つの排出膜片が、多くの排出領域を覆うために用いられる。一般的に、手作業または自動化のいずれにおいても、構成要素数の減少は組み立てを容易にする。2つのサブアセンブリーの結合は、熱的に、超音波的に、溶媒を用いて、締め付け、および接着剤を用いても行うことができる。結合方法を容易にするために、プレート上および膜上の特徴を追加することができる;例えば、超音波溶接の場所にエネルギー指向リッジを配置することができ、または熱結合を容易にするために追加の結合層を用いることができる。
【0142】
マクロ流体処理サブアセンブリー ―このサブアセンブリーは、2つの大きな要素から成る:マクロ流体ブロックとカバーである。このサブアセンブリーは、試料を受け容れ、試薬をバイオチップに用意し、およびマイクロ流体体積とマクロ流体体積との間のインターフェイスとして働き、プロセスは、名称が「核酸精製」であり、出典明示により本明細書に組み入れられる、出願番号12/699,564に詳しく記載されている。
図47は、スワブ19を備えたマクロ流体ブロック18、分解溶液20、エタノール21、洗浄液22、溶出液23試薬チャンバー、溶解物保持用流体処理チャンバー24、溶出液均質化25、空気58、TTE59、およびホルムアミド60チャンバーを示している。ブロックの大きさは、102.8mm×50.5mm×74.7mmである。マクロ流体ブロックは、0.15〜3.0mLの体積を使用し、空気圧サブアセンブリーおよびカバーと接続する。ブロックの側面は空気圧駆動ライン26を含む;これらは空気圧サブアセンブリーの空気圧界面から始まり、それを通って該ブロックに至る。該ブロックから、駆動ラインはカバーに至る。実施例5に記載された実施形態を含み、いくつかの実施形態は、マクロ処理サブアセンブリーを含むが、本明細書に記載された技術に基づくすべてのバイオチップがマクロ処理サブアセンブリーを含むものではない。例えば、DNAまたは精製された細胞の試料は、バルブアセンブリーにより接続された空気圧サブアセンブリーと流体サブアセンブリーを含むバイオチップの中に、注入されることができる。
【0143】
図48〜54は、カバーを示している。カバーは3層から成る。
図48はカバー層1 27の上部を示し、
図49はカバー層1 27の底部を示し、および
図50はカバー層1 27の透視図を示す。
図51はカバー層2 28を示す。
図52はカバー層3 29の上部を示し、
図53はカバー層3 29の底部を示し、および
図54はカバー層3 29の透視図を示す。組み立てられたカバーの大きさは、50.8mm×118.4×4.5mmである。カバーの役目は、ブロックの側面からマクロ流体チャンバーの上部へと空気圧駆動ラインを持ってくることにあり、それにより、試薬の移送、バブリング、および流体処理を容易にする。カバーは、スワブチャンバー30および溶出液保持チャンバー31と連結する排出特徴を有している。排出膜は、チャンバーを分離することにより、圧力を正常にするために空気を逃がす一方で、流体が漏れるのを防ぐ。カバーはスワブを所定の場所に保持する働きも有する。必要に応じて、スワブのキャップまたはカバーに、試料を所定の場所に保持する固定機構を組み入れることもできる。
【0144】
マクロ流体ブロック部材およびカバー部材は、熱可塑性物をCNC機械加工することにより製造された。あるいは、これらの構成要素は、射出成形および圧縮射出成形および押し出しにより製造できる。マクロ流体処理ブロックを成形するため、2より大きいアスペクト比、および1°より小さい抜け勾配を設計に組み入れる。マクロ流体ブロックは、ガスケットやネジを用いて固定することにより、カバーに取り付けられた。ブロックは、両面PSAを用いて空気圧サブアセンブリーに取り付けられる。あるいは、ブロックの取り付けは、溶媒や熱結合でも行うことができる。
【0145】
マクロ流体処理に対する追加のアプローチは、係属中の名称が「核酸精製」である出願番号12/699,564に詳しく記載されており、出典明示により本明細書に組み入れられる。マクロ流体処理アセンブリーは、バイオチップの適用に対して大きな柔軟性を提供する。液体試薬およびそれらの体積は、実行される試料操作のタイプに基づいて容易に変更可能である。スワブチャンバーは、異なるタイプのスワブ、血液試料、および環境試料を含む幅広い様々な試料を受け容れるように変更可能である。特定の環境では、空気圧−バルブ−流体スタックに対して影響を最小限にするようにこれらを変化させることができる;例えば、スタックの中の凍結乾燥されたケーキを単に変更することにより、異なる試料タイプにも全く異なる増幅アッセイを行うことを可能にする。
【0146】
分離および検出サブアセンブリー ―このサブアセンブリーは、核酸の分離および検出に使用され、16のマイクロ流路から成り、それぞれが注入ポートと分離ポートを備えている。プラスチック製バイオチップの分離および検出の詳細は、2009/0020427として公開され、名称が「プラスチック製のマイクロ流体分離および検出プラットホーム」である出願番号12/080,745に詳しく記載されており、出典明示により本明細書に組み入れられる。試料注入に対して2つのアプローチ、圧力負荷と交差注入が用いられた。
図55は、圧力注入32用の分離および検出バイオチップを示している。それは、界面導電注入用分離カラムの始点まで、分離および検出用の試料を空気圧で移動させる。分離流路(幅90ミクロン、深さ40ミクロン)の断面積と、アノードとカソードの間の長さ(24cm)は、すべての流路で同じである。このサブアセンブリーは、薄い熱可塑性シート上にエンボス加工により製造された。あるいは、サブアセンブリーは、押し出し成形または射出成形により製造できる。スルーホールは、型押しされたシートの内部に形成され、マイクロ流体サブアセンブリーからの流路に対する接続を提供する。流路は、該流路の上に薄い熱可塑性シートを結合させることにより覆われた。
【0147】
図56は、分離および検出用の試料を界面導電注入用分離カラム33の始点まで界面導電移動させるための、交差注入用の分離および検出バイオチップを示している。バイオチップの大きさは、77.7mm×276mm×376ミクロンである。分離流路(幅90ミクロン、深さ40ミクロン)の断面積と、アノードとカソードの間の長さ(25cm)は、すべての流路で同じであった。このサブアセンブリーでは、16流路の内の6個が作動していた。各流路の分離長さ(交差点と、励起/検出窓との間の距離)は、16〜20cmの範囲である。カソードウェルと注入器との間の流路の断面積は、すべての電気抵抗、すなわちカソードと交差点との間の電場がバイアス下で実質的に同じになるように調整された。これにより、試料が投入される流路に関係なく、試料に加えられる電場が同じになることが確保される。すべての流路の交差電圧は実質的に同じであった。試料注入用の試料入口アームおよび試料廃棄アームは、両方とも長さが2.5mmであった。両方の流路の間のオフセットは500ミクロンであった。このサブアセンブリーは、薄い熱可塑性シートの上に型押しすることにより製造された。あるいは、サブアセンブリーは、押し出し成形または射出成形により製造してもよい。スルーホールは型押しされたシートの中に形成され、マイクロ流体サブアセンブリーからの流路への接続を提供する。別の薄い熱可塑性シートを溶剤結合することにより、流路は覆われた。あるいは、熱結合または熱補助型溶剤結合により取り付けることができる。
【0148】
分離および検出サブアセンブリー(圧力負荷または交差注入形式のいずれか)が、接着剤テープにより流体サブアセンブリーに取り付けられ、分離および検出バイオチップ内への核酸の流れが、NA精製および増幅とは反対の方向になるように、サブアセンブリーが配置された。すなわち、精製およびPCR増幅の時の流体の一般的な流れとは反対の方向に、分離および検出サブアセンブリーを通って核酸は移動する。サブアセンブリーの対向面を用いたこの方向の逆転により、複雑なバイオチップの長さを実質的に減少させることが可能となる。
図57は、いかにしてすべての層−マクロ流体カバー27,28および29;マクロ流体ブロック18、上部膜と底部膜を有する空気圧層12,15および16;バルブサブアセンブリー層;上部膜と底部膜を有する流体層1,2および3;並びに分離および検出バイオチップ32または33が、積層一体化されてバイオチップを形成するかを示している。
図58は、バイオチップアセンブリー34の写真であり、矢印は処理フローの方向を示している。
【0149】
図39および41を参照し、バイオチップを動かすために、試験の前にマクロ流体処理サブアセンブリーに以下の試薬が投入された:
・分解溶液(
図39、20)、550μL−細胞溶解および試料からDNAを放出させるためのカオトロピック塩系試薬。
・エタノール(
図39、20)、550μL−溶解溶液、溶解細胞とともに用い、シリカ系精製フィルターに対するDNAの結合を促進する。
・洗浄液(
図39、22)、3mL−精製フィルターを洗浄して、タンパク質と他の生物学的材料を除去して純粋なDNAを生成させるためも、洗浄用エタノール系試薬。
・溶出液(
図39、23)、300μl−精製フィルターから精製されたDNAを放出させ、DNAを安定化させる、トリス−EDTA系試薬。
・TTEバッファー(
図41、58)、1.6mL−電気泳動のためのトリス−タップス−EDTA系試薬。
・ホルムアミド(
図41、59)、150μL−PCR生成物を希釈して、分離および検出用の試料を調製するための変性溶液。試料とホルムアミドを約1:4(1:50から1:1.5の範囲)の比率で混合する。変性を促進するために加熱または急冷は不要である。従来の加熱/冷却工程を省略することで機器を単純化できる。
【0150】
図40および41を参照し、試験の前に、バイオチップの流体サブアセンブリーの中に以下の凍結乾燥試薬が投入された:
・PCRケーキ(
図40、10)−凍結乾燥PCR反応混合物
・レーン(サイジング)内部標準(ILS)ケーキ(
図41、35)−蛍光標識された凍結乾燥DNAフラグメントであり、増幅されたフラグメントの電気泳動移動度を分子量と相関させることができる。
このアプローチの利点は、凍結乾燥された試薬を1つのサブアセンブリーの中に集めることができることである。凍結乾燥ケーキ(低水分および変化が少ない)を充填する条件は、液体を充填する条件とは全く異なり、かつ非常に厳しいので、このアプローチは、供給連鎖管理(supply chain management)を向上させることができる。したがって、液体試薬と凍結乾燥試薬は別々に、および並行して充填することができる。必要に応じて、対立遺伝子ラダーとILSフラグメントを含む凍結乾燥ケーキを、STR分析試験のための上部ケーキチャンバー35の中に挿入できる。
【0151】
試験の前に、バイオチップの分離および検出部の中に以下の試薬が投入された:
・篩い用マトリックス(
図55、36および
図56、36)−DNAの電気泳動篩いのための高分子量線状ポリアクリルアミド溶液。
【0152】
以下のサブシステム(
図59)を含む単一構造の、完全統合された機器にバイオチップが挿入された。サブシステムについては、2009/0229983として公開され、名称が「核酸およびタンパク質の分析用の補強された装置」である米国特許出願番号12/396,110(パラグラフ65〜76参照);2009/0023602として公開され、名称が「標的核酸の迅速多重増幅方法」である米国特許出願番号12/080,746(パラグラフ54、および56〜67参照);2009/0059222として公開され、名称が「統合核酸分析」である米国特許出願番号12/080,751(パラグラフ139〜144参照);2009/0020427として公開され、名称が「プラスチック製のマイクロ流路分離および検出プラットホーム」である米国特許出願番号12/080,745、に記載されており、すべての内容は出典明示により本明細書に組み入れられる。該サブシステムは、以下のものをふくむ:
【0153】
空気圧サブシステム−空気圧および真空ポンプが、一連のタンクおよびソレノイドバルブを通して、空気圧マニホールド(実施例4では、
図44、61として記載されている)に接続されている。次にこのマニホールドは、空気圧インターフェイスを介してバイオチップの空気圧ポートに接続されている。ソレノイドバルブは、プロセスコントローラーにより制御されている。
【0154】
熱サブシステム−ペルチエ系熱サイクルシステムが、バイオチップの熱サイクルチャンバー(
図35、62)に接続され、反応物をこれらの流路の中に迅速に循環させる。実施例4に記載されているように、クランプが増幅領域に圧力を加えているので、熱循環器による十分な熱移動が行われる。反応温度および保持時間はプロセスコントローラーにより制御される。
【0155】
高電圧サブシステム−高電圧源は、分離バイオチップのアノード部(
図55、63)とカソード部(
図55、64)に接続されている。アノード電極がアノード部の空気圧プレートと流体プレート(
図44、65および
図35、65)を通過し、およびカソード電極が流体プレートと空気圧プレートの中のカソード部の中に組み入れられ(
図44、66および
図35、66)、分離および検出バイオチップとの接続が確保されていることに留意されたい。高電圧を印加すると、流路に沿って電界が発生し、予備電気泳動、試料注入、並びに分離および検出が行われる。高電圧サブシステムはプロセスコントローラーにより制御される。
【0156】
光学サブシステム−バイオチップ内にある、分離および検出バイオチップの励起および検出窓(
図55、67および
図56、67)に、光学システムが接続されている。空気圧プレートと流体プレート上の開放窓(
図44、38および
図35、37)を光が通過することに留意されたい。光学システムは、分離流路内の標識DNAフラグメントからの蛍光を誘起するのに使用されるレーザーから成る。一連のダイクロイックミラーは蛍光の波長成分を分離するのに使用される。光電子増倍管は、蛍光信号を検出するために使用される。一連の光学要素は、光(励起レーザーおよび発光蛍光)を、レーザーと分離および検出バイオチップとの間、並びに分離および検出バイオチップと検出器との間に移動させるのに使用される。光学サブシステムはプロセスコントローラーにより制御される。
【0157】
プロセスコントローラー ―予め設定された処理スクリプトを受け容れ、該スクリプトを読み取り、それに従いサブシステムを制御することにより該スクリプトを自動的に実行するコンピュータを用いたコントローラー。コンピュータは、必要に応じてデータ処理およびデータ解析を行うことに留意されたい。
【0158】
試料投入から結果出力へのプロセスは以下のように実行された。ドナーから5つのスワブが収集された。メーカーの指示に従い、ボーデセキュアスワブのスワブの先端を頬内側に押しつけることによりスワブは回収された。5つのスワブのそれぞれが、バイオチップのスワブチャンバーの1つの中に挿入され、バイオチップは機器の中に配置され、自動処理スクリプトが開始され、スワブ投入から結果出力までの分析が実行された。以下の工程を含む自動化スクリプトが実行された:
・初期化
バルブラインに圧力を加えることによりバイオチップ上のすべてのバルブが閉じられた。実施例5のバルブは20psigの圧力で作動して閉じられ、開くことにより大気に排出させた。例外はバルブV13(
図39、41)であり、〜11psigの圧力を加えることにより開放位置を維持させた。簡単のため、バルブ番号は、空気圧プレートに対するそれらの位置に基づいて示される(たとえバルブがバルブアセンブリーの中に実際に配置されていても)。
・分解
バルブV1(
図39、39)を開き、駆動ラインDL1(
図39、68)に対して3psigの圧力を30秒間、次いで5.5psigの圧力を60秒間加えることにより、550μLの分解溶液が、分解試薬チャンバー(
図39、20)からスワブチャンバー(
図39、19)の中へ、空気圧で投入された。バルブV1(
図39、39)を閉じ、駆動ライン1(
図39、68)を停止させた。バルブV2(
図39、40)を開き、駆動ライン2(
図39、69)に5.5psigの駆動圧力を30秒間加えることにより、エタノール試薬チャンバー(
図39、21)から550μLのエタノールがスワブチャンバー(
図39、19)の中に空気圧で投入された。
・無秩序バブリング
バルブV2(
図39、40)を開き、駆動ライン2(
図39、69)に5.5psigの空気圧力を30秒間加えることにより、スワブチャンバー(
図39、19)の中に空気圧により空気が導入された。バルブ2(
図39、40)を閉じ、駆動ライン2(
図39、69)を停止させた。スワブチャンバーの中に導入された空気は分解溶液の中に泡を生成させ、分解試薬とスワブ先端の両方を無秩序に攪拌した。これにより細胞が分解され、DNAが放出された。
・待ち合わせ
溶解物を移動させるため、駆動ライン3(
図39、70)を〜7psigで30秒間の真空としながら、バルブV3(
図39、41)を開放位置に保持することにより、粒子状フィルター(
図39、11)を通してスワブチャンバー(
図39、19)から溶解物を取り出して、保持チャンバー(
図39、24)の中に移動させた。バルブ3(
図39、41)を閉じ、駆動ライン3(
図39、70)を停止させた。
・DNA結合
バルブV48(
図39、42)および一連のバルブV5(
図39、43)を開き、駆動ラインDL3(
図39、70)に5psigの圧力を60秒間加えることにより、保持チャンバー(
図39、24)からの溶解物を精製フィルター(
図39、12)を通して、スワブチャンバー(
図39、19)の中へ移動させた。バルブV4(
図39、42)およびV5(
図39、43)を閉じ、DL3(
図39、70)を停止させた。溶解物内のDNAは精製フィルター(
図39、12)に結合した。スワブチャンバーが、溶解物の生成および処理の後の廃棄チャンバーとしての使えることに留意されたい;この二重使用は、マクロ流体ブロック上の別の大体積のチャンバーへの要求を不要にする。もし溶解物の保留が必要な場合、各試料から別の廃棄チャンバーを必要に応じて含めることができる。
・洗浄
バルブV5(
図39、43)およびV6(
図39、46)を開き、駆動ラインDL4(
図39、71)に13psigの圧力を90秒間加えることにより、洗浄試薬チャンバー(
図39、22)からの洗浄液を、精製フィルター(
図39、12)を通して、スワブチャンバー(
図39、19)の中に空気圧で移動させた。バルブV5(
図39、43)およびV6(
図39、46)を閉じ、DL4(
図39、71)を停止させた。汚染物および結合したDNAの破片を除去するために3mLの洗浄液を精製フィルターに流した。2回の追加洗浄で隣接する流路の洗浄が可能であった。
・乾燥
バルブV5(
図39、43)およびV6(
図39、46)を開き、駆動ラインDL4(
図39、46)に13psigの圧力を185秒間加えることにより、精製フィルター(
図39、12)を通して、スワブチャンバー(
図39、19)の中に空気圧で空気を移動させた。バルブV5およびV6を閉じ、DL4(
図39、71)を停止させた。空気は部分的に精製フィルターを完全に乾燥させる。
・溶出
バルブV6(
図39、46)、V7(
図39、45)およびV8(
図39、47)を開き、駆動ラインDL5(
図39、72)に5psigの圧力を120秒間加えることにより、溶出試薬チャンバー(
図39、23)からの溶出バッファーを、精製フィルター(
図39、12)を通して、溶出液保留チャンバー(
図39、25)の中に空気圧で移動させた。バルブV6(
図39、46)、V7(
図39、45)およびV8(
図39、47)を閉じ、DL5(
図39、72)を停止させた。精製フィルターに結合している精製DNAを放出させるために、精製フィルター(
図39、72)に300μLの溶出バッファーを流した。
・均質化
バルブV6(
図39、46)、およびV8(
図39、47)を開き、駆動ラインDL4(
図39、71)に5psigの圧力を60秒間加えることにより、溶出液保留チャンバーの中へ空気圧で空気を移動させた。バルブV6(
図39、46)、およびV8(
図39、47)を閉じ、DL4(
図39、71)を停止させた。溶出液保留チャンバーの中へ移動させた空気は、溶出液の中で泡を生成させ、溶出液の中のDNAを攪拌し均質化した。精製DNAの保留試料が必要な場合、必要に応じて、溶出液の一部を貯蔵チャンバーまたは貯蔵フィルター上へ移送することができる。
・溶出液計量
バルブV10(
図39、48)を開き、DL6(
図39、73)に1psigの圧力を40秒間加えることにより、溶出液保留チャンバー(
図39、25)からの溶出液を、溶出液計量チャンバー(
図40、8)の中に空気圧で移動させた。バルブV10(
図39、48)を閉じ、DL6(
図39、73)を停止させた。各溶出液は計量チャンバーを充填し、排出膜で止まった。バルブV10(
図39、48)およびV11(
図40、50)を開き、駆動ラインDL7(
図40、49)に2psigの圧力を25秒間加えることにより、過剰の溶出液を溶出液保留チャンバーの中へ空気圧で戻した。バルブV10(
図39、48)およびV11(
図40、50)を閉じ、DL7(
図40、49)を停止させた。
・再構成PCRケーキ
バルブV11(
図40、50)およびV12(
図40、51)を開き、駆動ラインDL7(
図41、49)に、0.2psigで30秒間、次いで0.4psigで30秒間、次いで0.6psigで60秒間の連続駆動を適用することにより、溶出液計量チャンバー(
図40、8)からPCRケーキチャンバー(
図40、10)へと溶出液を空気圧で移動させた。バルブV11(
図40、50)とV12(
図40、51)を閉じ、DL7(
図41、49)を停止させた。凍結乾燥PCR反応混合物を含むケーキを再構成して増幅用のPCR混合物を生成させるために、20.5μLの計量された溶出液を移動させた。
・熱サイクルチャンバーへの移動
バルブV11(
図40、50)、V12(
図40、51)、V13(
図40、52)、およびV14(
図40、53)を開き、駆動ラインDL7(
図41、49)に、0.2psigで30秒間、次いで0.4psigで30秒間、次いで0.6psigで30秒間へと連続的に増加させる連続駆動を適用することにより、ケーキチャンバー(
図40、10)から熱サイクルチャンバー(
図40、62)へとPCR反応混合物を空気圧で移動させた。バルブV11(
図40、50)、V12(
図40、51)、V13(
図40、52)、およびV14(
図40、53)を閉じ、DL7(
図40、49)を停止させた。PCR反応混合物を熱サイクルチャンバーの中で移動させ、待ち合わせ排出膜の位置で停止する。
・熱サイクル
熱サイクルチャンバー(
図40、62)内で反応を繰り返すために、31サイクルプロトコルを適用して、標識アンプリコンを生成させた(ギース.Hら(2009)、「従来のおよびマイクロ流体STR分析のための迅速多重PCR」、J.Forensic Sic.,54(6),1287-96、および2009/0023603として公開され、名称が「標的核酸の迅速多重増幅方法」である出願番号が12/080,746、いずれも出典明示により本明細書に組み入れられる。)。サイクル条件は以下の通りである:ホットスタートで93℃×20秒間、次に(93℃×4秒間、56℃×15秒間、および70℃×7秒間)を31サイクル、次いで、70℃×90秒間の最終延長。
・PCR生成物の計量
バルブV11(
図40、50)、V12(
図40、51)、V13(
図40、52)、V14(
図40、53)、およびV30(
図41、111)を開き、駆動ラインDL7(
図40、49)に、0.2psigで30秒間、次いで0.4psigで30秒間、次いで0.6psigで45秒間へと連続的に増加させる連続駆動を適用することにより、熱サイクルチャンバー(
図40、62)からPCR計量チャンバー(
図41、74)へとPCR反応混合物を空気圧で移動させた。バルブV118
図40、50)、V12(
図40、51)、V13(
図40、52)、V14(
図40、49)およびV30(
図41、111)を閉じ、DL7(
図40、49)を停止させた。PCR生成物は計量チャンバーに流入し、排出膜の位置で止まる。
・ホルムアミド計量
駆動ラインDL8(
図41、75)に1psigで50秒間の圧力を加えることにより、ホルムアミド試薬チャンバー(
図41、60)からホルムアミド計量チャンバー(
図41、76)の中へ空気圧でホルムアミドを移動させた。駆動ラインDL8(
図41、75)を停止させた。ケーキを再構成して対照試料を生成させるために、ホルムアミドの6番目の体積(
図41、77)を計量した。ホルムアミドは計量チャンバーに流入し、排出膜の位置で止まる。バルブV15(
図41、54)を開き、駆動ラインDL8(
図41、75)に3psigで180秒間圧力を加えることにより、ホルムアミドチャンバーから廃棄チャンバーの中へ過剰のホルムアミドを空気圧で移動させた。バルブV15(
図41、54)を閉じ、DL8(
図41、75)を停止させた。試薬チャンバーと駆動ラインの過剰のホルムアミドはすべて廃棄チャンバーに移動させた。
・PCR生成物とホルムアミドとの結合
バルブV18(
図41、57)、V17(
図41、80)およびV20(
図41、81)を開き、駆動ラインDL9(
図41、79)に、0.2、0.3、0.4、および0.5psigを、それぞれ30秒間という段階的駆動プロファイルで圧力を加えることにより、PCR計量チャンバー(
図41、74)から結合チャンバー(
図41、78)の中へ、計量されたPCR生成物を空気圧で移動させた。バルブV18(
図41、57)、V17(
図41、81)、およびV20(
図41、81)を閉じ、DL9(
図41、79)を停止させた。バルブV16(
図41、55)およびV20(
図41、81)を開き、DL8(
図41、75)に、0.2、0.4、および0.6psigが、それぞれ30秒間、30秒間および60秒間と増加する圧力を加えることにより、ホルムアミド計量チャンバー(
図41、76)から結合チャンバー(
図41、78)の中へホルムアミドを空気圧で移動させた。バルブV16(
図41、55)およびV20(
図41、81)を閉じ、DL8(
図41、75)を停止させた。結合チャンバーは、2つの別々の流れに由来する計量されたPCRと計量されたホルムアミドとを結合して、分離および検出用の試料を調製する。
・ILSケーキの再構成
バルブV16(
図41、55)およびV19(
図41、56)を開き、駆動ラインDL8(
図41、75)に、0.2、0.4、および0.6psigが、それぞれ30秒間、30秒間および60秒間の増加する圧力を加えることにより、ILSケーキチャンバー(
図41、35)の中へ、分離および検出用の試料を空気圧で移動させた。V16(
図41、55)およびV19(
図41、56)を閉じ、DL8(
図41、75)を停止させた。4.1μLのPCR生成物と16.4μLのホルムアミドを含む分離および検出用の試料は、チャンバー内のILSケーキを再構成して、分離および検出用の試料を生成させた。
・対照+ILSケーキの再構成
バルブV16およびV20を開き、駆動ラインDL9に、0.2、0.4、および0.6psigが、それぞれ30秒間、30秒間および60秒間の増加する圧力を加えることにより、対照+ILSケーキチャンバー(
図41、83)の中へ6番目の計量されたホルムアミド体積を空気圧で移動させた。V16およびV20を閉じ、DL9を停止させた。20.5μLのホルムアミドがチャンバー内のケーキを再構成して、分離および検出用の試料を生成させた。
・分離流路への試料の注入
バルブV21(
図41、86)およびV22(
図41、87)を開き、駆動ラインDL8(
図41、74)に、0.4、0.6、1.0、1.5および2.0psigが、それぞれ30秒間、30秒間、30秒間、30秒間、および30秒間の連続する段階的なプロファイルの圧力を加えることにより、ケーキチャンバー(
図41、35および82)から脱泡チャンバー(
図41、83)を通って、カソードチャンバー(
図41、84)および試料廃棄チャンバー(
図41、85)を充填するように、6つの分離および検出用の試料を空気圧で移動させた。V21(
図41、86)およびV22(
図41、87)を閉じ、DL8(
図41、74)を停止させた。カソード(
図55および56、63)とアノード(
図55および56、64)に4400Vの電圧を35秒印加することにより、試料内のDNAをカソードチャンバー(
図41、84)からバイオチップの分離部(
図56および
図55、88)に注入させた。
・DNAの分離および検出
バルブV25(
図41、91)、V24(
図41、90)、V26(
図41、95)、V27(
図41、96)、およびV28(
図41、97)を開き、駆動ラインDL10(
図41、98)に2psigの圧力を240秒間加えることにより、TTE試薬槽(
図41、59)からTTEを空気圧で移動させ、カソード(
図41、84)を充填させ、およびTTE廃棄チャンバー(
図41、92、93、および13)を充填させた。バルブV25(
図41、91)、V24(
図41、90)、V26(
図41、95)、V27(
図41、96)、およびV28(
図41、97)を閉じ、DL10(
図41、98)を停止させた。カソードを通過するTTEの流れは、カソード内の試料を置換した。カソード(
図55および56、63)とアノード(
図55および56、64)に6400Vの電圧を30分印加すると、S&Dバイオチップ(
図55)の分離部に注入されたDNAは、バイオチップの分離部(
図56、88)を下方に移動する。光学システムも作動させて、励起および検出窓において、レーザー誘導蛍光励起および検出を行った。レーザーは200mWであり、データ収集速度は5Hzで行った。蛍光信号は、検出経路を通って光電子増倍管に到達する。そこで、蛍光は信号に変換され、該信号はシステムソフトウェアにより記録される。
【0159】
上述の設定された処理工程に基づいて電気泳動図(
図60および61)が作成された。対照電気泳動図(
図60)は、対照ILS試料(ROXで蛍光標識されたフラグメント)について作成された。X軸はデータ収集カウントを示し、各カウントは、標識フラグメントが検出領域に到着した時間を示している。いうつかの標準サイズを矢印で示しており、低分子量のフラグメントは高分子量のフラグメントよりも速く移動し、早く検出される(すなわち、グラフの左側)。Y軸は、各ピークに対する相対蛍光単位(rfu)を示している。
図61は、1つの頬スワブ試料の生成したSTRフラグメントの大きさを示している。PCR反応混合物中のSTRプライマーとILSを標識するのに用いた各蛍光色素を各パネルに示す。蛍光標識フラグメントは一番上のパネルに示し、JOE標識フラグメントは上から2番目のパネルに示し、TAMRA標識フラグメントは上から3番目のパネルに示し、およびROX標識ILSフラグメントは一番下のパネルに示す。X軸およびY軸は、
図60で説明したのと同じである。試料挿入から電気泳動図作成までの全プロセスに要した時間は約90分であり、および約215の設定処理工程であった。多くの処理工程が短縮可能であり、必要であれば、プロセスは45分未満で実行できる。
【0160】
実施例6.自動化スクリプトを使用して、核酸を精製し、精製DNAを増幅し、増幅されたDNAを電気泳動分離し、およびSTRプロファイルを生成させる、完全に統合されたバイオチップの射出成形
このバイオチップは実施例5のものと似ており、射出成形により製造された流体プレートおよび空気圧プレートを有している。5つの頬スワブを受け容れ、STRプロファイルを生成させる、固体型で単一構造のプラスチック製バイオチップは、以下の構成要素からなる:
【0161】
流体サブアセンブリー ―このサブアセンブリーは、バイオチップ内の流体を移動させおよび処理し、空気圧サブアセンブリー、マクロ流体処理サブアセンブリー、バルブサブアセンブリー、並びに分離および検出サブアセンブリーと相互作用する。該サブアセンブリーは、相互接続された一連の流路、チャンバー、並びに、熱可塑性シートの上面と底面の両方の上の膜およびフィルター特徴を備えたCOPを射出成形することにより製造された。
図62は、流体プレート601の上面を示し、
図63は流体プレート601の底面を示し、および
図64は流体プレート601の透視図を示し、両面の特徴を示している。
図65は、射出成形された流体プレート601bの写真を示す。射出成形された流体プレートの大きさは、276mm×117mm×2.5mmである。プレートの上面および底面の両方は、パターンを付与された薄いプラスチック膜で覆われている。
図66は、上部にパターンが付与された薄膜602を示し、
図67は底部にパターンが付与された薄膜603を示す。
【0162】
射出成形された流体プレート内の単一の試料のための流路を
図68に示す。試料流路4は、精製部(
図68、5)、PCR部(
図68、6)並びに分離および検出部(
図68、7)を通る。分離部、PCR部並びに分離および検出部の拡大図を、それぞれ
図69、70および71に示す。射出成形された流体プレートは、粒子状フィルター領域(
図69、11)、精製膜領域(
図69、12)、並びに計量チャンバー(
図69、8)、再構成チャンバー(
図69、10)、結合チャンバー(
図70、78)、廃棄チャンバー(
図70、92、93および94)、およびカソード(
図71、84)とアノード(
図64、65)を含むいくつかのタイプのチャンバーを有している。
【0163】
流体プレートの上面と底面は、パターンを付与された薄いプラスチック膜で覆われ、および溶剤結合により取り付けられている。流体プレートへのパターンを付与された薄膜の結合は、超音波的に、熱的に、および接着剤を用いて行うこともできる。結合方法を容易にするために、プレートおよび膜の上の特徴を追加することができる;例えば、超音波溶接の場所にエネルギー指向リッジを配置することができる。薄膜の厚さは100ミクロンであり、CNC機械加工により製造され、必要により、型抜き、またはレーザー切断により製造することができる。薄いプラスチック膜の中の特徴は、スルーホールを含み、流体サンドイッチ層に接続できるように、射出成形された層上の対応する特徴に合わせて配列されている。精製膜(
図69、12)、粒子状フィルター(
図69、11)および排出膜は、薄膜を結合する前に、熱溶接によりこのサブアセンブリーに取り付けられている。同様に、これらの膜およびフィルターは、超音波溶接および熱かしめにより取り付けられている。
【0164】
空気圧サブアセンブリー ―このサブアセンブリーは、機器の空気圧駆動装置を流体サブアセンブリーに結合し(実施例4に記載されているように)、流体サブアセンブリーの中の流体を空気圧で移動させ、およびバイオチップ内のバルブを空気圧で作動させる。このサブアセンブリーは、熱可塑性シートの上面と底面の両方の上の、相互接続された一連の空気圧駆動ライン、チャンバー、並びに膜およびフィルター特徴を有するCOPを射出成形することにより製造された。
図72は、空気圧プレートの上面を示し、
図73は空気圧プレートの底面を示し、および
図74は空気圧プレートの透視図を示し、両面の特徴を示している。
図75は、射出成形された空気圧プレートの写真を示す。射出成形された空気圧プレートの大きさは、277.6mm×117.7mm×2.50mmである。結合後、すべての空気圧サブアセンブリー特徴は、流体サブアセンブリー特徴に合わせて配列する。プレートの上面はプレートへの接続を可能とするスルーホール、を備えたパターンを付与された薄いプラスチック膜で覆われている。
図76は、上部にパターンを付与された薄膜を示している。パターンを付与され、バルブサブアセンブリーを示す薄膜が溶剤結合により取り付けられた時、プレートの底面は覆われる;薄膜はCNC機械加工によりパターンを付与される。薄膜の厚さは100ミクロンである。パターンは、結合の前または結合の後で形成することができる。上部薄膜および底部薄膜を空気圧プレートに結合する前に、排出膜を組み入れる(
図68、17)。空気圧プレートへの薄膜の結合は溶媒を用いて達成できるが、超音波的、熱的、および接着剤を用いて行うこともできる。
【0165】
マクロ流体処理サブアセンブリー並びに分離および検出サブアセンブリーは実施例5に記載されているものと同じである。本バイオチップでは、バルブアセンブリーは、厚さが40ミクロン、50ミクロン、または100ミクロンである薄い熱可塑性膜である。空気圧で作動させる剛直バルブ層(実施例2に記載されている)は、空気圧サブアセンブリーと流体サブアセンブリーを分離する。空気圧で作動すると、この層は反り、流体層内の流体(空気を含む)の流れを制御する。
【0166】
空気圧―バルブ―流体のスタックサブアセンブリーは、空気圧アセンブリーを流体アセンブリーに溶剤結合することにより製造された。空気圧プレートの底面上のチャンバーおよび流路は、流体層に溶剤結合される時に封止される。マクロ流体ブロックは、ガスケットまたはネジを用いて固定することによりカバーに取り付けられる。ブロックは両面PSAテープを用いて空気圧サブアセンブリーに取り付けられた。あるいは、ブロック取り付けは、溶剤結合または熱結合により行うことができる。最後に、分離および検出サブアセンブリーはPSAテープを用いて流体サブアセンブリーに取り付けられ、および分離および検出バイオチップ内の核酸の流れがNA精製および増幅とは反対の方向になるように、サブアセンブリーが配置された。
【0167】
バイオチップを試験するために、液体試薬および凍結乾燥試薬が実施例5に記載されているように投入され、実施例5の完全に統合された機器の中にバイオチップが挿入される。ドナーから5つのスワブが収集され、該5つのスワブのそれぞれがバイオチップのスワブチャンバーの1つに挿入された。以下の工程を含む自動化スクリプトが実行された:
・初期化
すべてのバルブラインに75psigの圧力を加えることによりバイオチップ上のすべてのバルブが閉じられた。例外はバルブV3であり、〜11psigの圧力を加えることにより開放位置を維持させた。簡単のため、バルブ番号は、空気圧プレートに対するそれらの位置に基づいて示される(たとえバルブがバルブアセンブリーの中に実際に配置されていても)。
・分解
バルブV1(
図69、39)を開き、駆動ラインDL1(
図39、68)に対して3psigの圧力を30秒間、次いで5.5psigの圧力を60秒間加えることにより、550μLの分解溶液が、分解試薬チャンバー(
図69、20)からスワブチャンバー(
図69、19)の中へ、空気圧で投入された。バルブV1(
図69、39)を閉じ、駆動ライン1(
図69、68)を停止させた。バルブV2(
図69、40)を開き、駆動ライン2(
図69、69)に5.5psigの駆動圧力を30秒間加えることにより、エタノール試薬チャンバー(
図69、21)から550μLのエタノールがスワブチャンバー(
図69、19)の中に空気圧で投入された。
・無秩序バブリング
バルブV2(
図69、40)を開き、駆動ライン2(
図69、69)に5.5psigの空気圧力を30秒間加えることにより、スワブチャンバー(
図69、19)の中に空気圧により空気が導入された。バルブ2(
図69、40)を閉じ、駆動ライン2(
図69、69)を停止させた。スワブチャンバーの中に導入された空気は分解溶液の中に泡を生成させ、分解試薬とスワブ先端の両方を無秩序に攪拌した。これにより細胞が分解され、DNAが放出された。
・待ち合わせ
溶解物を移動させるため、駆動ライン3(
図69、70)を〜7psigで30秒間の真空としながら、バルブV3(
図69、41)を開放位置に保持することにより、粒子状フィルター(
図69、11)を通してスワブチャンバー(
図69、19)から溶解物を取り出して、保持チャンバー(
図69、24)の中に移動させた。バルブ3(
図69、41)を閉じ、駆動ライン3(
図69、70)を停止させた。
・DNA結合
バルブV4(
図69、42)および一連のバルブV5(
図69、43)を開き、駆動ラインDL3(
図69、70)に5psigの圧力を60秒間加えることにより、保持チャンバー(
図69、24)からの溶解物を精製フィルター(
図69、12)を通して、スワブチャンバー(
図69、19)の中へ移動させた。バルブV4(
図69、42)およびV5(
図69、43)を閉じ、DL3(
図69、70)を停止させた。溶解物内のDNAは精製フィルター(
図39、12)に結合した。スワブチャンバーが、溶解物の生成および処理の後の廃棄チャンバーとしての使えることに留意されたい;この二重使用は、マクロ流体ブロック上の別の大体積のチャンバーへの要求を不要にする。もし溶解物の保留が必要な場合、各試料から別の廃棄チャンバーを必要に応じて含めることができる。
・洗浄
バルブV5(
図69、43)およびV6(
図69、46)を開き、駆動ラインDL4(
図69、71)に13psigの圧力を90秒間加えることにより、洗浄試薬チャンバー(
図69、22)からの洗浄液を、精製フィルター(
図69、12)を通して、スワブチャンバー(
図69、19)の中に空気圧で移動させた。バルブV5(
図69、43)およびV6(
図69、46)を閉じ、DL4(
図69、71)を停止させた。汚染物および結合したDNAの破片を除去するために3mLの洗浄液を精製フィルターに流した。2回の追加洗浄で隣接する流路の洗浄が可能であった。
・乾燥
バルブV5(
図69、43)およびV6(
図69、46)を開き、駆動ラインDL4(
図69、46)に13psigの圧力を185秒間加えることにより、精製フィルター(
図69、12)を通して、スワブチャンバー(
図69、19)の中に空気圧で空気を移動させた。バルブV5およびV6を閉じ、DL4(
図69、71)を停止させた。空気は部分的に精製フィルターを完全に乾燥させる。
・溶出
バルブV6(
図69、46)、V7(
図69、45)およびV8(
図69、47)を開き、駆動ラインDL5(
図69、72)に5psigの圧力を120秒間加えることにより、溶出試薬チャンバー(
図69、23)からの溶出バッファーを、精製フィルター(
図69、12)を通して、溶出液保留チャンバー(
図69、25)の中に空気圧で移動させた。バルブV6(
図69、46)、V7(
図69、45)およびV8(
図69、47)を閉じ、DL5(
図69、72)を停止させた。精製フィルターに結合している精製DNAを放出させるために、精製フィルター(
図69、72)に300μLの溶出バッファーを流した。精製DNAの保留試料が必要な場合、必要に応じて、溶出液の一部を貯蔵チャンバーまたは貯蔵フィルター上へ移送することができる。
・均質化
バルブV6(
図69、46)、およびV8(
図69、47)を開き、駆動ラインDL4(
図69、71)に5psigの圧力を60秒間加えることにより、溶出液保留チャンバーの中へ空気圧で空気を移動させた。バルブV6(
図69、46)、およびV8(
図69、47)を閉じ、DL4(
図69、71)を停止させた。溶出液保留チャンバーの中へ移動させた空気は、溶出液の中で泡を生成させ、溶出液の中のDNAを攪拌し均質化した。
・溶出液計量
バルブV10(
図69、48)を開き、DL6(
図69、73)に1psigの圧力を40秒間加えることにより、溶出液保留チャンバー(
図69、25)からの溶出液を、溶出液計量チャンバー(
図70、8)の中に空気圧で移動させた。バルブV10(
図69、48)を閉じ、DL6(
図69、73)を停止させた。各溶出液は計量チャンバーを充填し、排出膜で止まった。バルブV10(
図69、48)およびV11(
図70、50)を開き、駆動ラインDL7(
図70、49)に2psigの圧力を25秒間加えることにより、過剰の溶出液を溶出液保留チャンバーの中へ空気圧で戻した。バルブV10(
図69、48)およびV11(
図70、50)を閉じ、DL7(
図70、49)を停止させた。
・PCRケーキの再構成
バルブV11(
図70、50)を開き、駆動ラインDL7(
図71、49)の駆動圧力を15秒間で0〜15psigまで直線的に増加させることにより、溶出液計量チャンバー(
図70、8)からPCRケーキの再構成および往復(reciprocation)チャンバー(
図70、610)へと溶出液を空気圧で移動させた。(
図70、610)の該チャンバーは、凍結乾燥PCRケーキを保持し、PCRケーキの再構成、およびPCR反応の往復混合を行うように設計されている。該チャンバーの体積は、溶出液計量チャンバー(
図70、8)で規定される溶出液の体積の約2.2バイである。PCRケーキは、該チャンバーの入口側に置かれおよび配置される。該チャンバーの出口はバルブで密閉されている。溶出液とバルブV13(
図71、52)との間の空気は、圧縮され、それにより溶出液が該チャンバーの中へ移動し、凍結乾燥PCRケーキと接触することが可能となる。DL7の圧力を15psigで60秒間保持することにより、ケーキを再構成される。凍結乾燥PCR反応混合物を含むケーキを再構成するために、11.5μLの計量された溶出液を移動させ、増幅用のPCR混合物を生成させる。
・PCR溶液の往復混合―駆動ラインDL7の圧力を15秒間で15から0psigへと直線的に減少させることにより、PCRの再構成および往復チャンバー(
図70、10)から溶出液計量チャンバー(
図70、8)へとPCR溶液(すなわち、溶出液で再構成されるPCRケーキ)を戻す。溶出液とバルブV13(
図71、52)との間の空気は圧縮され、PCR混合物を計量チャンバー(
図71、8)の方向に押し出し空気バネとして働く。駆動ラインDL7の圧力を15秒間で0から15psigまで直線的に増加させ、次いで15秒間で15から0psigへと直線的に減少させることにより、PCR混合物は往復混合される。バルブV12(
図70、49)を閉じ、駆動ラインDL7(
図70、49)を停止させた。
・熱サイクルチャンバーへの移動
バルブV11(
図70、50)、V13(
図70、52)、およびV14(
図70、53)を開き、駆動ラインDL7(
図70、49)に、0.2psigで30秒間、次いで0.4psigで30秒間、次いで0.6psigで30秒間へと駆動圧力を連続的に増加させることにより、溶出液計量チャンバー(
図70、8)から熱サイクルチャンバー(
図70、62)へとPCR反応混合物を空気圧で移動させた。バルブV12(
図70、51)およびV14(
図70、53)を閉じ、DL7(
図70、49)を停止させた。PCR反応混合物を熱サイクルチャンバーの中で移動させ、待ち合わせ排出膜の位置で停止する。
・熱サイクル
熱サイクルチャンバー(
図70、62)内で反応を繰り返すために、31サイクルプロトコルを適用して、標識アンプリコンを生成させた。サイクル条件は以下の通りである:ホットスタートで93℃×20秒間、次に(93℃×4秒間、56℃×15秒間、および70℃×7秒間)を31サイクル、次いで、70℃×90秒間の最終延長。
・PCR生成物の計量
バルブV11(
図70、50)、V13(
図70、52)、V14(
図70、53)、およびV30(
図71、111)を開き、駆動ラインDL7(
図70、49)に、0.2psigで30秒間、次いで0.4psigで30秒間、次いで0.6psigで45秒間へと連続的に増加させる連続駆動を適用することにより、熱サイクルチャンバー(
図70、62)からPCR計量チャンバー(
図71、74)へとPCR反応混合物を空気圧で移動させた。バルブV11(
図70、50)、V13(
図70、52)、V14(
図70、53)およびV30(
図71、111)を閉じ、DL7(
図70、49)を停止させた。PCR生成物は計量チャンバーに流入し、排出膜の位置で止まる。
・ホルムアミド計量
駆動ラインDL8(
図71、75)に1psigで50秒間の圧力を加えることにより、ホルムアミド試薬チャンバー(
図71、60)からホルムアミド計量チャンバー(
図71、76)の中へ空気圧でホルムアミドを移動させた。駆動ラインDL8(
図71、75)を停止させた。この工程では、ケーキを再構成して対照試料を生成させるために、ホルムアミドの6番目の体積(
図71、77)を計量した。ホルムアミドは計量チャンバーに流入し、排出膜の位置で止まる。バルブV15(
図71、54)を開き、駆動ラインDL8(
図71、75)に3psigで180秒間圧力を加えることにより、ホルムアミドチャンバーから廃棄チャンバーの中へ過剰のホルムアミドを空気圧で移動させた。バルブV15(
図71、54)を閉じ、DL8(
図71、75)を停止させた。試薬チャンバーと駆動ラインの過剰のホルムアミドはすべて廃棄チャンバーに移動させた。
・PCR生成物とホルムアミドとの結合
バルブV18(
図71、57)、V17(
図71、80)およびV20(
図71、81)を開き、駆動ラインDL9(
図71、79)に、0.2、0.3、0.4、および0.5psigを、それぞれ30秒間という4段階的駆動プロファイルで圧力を加えることにより、PCR計量チャンバー(
図71、74)から結合チャンバー(
図71、78)の中へ、計量されたPCR生成物を空気圧で移動させた。バルブV18(
図71、57)、V17(
図71、81)、およびV20(
図71、81)を閉じ、DL9(
図71、79)を停止させた。DL8(
図71、75)に、0.2、0.4、および0.6psigが、それぞれ30秒間、30秒間および60秒間と増加する圧力を加えることにより、ホルムアミド計量チャンバー(
図71、76)から結合チャンバー(
図71、78)の中へ計量されたホルムアミドを空気圧で移動させた。バルブV20(
図71、81)を閉じ、DL8(
図71、75)を停止させた。結合チャンバーは、2つの別々の流れに由来する計量されたPCRと計量されたホルムアミドとを結合して、分離および検出用の試料を調製する。
・ILSケーキの再構成
バルブV20(
図71、81)を開き、駆動ラインDL8(
図71、75)に、15秒間をかけて0〜15psigまで直線的に駆動圧力を増加させることにより、結合チャンバー(
図71、78)からILSケーキチャンバー(
図71、635)の中へ、分離および検出用の試料を空気圧で移動させた。試料とバルブV12(
図71、86)との間の空気は圧縮され、それにより、試料はチャンバーの中に移動し、凍結乾燥ILSケーキと接触する。DL8(
図71、75)の圧力を15psigで60秒間保持することにより、ケーキを再構成される。凍結乾燥内部レーン標準を含むケーキを再構成して分離および検出用の試料を生成させるために、11.5μLの計量された試料を移動させた。
・分離および検出用溶液の往復混合―駆動ラインDL8(
図71、75)の圧力を15秒間で15から0psigへと直線的に減少させることにより、ILSの再構成および往復チャンバー(
図71、635)から結合チャンバー(
図71、78)へとPCR溶液(すなわち、計量されたホルムアミドと計量されたPCR生成物で再構成されるILSケーキ)を戻す。溶出液とバルブV13(
図71、52)との間の空気は圧縮され、PCR混合物をホルムアミド計量チャンバー(
図71、76)の方向に押し出し空気バネとして働く。駆動ラインDL8(
図71、75)の圧力を15秒間で0から15psigまで直線的に増加させ、次いで15秒間で15から0psigへと直線的に減少させることにより、分離および検出用試料は往復混合される。バルブV12(
図70、49)を閉じ、駆動ラインDL8(
図71、75)を停止させた。
・分離流路への試料の注入
バルブV21(
図71、86)およびV22(
図71、87)を開き、駆動ラインDL9(
図71、79)に、0.4、0.6、1.0、1.5および2.0psigが、それぞれ30秒間、30秒間、30秒間、30秒間、および30秒間の連続する段階的なプロファイルの圧力を加えることにより、今は脱泡チャンバーとして機能するILSケーキチャンバー(
図71、635および682)を通って、カソードチャンバー(
図71、84)および試料廃棄チャンバー(
図71、85)を充填するように、結合チャンバー(
図71、78)から5つの分離および検出用の試料を、およびホルムアミド計量チャンバー(
図71、76)から対照試料を空気圧で移動させる。バルブV21(
図71、86)およびV22(
図71、87)を閉じ、DL8(
図71、74)を停止させた。カソード(
図55および56、63)とアノード(
図55および56、64)に4400Vの電圧を35秒印加することにより、試料内のDNAをカソードチャンバー(
図71、84)からバイオチップの分離部(
図55および
図56、88)に注入させた。
・DNAの分離および検出
バルブV25(
図71、91)、V24(
図71、90)、V26(
図71、95)、V27(
図71、96)、およびV28(
図71、97)を開き、駆動ラインDL10(
図71、98)に2psigの圧力を240秒間加えることにより、TTE試薬槽(
図71、59)からTTEを空気圧で移動させ、カソード(
図71、84)を充填させ、およびTTE廃棄チャンバー(
図71、92、93、および13)を充填させた。バルブV25(
図71、91)、V24(
図71、90)、V26(
図71、95)、V27(
図71、96)、およびV28(
図71、97)を閉じ、DL10(
図71、98)を停止させた。カソードを通過するTTEの流れは、カソード内の試料を置換した。カソード(
図55および56、63)とアノード(
図55および56、64)に6400Vの電圧を30分印加すると、S&Dバイオチップ(
図55)の分離部に注入されたDNAは、バイオチップの分離部を下方に移動する。光学システムも作動させて、励起および検出窓において、レーザー誘導蛍光励起および検出を行った。レーザーは200mWであり、データ収集速度は5Hzで行った。蛍光信号は、検出経路を通って光電子増倍管に到達する。そこで、蛍光は信号に変換され、該信号はシステムソフトウェアにより記録される。
【0168】
上述の設定された処理工程に基づいて試料および対照の電気泳動図が作成される。試料挿入から電気泳動図作成までの全プロセスに要した時間は約90分であり、および約215の設定処理工程であった。多くの処理工程が短縮可能であり、必要であれば、プロセスは45分未満で実行できる。
図77は、プロセスの一部について、設定された処理工程と結果の処理工程の関係を占めいている。溶出液を、溶出液保留チャンバー(
図39、25)から空気圧で移動させ、結果として、
図77の10工程スクリプトにより、計量された体積を溶出液計量チャンバー(
図39、8)の中へ移動させた。5つのバルブおよび駆動ライン状態から成るスクリプトの工程は、保留チャンバーから計量チャンバーへ溶出液を移動させるために変化する。次の5つのスクリプト工程は、過剰の溶出液を除去し、この過剰の体積を保留チャンバーの中へ押し込む。したがって、10の設定された処理工程(バルブと駆動ラインへの圧力を増加させるまたは減少させる)は、2つの結果の処理工程(溶出液保留チャンバーから溶出液計量チャンバーへの移動および過剰の試料を溶出液保留チャンバーに戻す移動)に対応する。
【0169】
実施例7.核酸定量に対する要求をなくすための試料分割
所定試料中の核酸の量は、法医学的試料、臨床試料、またはバイオ脅威試料であれ、非常に幅広い。特定の核酸操作では、有効であるために、反応条件は特定の範囲の投入核酸が必要とする。実験チャンバーでは、所定の操作の前に核酸定量を行うことでこの問題をよく解決している。核酸定量は、名称が「法医学的DNA定量の改良方法」である特許出願番号12/816,370に記載されているように、マイクロ流体用途に対して開発されており、出典明示によりその内容は本明細書に組み入れられる。
【0170】
本発明は、マイクロ流体バイオチップにおいて特定範囲の核酸を得るという問題に対する別の解決策を提案する。このアプローチは定量化を含むものではなく、その代わり、好ましくは並行して、所定試料を1倍または複数倍に希釈して、分析用に2つまたはそれより多数の核酸濃度を提供することに基づくものである。本発明の例示として、接触試料(touch sample)がある。接触試料は、人体への接触により表面に残された細胞(主として上皮)から成る法医学的試料である。それらは、指紋、衣服(例えばシャツの襟)に検出される皮膚細胞、およびソーダ缶の開放部または飲用コップの縁に検出される口の上皮細胞を含む。接触DNA試料から回収されるDNAの量は、非常に幅広い。接触試料は、100ngまでのDNAを含み、ほとんどの接触試料は0.5〜10ngのDNAを含む。したがって、接触試料システムは、0.5〜100ngのDNAを含むスワブを処理するであろう。
【0171】
ほとんどの接触試料は、10ng未満のDNAを含むであろうから、最大で200倍の範囲のDNAが正確に処理されなくてはならないということを予想して、未知接触試料が処理されなくてはならない。手作業による増幅システムでは、0.5ngを増幅することは適切であるが、100ngを増幅することは適切ではない。したがって、手作業のシステムでは、接触試料から精製されたDNAは、増幅前に一般的に定量される。本発明のマイクロ流体バイオチップは、流体サブアセンブリー内の2つのアリコートの中に精製されたDNAを分割することにより、定量することなく接触試料DNAの処理がなされる。溶出DNAの1つのアリコートはそのまま増幅され(増幅混合物中に10ng未満のDNAが存在すると仮定して)、別のアリコートは20倍に希釈される(反応混合物中に5〜100ngのDNAが存在すると仮定して)。そのままのアリコートと希釈されたアリコートの両方は、別々に増幅され、分離され、および検出されるが、それらは並行して行われる。そのままの試料は精製DNAの少なくとも0.05〜10ngの範囲で効率的に増幅され、希釈された試料は精製DNAの少なくとも1〜200ngの範囲で効率的に増幅される;効果的に分析されるDNA含量の全範囲は、少なくとも40,000倍にまで拡大する。
【0172】
試料分割マイクロ流体工学は、実施例5および6のバイオチップの中に、以下の方法で組み入れられる。同じDNA精製プロトコルを用いてDNAは、体積20μLに希釈される。この体積で、溶出液保留チャンバーはマクロ流体処理サブシステムから除去され、20μL溶出液保留チャンバーは流体サブアセンブリーの流体プレートの上に置かれる。そのプレート上で、20μLの精製DNAは、並行経路に送られる:
・そのままの経路では、計量チャンバーで12μLのDNAが計量され、PCRケーキ再構成チャンバーに送られ、そして増幅のためにPCRチャンバーに送られる。約10μLの再構成反応混合物を受け入れるため、チャンバーは少しだけ拡張される。
・希釈経路では、約2μLのDNAが計量され、38μLの計量された溶出液と結合される。その希釈された溶液は、次にケーキ再構成チャンバーに送られ、そして増幅のためにPCRチャンバーに送られる。
・増幅後、2つの溶液は並行して分離および検出のため処理される。
【0173】
試料の分割と希釈のマイクロ流体回路のフローチャートを
図78に示す。必要に応じて、以降の処理のために精製DNA試料を2つより多いアリコートに分割することもでき、および希釈された試料をさらに希釈して、処理のための追加のアリコートを得ることができる。接触試料の場合、その希釈は必要ではないが、特定の法医学的、臨床的、診断、および生物脅威の試料はより多くのDNAを含んでもよく、3またはそれより多いアリコートの処理によりそれらの分析が容易になる。
【0174】
実施例8.プラスチックのバックグラウンド蛍光
分離および検出バイオチップは、熱可塑性物質で製造される。熱可塑性ポリマーはレーザー励起に曝されると、自己蛍光を発生させ、それはバックグラウンドノイズとなり、検出システムにより検出されおよび処理される。この自己蛍光は本当の信号ピークのSN比を低下させて、システムの検出限界を高くする。分離および検出用の従来のS&Dバイオチップは、ガラス基材または石英基材で製造され、それらはプラスチック基材と比較して単位厚さ当たりの自己蛍光が少ない。プラスチック基材を用いてレーザー誘導蛍光検出を実施する場合についていくつかの検討がなされる必要がある:
(1)低い自己蛍光を示すプラスチック材料の選択
環状オレフィン共重合体(COC)および環状オレフィンポリマー(COP)の熱可塑性材料が、実施例5および6で使用される分離および検出バイオチップを製造するために使用される。これらの熱可塑性物質は、他のポリマーに比べ、可視波長域において、自己蛍光が本質的に低い。
(2)レーザーにより励起あされるプラスチック基材の厚さを薄くする。
使用される材料の厚さは、350psigを超えるゲル充填圧力に耐えうる構造物の能力により制限される。実施例5および6で使用されたバイオチップは、厚さ188ミクロンの熱可塑性シートに流路特徴を型押しし、次いで流路を覆うように別の厚さ188ミクロンの熱可塑性シートを結合させて製造される。いくつかの基材(プラスチック188mm、プラスチック376mm、ホウケイ酸ガラス0.7mm、およびホウケイ酸ガラス1.4mm)をジーンベンチ光学検出機器の分離および検出窓の上に配置することにより、ガラス基材とプラスチック基材のバックグラウンド蛍光を測定する実験が実施された(2009/0020427として公開され、名称が「プラスチック製マイクロ流体分離および検出プラットホーム」である出願番号12/080,745を一般的には参照)。200mWのレーザー励起を基材に照射し、振動を収集した。
図79は、低蛍光プラスチック(厚さ188ミクロンおよび376ミクロン)およびホウケイ酸ガラス(厚さ0.7mmおよび1.4mm)のバックグラウンド蛍光を示す。データは、プラスチック薄膜のバックグラウンド蛍光が、厚さ0.7mmおよび1.4mmのホウケイ酸ガラスのそれよりも4〜7倍も低いことを示している。
(3)バックグラウンド発光低減のためにフィルターを組み入れる。
バックグラウンド蛍光は一般的に低いが、プラスチックは、約569nmに高い自己蛍光を示す。この発光ピークは、プラスチックが488nmレーザーで励起される時に生成するラマン蛍光によるものである。そのピークのスペクトルは、約569nmを中心にして全幅が5nmである。中心波長が約570nmで、約5〜10nmの間の阻止バンドを有するノッチフィルタ−を用いることによりラマン蛍光を除去できる。ラマンプラスチック蛍光除去のためのノッチフィルターを用いたSN比向上を評価する実験を行った。分離および検出を3回行う一連の実験をノッチフィルターなしで行い、PMTボックスへの入口に取り付けたノッチフィルターを用いた別の一連の実験を行った。
図80は、データ結果を示している。データは、フィルターが、黄色チャンネルのピーク間ノイズを67から39相対蛍光単位(rfu)へと減少させたことを示している。フィルターは、絶対信号強度も1520から1236rfuへと減少させ、SN比も全体として23から322に向上させた。検出限界が特に重要であるような状況においては(例えば、法医学的接触試料の分析、および病原菌数が少ない所定の病気の初期における感染物質の診断)、統合または未統合の機器の両方の光学システムにおいて、ノッチフィルターは有効である。
【0175】
実施例9.自動化スクリプトを用いて、臨床全血試料から核酸を精製し、精製DNAを増幅し、増幅DNAをサンガー配列し、配列DNAを限外濾過し、限外濾過されたDNAを分離し、および多重DNA配列を精製させる、完全に統合されたバイオチップの設計
ぶどう状球菌、連鎖球菌およびエルシニアエンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)のような病原菌は血液の細胞外成分の中に存在する場合がある。2つの血液試料を受け入れ、所定の病原菌の8個の遺伝子座(loci)からDNA配列を生成させる、固定型で単一構造のプラスチック製バイオチップは、空気圧―バルブ―流体のスタック、マクロ流体処理サブアセンブリー、並びに分離および検出サブアセンブリーから成る。バイオチップは実施例6の射出成形バイオチップに似ており、以下に記載されたように改良され、自動化スクリプトに基づき、以下のように処理が実施される:
【0176】
マクロ流体サブアセンブリーは、前投入された試薬を保持し、またはDNA精製処理の間、保留チャンバー/反応チャンバーとして働く、12チャンバーから構成されている。1チャンバーは血液収集チューブを受け入れるために使用され;6チャンバーは、3mLの洗浄液、100μLの細胞懸濁溶液、450μLの分解溶液、550μLの無水エタノール、2μLの洗浄バッファー、2000μLの脱イオン水、および400μLの溶出バッファーを予め充填されている。
【0177】
バイオチップセットは、標準3cc バキュテナー(vacutainer)チューブ(分離実験のため、適切な抗凝固剤を含むチューブの中に血液は収集される)を受け入れる。血液収集チューブは、ゴム製の栓をした端部を下にしてバイオチップの中に挿入される。ユーザーが機器のスタートボタンを押すと精製処理が開始される。機器の中では、血液収集チューブは、血液収集チューブ用の窪みの基部に配置された2つの中空ピンの上に押し付けられる。中空ピンはゴム栓を突き抜け、血液収集チューブには空気圧で5psigまでの圧力が加えられ、血液収集チューブから血液が、平均ポアサイズが8ミクロンのフィルター(例えばロイコソルブビーメディア(Leukosorb B media)、パールコーポレイション、ポートワシントン、ニューヨーク)を通って移動し、血液から白血球が除去される。貫流(Flowthrough)は、0.2ミクロンのポリカーボネートのトラックエッチ(track-etch)膜(SPI-Pore登録商標、トラックエッチ膜、ストラクチャープローブ社、ウエストチェスター、PA)の単一層を通過し、膜上で捕獲してバクテリアを濃縮し、そしてこの貫流は廃棄チャンバーに送られる。
【0178】
再懸濁液(100μL)をトラックエッチ膜の表面に適用し、トラックエッチ膜上に保持された病原菌を再懸濁し、濃縮病原菌懸濁液(残留白血球も含む)を生成させる。この懸濁液を分解チャンバーに空気圧で移動させる。DNA精製は、実施例5および6に記載したように行い、すべての体積は比例して少ない。無秩序分解試薬が分解チャンバーの中に送られ、そして空気圧で空気が分解/廃棄チャンバーの中に送りこまれ、溶解物の無秩序バブリングが行われる。エタノール槽からのエタノールは、分解/廃棄チャンバーに送られ、無秩序バブリングにより混合される。溶解物/エタノール混合物は、保留チャンバーへ空気圧で送られ、精製膜を通過して分解/廃棄チャンバーに送られる。膜には一連の3回の洗浄が行われ、未結合材料および残留分解溶液が除去される。フィルターは次いで空気乾燥される。溶出溶液20.5μLが、溶出液槽から、精製膜を通過して、溶出液保留槽に空気圧で送られる。これは小体積であるので、確実に、単離された核酸の大部分が、次の増幅反応で増幅される。
【0179】
溶出液は、溶出液保留チャンバーから溶出液計量チャンバーに空気圧で送られ、過剰の溶出液は溶出液保留チャンバーの中へ空気圧で戻される。溶出液は、溶出液計量チャンバーからPCRケーキチャンバーの中へ空気圧で送られる。20.5μLの計量された溶出液が、凍結PCR反応混合物を含むケーキを再構成するために送られ、増幅用のPCR混合物を生成させる。ケーキは、ヒトSTRプライマー対(各対の1つは蛍光標識されている)が一連の80プライマー対(各対のいずれも標識されていない)で置換される以外は、
図5および6と同じ成分を含む。その80プライマー対は、ぶどう状球菌、連鎖球菌およびエルシニアエンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)を含む10個の病原菌のそれぞれの8個の特定の遺伝子座を表す(必要に応じてさらに大きな遺伝子座も可能である)。再構成されたPCR反応混合物は、ケーキチャンバーから熱サイクルチャンバーの中に空気圧で送られ、待ち合わせ排出膜の位置で停止する。熱サイクルチャンバー内での反応を繰り返すために、31サイクル増幅プロトコルが適用される。すべての設定および処理工程は、実施例5および6に記載されているのと同様の方法で実質的に実施される。
【0180】
PCR生成物は、熱サイクルチャンバーからPCR計量チャンバーへ空気圧で送られ、排出膜で停止する。結合チャンバーの中で、6μLのPCR生成物が94μLの脱イオン水と混合される。結合チャンバーでは、計量されたPCRと計量された水(2つの別々の流れに由来する)が結合され、凍結乾燥された配列ケーキの再構成用試料を形成する。希釈されたPCR生成物は、結合チャンバーから送られて8個の計量チャンバーに分割され、各チャンバーは11μLを収容し、排出膜により待たされる。8個の試料のそれぞれは、配列ケーキ再構成チャンバーに送られる。8個のケーキは、サンガー反応混合物とはわずかに異なる種類であり(各伸長生成物が、配列のその位置における塩基に対応する単一の蛍光標識を有するように、色素標識ターミネーターの使用に基づき)、各ケーキは固有の一連の10個の配列プライマー ―対象とする10個の病原菌のそれぞれの遺伝子座の一つである― を含んでいる。所定の病原菌では、特定の遺伝子座の1つのプライマー対は、ケーキ1の中にあり、第2の対はケーキ2の中にある等;この配置により、単一のDNA配列が各ケーキから所定の病原菌を確実に生成させる。再構成された配列の反応混合物は、ケーキチャンバーから連続サイクル用サイクリングチャンバー(第2の熱循環器のすぐ上に位置する)の中へ空気圧で送られ、待ち合わせ用排出膜の位置で停止する;各サイクルチャンバーは10μLを収容する。連続サイクルは、以下のように実施される:95℃で15秒間、次に(95℃で5秒間、50℃で10秒間、および60℃で25秒間)を30サイクル。8個の連続反応(2つの血液試料では全体で16個)のそれぞれにおいて、限外濾過の調製時に結合チャンバーの中で、10μLの連続反応生成物を100μLの脱イオン水と混合する。
【0181】
配列生成物を精製して、分離を妨害する、配列決定(および前のPCR反応)に必要なイオンを除去することで、電気泳動分離の特性を大きく向上させることができる。限外濾過を含む様々な方法を用いることができ、該限外濾過では、小さなイオン/プライマー/取り込まれなかった標識色素は、フィルターへ送られ、必要な生成物はフィルターに残され、次いで該必要な生成物は溶出され、すぐに分離および検出に供される。限外濾過媒体は、トラック―エッチ膜だけでなく、ポリエーテルスルホンおよび再生セルロース“織物”フィルターを含み、それらにおいては、非常に薄い(1〜10μm)膜の中に非常に均一な大きさのポアが形成されている。後者は、表面よりはいくらか深い所で生成物を捕獲するというよりは、フィルターの表面のポアの大きさよりも大きい生成物を収集できるという利点を有する。
【0182】
したがって、希釈された配列生成物は、限外濾過フィルターを通過して送られた。フィルターはサンガー配列生成物は捕獲するが、イオンおよび希釈された配列バッファーは通過させる。フィルター上の材料は、200μLの脱イオン水を空気圧でフィルターに送ることによりイオンとバッファーを除去することにより洗浄された。最後に、10μLの脱イオン水をフィルターチャンバーに空気圧で送り込むことにより、洗浄されたサンガー配列生成物を溶出させ、サンガー配列生成物を再懸濁させた。次いで溶出液を結合チャンバーに空気圧で送り込む。ホルムアミド試薬チャンバーからホルムアミド計量チャンバーの中にホルムアミドを空気圧で送り込む。ホルムアミドは計量チャンバーに流れ込み、排出膜で停止する。過剰のホルムアミドは、ホルムアミドチャンバーから廃棄チャンバーに空気圧で送られる。10μLの計量された限外濾過生成物は、計量チャンバーから結合チャンバーの中に空気圧で送られる。計量されたホルムアミドは、ホルムアミド計量チャンバーから結合チャンバーに空気圧で送り込まれる。計量チャンバーでは、計量された限外濾過生成物と計量されたホルムアミド(それらは別々の流れに由来する)を結合させて、分離および検出用の試料を調製する。バイオチップを60℃に加熱する以外は、実施例5および6に記載した同様に電気泳動は実施される。注入電圧および時間、分離電圧および時間は、実施例5および6のものと同じである。2つの血液試料は、それらが分離および検出用の16個の生成物流路を生成するように処理される。一般に、試料当たりの分離流路の数は、評価を行う病原菌の1つに対してデータが取得される、遺伝子座およびプライマー対の最大数と同じである。
【0183】
光学システムを作動させて、レーザー誘起蛍光励起および検出を行う。レーザーは200mWに設定され、データ収集速度は5Hzで行われる。色補正の後で、自動化されたベースコール(basecaller)は、レーンから配列を生成させるが、該レーンは、増幅と配列プライマー(sequencing primer)が、それぞれ増幅ケーキおよび配列ケーキに組み入れられた、10個の病原菌の1つを含む。約500bpの配列物が、レーン当たり生成する。
【0184】
臨床試料のタイプや同定されるべき病原菌に応じて、バイオチップを多くの方法で変更できる。例えば、野兎病(Francisella tularenis)やクラミジアトラコマチス(Chlamydia trachomastis)等の特定のバクテリアはかれらのライフサイクルの大部分を哺乳類の細胞で過ごす。いくつかは真正細胞内生物であり他は細胞内であってもよい。血液中のそのような細胞内バクテリアのためのDNA精製処理は、大きな点を除いて上記と同じである。全血液を細胞分離フィルターの上に載せ、フィルターを通すと、フィルターに捕獲された白血球は対象とするDNAを含んでいる。フィルターを洗浄し、100μLに再懸濁させ、実施例1に記載されたグアニジン系精製を行い、対応還元は試薬体積で行う。
【0185】
必要に応じて、白血球の溶解を最初に行うように(例えば浸透圧的に)、装置を設計することもでき、それにより、バクテリアに比較して哺乳類の細胞の溶解を比較的簡単にできるという利点がある。この設定では、完全な細胞内バクテリアが放出され、細胞抽出物は、バクテリア捕獲フィルターを通過し、洗浄される。バクテリアのDNAは、次いで上記のように精製される。同様に、全血液を細胞分離なしで溶解させることができるので、細胞外バクテリアまたは細胞内バクテリアまたはウィルス性DNAを精製できる。
【0186】
本発明のいくつかの実施形態について記載したが、図示および記載されたそれらの詳細については、本発明の範囲から逸脱しない範囲内で様々な変更が可能であることは当業者には明らかであろう。