(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判定の結果として、前記第1の通信装置への接続要求をすべきでないことを示す指示を、前記第2の通信装置へ通知する、ように構成されることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
前記判定の結果として、前記第1の通信装置へ接続するための認証情報を前記第2の通信装置へ通知する、ように構成されることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0009】
(無線通信システム)
図1に、本実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す。
図1の無線通信システムは、WiFi(登録商標)に基づく無線LANの1つのアクセスポイント101と、アクセスポイント(AP)101の通信可能範囲に少なくとも一定期間滞在する端末装置102、及びその範囲を通過する複数の端末装置103を含んで構成される。なお、本実施形態では、WiFi(登録商標)に基づく無線LANで通信を行う通信装置を含んだ無線通信システムについて説明するが、これに限られず、任意の方式で無線通信を行う任意の通信装置に以下の議論を適用することができる。また、AP101は、例えば、アクセスポイント機能を有する端末装置など、複数の他の装置と接続を確立することができる任意の通信装置でありうる。
【0010】
AP101は、例えば、自身を発見させるためのビーコンを送出して、自身を発見した端末装置から受信した探索要求に対して探索応答を送信し、その後、端末装置の認証を行う。そして、AP101は、認証が成功した端末装置から接続要求を受信してそれを許可することによって、その端末装置との間で接続を確立する。ここで、端末装置102及び103は、例えばスマートフォン等の通信装置であり、無線LANでの通信機能を有する。なお、端末装置102及び103は、例えば通信機能として無線LANの通信機能のみを有する端末であってもよく、必ずしもスマートフォンでなくてもよい。ここで、端末装置102及び103は、自身が設定しているESS−ID(Extended Service Set Identifier)を有するAPを探索して発見すると、認証の後に、接続要求を送信する。なお、端末装置102及び103は、例えばバックライトがオンとなっている場合や何等かの所定のアプリケーションが動作している場合などの低消費電力状態でない所定の第1の状態において、通信を行う必要がなくとも接続要求を定期的に送信しうる。また、端末装置102及び103は、例えばバックライトがオフとなっているなど低消費電力状態である所定の第2の場合であっても、接続要求を送信しうる。ただし、第2の場合では、接続要求が送信される周期を第1の場合よりも長くすることができる。また、端末装置102及び103は、一度に2回以上の所定回数、繰り返して接続要求を送信することができる。例えば、端末装置102及び103は、例えば接続要求を送信する周期が開始するタイミングにおいて、2回繰り返して接続要求を送信し、その後、次の周期が到来したことに応じて、再度、接続要求を2回繰り返して送信するように構成されうる。
【0011】
AP101は、接続を確立した端末装置の情報をリストに登録して管理し、リストに登録されている端末装置に対して無線通信サービスを提供する。例えば、
図1の状態において、AP101は、端末装置102との間で接続を確立すると、端末装置102の情報をリストに登録した上で無線通信サービスを提供する。なお、AP101は、例えば端末装置102がリストに登録された後に通信が行われなくなってからの期間が一定期間に達した場合に、端末装置102の情報をリストから削除することができる。これにより、AP101は、上述のようにリストに登録可能な端末装置の数が限られていても、様々な端末装置に対して無線通信サービスを提供することができる。
【0012】
しかしながら、例えば人通りの多い道路沿いの店舗にAP101が設置されている場合など、非常に多くの端末装置103がAP101と接続可能な範囲に進入する場合は、多くの端末装置がAP101へ接続要求を送信することが想定される。このとき、端末装置103のユーザが移動することによって、AP101と接続可能な範囲から離脱し、実際にはその端末装置103との間で通信を行わない場合がある。例えば、ユーザが端末装置103(例えばスマートフォン)で時間を確認するためにバックライトを点灯させることで、端末装置103が、低消費電力状態ではなくなり、接続要求をAP101へと送信することが考えられる。しかし、この場合、端末装置103のユーザは、実際に通信が行われることを望んでおらず、また、端末装置103も送受信すべきデータが存在しないことが想定されるため、接続が確立されてもその後に通信を行うことはない場合がある。また、端末装置103は、低消費電力状態であっても接続要求を送信することができるが、この場合も、接続が確立されてもその後に通信を行うことはない場合がある。
【0013】
一方、このような場合であっても、AP101は、接続が確立された端末装置103の情報をリストに登録する。このため、AP101が自身と接続可能な範囲に進入してきた端末装置のそれぞれと接続を確立すると、それに応じて、AP101が管理するリストに登録されている端末装置の数が急増し、登録可能な端末装置数の上限に達することが想定される。この場合、AP101は、さらに別の装置が自身と接続可能な範囲に進入して接続要求を送信しても、それを受け入れることができず、いずれかの端末装置の情報がリストから削除されるまで、その別の装置はAP101と接続することができなくなる。このため、例えばAP101と通信中の端末装置が存在しない場合であっても、AP101は、別の装置に対して無線通信サービスを提供することができない場合がありえ、この場合、データ通信することを望む別の装置のユーザの利便性が損なわれる。
【0014】
本実施形態に係るAP101は、このような課題に対処するための処理を実行する。以下、このようなAP101の構成例と、AP101が実行する処理の概要について説明する。
【0015】
(AP101の構成)
図2に、AP101のハードウェア構成例を示す。AP101は、一例において、
図2に示すようなハードウェア構成を有し、例えば、CPU201、ROM202、RAM203、外部記憶装置204、及び通信装置205を有する。AP101では、例えばROM202、RAM203及び外部記憶装置204のいずれかに記録された、後述するAP101の各機能を実現するプログラムがCPU201により実行される。なお、CPU201は、ASIC(特定用途向け集積回路)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)等の1つ以上のプロセッサによって置き換えられてもよい。
【0016】
そして、AP101は、例えばCPU201により通信装置205を制御して、端末装置との間の通信を行う。なお、
図2では、AP101は、1つの通信装置205を有するような概略図を示しているが、これに限られない。例えば、AP101は、有線通信用の通信装置と無線通信用の通信装置とを有してもよい。
【0017】
なお、AP101は、各機能を実行する専用のハードウェアを備えてもよいし、一部をハードウェアで実行し、プログラムを動作させるコンピュータでその他の部分を実行してもよい。また、全機能がコンピュータとプログラムにより実行されてもよい。
【0018】
図3に、AP101の機能構成例を示す。AP101は、例えば、通信部301、接続要求受付部302、受付制御部303、及び設定制御部304を有して構成される。なお、これらの機能部は、それぞれ、例えば上述のCPU201が、例えばROM202、RAM203及び外部記憶装置204のいずれかに記録されたプログラムを実行することによって実現されうる。
【0019】
通信部301は、少なくとも複数の端末装置との間で無線通信を行うことができる無線通信機能を有する。なお、通信部301は、例えば有線通信機能を有していてもよい。接続要求受付部302は、通信部301が端末装置からの接続要求(例えば、Association要求)を受信した場合に、その受け付けを行う制御部である。接続要求受付部302は、接続要求を受け付けて接続を確立した端末装置をリストに登録する。そして、通信部301は、リストに登録された端末装置との間で無線通信を行うことができる。
【0020】
受付制御部303は、それまでに接続要求を受信していない端末装置から、通信部301が接続要求を初めて受信した際に、その接続要求を受け付けないように、接続要求受付部302を制御する。なお、本明細書及び添付の特許請求の範囲において、「接続要求を受け付けない」とは、物理的な接続要求の受け取りを遮断することのみならず、接続要求自体を受け取ることによって物理的には接続要求を受け付けるが、受け取った接続要求に対して応答しない等のその後の処理を行わないことをも含む。例えば、接続要求受付部302は、受付制御部304によって接続要求の少なくとも一部の受け付けを停止するように制御されている間は、その少なくとも一部の接続要求に対して応答しないことによって、接続要求を受け付けないようにする。そして、受付制御部303は、その端末装置からの初回の接続要求の後に第1の所定長の期間を設定し、その期間内にその端末装置からの接続要求を所定回数受信した場合、その接続要求を受け付けるように接続要求受付部302を制御する。なお、受付制御部303は、第1の所定長の期間内に所定回数の接続要求をその端末装置から受信しなかった場合は、その端末装置からの接続要求を受け付けないように接続要求受付部302を制御する。ここで、受付制御部303は、第1の所定長の期間内に所定回数の接続要求をその端末装置から受信しなかった場合で、その後にその端末装置から受信した接続要求については、初回の接続要求として扱う。なお、受付制御部303は、端末装置からの初回の接続要求の受信と、第1の所定長の期間との間に、第2の所定長の期間を設定することができる。そして、受付制御部303は、この第2の所定長の期間の間は、その端末装置からの接続要求を受け付けないように、接続要求受付部302を制御しうる。なお、受付制御部303は、上述の処理を、1つ以上の端末装置について、それぞれ別個に実行する。
【0021】
設定制御部304は、上述の第1の所定長、第2の所定長、及び所定回数を設定するための制御を行う。設定制御部304は、例えば、上述の第1の所定長を、例えばバックライトがオフとされている等の低消費電力状態の端末装置が接続要求を送信する周期に基づいて設定する。例えば、第1の所定長は、低消費電力状態の端末装置が接続要求を送信する周期より短く設定される。例えばユーザが端末装置を鞄に入れて持ち運んでおり、その端末装置を用いて通信を行う予定がないような状態では、その端末装置は低消費電力状態にあるといえる。第1の所定長を低消費電力状態の端末装置が接続要求を送信する周期より短く設定することにより、第1の所定長の期間内にこのような端末装置が再度接続要求を送信する確率は非常に低くなる。したがって、このような通信する予定のない端末装置がAP101に接続することを防ぐことが可能となる。なお、設定制御部304は、第1の所定長を、低消費電力状態でなく、通信する可能性のある端末装置が接続要求を送信する周期より長く設定しうる。これにより、通信する予定のある端末装置が第1の所定長の期間内に接続要求を送信できないことを防ぎ、このような端末装置がAP101に接続できなくなることを防ぐことができる。
【0022】
また、設定制御部304は、低消費電力状態にある端末装置が一度に一定回数繰り返して接続要求を送信する場合、上述の所定回数を、その一定回数に基づいて設定しうる。すなわち、低消費電力状態にあり、通信しないと考えられる端末装置がAP101と接続することを防ぐように、上述の一定回数の接続要求によって、接続要求を受け付けられることがないように、一定回数以上となるように所定回数が設定される。例えば、所定回数を一定回数と等しくすることにより、一度に送信される接続要求のうち、まず初回の接続要求が受け付けられず、また、その初回の接続要求に続いて繰り返し送信される(一定回数−1)回の接続要求も受け付けられないこととなる。このため、さらにその端末装置からの接続要求が受信されない限りは、その端末装置の接続要求は受け付けられないこととなる。なお、設定制御部304は、例えば、第1の所定長を長く設定する場合は、これに伴って所定回数を大きく設定してもよい。
【0023】
また、設定制御部304は、例えば、通信しない端末装置が、AP101と接続可能な範囲に進入してから離脱するまでの時間に基づいて第2の所定値を決定しうる。すなわち、例えば端末装置を保持したユーザがAP101と接続可能な範囲を通過するのに要する時間に基づいて、第2の所定値が決定される。これによれば、例えばユーザが端末装置を用いて時間を確認するだけの場合など、その端末装置が低消費電力状態ではないがAP101と通信しない場合に、第2の所定値の期間において接続要求が送信されるが、それを受け付けないことになる。したがって、このような通信する予定のない、単にAP101と接続可能な範囲を通過するだけの端末装置が、AP101に接続されることを防ぐことができる。
【0024】
なお、ユーザによって歩行速度が異なるなどの要因によって、AP101と接続可能な範囲を通過するのに要する時間は異なりうる。このため、設定制御部304は、複数の端末装置に関して、その通過に要する時間を特定して統計処理を行い、その統計処理の結果得られた値に基づいて、第2の所定値が決定されてもよい。例えば、通信を行わずに通過した端末装置のうちの90%等の所定の割合の端末装置が通過することができた時間を、第2の所定値として定めてもよい。また、設定制御部304は、その通過に要する時間の分布のピーク値を特定し、ピーク値に応じて第2の所定値を決定してもよい。分布のピーク値に対応する時間は、最も多くの割合の端末装置が、AP101と接続可能な範囲に進入してから離脱するのに要した時間である。すなわち、そのような分布のピーク値に対応する時間が大きいほど、多くの端末装置がAP101と接続可能な範囲に進入してから離脱するのに多くの時間を要することとなる。このため、設定制御部304は、AP101と接続可能な範囲を単に通過する端末装置がAP101と接続しないようにするために、そのピーク値に対応する時間が大きいほど、第2の所定値を大きく設定することができる。
【0025】
なお、設定制御部304は、端末装置が、AP101と接続可能な範囲に進入してから離脱するまでの時間を、例えばその端末装置から接続要求を受信できた期間に基づいて特定してもよい。すなわち、ある端末装置から接続要求を受信している間は、その端末装置はAP101と接続可能な範囲に滞在していることとなる。このため、設定制御部304は、それぞれの端末装置から接続要求を最初に受信してから最後に受信するまでの期間を、AP101と接続可能な範囲に進入してから離脱するまでの時間として特定しうる。なお、設定制御部304は、この時間の特定においては、AP101と通信を行わなかった端末装置についてのみ考慮することができる。AP101と通信を行った端末装置については、単にAP101と接続可能な範囲を通過したのではなく、その範囲内で静止状態又は準静止状態であった期間があると推測されるため、範囲の通過に要する時間の推定には適切でない場合があるからである。
【0026】
なお、設定制御部304は、AP101と接続可能な範囲の広さに基づいて、その範囲を通過するのに要する時間の予想値を特定し、その範囲の広さが広いほど、第2の所定長が長くなるように設定を行いうる。例えば、設定制御部304は、範囲の広さ(例えば範囲の最長径やAP101からの距離の平均値の2倍)を、平均移動速度で除算した結果に基づいて、その範囲を通過するのに要する時間の予想値を特定しうる。なお、例えばAP101が駅内に配置されている場合、電車の入線時等のピーク時には駅内が混雑し、端末装置を所有するユーザの平均移動速度が遅くなるため、非ピーク時には、ピーク時よりは平均移動速度が速くなる傾向がある。このため、設定制御部304は、時間帯によって異なる予想値を特定し、それに応じて第2の所定値の値を変動させてもよい。すなわち、ピーク時には、AP101と接続可能な範囲に進入してから離脱するまでの時間が、非ピーク時と比して長くなる傾向があるため、設定制御部304は、ピーク時の第2の所定長をより長く設定しうる。
【0027】
(処理の流れ)
続いて、
図4を用いて、AP101が実行する処理の流れについて説明する。AP101は、端末装置ごとに、
図4の処理を実行しうる。AP101は、それまで接続要求を受信していなかったある端末装置から、初めて接続要求を受信すると(S401でYES)、第2の所定長の期間の間、その端末装置からの接続要求の受け付けを停止する(S402)。その後、AP101は、第2の所定長の期間が満了すると(S403でYES)、続いて第1の所定長の期間の間、その端末装置からの接続要求を待ち受ける(S404)。AP101は、第2の所定長の期間が満了する前に(S405でNO)、所定回数の接続要求を受信した場合(S406でYES)、その接続要求を受け付け(S407)、その端末装置との接続を確立して、処理を終了する。なお、AP101は、この端末装置の情報が、接続を確立した端末装置のリストから抹消されたことに応じて、処理をS401へと戻す。また、AP101は、所定回数の接続要求を受信することなく(S406でNO)、第2の所定長の期間が満了した場合(S405でYES)も、処理をS401へと戻す。なお、S402〜S403の処理は省略されてもよい。
【0028】
続いて、
図5(A)及び
図5(B)を用いて、AP101が実行する処理の概要について説明する。
図5(A)及び
図5(B)は、所定回数を2回とした場合の例を示している。また、
図5(A)は、第2の所定長の期間が設定される場合の例を示しており、
図5(B)は第2の所定長の期間が設定されない場合の例を示している。
【0029】
図5(A)の例において、AP101は、ある端末装置から初回の接続要求501を受信すると、その接続要求を受け付けることなく、第1の所定長の期間(受付制御期間502)を開始する。AP101は、受付制御期間502においてその端末装置から受信した接続要求については、受け付けない。AP101は、第1の所定長の時間が経過したことに応じて、受付制御期間502を終了し、第2の所定長の期間(受付許容期間503)を開始する。AP101は、受付許容期間503においても、その端末装置からの接続要求の回数が所定回数に、すなわち、2回に達するまではその接続要求を受け付けない。一方で、AP101は、受付許容期間503において受信した2回目の接続要求504を受け付け、その端末装置との間で接続を確立する。これによれば、受付制限期間502の間に、AP101と接続可能な範囲を通過するだけの端末装置は、高い確率でその範囲外に移動し、結果として、通信を行わない端末装置がAP101に接続することを防ぐことができる。一方、例えばその範囲内に滞在してAP101を介した通信を望む端末装置については、受付許容期間503においてAP101と接続を確立することができる。このため、通信を行わない多数の端末装置がリストに登録されてしまうことによって、通信を望む端末装置の接続が確立できないようになることを防ぐことができる。
【0030】
図5(B)の例では、AP101は、ある端末装置から初回の接続要求501を受信すると、その接続要求を受け付けることなく、第2の所定長の期間(受付許容期間503)を開始する。そして、AP101は、その端末装置から、受付許容期間503内に(初回の接続要求501を除いて)、2回(所定回数)の接続要求を受信した場合、その2回目の接続要求505を受け付けて、その端末装置との接続を確立する。これによれば、例えば低消費電力状態の端末装置は、受付許容期間503内に所定回数の接続要求を送信する確率が低いため、通信を行わないことが予想される端末装置がAP101と接続を確立してしまう確率を低減することができる。一方、低消費電力状態でなく、通信を望む端末装置は、短期間に複数回の接続要求を送信するため、受付許容期間503内に接続要求が受け付けられる確率が高い。このため、
図5(B)のような処理によっても、通信を行わない多数の端末装置がリストに登録されてしまうことによって、通信を望む端末装置の接続が確立できないようになることを防ぐことができる。
【0031】
このように、本実施形態の特徴によれば、不必要な接続の確立を防ぎ、接続を希望するユーザからの接続ができない状態が発生することを防ぐ又は少なくともその発生の確率を低減することができる。
【0032】
なお、不必要な接続の確立を防ぐための制御は、端末装置においても実行しうる。例えば、端末装置は、(APへ接続してもユーザの体感通信品質が劣化しうると予想されるような)所定の条件を満たす場合に、APへの接続要求を送信しないようにしうる。
【0033】
例えば端末装置がLTE等によって通信中にAPへの接続の切り替えを行う場合、その接続の切り替えによって通信が途切れるなどの、その端末装置のユーザにとっての体感通信品質が劣化する事象が生じうる。このため、このような場合に、端末装置は、APに対して接続要求を送信しないようにしうる。例えば、端末装置は、バックグラウンドで動作するアプリケーションによって、表示画面(ディスプレイ)のバックライトの点灯状態情報(例えば点灯/消灯フラグ)を端末装置内部(例えばオペレーティングシステム(OS))から取得する。そして、端末装置は、その情報を所定のサーバへ送信する。サーバは、端末装置から受信した情報が、端末装置のバックライトが点灯されていることを示す場合、ユーザが端末装置を操作しており、APに接続してもユーザの体感する通信品質が劣化すると判定する。そして、サーバは、その判定結果を端末装置へと(例えば3GやLTE等のセルラ網を通じて)送信しうる。端末装置は、サーバからそのような判定結果を受信した場合、APに対して接続要求を送信しないようにしうる。また、端末装置は、端末装置の表示画面の最上位に表示されるアプリケーション種別(動画ストリーミング視聴アプリなど)の情報を取得し、その情報をサーバへと送信してもよい。この場合、サーバは、例えば通知された種別のアプリケーションが通信の途切れに対する耐性を有するか否かを判定する。そして、サーバは、耐性を有する場合はAPへ接続しても体感通信品質の劣化はないと判定し、耐性を有しない場合はAPへ接続すると体感通信品質が劣化すると判定しうる。また、端末装置は、アプリケーション種別ではなく、例えば端末装置自身が行った通信に関するスループットの情報(例えば所定期間の平均値や移動平均値等の統計値)を取得して、その情報をサーバへと送信してもよい。この場合、サーバは、例えばスループットが所定値より高い場合に、接続の切り替えによる体感通信品質が劣化することがありうると判定しうる。サーバは判定結果を端末装置へ送信し、端末装置は、その判定結果に応じてAPへ接続要求を送信すべきか否かを決定する。なお、サーバは、判定結果ではなく、接続要求を送信すべきか否かの指示を端末装置へと送信してもよい。この場合、端末装置は、サーバからの指示に応じてAPに対して接続要求を送信するか否かを決定しうる。
【0034】
また、端末装置は、(例えばGPS等を用いて取得した)自身の位置情報を、サーバに送信しうる。この位置情報の送信は、例えばLTE規格で用いられる測位及び報告手順が流用されてもよいし、別個の位置情報取得及び報告手順が規定されてもよい。サーバは、端末装置からの位置情報の通知に基づいて、その端末装置が所定の地理的領域内に存在するか否かを判定し、ユーザの行動パターンを推定しうる。例えば、サーバは、端末装置が所定の鉄道路線の近傍に存在していると判定した場合は、ユーザがその端末装置を携行して電車で移動していると推定することができる。また、サーバは、端末装置が所定の自動車道路の近傍に存在していると判定した場合は、ユーザがその端末装置を携行して自動車で移動していると推定することができる。他の場合も、同様の判定によって、サーバは、端末装置から通知された位置情報に基づいて、その端末装置がAPの通信可能範囲を通過するだけであるか否かの行動パターンを推定しうる。そして、この場合、サーバは、端末装置が存在する位置の近傍に配置されているAPに接続しても、その端末装置のユーザが体感する通信品質が劣化すると判定し(又は少なくとも改善はしないと判定し)、その判定結果を端末装置へと通知しうる。端末装置は、この判定結果に応じてAPへ接続要求を送信すべきか否かを決定する。なお、この場合も、サーバは、判定結果ではなく、接続要求を送信すべきか否かの指示を端末装置へと送信し、端末装置は、サーバからの指示に応じてAPに対して接続要求を送信するか否かを決定してもよい。
【0035】
なお、端末装置は、自身がAPに接続可能な時点(接続要求を送信可能な時点)における自身の位置情報をサーバへと送信してもよいし、複数の時点における位置情報をサーバへと送信してもよい。例えば、端末装置は、自身がAPに接続可能な時点において、その時点の位置情報のみをサーバへと通知してもよいし、その時点から過去の所定の期間における位置情報をまとめてサーバへと通知してもよい。また、端末装置は、定期的にその時点での自身の位置情報をサーバへと通知してもよい。これにより、サーバは、端末装置から取得した1つの時点の位置情報のみを取得する場合と比較して、より正確に端末装置のユーザの行動パターンを推定することができる。そして、これに応じて、端末装置がAPに接続要求を送信するか否かを、より適切に制御することが可能となる。
【0036】
さらに、端末装置は、位置情報のみならず、併せて位置情報を取得した時刻情報をサーバへと送信してもよい。サーバは、端末装置の位置情報と対応する時刻情報とに基づいて、例えば端末装置の移動速度を計算し、その移動速度に基づいて端末装置のユーザの行動パターンを推定しうる。例えば、サーバは、計算した移動速度と、サーバ内に予め登録されている所定の鉄道路線を走行する電車の速度とを比較し、その差が所定の範囲内である場合に、ユーザが端末装置を携行して電車で移動中と判定しうる。同様に、サーバは、計算した移動速度と、所定の自動車道路の自動車の移動速度や、歩行者の平均移動速度などとを比較して、ユーザが歩行しているのか、自動車で移動しているのか等の行動パターンを推定することができる。なお、端末装置が、自身が有する加速度センサから取得した情報に基づいてこの移動速度の計算を実行し、その計算結果をサーバに送信するようにしてもよい。
【0037】
さらに、サーバは、複数の時点における端末装置の位置が、所定の期間を超えて同一位置又は所定の領域内にとどまっている場合、その端末装置のユーザが静止状態又は準静止状態にあると推定することができる。例えば、サーバは、端末装置が電車の発着時間間隔を超えて駅内の所定の領域内に滞在し続けている場合、その端末装置が駅のホームや待合室などに滞在していると推定することができる。この場合、サーバは、端末装置がAPと接続可能な位置に(例えば少なくとも電車到着までの)一定期間存在し、少なくとも駅を通過するだけの端末ではないと判定できる。このため、サーバは、この端末装置については、APへ接続要求を送信すべき(又は送信してもよい)と判定しうる。この場合、サーバは、その端末装置に対して、所定の認証情報(例えば、ID/パスワードや電子証明書など)を送信する。そして、端末装置は、その所定の認証情報をAPへ送信し、APは、端末装置からその所定の認証情報を受信した場合に応答を許可することによって、その端末装置を、上述の接続要求の制御対象から外してもよい。これにより、APの近傍に短期間滞在するユーザの端末装置の中から、単にそのAPの近傍を通過するだけではなく、APへの接続を認めるべき端末装置を選択することができる。
【0038】
このように、端末装置側の処理の例について説明したが、これらは一例であり、端末装置のユーザの体感通信品質が劣化しうるか否かの判定に基づいて、その端末装置がAPに対して接続要求を送信してよいか否かを判定する任意の方法が用いられうる。また、上述の処理の例は、個別に用いられてもよいし、組み合わせとして用いられてもよい。例えば、バックライトがオンで、かつ、端末装置が静止状態又は準静止状態にある場合に、端末装置に対して接続要求の送信を許可してもよい。また、端末装置の接続要求の送信が許容される場合に、上述のように所定の認証情報を端末装置からサーバへと送信させてもよいがこれに限られない。例えば、サーバは、端末装置の接続要求の送信が許容される場合に、そのような所定の認証情報を用いずに、単に端末装置に接続要求の送信するように(又は送信してもよいことを)指示してもよい。この場合、サーバは、端末装置の接続要求の送信が許容されない場合に、端末装置が接続要求を送信しないように指示しうる。
【0039】
なお、上述の説明では、端末装置がサーバへ情報を送信して、サーバにおいて、端末装置がAPに対する接続要求を送信すべきか否かに関する判定を実行する例を説明した。この処理によれば、端末装置は、所定の情報をサーバへ通知するだけで済むため、追加のアプリケーションのインストールや、追加の処理負担の発生を抑制することができる。ここで、サーバは、例えばLTEや3G等のセルラ通信を介して接続可能なネットワーク上の装置でありうるが、その機能がAPに備えられてもよい。この場合、例えばAPへの接続要求が送信される前段階で送受信される信号によって、上述の端末装置からサーバへの所定の情報の送信や、サーバから端末装置への判定結果又は指示の送信が行われてもよい。また、上述のサーバは1つの装置によって構成される必要はなく、複数の装置によって構成されてもよい。また、上述のサーバの判定は端末装置が実行してもよく、上述のサーバは存在しなくてもよい。すなわち、端末装置は、例えばバックライトのオン/オフ、実行中のアプリケーション、実行した通信に関するスループット、移動速度等に基づいて、その端末装置のユーザの行動パターンを推定し、APに接続要求を送信すべきか否かを自律的に判定してもよい。さらに、上述の処理は一例であり、役割の分担を上述の構成から変更してもよい。例えば、端末装置が、行動パターンの推定を行い、その行動パターンの情報をサーバへと送信し、サーバは、その行動パターンの情報に基づいて、端末装置がAPに対して接続要求を送信すべきか否かを判定するようにしてもよい。これによれば、サーバ側の設定を調整することのみによって、その時点の状態に応じて、接続要求を送信すべき端末装置を適切に選択することができる。
【0040】
なお、上述の端末装置側の制御は、単独で行われてもよいし、上述のAP側の制御と共に行われてもよい。これにより、端末装置が、APに対して不必要に接続要求を送信することがなくなり、APが、接続を希望するユーザからの接続ができない状態が発生することを防ぐ又は少なくともその発生の確率を低減することができる。