(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6698809
(24)【登録日】2020年5月1日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】排ガス浄化装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 37/02 20060101AFI20200518BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20200518BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20200518BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20200518BHJP
B05B 1/18 20060101ALN20200518BHJP
【FI】
B01J37/02 301D
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B05D7/00 KZAB
B05D7/24 303B
!B05B1/18 101
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-237626(P2018-237626)
(22)【出願日】2018年12月19日
【審査請求日】2020年2月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】城戸 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】松井 優
(72)【発明者】
【氏名】小原 恵津子
(72)【発明者】
【氏名】中田 和真
【審査官】
若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/114132(WO,A1)
【文献】
特開2014−076415(JP,A)
【文献】
特開2015−039672(JP,A)
【文献】
国際公開第2017/163984(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/73
53/86−53/90
53/94
53/96
B01J 21/00−38/74
B05D 1/00−7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカム基材の上部に、触媒金属含有溶液をシャワーノズルから提供すること、
前記ハニカム基材に前記溶液をコーティングすること、及び
前記溶液でコーティングされた前記ハニカム基材を焼成すること
を含む、排ガス浄化装置の製造方法であって、
前記シャワーノズルは、前記溶液を吐出するための複数の吐出口、及び前記複数の吐出口を囲むガードを有している、排ガス浄化装置の製造方法。
【請求項2】
前記ガードが、前記シャワーノズルの吐出口から5mm以上の長さで突出している、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ガードと、前記ガードに最も近接している前記吐出口との平均の距離が、1mm以上20mm以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記吐出口の平均孔径が、0.3mm以上3mm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記シャワーノズルの吐出口が、前記シャワーノズルの凸状部分にある、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記溶液のせん断速度4s−1での粘度が、1mPa・s以上20000mPa・s以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記溶液のシャワーノズルからの提供を行う際に、前記ハニカム基材の上部からの溶液の漏出を防ぐためのガイドを使用することを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化装置の製造方法に関する。特に、本発明は、触媒金属含有溶液を提供するためのノズルの吐出口において目詰まりの発生を防止することで、長期間にわたって均一なコーティングが可能な、排ガス浄化装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排ガス浄化装置は、例えば、ハニカム基材とこのハニカム基材上に形成された触媒層とを含んでいる。このような排ガス浄化装置は、例えば、触媒層を形成するための触媒金属含有溶液をハニカム基材に塗布し、その後、そのハニカム基材を乾燥及び焼成することによって製造される。
【0003】
例えば、特許文献1は、そのような触媒金属含有溶液をハニカム基材に塗布するための装置を開示している。特許文献1では、触媒金属含有溶液をハニカム基材上部の溶液貯留部に供給した後、溶液貯留部に溜まった溶液の液面を均一化機構によって均一化させる。その後、溶液貯留部に溜まった溶液をハニカム基材下部側から吸引することによって、ハニカム基材に均一に溶液をコーティングする。
【0004】
特許文献2は、ハニカム基材上部に高粘度の溶液を供給するためのノズルを開示している。特許文献2では、ノズルの端面部分にある吐出口からも、しっかりと溶液を吐出できるノズルを開示している。このようなノズルを使用することで、吐出された溶液が、ハニカム基材上部の中心部のみに堆積することが防止でき、それによりハニカム基材に均一に溶液をコーティングすることができる。
【0005】
特許文献1及び2に記載の発明は、主に、高粘度溶液をハニカム基材にコーティングするのに好適である。
【0006】
特許文献3は、低粘度溶液を用いてもハニカム基材に溶液を均一にコーティングすることができる排ガス浄化装置の製造方法を開示している。
【0007】
従来技術によるハニカム基材のコーティング方法の一例を
図5に示す。この方法では、ノズル10から溶液20をハニカム基材30の上部に提供する。この際に、必要に応じてガイド40を使用して、ハニカム基材の上部からの溶液の漏出及びハニカム基材の外側面を溶液が流れ落ちることを防ぐ。ハニカム基材30は、支持体50上に置かれており、そして支持体50にはダクト60が連結している。ハニカム基材30の上部に溜まった溶液20を、ダクト60で吸引することで、ハニカム基材30に溶液20をコーティングする。なお、この
図5では、ノズル10から溶液20を提供する工程も、溶液20をダクト60で吸引する工程も、同じ場所で行われるように示されているが、これらの工程は、異なる場所で行うことができる。
【0008】
なお、近年、助触媒粒子のセリア−ジルコニア複合酸化物粒子を、触媒層で用いるのではなく、ハニカム基材の構成材料の1種として用いることが検討されている。例えば、特許文献4は、ハニカム基材がセリア−ジルコニア複合酸化物粒子を含む、排ガス浄化装置を開示している。
【0009】
これらの文献は、その参照により本明細書に取り込まれる。このようなハニカム基材及び排ガス浄化装置は、特許文献5及び6においても開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−15205号公報
【特許文献2】国際公開第2010/114132号
【特許文献3】国際公開第2018/180090号
【特許文献4】特開2015−85241号公報
【特許文献5】特開2015−77543号公報
【特許文献6】特開2016−34781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来技術では、長期間溶液を提供し続けていると、ノズルの吐出口が目詰まりして、目詰まりをした部分から溶液の提供がされず、その結果、ハニカム基材への均一なコーティングができなくなるという課題があった。
【0012】
そこで、本発明は、長期間にわたって均一なコーティングが可能な、排ガス浄化装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、以下の態様を有する本発明により、上記課題を解決できることを見出した。
《態様1》
ハニカム基材の上部に、触媒金属含有溶液をシャワーノズルから提供すること、
前記ハニカム基材に前記溶液をコーティングすること、及び
前記溶液でコーティングされたハニカム基材を焼成すること
を含む、排ガス浄化装置の製造方法であって、
前記シャワーノズルは、前記溶液を吐出するための複数の吐出口、及び前記複数の吐出口を囲むガードを有している、排ガス浄化装置の製造方法。
《態様2》
前記ガードが、前記シャワーノズルの吐出口から5mm以上の長さで突出している、態様1に記載の製造方法。
《態様3》
前記ガードと、前記ガードに最も近接している前記吐出口との平均の距離が、1mm以上20mm以下である、態様1又は2に記載の製造方法。
《態様4》
前記吐出口の平均孔径が、0.3mm以上3mm以下である、態様1〜3のいずれか一項に製造方法。
《態様5》
前記シャワーノズルの吐出口が、前記シャワーノズルの面の凸状部分にある、態様1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
《態様6》
前記溶液のせん断速度4s
−1での粘度が、1mPa・s以上20000mPa・s以下である、態様1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
《態様7》
前記溶液のシャワーノズルからの提供を行う際に、前記ハニカム基材の上部からの溶液の漏出を防ぐためのガイドを使用することを含む、態様1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の方法において用いられる、ハニカム基材に触媒金属含有溶液をコーティングするための装置の1つの態様の概略図を示している。
【
図2】
図2(a)は、本発明の製造方法で使用されるシャワーノズルの1つの態様の下面図を示しており、
図2(b)は、
図2(a)のシャワーノズルの斜視図を示している。
【
図3】
図3は、本発明の製造方法で使用される吐出口が凸状部分に存在するシャワーノズルの1つの態様を示している。
【
図4】
図4は、整流プレートを有するシャワーノズルの一例の概略図を示している。
【
図5】
図5は、従来から用いられている、ハニカム基材に触媒金属含有溶液をコーティングするための装置の1つの態様の概略図を示している。
【
図6】
図6は、実施例で使用した評価装置の概略図を示している。
【
図7】
図7は、実施例で使用したノズルのガードの寸法の測り方を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の排ガス浄化装置の製造方法は、ハニカム基材の上部に触媒金属含有溶液をシャワーノズルから提供すること、ハニカム基材に触媒金属含有溶液をコーティングすること、及びその溶液でコーティングされたハニカム基材を焼成することを含む。本発明で用いられるシャワーノズルは、触媒金属含有溶液を吐出するための複数の吐出口、及び複数の吐出口を囲むガードを有している。
【0016】
従来技術の排ガス浄化装置の製造方法において、長期間触媒金属含有溶液を提供し続けていると、ノズルの吐出口が目詰まりする場合があり、この場合、目詰まりをした部分から溶液の提供がされず、その結果、ハニカム基材への均一なコーティングができなくなっていた。それに対して、本発明者らは、その原因について、様々な検討を行った。例えば、ハニカム基材に溶液を提供してから、次のハニカム基材に溶液を提供するまでの時間、溶液を提供する速度、溶液の組成及び粘度、溶液の凝集物、吸引の条件、製造環境等について検討を行った。
【0017】
その中で、本発明者らは、低湿度環境下で、排ガス浄化装置の製造を行った場合に、ノズルの吐出口が特に目詰まりしやすいことを見出した。そこで、本発明者らはさらに検討を行って、吐出口を囲むガードをシャワーノズルに設置して、吐出口の付近を保湿環境下にすることによって、低湿度環境下で排ガス浄化装置の製造を行ったとしても、ノズルの吐出口の目詰まりを防止できることを見出した。
【0018】
図1に示すように、この方法では、触媒金属含有溶液20を提供するノズル10に、ガード11が存在している。このガード11を有するノズル10からハニカム基材30の上部に溶液20を提供する。この際に、必要に応じてガイド40を使用して、溶液の液面の高さを均一にし、かつ又はハニカム基材の上部からの溶液の漏出及びハニカム基材の外側面を溶液が流れ落ちることを防ぐ。ハニカム基材30は、支持体50上に置かれており、そして支持体50にはダクト60が連結している。ハニカム基材30の上部に溜まった溶液20を、ダクト60で吸引することで、ハニカム基材30に溶液20をコーティングする。なお、この
図1では、ノズル10から溶液20を提供する工程も、溶液20をダクト60で吸引する工程も、同じ場所で行われるように示されているが、これらの工程は、異なる場所で行うことができる。
【0019】
図2(a)及び(b)に示されているように、ノズル10には溶液を吐出するための複数の吐出口12が存在しており、その複数の吐出口12を囲んで、ガード11が存在している。
【0020】
〈シャワーノズル〉
本発明の方法では、触媒金属含有溶液をシャワーノズルからハニカム基材の上部に提供する。このシャワーノズルには、溶液を吐出するための複数の吐出口と、複数の吐出口を囲むガードとが存在している。
【0021】
ガードは、シャワーノズルの面から下向きに突出しており、好ましくは5mm以上、8mm以上、10mm以上、又は15mm以上の長さで突出している。突出している長さは、100mm以下、50mm以下、30mm以下、20mm以下、又は10mm以下であってもよい。例えば、突出している長さは、5mm以上100mm以下、又は10mm以上50mm以下であってもよい。突出している長さは、シャワーノズルの吐出口から測定され、吐出口がノズルの面の凸状部分にある場合には、凸状の先端部分から測定される。吐出口が様々な高さの凸状部分にある場合、吐出口が存在するノズルの面が様々な高さとなっている場合等には、原則的には、ノズルの最も先端にある吐出口から測定することができるが、ガードを用いて多数の吐出口を保湿することによって目詰まりによる不均一なコーティングを防止する、という本発明の本質的な特徴を考慮して、ガードの突出している長さの基準の位置を決定することができる。
【0022】
ガードと、ガードに最も近接している吐出口との距離は、小さい方が吐出口の付近を保湿環境下にする観点から好ましいものの、小さすぎると触媒金属含有溶液がガードに付着してしまい触媒金属のロスが生じる。例えば、ガードとガードに最も近接している吐出口との平均距離は、1mm以上、3mm以上、又は5mm以上であってもよいが、20mm以下、10mm以下、8mm以下、5mm以下、又は3mm以下であってもよい。例えば、その平均距離は、1mm以上10mm以下、又は4mm以上6mm以下であってもよい。この距離は、ガードと、吐出口の孔の外周との最も近接している部分とから決定され、平均距離については、吐出口のうち、ノズルの最外周側に存在する吐出口のガードからの距離のみが考慮されて平均の計算がなされる。ただし、これについても、ガードを用いて多数の吐出口を保湿することによって目詰まりによる不均一なコーティングを防止する、という本発明の本質的な特徴を考慮して、その距離の基準の位置を決定することができる。
【0023】
吐出口の孔径は、特に限定されないが、溶液を提供しようとしていない場合でもシャワーノズルの吐出口から溶液が液垂れしてこないように、孔径が小さいことが好ましい。例えば、孔径は、等価直径の平均で、0.30mm以上、0.50mm以上、0.70mm以上、又は0.90mm以上であってもよく、3.00mm以下、2.50mm以下、2.00mm以下、1.50mm以下、又は1.30mm以下であってもよい。例えば、平均の孔径は、0.30mm以上3.00mm以下、又は0.50mm以上1.50mm以下であってもよい。
【0024】
吐出口の孔の形状は、特に限定されない。また、吐出口の孔径及び形状は、全ての孔が同じである必要はなく、本発明の効果が得られる範囲で様々であってもよい。
【0025】
シャワーノズルは、ハニカム基材の真上に存在し、吐出口は、その下側に位置するハニカム基材の上面全体に渡って、略均等の間隔で存在していることが好ましい。この場合、吐出口は、格子状に略均等に配置していてもよく、また同心円状に略均等に配置していてもよい。また、例えば、吐出口は、特許文献2に記載のように様々な態様で略均等に配置していてもよい。
【0026】
吐出口は、シャワーノズルの面の凸状部分に存在していてもよい。凸状部分に吐出口が存在している場合、吐出口から出た溶液は凸部の先端幅までしか広がらなくなり、隣接する吐出口から吐出された溶液同士の集束が発生しにくくなるため好ましい。例えば、
図3に示すように、シャワーノズル(10)の面に複数の突起(12)が存在し、吐出口がこの突起の略中心部に存在していてもよい。この凸状部分の形状は、
図3に示すような台形の形状に限られず、吐出された溶液同士の集束を防ぐことができれば特に限定されない。
【0027】
シャワーノズルの各吐出口から溶液を均等に吐出できるように、シャワーノズルの内部に、
図4に示すような整流プレートを設けることができる。整流プレートは、溶液をハニカム基材上部の全面に渡って均等に提供するためであれば、その形態は限定されない。例えば、整流プレートは、上記のシャワーノズルの吐出面と同様の孔を有するプレートであってもよく、特許文献2に記載のデフレクタであってもよい。
【0028】
〈触媒金属含有溶液〉
本発明の方法で使用される触媒金属含有溶液の粘度は、特に限定されず、排ガス浄化装置の触媒層を形成するためのスラリー、セリア−ジルコニア複合酸化物粒子を構成材料の1種として含むハニカム基材に触媒金属を担持させるための溶液等であれば、特に限定されない。
【0029】
触媒層を形成するためのスラリーとしては、ガソリンエンジン用の三元触媒装置のための触媒層形成用スラリーであってもよく、ディーゼルエンジン又はリーンバーンエンジン用の浄化装置のための公知の触媒層形成用スラリーであってもよい。このようなスラリーは、通常、アルミナ、ジルコニア、セリア等の無機酸化物又は無機複合酸化物担体、及びそれに担持された触媒金属粒子(白金、パラジウム、ロジウム等)が少なくとも分散された水系分散体である。
【0030】
触媒金属を担持させるための溶液としては、触媒金属の塩を含む溶液を挙げることができる。触媒金属の塩としては、白金及び/又はパラジウムの強酸塩を挙げることができ、特に白金及び/又はパラジウムの硝酸塩又は硫酸塩を挙げることができる。また、その溶液にロジウムの塩を含有させる場合、同様の塩を用いることができる。触媒金属を担持させるための溶液は、触媒層を形成するためのスラリーに含有されているような無機酸化物又は無機複合酸化物担体をさらに含有していてもよい。
【0031】
触媒金属含有溶液の粘度が低い場合に、シャワーノズルの吐出口に目詰まりが発生しやすい傾向にあるが、粘度が高い場合であっても、湿度等の条件によって目詰まりが発生しうる。触媒金属含有溶液は、例えばせん断速度4s
−1での粘度が、1mPa・s以上、5mPa・s以上、10mPa・s以上、20mPa・s以上、50mPa・s以上、100mPa・s以上、200mPa・s以上、500mPa・s以上、又は1000mPa・s以上であってもよく、20000mPa・s以下、15000mPa・s以下、10000mPa・s以下、5000mPa・s以下、2000mPa・s以下、1500mPa・s以下、1000mPa・s以下、700mPa・s以下、600mPa・s以下、500mPa・s以下、400mPa・s以下、300mPa・s以下、250mPa・s以下、又は200mPa・s以下であってもよい。例えば、触媒金属含有溶液のせん断速度4s
−1での粘度は、1mPa・s以上20000mPa・s以下、1mPa・s以上2000mPa・s以下、5mPa・s以上1000mPa・s以下、又は10mPa・s以上300mPa・s以下であってもよい。粘度の測定は、E型粘度計(TVE−35H、東機産業株式会社製)を用いて、ロータ種:1° 34’×R24を使用し、測定温度25℃で行う。
【0032】
触媒金属含有溶液には、粘度を調整するために1.0重量%以下、0.5重量%以下、0.3重量%以下、又は0.1重量%以下で増粘剤が含まれていてもよい。増粘剤としては、水溶性有機ポリマーを挙げることができる。
【0033】
〈ハニカム基材〉
本発明の方法で使用されるハニカム基材としては、本分野で知られている排ガス浄化装置用のハニカム基材であれば特に限定されない。具体的には、ハニカム基材としては、多数のセルを有するハニカム基材を使用することができ、例えば、コージェライト(2MgO・2Al
2O
3・5SiO
2)、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素等の耐熱性を有するセラミックス材料や、ステンレス鋼等の金属箔からなるメタル材料を使用することができる。
【0034】
また、本発明の方法で使用されるハニカム基材としては、セリア−ジルコニア複合酸化物粒子を構成材料の1種として含むハニカム基材であってもよい。そのようなハニカム基材としては、現在用いられている上記のようなコージェライト製等のハニカム基材とは異なり、例えば、特許文献4〜6等に開示されているようなハニカム基材である。
【0035】
ハニカム基材は、ウォールフロータイプのハニカム基材であってもよく、ストレートフロータイプのハニカム基材であってもよい。また、ハニカム基材は、フロント側(エンジン側)のセルの開口径と、リア側のセルの開口径が異なっていてもよい。本発明の方法によって、低粘度の触媒金属含有溶液を使用し、かつウォールフロータイプのハニカム基材を用いて得られた排ガス浄化装置を製造した場合には、得られた排ガス浄化装置の圧力損失が低くなるため特に有利である。
【0036】
ハニカム基材のセル数は、例えば、300セル/in
2以上、500セル/in
2以上、800セル/in
2以上、1000セル/in
2以上、又は1200セル/in
2以上であってもよく、2000セル/in
2以下、1500セル/in
2以下、1200セル/in
2以下、1000セル/in
2以下、又は800セル/in
2以下であってもよい。
【0037】
〈触媒金属含有溶液の提供工程〉
触媒金属含有溶液を提供する工程は、上述したような本発明の特徴に従って行われるが、本発明の特徴と関係のない部分については、従来技術と同様にしてこの工程を行うことができる。例えば、本発明の方法の特徴と関係のない部分については、特許文献2を参考にすることができる。
【0038】
触媒金属含有溶液を提供する工程においては、ハニカム基材の上部からの溶液の漏出及びハニカム基材の外側面を溶液が流れ落ちることを防ぐため、かつ/又は基材上部に提供された溶液の液面を均一にするために、ガイドを使用することができる。このようなガイドは、特許文献2においても開示されてはいるガイドと同様のものであってもよい。したがって、触媒金属含有溶液を提供する工程の前に、ハニカム基材にガイドを取り付ける工程が行われてもよく、これは触媒金属含有溶液を提供する工程が行われるステーションとは、異なるステーションで行われてもよい。
【0039】
〈溶液のコーティング工程〉
ハニカム基材の上部に提供した溶液を、ハニカム基材にコーティングする工程においては、特許文献1及び2に記載のように、ハニカム基材の下部側から吸引を行って、溶液の流下を促進してもよい。しかし、低粘度の触媒金属含有溶液を用いる場合には、吸引を行わなくてもよい。
【0040】
吸引を行う場合には、触媒金属含有溶液の提供工程と異なるステーションで吸引を行うことができる。この場合、ガイドで溶液を保持しているハニカム基材が、溶液の提供工程が行われるステーションから、吸引を行うステーションに移動する。
【0041】
〈焼成工程〉
触媒金属含有溶液でコーティングされた基材の焼成条件は、用いられた触媒金属含有溶液の組成等に依存し、特に限定はされないが、例えば、400〜1000℃程度で、約1〜4時間程度の焼成を行う。焼成前に乾燥を行ってもよく、その条件についても、用いられた触媒金属含有溶液の組成等に依存し、特に限定されないが、例えば、80〜300℃の温度で1〜12時間程度で乾燥を行うことができる。
【0042】
本発明を以下の実施例でさらに具体的に説明をするが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【実施例】
【0043】
図6に示すように、気温及び湿度が変更可能な環境試験室内で、シャワーノズル10の側に、溶液受け70を配置した。溶液受け70に循環ポンプ80をセットし、そしてシャワーノズル10に溶液を提供することができるようにして、溶液連続排出装置100を構成した。
【0044】
溶液連続排出装置に、触媒金属含有溶液を充填して、25秒サイクルで、溶液が自動で排出される設定をした。環境試験室内を25℃に設定し、また湿度を各例に応じて設定して、温度及び湿度が設定値になったことを確認してから、触媒金属含有溶液の連続排出を開始した。溶液の連続排出を開始してから10時間経過したところで、連続排出を完了し、シャワーノズルの吐出口の目詰まり率を確認した。ここで、目詰まり率[%]=(目詰まりした吐出口数)/(吐出口の総数)×100で計算した。
【0045】
各例に応じて、表1に記載のようにシャワーノズルのガードの長さ、ガード位置、溶液の粘度、及び湿度を変更して試験を行った。
【0046】
ここで、溶液の粘度は、せん断速度4s
−1での粘度の値であり、これらは増粘剤の量を変更することによって調整した。また、ガードの長さ及びガードの位置は、
図7に示すようにして決めた。すなわち、ガードの長さは、シャワーノズルの凸状部分から、さらに下側に突出している長さとし、ガードの位置は、ノズルの最も外周側にある吐出口の孔の外周部とガードとの距離とした。
【0047】
結果を表1〜表3に示す:
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
比較例1〜9の比較から、湿度が低い場合及び溶液の粘度が低い場合(増粘剤の量が少ない場合)には、目詰まりが多く発生することが分かった。それに対して、実施例1〜18の結果から、ガードを長くすると、湿度が低くかつ粘度が低い場合であっても、目詰まりが起こりにくくなることが分かる。また、ガードの位置についても重要であり、ガードを吐出口から非常に近い位置に配置することによって、湿度が低くかつ粘度が低い場合であっても、目詰まりが起こりにくくなることが分かる。
【符号の説明】
【0052】
10 シャワーノズル
11 ガード
12 吐出口
13 整流プレート
20 触媒金属含有溶液
30 ハニカム基材
40 ガイド
50 支持体
60 ダクト
70 溶液受け
80 循環ポンプ
100 溶液連続排出装置
【要約】
【課題】本発明は、長期間にわたって均一なコーティングが可能な、排ガス浄化装置の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、ハニカム基材の上部に、触媒金属含有溶液をシャワーノズルから提供すること、前記ハニカム基材に前記溶液をコーティングすること、及び前記溶液でコーティングされたハニカム基材を焼成することを含む、排ガス浄化装置の製造方法であって、前記シャワーノズルは、前記溶液を吐出するための複数の吐出口、及び前記複数の吐出口を囲むガードを有している、排ガス浄化装置の製造方法に関する。
【選択図】
図1