(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。一方で、ある図において符号を付して説明した部位について、他の図の説明の際に再度の図示はしないが同一の符号を付して言及する場合がある。
【0018】
(実施の形態1)
<投射型映像表示装置の構成>
図1は、本発明の実施の形態1における投射型映像表示装置(プロジェクタ)の外観について例を示した図である。
図1(a)は、投射型映像表示装置1の正面図であり、
図1(b)は側面図である。
【0019】
投射型映像表示装置1は、例えば、略平箱状の外形形状の筐体2を有する。この形状により、使用状態として、例えば、机やテーブルの表面に立てた状態で使用する場合(机やテーブルの表面に映像が投射される場合)をも考慮して、その背面側を底面として直立させることが可能である。なお、筐体2に着脱が可能、または筐体2に内蔵されて取り出しが可能な図示しないスタンド等の手段を有していてもよい。
【0020】
筐体2の上面には、開閉可能なミラーカバー3が形成されている。ミラーカバー3の内側には、凸形状で回転非対称に形成された反射ミラー(自由曲面ミラー)31が取り付けられている。また、筐体2の上側の略中央部に形成された凸状部の内部には、投射レンズ系52が配置され、投射光を外部に導くための開口部が形成されている。なお、図中では、投射レンズ系52の一部のみが当該開口部を介して示されている。また、筐体2の上部には、図示しないレンズ調整機構によりレンズ位置を変えて投射映像のフォーカス状態を調整するための、いわゆるフォーカス調整用リング6の一部(筐体2から外部に突出した上端部)を示している。
【0021】
図2は、本実施の形態における投射光学系5の構成について例を示した断面図である。例えば、図示しない照明光学系において、LEDや半導体レーザ等からなる光源からの光を、外部からの映像信号(例えば、携帯端末やタブレット端末、PC(Personal Computer)等からの映像信号)に応じて、DMDパネル48等の映像表示素子に入射させて変調する。そして、得られた映像をTIR(Total Internal Reflection:内部全反射)プリズム51で合成し、複数のレンズからなる投射レンズ系52を介して反射ミラー31に投射して反射させて拡大投射する。
【0022】
なお、投射レンズ系52は、映像の拡大投射に伴う各種の歪み、例えば、斜め入射による歪みや台形歪みなどを補正するために必要な、回転対称でない自由曲面形状のレンズ等を含めて、各種のレンズを含んで構成されている。また、投射レンズ系52は、投射レンズベース53上に移動可能なように搭載されており、レンズ調整機構54により、図中の上下方向に投射レンズの一部のレンズまたはレンズ群を移動させることでフォーカス性能を調整することが可能である。
【0023】
また、図示しない照明光学系からDMDパネル48(映像表示素子)に照射され、DMDパネル48により変調された映像光は、図中の破線で示すように投射レンズ系52により拡大されて反射ミラー31に投射され、その表面で反射されて、例えば、図示しないスクリーンや壁面、机、テーブル等の表面に投射される。図中では、その上限光と下限光がそれぞれ矢印により示されている。
【0024】
また、本実施の形態では、筐体2の高さをできるだけ低くして小型化を図るため、反射ミラー31と投射レンズ系52とを含む投射光学系5を、平面上に(具体的には、筐体2の底部に設けられた投射レンズベース53上に)、その表面と略平行になるように配置する。一般的に、所定の投射距離においてより大きな投射映像を得るためには、例えば、投射レンズ系52を底面に対して傾斜させた状態(スクリーン等に対して垂直とせず傾けた状態)で配置し、他方、反射ミラー31での映像光の拡散角度(例えば、図中の上限光と下限光がなす角度)を大きくすることが考えられる。しかし、この場合、投射レンズ系52を傾斜して配置することで筐体2の高さが増大してしまい、小型化という観点ではデメリットとなる。
【0025】
図3は、本実施の形態における投射型映像表示装置1の内部構造について例を示した上面図である。また、
図4は、本実施の形態における投射型映像表示装置1の照明光学系4および投射光学系5の構造について例を示した上面図である。
【0026】
図3では、筐体2の上部のケースを外した状態を示している。
図3において、反射ミラー31や投射レンズ系52を含む投射光学系5は、筐体2のほぼ中央部に図中の垂直方向に沿って配置されている。また、投射レンズ系52を中心に、その一方の側(図中の左側)には電源ユニット7や、放熱のための複数台(図中の例では2台)の軸流ファン81が配置されている。また、投射レンズ系52の他方の側(図中の右側)には、放熱のためのシロッコファン82が配置されている。
【0027】
図3、
図4に示すように、シロッコファン82の一部は放熱用フィンと略一体化されており、光源を構成するLED照明ユニット41における緑色(G)光発光用のLED42Gで発生した熱は、ヒートパイプ83Gを介して放熱用フィンまで伝搬される。同様に、赤色(R)光発光用のLED42Rで発生した熱は、ヒートパイプ83Rを介して、青色(B)光発光用のLED42Bで発生した熱は、ヒートパイプ83Bを介して、それぞれ放熱フィンまで伝搬される。そして、シロッコファン82により発生した冷却風により冷却されて、筐体2に設けられた排気口から放熱される。なお、DMDパネル48は、冷却用のヒートシンク84により冷却される。
【0028】
<照明光学系の構成>
図5は、本実施の形態である照明光学系4の論理的な構成について例を示した図である。
図5(a)は論理的な構成における上面図を示し、そのA−A’断面を
図5(b)に示している。なお、
図5における上面と、上記の
図2〜
図4に示した実装例における上面とは必ずしも一致しなくてもよい。
【0029】
本実施の形態の照明光学系4は、一般的なプロジェクタ等で用いられる照明光学系と概ね同様の構成要素と配置からなる。ここでは、LED照明ユニット41を構成するLED42R、42G、42B(以下ではこれらをLED42と総称する場合がある)と、これらの光源から出射された光をそれぞれ平行化する1つ以上のレンズ等からなるコリメータ43R、43G、43B(以下ではこれらをコリメータ43と総称する場合がある)、および平行化した光束を合成するダイクロイックミラー44、合成光を均一化する1つ以上のレンズ等からなるインテグレータ45等の光学素子を有する。
【0030】
そして、インテグレータ45を通過した光束を、一定の角度を持ってDMDパネル48に照射するため、インテグレータ45とDMDパネル48との間に集光レンズ46および少なくとも2枚のプリズム47を有する。すなわち、
図6の右側の図に示したインテグレータ45の正面図におけるレンズアレイの各セル45aの光学像(照明領域)が、集光レンズ46(およびプリズム47)によってDMDパネル48上に重畳される。
図6の例では、7×7=49個のセル45aの光学像がDMDパネル48上に重畳される。
【0031】
なお、「一定の角度を持ってDMDパネル48に照射する」とは、
図7に示すように、照明光束の主光線(DMDパネル48の各点を照射する光束に着目した場合の光束の中心光線)を、DMDパネル48の照射面の法線に対して、DMDパネル48の仕様に応じて角度をもって入射させることをいう。所定の角度をもって入射した入射光は、DMDパネル48の表面に形成されたマイクロミラーにより、図示するようにDMDパネル48の略法線方向に反射して出射光となる。
【0032】
<光の利用効率の向上>
ここで、一般的に、照明光学系4において光の利用効率を向上させる、すなわち、光源であるLED42から出射された光をできるだけ損失させずに被照明体であるDMDパネル48に照射するための基本的な手法は、LED42からDMDパネル48までの間で、以下の式で示されるEtendueと呼ばれる量のマッチングを行うことである。
【0033】
Etendue=π×(光源の発光面積)×(光源から発散する光の立体角)
=π×(光源の発光面積)×(NA)
2 (NA=sinθ、θは光軸の中心からの光の角度)
例えば、光源側のEtendueに対して被照明体のEtendueが非常に小さい場合、もしくは非常に大きい場合等、光源側と被照明体側のEtendueの差が大きい場合は、一般的に、照明光学系の設計の内容が効率に及ぼす影響は相対的に小さくなる(すなわち、設計でカバーできる余地が小さい)。一方で、光源側と被照明体側のEtendueが同程度の場合は、効率を上げるには照明光学系の設計を注意深く行う必要がある。
【0034】
LEDを光源とする場合、光量を上げるためには放熱の関係でダイのサイズを大きくする必要がある。一方で、DMDパネルを被照明体とする場合、サイズが小さい方がコストを低減させることができる。このため、両者のEtendueは同程度の大きさとなる傾向にある。したがって、本実施の形態のように光源にLED42を用い、被照明体としてDMDパネル48を用いる場合には、照明光学系4の設計を注意深く行う必要がある。
【0035】
本実施の形態の照明光学系4は、
図5に示したように、光源側から順に、
(1)完全拡散性を有する光源(
図5の例ではLED42)
(2)光源からの光束を取り込み、所定の径を有しつつ小さいNAに
変換するコリメータ(
図5の例ではコリメータ43)
(3)被照明体(
図5の例ではDMDパネル48)上の光束の均一性を
実現するためのインテグレータ(
図5の例ではインテグレータ45)
(4)被照明体に集光するための集光レンズ(
図5の例では集光レンズ46)
の各光学要素を含む基本構成を有している。
【0036】
効率を向上させる場合、上記の各段階の構成において、それぞれEtendueの損失が少なくなるように設計することが重要である。例えば、光源と被照明体のEtendueが略等しい場合は、光源から被照明体に至る上記の(1)〜(4)の各段階のEtendueが略等しくなるように照明光学系4を設計する必要がある。途中の光学要素でEtendueが増加すると、増加したEtendueを効率を低下させずに減少させることはできないため、被照明体のEtendueとのマッチングができずに効率が低下してしまう。なお、光源のEtendueより被照明体のEtendueの方が大きい場合は、上記の(1)〜(4)の各段階のEtendueが略等しくなるか、単調増加するように照明光学系4を設計する。
【0037】
本実施の形態では、上記の(1)〜(4)の各段階のうち、(4)の集光レンズにおいてEtendueの損失を低減して効率を向上させるように設計を行うものである。なお、上記の(1)〜(4)の各段階での設計内容について、これらの間、および照明光学系4におけるその他の各種の設計内容との間で、パラメータ的には相互に影響を及ぼし合う場合がある。したがって、整合性を維持しつつ全体として最適化する必要があるが、本実施の形態における(4)の集光レンズの設計内容は、他の項目の設計内容とは独立して考えることができる。
【0038】
<集光レンズ周辺の設計条件>
本実施の形態では、光源からの光の利用効率を向上させるため、集光レンズ46について、前段のインテグレータ45から出射した光束が、小さい収差でDMDパネル48相当面に集光するための設計を行う際の条件を規定している。
【0039】
光の利用効率を決定する大きな要素の一つとして、DMDパネル48の周囲にどの程度の調整余裕量を確保するかという点がある。例えば、長さで1割の余裕量を確保すると、実際にDMDパネル48を照射する効率は、(1.1)
2=1.21となり、約20%の効率低下となる。これに加えてさらに収差も大きい場合、照明の境界領域がぼやけてしまう場合がある。
【0040】
図8は、映像表示素子の表示面における光強度の分布状況について例を示した図である。例えば、上述の
図6の例で示したように、インテグレータ45におけるレンズアレイの各セル45aの光学像(照明領域)は、集光レンズ46(およびプリズム47)によってDMDパネル48上に重畳されるが、その重畳の精度が悪くなると、
図8の例に示すように、映像表示素子(DMDパネル48)に照射される照明領域の境界がぼやけてしまう。
【0041】
図8の上段の図では、映像表示素子の有効表示幅(例えば、下段の図に示したDMDパネル48の表示面48aの幅)に対する理想的な光強度の分布を実線で示している。なお、
図8の例では、映像表示素子(DMDパネル48)の幅方向について示しているが、高さ方向についても同様である。理想的な光強度の分布では、表示素子の有効表示幅より少し外側の領域までは均一な光強度である一方、当該領域の外側では光強度がほぼゼロとなる。すなわち、照明領域の境界では傾斜が急峻な分布となる。
【0042】
一方、照明領域の境界での光強度の分布がぼやけて傾斜が急峻ではなくなると、表示素子の有効表示幅の端部付近での光強度が下がってしまうとともに、有効表示幅より外側の領域を照射する(映像表示素子に入射しない)無駄な光が増え、光の利用効率が落ちてしまう。そして、これを回避して映像表示素子の有効表示幅内では均一な光強度の分布とするためには、さらに調整余裕量を確保して、光強度の分布がぼやける(傾斜する)領域を有効表示幅よりも外側にすることが必要となり、より一層の効率低下につながる。
【0043】
そこで、本実施の形態では、集光レンズ46における収差発生を抑制し、照射領域の境界付近において光強度の分布がぼやけることを防ぐように設計する。
【0044】
設計を行う際に基本となる条件は、
図5に示すように、
・条件1:インテグレータ45とDMDパネル48との間に、
集光レンズ46とプリズム47がこの順で配置される。
【0045】
・条件2:プリズム47は少なくとも2枚備える。
【0046】
・条件3:DMDパネル48に対して、照明光束の主光線がDMD
パネル48の法線に対して角度をもって入射する(
図7参照)。
【0047】
(当該条件はDMDパネル48の仕様に基づく)
・条件4:プリズム47の(少なくとも)1つの面がミラー面である。
【0048】
(プリズム47に対する光束の入射角度に応じて屈折が全反射
とならない場合にのみ当該条件を満たすようにすればよい)
である。
【0049】
条件2において、プリズム47を1枚の構成とすることも可能であるが、この場合、設計の自由度が少なく収差補正の難易度が高くなってしまう場合がある。そこで、本実施の形態では、プリズム47を少なくとも2枚備える構成とする。これにより、前段の集光レンズ46の偏心と、プリズム47の特定形状の組み合わせにより、照明光束の結像特性を改善することが可能となる。具体的には、後述するように、展開したプリズム形状が楔形となるようにし、偏心させた集光レンズ46と組み合わせると効果的である。
【0050】
本実施の形態では、上記の条件1〜条件4の基本条件を満たした上で、プリズム47における光の屈折を最小偏角(偏角とは
図9に示すようにプリズムへの入射光と出射光がなす角である)に近付けるよう設計することで、収差を低減し、効率低下を防止する。
【0051】
図10は、本実施の形態におけるプリズム47を展開した仮想プリズムと、集光レンズ46およびDMDパネル48の構成について例を示した図である。また、
図11は、集光レンズ46および仮想プリズム47vを介した光線の状況について例を示した図である。
図10では、2枚のプリズム(プリズム47a、47b)のうちプリズム47aを展開(第1展開、第2展開)したものとプリズム47bとから、等価な楔形の仮想プリズム47v(展開プリズム)を得た状態を示している。
【0052】
仮想プリズム47vのような楔形プリズムを光が通過して屈折する場合、入射光と出射光の角度が等しくなるときに収差の発生が最小となる。したがって、
図11に示すように、
・条件5:プリズム(仮想プリズム47v)の入射面は出射面に対して
傾斜している。
【0053】
・条件6:プリズム(仮想プリズム47v)の入射面に入射する主光線は、
入射面の法線に対してプリズム頂点とは反対側から入射する。
【0054】
・条件7:プリズム(仮想プリズム47v)の出射面から出射する主光線
は、出射面の法線に対してプリズム頂点とは反対側から出射
する。
の各条件を満たした上で設計することで、偏角を小さくして収差を低減し、効率低下を防止することができる。
【0055】
なお、DMDパネル48から後段の投射光学系5の投射レンズ系52を照射する際の収差を最小とするため、
図11に示すように、
・条件8:プリズム(仮想プリズム47v)の出射面とDMDパネル48
は略平行に配置される
の条件も満たすようにする。
【0056】
なお、この条件の前提として、後段のプリズム47bを展開すると、プリズム47bの出射面と後段の投射光学系5の投射レンズ系52との間が平行平面板と同じ状態になるものとする。
図12は、本実施の形態における展開したプリズム47bと、集光レンズ46およびDMDパネル48の構成について例を示した図である。ここで、図示するように後段のプリズム47bを展開すると、上記の前提条件は、プリズム47bの出射面(P4−P5面)と、展開後のプリズム47bの投射レンズ系52に対向する面(P5’−P6’面)とが平行になる、すなわち、P4の角度とP6の角度が等しい、ということを意味する。
【0057】
本実施の形態では、さらに、
図11に示すように、
・条件9:集光レンズ46から出射された後の主光線は互いに略平行で
ある。
の条件を満たした上で設計することで、DMDパネル48を照射する主光線の光路を揃えて同じ角度で入射させ、収差を低減させることができる。
【0058】
図7に示したように、DMDパネル48の仕様に基づいて、DMDパネル48に対して光を傾けて入射させる必要がある(条件3)。しかし、光を傾けて入射させるだけでは、収差(コマ収差、非点収差、像面湾曲、台形歪み等)が発生し、効率が低下してしまう。そこで、本実施の形態ではさらに、
図10に示すように、集光レンズ46において、
・条件10:集光レンズ46はプリズム(仮想プリズム47v)の入射面
と同じ向きに回転して(傾けて)配置される。
【0059】
・条件11:集光レンズ46は軸ずれして配置される。
の各条件を満たした上で設計する。これにより、インテグレータ45からDMDパネル48までの間の収差を低減して効率低下を防止することができる。
【0060】
また、上述したような多くの収差を制御するため、集光レンズ46の形状について設計する際に、球面を偏心させるだけでは設計の自由度が不足する場合がある。そこで本実施の形態では、さらに、
・条件12:集光レンズ46は非球面の形状を有する。
の条件に従うようにしてもよい。これにより、収差を制御するための設計の自由度をさらに高めてより一層の収差低減を図ることができる。集光レンズ46の非球面化に加えて、もしくはこれに代えて、複数枚のレンズを用いる構成として設計の自由度を高めるようにしてもよい。
【0061】
以上に説明したように、本実施の形態の照明光学系4によれば、集光レンズ46(およびプリズム47、DMDパネル48)において、上記の条件1〜条件11(さらに条件12を加えてもよい)を満たした上で設計を行うことで、Etendueの損失を低減して光の利用効率を向上させることができる。すなわち、集光レンズ46において、前段のインテグレータ45から出射した光束を、小さい収差でDMDパネル48に集光させることができる。
【0062】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2である照明光学系は、上述の実施の形態1における投射型映像表示装置1の照明光学系4と同様の構成において、上記の
図5で示した光源から被照明体までの(1)〜(4)の各段階の光学要素のうち、(2)のコリメータ43においてEtendueの損失を低減して光の利用効率を向上させるように設計を行うものである。なお、上述の実施の形態1の集光レンズ46の場合と同様に、本実施の形態における(2)のコリメータ43の設計内容は、他の項目の設計内容とは独立して考えることができる。
【0063】
<コリメータの設計条件>
本実施の形態では、コリメータ43について、前段の光源であるLED42からの光束を、Etendueの損失なく所定の径まで拡大し、後段の均一化手段であるインテグレータ45に入射させるための設計を行う際の条件を規定している。換言すれば、コリメータ43が照明の対象面(例えば、光源に近い方のインテグレータ45)において最大の効率を得るために、照明の対象面の全面で均一かつ有効なNAの範囲の光束を形成するための設計を行う際の条件を規定している。
【0064】
図13は、本発明の実施の形態2である照明光学系4のコリメータ43の論理的な構成と光線の状況の例について概要を示した図である。
図13(a)の例では、光源のLED42から出射された主光線について、光軸付近の光束と周辺光束(外側の光束)、およびこれらの間の中間光束が、それぞれコリメータ43(図中では前段の第1コリメータ43aおよび後段の第2コリメータ43b)およびダイクロイックミラー44を通る状況を示している。また、
図13(b)の例では、光軸付近の光束と周辺光束、および中間光束についての集光状況をそれぞれ示している。
【0065】
本実施の形態では、光源であるLED42から光軸に対して大きな角度で出射される光束(周辺光束)を有効に利用して効率を向上させるため、
図13(a)に示すように、
・条件21:照明の対象面における主光線の像高さはfsinθ特性を
有する。
の条件を満たした上でコリメータ43を設計する。このように、主光線の像高さが照明の対象面の周辺付近で圧縮されるような射影特性をとることで、光軸から90°近い角度の光束まで取り込むことが可能である。なお、像高さはfsinθに限定されるものではなく、大きなマイナスの歪曲収差を持つような設計とすることで同様の効果を得ることができる。
【0066】
ここで、上記の条件21を満たすことで大きな角度の光束を取り込んだとしても、周辺光束については、NAの広がりによって損失が生じる場合がある。そこで、本実施の形態では、この損失を低減させるため、さらに、
図13(b)に示すように、
・条件22:メリディオナル面での像面湾曲が正方向である。
の条件を満たした上でコリメータ43を設計する。これにより、外側の光束ほど集光点までの距離(焦点距離)が長くなるため、周辺光束のNAを小さくすることができる。したがって、後段のインテグレータ45に入射する際の損失を少なくすることができる。
【0067】
上記の条件22に加えて、さらに周辺光束での損失を低減させるため、
図13(a)に示すように、
・条件23:周辺光束の主光線角度は光軸方向に向かって集光される。
の条件を満たした上でコリメータ43を設計する。上記の条件22を満たしていることで周辺光束のNAは小さくなっているため、周辺光束の主光線の角度を制御しても損失は小さい。したがって、このような設計を行うことが可能である。
【0068】
また、本実施の形態では、上記の条件22に関連して、
図13(b)に示すように、
・条件24:光軸(付近)の光束のNAが周辺と比べて大きい
(焦点距離が短い)。
の条件を満たした上でコリメータ43を設計する。
【0069】
基本的なEtendueの考え方からすると、コリメータ43から出射された光束が、光軸から周辺まで同じNAとなるよう制御することが望ましい。しかしながら、このように構成した場合、上述したように、周辺光束において損失が発生し得る。したがって、本実施の形態のように、あえて光軸付近の光束のNAを大きくする一方、周辺光束でNAを小さくし、かつ正の像面湾曲を持たせることで、損失の低減と効率の向上の両立を図ることができる。なお、光軸付近の大きなNAを有する光束の一部は、周辺の光束の小さいNAを補完する役割も有する。
【0070】
上述したように、条件21〜条件24の各条件は相互に関連しており、これらの条件を総合的に適用することで、照明の対象面の全面で均一かつ有効な範囲のNAを有する照明光束を得るコリメータ43を設計することができる。
【0071】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。