【実施例1】
【0014】
[昇降装置]
<1>全体の構成(
図1、2)。
本発明の昇降装置1は、昇降手段30によって作業台又は車両走行路たる昇降フロア20を昇降可能な装置である。
本例では、昇降フロア20がトラック等の車両を昇降可能な走行路である例について説明する。ただし昇降装置1の使用態様は上記に限らず、少なくとも建設工事用途であれば土木工事/建築工事を問わず他の様々な使用態様に使用することができる。また、建設工事用途以外の用途にも適用することができる。
昇降装置1は、基台10と、昇降フロア20と、昇降手段30と、複数の索状体40と、を少なくとも備える。
昇降フロア20は、枠状の基台10の内部に昇降自在に配置する。
昇降手段30は、基台10の上部に配置する。
複数の索状体40は、それぞれ一端を昇降手段30と接続し、他端を昇降フロア20に掛け渡した後に基台10内に固定する。
以上の構造より、昇降手段30の駆動によって、索状体40を介して昇降フロア20を昇降させることができる。
【0015】
<2>基台。
基台10は、昇降フロア20の荷重を支持する構成要素である。
基台10は、枠状のフレーム11と、フレーム11の上部に設けた複数の固定シーブ12と、を少なくとも備える。
本例ではフレーム11として、形鋼の組み合わせからなる正面視略門型の枠状体を採用する。より詳しくは、梁材11aと支柱11bを組んでなる複数の門型部材を、複数の桁材11cで奥行き方向に相互に連結して構成する。
本例では、フレーム11の奥行き方向中間部の2つの梁材11aの間に、索状体40の最終端を固定する固定梁11dを配置する。
昇降フロア20に後述するアウトリガー26を設ける場合には、昇降フロア20を支持する高さに合わせて桁材11cを複数段設ける。
本例では、下段の桁材11cの下部に複数の移動用の車輪14を備える。但し、車輪14は必須の構成要素ではない。
【0016】
<2.1>固定シーブ。
固定シーブ12は、後述する可動シーブ24と共に組み合わせ滑車構造を構成する部材である。
本例では固定シーブ12は、フレーム11の最前列及び最後列の梁材11a上の両端部に設けた計4つの上固定シーブ12aと、フレーム11の左右両肩部の桁材11cの下部にそれぞれ4つずつ設けた計8つの下固定シーブ12bと、からなる。
各固定シーブ12は輪軸がフレーム11の幅方向に対応し、輪溝がフレーム11の前後方向に対応する。
【0017】
<3>昇降フロア。
昇降フロア20は、基台10内を昇降自在な構成要素である。
昇降フロア20は、矩形面状のフロア本体21と、複数の可動シーブ24と、を少なくとも備える。昇降フロア20の前後方向、すなわちフロア本体21の長手方向が車両の走行路となる。
本例では、フロア本体21の両側辺に沿って2つの欄部22を設け、複数の可動シーブ24は欄部22上に配置する。ただしこれに限らず、欄部22を設けず、可動シーブ24をフロア本体21上に直接設置してもよい。
【0018】
<3.1>可動シーブ。
可動シーブ24は、固定シーブ12と共に後述する組み合わせ滑車構造を構成する部材である。ここで「可動」とは、固定シーブ12に対して輪軸が固定されていないいわゆる動滑車であることを意味するものであって、フロア本体21に対して可動であるという意味ではない。
可動シーブ24は、昇降フロア20の幅方向両側に沿って、昇降フロア20の前後方向に所定間隔で配列する。
本例では、2つの欄部22上に所定間隔でそれぞれ4つ計8つの可動シーブ24を上向きに設置する。
各可動シーブ24は輪軸がフロア本体21の幅方向に対応し、輪溝がフロア本体21の前後方向に対応する。
【0019】
<3.2>アウトリガー。
昇降フロア20は、昇降フロア20の荷重を桁材11c上に受け替えるためのアウトリガー26を備えていてもよい。
本例では、アウトリガー26として昇降フロア20の欄部22に固定した油圧シリンダと、昇降フロア20の側方から外側へ向けて進退自在なアームの組み合わせを採用し、アウトリガー26を欄部22の長手方向に沿って所定間隔で各4つ、計8つ付設する。
フロア本体21上での作業時には、アウトリガー26のアームを外側に突出させて基台10の桁材11c上に配置し、昇降フロア20の荷重を基台10に受け替える。
昇降フロア20の昇降時には、アウトリガー26のアームを短縮して桁材11c上から後退させる。
なお、アウトリガー26の構成や数は上記に限られない。
例えばアウトリガー26の駆動機構として、電動シリンダやスクリュージャッキ等を採用してもよい。
また、アウトリガー26を欄部22ではなく、基台10両側の桁材11c上に設け、桁材11c上から昇降フロア20の下部にアームを突出させて昇降フロア20の荷重を受け替える構成としてもよい。
あるいはアウトリガー26を進退式ではなく、電動機によるアームの水平回動式とし、欄部22から桁材11c上へ、又は桁材11cから昇降フロア20下へ、アームを水平に回動して延出可能な構成にしてもよい。
要は作業員の操作によって、昇降フロア20の荷重を桁材11c上に受け替え可能な構成であればよい。
【0020】
<4>昇降手段(
図3)。
昇降手段30は、索状体40の巻き上げと巻き出しによって昇降フロア20を昇降させる構成要素である。
昇降手段30は、ドラム部32と、ドラム部32を回転駆動させる駆動部31と、を少なくとも備える。
本例では昇降手段30として電動ウィンチを採用し、単一の昇降手段30によって前後両方向の索状体40を巻き上げ・巻き出し可能な構成とする。
昇降手段30は、ドラム部32のドラム軸が基台10の幅方向に対応する向きで基台10上に固定する。
ただし昇降手段40の構成や数は上記に限らず、例えば複数の昇降手段30前後の索状体40を分担してもよい。
【0021】
<4.1>ドラム部。
本例では、ドラム部32が、同軸かつ同方向に回転可能な、第一ドラム32a、第二ドラム32b、第三ドラム32c、及び第四ドラム32dを備える。
第一ドラム32a及び第二ドラム32bは駆動部31の一側に、第三ドラム32c及び第四ドラム32dは駆動部31の他側に並列する。
各ドラムには、それぞれ独立した索状体40の一端を巻回する。
各ドラムへの索状体40の巻回方向は同一方向である。ここで「巻回方向」とは、ドラム部32の回転軸に対して索状体40を巻き付ける周方向の向きを意味する。
【0022】
<5>索状体。
索状体40は、昇降フロア20を吊下する構成要素である。
本例では、索状体40として4本のワイヤロープを採用する。ただし索状体40はワイヤロープに限らず、ローラーチェンや鎖等であってもよい。
索状体40は、一端を昇降手段30のドラム部32に巻回し、他端を昇降フロア20内を経由して基台10内に固定する。
本例では、第一ドラム32a及び第四ドラム32dの索状体40を、それぞれ基台10の前方へ延出し、上固定シーブ12a及び下固定シーブ12bを経由して下方へ向きを変え、昇降フロア20の可動シーブ24に掛け渡す。
その後、順次他の下固定シーブ12b及び可動シーブ24に掛け渡し、最終端をフレーム11中間部の固定梁11dに固定する。
一方、第二ドラム32b及び第三ドラム32cの索状体40は、それぞれ基台10の後方へ延出し、第一ドラム32a及び第四ドラム32dの索状体40と同様の経路を経て最終端を固定梁11dに固定する。
なお、索状体40の延出方向の組み合わせは一例にすぎず、索状体40を相対する二方向に延出してさえいれば、他の組み合わせであってもよい。
また、索状体40の最終端の固定先は固定梁11dに限らず、梁材11a、支柱11b、あるいは桁材11c等であってもよい。又はフレーム11ではなく昇降フロア20に固定してもよい。要は基台10又は昇降フロア20の適宜の箇所に固定していればよい。
【0023】
<6>ガイド手段。
本発明の昇降装置1は、昇降時における昇降フロア20の水平方向の揺動を規制するガイド手段を備えていてもよい。
本例ではガイド手段として、基台10に設けたガイドレール13と、昇降フロア20に設けたガイドローラ25の組み合わせを採用する。
ガイドレール13は、断面略I字形状の鋼材を採用する。ガイドレール13は、フレーム11の支柱11bのうち任意の支柱11bの内側に、支柱11bの上下方向に沿って4本付設する。
ガイドローラ25は、ガイドレール13を三方向から囲むように配置したローラの組み合わせを採用する。ガイドローラ25は、欄部22上の、4本のガイドレール13に対応した位置に4つ付設する。
昇降フロア20の昇降時、ガイドローラ25が、基台10のガイドレール13を三方からガイドすることによって、昇降フロア20昇降時の揺れやがたつきをなくし、昇降フロア20の昇降を円滑化させることができる。
また、昇降装置1の設置場所に勾配がある場合であっても、傾斜による昇降フロア20の偏荷重をガイドレール13が支持することで、昇降フロア20を本来の昇降軌道に沿って精確に昇降させることができる。
なお、ガイド手段の構成や部材数は上記に限られない。
例えば、ガイドレール13をガイドローラ25によって四方向から囲む構成であれば、ガイドレール13は1本であってもガイド機能を発揮できる。
また、ガイドレール13は支柱11bに付設せず、例えば上下の桁材11c間に独立して掛け渡してもよい。
要は昇降フロア20の昇降軌道を基台10の上下方向にガイドし、昇降フロア20の水平方向の揺動を規制可能な構成であればよい。
【0024】
<7>アジャスタ。
基台10又は昇降フロア20は、索状体40の配設長さを調整するためのアジャスタ50を備えていてもよい。
本発明の昇降装置1は、複数の索状体40を介して昇降フロア20を昇降する構成である。
しかし、各索状体40に掛かる引張力は必ずしも同一ではないため、伸長によって索状体40ごとの長さに若干の差が生じ、昇降フロア20の円滑な昇降を阻害するおそれがある。
そこで、このような場合に、各索状体40の長さをアジャスタ50で個別に微調整することで、昇降作業の円滑性を確保することが可能となる。
本例では、アジャスタ50として、索状体40のワイヤエンドにネジ金具を接合し、これをターンバックルで繋いだいわゆるエンドクランプを採用する。エンドクランプの他端はフレーム11の固定梁11dとピン接合する。
ただしアジャスタ50はエンドクランプに限らず、要は索状体40の長さを調整できればよい。また、設置位置も索状体40とフレーム11の接続部に限らず、昇降フロア20の欄部22上や索状体40の中間等に設置してもよい。
【0025】
<8>組み合わせ滑車構造(
図1)。
本発明の昇降装置1は、定滑車たる固定シーブ12と動滑車たる可動シーブ24の組み合わせ滑車構造を備える点に特徴を有する。
本例では、第一ドラム32aから第四ドラム32dに接続する4本の索状体40がそれぞれ2つの可動シーブ24を経由する。従って、各索状体40にかかる張力はそれぞれ1/2×1/2=1/4(機械的倍率4)になるため、昇降手段30が昇降フロア20及びその積載物を略1/4の力で吊り上げることができる。
また、4本の索状体40によって、昇降フロア20を多点吊り(本例では8点吊り)する構成であるため、昇降フロア20を安定して吊り上げることができる。
なお、固定シーブ12と可動シーブ24の数や組み合わせは、本実施例の記載に限られない。昇降手段30の牽引能力と巻き上げ時間を勘案して、適宜の数及び組み合わせを選択することができる。
例えば、上述した実施例における複数の固定シーブ12と複数の可動シーブ24をそれぞれ左右2列配置とし、索状体40をフレーム11の中間部付近の固定シーブ12で折り返し、索状体40配設済みのシーブと隣り合う固定シーブ12及び可動シーブ24に連続して掛け渡してもよい。この場合、索状体40の最終端はフレーム11の前端部及び後端部の梁材11a等に固定してもよい。
本例の場合、同一のシーブ配置間隔で機械的倍率を倍増し、索状体40への張力をさらに減少させることで、昇降手段30の更なる小型化を図ることができる。
【0026】
<9>昇降作業(
図4)。
基台10内の低位置にある昇降フロア20を高位置にリフトアップする例について説明する。
昇降フロア20の欄部22から、基台10の最下段の桁材11c上に複数のアウトリガー26のアームが張り出している。この状態では、昇降フロア20の荷重(昇降フロア20の自重及びフロア本体21上の積載物の荷重)はアウトリガー26を介して基台10によって支持されている。
昇降手段30のドラム部32を回転駆動させることによって、基台10前方2本、後方2本、計4本の索状体40が同時に巻き上げられる。これによって、可動シーブ24を介して昇降フロア20が索状体40に吊り上げられ、アウトリガー26のアームが最下段の桁材11c上から浮き上がり地切りされる。この時点で昇降手段30の駆動を一旦停止する。
中段の桁材11cへの干渉を避けるために、アウトリガー26のアームをフロア本体21の内側へ短縮する(
図4(a))。
再び昇降手段30を駆動して、昇降フロア20を高位置まで吊り上げる(
図4(b))。
複数のアウトリガー26のアームを中段の桁材11c上に張り出す(
図4(c))。
昇降手段30を僅かに巻き出して、アウトリガー26を中段の桁材11c上に載せ、アウトリガー26を介して昇降フロア20の荷重を基台10に受け替える。
昇降フロア20をリフトダウンする場合には、以上の手順を逆に行えばよい。
本発明の昇降装置1は、基台10前方に延出する索状体40と後方に延出する索状体40とを、ドラム部32の同一方向に巻回しているため、相対する二方向に延出する索状体40を一つの昇降手段30で同調して巻き取り/巻き出しすることができる。
このように、複数の索状体40の動きを機械的に同調させるため、昇降フロア20の吊り点間の高さにずれが生じず、作動が円滑である。また、構成が単純なので製造コストが比較的安価な反面故障が少ない。