(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の制振層に貼り合わせる振動材としては、制振性が必要な薄板であれば、特に限定されず、例えば、各種産業製品に用いられる薄板が挙げられる。このような薄板を形成する材料は、特に限定されず、例えば、金属または樹脂(FRPや合成樹脂を含む。)などである。このような薄板としては、具体的には、自動車の鋼板や外板、電気機器や家電製品などの鋼板、より具体的には、コンピュータ、コンピュータディスプレイ、テレビ、ゲーム機器、冷蔵庫、掃除機の筐体内部の鋼板などが挙げられる。
【0012】
本発明の制振層(A−1)(A−2)は、少なくとも1個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(X)と少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(Y)であって、ビニル結合含有量が45%以上であるブロック共重合体(a1)及び/または該ブロック共重合体の水素添加物(a2)である樹脂(a)と、少なくとも1個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(X)と少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(Y)であって、ビニル結合含有量が45%未満であるブロック共重合体(b1)及び/または該ブロック共重合体の水素添加物(b2)である樹脂(b)、及び炭化水素系ゴム用軟化剤(c)を含有した熱可塑性エラストマー樹脂組成物を含み、少なくとも制振層(A−1)と制振層(A−2)とを積層することにより多層制振材を構成する。
【0013】
<ブロック共重合体(a1、b1)>
本発明に使用する樹脂(a、b)において、ブロック共重合体(a1、b1)は、少なくとも1個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(X)と、少なくとも1種の共役ジエン化合物からなる重合体ブロック(Y)とからなるブロック共重合体である。
前記ビニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられる。これらの中でも、スチレンおよびα
−メチルスチレンが好ましい。芳香族ビニル化合物は1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0014】
前記ブロック共重合体(a1、b1)におけるビニル芳香族化合物の含有量は5〜75質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましい。ビニル芳香族化合物の含有量がこの範囲内であると、本発明の制振層(A−1)(A−2)を構成する熱可塑性エラストマー樹脂組成物の制振性がより向上する。
【0015】
前記共役ジエン化合物としては、例えばブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。共役ジエン化合物は1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0016】
前記ブロック共重合体(a1)における共役ジエン化合物からなる重合体ブロック(Y)は、制振性の観点からイソプレン単独、またはイソプレンとブタジエンの混合物に由来する構造単位からなることが適している。なお、本明細書では、イソプレンに由来する構造単位における1,2−結合単位および3,4−結合単位、ブタジエンに由来する構造単位における1,2−結合単位をビニル結合単位と称し、その合計量をビニル結合含有量と称する。前記ブロック共重合体における共役ジエン化合物からなる重合体ブロックのビニル結合含有量は45%以上、更に好ましくは50〜80%の範囲のものが使用される。
【0017】
このようなブロック共重合体(a1)は、共役ジエン化合物からなる重合体ブロック(Y)に枝分かれが多く、嵩高い構造を有している。このため、制振層(A−1)(A−2)に振動エネルギーが及ぼされた際、分子同士が衝突する確率が高くなり、振動エネルギーが熱エネルギーに効率良く変換され、後述する測定方法により測定される損失係数が0.1以上となり、本発明の多層制振材に良好な制振性を与える。
【0018】
<ブロック共重合体(a1、b1)の水素添加物(a2、b2)>
また樹脂(a、b)は、耐熱性や耐光性の観点から、前記ブロック共重合体(a1、b1)と該ブロック共重合体の水素添加物(a2、b2)との混合物かあるいは該ブロック共重合体(a1、b1)の水素添加物(a2,b2)単独の場合も含まれる。この場合、共役ジエン化合物からなる重合体ブロックの共役ジエン化合物に由来する炭素−炭素二重結合の50%以上が水素添加されていることが好ましく、75%以上が水素添加されていることがより好ましく、95%以上が水素添加されていることが特に好ましい。
【0019】
<(a、b)>
樹脂(a、b)は、重合体ブロック(X)と共役ジエン化合物からなる重合体ブロック(Y)とをそれぞれ少なくとも1個含有していればよいが、粘着性の観点からは、重合体ブロック(X)を1個以上、共役ジエン化合物からなる重合体ブロック(Y)を1個以上含有していることが好ましい。一方、耐熱性、力学物性等の観点から、重合体ブロック(X)を2個以上、共役ジエン化合物からなる重合体ブロック(Y)を1個以上含有していることが好ましい。重合体ブロック(X)と共役ジエン化合物からなる重合体ブロック(Y)の結合様式は、線状、分岐状あるいはこれらの任意の組み合わせであってもよいが、重合体ブロック(X)をXで、重合体ブロック(Y)をYで表したとき、X−Yで示されるジブロック構造や、X−Y−Xで示されるトリブロック構造や、(X−Y)
n、(X−Y)
n−X、(ここでnは2以上の整数を表す)で示されるマルチブロック共重合体などを挙げることができ、これらの中でも、X−Y−Xで示されるトリブロック構造のものが、制振性、耐熱性、力学物性、汚れ防止性、取り扱い性等の点で、また X−Yで示されるジブロック構造のものは、制振性、粘着性の面で特に好ましい。
【0020】
また、重合体ブロック(X)の主要構成成分であるビニル芳香族化合物と重合体ブロック(Y)の主要構成成分である共役ジエン化合物とが、ランダム状 または/及び テーパー状に共重合したブロック部分を、本発明を阻害されない範囲で含有することが出来る。なかでも、X−Y構造部分の接続部近傍に、該ランダム または/及び テーパー含有ブロックに配位する事がより好適である。
【0021】
<炭化水素系ゴム用軟化剤(c)>
本発明の炭化水素系ゴム用軟化剤(c)としては、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマ系オイル等のプロセスオイル、流動パラフィンなどが挙げられ、中でもパラフィン系オイル、ナフテン系オイル等のプロセスオイルがより好適である。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
本発明の制振層は以下の組成を含む制振層(A−1)、制振層(A−2)で構成される。制振層(A−1)の樹脂組成物は、樹脂(a)+(b)中のビニル結合含有量が30%以上、好ましくは32%以上であり、かつ前記炭化水素系ゴム用軟化剤(c)の含有量が10重量%以下、好ましくは8重量%以下の組成物である事が、制振性と耐粘着性などを発現させる点で重要である。樹脂(a)+(b)中のビニル結合含有量が30%未満であると、制振性が低下する問題が発生する。また 該炭化水素系ゴム用軟化剤(c)の含有量が10重量%を超えると、耐粘着性が悪化(べたつきが増加)する問題が発生する。
【0023】
一方、制振層(A−2)の樹脂組成物は、樹脂(a)+(b)中のビニル結合含有量が20%以上、好ましくは22%以上であり、かつ前記炭化水素系ゴム用軟化剤(c)の含有量が10重量%以上、好ましくは14重量%以上の組成物である事が、制振性を保持しつつ粘着性を発現させる点で重要である。樹脂(a)+(b)中のビニル結合含有量が20%未満であると制振性が低下する問題が発生することがある。また、該炭化水素系ゴム用軟化剤(c)の含有量が10重量%未満では、接着性が悪化する。
【0024】
<その他の成分>
制振層(A−1)(A−2)に用いられる樹脂組成物には、強度や成形性、耐薬品性、耐熱性、粘着性などの改善の目的からさらにポリオレフィン系樹脂(d)を含有させることができる。ポリオレフィン系樹脂(d)としては、プロピレン系重合体、エチレン系重合体等が挙げられる。プロピレン系重合体としては、例えばホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン等を使用することができる。中でも、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンを用いるのが好ましい。エチレン系重合体としては、例えば中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のエチレン単独重合体;エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−ヘプテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−ノネン共重合体、エチレン・1−デセン共重合体等のエチレン・α−オレフィン共重合体等を使用することができる。
【0025】
制振層(A−1)(A−2)に用いられる樹脂組成物においては、前記(a)100質量部、又は(a)及び(b)100質量部に対して、ポリオレフィン系樹脂(d)が5〜70重量部含有していることが、上記目的を達成する点から好ましく、5〜50重量部がより好ましい。
【0026】
また、制振層(A−1)(A−2)に用いられる樹脂組成物には、耐摩耗性、表面コート剤との接着性などの改善の目的に極性エラストマーを含有させることができる。極性エラストマーとしては、ポリウレタン系エラストマー、アクリル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーを一種類、あるいは 二種類以上使用することが出来る。なかでも、ポリウレタン系エラストマーが好ましく、前記(a)100質量部、又は(a)及び(b)100質量部に対して、極性エラストマーが70質量部以下であることが、上記目的を達成する点から好ましく、50質量部以下がより好ましい。
【0027】
制振層(A−1)(A−2)に用いられる樹脂組成物には、本発明の効果を著しく損なわない範囲であれば、必要に応じて、粘着付与材を含有させてもよい。粘着付与材としては、例えば、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、これらのグリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル等のロジンエステルなどのロジン系樹脂;α−ピネン、β−ピネン、ジペンテンなどを主体とするテルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂などテルペン系樹脂:(水添)脂肪族系(C5系)石油樹脂、(水添)芳香族系(C9系)石油樹脂、(水添)共重合系(C5−C9共重合系)石油樹脂、(水添)ジシクロペンタジエン系石油樹脂、脂環式飽和炭化水素など水素添加されていてもよい石油樹脂;ポリα−メチルスチレン、α−メチルスチレン−スチレン共重合体、スチレン系モノマー−脂肪族系モノマー共重合体、スチレン系モノマー−芳香族系モノマー(スチレン系モノマーを除く)共重合体などのスチレン系樹脂;フェノール系樹脂;キシレン樹脂;クマロン−インデン系樹脂等の合成樹脂等が挙げられる。これらの中でも、樹脂組成物の着色抑制の観点から、水添テルペン樹脂、脂環式飽和炭化水素樹脂、(水添)脂肪族系(C5系)石油樹脂が好ましい。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
制振層(A−1)(A−2)に用いられる樹脂組成物に粘着付与材を含有させる場合、その量はブロック共重合体(a)100重量部に対して、好ましくは100重量部以下であり、耐熱性の観点からは80重量部以下であることがより好ましい。
【0028】
制振層(A−1)(A−2)に用いられる樹脂組成物には、クレー、珪藻土、シリカ、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、金属酸化物、マイカ、グラファイト、水酸化アルミニウムなどのリン片状無機系添加剤、各種の金属粉、木片、ガラス粉、セラミックス粉、粒状あるいは粉末ポリマー等の粒状あるいは粉末状固体充填材、その他の各種の天然または人工の短繊維、長繊維(例えば、わら、毛、ガラスファイバー、金属ファイバー、その他各種のポリマーファイバー等)などを配合することができる。
また、中空フィラー、例えば、ガラスバルーン、シリカバルーンなどの無機中空フィラー、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン共重合体などからなる有機中空フィラーを配合することにより、軽量化をはかることができる。
なかでも、ポリビニル系短繊維、ポリアリレート系短繊維、グラファイト、マイカ、酸化チタン、アルミニウム粉末、カーボンブラック、などは制振性を大きく改善する効果があり、より望ましい。
【0029】
制振層(A−1)(A−2)に用いられる樹脂組成物には、上記の成分の他に、用途に応じて各種のブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、結晶核剤、発泡剤、着色剤等を含有することも可能である。ここで、酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジtert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジtert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、4,4'−ジヒドロキシジフェニル、トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ−5,5−ウンデカンなどのフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等を使用することができる。中でもフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤が特に好ましい。酸化防止剤は、本発明の樹脂組成物に含まれる上記成分(a)〜(d)の合計100質量部に対して、0.01〜3.0質量部であることが好ましく、0.05〜1.0質量部であることがより好ましい。
【0030】
制振層(A−1)(A−2)に用いられる樹脂組成物には、上記の成分の他に、用途に応じて、難燃化剤を添加する事が可能である。ここで、難燃化剤としては、特に限定するものではないが、従来から用いられている各種の難燃化用添加剤( 例えば、有機リン含有化合物、無機リン含有化合物、有機ハロゲン含有化合物、無機ハロゲン含有化合物、有機リン・ハロゲン含有化合物、無機リン・ハロゲン含有化合物、酸化アンチモン、酸化チタン、金属水酸化物、含水無機結晶化合物) の1 種または2 種以上を含有していてもよい。なかでも、ハロゲンを含有しないリン系難燃剤が好適であり、例えば、赤リン、有機リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスホルアミド化合物等が挙げられる。より好適には、芳香族系縮合リン酸エステル化合物が好ましい。
【0031】
制振層(A−1)(A−2)を構成する樹脂を調製するには、各成分を上記した配合割合で配合して、これらを均一に混合することで得られ、特に限定されないが、例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダ、一軸押出機、二軸押出機などによって溶融混練し、ペレット状に調製することができる。また、場合によっては、トルエンなどの有機溶剤で加熱下、溶解し溶液状態で下記の後加工を行う場合もある。さらにポリイソブチレン系添加剤などの粘凋樹脂では、2軸押出機への投入が困難な場合があり、該樹脂をコニカル型フィード押出機で予め溶融樹脂状にしつつ、2軸押出機の中央付近から強制的に中間フィードする事で安定にペレット化が可能である。
【0032】
得られたペレット状樹脂は、特に限定されるものではないが、例えば、ホットプレス機、射出成形機、インサート射出機、シート成形機、共押出シート成形機、押出ラミ成形機、などで単層シート、及び 多層シートを得る。単層シートの場合、ホットプレス機、熱ロールラミネート機、押出ラミネート機などで多層化する。
【0033】
また、制振層に、消音性、耐衝撃性を追加付与したい場合は、制振層(A−1)、および/または 制振層(A−2)に、発泡剤、発泡バルーン、中空ビーズなどを添加し発泡させる事もできる。
【0034】
さらに本発明においては、制振性をさらに改善する目的として、制振層(A−1)側および/または制振層(A−2)に、拘束層(B)を積層する事が可能である。 拘束層(B)を構成する材料としては、例えば、金属やアルミなどの薄板、或いはガラスクロス、炭素繊維、ポリアリレート繊維、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、超高分子量ポリエチレン、セラミック繊維、金属繊維などを1種類 或いは それ以上を用いた剛直な織物、不織布などが挙げられる。
【0035】
これら拘束層(B)のうち、重量、密着性、強度およびコストを考慮すると、金属薄板、炭素繊維、ガラスクロスが好ましく用いられる。また、拘束層(B)の厚さは、例えば、50μm〜2mmであることが好ましい。とりわけ、拘束層(B)として炭素繊維、ガラスクロスが用いられる場合には、厚みが、好ましくは、300μm以下であり、拘束層(B)として金属薄板が用いられる場合には、取扱いの観点から、厚みが1000μm以下であることが好ましい。
【0036】
制振性は振動体や拘束層(B)の厚さに大きく影響を受ける為、制振層(A−1)(A−2)の厚さについては、一概に決定出来ないが、例えば、制振層(A−1)(A−2)の合計で0.3〜5mmであることが好ましく、より好ましくは、0.6〜3.5mmである。また、制振層を構成する制振層(A−1)と制振層(A−2)との厚み比率は、95/5〜20/80であることが好ましい。制振層(A−1)の厚み比率が95より大きいと、曲面などへの貼付時に制振層の端部浮きや脱離が発生し易く好ましくない。また、制振層(A−1)の厚み比率が20未満では、制振層(A−2)の端部はみだし、柔軟すぎる事による貼付などの作業性の悪化などの問題がある。
【0037】
該拘束層(B)と制振層(制振層(A−1)または制振層(A−2))とを積層する方法としては、特に限定するものではないが、1)制振層(A−1)または制振層(A−2)に拘束層(B)を熱ローラーやホットプレス機で加熱圧縮する方法、2)特に繊維状の拘束層(B)では、該拘束層(B)を制振層(A−1)の溶液に含浸・乾燥する方法、3)制振層(A−1)に制振層(A−2)を更に積層した後、拘束層(B)を接着する方法、或いは 4)制振層(A−1)或いは/及び 拘束層(B)に接着剤、両面接着テープを積層した後、両者を積層する方法、などがある。これらの中でも、2)繊維状の拘束層(B)に制振層(A−1)を構成する樹脂を含浸する方法が最も有効である。
【0038】
また、制振層(A−2)が最外層の場合、工程通過性、及び 取扱い性の面で、易剥離性の保護層(C)をラミネートロール、或いはラミネーターなどを通して積層する場合もある。易剥離性の保護層(C)の材質としては、特に制限されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンー酢酸ビニル共重合体、EVOH、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン等のポリアミド;ポリアクリロニトリル;セルロース又はその誘導体;アルミニウム等の金属箔等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。このようなフィルム及びシートとしては、その離型性を増すために、前記粘着剤層に接する面にあらかじめシリコーン処理やフッ素樹脂処理等が施されたものであってもよい。
【0039】
また、制振層(A−2)に接しない側の制振層(A−1)側のスリップ性、防汚性を更に改善する目的で、制振層(A−1)にフッ素系樹脂、アクリル系樹脂、或いは シリコーン系樹脂などの防汚層(D)を施す事が出来る。
【0040】
該防汚層(D)と制振層(A−1)とを積層する方法としては、特に限定されないが、例えば、1)制振層(A−1)に防汚溶液を塗布・乾燥する方法、2)保護層(C)に塗布・乾燥した防汚層(D)を制振層(A−1)にラミネートする方法、3)保護層(C)に塗布した防汚層に制振層(A−1)にラミネートした後乾燥する方法、4)保護層(C)に塗布・乾燥した防汚層(D)を制振層(A−1)にラミネートする方法、或いは5)防汚層(D)に制振層(A−1)を直接ラミネートする方法などが挙げられる。中でも、製造コスト、工程安定性、及び 性能面で、3)または4)の方法がより望ましい。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例の物性評価は、以下に示す方法によって行った。
【0042】
(1)損失係数
振動体(厚さ1.0mm、幅15.0mm、長さ250mmのSPCC鋼板)及び 拘束層を有しない場合は両面粘着テープを張付けたアルミ板(厚さ0.5mm、幅15.0mm、長さ250mm)を後述する実施例、比較例で作成した積層体とを貼り合わせた。具体的には振動体と積層体中の制振層(A−2)を70℃の熱プレスロールを用いて、加圧・加熱下で貼付加工を行い、ブリュエル・ケア製、型番3550装置を用い、0℃にて片持ちはり法で測定し、半値幅法にて損失係数を算出した。
【0043】
(2)ビニル結合含有量(1,2−結合および3,4−結合単位の含有量)
水素添加前のブロック共重合体をCDCl
3に溶解して
1H−NMRスペクトルを測定(装置:JNM−Lambda 500(日本電子(株)製、測定温度:50℃)し、イソプレン、ブタジエン、またはイソプレンとブタジエンの混合物由来の構造単位の全ピーク面積と、イソプレン構造単位における1,2−結合単位および3,4−結合単位、ブタジエン構造単位における1,2−結合単位、またイソプレンとブタジエンの混合物の場合にはそれぞれの前記結合単位に対応するピーク面積の比からビニル結合含有量(1,2−結合単位と3,4−結合単位の含有量の合計)を算出した。
【0044】
(3)耐粘着性
JIS K7125に準拠し、厚さ1.0mm、幅80mm、長さ200mmのSPCC鋼板と、積層体中の制振層(A−2)とを、70℃の熱プレスロールを用いて、加圧・加熱下で貼付加工を行い、制振層(A−1)側を上向きに水平常盤に固定。制振層(A−1)の上に、63mm×63mmのすべり片(アルミ板:200g)置き、23℃−50%RH雰囲気下、島津製作所製 オートグラフ 型番AG−1、500Nを用い、水平速度100mm/minで引っ張り時の初期張力(静摩擦係数=ピーク張力/荷重)、及び それ以降の定常張力(動摩擦力係数=ピーク張力を除く平均張力/荷重)を測定した。
【0045】
(4)接着性
厚さ1.0mm、幅15mm、長さ100mmのSPCC鋼板と、積層体中の制振層(A−2)とを70℃の熱プレスロールを用いて加圧・加熱下で貼付加工を行い、制振層(A−1)側を上向きに水平常盤に固定。制振層の上に、底面積=5cm
2、重量=10gの円盤状の荷重を置き、23℃−50%RH雰囲気下、島津製作所製 オートグラフ 型番AG−1、500Nを用い、引っ張り速度100mm/minで180度剥離を行った。
【0046】
<実施例1〜12及び比較例1〜5>
(1)実施例1〜11、比較例1〜5において、コニカル型中間フィーダーを接合した二軸押出機(口径46mm、L/D=46)を使用して、下記の各構成成分を表1に示す配合に従って混合した後、190℃で溶融混練し、制振層(A−1)、及び制振層(A−2)を形成するペレット状の樹脂組成物を得た。
これらの樹脂組成物を用い、T型ダイス単軸押出機(口径40mm、L/D=24、230℃)を使用し、制振層(A−1)に関しては樹脂厚み1mmの単層シートを、また 制振層(A−2)に関しては、保護基材(C;東レフィルム加工製、セラピールBLK 50μm厚み)の上に樹脂厚み1mmで押出ラミネートを行い、その後、140℃熱ドラムを有するラミネーターを通し、加熱・加圧下、制振層(A−1)/制振層(A−2)/保護層(C)で構成される3層の積層体を得た。
【0047】
(2)実施例12では、上記(1)の積層体において、制振層(A−1)に、拘束層(B)として炭素繊維織物(東レ製:トレカ クロスC06142、119g/m
2)を積層した。積層方法は制振層(A−1)使用の樹脂をトルエン溶液を溶剤として、3時間、110℃で加熱攪拌して溶解して調製した濃度40重量%の均一溶液を該炭素繊維に含浸・圧搾・冷却・乾燥(80℃、30分)した後、T型ダイス単軸押出機で押出ラミネートする方法を用いた。
【0048】
<ブロック共重合体(a)、(b)の製造>
特許第2703335号公報、或いは特開2003−128870号公報に準じ、乾燥し窒素で置換された耐圧反応器で、溶媒としてシクロヘキサン、開始剤としてn−ブチルリチウム、場合によっては共触媒を用い、スチレンモノマー、イソプレンモノマー、スチレンモノマーの順に添加し重合することによりA−B−Aの構造を有するブロック共重合体を得た後、シクロヘキサン中で、Pd−Cを触媒として用いて水素圧20kg/cm
2で 水素反応をおこない、それぞれ水添ブロック共重合体(a;a−1〜a−3)、(b;b−1〜b−3)を得た。これらのブロック共重合体水添物の分子特性を下記に示した。
【0049】
<ブロック共重合体(a)>
・(a−1)
種類:スチレンーイソプレンースチレン型トリブロック共重合体の水添ブロック共重合体、ビニル結合含有量73%;
・(a−2)
種類:スチレンーイソプレンースチレン型トリブロック共重合体の水添ブロック共重合体、ビニル結合含有量55%;
・(a−3)
種類:スチレンーイソプレンースチレン型トリブロック共重合体の水添ブロック共重合体、ビニル結合含有量50%;
【0050】
<ブロック共重合体(b)>
・(b−1)
種類:スチレンーイソプレン・ブタジエンースチレン型トリブロック共重合体の水添ブロック共重合体、イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4−結合単位および1,2−結合単位の含有量40%;
・(b−2)
種類:スチレンーブタジエンースチレン型トリブロック共重合体の水添ブロック共重合体、イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4−結合単位および1,2−結合単位の含有量20%
・(b−3)
種類:スチレンーイソプレン・ブタジエンースチレン型トリブロック共重合体の水添ブロック共重合体、イソプレン及び/またはブタジエンに由来する構造単位の3,4−結合単位および1,2−結合単位の含有量8%
【0051】
<炭化水素系ゴム用軟化剤(c)>
ダイアナプロセスオイルPW−380(商品名)、出光石油化学株式会社製、パラフィン系オイル、動粘度(40℃):381.6mm
2/s、環分析パラフィン:73%、環分析ナフテン:27%、重量平均分子量:1304
【0052】
<ポリオレフィン系重合体(d)>
ポリプロピレン プライムポリプロ F219DA(商品名)、株式会社プライムポリマー製、MFR(230℃):8g/10分
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
表1〜3に示すとおり、本発明のスチレン系熱可塑性エラストマーと軟化剤を含む樹脂組成物で構成され、軟化剤(c)、<(a)+(b)>成分中のビニル結合含有量が特定の範囲内にある制振層(A−1)(A−2)で少なくとも構成される積層体である実施例1〜12は、制振性、耐粘着性、及び接着性に優れる。
【0057】
比較例1は、(A−1)層を構成する樹脂(A−1樹脂)と(A−2)層を構成する樹脂(A−2樹脂)とをそれぞれ等重量部ブレンドした樹脂を、T型ダイス単軸押出機(口径40mm、L/D=24、230℃)を使用し、保護基材(C;東レフィルム加工製、セラピールBLK 50μm厚み)の上に樹脂厚み2mmで押出ラミネートを行い、A−1樹脂+A−2樹脂ブレンド層/保護層(C)で構成される2層の積層体を得たが、得られた積層体は耐粘着性が悪化する結果となった。
比較例2は、制振層(A−1)の成分である軟化剤(c)の添加量を10重量%超えとし、実施例1と同様に積層体を得たが、得られた積層体は耐粘着再が悪化する結果となった。
比較例3は、制振層(A−1)の樹脂成分であるビニル結合含有量を30%未満とし、実施例1と同様に積層体を得たが、得られた積層体は制振性が悪化する結果となった。
比較例4は、制振層(A−2)の成分である軟化剤(c)の添加量を10重量%未満とし、実施例1と同様に積層体を得たが、得られた積層体は接着性が悪化する結果となった。
比較例5は、制振層(A−2)の樹脂成分であるビニル結合含有量を20%未満とし、実施例1と同様に積層体を得たが、得られた積層体は制振性が悪化する結果となった。