特許第6699114号(P6699114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6699114
(24)【登録日】2020年5月7日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】蓄電素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/04 20060101AFI20200518BHJP
   H01G 11/82 20130101ALI20200518BHJP
   H01M 2/06 20060101ALI20200518BHJP
   H01M 2/26 20060101ALI20200518BHJP
【FI】
   H01M2/04 A
   H01G11/82
   H01M2/06 A
   H01M2/26 A
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-176425(P2015-176425)
(22)【出願日】2015年9月8日
(65)【公開番号】特開2017-54628(P2017-54628A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(72)【発明者】
【氏名】志築 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】道畑 良太
(72)【発明者】
【氏名】太田 直樹
【審査官】 藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−064346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/04 − 2/06
H01G 11/82
H01M 2/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部端子と、ケースと、前記ケースを貫通する導電部材と、前記外部端子と前記導電部材とを電気的に接続する接続体と、を備え、
前記ケースの前記接続体が設けられた面に突起部が接合されており、前記接続体は前記突起部に固定されている、蓄電素子。
【請求項2】
記接続体には孔が設けられており、
前記突起部が前記孔を貫通し、前記突起部の先端がかしめられている、請求項1に記載の蓄電素子。
【請求項3】
記接続体には孔が設けられており、
前記突起部には雌ねじが形成されており、
前記突起部が前記孔を貫通し、前記雌ねじに係合される雄ねじを有する、請求項1に記載の蓄電素子。
【請求項4】
電極体と、前記電極体を収容するケースと、前記ケースを貫通する導電部材と、前記電極体と前記導電部材とを電気的に接続する集電体と、を備え、
前記集電体には孔が設けられており、
前記ケースの前記集電体が設けられた面に突起部が接合されており、
前記突起部が前記孔を貫通し、前記突起部の先端がかしめられて、前記集電体は前記突起部に固定されている、蓄電素子。
【請求項5】
電極体と、前記電極体を収容するケースと、前記ケースを貫通する導電部材と、前記電極体と前記導電部材とを電気的に接続する集電体と、を備え、
前記集電体には孔が設けられており、
前記ケースの前記集電体が設けられた面に雌ねじが形成された突起部が接合されており、
前記突起部が前記孔を貫通し、前記雌ねじに雄ねじを係合することにより、前記集電体は前記突起部に固定されている、蓄電素子。
【請求項6】
前記突起部と前記孔の内壁との間に絶縁体が備えられている、請求項2〜5の何れかに記載の蓄電素子。
【請求項7】
前記絶縁体が筒形状であり、前記筒形状を前記突起部が貫通している、請求項6に記載の蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
電池をはじめとする蓄電素子は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)、電気自動車(PEV)、電動バイクや電動アシスト自転車などの車両や、据え置き型の蓄電システムなどに採用されている。例えば、電極体と、電極体を収容するケースと、電極体と電気的に接続された集電体および外部端子とを備えた蓄電素子が知られている。
【0003】
特許文献1には、バスバーなどを電極端子と接続するための取付ボルトを有し、リベットを用いて集電体と電極端子とをケースに固定する蓄電素子が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、注液孔を貫通する注液栓によって集電体とケースを固定している蓄電装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−73848号公報
【特許文献2】特開2014−170754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、蓄電素子に力や振動が加わったりすることで、集電体や外部端子の固定部分が緩むことがある。例えば、車両の振動などにより電極体が振動し、この振動が集電体を介して固定部分に伝わることがある。また、外部端子に対してバスバーなどの接続部材を取り付ける際などに、固定部分に力が加わることがある。固定部分が緩むと、部材の固定には影響がなかったとしても、電極体から外部端子に至る電流経路における電気抵抗が上昇し、蓄電素子の品質低下をもたらすおそれがある。
【0007】
また、特許文献2の蓄電装置においては、上述したような集電体にかかる力が注液栓にも伝わり、注液栓の回りの気密性が悪化するおそれがある。
【0008】
本発明は、このような問題の解決を図ろうとなされたものであって、蓄電素子に力や振動が加わったりした場合にも、導電部材間の固定部分が緩み難く、高い品質を有する蓄電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る蓄電素子は、電極体と、前記電極体を収容するケースと、前記ケースを貫通する導電部材と、前記電極体と前記導電部材とを電気的に接続する集電体とを備え、前記ケースの前記集電体が設けられた面に突起部が接合されており、前記集電体は前記突起部に固定されている。
また、本発明の一態様に係る蓄電素子は、外部端子と、ケースと、前記ケースを貫通する導電部材と、前記外部端子と前記導電部材とを電気的に接続する接続体とを備え、前記ケースの前記接続体が設けられた面に突起部が接合されており、前記接続体は前記突起部に固定されている。
【発明の効果】
【0010】
上記態様に係る蓄電素子では、力や振動が加わったりした場合にも、導電部材間の固定部分が緩み難く、抵抗増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態1に係る蓄電素子の外観構成を示す模式斜視図である。
図2】蓄電素子の内部構成を示す模式図である。
図3】導電部材による固定部分の構成を示す模式断面図である。
図4】(a)図1におけるA−A断面での構成を示す模式断面図、(b)図1におけるB−B断面での構成を示す模式断面図である。
図5】(a)接続体の固定部分をケース外方から見た模式平面図、(b)(a)のD−D断面での構成を示す模式断面図、(c)集電体の固定部分をケース内方から見た模式平面図、(d)(c)のE−E断面での構成を示す模式断面図である。
図6】導電部材による固定に係る構成を示す模式展開図である。
図7】(a)封口体の外面に設けられたボスを示す模式斜視図、(b)封口体の内面に設けられたスタッドを示す模式斜視図である。
図8】(a)接続体の固定に係る構成を示す模式展開図、(b)集電体の固定に係る構成を示す模式展開図である。
図9】本発明の実施の形態2に係る蓄電素子における負極外部端子12の周辺構成を示す模式図である。
図10】本発明の実施の形態3に係る蓄電素子における負極外部端子12の周辺構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一態様に係る蓄電素子は、電極体と、前記電極体を収容するケースと、前記ケースを貫通する導電部材と、前記電極体と前記導電部材とを電気的に接続する集電体とを備え、前記ケースの前記集電体が設けられた面に突起部が接合されており、前記集電体は前記突起部に固定されている。
【0013】
本態様では、ケースの導電部材が貫通する面に突起部を有しており、この突起部に対して集電体が固定されている。つまり、本態様の蓄電素子では、集電体が導電部材により接合されている以外に、突起部によってもケースに固定されている。よって、蓄電素子に力や振動が加わった場合、集電体と導電部材との接合部分にかかる力が軽減される。その結果、蓄電素子に力や振動が加わった場合でも、集電体と導電部材との接合部分の抵抗増大を抑制することができる。
【0014】
本発明の一態様に係る蓄電素子は、外部端子と、ケースと、前記ケースを貫通する導電部材と、前記外部端子と前記導電部材とを電気的に接続する接続体とを備え、前記ケースの前記接続体が設けられた面に突起部が接合されており、前記接続体は前記突起部に固定されている。
【0015】
本態様では、ケースの導電部材が貫通する面に突起部を有しており、この突起部に対して接続体が固定されている。つまり、本態様の蓄電素子では、接続体が導電部材により接合されている以外に、突起部によってもケースに固定されている。よって、蓄電素子に力や振動が加わった場合、接続体と導電部材との接合部分にかかる力が軽減される。その結果、蓄電素子に力や振動が加わった場合でも、接続体と導電部材との接合部分の抵抗増大を抑制することができる。
【0016】
本発明の一態様に係る蓄電素子は、集電体又は接続体に孔が設けられており、突起部が孔を貫通し、突起部の先端がかしめられることによって集電体又は接続体が固定されていてもよい。突起部を孔に貫通させて、突起部の先端をかしめ加工することで、容易に集電体又は接続体を突起部に固定することができる。
【0017】
なお、「かしめ」および「かしめ加工」とは、加圧(プレス)することにより、対象の部材の一部を塑性変形させることであり、「かしめ部」とは、“かしめにより塑性変形することで形成された部分”のことを意味する。
【0018】
本発明の一態様に係る蓄電素子は、集電体又は接続体には孔が設けられており、突起部には雌ねじが形成されており、突起部が孔を貫通し、雌ねじに係合される雄ねじによって集電体又は接続体が固定されていてもよい。雄ねじを使用することで、トルクの調整や締め直しができる。
【0019】
[実施の形態1]
(1.電池1の外観構成)
本発明の実施の形態では、蓄電素子の一例として電池1を採用する。電池1の外観構成について、図1を用い説明する。
図1に示すように、電池1は、底を有する角筒状のケース本体102と、その開口を閉じる封口体101とにより構成されたケース10を備える。ケース本体102と封口体101とは、封口体101の外周辺部分において、例えばレーザ溶接により接合されている。
【0020】
封口体101の外面には、正極外部端子11および負極外部端子12が設けられている。正極外部端子11および負極外部端子12は、ケース10の外方に向かって突出している。正極外部端子11および負極外部端子12は、それぞれ正極接続体13および負極接続体14と電気的に接続されている。
正極接続体13および負極接続体14は、封口体101の外面に沿って配置されている。正極接続体13および負極接続体14は、ともに導電材である。封口体101と正極接続体13および負極接続体14との間にはそれぞれ正極外部パッキン15および負極外部パッキン16が配置されている。正極外部パッキン15および負極外部パッキン16は絶縁部材である。正極接続体13および負極接続体14は、正極外部パッキン15および負極外部パッキン16により、封口体101と電気的に絶縁されている。
【0021】
正極接続体13および負極接続体14は、正極導電部材17および負極導電部材18によりケースに固定されている。正極導電部材17および負極導電部材18は、封口体101を貫通している。正極導電部材17および負極導電部材18は導電材であり、正極外部パッキン15および負極外部パッキン16によって封口体101とは電気的に絶縁されている。
電池1では、正極接続体13に対して、正極側雄ねじ19が取り付けられ、負極接続体14に対しては、負極側雄ねじ20が取り付けられている。正極側雄ねじ19および負極側雄ねじ20については、後述する。
【0022】
(2.電池1の内部構成)
電池1の内部構成について、図2を用い説明する。図2に示すように、ケース本体102と封口体101とで構成されたケース10の内部には、電極体25が収容されている。電極体25は、正極板272、負極板273、セパレータ271を有している。
【0023】
電極体25に対しては、正極板272の一部に正極集電体21が接続され、負極板273の一部に負極集電体22が接続されている。
正極集電体21および負極集電体22は、ともに導電材であって、平面視において屈曲部を有するL字形状をしており、その一部が封口体101の内面(裏面)に沿っている。封口体101と正極集電体21および負極集電体22とは、それぞれ間に絶縁物の正極内部パッキン23および負極内部パッキン24が配置されることで、電気的に絶縁されている。
【0024】
正極集電体21に対しては、正極導電部材17が貫通しており、また、負極集電体22に対しては、負極導電部材18が貫通している。
このようにして、電極体25における正極板272は、正極集電体21、正極導電部材17、正極接続体13を介して正極外部端子11に電気的に接続されている。同様に、電極体25における負極板273は、負極集電体22、負極導電部材18、負極接続体14を介して負極外部端子12に電気的に接続されている。
【0025】
また、電池1では、正極接続体13は、正極側ボス28とこれに係合された正極側雄ねじ19とにより封口体101に固定されている。同様に、負極接続体14は、負極側ボス29とこれに係合された負極側雄ねじ20とにより封口体101に固定されている。正極側ボス28および負極側ボス29は、封口体101の外面からケース10の外方に突出している突起部である。この部分の固定構造の詳細については、後述する。
さらに、電池1では、正極集電体21は、正極側スタッド26により封口体101に固定されている。同様に、負極集電体22は、負極側スタッド27により封口体101に固定されている。正極側スタッド26および負極側スタッド27は、封口体101の内面からケース10の内方に突出している突起部である。この部分の固定構造の詳細についても、後述する。
【0026】
なお、図2では図示を省略しているが、ケース10内には電解質が封入されている。本実施の形態では、一例として非水電解質が封入されている。また、図2では1つの電極体25のみを図示しているが、ケース10内に複数の電極体25(例えば、2つ)が収容されていてもよい。
【0027】
(3.導電部材による各固定部分の構成)
正極導電部材17および負極導電部材18による各固定部分の構成について、図3を用いて説明する。なお、図3では、正極導電部材17による固定部分だけを図示しているが、負極導電部材18による各固定部分についても同様の構成を有する。
図3に示すように、正極導電部材17は、正極接続体13、正極外部パッキン15、封口体101、正極内部パッキン23、および正極集電体21のそれぞれ一部を貫通している。上述のように、正極導電部材17と封口体101との間は、絶縁材からなる正極外部パッキン15および正極内部パッキン23により電気的に絶縁されている。
【0028】
正極導電部材17は、上下(図3におけるZ軸方向)の端部でかしめられており、正極接続体13および正極集電体21を封口体101に固定している。かしめ加工の具体的な方法については、特に限定するものではないが、例えば、スピニングかしめ加工などを採用することができる。正極導電部材17をかしめる際に、正極導電部材17が拡径することで、正極外部パッキン15および正極内部パッキン23が押圧され、ケース10内の気密が確保される。
【0029】
正極接続体13において、正極導電部材17の貫通部分を囲む領域は、正極導電部材17のかしめ部17aにより覆われている。同様に、正極集電体21において、正極導電部材17の貫通部分を囲む領域は、正極導電部材17のかしめ部17bにより覆われている。
【0030】
(4.封口体への接続体および集電体の固定構造)
封口体101への正極接続体13および負極接続体14の固定構造について、図4(a)を用いて説明する。なお、図4(a)においてケース10の内部の構成は図示を省略している。また、図4(a)では負極外部端子12および負極接続体14の周辺構成だけを図示しているが、正極外部端子11および正極接続体13の周辺構成についても同様である。
【0031】
負極外部端子12は、負極外部パッキン16を介して封口体101の外面に配置されている。負極外部端子12はその一部に雄ねじが形成されている。負極外部端子12には、負極接続体14が取り付けられている。負極外部端子12は、負極接続体14の一部に設けられた貫通孔を貫通し、雄ねじが形成された部分がケースの外方に向かって突出している。
【0032】
封口体101には、負極外部端子12が配置された領域の近傍に、ケース10の外方に突出する負極側ボス29が設けられている。負極側ボス29は、負極接続体14および負極外部パッキン16に形成された孔を貫通している。負極側ボス29と負極接続体14との間には絶縁筒30が設けられ、負極側ボス29と負極接続体14は電気的に絶縁されている。負極側ボス29の内壁には雌ねじが形成されており、ワッシャ32を介して負極側雄ねじ20が結合されている。負極側ボス29の雌ねじに負極側雄ねじ20が係合させることで負極接続体14が封口体101に固定される。負極側ボス29は筒部であり、負極側ボス29とその内壁に結合された負極側雄ねじ20とは、封口体101の外面に突出する突起部を構成している。つまり、この突起部により、負極接続体14が封口体101に固定されている。
【0033】
封口体101への正極集電体21および負極集電体22の固定構造について、図4(b)を用いて説明する。なお、図4(b)においてケース10の外部の構成は図示を一部省略している。また、図4(b)では正極集電体21の周辺構成だけを図示しているが、負極集電体22の周辺構成についても同様である。
【0034】
封口体101には、その内面(裏面)に、ケース10の内方に向けて突出する負極側スタッド27が設けられている。負極側スタッド27は、負極集電体22および負極内部パッキン24に形成された孔を貫通している。負極側スタッド27と負極集電体22との間には絶縁筒31が設けられ、負極側スタッド27と負極集電体22は電気的に絶縁されている。負極側スタッド27の先端27aがかしめられることによって、負極集電体22が封口体101に固定されている。負極側スタッド27は突起部を構成している。つまりこの突起部により、負極集電体22が封口体101に固定されている。
【0035】
(5.ボスと雄ねじが構成する突起部およびスタッドが構成する突起部による効果)
負極側ボス29と負極側雄ねじ22が構成する突起部、および負極側スタッド27が構成する突起部を備える電池1が奏する効果について、図5を用い説明する。図5(a)は負極接続体14の固定部分を示す図であり、図5(b)は、図5(a)のD−D断面を模式的に示す図である。図5(c)は負極集電体22の固定部分を示す図であり、図5(d)は、図5(a)のE−E断面を模式的に示す図である。
【0036】
図5(a)に示すように、本実施の形態では、負極側ボス29およびこれに係合された負極側雄ねじ20は、負極外部端子12の近傍に設けられている。負極側ボス29および負極側雄ねじ20は、負極導電部材18と負極外部端子12との間の位置に設けられている。上述のように、負極側ボス29は封口体101の外面101aに接合されており、負極側ボス29および負極側雄ねじ20により負極接続体14は封口体101に固定されている。
【0037】
このように、負極接続体14は負極側ボス29および負極側雄ねじ20によって固定されているため、負極外部端子12に対して力や振動などが加わった場合であっても、負極導電部材18には直接力がかかりにくく、負極導電部材18の緩みが生じ難い。
【0038】
また、図5(c)、(d)に示すように、封口体101の内面101bには、ケース10の内方に突出する負極側スタッド27が接合されている。負極側スタッド27は、負極集電体22の屈曲部24eと負極導電部材18との間の位置に設けられている。負極集電体22は、負極側スタッド27によって封口体101に固定されている。
【0039】
このように、負極集電体22は、負極側スタッド27によって封口体101に固定されているため、電池1の移動などにより電極体25が上下左右に動き、負極集電体22に力が加わった場合であっても、負極導電部材18には直接力がかかりにくく、負極導電部材18の緩みが生じ難い。
【0040】
一方、上述のようなボスおよびネジが構成する突起部による固定構造を有していない従来の蓄電素子では、外部端子に力や振動などが加わった場合に、導電部材に力が伝わり、導電部材の緩みを生じる可能性がある。特に、接続体に鉛直方向(図5におけるZ軸方向)の力が加わった場合には、導電部材による固定部分を支点とする力が作用し、この繰り返しによりかしめ部の緩みが生じやすいと考えられる。
【0041】
同様に、上述のようなスタッドが構成する突起部による固定構造を有していない従来の蓄電素子では、電極体や集電体に力や振動などが加わった場合に、導電部材に力が伝わり、導電部材の緩みを生じる可能性がある。特に、集電体に鉛直方向(図5におけるZ軸方向)の力が加わった場合には、導電部材による固定部分を支点とする力が作用し、この繰り返しによりかしめ部の緩みが生じやすいと考えられる。
【0042】
(6.電池1の製造方法)
電池1は、概略、次のような工程を経て製造される。
(工程a)電極体25を作製する。電極体25の作製は、正極板272と負極板273とを、間にセパレータ271を挟んだ状態で対向させ、これを巻回し、さらに扁平化することでなされる。
(工程b)封口体101に対し、予め正極側ボス28、負極側ボス29および正極側スタッド26、負極側スタッド27等を接合しておく。そして、封口体101に対し、正極外部端子11,負極外部端子12、正極接続体13,負極接続体14、正極集電体21,負極集電体22などを取り付ける。正極導電部材17および負極導電部材18等のかしめ加工、正極側ボス28および負極側ボス29に対するネジの係合によって、正極接続体13および負極接続体14を封口体101に固定する。また、正極導電部材17および負極導電部材18等のかしめ加工、正極側スタッド26および負極側スタッド27の先端のかしめ加工により、正極集電体21および負極集電体22を封口体101に固定する。また、電極体25の正極板272の一部を正極集電体21に接続し、電極体25の負極板273の一部を負極集電体22に接続する。
(工程c)封口体101に取り付けられた状態の電極体25をケース本体102内に収納する。そして、ケース本体102と封口体101とを、例えば、レーザ溶接などにより接合する。
(工程d)ケース10に開けられた注液口から、電解質を注液し、その後、注液口を塞ぐことで電池1が完成する。
なお、工程bの一部については、工程cの実行の後に行うこともできる。
【0043】
(導電部材よる固定部分の組立方法)
正極導電部材17および負極導電部材18による固定部分の構成について、図6を用いて説明する。なお、図6では、負極導電部材18に係る工程だけを図示しているが、正極導電部材17に係る工程も同様である。
【0044】
図6に示すように、封口体101に開けられた貫通孔101cに対し、負極外部パッキン16、負極導電部材18のそれぞれ一部を挿入する。負極外部パッキン16には、負極導電部材18のフランジ部分18gが挿入される空間16aと、負極導電部材18の下筒部分18bが挿入される空間16bとが設けられている。負極外部パッキン16の空間16aと空間16bとは互いに連続している。負極導電部材18におけるフランジ部分18gの下面18iは、負極外部パッキン16の棚状の面16dに接触する。封口体101と負極導電部材18の下筒部分18bとは、間に負極外部パッキン16の筒部分16cが配置されることで電気的に絶縁される。
【0045】
負極導電部材18の上筒部分18aは、負極接続体14に設けられた貫通孔14aを貫通する。このとき、負極導電部材18の上筒部分18aの上端は、負極接続体14よりも上方(図6におけるZ軸プラス方向)に位置する。なお、負極導電部材18におけるフランジ部分18gの上面18hには、負極接続体14の下面が接触する。
【0046】
負極導電部材18の下筒部分18bは、負極内部パッキン24に設けられた貫通孔24bおよび負極集電体22に設けられた貫通孔22aを貫通する。
負極内部パッキン24の内面24cに対して負極集電体22のZ軸方向上面が接触する。また、負極導電部材18の下筒部分18bの下端は、負極集電体22よりも下方(図6におけるZ軸マイナス方向)に位置する。
【0047】
以上のような組み付けを行った後に、負極導電部材18における上筒部分18aおよび下筒部分18bに対して、例えば、スピニングかしめ加工を施し、負極導電部材18における上筒部分18aの凹部18cを囲む周壁の端部と、下筒部分18bの凹部18dを囲む周壁の端部を塑性変形させ、負極接続体14および負極集電体22を封口体101に固定する。
【0048】
(封口体への接続体および集電体の固定)
正極接続体13,負極接続体14および正極集電体21,負極集電体22の固定について、図7および図8を用いて説明する。図7および図8では、負極接続体14および負極集電体22の固定に係る工程だけを図示しているが、正極接続体13および正極集電体21の固定に係る工程も同様である。
【0049】
図7(a)に示すように、封口体101の外面101aに対し、負極側ボス29を接合する。負極側ボス29の接合方法については、特に限定を受けるものではないが、例えば、レーザ溶接や抵抗溶接、さらにはロウ付けなどを用いることができる。また、封口体101と一体に形成されていてもよい。
【0050】
負極側ボス29には、その内壁に予め雌ねじが形成されている。ただし、雌ねじの形成については、負極側ボス29を封口体101の外面101aに接合した後であってもよい。
【0051】
図7(b)に示すように、封口体101の内面101bに対し、負極側スタッド27を接合する。負極側スタッド27は、ここでは円柱状の部材であるが、楕円状や角柱状であってもよく、任意の形状とすることができる。負極側スタッド27の接合方法については、特に限定を受けるものではないが、例えば、レーザ溶接や抵抗溶接、さらにはロウ付けなどを用いることができる。また、封口体101と一体に形成されていてもよい。
【0052】
図8に示すように、封口体101に対し、負極側ボス29が接合された外面101aに対して負極外部パッキン16を被せ、負極側スタッド27が接合された内面101bに対して負極内部パッキン24を被せる。負極外部パッキン16には、負極側ボス29の接合位置に合わせて貫通孔16fが設けられており、負極内部パッキン24には、負極側スタッド27の接合位置に合わせて貫通孔26dが設けられている。負極側ボス29および負極側スタッド27は、それぞれ負極外部パッキン16および負極内部パッキン24の各貫通孔16f、26dを貫通する。
【0053】
負極外部端子12は、負極外部パッキン16に設けられた凹部16eに配置される。負極接続体14は、負極外部端子12と接触するように配置され、負極接続体14に設けられた貫通孔14bを負極側ボス29が貫通する。
絶縁筒30は、負極接続体14の貫通孔14bに挿入される。絶縁筒30は、負極接続体14の貫通孔14bの周壁と負極側ボス29との間に挿入され、筒内部の空間30aに負極側ボス29が挿入される。絶縁筒30の上にワッシャ32を配置し、その上から負極側雄ねじ20を負極側ボス29の内側に設けられた雌ねじに結合させる。
【0054】
負極内部パッキン24は、負極集電体22と封口体101との間に配置される。負極集電体22には、負極側スタッド27の接合位置に合わせて貫通孔24bが設けられている。負極集電体22の貫通孔22bの周壁と負極側スタッド27との間に絶縁筒31を挿入する。負極側スタッド27は、その先端が絶縁筒31よりもケースの内方に突出する。その後、負極側スタッド27の先端をかしめる。
【0055】
以上のようにして、負極接続体14および負極集電体22を封口体101に固定する。正極接続体13および正極集電体21の固定についても同様の方法で行われる。
【0056】
上記の実施形態のとおり、導電部材のかしめ部とケースとの間にパッキンが備えられており、前記パッキンに孔が形成され、前記孔にスタッド(突起部)が貫通している形態が好ましい。スタッドの先端をかしめる場合、その応力により、集電体がケース(封口体)に接触する恐れがあるため、スタッドの周りの集電体とケースとの間に絶縁スペーサを設ける必要がある。パッキンをスタッドまで延長させてパッキンに孔を設けることで、パッキンが絶縁スペーサの役割を果たすので、別途スペーサを設ける必要がない。
【0057】
図5(a)に示すとおり、ボス(突起部)は、外部端子と導電部材との間であり、外部端子の中心部と導電部材の中心部とを結ぶ線上(線D)に設けることが好ましい。また、図5(c)に示すとおり、スタッド(突起部)は、集電体の屈曲部と導電部材との間であり、前記屈曲部の幅方向の中心と導電部材の中心部と結ぶ線上(線E)に設けることが好ましい。
【0058】
[実施の形態2]
実施の形態2に係る電池の構成について、図9を用い説明する。図9では、上記実施の形態1との差異部分である、負極外部端子12の周辺構成だけを図示している。他の構成については、上記実施の形態1と同様である。
【0059】
図9に示すように、封口体101の外面に負極側外部フック41が設けられ、内面に負極側内部フック42が設けられている。負極側外部フック41は、その先端部分41aが鍵状に構成された突起部であり、負極側内部フック42も、その先端部分42aが鍵状に構成された突起部である。
負極接続体14に対しては、貫通孔を負極側外部フック41が貫通し、負極集電体22に対しては、貫通孔を負極側内部フック42が貫通している。なお、負極接続体14における貫通孔を臨む内壁には、絶縁筒43が挿入され、負極集電体22における貫通孔を臨む内壁には、絶縁筒44が挿入されている。絶縁筒43および絶縁筒44により、負極接続体14および負極集電体22は、封口体101に対して電気的に絶縁されている。
【0060】
負極側外部フック41は、その先端部分41aが、負極接続体14の上面に対して絶縁筒43を挟んだ状態で引っ掛けられている。また、負極側内部フック42は、その先端部分42aが、負極集電体22の下面に対して絶縁筒44を挟んだ状態で引っ掛けられている。
以上のような構成により、負極接続体14および負極集電体22は、封口体101に固定されている。
【0061】
なお、負極接続体14および負極集電体22の固定は、負極接続体14および負極集電体22の各貫通孔に負極側外部フック41および負極側内部フック42を通した後、負極接続体14および負極集電体22を図9中の矢印で示す方向にスライドさせて、負極導電部材18(不図示)をかしめ加工することでなされる。
【0062】
本実施の形態に係る構成は、封口体101へ負極接続体14および負極集電体22の固定に際して、製造に係る工数を低減することができる。このため、製造コストの低減を図るのに優位である。
【0063】
[実施の形態3]
実施の形態3に係る電池の構成について、図10を用い説明する。図10では、上記実施の形態1との差異部分である、負極外部端子12の周辺構成だけを図示している。他の構成については、上記実施の形態1と同様である。
【0064】
図10に示すように、封口体101の外面に負極側雄ねじ51が設けられている。負極側雄ねじ51は突起部である。負極接続体14に形成された貫通孔に負極側雄ねじ51が貫通されており、負極側雄ねじ51の先端部がナット52で締結されている。ナット52で負極側雄ねじ51の先端を締結することで負極接続体14が固定されている。なお、負極接続体14に形成された貫通孔の内壁には、絶縁筒53が挿入されており、絶縁筒53によって、負極側雄ねじ51と負極接続体14とは絶縁されている。
【0065】
本実施の形態では、ナット52で負極側雄ねじ51を締結するのみの容易な作業にて負極接続体14を固定することができる。
【0066】
[その他の事項]
上記実施の形態では、蓄電素子の一例として、角筒形状の外観を有する電池を採用することとした。しかし、本発明に係る蓄電素子は、このような電池に限定されるものではない。例えば、外観形状については、円筒形状の外観を有する蓄電素子や、ボタン形などの外観を有する蓄電素子、などとすることもできる。
【0067】
また、蓄電素子として、リチウムイオン電池の他に、ニッケルカドミウム二次電池やニッケル水素二次電池などの電池、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタなどのキャパシタなどを採用することもできる。
また、上記実施の形態では、電極体25として、いわゆる巻回構造の電極体を採用したが、電極体の形態はこれに限定されるものではない。例えば、正極と負極との間にセパレータを挟みながら交互に積層した、積層構造の電極体とすることもできる。
【0068】
また、上記実施の形態では、接続体や集電体に対する導電部材の固定方法について、一例としてスピニングかしめを採用したが、本発明はこれに限定を受けるものではない。かしめ以外の方法で固定しても良いし、かしめ加工であれば、例えば、Vカシメ、ハトメカシメ、バーリングカシメ、ダボカシメなどを採用することができる。
【0069】
上記実施の形態では、導電部材と電極体とを電気的に接続するものとして単一部材である集電体を示したが、複数の部材が接続されることにより一体化された集電体であってもよい。この場合、複数の部材の一つ以上を突起部で固定すれば良い。同様に、上記実施の形態では、導電部材と外部端子とを電気的に接続するものとして単一部材である接続体を示したが、複数の部材が接続されることにより一体化された接続体であってもよい。この場合、複数の部材の一つ以上を突起部で固定すれば良い。
【0070】
また、スタッドについては、種々のカシメ加工による塑性変形を以って固定が可能である。例えば、ブラインドリベットなどを用いることも可能である。また、ボスやスタッドなどの突起部を、封口体と別部材としてする必要は必ずしもない。例えば、プレス加工などで一体成型することとしてもよい。
【0071】
また、上記実施の形態1では、接続体がボスおよび雄ねじにより形成された突起部で固定され、かつ、集電体がスタッドにより形成された突起部で固定された構成を示したが、接続体のみが固定された構成を採用してもよいし、集電体のみが固定された構成を採用してもよい。また、正極のみを固定してもよいし、負極のみを固定してもよい。また、正極と負極とで固定の方法が異なっていてもよい。
【0072】
また、上記実施の形態1では、接続体がボスおよび雄ねじにより形成された突起部で固定された構成を示したが、接続体がスタッドで形成された突起部で固定されてもよい。また、同様に、上記実施の形態1では、集電体がスタッドにより形成された突起部で固定された構成を示したが、集電体がボスおよび雄ねじにより形成された突起部で固定されてもよい。
【0073】
また、上記実施の形態1では、雄ねじを有する外部端子を示したが、外部端子は雄ねじを有しておらず、接続体と外部端子とが一体化した板状部材を用いることができる。この場合、板状部材に直接、バスバーを接続する形態となるが、そのバスバーの接続箇所を外部端子とみなすことができ、接続体を突起部で固定する構成は本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、車両やモバイル機器など、使用中などに振動や力が加わる態様が想定される用途の蓄電素子の品質向上を図るのに特に有用である。
【符号の説明】
【0075】
1.電池
10.ケース
11.正極外部端子
12.負極外部端子
13.正極接続体
14.負極接続体
15.正極外部パッキン
16.負極外部パッキン
17.正極導電部材
18.負極導電部材
19.正極側雄ねじ
20.負極側雄ねじ
21.正極集電体
22.負極集電体
23.正極内部パッキン
24.負極内部パッキン
25.電極体
26.正極側スタッド
27.負極側スタッド
28.正極側ボス
29.負極側ボス
30,31,43,44、53.絶縁筒
32.ワッシャ
41.負極側外部フック
42.負極側内部フック
51.負極側雄ねじ
52.ナット
101.封口体
102.ケース本体
271.セパレータ
272.正極板
273.負極板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10