特許第6699135号(P6699135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6699135電気比抵抗検知装置およびソイルセメント体の品質管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6699135
(24)【登録日】2020年5月7日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】電気比抵抗検知装置およびソイルセメント体の品質管理方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20200518BHJP
   E02D 1/02 20060101ALI20200518BHJP
   G01R 27/02 20060101ALI20200518BHJP
【FI】
   E02D3/12 102
   E02D1/02
   G01R27/02 E
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-217685(P2015-217685)
(22)【出願日】2015年11月5日
(65)【公開番号】特開2017-89159(P2017-89159A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】谷口 勝基
(72)【発明者】
【氏名】森田 晃司
(72)【発明者】
【氏名】浜井 邦彦
【審査官】 湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−275369(JP,A)
【文献】 特開2010−024675(JP,A)
【文献】 特開2005−230710(JP,A)
【文献】 特開2012−036620(JP,A)
【文献】 特開2012−184559(JP,A)
【文献】 特開平09−033465(JP,A)
【文献】 特開平07−248327(JP,A)
【文献】 特開2005−098072(JP,A)
【文献】 特開2010−255381(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1517922(KR,B1)
【文献】 特開2002−180452(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1150956(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
E02D 1/02
G01R 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームおよびアームを備えるベースマシンの前記アームの先端に連結され、固化材吐出口と地盤中で鉛直方向に回転する複数の撹拌翼を備えたフレームを有する撹拌混合装置に設置される比抵抗計測器と、該比抵抗計測器を前記フレームに設置するための取付け部材と、地上に配置される地上管理装置とを備える電気比抵抗検知装置であって、
前記比抵抗計測器が、比抵抗センサと、少なくとも該比抵抗センサより得たデータ情報を伝送する地中側送受信器とを備えるとともに、
前記地上管理装置が、前記地中側送受信器より伝送された情報を受信する地上側送受信器を備え、
前記取付け部材が、電気絶縁材料よりなり、前記フレームに固定されるフレーム固定部と、前記比抵抗計測器を支持する支持部とを備えるとともに、
前記比抵抗センサの周囲に形成される測定空間内に前記撹拌混合装置が存在しないように、前記支持部と前記フレーム固定部との離間距離が確保されていることを特徴とする電気比抵抗検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気比抵抗検知装置において、
前記比抵抗計測器が、前記フレームの基端部側から先端側に向かって直列に複数配置されることを特徴とする電気比抵抗検知装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電気比抵抗検知装置を利用した、ソイルセメント体の品質管理方法であって、
対象地盤を前記撹拌混合装置にて掘削しつつセメント系固化材との撹拌混合を行って地中にソイルセメント体を築造し、前記電気比抵抗検知装置により深度方向に異なる複数の地点で、比抵抗実測値を測定するとともに、
予め、前記ソイルセメント体において地盤と前記セメント系固化材が均質に混合撹拌された状態の電気比抵抗を基準電気比抵抗として設定しておき、
複数の前記比抵抗実測値各々が、前記基準電気比抵抗を下回ったことを確認することを特徴とするソイルセメント体の品質管理方法。
【請求項4】
請求項3に記載のソイルセメント体の品質管理方法において、
対象地盤を、計画羽根切り回数を満足するよう前記撹拌混合装置にて掘削しつつ、前記セメント系固化材を計画吐出量を満足するよう吐出させて撹拌混合を行い、地中にソイルセメント体を築造しながら、前記電気比抵抗検知装置により、深度方向に異なる複数の地点で比抵抗実測値を測定する工程と、
該比抵抗実測値を測定した位置の近傍で前記ソイルセメント体を採取して、塩酸溶解熱法によりソイルセメント体中のセメント含有率を測定する工程とを、
前記採取したソイルセメント体各々のセメント含有率が、同一もしくは相互に近似する値となるまで繰り返し、
セメント含有率が同一もしくは相互に近似する値となった時点の、前記複数の比抵抗実測値の代表値を、前記基準電気比抵抗とすることを特徴とするソイルセメント体の品質管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に築造された未硬化状態のソイルセメント体に対して品質管理を行うための、電気比抵抗検知装置およびソイルセメント体の品質管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気比抵抗を測定するためのセンサを未硬化状態の地盤改良体に押し込み、電気比抵抗を測定して地盤とセメント系固化材の撹拌混合状態を把握する方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、センサをなす電極部が先端に備えられた比抵抗測定用先端治具を、地盤改良装置の掘削ロッド先端に取り付け、未硬化の地盤改良体に挿入する方法が開示されている。この方法では、地盤とセメント系固化材の混合撹拌作業終了後の状態を把握できるが、撹拌混合作業中にリアルタイムでその状態を把握することができない。
【0004】
このような中、特許文献2では、バックホウにトレンチャー式地盤改良機械を取り付け、不溶化剤を汚染土壌に吐出しつつ汚染土壌と攪拌混合を行いながら、トレンチャー式地盤改良機械に内蔵した監視用センサにて電気比抵抗を測定し、この電気比抵抗をモニタにて確認しつつ、不溶化剤の汚染土壌への浸透状況を監視する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−183434号公報
【特許文献2】特開2005−230710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2では、電気比抵抗を計測可能な監視用センサをトレンチャー式地盤改良機械に取り付けるための構造や、取り付け位置および取り付け方法が明示されていない。また、汚染土壌への不溶化剤の浸透状況について、電気比抵抗を用いてその良否を判定するための方法も明らかにされていない。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、地盤中にソイルセメント体を築造するにあたり、未硬化状態のソイルセメント体における地盤とセメント系固化材の撹拌混合状態を高精度に把握することの可能な、電気比抵抗検知装置、および電気比抵抗検知装置を利用したソイルセメント体の品質管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため、本発明の電気比抵抗検知装置は、ブームおよびアームを備えるベースマシンの前記アームの先端に連結され、固化材吐出口と地盤中で鉛直方向に回転する複数の撹拌翼を備えたフレームを有する撹拌混合装置に設置される比抵抗計測器と、該比抵抗計測器を前記フレームに設置するための取付け部材と、地上に配置される地上管理装置とを備える電気比抵抗検知装置であって、前記比抵抗計測器が、比抵抗センサと、少なくとも該比抵抗センサより得たデータ情報を伝送する地中側送受信器とを備えるとともに、前記地上管理装置が、前記地中側送受信器より伝送された情報を受信する地上側送受信器を備え、前記取付け部材が、電気絶縁材料よりなり、前記フレームに固定されるフレーム固定部と、前記比抵抗計測器を支持する支持部とを備えるとともに、前記比抵抗センサの周囲に形成される測定空間内に、前記撹拌混合装置が存在しないように、前記支持部と前記フレーム固定部との離間距離が確保されていることを特徴とする。
【0009】
上述する本発明の電気比抵抗検知装置によれば、撹拌混合装置にてソイルセメント体を築造しながらリアルタイムでソイルセメント体の電気比抵抗を測定することができるため、電気比抵抗を経時的に観測することにより、ソイルセメント体中における地盤とセメント系固化材の撹拌混合状態を常時把握することが可能となる。
【0010】
また、撹拌混合装置を撤去することなく電気比抵抗を測定できるため、即時に未硬化状態のソイルセメント体から電気比抵抗を測定できるとともに、電気比抵抗を測定するための作業を大幅に省略でき、施工時間を短縮することが可能となる。
【0011】
さらに、比抵抗計測器を撹拌混合装置のフレームに取り付けるための取付け部材が電気絶縁材料よりなるとともに、フレーム固定部と比抵抗計測器を支持する支持部との間隔が、比抵抗センサの周囲に形成される測定空間を内包することのできる間隔に設定される。これにより、比抵抗センサとして地中に電流を流して電気比抵抗を測定する電極式センサを採用する場合にも、測定空間に撹拌混合装置の一部が重なり合うことなく、ソイルセメント体の電気比抵抗を精度よく計測することが可能となる。
【0012】
本発明の電気比抵抗検知装置は、前記比抵抗計測器が、前記フレームの基端部側から先端側に向かって直列に複数配置されることを特徴とする。
【0013】
上述する本発明の電気比抵抗検知装置によれば、撹拌混合装置にて地中を掘削しつつセメント系固化材と撹拌混合しソイルセメント体を築造しながら、ソイルセメント体の深度方向に異なる複数地点で電気比抵抗を、同時にかつ断続的に測定することが可能となる。
【0014】
本発明のソイルセメント体の品質管理方法は、対象地盤を前記撹拌混合装置にて掘削しつつセメント系固化材との撹拌混合を行って地中にソイルセメント体を築造し、前記電気比抵抗検知装置により深度方向に異なる複数の地点で、比抵抗実測値を測定するとともに、予め、前記ソイルセメント体において地盤と前記セメント系固化材が均質に混合撹拌された状態の電気比抵抗を基準電気比抵抗として設定しておき、複数の前記比抵抗実測値各々が、前記基準電気比抵抗を下回ったことを確認することを特徴とする。
【0015】
上述する本発明のソイルセメント体の品質管理方法によれば、対象地盤の深度方向に対して、築造されたソイルセメント体の比抵抗実測値が基準電気比抵抗を下回ったことを確認するため、対象地盤の深度方向全域に基準電気比抵抗を満足する均質なソイルセメント体を築造することが可能となる。
【0016】
また、撹拌混合装置を撤去することなくソイルセメント体の品質管理を行えることから、ソイルセメント体の比抵抗実測値が基準電気比抵抗を下回らない場合には、即座に撹拌混合作業を繰り返し実施することができ、ソイルセメント体の品質を確保するための撹拌混合作業を効率よく実施することが可能となる。
【0017】
本発明のソイルセメント体の品質管理方法は、対象地盤を、計画羽根切り回数を満足するよう前記撹拌混合装置にて掘削しつつ、前記セメント系固化材を計画吐出量を満足するよう吐出させて撹拌混合を行い、地中にソイルセメント体を築造しながら、前記電気比抵抗検知装置により、深度方向に異なる複数の地点で比抵抗実測値を測定する工程と、該比抵抗実測値を測定した位置の近傍で前記ソイルセメント体を採取して、塩酸溶解熱法によりソイルセメント体中のセメント含有率を測定する工程とを、前記採取したソイルセメント体各々のセメント含有率が、同一もしくは相互に近似する値となるまで繰り返し、セメント含有率が同一もしくは相互に近似する値となった時点の、前記複数の比抵抗実測値の代表値を、前記基準電気比抵抗とすることを特徴とする。
【0018】
上述する本発明のソイルセメント体の品質管理方法によれば、基準電気比抵抗を、計画羽根切り回数を満足するまで前記セメント系固化材の計画吐出量と地盤とを撹拌混合して築造されたソイルセメント体の、均質さとセメント含有率を反映した数値に設定するため、比抵抗実測値と基準電気比抵抗を比較することで、対象地盤の深度方向全域に基準電気比抵抗を満足する、均質でかつセメント含有率の一様なソイルセメント体を築造することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電気比抵抗検知装置を利用することにより、撹拌混合装置にてソイルセメント体を築造しながらリアルタイムでソイルセメント体の電気比抵抗を測定することができるため、ソイルセメント体中における地盤とセメント系固化材の撹拌混合状態を常時高精度で把握することが可能となるとともに、対象地盤の深度方向全域に基準電気比抵抗を満足する均質なソイルセメント体を築造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の電気比抵抗検知装置の概略を示す図である。
図2】本発明の比抵抗計測器の詳細を示す図である。
図3】本発明の比抵抗計測器の他の事例の概略を示す図である。
図4図3で示す比抵抗計測器の詳細を示す図である。
図5図3で示す比抵抗計測器の設置状況を示す図である。
図6】第1の実施の形態における対象地盤の平面視領域を示す図である。
図7】第1の実施の形態におけるソイルセメントの品質管理方法に用いる深さごとの比抵抗実測値と基準電気比抵抗との関係を示す図である。
図8】基準電気比抵抗の設定方法を示す図である。
図9】第2の実施の形態における対象地盤の平面視領域を示す図である。
図10】第2の実施の形態における対象地盤の深度領域を示す図である。
図11】第2の実施の形態におけるソイルセメントの品質管理方法に用いる深さごとの比抵抗実測値と基準電気比抵抗との関係を示す図である。
図12】比抵抗センサの他の事例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の電気比抵抗検知装置は、地盤を掘削しつつセメント系固化材と撹拌混合し地中にソイルセメント体を築造する際に、電気比抵抗を利用して未硬化状態のソイルセメント体における地盤とセメント系固化材との撹拌混合状態を把握し、ソイルセメント体の均質さを管理するための装置である。地盤中にソイルセメント体を築造する工法としては、地盤改良工法や汚染土壌不溶化処理工法等いずれでもよいが、本実施の形態では、地盤改良工法の中でも地盤の中層(約1〜13m)を改良する中層混合処理工法を事例とし、電気比抵抗検知装置およびソイルセメント体の品質管理方法を、図1図12を参照して詳述する。
【0022】
〈電気比抵抗検知装置〉
まず、本実施の形態における電気比抵抗検知装置1を、図1図5を参照して以下に説明する。
【0023】
電気比抵抗検知装置1は、図1で示すように、地盤改良機8の撹拌混合装置6に設置される比抵抗計測器21、22と、地上に配置される地上管理装置5とを備え、比抵抗計測器21、22と地上管理装置5との間で無線もしくは有線にてデータ通信が可能に構成されている。
【0024】
なお、撹拌混合装置6は、ブーム71およびアーム72を備えたバックホウ等よりなるベースマシン7のアーム72の先端に、基端部が回動自在に装着されたフレーム61を備えたもので、図2で示すように、フレーム61の先端部の左右両側に、地中で鉛直方向に回転する大径の攪拌翼62を取り付けた、いわゆるロータリー式の撹拌混合装置6である。大径の撹拌翼62の上部及び下部にはそれぞれ、図示しない固化材吐出口が設けられており、グラウトポンプ等により圧送されてきたスラリー状のセメント系固化材Mが吐出される。
【0025】
ロータリー式の撹拌混合装置6は、図1で示すように、ベースマシン7にて推力を加えられて地中に貫入されるとともに、図示しない油圧モータにて大径の撹拌翼62が鉛直方向に回転しながら地盤の掘削・撹拌を行う。このとき、地中への貫入時には撹拌翼62の下部に設けた固化材吐出口より、地上への引抜き時には撹拌翼62の上部に設けた固化材吐出口より、地中に向けてセメント系固化材Mを吐出させることで、セメント系固化材Mと地盤とが撹拌翼62により撹拌混合され、地中にはソイルセメント体Sが築造される。
【0026】
上述する構成の撹拌混合装置6に設置する比抵抗計測器21、22は、地中側送受信器が収納される中空円柱状の耐圧ケース3と、該耐圧ケース3の一方の端部に接続される比抵抗センサ4とを備えてなり、耐圧ケース3に地中側送受信器として、無線送受信アンテナ31を収納した無線比抵抗計測器21、もしくは有線送受信器35を収納した有線比抵抗計測器22のいずれかを採用することができる。本実施の形態では、図2で示すように無線比抵抗計測器21を採用することとし、有線比抵抗計測器22の詳細については、後述する。
【0027】
比抵抗センサ4は、撹拌混合装置6にて築造されるソイルセメント体S中の電気比抵抗を測定するものであり、本実施の形態では、比抵抗センサ4に電極式センサを採用している。具体的には図2で示すように、外側に位置する2つの極41、41に対して電流を印加し、内側に位置する2つの極42、42でソイルセメント体Sの電位をリアルタイムに測定する、いわゆる4極法(ウェンナー配置)にて構成され、測定された電位は、耐圧ケース3に備えたデータロガー34にて比抵抗実測値に換算される。
【0028】
耐圧ケース3は、土圧が作用しても変形することのない強度を備えており、その内周面に沿ってコイル状の無線送受信アンテナ31が配置され、該無線送受信アンテナ31の内方には、比抵抗センサ4に電流を印加するためのバッテリ32、通信回路33、およびデータロガー34が収納されている。データロガー34は、比抵抗センサ4から伝送された電位に関する電気信号を電気比抵抗に換算し、比抵抗実測値として記録する。データロガー34に記録された比抵抗実測値は、データ情報として無線送受信アンテナ31を介して、後に述べる図1で示すような地上管理装置5に伝送される。
【0029】
上述する比抵抗センサ4を備えた無線比抵抗計測器21は、撹拌混合装置6のフレーム61に、電気絶縁材料よりなる取付け部材9を介してフレーム61からの距離を十分確保して設置されている。比抵抗センサ4は、外側に位置する2つ極41、41間を直径とする半円内であって比抵抗センサ4の周囲360度の領域内に電流を流し、この範囲内に位置するソイルセメント体Sの電位を測定するものである。したがって、この電流が流れる測定空間内に、撹拌混合装置6の一部を存在しないよう十分な距離を確保することにより、比抵抗センサ4にてソイルセメント体Sの正確な電位を測定することが可能となる。よって、撹拌混合装置6と比抵抗センサ4との間に電気比抵抗を測定するための測定空間を内包できるよう、取付け部材9において比抵抗計測器2を支持する支持部91とフレーム61に固定されるフレーム固定部92との離間距離を確保するとよい。なお、取付け部材9として用いる材料は、電気絶縁材料であればいずれを採用してもよい。
【0030】
また、フレーム61に対する無線比抵抗計測器21の配置位置は、撹拌翼62の近傍に配置されていればいずれでもよいが、本実施の形態では、図1で示すように、引抜き掘進時の掘進方向に対して撹拌翼62の後方側であって、撹拌翼62の幅内に配置している。これは、ソイルセメント体Sにおける地盤とセメント系固化材Mの混合ムラが、撹拌翼62の幅内であって掘進方向の後方側に生じやすいことを考慮したものである。このような悪条件の環境下に位置するソイルセメント体Sの電気比抵抗を測定することで、未硬化状態のソイルセメント体における地盤とセメント系固化材Mとの撹拌混合状態を安全側で評価し、ソイルセメント体Sの品質管理方法の信頼性を向上させている。
【0031】
このように、地盤改良機8にロータリー式の撹拌混合装置6を採用した場合には、撹拌混合装置6に対して無線比抵抗計測器21を1体のみ設けたが、地盤改良機8に、図3で示すようなトレンチャー式の撹拌混合装置6を採用する場合には、比抵抗計測器21、22を複数設置するとよい。
【0032】
なお、トレンチャー式の撹拌混合装置6は、ベースマシン7のアーム72の先端に、基端部が回動自在に装着されたフレーム61を備えたもので、図4及び図5で示すように、フレーム61の上部の駆動輪63と下部の従動輪64との間に、等間隔で複数の撹拌翼66が装着された無端チェーン65が巻き掛けられている。また、フレーム61の下部には固化材吐出口(図示せず)が設けられており、グラウトポンプ等により圧送されたスラリー状のセメント系固化材Mが吐出される。
【0033】
トレンチャー式の撹拌混合装置6は、図3で示すように、ベースマシン7に推力を加えられて地中に貫入されるとともに、図示しない油圧モータにて駆動輪63を介して無端チェーン65が回転される。これにより、無端チェーン65に装着された複数の撹拌翼66は、フレーム61の外周を鉛直方向に周回移動しながら地盤の掘削・撹拌を行う。このとき、撹拌混合装置6を地中へ貫入後、横行移動させながら固化材吐出口よりセメント系固化材Mを吐出させることで、セメント系固化材Mと地盤とが撹拌翼66により撹拌混合され、地中にはソイルセメント体Sが築造される。
【0034】
このようなトレンチャー式の撹拌混合装置6に設置される複数の比抵抗計測器21、22として、本実施の形態では図4で示すように、1体の無線比抵抗計測器21と、無線比抵抗計測器21を構成する耐圧ケース3の他方の端部に連結され、直列に配置される3体の有線比抵抗計測器22と採用している。したがって、トレンチャー式の撹拌混合装置6には、比抵抗センサ4が合計4つ備えられることとなるが、直列に配置される比抵抗計測器21、22の数量はこれに限定されるものではない。
【0035】
有線比抵抗計測器22は、耐圧ケース3に有線送受信器35を内装する点で無線比抵抗計測器21と異なるものの、その他は無線比抵抗計測器21と同様の構造を備えている。なお、本実施の形態では、有線送受信器35を無線比抵抗計測器21の無線送受信アンテナ31にそれぞれ有線接続させている。こうすると、有線比抵抗計測器22に備えた比抵抗センサ4より得られた電気信号は、データロガー34を介して各々の有線送受信器35から、有線で無線送受信アンテナ31に伝送される。これにより、複数の比抵抗センサ4にて得られた比抵抗実測値に係る各データ情報は、無線比抵抗計測器21の無線送受信アンテナ31にて一括して地上管理装置5の地上側送受信器51に伝送することができる。
【0036】
上述する複数の比抵抗計測器21、22のうち、無線比抵抗計測器21はフレーム61の最も基端部側に位置するよう、また直列に配置される複数の有線比抵抗計測器22はフレーム61の長手方向に沿って先端側に向かって延在するように配置する。これにより、ソイルセメント体Sに対して、深度方向に異なる複数地点で比抵抗実測値を測定することが可能となる。また、最も地表側に無線比抵抗計測器21が位置するため、複数の比抵抗センサ4にて得られた比抵抗実測値に係る各データ情報を、確実に地上管理装置5に伝送することが可能となる。さらに、図4で示すように、フレーム61の最も先端側に配置する有線比抵抗計測器22を、比抵抗センサ4がフレーム61の先端側に位置するよう、他の有線比抵抗計測器22と上下を逆転させて配置すると、ソイルセメント体Sの最深部近傍の比抵抗実測値を測定することが可能となる。
【0037】
そして、これら比抵抗計測器21、22の撹拌混合装置6に対する取り付けは、図5で示すように、撹拌混合装置6のフレーム61に取り付け部材9を介してフレーム61から離間するように設置する。また、その配置位置は、撹拌翼66の近傍であればいずれでもよいが、無端チェーン65の内側領域であって、撹拌翼66における掘進方向の後方側で、撹拌翼66の幅内に配置するとよい。なお、本実施の形態では、撹拌混合装置6の掘進方向が図4における右方向の場合および左方向の場合の両方に対応するよう、掘進方向と直交する方向からみたフレーム61の両側にそれぞれ比抵抗計測器2を配置している。さらに、図5で示すように、比抵抗計測器2を掘進方向からみたフレーム61の両側にも設置し、合計4体の比抵抗計測器2を設置している。
【0038】
このとき、取付け部材9における比抵抗計測器21、22を支持する支持部91と、フレーム61に固定されるフレーム固定部92との離間距離は、先にも述べたように、撹拌混合装置6と比抵抗センサ4との間に形成される電気比抵抗を測定するための測定空間を内包できる間隔を確保することは言うまでもない。
【0039】
一方、図1または図3で示すように電気比抵抗検知装置1の地上管理装置5は、地中に位置する無線送受信アンテナ31または有線送受信器35から伝送されたデータ情報を受信する地上側送受信器51と、地上側送受信器51が受信したデータ情報を比抵抗実測値として記録する管理端末装置52を備える。管理端末装置52は、ベースマシン7に搭載されている車載端末装置73および工事事務所等に設置される事務所端末装置(図示せず)とインターネット通信網を介して通信接続されており、相互に各種情報を送受信できる構成を有している。管理端末装置52、車載端末装置73および事務所端末装置はいずれも、演算処理装置及び記憶装置等のハードウェアと該ハードウェア上で動作するソフトウェアとで構成される情報処理装置と、情報処理装置に種々のデータを入力する通信装置やキーボード等の入力装置と、情報処理装置で行われた演算処理結果をリアルタイムで出力するディスプレイ及び記憶装置等からなる出力装置を備えている。
【0040】
上述する電気比抵抗検知装置1は、撹拌混合装置6にてソイルセメント体Sを築造しながらリアルタイムでソイルセメント体Sの比抵抗実測値を測定することができるため、比抵抗実測値を経時的に観測することにより、ソイルセメント体S中における地盤とセメント系固化材Mの撹拌混合状態を常時把握することが可能となる。
【0041】
また、撹拌混合装置6を撤去することなく比抵抗実測値を測定するため、即時に未硬化状態のソイルセメント体Sから比抵抗実測値を測定できるとともに、比抵抗実測値を測定するための作業を大幅に省略でき、施工時間を短縮することが可能となる。
【0042】
〈ソイルセメント体の品質管理方法〉
次に、電気比抵抗検知装置1を用いたソイルセメント体Sの品質管理方法を、地盤改良機8に、図3で示すようなトレンチャー式の撹拌混合装置6を用いた場合を第1の実施の形態として、また、図1で示すようなロータリー式の撹拌混合装置6を用いた場合を第2の実施の形態として、以下に説明する。
【0043】
〈第1の実施の形態〉
トレンチャー式の撹拌混合装置6によるソイルセメント体Sの品質管理方法は、図6で示すように地盤改良対象領域における平面視領域N1を複数の平面視区画に区割りし、平面視区画ごとに地中に築造されたソイルセメント体Sの比抵抗実測値が、図7で示すグラフのように、その深度方向全域にわたって基準電気比抵抗Lを下回っていることを確認する方法である。
【0044】
〈第1の実施の形態:地盤改良対象領域における平面視領域N1の区割り〉
地盤改良対象領域における平面視領域N1を区割りするにあたり、その区割り間隔はいずれでもよいが、本実施の形態では横線間、縦線間を同一のピッチP1、P2に設定し、ピッチP1、P2を撹拌翼66の幅と略同一の大きさに設定することとした。なお、ピッチP1、P2を撹拌翼66の幅より小さく設定すると、平面視領域N1において撹拌混合掘削装置6の通過もれ領域がなくなり、品質管理の信頼性はより向上する。
【0045】
これら平面視領域N1の区割り情報は、地盤改良対象領域の位置情報と関連付けが行われて、少なくとも車載端末装置73の記憶装置に格納される。ここで、地盤改良対象領域の位置情報は、グローバル座標系上の3次元情報であり、地盤改良機8には図示しないが、ベースマシン7の旋回軸から見た撹拌混合装置6の先端位置を検出するための複数のチルトセンサ、ベースマシン7の現在位置を検出するGNSSアンテナ、およびGNSSアンテナの現在位置情報を算出して記憶するコントローラを装備している。
【0046】
そして、チルトセンサより得られる情報から、車載端末装置73の情報処理装置に備えた演算処理装置にて、ベースマシン7の旋回軸からみた撹拌混合装置6の先端位置および基端位置が算定され、車載端末装置73の記憶装置に格納される。同様に、コントローラに記憶されたベースマシン7の現在位置情報も、車載端末装置73の記憶装置に格納される。これにより、車載端末装置73には、グローバル座標系上における地盤改良対象領域の3次元位置情報および平面視領域N1の区割り情報、地盤改良機8の現在位置、および撹拌混合装置6の基端位置(地中貫入位置)および先端位置が出力可能となる。
【0047】
したがって、地盤改良機8のオペレーターは車載端末装置73の出力装置にて、図6で示すように、地盤改良対象領域における平面視領域N1を複数の平面視区画で区割りした状態を視認することができるとともに、撹拌混合装置6の基端位置つまり地中貫入位置が、複数の平面視区画のうちのいずれの位置にあるかを視認することが可能である。
【0048】
〈第1の実施の形態:基準電気比抵抗Lの設定〉
また、基準電気比抵抗Lは、地盤改良対象領域に築造された未硬化状態のソイルセメント体Sにおける、地盤とセメント系固化材Mとの撹拌混合状態を評価するための指標であり、地盤改良予定地盤ごとで設定する。
【0049】
基準電気比抵抗Lの設定方法としては、複数の平面視区画から任意に選択した1区画に撹拌混合装置6を挿入し、あらかじめ施工計画に基づいて算定した平面視区画1区画あたりのセメント系固化材Mの計画吐出量と計画羽根切り回数にて、地盤を掘削しつつセメント系固化材Mと撹拌混合する。なお、セメント系固化材Mは、単位あたりのセメント添加量が管理され、地盤改良機8は、セメント系固化材Mの時間あたり吐出量と無端チェーン65の回転速度が管理されるだけでなく、セメント系固化材Mの時間あたり吐出量と無端チェーン65の回転速度を勘案した撹拌混合装置6の横行移送速度も管理される。したがって、任意に選択した1区画に対して撹拌混合装置6を、上記の管理値を維持しつつ平面視区画1区画あたりのセメント系固化材Mの計画吐出量と計画羽根切り回数を満足するのに必要な時間Δt1で横行移動させればよい。
【0050】
撹拌混合装置6が横行移動する間、ソイルセメント体Sにおける深度方向に異なる複数地点の電気比抵抗に関するデータ情報が、複数の比抵抗計測器21、22から地上管理装置5へ伝送され、リアルタイムで管理装置端末52および車載管理端末73に比抵抗実測値として表示される。本実施の形態では、図8に示すグラフのように、比抵抗センサ4が合計10個備えられており、比抵抗実測値は時間を追うごとにその値が小さくなるとともに、深度方向のばらつきも小さくなる。これは、ソイルセメント体S中のセメント含有率が増大するほど電気比抵抗が小さくなること、および時間が経過するに伴って地盤とセメント系固化材Mの撹拌混合状態が良好になることによるものである。
【0051】
時間Δt1が経過したところで撹拌混合装置6を一旦停止し、深さ方向に異なる複数地点で測定された比抵抗実測値から代表値を算定し、これを基準電気比抵抗Lとして設定する。なお、代表値の算定方法はなんら限定されるものではなく、いずれの統計手法を採用してもよい。また、基準電気比抵抗Lを設定するにあたっては、比抵抗実測値を測定した深さ方向に異なる複数地点各々のセメント含有率が同一もしくは相互に近似していることを確認する。
【0052】
具体的には、時間Δt1だけ撹拌混合した後のソイルセメント体S中にサンプラーを挿入し、比抵抗センサ4各々の近傍でソイルセメント体Sのサンプルを採取する。そして、採取したサンプルに塩酸を添加混合し、その上昇温度を検出することでセメント含有率を測定する塩酸溶解熱法にて、採取したサンプル各々のセメント含有率を測定し、セメント含有率が規定の変動幅内に収まっているかを確認する。
【0053】
なお、各サンプルのセメント含有率が規定の変動幅内に収まらない場合には、セメント系固化材Mがいずれかに流亡しているものと判断し、再度撹拌混合装置6による撹拌混合作業を再開し、比抵抗実測値を算定する作業とセメント含有率を確認する作業を繰り返す。こうして設定された基準電気比抵抗Lは、車載端末装置73の出力装置に出力できるよう、車載端末装置73の記憶装置に格納しておく。
【0054】
〈第1の実施の形態:ソイルセメントの品質管理方法の手順〉
地盤改良工事を実施するにあたり、地盤改良機8の車載端末装置73には、図6で示すような、平面視領域N1を複数の平面視区画に区割りした地盤改良対象領域上で、撹拌混合装置6の貫入位置が把握できる画像と、図7で示すような、ソイルセメント体Sの深度方向の比抵抗実測値と基準管理値Lを比較可能なグラフを表示させる。
【0055】
これにより、地盤改良機8のオペレーターは、車載端末装置73の出力装置を視認しながら地盤改良対象領域に対して地盤改良工事を実施する。つまり、図6で示す平面視区画(1−1)に、セメント系固化材Mを吐出しながら撹拌混合装置6の鉛直掘進を行う。先端が改良予定の深度に到達した時点で、セメント系固化材Mの時間あたり吐出量、無端チェーン65の回転速度、および横行移動速度を施工計画に基づいた管理値に維持した状態で、図3で示すように、横行移動しながら地盤改良を行う。これと同時に、電気比抵抗検知装置1にて深度方向に異なる複数地点の比抵抗実測値を断続的に測定し、車載端末装置73に表示する。
【0056】
撹拌混合装置6が平面視区画(1−1)を通過する途中で、図7で示すように、深度方向に異なる複数地点の比抵抗実測値全てが基準電気比抵抗Lを下回った場合には、ソイルセメント体S中における地盤とセメント系固化材Mが、深度方向全域で基準電気比抵抗Lを算定した際のソイルセメント体Sと同程度の均質な状態に撹拌混合され、かつ一様なソイルセメント含有率になったものと判断する。したがって、そのまま撹拌混合装置6を通過させて隣接する平面視区画(1−2)へ移動させる。
【0057】
一方、平面視区画(1−1)を通過中に、複数の比抵抗実測値全てが基準電気比抵抗Lを下回らない場合には、ソイルセメント体S中における地盤とセメント系固化材Mが均質に撹拌混合されていないものと判断し、撹拌混合装置6の横行移動速度を制御する。つまり、撹拌混合装置6の横行移動速度を低速にする、もしくは停止するなどして、比抵抗実測値が基準電気比抵抗Lを下回るまで、撹拌混合装置6が平面視区画(1−2)への横行移動しないよう制御する。
【0058】
こうして、複数の平面視区画ごとでソイルセメント体Sの品質管理を行いながら、図6で示すように、撹拌混合装6を1列目から6列目までN字状に横行移動させて地盤改良を行う。なお、撹拌混合装6の横行移動速度の制御は、例えば、オペレーターが車載端末装置73を目視確認しながら手動で行ってもよいし、車載端末装置73に表示される比抵抗実測値と基準電気比抵抗Lとの関係に応じて撹拌混合装置6の横行移動速度を自動制御できるシステムを導入し、横行移動速度の自動制御を行うようにしてもよい。
【0059】
〈第2の実施の形態〉
ロータリー式の撹拌混合装置6は、図9で示すような平面視領域N1内において、1区画ごとに貫入及び引抜きの動作を行い、これをすべての平面視区画において実施することで地盤改良を行う装置である。そこで、図10で示すように、ロータリー式の撹拌混合装置6には1つの無線比抵抗計測器21を設置し、地盤改良対象領域における深度領域N2を複数の深度区画に区割りする。そして、ロータリー式の撹拌混合装置6の引抜き移動時に複数の深度区画ごとで比抵抗実測値を測定することにより、平面視区画内で深度方向に異なる複数地点の比抵抗実測値を把握することする。
【0060】
〈第2の実施の形態:対象地盤における深度領域N2の区割り〉
地盤改良対象領域における深度領域N2を区割りするにあたり、その区割り間隔はいずれでもよいが、本実施の形態では、平面視領域N1の横線間および縦線間のピッチP1およびP2と深度領域N2の深さのピッチP3を同じ大きさとし、撹拌翼62の幅と略同一の大きさに設定している。
【0061】
これら深度領域N2の区割り情報は平面視領域N1の区割り情報と同様に、地盤改良対象領域の位置情報と関連付けが行われて、少なくとも車載端末装置73の記憶装置に格納される。したがって、地盤改良機8のオペレーターは車載端末装置73の出力装置にて、図10で示すような、地盤改良対象領域の深度領域N2を複数の深度区画で区割りした状態で視認できるととともに、撹拌混合装置6の先端位置が、複数の深度区画のうちのいずれの位置にあるかを視認することが可能である。
【0062】
〈第2の実施の形態:基準電気比抵抗Lの設定〉
また、基準電気比抵抗の設定方法にあたっては、ロータリー式の撹拌混合装置6は地中貫入時に撹拌翼62の下側固化材吐出口より、引抜き時に撹拌翼62の上側固化材吐出口よりそれぞれセメント系固化材Mが吐出され、時間あたり吐出量がそれぞれ管理されている。また、撹拌翼62の回転速度と、セメント系固化材Mの時間あたり吐出量及び撹拌翼62の回転速度を勘案した鉛直移動速度も管理される。したがって、任意に選択した平面視区画1区画に対して撹拌混合装置6を、上記の管理値を維持しつつ平面視区画1区画あたりのセメント系固化材Mの計画吐出量と計画羽根切り回数を満足するのに必要な貫入時間Δt2および引抜時間Δt3で、鉛直方向に往来させればよい。
【0063】
撹拌混合装置6が鉛直移動する間、深度区画ごとでソイルセメント体Sの電気比抵抗に関するデータ情報が、比抵抗計測器2から地上管理装置5へ伝送され、リアルタイムで管理装置端末52および車載管理端末73に比抵抗実測値として表示される。そして、貫入時間Δt2および引抜時間Δt3が経過して撹拌混合装置6が引き抜かれたところで、図11で示すように、深度区画ごとに測定された複数の電気比抵抗から代表値を算定し、これを基準電気比抵抗Lとして設定する。
【0064】
このとき、ソイルセメント体S中にサンプラーを挿入し、深度区画ごとでソイルセメント体Sのサンプルを採取し、第1の実施の形態と同様に、塩酸溶解熱法にて採取したサンプル各々のセメント含有率を測定し、セメント含有率が規定の変動幅内に収まっているかを確認する。そして、各サンプルのセメント含有率が規定の変動幅内に収まらない場合には、セメント系固化材Mがいずれかに流亡しているものと判断し、再度撹拌混合装置6による撹拌混合作業を再開し、比抵抗実測値を算定する作業とセメント含有率を確認する作業を繰り返す。こうして設定された基準電気比抵抗Lを、車載端末装置73の記憶装置に格納しておく。
【0065】
〈第2の実施の形態:ソイルセメントの品質管理方法の手順〉
そして、地盤改良工事を実施するにあたり、地盤改良機8の車載端末装置73には、図9で示すような、平面視領域N1を複数の平面視区画に区割りした地盤改良対象領域上で、撹拌混合装置6の貫入位置が把握できる画像と、図10で示すような、深度領域N2を複数の深度区画に区割りした地盤改良の対象地盤内で撹拌混合装置6の先端位置が把握できる画像と、図7で示すような、ソイルセメント体Sの深度方向の比抵抗実測値と基準管理値Lを比較可能なグラフを表示させる。
【0066】
これにより地盤改良機8のオペレーターは、上記の画面を視認しながら地盤改良対象領域に対して地盤改良工事を実施する。つまり、図9で示す平面視区画(1)に撹拌混合装置6を貫入し、セメント系固化材Mの時間あたり吐出量と撹拌翼62の回転速度、および鉛直掘進速度を施工計画に基づいた管理値に維持した状態で、深度方向に貫入掘進しながら地盤改良を行う。撹拌混合装置6が図10で示す最下に位置する深度区画(6)の撹拌混合を終えたところで、貫入時と同様の管理状態で、深度方向に引抜き掘進しながらセメント系固化材Mのさらなる撹拌混合を行う。これと同時に、電気比抵抗検知装置1にて深度区画ごとの比抵抗実測値を測定し、車載端末装置73に表示する。
【0067】
撹拌混合装置6が最下の深度区画(6)を貫入通過後、引抜き通過する途中で、深度区画(6)の比抵抗実測値が基準電気比抵抗Lを下回った場合には、深度区画(6)内のソイルセメント体Sが基準電気比抵抗Lを算定した際のソイルセメント体Sと同程度の均質さ及びソイルセメント含有率になったものと判断する。したがって、そのまま撹拌混合装置を引抜き掘進させ、直上の深度区画(5)へ移動させる。
【0068】
一方、深度区画(6)を引抜き通過中に、深度区画(6)の比抵抗実測値が基準電気比抵抗Lを下回らない場合には、ソイルセメント体S中のセメント系固化材Mが均質に撹拌混合されていないものと判断し、撹拌混合装置6の鉛直掘進速度を制御する。つまり、撹拌混合装置6の鉛直掘進速度を低速にする、もしくは停止するなどして、比抵抗実測値が基準電気比抵抗を下回るまで撹拌混合装置6が深度区画(5)への引抜き掘進しないよう制御する。
【0069】
こうして、地盤改良対象領域の平面視領域N1に区画された複数の平面視区画について深度区画ごとで、基準電気比抵抗Lによるソイルセメント体Sの品質管理を行いながら、図7で示すように、撹拌混合装6を平面視区画(1)から平面視区画(30)まで貫入および引抜きを繰り返して地盤改良を行う。なお、撹拌混合装置6の鉛直掘進速度の制御は、例えば、オペレーターが車載端末装置73を目視確認しながら手動で行ってもよいし、車載端末装置73に表示される比抵抗実測値と基準電気比抵抗Lとの関係に応じて撹拌混合装置6の鉛直掘進速度を自動制御できるシステムを導入し、横行移動速度の自動制御を行うようにしてもよい。
【0070】
また、第2の実施の形態では、撹拌混合装置6の引抜き掘進時において基準電気比抵抗Lを設定し管理を行ったが、必ずしもこの方法に限定されるものではなく、貫入移動時における基準電気比抵抗Lを設定し、撹拌混合装置6の貫入移動時および引抜き掘進時の両者で、ソイルセメント体Sの品質管理を行ってもよい。
【0071】
このように、ソイルセメント体Sの品質管理方法によれば、深度方向全域に基準電気比抵抗Lを満足する均質で一様なセメント含有率のソイルセメント体Sを、平面視区画ごとに築造できるため、これをすべての平面視区画に実施することで、地盤改良対象領域全域に基準電気比抵抗Lを満足する均質で一様なセメント含有率のソイルセメント体Sを築造することが可能となる。
【0072】
また、撹拌混合装置6を撤去することなくソイルセメント体Sの品質管理を行えることから、ソイルセメント体Sの比抵抗実測値が基準電気比抵抗Lを下回らない場合には、即座に撹拌混合作業を繰り返し実施することができ、ソイルセメント体Sの品質を確保するための撹拌混合作業を効率よく実施することが可能となる。
【0073】
本発明の電気比抵抗検知装置1およびソイルセメント体の品質管理方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0074】
例えば、本実施の形態では、比抵抗センサ4に電極式センサを採用したが、必ずしも上記の構成に限定されるものではなく、例えば、電磁誘導法センサを採用してもよい。
【0075】
電磁誘導法による比抵抗センサ4は、図12で示すような、重ねあわせた励起トロイダルコイル43および検出トロイダルコイル44を、テフロン(登録商標)のような耐食性の高い材料よりなる絶縁物45で被覆したものである。これを、ソイルセメント体S中に挿入した状態で励起トロイダルコイル43に備えた図示しない一次コイルに交流電圧を印加すると、ソイルセメント体S中に形成される回路に誘導電流46が流れ、同時に検出トライダルコイル44に備えた図示しない2次コイルに誘導電流46に比例した電圧が発生する。この電圧を測定することで、電気比抵抗の逆数であるソイルセメント体Sの導電率を算出することが可能である。
【0076】
また、本実施の形態では、トレンチャー式の撹拌混合装置6に複数の比抵抗計測器21、22を設置するにあたり、無線比抵抗計測器21と有線比抵抗計測器22とを併用して採用したが、これに限定されるものではなく、すべてに無線比抵抗計測器21を採用してもよいし、すべてに有線比抵抗計測器22を採用してもよい。このような場合には、複数の比抵抗計測器21、22各々の比抵抗センサ4にて得られた比抵抗実測値に係る各データ情報を、地上管理装置5の地上側送受信器51に個々で伝送すればよい。
【符号の説明】
【0077】
1 電気比抵抗検知装置
21 無線比抵抗計測器(比抵抗計測器)
22 有線比抵抗計測器(比抵抗計測器)
3 耐圧ケース
31 無線送受信アンテナ(地中側送受信器)
32 バッテリ
33 通信回路
34 データロガー
35 有線送受信器(地中側送受信器)
4 比抵抗センサ
41 外側に位置する極
42 内側に位置する極
43 励起トロイダルコイル
44 検出トロイダルコイル
45 絶縁物
46 誘導電流
5 地上管理装置
51 地上側送受信器
52 管理端末装置
6 撹拌混合装置
61 フレーム
62 攪拌翼
63 駆動輪
64 従動輪
65 無端チェーン
66 撹拌翼
7 ベースマシン
71 ブーム
72 アーム
73 車載端末装置
8 地上改良機
9 取付け部材
91 支持部材
92 フレーム固定部材
S ソイルセメント体
M モルタル
L 基準電気比抵抗
N1 平面視領域
N2 深度領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12