特許第6699179号(P6699179)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6699179
(24)【登録日】2020年5月7日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   B61L 23/00 20060101AFI20200518BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20200518BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20200518BHJP
   G08B 13/196 20060101ALI20200518BHJP
【FI】
   B61L23/00 A
   G06T1/00 315
   H04N7/18 D
   G08B13/196
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-1345(P2016-1345)
(22)【出願日】2016年1月6日
(65)【公開番号】特開2017-121856(P2017-121856A)
(43)【公開日】2017年7月13日
【審査請求日】2018年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】304020498
【氏名又は名称】サクサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大村 皇治
(72)【発明者】
【氏名】植田 大介
【審査官】 笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−257931(JP,A)
【文献】 特開2004−042777(JP,A)
【文献】 特開2015−031539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 23/00
G06T 1/00
G08B 13/196
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定領域を撮像する複数の撮像部によって同時に撮像された二つの撮像画像のうちの一方を基準画像とし、他方を比較画像とし、前記基準画像と前記比較画像との対応する画素を比較することにより、前記二つの撮像画像における前記複数の撮像部の間の視差を、前記二つの撮像画像の画素ごとに特定する視差特定部と、
前記二つの撮像画像の画素ごとに、当該画素に関連付けられた基準位置の基準面からの高さである基準高さと、前記基準位置から前記撮像部までの基準距離との距離と、を記憶する記憶部と、
前記視差特定部が特定した前記視差に基づいて、前記二つの撮像画像の画素ごとに前記撮像部から被写体までの距離を特定し、特定した距離と前記記憶部に記憶されている前記基準距離との関係を用いて、前記基準高さに基づいて、前記被写体の高さを示す高さ情報前記二つの撮像画像の画素ごとに特定する高さ特定部と、
前記高さ情報が示す高さに基づいて、異物を示す複数の画素を含む異物領域を検出する検出部と、
前記検出部が検出した前記異物領域において、前記撮像画像に含まれる複数の撮像領域のそれぞれにおいて前記異物の高さが変化する方向における位置が同じ位置の複数の画素によって構成される複数の線分それぞれを構成する複数の画素に対応する前記高さ情報に基づいて、前記複数の線分それぞれに対応する前記異物の部位の高さを特定し、特定した複数の前記異物の部位の高さに基づいて前記異物領域に含まれる複数の画素に対応する前記異物の高さの範囲を算出する算出部と、
算出された前記高さの範囲に基づく情報を出力する出力部と、
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記出力部は、前記高さの範囲が第1閾値以上である場合に前記高さの範囲に基づく情報を出力し、前記第1閾値未満の場合に前記高さの範囲に基づく情報を出力しない、
請求項に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記出力部は、前記高さの範囲が前記第1閾値未満である場合において、前記異物領域に含まれる前記複数の画素が示す前記異物の高さの最大値が第2閾値未満のとき、前記高さの範囲に基づく情報を出力する、
請求項に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記出力部は、前記高さの範囲が前記第1閾値以上である場合において、前記異物領域に含まれる前記複数の画素が示す前記異物の高さの最小値が第3閾値以上のとき、前記高さの範囲に基づく情報を出力しない、
請求項2又は3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記複数の画素が示す前記異物の高さに応じて画素値が設定された、前記異物領域を示す画像を表示部に表示させる表示制御部をさらに備える、
請求項1からのいずれか1項に記載の画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の乗客が利用する鉄道車両では安全な運行が要求されるため、鉄道車両の関係者は、鉄道車両を安全に運行するための様々な試みを行っている。例えば、乗客が線路に侵入したり、異物が線路上に落下したりすると、重大な事故に繋がるおそれがあることから、線路内への乗客の侵入や異物の落下をいち早く検知する試みが行われている。例えば、プラットホームの天井下に複数のステレオカメラを設置し、複数のステレオカメラにおいて撮像した撮像画像に基づいて、線路内に侵入した乗客を監視することが行われている。
【0003】
ステレオカメラを用いた監視装置として、ステレオカメラによって撮像した複数の画像に基づいて、当該複数の画像に含まれる所定物体の重畳画像を求め、当該重畳画像の大きさに基づいて所定物体が侵入者であることを判定する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−11518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、線路上を飛行中の鳥は、電車の往来を妨げないことから異物とはみなさないことが望ましい。しかしながら、線路上を飛行中の鳥と人とは、撮像画像において同様の面積となる場合もある。このため、特許文献1の装置が、プラットホームの天井下に設置されているステレオカメラが撮像した撮像画像に基づいて線路内等の所定エリアへの侵入者を検出する場合、線路上を飛行中の鳥と人とを区別することができず、線路上を飛行中の鳥を線路内への侵入者として誤検知してしまうことがあるという問題が生じていた。
【0006】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、所定エリアへの侵入者を精度良く検出することができる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る画像処理装置は、所定領域を撮像する複数の撮像部によって同時に撮像された複数の撮像画像に基づいて、前記複数の撮像画像における前記複数の撮像部の間の視差を、前記複数の撮像画像の画素ごとに特定する視差特定部と、前記視差特定部が特定した前記視差に基づいて、前記所定領域における基準面からの被写体の高さを示す高さ情報を、前記複数の画素ごとに特定する高さ特定部と、高さ情報が示す高さに基づいて、異物を示す複数の画素を含む異物領域を検出する検出部と、前記異物領域に含まれる複数の画素の高さの範囲を算出する算出部と、算出された前記高さの範囲に基づく情報を出力する出力部と、を備える。
【0008】
前記高さ特定部は、前記視差特定部が特定した視差に基づいて前記複数の画素ごとに前記被写体から前記画像処理装置までの距離を特定し、前記複数の画素ごとに予め定められている基準位置から前記画像処理装置までの距離及び前記基準面からの高さと、特定した距離とに基づいて、前記複数の画素ごとに前記被写体の前記高さ情報を特定してもよい。
【0009】
前記算出部は、前記異物領域において、所定の方向に対応する位置が同じ位置の複数の画素によって構成される線分の高さを、当該複数の画素に基づいて算出し、複数の線分の高さに基づいて前記高さの範囲を算出してもよい。
【0010】
前記算出部は、前記異物領域において、第1の方向に対応する位置が同じ位置の複数の画素によって構成される線分の高さを当該複数の画素に基づいて算出するとともに、前記第1の方向と直交する第2の方向に対応する位置が同じ位置の複数の画素によって構成される線分の高さを当該複数の画素に基づいて算出してもよい。
【0011】
前記出力部は、前記高さの範囲が第1閾値以上である場合に前記高さの範囲に基づく情報を出力し、前記第1閾値未満の場合に前記高さの範囲に基づく情報を出力しないようにしてもよい。
前記出力部は、前記高さの範囲が前記第1閾値未満である場合において、前記異物領域に含まれる前記複数の画素の高さの最大値が第2閾値未満のとき、前記高さの範囲に基づく情報を出力してもよい。
前記出力部は、前記高さの範囲が前記第1閾値以上である場合において、前記異物領域に含まれる前記複数の画素の高さの最小値が第3閾値以上のとき、前記高さの範囲に基づく情報を出力しないようにしてもよい。
【0012】
前記画像処理装置は、前記複数の画素の高さに応じて画素値が設定された、前記異物領域を示す画像を表示部に表示させる表示制御部をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、所定エリアへの侵入者を精度良く検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る撮像システムの全体構成を示す図である。
図2A】鉄道車両の進行方向から駅のプラットホームを見た図である。
図2B】鉄道車両の進行方向に対して直交する方向から駅のプラットホームを見た図である。
図3】第1実施形態に係る撮像装置の概要を示す図である。
図4】第1実施形態に係る撮像装置の構成を示す図である。
図5】所定の画素における基準位置と、被写体の位置との関係を示す図である。
図6】高さ特定部によって特定された画素ごとの高さを示す図である。
図7】グラデーションに基づく高さの範囲の算出例を示す図である。
図8】撮像装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図9】人判定処理の流れを示すフローチャートである。
図10】第2実施形態に係るデータ管理装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る撮像システム10の全体構成を示す図であり、図2は、撮像装置101が設置されている駅のプラットホームPにおける設置例を示す図である。図2Aは、鉄道車両の進行方向から駅のプラットホームPを見た図であり、図2Bは、鉄道車両の進行方向に対して直交する方向から駅のプラットホームPを見た図である。
【0016】
図1に示すように撮像システム10は、撮像装置群100、及び撮像装置群100と通信可能に接続されたデータ管理装置200を含んで構成される。
なお、撮像システム10は、データ管理装置200と撮像装置群100との間にハブ300を備えてもよく、また、ハブ300に接続される撮像装置群100を複数備えてもよい。この場合、例えば、それぞれの撮像装置群100を、駅にある複数のプラットホームPのそれぞれに設置することとしてもよい。また、撮像システム10は、撮像装置群100で撮像された画像を表示するモニタ400を備えてもよい。
【0017】
撮像装置群100は、図2Bに示すように、複数の撮像装置101(撮像装置101−1、撮像装置101−2・・・撮像装置101−n、ただしnは3以上の自然数)が駅のプラットホームPの長さ方向に沿ってデイジーチェーン接続されて構成される。
【0018】
撮像装置101は、複数の撮像部が駅のプラットホームPの長さ方向に沿って水平に配置されたステレオカメラである。図2Bに示すように、撮像装置101は、複数の撮像部として、第1撮像部102と、第2撮像部103とを備える。図2Aに示すように、撮像装置101は、鉄道車両の運行に影響を与えないように、駅のプラットホームPの上部(天井)のうちプラットホームPの端部の直上からプラットホームPの内側に所定量だけセットバックして設置される。また、図2Bに示すように、撮像装置101は、それぞれの撮像装置101の撮像範囲Sが隣接する撮像装置101の撮像範囲Sと重なり合うように設置される。
【0019】
本実施形態において、撮像装置101は、画像処理装置として機能し、駅のプラットホームPの周辺領域、すなわちプラットホームP及び線路Rを含む所定領域を複数の撮像部によって所定のフレームレートで同時に撮像する。撮像装置101は、複数の撮像部によって同時に撮像された撮像画像に基づいて、所定領域に乗客等の異物が存在することを検出すると、データ管理装置200に警報を出力する。
【0020】
図3は、撮像装置101の概要を示す図である。図3に示すように撮像装置101は、第1撮像部102によって撮像される第1撮像画像51と、第2撮像部103によって撮像される第2撮像画像52とに基づいて、複数の撮像画像の画素ごとに、第1撮像部102と第2撮像部103との間の視差を特定し、画素ごとに特定した視差に基づいて、所定領域における基準面からの被写体の高さを示す高さ情報を、複数の画素ごとに特定する。
【0021】
撮像装置101は、特定した高さ情報が示す高さに基づいて、異物を示す複数の画素を含む異物領域を検出し、当該異物領域に含まれる複数の画素の高さの範囲に基づいて、警報を出力する。このようにすることで、撮像装置101は、高さの範囲が相対的に大きい人と、高さの範囲が相対的に小さい飛行中の鳥とを区別して、所定領域への侵入者を精度良く検出することができる。
【0022】
[撮像装置101の機能構成]
図4は、第1実施形態に係る撮像装置101の構成を示す図である。撮像装置101は、第1撮像部102と、第2撮像部103と、記憶部104と、制御部105とを備える。
【0023】
第1撮像部102及び第2撮像部103は、それぞれ、レンズ及びCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)を有しており、焦点距離が同一である。第1撮像部102及び第2撮像部103は、所定領域に存在する乗客等の被写体の画像を撮像する。
【0024】
記憶部104は、例えばROM及びRAMである。記憶部104は、撮像装置101を画像処理装置として機能させる各種プログラムを記憶する。また、記憶部104は、撮像装置101の第1撮像部102が撮像した第1撮像画像51及び第2撮像部103が撮像した第2撮像画像52を記憶する。
【0025】
制御部105は、例えば、CPUであり、記憶部104に記憶されている各種プログラムを実行することにより、取得部106、視差特定部107、高さ特定部108、検出部109、算出部110、及び出力部111として機能する。
【0026】
取得部106は、同時に撮像された複数の撮像画像として、第1撮像部102及び第2撮像部103によって同時に撮像された第1撮像画像51及び第2撮像画像52を取得する。取得部106は、取得した第1撮像画像51及び第2撮像画像52を関連付けて記憶部104に記憶させる。
【0027】
視差特定部107は、所定領域を撮像する第1撮像部102及び第2撮像部103によって同時に撮像された複数の撮像画像に基づいて、当該複数の撮像画像における第1撮像部102と第2撮像部103との間の視差を、複数の撮像画像の画素ごとに特定する。例えば、視差特定部107は、記憶部104に第1撮像画像51及び第2撮像画像52が記憶されると、当該第1撮像画像51を基準画像とするとともに、当該第2撮像画像52を比較画像とする。そして、視差特定部107は、当該基準画像に含まれる複数の画素のそれぞれを基準点とし、それぞれの基準点と対応する対応点を比較画像の中から探索することで視差を算出する。
【0028】
具体的には、視差特定部107は、基準となる画素を中心に基準画像から画素ブロックを抽出し、比較画像の探索領域内の画素ブロックのうち基準画像から抽出した画素ブロックと輝度パターンが類似している画素ブロックをSAD(Sum of Absolute Differences)法等の公知の手法により特定する。そして、視差特定部107は、基準画像の画素ブロックの座標と比較画像の画素ブロックの座標との相違から、視差を特定する。なお、本実施形態では、画素ブロックを構成する複数の画素のうち隣接する画素との輝度差が所定値以上でない画素については、視差をゼロとする。ここで、視差特定部107は、プラットホームP上に配置される滑り止め、点字ブロック、案内ペイント等の模様として表示される部分について、基準画像の画素ブロックと隣接する画素ブロックが、基準画像の画素ブロックと一致すると判定してしまい、視差があるものとして誤検出してしまう。
【0029】
なお、本実施形態では、それぞれの撮像画像において水平方向をX方向(第1方向)、垂直方向をY方向(第2方向)とする。撮像装置101の第1撮像部102及び第2撮像部103が駅のプラットホームPの長さ方向に沿って水平に配置されるため、X方向はプラットホームPの長さ方向に相当する。また、Y方向は、プラットホームPや線路Rの幅方向に相当する。また、以下では、説明の便宜上、画像上部をY座標「小」とし、画面下部をY座標「大」とする。
【0030】
高さ特定部108は、視差特定部107が特定した視差に基づいて、所定領域における基準面からの被写体の高さを示す高さ情報を、複数の画素ごとに特定する。具体的には、高さ特定部108は、視差特定部107が特定した視差と、第1撮像部102が有するレンズの中心と第2撮像部103が有するレンズの中心との間隔と、第1撮像部102及び第2撮像部103の焦点距離とに基づいて、複数の画素ごとに被写体から撮像装置101までの距離D2を特定する。ここで、基準面は、レールの設置面であるものとするが、これに限らず、プラットホームPであってもよい。
【0031】
記憶部104には、複数の画素ごとに予め定められている基準位置P1から撮像装置101までの距離D1及び基準面からの高さh1とが記憶されている。高さ特定部108は、複数の画素ごとに予め定められている基準位置P1から撮像装置101までの距離D1及び基準面からの高さh1と、特定した距離D2とに基づいて、複数の画素ごとに被写体の基準面からの高さh2を示す高さ情報を特定する。
【0032】
図5は、所定の画素における基準位置P1と、被写体の位置P2との関係を示す図である。図5(a)に示す図は、第1撮像画像51に異物Fが写っていない状態を示す図であり、図5(b)に示す図は、第1撮像画像51に異物Fとして線路内に侵入者が写っている状態を示す図である。図5(a)における基準位置P1と、図5(b)における異物Fの位置P2とは、第1撮像画像51の同一の画素Aに対応している。
【0033】
図5(c)に示す図は、基準位置P1と、異物Fの位置P2と、撮像装置101の中心位置との関係を示す図である。図5(c)に示すように、基準面の高さを0、基準面を基準とした位置P1の高さをh1、位置P2の高さをh2、撮像装置101の高さをhc、撮像装置101から位置P1までの距離をD1、撮像装置101から位置P2までの距離をD2とすると、以下の(1)式が成り立つ。
hc−h1:hc−h2=D1:D2・・・(1)
【0034】
(1)式に基づいて、画素Aに対応する異物Fの高さh2は以下の(2)式で表される。
h2=hc−D2/D1*(hc−h1)・・・(2)
高さ特定部108は、複数の画素のそれぞれについて、(2)式に基づいて高さh2を示す高さ情報を特定する。高さ特定部108は、例えば、高さを第1階調(例えば、256階調)で特定する。なお、高さ特定部108は、基準面からの高さを第1階調よりも少ない第2階調で特定してもよい。例えば、第2階調は、立っている人が複数の階調(例えば、5階調〜10階調)で表現される階調である。
【0035】
図6は、高さ特定部108によって特定された画素ごとの高さを示す図である。図6では、高さが大きい画素ほど白く示し、高さが小さい画素ほど黒く示している。また、高さがほぼ0の画素については斜線で示している。プラットホームPが模様等を含まない単調な平面である場合には、視差特定部が視差を特定することができないことから、高さ特定部108は、高さを0と特定する。
【0036】
検出部109は、高さ情報が示す高さに基づいて、異物を示す複数の画素を含む異物領域を検出する。検出部109は、例えば、高さ情報が示す高さが所定の高さ以上の画素が所定数以上連続している領域、又は所定の高さ以上の画素を所定数以上含む領域を異物領域として検出する。なお、上述したように、プラットホームP上に配置される滑り止め、点字ブロック、案内ペイント等の模様として表示される部分については、異物領域として検出される。そこで、検出部109は、プラットホーム上の異物領域について、模様であるとして無視するようにしてもよい。
【0037】
算出部110は、異物領域に含まれる複数の画素に対応する高さの範囲を算出する。例えば、算出部110は、異物領域に含まれる複数の画素に対応する高さのうち、最大の高さと、最小の高さとを特定し、最大の高さから最小の高さを減算することにより高さの範囲を算出する。
【0038】
なお、算出部110は、高さ特定部108が特定した高さが第1階調(例えば、256階調)で表現されている場合、高さの階調を第2階調(例えば、10階調)に変換して高さの範囲を算出してもよい。また、算出部110は、ある高さに対応する画素の数が予め定められた数に満たない場合に、当該高さがノイズによるものと判定し、高さの範囲を算出する対象から当該高さを除外してもよい。
【0039】
また、算出部110は、高さ特定部108が図6に示す異物領域における画素ごとの高さを示す異物画像を出力する場合、異物画像における画素値のグラデーションに基づいて高さの範囲を算出するようにしてもよい。この場合、算出部110は、異物画像において、所定の方向に対応する位置が同じ位置の複数の画素によって構成される線分の高さを、当該複数の画素の画素値に基づいて算出する。例えば、算出部110は、線分の高さを、複数の画素の画素値の平均値や中央値に基づいて算出する。そして、算出部110は、グラデーションの変化、すなわち、隣接する線分の高さの差分を合計することにより、高さの範囲を算出する。このようにすることで、算出部110は、異物領域におけるグラデーションの変化に基づいて、異物に対応する高さの範囲を算出することができる。
【0040】
図7は、グラデーションに基づく高さの範囲の算出例を示す図である。図7に示すように、異物Fについて、Y方向に対応する位置が同じ複数の画素によって構成される線分の高さを算出した結果、各線分の高さがY方向の値が小さい順に、hf1、hf2、hf3、hf4、hf5、hf6であったとする。この場合、隣接する線分の差分はそれぞれ、hf1−hf2、hf2−hf3、hf3−hf4、hf4−hf5、hf5−hf6となる。よって、グラデーションに基づく高さの範囲は、hf1−hf6となる。
【0041】
なお、算出部110は、異物領域において、所定方向に対応する位置が同じ位置の複数の画素、すなわち、一の行に対応する画素によって構成される線分の高さを算出したが、これに限らない。例えば、算出部110は、複数の行に対応する画素によって構成される線分の高さを算出してもよい。
【0042】
また、撮像画像において異物が写る位置によっては、異物の高さが変化する方向がY方向と異なる場合がある。例えば、撮像画像の中心付近では、異物の高さが変化する方向がY方向となるが、撮像画像の右端付近や左端付近では、異物の高さが変化する方向がX方向となる。
【0043】
そこで、算出部110は、撮像画像に含まれる複数の撮像領域のそれぞれについて、高さが変化する方向(第1方向)を予め規定するようにしてもよい。例えば、算出部110は、異物領域が、撮像画像におけるX方向の中心位置から所定範囲に含まれる場合には、第1の方向に対応する位置が同じ位置の複数の画素によって構成される線分の高さを当該複数の画素に基づいて算出してもよい。また、算出部110は、異物領域が、撮像画像におけるX方向の中心位置から当該所定範囲に含まれない場合には、第1の方向と直交する第2の方向に対応する位置が同じ位置の複数の画素によって構成される線分の高さを当該複数の画素に基づいて算出してもよい。
【0044】
出力部111は、算出された高さの範囲に基づいて、データ管理装置200に情報を出力する。例えば、出力部111は、異物を検出した旨を示す警報を出力する。具体的には、出力部111は、算出された高さの範囲に基づいて異物領域に含まれる異物が鳥であるか否かを判定する鳥判定処理を行い、当該鳥判定処理の判定結果に基づいて、データ管理装置200に警報を出力する。
【0045】
より具体的には、出力部111は、高さの範囲、すなわちグラデーションの範囲が第1閾値以上である場合に警報を出力し、第1閾値未満の場合に警報を出力しないように制御する。ここで、高さの範囲が第1閾値未満であるとともに、線路面からの高さの最大値が第2閾値以上の場合、異物領域に対応する異物が線路上を飛行中の鳥である可能性が高いので、出力部111は、警報を出力しないように制御する。これに対して、高さの範囲が第1閾値未満であるとともに、線路面からの高さの最大値が第2閾値未満の場合には、異物領域に対応する異物が線路上に寝ている人や異物である可能性がある。そこで、出力部111は、高さの範囲が第1閾値未満であっても、線路面からの高さの最大値が第2閾値未満の場合、警報を出力する。
【0046】
また、高さの範囲が第1閾値以上であっても、線路面からの高さの最小値が、線路面からプラットホームPに立っている人の頭頂部までの高さよりも大きい第3閾値以上の場合、異物領域に含まれる異物が線路上を飛行している鳥等である可能性が高い。そこで、出力部111は、高さの範囲が第1閾値以上であっても、高さの最小値が第3閾値以上の場合には、警報を出力しないように制御する。
【0047】
なお、出力部111は、表示制御部として機能し、複数の画素の高さに応じて画素値が設定された異物領域を示す画像を、データ管理装置200を介してモニタ400に表示させてもよい。出力部111は、警報を出力する場合に限定して、当該警報の対象となった異物領域を示す画像をモニタ400に表示させてもよい。このようにすることで、モニタ400を視認する管理者等は、異物領域に対応する画像を確認し、適切な対応をとることができる。
【0048】
[撮像装置101の処理]
続いて、図8及び図9を参照して、本実施形態に係る撮像装置101の処理の流れについて説明する。図8は、撮像装置101の処理の流れを示すフローチャートである。
【0049】
まず、取得部106は、第1撮像部102及び第2撮像部103によって同時に撮像された第1撮像画像51及び第2撮像画像52を取得する(S10)。
続いて、視差特定部107は、S10において取得された複数の撮像画像における第1撮像部102と第2撮像部103との間の視差を、複数の撮像画像の画素ごとに特定する(S20)。
【0050】
続いて、高さ特定部108は、視差特定部107によって特定された視差に基づいて、所定領域における基準面からの被写体の高さを示す高さ情報を、複数の画素ごとに特定する(S30)。
続いて、検出部109は、複数の画素ごとに特定された高さ情報が示す高さに基づいて、異物を示す複数の画素を含む異物領域を検出する(S40)。
【0051】
続いて、算出部110は、異物領域に含まれる複数の画素に対応する高さ情報に基づいて、異物領域における高さの範囲を算出する(S50)。なお、算出部110は、異物領域が複数検出された場合、複数の異物領域のそれぞれについて、異物領域における高さの範囲を算出する。なお、算出部110は、異物領域が複数検出された場合、複数の異物領域のそれぞれについて、高さの範囲を算出する。
【0052】
続いて、出力部111は、算出された高さの範囲に基づいて、鳥判定処理を行う(S60)。鳥判定処理の詳細は、後述する。
続いて、出力部111は、鳥以外の異物があるか否かを判定する(S70)。出力部111は、鳥以外の異物があると判定すると、S80に処理を移し、警報を出力する。出力部111は、鳥以外の異物がないと判定すると、警報を出力せずに本フローチャートに係る処理を終了する。
【0053】
続いて、図9を参照して、撮像装置101の出力部111が実行する鳥判定処理について説明する。なお、出力部111は、異物領域が複数検出された場合、複数の異物領域のそれぞれに対して鳥判定処理を行う。
【0054】
まず、出力部111は、算出部110が算出した異物領域における高さの範囲が第1閾値以上であるか否かを判定する(S61)。出力部111は、第1閾値以上であると判定すると、S62に処理を移し、第1閾値未満であると判定すると、S64に処理を移す。
【0055】
出力部111は、S61において異物領域における高さの範囲が第1閾値以上であると判定すると、異物領域における高さの最小値が第3閾値以上であるか否かを判定する(S62)。出力部111は、第3閾値以上であると判定すると、S63に処理を移し、第3閾値未満であると判定すると、鳥判定処理を終了する。
出力部111は、S63において、異物領域に対応する異物が鳥であると判定する。
【0056】
また、出力部111は、S61において異物領域における高さの範囲が第1閾値未満であると判定すると、異物領域における高さの最大値が第2閾値以上であるか否かを判定する(S64)。出力部111は、第2閾値以上であると判定すると、異物が鳥であると判定する(S65)。出力部111は、第2閾値未満であると判定すると、異物が人(線路上で倒れている人)であると判定し、鳥判定処理を終了する。
【0057】
[第1実施形態における効果]
以上のとおり、第1実施形態に係る撮像装置101は、所定領域における基準面からの被写体の高さを示す高さ情報を、複数の撮像画像の画素ごとに特定し、特定した高さ情報が示す高さに基づいて、異物を示す複数の画素を含む異物領域を検出し、異物領域に含まれる複数の画素の高さの範囲に基づいて警報を出力する。このようにすることで、異物のうち、飛行中の鳥と、人とを区別して警報を出力することができるので、線路内等の所定エリアへの侵入者を精度良く検出することができる。
【0058】
<第2実施形態>
[データ管理装置200が警報を出力する]
続いて、第2実施形態について説明する。第1実施形態では、撮像装置101が、画像処理装置として機能し、検出した異物領域における高さの範囲に基づいて警報を出力したが、第2実施形態では、データ管理装置200が画像処理装置として機能し、検出した異物領域における高さの範囲に基づいて警報を出力する点で第1の実施形態と異なる。以下、第1実施形態と異なる部分について説明を行う。第1実施形態と同じ部分については適宜説明を省略する。
【0059】
図10は、第2実施形態に係るデータ管理装置200の構成を示す図である。第2実施形態に係るデータ管理装置200は、記憶部204と、制御部205とを備える。
記憶部204は、例えばROM及びRAMである。記憶部204は、データ管理装置200を画像処理装置として機能させる各種プログラムを記憶する。また、記憶部204は、複数の撮像装置101のそれぞれが備える第1撮像部102が撮像した第1撮像画像51及び第2撮像部103が撮像した第2撮像画像52を記憶する。
【0060】
制御部205は、例えば、CPUであり、記憶部204に記憶されている各種プログラムを実行することにより、取得部206、視差特定部207、高さ特定部208、検出部209、算出部210、及び出力部211として機能する。
【0061】
取得部206は、複数の撮像装置101のそれぞれが備える第1撮像部102及び第2撮像部103によって同時に撮像された複数の撮像画像として、第1撮像画像51及び第2撮像画像52を取得する。取得部206は、複数の撮像画像を取得するとともに、当該複数の撮像画像を送信した撮像装置101を識別する識別情報としての装置IDを取得する。
【0062】
視差特定部207、高さ特定部208、検出部209、及び算出部210の処理は、第1実施形態に係る視差特定部107、高さ特定部108、検出部109、及び算出部110の処理と同じであるので説明を省略する。
【0063】
出力部211は、算出部210によって算出された高さの範囲に基づいて、異物領域に含まれる異物が鳥以外の異物であるか否かを判定する。出力部211は、異物領域に含まれる異物が鳥以外の異物であると判定すると、当該異物領域を検出した撮像画像を送信した撮像装置101の装置IDをモニタ400に出力するとともに、警報を示す警報情報を表示させる。なお、出力部211は、異物領域を検出した撮像画像を送信した撮像装置101のプラットホームP上の位置を示す位置情報をモニタ400に表示させるようにしてもよい。また、出力部211は、データ管理装置200に接続されているスピーカ(不図示)に警報を出力させてもよい。
【0064】
[第2実施形態における効果]
以上のとおり、第2実施形態に係るデータ管理装置200は、撮像装置101から取得した複数の撮像画像の画素ごとに、基準面からの被写体の高さを示す高さ情報を特定し、特定した高さ情報が示す高さに基づいて、異物を示す複数の画素を含む異物領域を検出し、異物領域に含まれる複数の画素の高さの範囲に基づいて警報をモニタ400に出力する。このようにすることで、データ管理装置200は、第1実施形態に係る撮像装置101と同様に、飛行中の鳥と、人とを区別して警報を出力することができるので、線路内等の所定エリアへの侵入者を精度良く検出することができる。
【0065】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0066】
例えば、算出部110は、異物領域を構成する複数の線分について、隣接する線分の高さの変化量を合計することにより、差分の合計を算出してもよい。そして、算出部110は、算出された高さの範囲と、差分の合計とに基づいて警報を出力してもよい。例えば、異物が立っている人であり、異物の高さが、Y方向の値が大きくなるにしたがって減少する傾向を有している場合には、差分の合計は、高さの範囲と等しくなる。これに対して、異物がプラットホームPに配置されているパネル等の模様であり、異物の高さが、Y方向の値が大きくなるにしたがって減少する傾向を有していない場合には、差分の合計は、高さの範囲よりも大きい値となる。そこで、高さの範囲と差分の合計とを比較することにより、異物領域に含まれる異物が人であるか、パネル等の模様であるかを判定することができる。
【0067】
上述の実施形態では、撮像装置101及びデータ管理装置200のいずれかが画像処理装置として機能する例を説明したが、これに限らない。例えば、撮像装置101が画像処理装置に対応する複数の機能のうち、一部の機能を実装し、データ管理装置200が、当該複数の機能のうち、他の一部の機能を実装してもよい。
【符号の説明】
【0068】
101・・・撮像装置、102・・・第1撮像部、103・・・第2撮像部、104・・・記憶部、105・・・制御部、106・・・取得部、107・・・視差特定部、108・・・高さ特定部、109・・・検出部、110・・・算出部、111・・・出力部、200・・・データ管理装置、400・・・モニタ
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10