特許第6699266号(P6699266)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6699266環状体における原部材の繋ぎ合わせ位置の検出方法、タイヤの欠陥検査方法、及びタイヤの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6699266
(24)【登録日】2020年5月7日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】環状体における原部材の繋ぎ合わせ位置の検出方法、タイヤの欠陥検査方法、及びタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/06 20060101AFI20200518BHJP
【FI】
   B29D30/06
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-54233(P2016-54233)
(22)【出願日】2016年3月17日
(65)【公開番号】特開2017-165029(P2017-165029A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2019年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】多田 拡太郎
【審査官】 市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−111660(JP,A)
【文献】 特開2004−354258(JP,A)
【文献】 特開2005−233906(JP,A)
【文献】 特開2010−115879(JP,A)
【文献】 特開2004−167900(JP,A)
【文献】 特開平06−238772(JP,A)
【文献】 特開2014−218065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D30/00−30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状体における原部材の繋ぎ合わせ位置の検出方法であって、
ゴムを含む一定の原反長さのシート状の原部材を繋ぎあわせることにより形成される繋ぎあわせ部を有する長尺状の帯状部材の先端部から前記帯状部材を所定の引き出し長さ引き出して切断することにより、前記帯状部材を環状に巻きつけた環状体を順次作製する度に、前記環状体の周上における前記繋ぎあわせ部の周上予測位置を求めるステップと、
前記周上予測位置を求める度に、前記周上予測位置を基準にして前記周上予測位置を含む前記環状体の全周より狭い範囲で、前記環状体の周上における前記原部材の前記繋ぎあわせ部の周上位置を、測定装置を用いて検出するステップと、を含み、
前記周上予測位置を求めるステップでは、前記帯状部材の先端部から引き出す前記帯状部材の引き出し領域内にある前記原部材の繋ぎあわせ部の、前記先端部から前記繋ぎあわせ部までの繋ぎあわせ部長さと、前記帯状部材の前記引き出し長さとを用いて、前記繋ぎ合わせ部の前記周上予測位置を求める、ことを特徴とする検出方法。
【請求項2】
前記帯状部材を引き出してM個目(Mは2以上の整数)の環状体を作製するとき、M個目より前に作製した環状体における、検出した前記周上位置と前記周上予測位置との間の差分を、前記繋ぎあわせ部長さと、前記帯状部材の前記引き出し長さとともに用いて、前記M個目の環状体における前記繋ぎあわせ部の前記周上予測位置を求める、請求項1に記載の検出方法。
【請求項3】
前記環状体は、前記帯状部材を円柱形状のドラムの外周に巻きつけることにより作製され、
前記帯状部材の先端部は、前記ドラムの外周上の原点位置を基準として、前記外周の上で角度β度位置ずれしており、前記原反長さをL、前記引き出し長さをRとし、(n−1)個目(nは2以上の整数)の環状体における検出した前記繋ぎあわせ部の前記周上位置と前記繋ぎあわせ部の前記周上予測位置との差分の長さに関して、(n−1)個目(nは2以上の整数)の環状体には前記繋ぎあわせ部が存在せず前記差分の長さがない場合、及び前記繋ぎあわせ部が1つあって前記差分の長さが1つである場合は、前記差分の長さをγn−1・R/360(γn−1は、0以上の角度)で表し、(n−1)個目(nは2以上の整数)の環状体には前記繋ぎあわせ部が複数存在して前記差分の長さが複数ある場合、複数の繋ぎあわせ部のうち、前記先端部と反対側の後端部に最も近い繋ぎあわせ部における前記差分の長さをγn−1・R/360(γn−1は、0度以上360度未満の角度)で表したとき、
M個目の環状体の前記周上予測位置を求めるときに用いる前記繋ぎあわせ部長さは、iを1以上の整数として、角度β+{L・i−R×(M−1)}・(360/R)+(γ+γ+・・・+γM−2+γM−1)が0より大きく360度未満となるような整数iを用いて、L・i−R×(M−1)+(γ+γ+γ+・・・+γM−2+γM−1)・R/360で表される、請求項1または2に記載の検出方法。
【請求項4】
前記帯状部材の先端部の調整のために、設定された調整長さぶん前記先端部から離れた位置で前記帯状部材を切断して前記帯状部材の新たな先端部をつくり、
前記新たな先端部から前記引き出し長さだけ引き出してM個目(Mは2以上の整数)の環状体を作製するとき、さらに、前記調整長さを用いて、前記M個目の環状体における前記繋ぎあわせ部の前記周上予測位置を求める、請求項2に記載の検出方法。
【請求項5】
前記環状体は、前記帯状部材を円柱形状のドラムの外周に巻きつけることにより作製され、
前記帯状部材の先端部は、前記ドラムの外周上の原点位置を基準として、前記外周の上で角度β度位置ずれしており、前記原反長さをL、前記引き出し長さをRとし、(n−1)個目(nは2以上の整数)の環状体における検出した前記繋ぎあわせ部の前記周上位置と前記繋ぎあわせ部の前記周上予測位置との差分の長さに関して、(n−1)個目(nは2以上の整数)の環状体には前記繋ぎあわせ部が存在せず前記差分の長さがない場合、及び前記繋ぎあわせ部が1つあって前記差分の長さが1つである場合は、前記差分の長さをγn−1・R/360(γn−1は、0度以上360度未満の角度)で表し、(n−1)個目(nは2以上の整数)の環状体には前記繋ぎあわせ部が複数存在して前記差分の長さが複数ある場合、複数の繋ぎあわせ部のうち、前記先端部と反対側の後端部に最も近い繋ぎあわせ部における前記差分の長さをγn−1・R/360(γn−1は、0以上の角度)で表し、(n−1)個目(nは2以上の整数)の環状体を作製するときの前記調整長さをδn−1(δn−1は、0以上の長さ)で表したとき、
M個目の環状体の前記周上予測位置を求めるときに用いる前記繋ぎあわせ部長さは、iを1以上の整数として、角度β+{L・i−R×(M−1)−(δ+δ+・・・+δM−2+δM−1+δ)}・(360/R)+(γ+γ+・・・+γM−2+γM−1)が0より大きく360度未満となるような整数iを用いて、L・i−R×(M−1)−(δ+δ+・・・+δM−2+δM−1+δ)+(γ+γ+γ+・・・+γM−2+γM−1)・R/360で表される、請求項4に記載の検出方法。
【請求項6】
前記先端部の前記環状体における前記ドラムの外周上の位置は、予め定められており、
前記環状体を用いて前記ドラム上で作製される環状の構造体には前記構造体の識別情報を表すラベルコード表示体が、予め設定された前記ドラムの外周上の位置で貼り付けられており、
前記ラベルコード表示体の位置の情報と、前記先端部の位置の情報と、検出した前記繋ぎあわせ部の前記周上位置の情報と、を前記構造体の識別情報と関連付けて、前記構造体毎に記憶手段に記憶するステップと、を有する請求項3または5に記載の検出方法。
【請求項7】
タイヤの欠陥検査方法であって、
ゴムを含む一定の原反長さのシート状の原部材を繋ぎあわせることにより形成される繋ぎあわせ部を有する長尺状の帯状部材の先端部から前記原部材を所定の引き出し長さ引き出して切断することにより、前記帯状部材を環状に巻きつけた環状体を順次作製する度に、前記環状体の周上における前記繋ぎあわせ部の周上予測位置を求めるステップと、
前記周上予測位置を求める度に、前記周上予測位置を基準にして前記周上予測位置を含む前記環状体の全周より狭い範囲で、前記環状体の周上における前記原部材の前記繋ぎあわせ部の周上位置を、測定装置を用いて検出するステップと、
検出した前記繋ぎあわせ部の前記周上位置を少なくとも用いて、前記環状体を含む生タイヤからつくられるタイヤの、前記繋ぎあわせ部に起因する欠陥の有無を少なくとも検査するステップと、を含み、
前記周上予測位置を求めるステップでは、前記帯状部材の先端部から引き出す前記帯状部材の引き出し領域内にある前記原部材の繋ぎあわせ部の、前記先端部からの繋ぎあわせ部長さと、前記帯状部材の前記引き出し長さとを用いて、前記繋ぎ合わせ部の前記周上予測位置を求める、ことを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項8】
前記帯状部材を引き出してM個目(Mは2以上の整数)の環状体を作製するとき、M個目より前に作製した環状体における、検出した前記周上位置と前記周上予測位置との間の差分を、前記繋ぎあわせ部長さと、前記帯状部材の前記引き出し長さとともに用いて、前記M個目の環状体における前記周上予測位置を求める、請求項7に記載の欠陥検査方法。
【請求項9】
前記環状体は、前記帯状部材を円柱形状のドラムの外周に巻きつけることにより作製され、
前記帯状部材の先端部は、前記ドラムの外周上の原点位置を基準として、前記外周の上で角度β度位置ずれしており、前記原反長さをL、前記引き出し長さをRとし、(n−1)個目(nは2以上の整数)の環状体における検出した前記繋ぎあわせ部の前記周上位置と前記周上位置に対応した前記周上予測位置との差分の長さに関して、(n−1)個目(nは2以上の整数)の環状体には前記繋ぎあわせ部が存在せず前記差分の長さがない場合、及び前記繋ぎあわせ部が1つあって前記差分の長さが1つである場合、前記差分の長さをγn−1・R/360(γn−1は、0以上の角度)で表し、(n−1)個目(nは2以上の整数)の環状体には前記繋ぎあわせ部が複数存在して前記差分の長さが複数ある場合は、複数の繋ぎあわせ部のうち、前記先端部と反対側の後端部に最も近い繋ぎあわせ部における前記差分の長さをγn−1・R/360(γn−1は、0度以上360度未満の角度)で表したとき、
M個目の環状体の前記周上予測位置を求めるときに用いる前記繋ぎあわせ部長さは、iを1以上の整数として、角度β+{L・i−R×(M−1)}・(360/R)+(γ+γ+・・・+γM−2+γM−1)が0より大きく360度未満となるような整数iを用いて、L・i−R×(M−1)+(γ+γ+γ+・・・+γM−2+γM−1)・R/360で表される、請求項7または8に記載の欠陥検査方法。
【請求項10】
前記帯状部材の先端部の調整のために、設定された調整長さぶん前記先端部から離れた位置で前記帯状部材を切断して前記帯状部材の新たな先端部をつくり、
前記新たな先端部から前記引き出し長さだけ引き出してM個目(Mは2以上の整数)の環状体を作製するとき、さらに、前記調整長さを用いて、前記M個目の環状体における前記繋ぎあわせ部の前記周上予測位置を求める、請求項8に記載の欠陥検査方法。
【請求項11】
前記環状体は、前記帯状部材を円柱形状のドラムの外周に巻きつけることにより作製され、
前記帯状部材の先端部は、前記ドラムの外周上の原点位置を基準として、前記外周の上で角度β度位置ずれしており、前記原反長さをL、前記引き出し長さをRとし、(n−1)個目(nは2以上の整数)の環状体における検出した前記繋ぎあわせ部の前記周上位置と前記周上位置に対応した前記周上予測位置との差分の長さに関して、(n−1)個目(nは2以上の整数)の環状体には前記繋ぎあわせ部が存在せず前記差分の長さがない場合、及び前記繋ぎあわせ部が1つあって前記差分の長さが1つである場合、前記差分の長さをγn−1・R/360(γn−1は、0度以上360度未満の角度)で表し、(n−1)個目(nは2以上の整数)の環状体には前記繋ぎあわせ部が複数存在して前記差分の長さが複数ある場合は、複数の繋ぎあわせ部のうち、前記先端部と反対側の後端部に最も近い繋ぎあわせ部における前記差分の長さをγn−1・R/360(γn−1は、0以上の角度)で表し、(n−1)個目(nは2以上の整数)の環状体を作製するときの前記調整長さをδn−1(δn−1は、0以上の長さ)で表したとき、
M個目の環状体の前記周上予測位置を求めるときに用いる前記繋ぎあわせ位置長さは、iを1以上の整数として、角度β+{L・i−R×(M−1)−(δ+δ+・・・+δM−2+δM−1+δ)}・(360/R)+(γ+γ+・・・+γM−2+γM−1)が0より大きく360度未満となるような整数iを用いて、L・i−R×(M−1)−(δ+δ+・・・+δM−2+δM−1+δ)+(γ+γ+γ+・・・+γM−2+γM−1)・R/360で表される、請求項10に記載の欠陥検査方法。
【請求項12】
前記先端部の前記環状体における前記ドラムの外周上の位置は、予め定められており、
前記環状体を用いて前記ドラム上で作製される環状の前記生タイヤには前記生タイヤの識別情報を表すラベルコード表示体が、予め設定された前記ドラムの外周上の位置で貼り付けられており、
前記ラベルコード表示体の位置の情報と、前記先端部の周上位置の情報と、検出した前記繋ぎあわせ部の前記周上位置の情報と、を前記構造体の識別情報と関連付けて、前記構造体毎に記憶手段に記憶するステップと、
前記欠陥の有無を検査するステップでは、前記生タイヤからつくられる前記タイヤに依然として貼り付けられている前記ラベルコード表示体の識別情報を検出し、前記識別情報を用いて、前記記憶手段に記憶されている前記先端部の位置の情報と、前記繋ぎあわせ部の前記周上位置の情報を取得し、前記先端部の周上位置の情報と、前記繋ぎあわせ部の前記周上位置の情報を用いて、前記帯状部材の先端部に起因する欠陥及び前記繋ぎあわせ部に起因する欠陥の有無を検査する、請求項9または11に記載の欠陥検査方法。
【請求項13】
タイヤの製造方法であって、
ゴムを含む一定の原反長さのシート状の原部材を繋ぎあわせることにより形成される繋ぎあわせ部を有する長尺状の帯状部材を作製するステップと、
前記帯状部材の先端部から前記原部材を成形ドラムに所定の引き出し長さ引き出して切断することにより、環状体を順次作製するステップと、
前記環状体を作製する度に、前記帯状部材の先端部から引き出す前記帯状部材の引き出し領域内にある前記原部材の繋ぎあわせ部の、前記先端部から前記繋ぎあわせ部までの繋ぎあわせ部長さと、前記帯状部材の前記引き出し長さとを用いて、前記帯状部材の周上における前記繋ぎ合わせ部の周上予測位置を求めるステップと、
前記繋ぎあわせ部の前記周上予測位置を求める度に、前記周上予測位置を基準にして前記周上予測位置を含む前記環状体の全周より狭い範囲で、前記環状体の周上における前記繋ぎあわせ部の周上位置を測定装置を用いて検出するステップと、
前記環状体を用いて前記生タイヤを作製するステップと、
前記生タイヤを加硫してタイヤを作製するステップと、
検出した前記繋ぎあわせ部の前記周上位置を用いて、前記環状体を含む生タイヤからつくられるタイヤの、前記帯状部材の繋ぎあわせ部に起因する欠陥の有無を少なくとも検査するステップと、を含むことを特徴とするタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状体における原部材の繋ぎ合わせ位置の検出方法、タイヤの欠陥検査方法、及びタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ検査では、タイヤの外側の面(外面)と内側の面(内面)における欠陥の有無を検査する表面検査と、タイヤ内部の欠陥を検査する内部検査が行われる。
タイヤ検査のうち、特に内部検査では、タイヤの製造に起因して形成される原部材の繋ぎあわせ部の近傍に欠陥が生じ易いので、この繋ぎあわせ部の位置を特定し、その近傍において、詳細な欠陥検査を行うことが好ましい。タイヤは生タイヤ(グリーンタイヤ)を加硫することによって得られるが、生タイヤ(グリーンタイヤ)は、長尺状の帯状部材を所定の長さに切断して環状に巻き回して環状体にすることにより得ることができる。長尺状の帯状部材は、一定の原反長さのシート状の原部材を繋ぎあわせて作製されるため、帯状部材には、原部材の繋ぎあわせ部が一定の原反長さ間隔ごとに存在する。したがって、帯状部材を所定の長さに切断して作成される環状体には、原部材の繋ぎあわせ部が存在する場合もあれば、存在しない場合もあり、しかも、原部材の繋ぎあわせ部の環状体の周上における位置も環状体毎にばらつく。したがって、複数種類の帯状部材を環状にして積層した構成の生タイヤにおいても、原部材の繋ぎあわせ部の有無及び生タイヤにおける繋ぎあわせ部の周上位置も生タイヤ毎にばらつく。
【0003】
例えば、加硫前の生タイヤ(グリーンタイヤ)の内側に設けられるインナーライナのスプライス部の形状を検出することにより、生タイヤの上下を判定する技術が知られている(特許文献1)。スプライス部は、長尺状の帯状部材であるインナーライナ部材を生タイヤの周長さに応じて切断して環状に巻きつけることにより、成形されるインナーライナ部材同士の接続部であり、原部材の繋ぎあわせ部とは異なる。
具体的には、生タイヤの内壁面側に設けられたインナーライナの内壁面の表面凹凸をタイヤ周方向に沿って位相を持った2つの光反射型センサを用いて検査することにより、インナーライナのスプライス部(インナーライナを環状に巻きつけるための帯状部材同士の接続部)の形状を検出し、この形状から、生タイヤの上下を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平01−168405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記技術では、タイヤの検査を対象としてはいないが、インナーライナのスプライス部の位置を特定することができる。しかし、インナーライナは、一定の原反長さの原部材を繋ぎあわせて長尺状の帯状部材を生タイヤの周に合せて切断して部材を環状に巻きつけたものであるので、生タイヤに設けられた環状のインナーライナには、上記スプライス部の他に、原部材の繋ぎあわせ部も存在する。しかし、上記技術では、生タイヤの上下を判定するためにスプライス部を検出することはあっても原部材の繋ぎあわせ部を検出しない。
【0006】
そこで、本発明は、帯状部材同士の接続部であるスプライス部とは異なり、原部材の繋ぎあわせ部を有する帯状部材を用いて環状体を作製するとき、環状体における原部材の繋ぎあわせ部の周上位置を効率よく検出する方法、及びこの検出方法を用いたタイヤの欠陥検査方法、及びこのタイヤの欠陥検査方法を含むタイヤの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、環状体における原部材の繋ぎ合わせ位置の検出方法である。当該検出方法は、
ゴムを含む一定の原反長さのシート状の原部材を繋ぎあわせることにより形成される繋ぎあわせ部を有する長尺状の帯状部材の先端部から前記帯状部材を所定の引き出し長さ引き出して切断することにより、前記帯状部材を環状に巻きつけた環状体を順次作製する度に、前記環状体の周上における前記繋ぎあわせ部の周上予測位置を求めるステップと、
前記周上予測位置を求める度に、前記周上予測位置を基準にして前記周上予測位置を含む前記環状体の全周より狭い範囲で、前記環状体の周上における前記原部材の前記繋ぎあわせ部の周上位置を、測定装置を用いて検出するステップと、を含み、
前記周上予測位置を求めるステップでは、前記帯状部材の先端部から引き出す前記帯状部材の引き出し領域内にある前記原部材の繋ぎあわせ部の、前記先端部から前記繋ぎあわせ部までの繋ぎあわせ部長さと、前記帯状部材の前記引き出し長さとを用いて、前記繋ぎ合わせ部の前記周上予測位置を求める。
【0008】
前記帯状部材を引き出してM個目(Mは2以上の整数)の環状体を作製するとき、M個目より前に作製した環状体における、検出した前記周上位置と前記周上予測位置との間の差分を、前記繋ぎあわせ部長さと、前記帯状部材の前記引き出し長さとともに用いて、前記M個目の環状体における前記繋ぎあわせ部の前記周上予測位置を求める、ことが好ましい。
【0009】
前記環状体は、前記帯状部材を円柱形状のドラムの外周に巻きつけることにより作製され、
前記帯状部材の先端部は、前記ドラムの外周上の原点位置を基準として、前記外周の上で角度β度位置ずれしており、前記原反長さをL、前記引き出し長さをRとし、(n−1)個目(nは2以上の整数)の環状体における検出した前記繋ぎあわせ部の前記周上位置と前記繋ぎあわせ部の前記周上予測位置との差分の長さに関して、(n−1)個目(nは2以上の整数)の環状体には前記繋ぎあわせ部が存在せず前記差分の長さがない場合、及び前記繋ぎあわせ部が1つあって前記差分の長さが1つである場合は、前記差分の長さをγn−1・R/360(γn−1は、0以上の角度)で表し、(n−1)個目(nは2以上の整数)の環状体には前記繋ぎあわせ部が複数存在して前記差分の長さが複数ある場合、複数の繋ぎあわせ部のうち、前記先端部と反対側の後端部に最も近い繋ぎあわせ部における前記差分の長さをγn−1・R/360(γn−1は、0度以上360度未満の角度)で表したとき、
M個目の環状体の前記周上予測位置を求めるときに用いる前記繋ぎあわせ部長さは、iを1以上の整数として、角度β+{L・i−R×(M−1)}・(360/R)+(γ+γ+・・・+γM−2+γM−1)が0より大きく360度未満となるような整数iを用いて、L・i−R×(M−1)+(γ+γ+γ+・・・+γM−2+γM−1)・R/360で表される、ことが好ましい。
【0010】
前記帯状部材の先端部の調整のために、設定された調整長さぶん前記先端部から離れた位置で前記帯状部材を切断して前記帯状部材の新たな先端部をつくり、
前記新たな先端部から前記引き出し長さだけ引き出してM個目(Mは2以上の整数)の環状体を作製するとき、さらに、前記調整長さを用いて、前記M個目の環状体における前記繋ぎあわせ部の前記周上予測位置を求める、ことが好ましい。
【0011】
前記環状体は、前記帯状部材を円柱形状のドラムの外周に巻きつけることにより作製され、
前記帯状部材の先端部は、前記ドラムの外周上の原点位置を基準として、前記外周の上で角度β度位置ずれしており、前記原反長さをL、前記引き出し長さをRとし、(n−1)個目(nは2以上の整数)の環状体における検出した前記繋ぎあわせ部の前記周上位置と前記繋ぎあわせ部の前記周上予測位置との差分の長さに関して、(n−1)個目(nは2以上の整数)の環状体には前記繋ぎあわせ部が存在せず前記差分の長さがない場合、及び前記繋ぎあわせ部が1つあって前記差分の長さが1つである場合は、前記差分の長さをγn−1・R/360(γn−1は、0度以上360度未満の角度)で表し、(n−1)個目(nは2以上の整数)の環状体には前記繋ぎあわせ部が複数存在して前記差分の長さが複数ある場合、複数の繋ぎあわせ部のうち、前記先端部と反対側の後端部に最も近い繋ぎあわせ部における前記差分の長さをγn−1・R/360(γn−1は、0以上の角度)で表し、(n−1)個目(nは2以上の整数)の環状体を作製するときの前記調整長さをδn−1(δn−1は、0以上の長さ)で表したとき、
M個目の環状体の前記周上予測位置を求めるときに用いる前記繋ぎあわせ部長さは、iを1以上の整数として、角度β+{L・i−R×(M−1)−(δ+δ+・・・+δM−2+δM−1+δ)}・(360/R)+(γ+γ+・・・+γM−2+γM−1)が0より大きく360度未満となるような整数iを用いて、L・i−R×(M−1)−(δ+δ+・・・+δM−2+δM−1+δ)+(γ+γ+γ+・・・+γM−2+γM−1)・R/360で表される、ことが好ましい。
【0012】
前記先端部の前記環状体における前記ドラムの外周上の位置は、予め定められており、
前記環状体を用いて前記ドラム上で作製される環状の構造体には前記構造体の識別情報を表すラベルコード表示体が、予め設定された前記ドラムの外周上の位置で貼り付けられており、
前記ラベルコード表示体の位置の情報と、前記先端部の位置の情報と、検出した前記繋ぎあわせ部の前記周上位置の情報と、を前記構造体の識別情報と関連付けて、前記構造体毎に記憶手段に記憶するステップと、を有することが好ましい。
【0013】
本発明の他の一態様は、タイヤの欠陥検査方法である。当該欠陥検査方法は、
ゴムを含む一定の原反長さのシート状の原部材を繋ぎあわせることにより形成される繋ぎあわせ部を有する長尺状の帯状部材の先端部から前記原部材を所定の引き出し長さ引き出して切断することにより、前記帯状部材を環状に巻きつけた環状体を順次作製する度に、前記環状体の周上における前記繋ぎあわせ部の周上予測位置を求めるステップと、
前記周上予測位置を求める度に、前記周上予測位置を基準にして前記周上予測位置を含む前記環状体の全周より狭い範囲で、前記環状体の周上における前記原部材の前記繋ぎあわせ部の周上位置を、測定装置を用いて検出するステップと、
検出した前記繋ぎあわせ部の前記周上位置を少なくとも用いて、前記環状体を含む生タイヤからつくられるタイヤの、前記繋ぎあわせ部に起因する欠陥の有無を少なくとも検査するステップと、を含み、
前記周上予測位置を求めるステップでは、前記帯状部材の先端部から引き出す前記帯状部材の引き出し領域内にある前記原部材の繋ぎあわせ部の、前記先端部からの繋ぎあわせ部長さと、前記帯状部材の前記引き出し長さとを用いて、前記繋ぎ合わせ部の前記周上予測位置を求める。
【0014】
前記帯状部材を引き出してM個目(Mは2以上の整数)の環状体を作製するとき、M個目より前に作製した環状体における、検出した前記周上位置と前記周上予測位置との間の差分を、前記繋ぎあわせ部長さと、前記帯状部材の前記引き出し長さとともに用いて、前記M個目の環状体における前記周上予測位置を求める、ことが好ましい。
【0015】
前記環状体は、前記帯状部材を円柱形状のドラムの外周に巻きつけることにより作製され、
前記帯状部材の先端部は、前記ドラムの外周上の原点位置を基準として、前記外周の上で角度β度位置ずれしており、前記原反長さをL、前記引き出し長さをRとし、(n−1)個目(nは2以上の整数)の環状体における検出した前記繋ぎあわせ部の前記周上位置と前記周上位置に対応した前記周上予測位置との差分の長さに関して、(n−1)個目(nは2以上の整数)の環状体には前記繋ぎあわせ部が存在せず前記差分の長さがない場合、及び前記繋ぎあわせ部が1つあって前記差分の長さが1つである場合、前記差分の長さをγn−1・R/360(γn−1は、0以上の角度)で表し、(n−1)個目(nは2以上の整数)の環状体には前記繋ぎあわせ部が複数存在して前記差分の長さが複数ある場合は、複数の繋ぎあわせ部のうち、前記先端部と反対側の後端部に最も近い繋ぎあわせ部における前記差分の長さをγn−1・R/360(γn−1は、0度以上360度未満の角度)で表したとき、
M個目の環状体の前記周上予測位置を求めるときに用いる前記繋ぎあわせ部長さは、iを1以上の整数として、角度β+{L・i−R×(M−1)}・(360/R)+(γ+γ+・・・+γM−2+γM−1)が0より大きく360度未満となるような整数iを用いて、L・i−R×(M−1)+(γ+γ+γ+・・・+γM−2+γM−1)・R/360で表される、ことが好ましい。
【0016】
前記帯状部材の先端部の調整のために、設定された調整長さぶん前記先端部から離れた位置で前記帯状部材を切断して前記帯状部材の新たな先端部をつくり、
前記新たな先端部から前記引き出し長さだけ引き出してM個目(Mは2以上の整数)の環状体を作製するとき、さらに、前記調整長さを用いて、前記M個目の環状体における前記繋ぎあわせ部の前記周上予測位置を求める、ことが好ましい。
【0017】
前記環状体は、前記帯状部材を円柱形状のドラムの外周に巻きつけることにより作製され、
前記帯状部材の先端部は、前記ドラムの外周上の原点位置を基準として、前記外周の上で角度β度位置ずれしており、前記原反長さをL、前記引き出し長さをRとし、(n−1)個目(nは2以上の整数)の環状体における検出した前記繋ぎあわせ部の前記周上位置と前記周上位置に対応した前記周上予測位置との差分の長さに関して、(n−1)個目(nは2以上の整数)の環状体には前記繋ぎあわせ部が存在せず前記差分の長さがない場合、及び前記繋ぎあわせ部が1つあって前記差分の長さが1つである場合、前記差分の長さをγn−1・R/360(γn−1は、0度以上360度未満の角度)で表し、(n−1)個目(nは2以上の整数)の環状体には前記繋ぎあわせ部が複数存在して前記差分の長さが複数ある場合は、複数の繋ぎあわせ部のうち、前記先端部と反対側の後端部に最も近い繋ぎあわせ部における前記差分の長さをγn−1・R/360(γn−1は、0以上の角度)で表し、(n−1)個目(nは2以上の整数)の環状体を作製するときの前記調整長さをδn−1(δn−1は、0以上の長さ)で表したとき、
M個目の環状体の前記周上予測位置を求めるときに用いる前記繋ぎあわせ位置長さは、iを1以上の整数として、角度β+{L・i−R×(M−1)−(δ+δ+・・・+δM−2+δM−1+δ)}・(360/R)+(γ+γ+・・・+γM−2+γM−1)が0より大きく360度未満となるような整数iを用いて、L・i−R×(M−1)−(δ+δ+・・・+δM−2+δM−1+δ)+(γ+γ+γ+・・・+γM−2+γM−1)・R/360で表される、ことが好ましい。
【0018】
前記先端部の前記環状体における前記ドラムの外周上の位置は、予め定められており、
前記環状体を用いて前記ドラム上で作製される環状の前記生タイヤには前記生タイヤの識別情報を表すラベルコード表示体が、予め設定された前記ドラムの外周上の位置で貼り付けられており、
前記ラベルコード表示体の位置の情報と、前記先端部の周上位置の情報と、検出した前記繋ぎあわせ部の前記周上位置の情報と、を前記構造体の識別情報と関連付けて、前記構造体毎に記憶手段に記憶するステップと、
前記欠陥の有無を検査するステップでは、前記生タイヤからつくられる前記タイヤに依然として貼り付けられている前記ラベルコード表示体の識別情報を検出し、前記識別情報を用いて、前記記憶手段に記憶されている前記先端部の位置の情報と、前記繋ぎあわせ部の前記周上位置の情報を取得し、前記先端部の周上位置の情報と、前記繋ぎあわせ部の前記周上位置の情報を用いて、前記帯状部材の先端部に起因する欠陥及び前記繋ぎあわせ部に起因する欠陥の有無を検査する、ことが好ましい。
【0019】
本発明の更に他の一態様は、タイヤの製造方法である。当該製造方法は、
ゴムを含む一定の原反長さのシート状の原部材を繋ぎあわせることにより形成される繋ぎあわせ部を有する長尺状の帯状部材を作製するステップと、
前記帯状部材の先端部から前記原部材を成形ドラムに所定の引き出し長さ引き出して切断することにより、環状体を順次作製するステップと、
前記環状体を作製する度に、前記帯状部材の先端部から引き出す前記帯状部材の引き出し領域内にある前記原部材の繋ぎあわせ部の、前記先端部から前記繋ぎあわせ部までの繋ぎあわせ部長さと、前記帯状部材の前記引き出し長さとを用いて、前記帯状部材の周上における前記繋ぎ合わせ部の周上予測位置を求めるステップと、
前記繋ぎあわせ部の前記周上予測位置を求める度に、前記周上予測位置を基準にして前記周上予測位置を含む前記環状体の全周より狭い範囲で、前記環状体の周上における前記繋ぎあわせ部の周上位置を測定装置を用いて検出するステップと、
前記環状体を用いて前記生タイヤを作製するステップと、
前記生タイヤを加硫してタイヤを作製するステップと、
検出した前記繋ぎあわせ部の前記周上位置を用いて、前記環状体を含む生タイヤからつくられるタイヤの、前記帯状部材の繋ぎあわせ部に起因する欠陥の有無を少なくとも検査するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0020】
上述の原部材の繋ぎ合わせ部の位置の検出方法、タイヤの欠陥検査方法、及びタイヤの製造方法によれば、環状体における原部材の繋ぎあわせ部の周上位置を効率よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態の原部材の繋ぎあわせ位置の検出方法を実施する検出システムを説明する図である。
図2】(a),(b)は、帯状部材の作製例を説明する図である。
図3】(a)〜(c)は、本実施形態で行う、繋ぎあわせ部の周上位置の検出までの処理の一例を説明する図である。
図4】本実施形態で得られる、繋ぎあわせ部長さと、繋ぎあわせ部の周上予測位置を示す予測角度α’度の例を説明する図である。
図5】(a)は、本実施形態で用いるラベル表示体の貼り付け例を説明する図であり、(b)は、ラベル表示体に表示される識別情報と関連付けて記憶される周上位置の情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の環状体における原部材の繋ぎあわせ位置の検出方法、タイヤの欠陥検査方法、及びタイヤの製造方法について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
本実施形態では、環状体における原部材の繋ぎ合わせ位置の検出方法として、生タイヤ(構造体)の成形時に形成される環状体を例にして説明する。環状体は、インナーライナ部材、カーカスプライ材、ベルト部材、あるいはベルトカバー部材等の長尺状の帯状部材を生タイヤの周長に応じて切断して環状に巻きつけたものである。長尺状の帯状部材は、ゴムを含む、一定の原反長さLのシート状の原部材を繋ぎあわせることにより形成されたもので、原部材同士の繋ぎあわせ部を有する。この長尺状の帯状部材には、略一定の原反長さL毎に原部材の繋ぎあわせ部が形成されているので、環状体の作製のために帯状部材を用いる長さ(引き出し長さR)の情報と、その引き出し回数あるいは環状体の作製回数から、環状体における繋ぎあわせ部の周上予測位置を求めることができる。この周上予測位置を基準にして所定の範囲で、環状体の周上における繋ぎあわせ部の周上位置を検出する。
すなわち、本実施形態では、ゴムを含む一定の原反長さのシート状の原部材を繋ぎあわせることにより形成される繋ぎあわせ部を有する長尺状の帯状部材の先端部から原部材を所定の引き出し長さR、引き出して切断することにより、帯状部材を環状に巻きつけた複数の環状体を順次作製する。環状体を作製する度に、環状体の周上における繋ぎあわせ部の周上予測位置を求める。このとき、帯状部材の先端部から引き出す帯状部材の引き出し領域内にある原部材の繋ぎあわせ部の、帯状部材の先端部から繋ぎあわせ部までの距離である繋ぎあわせ部長さLcと、帯状部材の引き出し長さRとを用いて、環状体における繋ぎ合わせ部の周上予測位置を求める。さらに、周上予測位置を求める度に、周上予測位置を基準にして周上予測位置を含む環状体の全周より狭い範囲で、環状体の周上における原部材の繋ぎあわせ部の周上位置を、測定装置を用いて検出する。繋ぎあわせ部の周上位置では、繋ぎあわせ部の周上予測位置を基準にした環状体の全周より狭い範囲で、繋ぎあわせ部の周上位置を検出するので、繋ぎあわせ部の周上位置(繋ぎあわせ位置)を環状体の全周で計測をすることなく、繋ぎあわせ部の周上位置を効率よく検出することができる。
以下、本実施形態の詳細を説明する。
【0024】
図1は、本実施形態の原部材の繋ぎあわせ位置の検出方法を実施する検出システム1の一例を説明する図である。
検出システム1では、帯状部材10を円柱形状の成形ドラム12の外周に巻きつけて、環状体14を作製するとき、原部材11(図2(a),(b)参照)の繋ぎあわせ部Cの、環状体における周上位置が検出される。
検出システム1は、繋ぎあわせ部検出センサ20と、ラベルコードリーダ21と、制御・処理装置30と、を備える。
【0025】
成形ドラム12の周囲には、生タイタの成形のために帯状部材10を所定の長さ引き出す部材引き出し機構16が設けられている。部材引き出し機構16は、たとえば、帯状部材10を搬送させる駆動ローラを含む。部材引き出し機構16の動作は、制御・処理装置30の指示に従がって制御される。部材引き出し機構16が引き出す帯状部材10の引き出し長さは、制御・処理装置30によって設定される。
【0026】
繋ぎあわせ部検出センサ20は、成形ドラム12に巻きつけられた帯状部材10で構成される環状体14における原部材11の繋ぎあわせ部Cを検出するセンサである。繋ぎあわせ部検出センサ20は、例えばレーザ変位計等により、環状体14の周上の表面凹凸を計測するセンサである。計測データは、制御・処理装置30に送られるように構成される。
ラベルコードリーダ21は、生タイヤに貼り付ける後述するラベルコード表示体50に表示される識別情報を読む取るセンサである。
【0027】
成形ドラム12は、成形ドラム12の中心軸Axis周りに回転するように、例えば電動モータ等の駆動源を含むドラム駆動部18が設けられている。ドラム駆動部18の動作は、制御・処理装置30の指示に従がって成形ドラム12を回転させるように、制御される。
【0028】
制御・処理装置30は、CPU32及びメモリ34を備えるコンピュータで構成されている。メモリ34には、プログラムが記憶されており、プログラムを呼び出して起動することにより、設定部36、周上予測位置算出部38、周上位置検出部40、及び管理部41が形成される。すなわち、設定部36、周上予測位置算出部38、周上位置検出部40、及び管理部41は、プログラムの起動により形成されるソフトウェアモジュールである。したがって、これらの動作は、実質的にCPU32が司る。制御・処理装置30には、ディスプレイ42及びマウス・キーボード44が接続されている。
【0029】
設定部30は、帯状部材10の先端部Eの成形ドラム12上の周上位置(スプライス部Sの周上位置)、成形された生タイヤに貼り付ける後述するラベルコード表示体50(図5(a)参照)の成形ドラム12上の周上位置、及び部材引き出し機構16による帯状部材10の引き出し長さRの情報を、ディスプレイ42に表示された入力設定画面をオペレータが見ながらマウス・キーボード44を介して行った入力に従がって設定する。各周上位置は、予め設定された成形ドラム12の周上の原点位置θ=0を基準とした方位方向(図中のθ方向)の角度によって設定される。本実施形態では、スプライス部Sの周上位置は、原点位置θ=0に対して反時計回りに角度β度で設定され、ラベルコード表示体の周上位置は、原点位置θ=0に対して反時計回りに角度φ度(図5(a)参照)で設定される。
【0030】
制御・処理装置30は、設定された引き出し長さRに基づいて、部材引き出し機構16の動作を制御することにより、帯状部材10の引き出し長さRを実現する。なお、引き出し長さRは、帯状部材10の先端部近傍の部分と後端部近傍の部分を成形ドラム12上で一定長さオーバラップさせるため、成形ドラム12の周の長さよりも長く設定されることが好ましい。
【0031】
成形ドラム12は、成形開始前、帯状部材10の先端部Eが成形ドラム12上に配置する位置が、原点位置θ=0から反時計回りに角度β度ずれた位置になるように、予め回転する。これにより、環状体14のスプライス部Sの周上位置が、角度β度の位置になる。スプライス部Sの周上位置とは、例えば、先端部Eの周上位置である。
【0032】
生タイヤの成形では、帯状部材10の先端部Eから所定の引き出し長さR、帯状部材10を引き出して切断することにより、帯状部材10を環状に巻きつけた環状体14を順次作製する。
周上予測位置算出部38は、環状体14を作製する度に、環状体14の周上における原部材11の繋ぎあわせ部Cの周上予測位置PC(図3(c)参照)を求める。この周上予測位置PCは、設定部36で設定された情報を用いて求められる。具体的な算出方法は、後述する。
【0033】
周上位置検出部40では、周上予測位置を求める度に、周上予測位置PCを基準にして周上予測位置PCを含む環状体14の全周より狭い範囲で、環状体14の周上における原部材11の繋ぎあわせ部Cの周上位置を検出する。この周上位置の検出は、繋ぎあわせ部検出センサ20から送られてくる環状体14の表面凹凸の計測データを用いて行われる。例えば、表面凹凸の計測データにおける表面高さ方向の段差が設定された第1閾値を越える周上位置、あるいは、段差の勾配が第2閾値を越える周上位置を、繋ぎあわせ部Cの周上位置として、周上位置検出部40は定める。本実施形態では、繋ぎあわせ部Cの周上位置は、原点位置θ=0から反時計回りの方向に沿って角度α度で表す。
【0034】
さらに、作製された環状体14(例えば、インナーライナ部材の環状体)に積層するように、別の帯状部材14(例えば、カーカス部材、ベルト部材、ベルトカバー材)を順次巻きつけることにより、複数の帯状部材14が積層した構成の環状体、すなわち生タイヤは作製される。成形ドラム12上で作製された生タイヤには、生タイヤ毎の識別情報を表す、後述するラベルコード表示体50(図5(a)参照)が、予め設定された生タイヤにおける周上位置に貼り付けられるように、成形ドラム12は回転する。本実施形態では、原点位置θ=0から反時計回りの方向に沿って角度φ度ずれた位置にラベルコード表示体50が貼り付けられる。
本実施形態では、スプライス部Sの周上位置及びラベルコード表示体の周上位置は予め設定された位置であるが、スプライス部Sの周上位置及びラベルコード表示体の周上位置は、予め設定されず、スプライス部S及びラベルコード表示体は任意の周上位置に貼り付けられてもよい。この場合、スプライス部S及びラベルコード表示体の周上位置はセンサを用いて検出されることが好ましい。センサで検出された周上位置が角度β度及び角度φ度で表される。
【0035】
周上位置検出部40は、繋ぎあわせ部Cの検出した周上位置の情報(角度α度)、スプライス部Sの周上位置の情報(角度β度)、ラベルコード表自体50の周上位置の情報(角度φ度)が、ラベルコード表自体50に表示される生タイヤの識別情報と関連付けて、生タイヤ毎にメモリ34に記憶するように構成される。
【0036】
管理部41は、設定部36、周上位置検出部40、及び周上位置検出部40の動作を制御、管理するとともに、ラベルコードリーダ21から送られる読み取り結果から識別情報を抽出するように構成されている。
【0037】
このような検出システム1で行う繋ぎあわせ部Cの位置の検出方法、欠陥検査方法、及びタイヤの製造方法を詳細に説明する。
【0038】
図2(a),(b)は、帯状部材10の作製例を説明する図である。図2(a)に示す帯状部材10は、シート状の原部材11を一方向に送り出しながら、一定の長さ毎に、原部材11の長さ方向に直交する幅方向に沿って切断し、さらに、切断部11aが帯状部材10の側部になるように、切断した原部材11同士を繋ぎあわせることで作製される。これにより、原部材11の側部11bは、帯状部材10において、原部材11の繋ぎあわせ部Cに対応する。したがって、帯状部材10は、原部材11の幅に対応する一定の原反長さL毎に繋ぎあわせ部Cが形成される。例えば、インナーライナ部材、カーカスプライ部材、あるいはベルトカバー部材等が図2(a)に示す形態の帯状部材10に対応する。
【0039】
一方、図2(b)に示す帯状部材10は、シート状の原部材11を一方向に送り出しながら、一定の長さ毎に、原部材11の長さ方向と直交する幅方向に対して傾斜した方向に沿って切断し、さらに、切断部11aが帯状部材10の側部になるように、切断した原部材11同士を繋ぎあわせることで作製される。これにより、原部材11の側部11bは、帯状部材10において、原部材11の繋ぎあわせ部Cに対応する。したがって、帯状部材10は、原部材11の切断長さに対応する一定の原反長さL毎に繋ぎあわせ部Cが形成される。したがって、繋ぎあわせ部Cは、帯状部材10において、帯状部材10の幅方向に対して傾斜した方向に延びる。この場合、本実施形態における繋ぎあわせ部Cの周上位置は、例えば、帯状部材10の幅方向の中心位置における周上位置を代表して用いる。例えば、ベルト部材は、図2(b)に示す形態の帯状部材10に対応する。
【0040】
図3(a)〜(c)は、繋ぎあわせ部Cの周上位置Cを検出するまでの処理の一例を説明する図である。
まず、設定部36で設定された帯状部材10の先端部Eの成形ドラム12上の周上位置(スプライス部Sの周上位置)が原点位置θ=0から反時計回りに角度β度ずれた位置になるように、成形ドラム12を回転して位置調整が行われる。この状態が、図3(a)に示されている。帯状部材10の先端部Eは、図示されないゲットロール等により成形ドラム12に押圧されて固定され、この状態で成形ドラム12が回転することにより、成形ドラム12の周上に帯状部材10は巻きまわされる。一周巻きまわされた帯状部材10は図示されないカッターで切断される。切断された帯状部材10の長さは、調整部20で予め設定された引き出し長さRである。
このとき、周上予測位置算出部28は、帯状部材10の先端部Eから引き出す帯状部材の引き出し長さRぶんの引き出し領域内にある原部材11の繋ぎあわせ部Cの、先端部Eから繋ぎあわせ部Cまでの繋ぎあわせ部長さLc(図1参照)と、帯状部材10の引き出し長さRとを用いて、繋ぎ合わせ部Cの周上予測位置を求める。例えば、原反長さLを2000mmとし、引き出し長さRを1750mmとして環状体14を順次作製する場合、繋ぎあわせ部Cは、1個目の環状体14には存在しないが、2個目の環状体14に用いる帯状部材10の先端部Eから250mm(=2000mm−1750mm)の長さの位置に、繋ぎあわせ部Cが存在する。したがって、このときの繋ぎあわせ部長さLcは250mmとなる。3個目に環状体14に用いる帯状部材10には、帯状部材10の先端部Eから500mm(=2000mm×2−1750mm×2)の長さの位置に、繋ぎあわせ部Cが存在する。この繋ぎあわせ部Cの先端部Eからの距離が、繋ぎあわせ部長さLcである。
【0041】
このように、帯状部材10の先端部Eから繋ぎあわせ部長さLcだけ離れた位置に繋ぎあわせ部Cが存在するので、この帯状部材10を用いて作製される環状体14には、先端部Eから反時計回りに繋ぎあわせ部長さLc、周上に沿って離れた位置に繋ぎあわせ部Cが存在すると予測される。しかし、帯状部材10は、成形体12上で引っ張られながら環状に巻きつけられるので、ゴムを含む帯状部材10は伸縮により、先端部Eから反時計回りに繋ぎあわせ部長さLcだけ、周上に沿って離れた位置に繋ぎあわせ部Cが存在するとは限らない。すなわち、実際の繋ぎあわせ部Cは、繋ぎあわせ部長さLcと引き出し長さRを用いて求められる周上予測位置PCからずれる場合がある。
このため、本実施形態では、周上予測位置PCを基準にして周上予測位置PCを含む環状体14の全周より狭い検査範囲Re(図3(c)参照)で、繋ぎあわせ部Cを繋ぎあわせ部検出センサ20で測定し、周上位置検出部40で繋ぎあわせ部Cの周上位置を検出する。
【0042】
環状体14を作製する際、上述したように伸縮により、周上予測位置PCと繋ぎあわせ部Cの周上位置はずれているので、このずれを考慮しないと、多数の環状体14を作製したとき、上記ずれが蓄積されることにより周上予測位置PCを基準とした繋ぎあわせ部Cの検査範囲Reから、実際の繋ぎあわせ部Cの周上位置が外れる可能性が高い。このため、以前に環状体14を作製したときの上記ずれを蓄積して、先端部Eから繋ぎあわせ部Cまでの繋ぎあわせ部長さLcを調整することが好ましい。具体的には、帯状部材10を先端部Eから引き出してM個目(Mは2以上の整数)の環状体14を作製するとき、M個目より前に作製した環状体14における、検出した周上位置と周上予測位置PCとの間の差分を、繋ぎあわせ部長さLcと、帯状部材10の引き出し長さRとともに用いて、M個目の環状体14における繋ぎあわせ部Cの周上予測位置PCを求めることが好ましい。
【0043】
具体的には、M個目(Mは2以上の整数)の環状体14の周上予測位置を求めるときに用いる繋ぎあわせ部長さLcは、iを1以上の整数として、角度β+{L・i−R×(M−1)}・(360/R)+(γ+γ+・・・+γM−2+γM−1)が0より大きく360度未満となるような整数iを用いて、L・i−R×(M−1)+(γ+γ+γ+・・・+γM−2+γM−1)・R/360で表すことが好ましい。ここで、γn−1(nは2以上の整数)は、0度以上360度未満の角度であって、γn−1・R/360は、(n−1)個目(nは2以上の整数)の環状体14における繋ぎあわせ部Cの検出した周上位置と繋ぎあわせ部Cの周上予測位置PCとの差分の長さに関するものである。より具体的には、γn−1・R/360は、(n−1)個目(nは2以上の整数)の環状体14には繋ぎあわせ部Cが存在せず上記差分の長さがない場合、及び繋ぎあわせ部Cが1つあって差分の長さが1つである場合の上記差分の長さを表している。繋ぎあわせ部Cが存在せず上記差分の長さがない場合は、γn−1=0となる。また、γn−1・R/360は、(n−1)個目(nは2以上の整数)の環状体14には繋ぎあわせ部Cが複数存在して上記差分の長さが複数ある場合、複数の繋ぎあわせ部Cのうち、先端部Eと反対側の後端部に最も近い繋ぎあわせ部Cにおける上記差分の長さである。
【0044】
図4は、本実施形態で得られる、繋ぎあわせ部長さLcと、繋ぎあわせ部Cの周上予測位置PCを示す予測角度α’度の例を説明する図である。図4に示す表では、引き出し長さR=1750mmとし、原反長さL=2000mmとし、帯状部材14を成形ドラム12に一周巻き付けることで1つの環状体14を作製する例を示している。このとき、図4に示す表では、ドラム巻きつけ回数にしたがって変化する繋ぎあわせ部長さLcと、周上予測位置PCに対応する繋ぎあわせ部Cの周上予測位置PCを示す予測角度α’度(原点位置θ=0から反時計回りの方向の角度)とが示されている。
【0045】
ドラム巻きつけ回数1回目では(1個目の環状体14を作製するとき)、繋ぎあわせ部長さLc=2000mmであり、引き出し長さR=1750mmであるので、1個目の環状体14には、繋ぎあわせ部Cは存在しないと予測される。このときのγ=0となる。ドラム巻きつけ回数2回目(2個目の環状体14を作製するとき)では、繋ぎあわせ部長さLcは250mm(=2000mm−1750mm)となり、予測角度α’度=β+Lc(=250)/R(=1750)×360と表される。このときの差分角度はγと表す。さらに、ドラム巻きつけ回数(M−1)回目(Mは2以上の整数)((M−1)個目の環状体14を作製するとき)では、角度β+{L・i−R×(M−1)}・(360/R)+(γ+γ+・・・+γM−2+γM−1)が0より大きく360度未満となるような整数iを用いて、L・i−R×(M−1)+(γ+γ+γ+・・・+γM−2+γM−1)・(R/360)で表される。したがって、周上予測位置PC(予測角度α’)は、角度β+{L・i−R×(M−1)}・(360/R)+(γ+γ+・・・+γM−2+γM−1)と表すことができる。
【0046】
なお、帯状部材10の先端部Eの調整のために、設定された調整長さぶん先端部Eから離れた位置で帯状部材10を切断して帯状部材の新たな先端部Eをつくる場合がある。
例えば、先端部Eがつぶれて所定の寸法から外れている場合や、先端部Eあるいは後端部の近傍に繋ぎあわせ部Cが存在する場合、帯状部材10の先端部Eの調整のために、帯状部材10の先端部Eを含めた領域を切断除去する場合がある。例えば、帯状部材10を先端部Eから引き出してM個目(Mは2以上の整数)の環状体を作製する前に、帯状部材10の先端部Eに対して予め定められた第1の範囲内に、あるいはM個目の環状体14を作製するため先端部Eから帯状部材10を引き出して切断することにより得られる帯状部材10の後端部に対して予め設定された第2の範囲内に、繋ぎあわせ部Cがあるか否かを判定する。この判定の結果、繋ぎあわせ部Cが第1の範囲内にある、あるいは第2の範囲内にある場合、繋ぎあわせ部Cが第1の範囲及び第2の範囲からはずれるように、帯状部材10の先端部Eの調整のために、先端部Eを含めた領域を切断除去する。
【0047】
このような場合、新たな先端部Eから引き出し長さRだけ引き出してM個目(Mは2以上の整数)の環状体14を作製するとき、さらに、上述の調整長さを用いて、M個目の環状体14における繋ぎあわせ部Cの周上予測位置PCを求めることが好ましい。
このとき、(n−1)個目(nは2以上の整数)の環状体を作製するときの上記調整長さをδn−1(δn−1は、0以上の長さ)で表したとき、M個目の環状体14の周上予測位置PCを求めるときに用いる繋ぎあわせ位置長さLcは、上述した式に対して、iを1以上の整数として、角度β+{L・i−R×(M−1)−(δ+δ+・・・+δM−2+δM−1+δ)}・(360/R)+(γ+γ+・・・+γM−2+γM−1)が0より大きく360度未満となるような整数iを用いて、L・i−R×(M−1)−(δ+δ+・・・+δM−2+δM−1+δ)+(γ+γ+γ+・・・+γM−2+γM−1)・R/360で表すことが好ましい。このように、M個目の環状体14を作製するとき、M個目及びM個目より前の環状体14における調整長さを考慮して繋ぎあわせ位置長さLcを求めることにより、より精度の高い繋ぎあわせ部Cの周上予測位置PC(予測角度α’)を求めることができる。精度の高い周上予測位置PCとは、周上予測位置PCを基準として定めた検査範囲において、繋ぎあわせ部Cの周上位置を確実に検出できることをいう。
【0048】
図3(c)は、繋ぎあわせ部検出センサ20を用いた繋ぎあわせ部Cの計測を説明する図である。繋ぎあわせ部Cの計測では、図3(c)に示すように、繋ぎあわせ部Cの周上予測位置PCを基準として、周上予測位置PCを含む所定の検査範囲Reにおいて、環状体14の周上の表面凹凸を計測することにより、繋ぎあわせ部Cの周上位置を検出することができる。この場合、検査範囲Reの周に沿った長さは、周上予測位置PCを中心として、環状体14の周の長さの1/20〜1/10の長さであることが好ましい。
【0049】
このようにして検出される繋ぎあわせ部Cの周上位置の情報、具体的には、成形ドラム12における原点位置θ=0からの反時計回りの方向に沿った角度α度の情報と、スプライス部Sの周上位置を表す、原点位置θ=0からの反時計回りの方向に沿った角度β度の情報はメモリ34に記憶される。
【0050】
作製された環状体14に、さらに別の種類の帯状部材10を積層して巻き付けることを繰り返し行い、別の種類の帯状部材10を巻き付けて環状体14を作製するたびに、繋ぎあわせ部Cの周上予測位置PCを求めることと、繋ぎあわせ部Cの周上位置の検出とを行って、繋ぎあわせ部Cの周上位置の情報とスプライス部Sの周上位置の情報がメモリ34に記憶される。
【0051】
こうして複数の帯状部材10が環状体14に積層して環状に巻きつけられて形成された生タイヤには、図5(a)に示されるように、ラベルコード表示体50が貼り付けられる。図5(a)は、ラベル表示体50の貼り付けの一例を説明する図であり、図5(b)は、ラベル表示体50に表示される識別情報と関連付けて記憶される周上位置の情報の一例を示す図である。図5(a)に示すように、生タイヤにおける予め設定された周上位置に貼り付けられるように、成形ドラム12は回転する。図5(a)に示す例では、原点位置θ=0から反時計回りの方向に沿って角度φ度ずれた位置にラベルコード表示体50が貼り付けられる。角度φ度は、設定部30で設定されたものであり、作業者が成形時の作業フローで定まっているラベルコード表示体50の貼り付け位置が、角度φ度の位置になるように、成形ドラム12上の生タイヤを回転させる。このようなラベルコード表示体50を貼り付ける周上位置の情報は、メモリ34に記憶される。
メモリ34に記憶された、識別情報と関連付けられた各周上位置の情報は、タイヤの検査を行う検査工程で欠陥検査を行う欠陥検査装置に送られる。
【0052】
生タイヤに貼り付けられたラベルコード表示体50のラベルコードは、ラベルコードリーダ21によって読み取られ、この読み取り結果から管理部41でラベルコード表示体50に示されている識別情報が取り出される。この識別情報は、メモリ34に送られ、図5(b)に示すように、繋ぎあわせ部Cの周上位置の情報、スプライス部Sの周上位置の情報、及びラベルコード表示体50を貼り付ける周上位置の情報と、取り出された識別情報が関連付けられて記憶される。なお、図5(b)では、1つの種類の帯状部材(例えば、インナーライナ部材)の各周上位置の情報が、識別情報と関連付けて記憶されるが、別の種類の帯状部材(例えば、カーカスプライ材、ベルト部材、あるいはベルトカバー部材)の各周上位置の情報も、識別情報と関連付けて記憶される。
【0053】
成形された生タイヤは、トレッドゴムが巻きつけられた後、加硫される。加硫によって生タイヤは加硫済みタイヤ、すなわちタイヤになる。この後、タイヤの欠陥の有無が検査される。このとき、タイヤには、依然としてラベルコード表示体50が貼り付けられているので、検査工程では、ラベルコード表示体50のラベルコードをラベルコードリーダで読み取り、読み取ったラベルコードから抽出した識別情報を利用して、制御・処理装置30から欠陥検査装置に送られた、識別情報と関連付けられた各周上位置の情報から、各周上位置の情報を取得する。本実施形態では、繋ぎあわせ部Cの周上位置の情報を少なくとも用いて、生タイヤからつくられるタイヤの、繋ぎあわせ部Cに起因する欠陥の有無を少なくとも検査する。本実施形態では、スプライス部S(先端部E)の周上位置の情報と、繋ぎあわせ部Cの周上位置の情報を用いて、スプライス部S(先端部E)の周上位置周りの領域と、繋ぎあわせ部Cの周上位置周りの領域を定め、これらの領域について、帯状部材10の先端部Eに起因する欠陥及び繋ぎあわせ部Cに起因する欠陥の有無を詳細に検査することが好ましい。より具体的には、ラベルコード表示体50の周上位置を基準とした、スプライス部S(先端部E)の周上位置と、繋ぎあわせ部Cの周上位置が特定できるので、この特定される周上位置を含む領域を定めることができる。
【0054】
このように、本実施形態では、繋ぎあわせ部Cの周上予測位置PCを基準にした環状体の全周より狭い検査範囲Reで、繋ぎあわせ部Cの周上位置を検出するので、繋ぎあわせ部Cの位置を環状体14の全周で計測をすることなく、繋ぎあわせ部Cの位置を効率よく検出することができる。
【0055】
本実施形態のタイヤの欠陥検査方法は、タイヤの製造プロセスに導入することができる。具体的には、生タイヤの成形時に、本実施形態の繋ぎあわせ部Cの周上位置の検出を行うとともに、加硫後のタイヤの、繋ぎあわせ部Cに起因する欠陥及びスプライス部Sに起因する欠陥の有無を検査することにより、欠陥が許容できないタイヤは、不良品としてスクリーニングすることができる。
【0056】
以上、本発明の原部材の繋ぎ合わせ位置の検出方法、タイヤの欠陥検査方法、及びタイヤの製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0057】
1 検出システム
10 帯状部材
11 原部材
11a 切断部
11b 側部
12 成形ドラム
14 環状体
16 部材引き出し機構
18 ドラム駆動部
20 繋ぎあわせ部検出センサ
21 ラベルコードリーダ
30 制御・処理装置
32 CPU
34 メモリ
36 設定部
38 周上予測位置算出部
40 周上位置検出部
41 管理部
42 ディスプレイ
44 マウス・キーボード
図1
図2
図3
図4
図5