(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
管理対象物(57)が載置される複数の棚(21〜26)が配列された空調対象空間(S1)において、該空調対象空間(S1)の空調を行う空調システム(10)であって、
互いに温度及び湿度の異なる空調空気を生成して吹き出す複数の空調機(61,65,161〜167)と、
各上記空調機(61,65,161〜167)の吹き出し口と繋がっており、各上記空調機(61,65,161〜167)から吹き出される空調空気を所定位置まで搬送する搬送部(71,75,171〜177)と
を備え、
上記空調対象空間(S1)には、空気用通路(31〜35)と該空気用通路(31〜35)を挟んで位置する上記棚(21〜22,23〜24,25〜26)とによって構成される棚群(G1〜G3)が並んでおり、
上記所定位置は、各上記棚群(G1〜G3)の上記空気用通路(31〜35)であって、
各上記棚群(G1〜G3)の上記空気用通路(31〜35)では、複数の上記空調機(61,65,161〜167)のうち少なくとも2つの上記空調機(61,65,161〜167)からの空調空気が集められて混合された後、該空気用通路(31〜35)に対応する上記棚群(G1〜G3)の上記棚(21〜22,23〜24,25〜26)それぞれに供給される
ことを特徴とする空調システム。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0020】
≪実施形態1≫
<概要>
空調システム(10)は、空調対象空間の温度及び湿度を制御するシステムである。特に、空調システム(10)は、空調対象空間の温度及び湿度を、空調対象空間において管理されている管理対象物の位置毎に異ならせることができる。
【0021】
本実施形態1では、空調システム(10)が、野菜や果物等の植物(57)(
図3参照)を栽培する植物工場及び栽培ハウス等の栽培室(S1)に構築される場合を例示する。空調システム(10)は、栽培中の植物(57)を温度及び湿度の管理対象物とし、植物(57)の生長が促進されるように、栽培室(S1)内を空調対象空間として空調を行うシステムである。
【0022】
<栽培室における栽培棚等の配置について>
図1等に示すように、栽培室(S1)には、植物(57)が載置される栽培棚(21,22,23,24,25,26)(棚に相当)が、平面上に複数設置されている。
【0023】
ここで、先ずは栽培室(S1)内の栽培棚(21〜26)等の配置について、
図1〜
図3を用いて説明する。
【0024】
なお、栽培室(S1)は、平面視において矩形状となっている。
図1及び
図2では、X方向に延びる側壁(S11,S13)がY方向に延びる側壁(S12,S14)よりも長い場合を例示している。X方向及びY方向は、平面上において、概ね垂直に交差している。しかし、栽培室(S1)の形状はこれに限定されない。
【0025】
栽培室(S1)には、複数の栽培棚(21〜26)がX方向に互いに離れて配列されている。各栽培棚(21〜26)は、平面上において、Y方向つまりは側壁(S12,S14)に沿って細長く、且つ、図示していないが鉛直方向(X方向及びY方向の両方向に垂直な方向)にも延びている。そして、栽培棚(21〜26)は、各側壁(S11〜S14)から離れて位置している。
【0026】
栽培棚(21〜26)のうち、栽培棚(21)と栽培棚(22)との間、栽培棚(23)と栽培棚(24)との間、栽培棚(25)と栽培棚(26)との間には、空気用通路(31,33,35)が形成されている。空気用通路(31〜35)は、隣接する2つの栽培棚(21〜22,23〜24,25〜26)に挟まれるようにして位置することにより形成された空間である。具体的に、空気用通路(31〜35)は、栽培棚(21〜26)と同様、Y方向に延びると共に鉛直方向にも延びている。図示していないが、空気用通路(31〜35)には、空調機(61,65)からの空調空気が例えば鉛直方向の上部から内部に流入する。
【0027】
以下では、説明の便宜上、1本の空気用通路(31〜35)と、該空気用通路(31〜35)を挟んで位置する2つの栽培棚(21〜22,23〜24,25〜26)とによって構成される単位を、“棚群(G1,G2,G3)”と呼称する。具体的に、棚群(G1)は、空気用通路(31)と栽培棚(21,22)とによって構成される。棚群(G2)は、空気用通路(33)と栽培棚(23,24)とによって構成される。棚群(G3)は、空気用通路(35)と栽培棚(25,26)とによって構成される。各棚群(G1〜G3)は、栽培棚(21〜26)及び空気用通路(31〜35)の並び方向であるX方向と概ね垂直に交差する方向(Y方向)に延設されている。
【0028】
上記棚群(G1〜G3)は、平面上において、互いにX方向に所定距離離れて位置している。このような配列により、
図1及び
図2の破線で示すように、側壁(S14)と当該側壁(S14)に最も近い栽培棚(21)との間、栽培棚(22)と栽培棚(23)との間、栽培棚(24)と栽培棚(25)との間、側壁(S12)と該側壁(S12)に最も近い栽培棚(26)との間には、人が通過するための人用通路(41,42,43,44)が形成されている。つまり、人用通路(41,44)は、側壁(S14,S12)と栽培棚(21,26)との間の空間を含み、人用通路(42,43)は、栽培棚(22〜23,24〜25)同士の間の空間を含む。これら複数の人用通路(41〜44)は、いずれもY方向に延びており、互いに平行となるように位置している。
【0029】
以上から、栽培室(S1)には、平面上において、棚群(G1〜G3)及び人用通路(41〜44)が、X方向に沿って交互に並んで配置されていると言える。
【0030】
そして、本実施形態1に係る棚群(G1〜G3)は、棚群(G1〜G3)の延設方向(Y方向)に沿って複数の区画(Zo1,Zo2,Zo3,Zo4,Zo5,Zo6,Zo7,Zo8,Zo9)に区分されている。区画(Zo1〜Zo9)は、温度及び湿度を調整する空間単位として定義されたものである。
【0031】
図1及び
図2では、各棚群(G1〜G3)が、Y方向に均等に3つの区画(Zo1〜Zo3,Zo4〜Zo6,Zo7〜Zo9)に区分されている場合を例示している。なお、区分数は、3つ以外であってもよく、また、棚群(G1〜G3)毎に区分数が異なっていても良い。
【0032】
更に、各人用通路(41〜44)に対応する栽培室(S1)の天井部分には、一点鎖線で示すように、複数の開口部(Op1,Op2,Op3,Op4,Op5,Op6,Op7,Op8,Op9,Op10,Op11,Op12)が形成されている。各開口部(Op1〜Op12)は、栽培室(S1)内に開口し、各区画(Zo1〜Zo9)に対応するようにして設けられている。各開口部(Op1〜Op12)からは、栽培室(S1)内の空気が吸い込まれる。
【0033】
図1及び
図2では、区画(Zo1〜Zo9)の数は9つであり、開口部(Op1〜Op12)は、1の区画(Zo1〜Zo9)に対し2つ設けられている。特に、人用通路(42,43)の天井に設けられた開口部(Op4〜Op9)は、該開口部(Op4〜Op9)からみて両側壁(S12,S14)側に位置する2つの区画に共通して設けられたものとなっている。例えば、開口部(Op4)は、区画(Zo1)に対応する開口部であり、且つ、区画(Zo4)に対応する開口部でもある。
【0034】
なお、栽培棚(21〜26)には、図示していないが、鉛直方向に向けて段が複数段形成されている。各段には、栽培ベッド(50)が複数載置される。
【0035】
図3に示すように、栽培ベッド(50)は、植物(57)を生育させるためのものであって、植物(57)が植え付けられる栽培パネル(51)と、植物(57)を生育するための養液(55)を溜める養液槽(53)とで構成される。栽培パネル(51)は、ポリスチレンや発砲樹脂等である断熱性の比較的高い材質が水平に延びることによって形成された板状部材である。栽培パネル(51)には、水平面上において互いに所定間隔離れて植物植え付け位置が複数あり、これらの位置それぞれには、ポリウレタン等の材質で形成されたスポンジ(52)が、栽培パネル(51)を上下に貫通するような状態で存在している。このスポンジ(52)それぞれに、植物の苗が固定される。養液槽(53)は、上面が開放された水槽であって、内部には養液(55)が貯留されている。養液(55)の上方には、養液槽(53)の上面を覆うようにして栽培パネル(51)が載置されている。
【0036】
更に、図示してはいないが、栽培棚(21〜26)の各段の上方には、蛍光灯やLED等の照明機器が設置されている。照明機器が点灯及び消灯を繰り返すことで、栽培室(S1)内では、人工的に昼及び夜の環境が作り出される。昼の長さ(明期)及び夜の長さ(暗期)は、植物(57)に応じた生育環境となるように適宜調節される。
【0037】
栽培室(S1)内の植物(57)の生育温度、即ち植物(57)の生育にとって適切な温度は、生育状態によっても異なるが、明期と暗期とでも異なっている。一例として、生育温度は、明期にて約23±2℃、暗期にて約18±2℃となる。
【0038】
<空調システムの構成>
上述した栽培室(S1)内に構築されている空調システム(10)は、
図1及び
図2に示すように、複数の空調機(61,65)、吹き出し側搬送部(71,75)(搬送部に相当)、複数の定風量制御装置(72a,72b,72c,72d,72e,72f,72g,72h,72i,77a,77b,77c,77d,77e,77f,77g,77h,77i)、及び吸い込み側搬送部(81)を備える。
【0039】
−空調機−
本実施形態1の複数の空調機は、第1空調機(61)及び第2空調機(65)を有する。第1空調機(61)及び第2空調機(65)は、互いに温度及び湿度の異なる空調空気を生成して吹き出す。第1空調機(61)及び第2空調機(65)は、それぞれ室外機と室内機とを備え、室外機と室内機とに跨るようにそれぞれ冷媒回路が形成されている。
図1及び
図2では、室外機の図示を省略し、室内熱交換器及び室内ファンが収容された室内機(62a,62b,62c,66a,66b,66c)のみを図示している。
【0040】
各室内機(62a〜62c,66a〜66c)は、人用通路(44)の天井付近及び天井裏等に設置されている。各室内機(62a〜62c,66a〜66c)は、室内熱交換器における冷媒との熱交換によって空気を目標の温度及び湿度に近づける。熱交換後の空気は、空調空気として各室内機(62a〜62c,66a〜66c)から吹き出される。
【0041】
特に、本実施形態1では、1の栽培室(S1)に対し2つの空調機として第1空調機(61)及び第2空調機(65)を配置させているが、これらの空調機(61,65)には、あえて異なる仕様のものが採用されている。
【0042】
具体的に、第1空調機(61)には、中温度帯用空調機が採用される。中温度帯用空調機は、一般的な空調機の使用温度範囲(20℃〜30℃)よりも低い使用温度範囲(10℃〜20℃)を有する。中温度帯用空調機は、適した温度が約18℃程度となる植物(57)の暗期の際にも対応可能である。
【0043】
第2空調機(65)には、高顕熱用空調機が採用される。高顕熱用空調機は、潜熱処理よりも顕熱処理を優先させる仕様の空調機である。それ故、高顕熱用空調機である第2空調機(65)は、中温度帯用空調機である第1空調機(61)よりも蒸発温度が高めに設定されている。即ち、第2空調機(65)の除湿能力は、第1空調機(61)よりも弱い。
【0044】
なお、本実施形態1では、上述した通り、各空調機(61,65)がそれぞれ複数台の室内機(62a〜62c,66a〜66c)を有する場合を例示している。これは、空調システム(10)が、栽培室(S1)内の空調負荷(温度差等)に応じて運転するべき室内機の台数を制御することにより、その時々の栽培室(S1)の環境に適した空調空気を栽培室(S1)内に供給できるようにするためである。しかし、各空調機(61,65)の室内機は、1台であってもよいし、いずれかの空調機が室内機を複数台有するような構成であってもよい。
【0045】
−吹き出し側搬送部−
吹き出し側搬送部(71)は、ダクトで構成されており、その一端(空気の入口端)は第1空調機(61)の室内機(62a〜62c)それぞれの吹き出し口と繋がっている。吹き出し側搬送部(71)は、各室内機(62a〜62c)から吹き出される空調空気を、所定位置まで搬送する。
【0046】
特に、吹き出し側搬送部(71)の他端(空気の出口端)は、各区画(Zo1〜Zo9)の空気用通路(31〜35)内に位置している。吹き出し側搬送部(71)は、各室内機(62a〜62c)から吹き出される空調空気を一旦合流させ、次いで合流させた空調空気を各区画(Zo1〜Zo9)に分配して吹き出すような構成となっている。即ち、本実施形態1に係る上記所定位置とは、各区画(Zo1〜Zo9)における空気用通路(31〜35)の配設位置である。
【0047】
吹き出し側搬送部(75)は、第2空調機(65)に対応するものであって、ダクトで構成されている。吹き出し側搬送部(75)の一端(空気の入口端)は、第2空調機(65)の室内機(66a〜66c)それぞれの吹き出し口と繋がっている。
【0048】
特に、吹き出し側搬送部(75)の他端(空気の出口端)は、所定位置、即ち各区画(Zo1〜Zo9)の空気用通路(31〜35)内に位置している。吹き出し側搬送部(75)は、各室内機(66a〜66c)から吹き出される空調空気を一旦合流させ、次いで合流させた空調空気を各区画(Zo1〜Zo9)に分配して吹き出すような構成となっている。
【0049】
このような吹き出し側搬送部(71,75)により、各空調機(61,65)から吹き出される空調空気は、共に各区画(Zo1〜Zo9)の空気用通路(31〜35)に集められる。各区画(Zo1〜Zo9)の空気用通路(31〜35)に集められた各空調機(61,65)の空調空気は、当該空気用通路(31〜35)にて混合された後、当該空気用通路(31〜35)が属する区画(Zo1〜Zo9)の栽培棚(21〜26)、つまりは空気用通路(31〜35)に隣接する栽培棚(21〜26)に向けて供給される。例えば、区画(Zo5)の空気用通路(33)にて混合された空調空気は、当該空気用通路(33)から同じ区画(Zo5)内の栽培棚(23,24)それぞれに供給される。
【0050】
なお、本実施形態1では、空気用通路(31〜35)内において、吹き出し側搬送部(71)によって搬送された空調空気は、側壁(S12)側から側壁(S14)側へと向かう向きに吹き出され、吹き出し側搬送部(72)によって搬送された空調空気は、側壁(S13)側から側壁(S11)側へと向かう向きに吹き出される。即ち、本実施形態では、空気用通路(31〜35)内において、吹き出し側搬送部(71)から吹き出される空調空気の方向と、吹き出し側搬送部(72)から吹き出される空調空気の方向とが、交差(概ね直交)している。しかし、空調空気の吹き出し方向は、これに限定されずともよい。
【0051】
−定風量制御装置−
定風量制御装置(72a〜72i,77a〜77i)は、吹き出し側搬送部(71,75)の各出口端付近に設けられている。定風量制御装置(72a〜72i,77a〜77i)は、吹き出し側搬送部(71,75)の静圧の変化に拘わらず、吹き出し側搬送部(71,75)を通過する空調空気の風速を計測しつつ、吹き出し側搬送部(71,75)の各出口端から空気用通路(31〜35)に吹き出される空調空気の風速が設定風速となるように、風量制御を行う。
【0052】
なお、設定風量は、例えば手動のスイッチ等によって所望の値に設定することが可能となっていてもよい。
【0053】
−吸い込み側搬送部−
吸い込み側搬送部(81)は、ダクトで構成されている。
図2に示すように、吸い込み側搬送部(81)の一端(空気の入口端)は、各人用通路(41〜44)の天井等に形成された開口部(Op1〜Op12)それぞれと繋がっており、他端(空気の出口端)は、第1空調機(61)及び第2空調機(65)の各室内機(62a〜62c,66a〜66c)それぞれの吸い込み口と繋がっている。
【0054】
吸い込み側搬送部(75)は、各開口部(Op1〜Op12)から吸い込まれた栽培室(S1)内の空気を一旦合流させた後、各室内機(62a〜62c,66a〜66c)に分配するように構成されている。これにより、各室内機(62a〜62c,66a〜66c)には、同じ温度及び湿度の空気が吸い込まれる。
【0055】
各室内機(62a〜62c,66a〜66c)が吸い込んだ空気は、再び調和された後、吹き出し側搬送部(71,75)を介して各区画(Zo1〜Zo9)の空気用通路(31〜35)に吹き出される。
【0056】
−その他の構成要素−
上記以外に、空調システム(10)は、コントローラ(図示せず)を備える。コントローラは、メモリ及びCPUで構成されるマイクロコンピュータであって、各空調機(61,65)及び定風量制御装置(72a〜72i,77a〜77i)と電気的に接続されている。メモリ内に格納されているプログラムをCPUが読み出して実行することで、コントローラは、各空調機(61,65)及び定風量制御装置(72a〜72i,77a〜77i)の動作を制御する。
【0057】
<各区画の環境制御>
本実施形態1では、各棚群(G1〜G3)の区画(Zo1〜Zo9)毎に目標温度及び目標湿度、更には目標の風速が設定されている。各区画(Zo1〜Zo9)の温度、湿度及び風速がそれぞれ目標温度、目標湿度及び目標の風速となるように、上記コントローラは各空調機(61,65)及び定風量制御装置(72a〜72i,77a〜77i)の運転制御を行う。これにより、各区画(Zo1〜Zo9)の空気用通路(31〜35)では、各空調機(61,65)の空調空気が集められ、自身の区画(Zo1〜Zo9)に属する栽培棚(21〜26)に供給されるべき空気が目標温度、目標湿度及び目標の風速の空気となるように混合される。
【0058】
特に、本実施形態1では、空調対象空間が栽培室(S1)であり、栽培室(S1)内には、加湿源となる植物(57)が栽培されている。一般的に、レタス等の植物(57)は、生育過程を経て葉量及び葉面積は大きくなり、これに伴い光合成を行う面積が多くなり、植物(57)の蒸散量も増加する。すると、区画(Zo1〜Zo9)毎に植物(57)の生育の程度(以下、生育工程)が異なる場合、区画(Zo1〜Zo9)毎における植物(57)の蒸散量は異なる。また、各区画(Zo1〜Zo9)に設置された照明機器が同じ種類(蛍光灯、LED等)で統一されその光量が同一であるとしても、葉量が多い程、風が葉にあたりにくくなる。それ故、区画(Zo1〜Zo9)毎に植物の生育工程が異なる場合、空調負荷は、区画(Zo1〜Zo9)毎に必然的に異なってくる。
【0059】
更に、植物(57)の生育工程が異なる場合、植物(57)にとって適切な温度、湿度及び風速の条件も異なってくる。すると、区画(Zo1〜Zo9)毎に植物(57)の生育工程が異なる場合、空調負荷を、区画(Zo1〜Zo9)毎に積極的に変化させる必要も生じる。
【0060】
そこで、本実施形態1に係る空調システム(10)は、
図4に示すように、区画(Zo1〜Zo9)毎に植物(57)の生育工程が異なる場合において、各区画(Zo1〜Zo9)の植物(57)の生長に応じた環境を提供する運転を行う。
【0061】
図4では、各区画(Zo1〜Zo9)の植物(57)の生育工程、その生育工程における植物(57)の蒸散量の大きさ、及び、その生育工程における植物(57)に適した風速を例示している。区画(Zo1,Zo4,Zo7)は、発芽して間もない初期段階(生育工程1)の植物(57)が存在するスペースである。生育工程1では、植物(57)の蒸散量及び植物(57)が必要とする風量は最も小さい。区画(Zo2,Zo5,Zo8)は、収穫できるサイズには達していないものの、生育工程1よりは生長した状態にある中間段階(生育工程2)での植物(57)が存在するスペースとなっている。生育工程2では、生育工程1よりも、植物(57)の蒸散量及び植物(57)が必要とする風量は多い。区画(Zo3,Zo6,Zo9)は、収穫できるサイズに達した状態にある最終段階(生育工程3)での植物(57)が存在するスペースとなっている。生育工程3では、植物(57)の蒸散量及び植物(57)が必要とする風量は最も大きい。蒸散量に着目すると、生育工程1の区画(Zo1,Zo4,Zo7)は、湿度が最も低く、生育工程3の区画(Zo3,Zo6,Zo9)は、湿度が最も高い状態となっていると言える。
【0062】
つまり、
図4では、1つの棚群(G1〜G3)を1つの栽培ラインとして使用しており、各棚群(G1〜G3)には、側壁(S13)側から側壁(S11)側に向かって順に、各生長工程1〜3に対応する区画(Zo1〜Zo9)が並んでいる。
【0063】
基本的に、本実施形態1では、各区画(Zo1〜Zo9)の温度制御を中温度帯用空調機である第1空調機(61)にて行い、各生育工程1〜3に応じた各区画(Zo1〜Zo9)の調湿制御を高顕熱用空調機である第2空調機(65)にて行う。具体的に、第1空調機(61)に接続された吹き出し側搬送部(71)は、棚群(G1〜G3)毎に対応するようにして分岐しているため(
図1)、第1空調機(61)に着目すると、植物(57)の栽培ライン単位で空調空気が送られている。第2空調機(65)に接続された吹き出し側搬送部(75)は、同じ生育工程の区画(Zo1〜Zo9)をひとまとまりとして分岐しているため、第2空調機(65)に着目すると、植物(57)の生育工程単位で空調空気が送られている。
【0064】
従って、各区画(Zo1〜Zo9)の空気用通路(31〜35)では、第1空調機(61)からの温度制御用の空調空気と、第2空調機(65)からの生育工程毎の調湿制御用の空調空気とが集められ、混合される。これらの空調空気は、それぞれ、各定風量制御装置(72a〜72i,77a〜77i)によって個々に設定された設定風量にて、各区画(Zo1〜Zo9)の空気用通路(31〜35)に吹き出される。これにより、各区画(Zo1〜Zo9)の空気用通路(31〜35)では、各空調空気の混合割合が制御され、各区画(Zo1〜Zo9)の栽培棚(21〜26)には、各区画(Zo1〜Zo9)にとって適切な温度、湿度及び風速を有する混合後の空調空気が供給される。
【0065】
上記設定風量は、どのような生育工程であるのか、実際の区画(Zo1〜Zo9)の環境パラメータ(温度等)、植物(57)にとって適切な目標温度、目標湿度及び目標風速に基づいて、コントローラにより適宜決定される。
【0066】
なお、上記定風量制御装置(72a〜72i,77a〜77i)からの開度情報に基づき、各定風量制御装置(72a〜72i,77a〜77i)が最適な開度となって所望の風量が空気用通路(31〜35)に吹き出されるように、コントローラは、各空調機(61,65)が吹き出し側搬送部(71,75)に吹き出す風量の設定を変更することができる。例えば、定風量制御装置(72a〜72i)の開度が大きい程、吹き出し側搬送部(71,75)の出口端における圧力損失は小さくなる。この場合、第1空調機(61)の室内機(62a〜62c)が吹き出し側搬送部(71)に吹き出す風量は、定風量制御装置(72a〜72i)の開度が大きい程、小さい値に設定されることができる。定風量制御装置(72a〜72i)の開度が大きい程、室内機(62a〜62c)の室内ファンの動力は低くて済む。
【0067】
また、上記とは別に、本実施形態1に係る空調システム(10)は、照明機器による光の照射により植物(57)が光合成を行う明期の際、湿度が最も低い生育工程1に対応する区画(Zo1,Zo4,Zo7)に対し、高顕熱用空調機である第2空調機(65)を主体として空調運転を行い、湿度が最も高い生育工程3に対応する区画(Zo3,Zo6,Zo9)に対し、中温度帯用空調機である第1空調機(61)を主体として空調運転を行ってもよい。この場合、生育工程1では、除湿能力は控えめのため区画(Zo1,Zo4,Zo7)内の潜熱はさほど変化しないが、顕熱を確実に変化させるような運転が行われる。生育工程3では、積極的な除湿が行われるため、区画(Zo3,Zo6,Zo9)内の潜熱が確実に変化するような運転が行われる。これにより、生育工程が異なる植物(57)が1の栽培室(S1)内に共通して存在する際、植物(57)の生長状態に応じて、当該植物(57)にとって適切な環境(温度、湿度、風速)を提供することができる。
【0068】
更に、本実施形態1に係る空調システム(10)では、明期か暗期かに応じて、各空調機(61,65)にて運転する室内機(62a〜62c,66a〜66c)の台数を変更する制御が行われても良い。例えば、照明機器が光の照射を停止している暗期では、植物(57)の蒸散量は小さいため、暗期における空調負荷(潜熱負荷及び顕熱負荷)は、明期よりも小さくなる。そこで、暗期の際に運転する室内機(62a〜62c,66a〜66c)の台数を、明期の際に運転する室内機(62a〜62c,66a〜66c)の台数よりも少なく制御を行っても良い。
【0069】
なお、既に述べているように、明期及び暗期では、植物(57)にとって適切な目標温度が異なる。それ故、上述した一連の制御にて、一の生長工程においても、明期と暗期とで利用する目標温度を異ならせることは、云うまでもない。
【0070】
<効果>
本実施形態1の栽培室(S1)には、栽培棚(21〜22,23〜24,25〜26)同士の間に空気用通路(31〜35)が位置する棚群(G1〜G3)が並んでいる。第1空調機(61)及び第2空調機(65)それぞれによって生成された互いに温度及び湿度の異なる空調空気は、吹き出し側搬送部(71,75)によって空気用通路(31〜35)に搬送され当該空気用通路(31〜35)にて混合された後、当該空気用通路(31〜35)に対応する棚群(G1〜G3)の栽培棚(21〜22,23〜24,25〜26)それぞれに供給される。つまり、栽培棚(21〜26)に載置された各植物(57)には、当該栽培棚(21〜26)付近の空気用通路(31〜35)にて混合された空気が供給される。これにより、各植物(57)の位置と各空調機(61,65)の空調空気が吹き出される開口との位置関係に影響されることなく、各植物(57)の周囲の温度及び湿度は、各植物(57)にとって所望の状態に近づき易くなる。
【0071】
また、本実施形態1の栽培室(S1)には、
図1及び
図2に示すように、棚群(G1〜G3)と人用通路(41〜44)とが、交互に並んでいる。即ち、本実施形態1では、通路として、人用通路(41〜44)と空気用通路(31〜35)とが存在するが、空調空気が集められて混合される場所は、人用通路(41〜44)ではなく空気用通路(31〜35)となっている。
【0072】
特に、各棚群(G1〜G3)は、複数の区画(Zo1〜Zo9)に区分されている。各区画(Zo1〜Zo9)の温度及び湿度が区画(Zo1〜Zo9)毎に設定された目標温度及び目標湿度となるように、各区画(Zo1〜Zo9)の空気用通路(31〜35)では、各空調機(61,65)の空調空気が集められ混合される。これにより、各区画(Zo1〜Zo9)は、区画(Zo1〜Zo9)毎に異なった所望の温度及び湿度に保たれる。従って、例えば、品目が異なっており所望の温度及び湿度も異なる植物(57)を、一区画が一種類のみとなるように各区画(Zo1〜Zo9)に載置させて1つの栽培室(S1)にて栽培することが可能となる。
【0073】
また、本実施形態1では、開口部(Op1〜Op12)が、人用通路(41〜44)の天井のうち、各区画(Zo1〜Zo9)に対応した天井の位置に設けられている。そのため、各区画(Zo1〜Zo9)内の空気は、他区画(Zo1〜Zo9)に行き渡らずに、対応する開口部(Op1〜Op12)から各空調機(61,65)に吸い込まれる。これにより、任意の区画(Zo1〜Zo9)の空気が他区画(Zo1〜Zo9)に及ぶことによって他区画(Zo1〜Zo9)の温度及び湿度が目標値からずれるような虞を抑制することができる。従って、区画(Zo1〜Zo9)毎に異なった温度及び湿度にて管理することが容易となる。
【0074】
特に、本実施形態1に係る空調システム(10)では、栽培棚(21〜26)に挟まれた空気用通路(31〜35)から当該栽培棚(21〜26)に向かって空調空気が供給される。これにより、空調空気は、人用通路(41〜44)を介して栽培棚(21〜26)に供給される場合よりも、無駄なく植物(57)に供給される。
【0075】
また、植物(57)の品目によっては、適切な温度、湿度及び風速の条件が異なる。例えば、植物(57)は、品目によって葉の形状が異なり、それ故蒸散量も異なる。これに対し、植物(57)を品目毎に各区画(Zo1〜Zo9)に生育させた上で空調システム(10)を用いることにより、各植物(57)に適した温度、湿度及び風速の環境が提供される。
【0076】
≪実施形態2≫
本実施形態2に係る
図5の空調システム(10)は、空調機(161,162,163,165,166,167)及び吹き出し側搬送部(171,172,173,175,176,177)の配置及び接続の構成が、上記実施形態1とは異なっている。
【0077】
本実施形態2では、空調機(161〜167)及び吹き出し側搬送部(171〜177)以外の各種構成は上記実施形態1と同様である。それ故、
図5では、上記実施形態1と同様の部分には同じ符合を付している。また、
図5では、開口部については図示を省略しているが、
図2と同様、各区画(Zo1〜Zo9)に対応して複数の開口部が設けられている。
【0078】
<複数の空調機の配置構成と吹き出し側搬送部の接続構成について>
栽培室(S1)内に設置された複数の空調機(161〜167)は、互いに温度及び湿度の異なる空調空気を生成して吹き出すものである。
【0079】
具体的に、空調機(161,162,163)は、人用通路(42,43,44)のうち側壁(S13)付近に設置されている。空調機(165,166,167)は、人用通路(44)において、側壁(S12)に沿って互いに離れて設置されている。特に、空調機(161〜163)は、各棚群(G1〜G3)に対応しており、即ち栽培ライン毎に設けられている。各空調機(165〜167)は、区画(Zo1,Zo4,Zo7)、区画(Zo2,Zo5,Zo8)、区画(Zo3,Zo6,Zo9)に対応しており、即ち植物(57)の生育工程毎に対応して設けられている。空調機(161〜163)は、中温度帯用空調機で構成され、空調機(165〜167)は、高顕熱用空調機で構成される。
【0080】
吹き出し側搬送部(171,172,173)及び吹き出し側搬送部(175,176,177)は、いずれもダクトで構成されている。
【0081】
各吹き出し側搬送部(171〜173)の空気の入口端である一端は、中温度帯用空調機である空調機(161〜163)それぞれの吹き出し口と繋がっている。吹き出し側搬送部(171)の空気の出口端である他端は、棚群(G1)の区画(Zo1,Zo2,Zo3)それぞれにおける空気用通路(31)に繋がっている。吹き出し側搬送部(172)の空気の出口端である他端は、棚群(G2)の区画(Zo4,Zo5,Zo6)それぞれにおける空気用通路(33)に繋がっている。吹き出し側搬送部(173)の空気の出口端である他端は、棚群(G3)の区画(Zo7,Zo8,Zo9)それぞれにおける空気用通路(35)と繋がっている。
【0082】
各吹き出し側搬送部(175〜177)の空気の入口端である一端は、高顕熱用空調機である空調機(165〜167)それぞれの吹き出し口と繋がっている。吹き出し側搬送部(175)の空気の出口端である他端は、各区画(Zo1,Zo4,Zo7)それぞれにおける空気用通路(31〜35)に繋がっている。吹き出し側搬送部(176)の空気の出口端である他端は、各区画(Zo2,Zo5,Zo8)それぞれにおける空気用通路(31〜35)に繋がっている。吹き出し側搬送部(177)の空気の出口端である他端は、各区画(Zo3,Zo6,Zo9)それぞれにおける空気用通路(31〜35)と繋がっている。
【0083】
そして、各吹き出し側搬送部(171〜177)の空気の出口端付近には、上記実施形態2と同様、定風量制御装置(171a〜171c,172a〜172c,173a〜173c,175a〜175c,176a〜176c,177a〜177c)が1つずつ設けられている。
【0084】
これにより、各区画(Zo1〜Zo9)の空気用通路(31〜35)では、栽培室(S1)内に設けられた6台の空調機(161〜167)のうち、互いに種類(仕様)の異なる2台の空調機から吹き出された空調空気が供給され、混合される。空気の混合割合は、定風量制御装置(171a〜171c,172a〜172c,173a〜173c,175a〜175c,176a〜176c,177a〜177c)により制御された風量に基づく。
【0085】
一例としては、区画(Zo1)の空気用通路(31)では、中温度帯用空調機である空調機(161)と高顕熱用空調機である空調機(165)とから吹き出された空調空気が集められて混合される。一方で、区画(Zo9)の空気用通路(35)では、中温度帯用空調機である空調機(163)と高顕熱用空調機である空調機(167)とから吹き出された空調空気が集められて混合される。
【0086】
なお、各空調機(161〜167)は、上記実施形態1の空調機(61,65)と同様、室外機及び室内機とを有するが、
図5では、室内機のみを図示している。各空調機(161〜167)が有する室内機の台数は複数台であってもよく、例えば栽培室(S1)内の空調負荷(温度差)に応じて台数制御が行われてもよい。
【0087】
<効果>
本実施形態2は、実施形態1と同様の効果を奏する。
【0088】
特に、
図5では、空調空気の供給元である空調機(161〜167)の組合せが、区画(Zo1〜Zo9)毎に異なっている。従って、実施形態2においては、区画(Zo1〜Zo9)毎に温度及び湿度を異ならせることが、上記実施形態1よりも容易である。
【0089】
<変形例>
上述した
図5の定風量制御装置(171a〜171c,172a〜172c,173a〜173c,175a〜175c,176a〜176c,177a〜177c)は、
図6に示すように設けられていなくても良い。この場合、各区画(Zo1〜Zo9)の空気用通路(31〜35)に吹き出される各空調空気の風量を個別に制御することができない。しかし、各空調空気は、空気用通路(31〜35)にて混合され、混合された空気は、該空気用通路(31〜35)に隣接する栽培棚(21〜22,23〜24,25〜26)に向けて供給される。そのため、各区画(Zo1〜Zo9)においては、混合された空調空気が、無駄なく栽培棚(21〜26)に載置された植物(57)に供給される。
【0090】
なお、各空調機(161〜167)側にて、室内ファンの回転速度の調節を行うことにより、各室内機(161〜167)から各区画(Zo1〜Zo9)の空気用通路(31〜35)に吹き出される風速を制御してもよい。これにより、区画(Zo1〜Zo9)毎に各空調空気の混合割合を調節したり、栽培棚(21〜26)に向けて供給される混合後の空調空気の風速を区画(Zo1〜Zo9)毎に異ならせたりすることができる。
【0091】
≪その他の実施形態≫
各棚群(G1〜G3)は、必ずしも複数の区画(Zo1〜Zo9)に区分されていなくてもよい。
【0092】
各棚群(G1〜G3)が複数の区画(Zo1〜Zo9)に区分されている場合、各棚群(G1〜G3)は、栽培棚(21〜26)及び空気用通路(31〜35)の並び方向と交差する方向に延設され、その延設方向に沿って区分されていれば良い。従って、上記交差する方向は、平面上において栽培棚(21〜26)及び空気用通路(31〜35)の並び方向と必ずしも直交する方向でなくてもよい。また、上記交差する方向は、栽培棚(21〜26)及び空気用通路(31〜35)の並び方向と交差する鉛直方向であってもよい。この場合、栽培棚(21〜26)の高さ方向に沿って区分された区画が存在し、その区画毎に少なくとも温度及び湿度が制御されることとなる。
【0093】
棚群(G1〜G3)を構成する空気用通路(31〜35)と棚(21〜22,23〜24,25〜26)とは、鉛直方向に積載されるようにして形成されていてもよい。この場合、人用通路(41〜44)は、同じく延長方向に配置されていてもよいし、平面上に配置されていてもよい。
【0094】
棚群(G1〜G3)は、例えばUの字型やV字型に形成されるかもしくはUの字型やV字型に配置された棚(21〜22,23〜24,25〜26)において、当該棚(21〜22,23〜24,25〜26)の間に空気用通路(31〜35)が形成されているような形態であることができる。
【0095】
開口部(Op1〜Op12)が各区画(Zo1〜Zo9)に対応して複数設けられることは、必須ではない。
【0096】
吹き出し側搬送部(71,75,171〜177)の出口端付近には、定風量制御装置(72a〜72i,77a〜77i,171a〜171c,172a〜172c,173a〜173c,175a〜175c,176a〜176c,177a〜177c)の代わりに、可変風量制御装置が設けられても良い。可変風量制御装置は、空調対象空間内に設けられたセンサからの要求風量と比較しながら風量を変化させる装置である。
【0097】
空調システム(10)は、環境(温度、湿度、風速)を位置によらず栽培室(S1)全体として精度良く均一にする制御を行っても良い。この場合、各区画(Zo1〜Zo9)の目標温度、目標湿度、目標風速を異ならせずともよい。
【0098】
空調システム(10)が空調を行う空調対象空間は、植物工場の栽培室(S1)以外であってもよい。空調対象空間は、温湿度管理が必要となる倉庫、特に、冷凍及び冷蔵用の倉庫等であってもよい。