特許第6699669号(P6699669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6699669
(24)【登録日】2020年5月7日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】分析情報管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/10 20120101AFI20200518BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20200518BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20200518BHJP
【FI】
   G06Q10/10
   G06Q50/10
   G01N30/86 Z
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-554749(P2017-554749)
(86)(22)【出願日】2015年12月11日
(86)【国際出願番号】JP2015084759
(87)【国際公開番号】WO2017098650
(87)【国際公開日】20170615
【審査請求日】2018年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 浩司
【審査官】 岸 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−321200(JP,A)
【文献】 特開2005−077093(JP,A)
【文献】 特開2001−050944(JP,A)
【文献】 特開2003−173340(JP,A)
【文献】 特開2015−152350(JP,A)
【文献】 特開2008−209326(JP,A)
【文献】 特開平10−185895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
G01N 30/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク回線と、該ネットワーク回線にコンピュータを介して接続された一又は複数の分析機器と、該ネットワーク回線に接続されたデータベースサーバと、該ネットワーク回線に接続された一又は複数のクライアント端末と、を含む分析情報管理システムにおいて、
前記データベースサーバは、前記分析機器で試料に対し分析を行うことによって得られたデータ及び/又は前記クライアント端末でデータ解析処理を行うことによって得られたデータが格納されたデータファイル、前記データファイルに関連する各種ログ情報がリスト化された監査証跡レポートのファイル、及び、分析に関連する各種レポート項目について前記データファイルに格納されているデータ又はそれに基づく情報が差し込まれることで作成された分析レポートのファイル、が登録されるデータベースを有し、
前記クライアント端末は、
a)複数の試料をそれぞれ分析することで得られたデータが格納されたデータファイルを予め一つのバッチとして設定しておくバッチ設定部と、
b)前記データベースに登録されているデータファイルの中で最終結果記録を作成したい複数のデータファイルをユーザが選択するためのものであり、前記バッチ設定部で設定されているバッチを選択することにより該バッチに対応した複数のデータファイルを選択するファイル選択部と、
c)前記ファイル選択部により選択された複数のデータファイルに格納されているデータから所定の項目の情報を抽出し、選択されたデータファイルに関する分析結果及び/又は解析処理結果をリスト化したデータリストを作成するリスト作成部と、
d)所定の様式に従って、前記リスト作成部により作成されたデータリスト、前記データベースから取得された、前記ファイル選択部により選択されたデータファイルに対応する監査証跡レポートのファイルに記載の情報、及び該データファイルに対応する分析レポートのファイルに記載の情報、が集約された最終結果記録を作成し、該最終結果記録を一つのファイルとして前記データベースに登録する最終結果記録作成部と、
を備えることを特徴とする分析情報管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の分析情報管理システムであって、
前記ファイル選択部による複数のデータファイルの選択を受けて、予め用意されたレポートテンプレート上の各レポート項目に該選択されたデータファイルに基づく情報を差し込んで分析レポートを作成するレポート作成部、をさらに備えることを特徴とする分析情報管理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の分析情報管理システムであって、
前記ファイル選択部により選択された複数のデータファイルに関連する、いずれかの分析機器及び/又はクライアント端末におけるログインからログアウトまでの期間中のログ情報を抽出するログ情報抽出部と、
前記ログ情報抽出部により抽出されたログ情報を時系列順に整理して前記複数のデータファイルに対応する監査証跡レポートを作成する監査証跡作成部と、
をさらに備えることを特徴とする分析情報管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフ装置、質量分析装置、分光光度計といった各種分析機器で収集されたデータや該データに対するデータ解析処理によって求まった計算値などの処理結果等を保存して管理する分析情報管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガスクロマトグラフ(GC)、液体クロマトグラフ(LC)、質量分析装置などの分析機器で得られた各種データの処理や管理には、殆どの場合、専用のソフトウエアがインストールされたコンピュータが利用されている。特に最近は、分析の高度化、分析作業の自動化及び効率化、分析作業や解析作業の一括管理の必要性などに対応して、ネットワーク回線を通して、複数の分析機器やクライアント端末等のコンピュータ、さらにはデータベースサーバなどが相互に接続された大規模なシステムも提供されている(非特許文献1等参照)。一般にこうした分析情報管理システムでは、分析機器において試料に対して得られたデータ、或いは、クライアント端末等でそれらデータを解析処理して得られた計算値(例えば定量値等)などの処理結果は、試料毎に一つのデータファイルに格納され、データベースサーバ上等に構築されたデータベースに登録され、該データベースにおいて管理されるようになっている。
【0003】
また、こうした分析情報管理システムでは、試料を分析機器で分析することによって得られた分析データ、該データに基づいて作成されるグラフやテーブル、さらにそれらデータを解析処理することで求まった各種の計算値、例えば定量値などを所定形式にまとめた分析レポートを自動的に作成し、それを印刷出力したりPDF形式等の電子ファイルとしてデータベースに登録したりすることができるようになっている(非特許文献2など参照)。
【0004】
ところで、近年、LC分析やGC分析では、多数の試料を予め装填可能であるオートサンプラを用い、試料を順次交換しつつ各試料に対する分析を連続的に且つ自動的に遂行する装置がしばしば使用される。こうした分析機器を利用した分析では、一連の分析において複数の試料に対してそれぞれ得られた分析データに基づく解析処理結果からその試料全体に対する評価が行われることがよくある。例えば溶液中の複数の化合物の濃度の時間的な変化を調べるような場合、その溶液を所定時間毎に少量ずつ採取して多数の試料を調製する。そして、その多数の試料それぞれについてLC分析を行って目的とする化合物を定量し、その複数の定量値から目的化合物の濃度の時間的な変化を評価する。
【0005】
こうした試験では、或る一つの試料に対する分析データや解析処理結果を管理するだけでは不十分であり、一連の分析で得られた多数の試料に対する分析データや解析処理結果をひとまとまり、つまり一つのロットとして管理することが重要である。こうした管理を行うために、従来、ユーザ(オペレータ)は、一つのロットとして管理する全ての分析結果や解析結果についてのサンプル情報や分析条件などを記載したリストを作成する。そして、こうしたリストと分析結果や解析結果が記載された分析レポート、分析結果や解析結果に関連する監査証跡などを紙に印刷し、その印刷した各文書をロット単位にまとめた上で最終結果記録として管理するようにしている。
【0006】
しかしながら、こうした最終結果記録を作成する作業はたいへん面倒で手間が掛かる。また、米国食品医薬品局(FDA)による「FDA 21 CFR Part 11」等における電子記録・電子署名に関する各種規制で要求されているデータの完全性を担保するには、分析結果・解析結果のリストに対応したログ情報等の監査証跡や分析レポートを選択するとともに、それらが適切に対応していることを確認する必要があるが、一つのロットに含まれる試料の数が多くなると、リストや監査証跡の量も膨大になるため、選択作業にも確認作業にも非常に時間が掛かり、作業ミスを引き起こし易い。また、従来は、最終結果記録を入手する必要があるときに、上述したような必要な情報を収集する作業を行わなければならないため、一度作成した最終結果記録を再作成するのは困難であり、しかもその再作成された最終結果記録とそれ以前の最終結果記録との同一性を保証することも難しかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「CLASS-Agent Ver.2 ネットワーク対応 分析データ管理ツール」、[online]、株式会社島津製作所、[2015年12月4日検索]、インターネット<URL : http://www.an.shimadzu.co.jp/data-net/class-agent_ver2/index.htm>
【非特許文献2】「LabSolutions 総合:機能紹介 レポート作成」、[online]、株式会社島津製作所、[2015年12月4日検索]、インターネット<URL : http://www.an.shimadzu.co.jp/data-net/labsolutions/function/7_smart_validated-report.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、複数の試料に対する分析結果をひとまとまりとして管理する必要がある場合でも、そのひとまとまりの分析結果やデータ解析結果、それに対応する監査証跡、分析レポートなどの様々な情報を集約した最終結果記録を適切且つ簡便に作成することができるとともに、常に同一性を保証した最終結果記録を印刷出力することができる分析情報管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明は、ネットワーク回線と、該ネットワーク回線にコンピュータを介して接続された一又は複数の分析機器と、該ネットワーク回線に接続されたデータベースサーバと、該ネットワーク回線に接続された一又は複数のクライアント端末と、を含む分析情報管理システムにおいて、
前記データベースサーバは、前記分析機器で試料に対し分析を行うことによって得られたデータ及び/又は前記クライアント端末でデータ解析処理を行うことによって得られたデータが格納されたデータファイル、前記データファイルに関連する各種ログ情報がリスト化された監査証跡レポートのファイル、及び、分析に関連する各種レポート項目について前記データファイルに格納されているデータ又はそれに基づく情報が差し込まれることで作成された分析レポートのファイル、が登録されるデータベースを有し、
前記クライアント端末は、
a)複数の試料をそれぞれ分析することで得られたデータが格納されたデータファイルを予め一つのバッチとして設定しておくバッチ設定部と、
b)前記データベースに登録されているデータファイルの中で最終結果記録を作成したい複数のデータファイルをユーザが選択するためのものであり、前記バッチ設定部で設定されているバッチを選択することにより該バッチに対応した複数のデータファイルを選択するファイル選択部と、
c)前記ファイル選択部により選択された複数のデータファイルに格納されているデータから所定の項目の情報を抽出し、選択されたデータファイルに関する分析結果及び/又は解析処理結果をリスト化したデータリストを作成するリスト作成部と、
d)所定の様式に従って、前記リスト作成部により作成されたデータリスト、前記データベースから取得された、前記ファイル選択部により選択されたデータファイルに対応する監査証跡レポートのファイルに記載の情報、及び該データファイルに対応する分析レポートのファイルに記載の情報、が集約された最終結果記録を作成し、該最終結果記録を一つのファイルとして前記データベースに登録する最終結果記録作成部と、
を備えることを特徴としている。
【0010】
本発明に係る分析情報管理システムにおいて、データベースサーバと一つのクライアント端末とは一体であっても構わない。つまり、クライアント端末であるコンピュータ自体がデータベースサーバとしての機能を有していても構わない。また、分析機器は分析を実行して何らかのデータを取得するものであれば、その種類は問わない。
【0011】
本発明に係る分析情報管理システムでは、各分析機器で得られたデータやクライアント端末において解析処理によって得られた結果、クライアント端末における所定の操作や作業によって作成された監査証跡レポートや分析レポート、さらには分析機器やクライアント端末における操作ログや装置状態を示す装置ログなどのログ情報、はネットワーク回線を通してデータベースサーバに集められ、該データベースサーバ上に構築されるデータベースに登録される。したがって、クライアント端末においてユーザが分析に関わる作業を行う際には、データベースにアクセスして必要な情報をクライアント端末にダウンロードし、作業終了後にはその作業によって新たに作成された又は修正等された情報をデータベースに登録する。
【0012】
複数の試料に対する連続分析を実施し、その連続分析中の各分析で得られたデータや該データに基づく処理結果を反映した一つの最終結果記録を作成したい場合には、ユーザは、例えば最終結果記録作成処理の直前、或いは、最も早くは連続分析を実行する前に、バッチ設定部により連続分析の対象の複数の試料に対してそれぞれ得られるデータファイルを一つのバッチとして設定しておく。ユーザが或る一つのバッチに含まれる複数の試料に対する分析の最終結果記録を作成したい場合、該ユーザは一つのクライアント端末において所定の操作を行う。するとファイル選択部は、その操作に応じて、データベースに登録されているデータファイルのファイル名等の属性情報のリストを作成し、表示部の画面上に表示する。そして、ユーザにより指示されたバッチに含まれる複数のデータファイルが選択されたものとして認識する。このように最終結果記録を作成するべくデータファイルを選択する際に、複数のデータファイルを個々に選択する必要はなく、単に該当する一つのバッチを選択するだけで目的とする複数のデータファイルを一括して選択することができる。したがって、特に対象とするデータファイルの数が多い場合にユーザの手間が省け、ファイルの選択ミスも起こりにくい。
【0013】
リスト作成部は、上述したように選択された複数のデータファイルをデータベースから取得し、該データファイルに格納されている又は該データファイルに対応付けられているデータから所定の項目の情報を抽出する。そして、選択されたデータファイルに関する分析結果及び/又は解析処理結果をリスト化したデータリストを作成する。リスト化する項目は予めユーザが設定できるようにしておけばよいが、例えば、ファイル名、サンプル名、サンプルID、装置名、装置ID、データ採取日時、データ承認日時などを項目として挙げることができる。
【0014】
最終結果記録作成部は、上述したように選択された複数のデータファイルに対応する監査証跡レポートのファイル及び分析レポートのファイルをデータベースから取得し、所定の様式に従って、上記データリストとそれらファイルに記載の情報を集約した最終結果記録のレポートを作成する。そして、このレポートを、印刷するのと同じ状態のページのイメージ、典型的にはPDF(Portable Document Format)形式のファイルとし、データベースに登録する。これにより、いつでもその最終結果記録レポートを印刷出力することができる。
【0015】
なお、データファイルと監査証跡レポートのファイルや分析レポートのファイルとの対応付けは、例えば個々のデータファイルを特定するために付与されるデータIDを用いて行うようにすることができる。また、監査証跡レポートのファイルや分析レポートのファイルをデータベースに登録する際に、データファイルとの関連を示すリンク情報を作成して別途データベースに登録しておくようにしてもよい。いずれにしても、監査証跡レポートのファイルや分析レポートのファイルがデータベースに登録されていれば、データファイルに関連したそれらファイルを容易に取得することができる。
【0018】
また本発明に係る分析情報管理システムにおいて、ユーザが最終結果記録を作成しようとしたときに、目的とするデータファイルに対応する監査証跡レポートや分析レポートのファイルがデータベースに存在していればそれらファイルを単に読み出してくればよいが、そうしたファイルが存在しない、つまり未だ作成されていない状況もあり得る。
【0019】
そこで本発明に係る分析情報管理システムでは、好ましくは、
前記ファイル選択部による複数のデータファイルの選択を受けて、予め用意されたレポートテンプレート上の各レポート項目に該選択されたデータファイルに基づく情報を差し込んで分析レポートを作成するレポート作成部、をさらに備える構成とするとよい。
【0020】
さらにまた本発明に係る分析情報管理システムでは、
前記ファイル選択部により選択された複数のデータファイルに関連する、いずれかの分析機器及び/又はクライアント端末におけるログインからログアウトまでの期間中のログ情報を抽出するログ情報抽出部と、
前記ログ情報抽出部により抽出されたログ情報を時系列順に整理して前記複数のデータファイルに対応する監査証跡レポートを作成する監査証跡作成部と、
をさらに備える構成としてもよい。
【0021】
こうした構成によれば、最終結果記録を作成しようとしたときに未だ分析レポートや監査証跡レポートが作成されていない状態であっても、最終結果記録を作成したいデータファイルが選択されたあとに、該データファイルに関連する分析レポートや監査証跡レポートが自動的に作成されるので、そうしたレポートの情報を含んだ最終結果記録レポートを作成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る分析情報管理システムによれば、ユーザは最終結果記録を作成したい一又は複数のデータファイルを選択するだけで、自動的に該データファイルに関連した様々な情報が含まれる最終結果記録が作成され、それが例えばPDFファイルとしてデータベースに登録される。したがって、ユーザが膨大な情報の中から目的とするデータファイルに関連する分析レポートや監査証跡レポートを探索したり、或いは、一つのロットとして管理する全ての分析結果や解析結果についてのサンプル情報や分析条件などの主要な事項を記載したリストを作成したりする等の面倒な手間が不要になる。
【0023】
また、ユーザの作業ミスによる、リストの内容と添付した分析レポートや監査証跡との不一致を防止することができるとともに、人為的な情報の取捨選択も防止することができる。それによって、高い信頼性の最終結果記録を作成することができる。
さらにまた、作成された最終結果記録はデータベースに登録されるので、例えば或る一つのロットに対する最終結果記録を確認したり該最終結果記録レポートを提出したりする必要がある場合に、同一性が保証できる記録を迅速に印刷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る分析情報管理システムの一実施例の概略構成図。
図2】本実施例の分析情報管理システムにおける最終結果記録作成処理を示すフローチャート。
図3】最終結果記録レポートの様式の一例を示す模式図。
図4】最終結果記録作成用のデータマネージャ画面の一例を示す模式図。
図5】最終結果記録作成用のデータマネージャ画面の他の例を示す模式図。
図6】分析レポートの一例を示す図。
図7】監査証跡レポートの一例を示す図。
図8】データリストの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る分析情報管理システムの一実施例について、添付図面を参照して説明する。
図1は本実施例の分析情報管理システムの要部の概略構成図である。
【0026】
本実施例の分析情報管理システムは、試料に対し所定の分析を実行して測定データを収集する一又は複数の分析機器2と、実体はコンピュータであるデータベースサーバ1と、実体はパーソナルコンピュータであるクライアント端末4と、がLANなどのネットワーク回線3を介して相互に接続された構成を有する。クライアント端末4には、マウスやキーボード等である操作部5、表示部6、及び印刷部7が接続されている。データベースサーバ1にも通常、操作部、表示部等が接続されているが、図1ではその記載を省略している。
【0027】
なお、図1の構成ではクライアント端末4は1台であるが、これは複数台であってもよい。またクライアント端末4がデータベースサーバ1の機能を兼ねていてもよい。分析機器2はそれ自体が実質的にコンピュータと同様の機能を有していて直接ネットワーク回線3に接続されていてもよいが、図示しないパーソナルコンピュータを介してネットワーク回線3に接続されるのが一般的である。その場合、ネットワーク回線3に接続された一台のパーソナルコンピュータに複数台の分析機器2が接続されていてもよい。こうしたパーソナルコンピュータがクライアント端末4として利用可能であってもよい。また、分析機器2は特にその種類を問わず、異なる種類の分析機器がネットワーク回線3に接続されていても構わないが、ここでは説明の都合上、分析機器2は液体クロマトグラフ(LC)装置であるとする。
【0028】
データベースサーバ1は、機能ブロックとして、分析データ収集部11、ログ情報収集部12、データベース管理部13、及びデータベース14などを備える。データベース14には、分析データファイル、結果レポートファイル、監査証跡レポートファイル、最終結果記録レポートファイル、ログ情報データファイルなどの様々なファイルが登録される。一方、クライアント端末4は、機能ブロックとして、データ解析処理部41、分析レポート作成部42、監査証跡レポート作成部43、最終結果記録レポート作成部44、データリスト作成部45、最終結果情報抽出部46、等を含む。なお、上述したように、データベースサーバ1やクライアント端末4の実体はコンピュータであるから、上述した機能ブロックは、そうしたコンピュータに予めインストールされた専用のプログラムがそのコンピュータ上で動作することによって具現化されるものである。
【0029】
データベースサーバ1において、分析データ収集部11は、各分析機器2において試料に対しLC分析を実行することで得られたデータやその分析に関連する様々な情報をネットワーク回線3を介して収集し、データベース管理部13を通してデータベース14に分析データファイルとして登録する。このとき、登録される分析データファイルには、該ファイルを一意に特定するためにデータIDが自動的に付与される。通常、分析データファイルには、一つの試料に対する分析に関連した様々なデータや情報、即ち分析によって得られた分析データのほかに、例えばサンプル名、サンプル量などのサンプル情報、分析に使用した分析機器を特定するための装置ID、分析が実行された日時、分析を実施した担当者を特定するための分析者ユーザID、分析時の分析条件(例えば移動相流速など)、定量のための検量線情報などを含む。また、クライアント端末4のデータ解析処理部41が分析データに基づいてデータ解析処理を行うことで得られた各種計算値やそれに関連する情報を、同じ分析データファイルに格納するようにしてもよい。
【0030】
ログ情報収集部12は、本システムに含まれる全ての分析機器2やクライアント端末4等においてユーザにより実行された操作や作業、或いは分析や解析処理を実行する際に分析機器2やクライアント端末4等で発せられたエラーなどの装置状態を示す情報をネットワーク回線3を介して収集し、データベース管理部13を通してデータベース14にログ情報データファイルとして登録する。例えば操作ログに示すログ情報データファイルには、一つの何らかの操作に関連した様々なデータや情報、つまり、操作内容、その操作が行われた分析機器2やクライアント端末4を特定するための装置ID、操作が実行された日時、操作を行った担当者を特定するためのユーザID、などを含む。
【0031】
次に、データベース14に分析データファイルが格納されている状態で、クライアント端末4において実行される様々な処理動作について説明する。
【0032】
[分析レポート作成処理]
クライアント端末4の分析レポート作成部42は、分析データファイルに格納されている様々なデータや情報に基づいて、所定様式の分析レポートを自動的に作成し、該分析レポートをPDF形式の分析レポートファイルとしてデータベース14に登録する。
【0033】
具体的には、分析作業を担うオペレータが操作部5で所定の操作を行うことにより、分析レポートを作成したい分析データファイルとレポートのテンプレートを選択したうえでその作成指示を行うと、分析レポート作成部42が動作し、データベースサーバ1にアクセスし、データベース14から該当するレポートテンプレートと指定された分析データファイルとを読み出す。レポートテンプレートは、サンプル情報、クロマトグラム、ピークレポートといった様々なレポート項目が適当に配置されたレポートの様式(書式)であり、本システムの提供者(製造メーカ)が予め作成してデータベース14に登録しておくようにすることができる。
【0034】
分析レポート作成部42は、読み出されたレポートテンプレートの各レポート項目の情報記載欄に、分析データファイルに格納されているデータに基づいて作成したクロマトグラムや該クロマトグラムについて解析処理を行うことで得られたピークの情報を記載したピークテーブル、さらには、分析データファイルに格納されているサンプル情報などを差し込むことにより分析レポートを作成する。また、分析レポートには、通常、オペレータとは異なる確認者が分析レポートの内容をチェックしたうえでその確認結果を記したり、確認した結果、レポートされている内容が採用できない場合にその理由を記したりするための確認結果記載欄をレポート項目毎に設けるようにしてもよい。
【0035】
図6は、自動的に作成される分析レポートの一例を示す図である。この例では、レポート項目は、サンプル情報、クロマトグラム、ピークレポートの三つであり、クロマトグラム及びピークレポートの二つにそれぞれ確認結果記載欄が設けられている。
なお、確認結果記載欄を設けたレポートテンプレートの作成方法は、例えば本出願人が先に出願した特願2015−239016号に記載されている。
【0036】
[監査証跡レポート作成処理]
クライアント端末4の監査証跡レポート作成部43は、一又は複数の分析データファイルに関連した様々なログ情報を自動的に収集して、そのログ情報を時系列順に並べたリストを作成し、該リストを記載した監査証跡レポートをPDF形式の監査証跡レポートファイルとしてデータベース14に登録する。
【0037】
具体的には、オペレータが操作部5で所定の操作を行うことにより、監査証跡を作成したい分析データファイルを選択したうえでその作成指示を行うと、監査証跡レポート作成部43が動作し、データベースサーバ1にアクセスしデータベース14から、指定された分析データファイルに関連した全てのログ情報ファイルを読み出す。ここでいう全てのログ情報ファイルとは、分析データファイルに格納されているデータが採取された装置ID及びその分析を担った分析者のユーザIDで特定されるログ情報のうちの、該分析データファイルの作成日時又は登録日時を含むログインからログアウトまでの時間範囲に得られたログ情報、及び、指定された分析データファイルに対して行われた何らかのファイル操作を示すログ情報である。
【0038】
前者は、分析データファイルに格納されている又は例えば属性情報として該ファイルに対応付けられている装置ID、ユーザID、及び作成日時(又は登録日時)をキーとしてデータベース14中のログ情報を検索することで収集することができる。また、後者は、分析データファイルに対応付けられているデータIDをキーとしてデータベース14中のログ情報を検索することで収集することができる。また、システムに含まれる全ての分析機器2やクライアント端末4等においてログイン操作がなされてからログアウトまでの時間範囲を一意に特定可能なログインIDを採用し、ログ情報データファイル、分析データファイルのいずれにもログインIDを付するようにすることで、分析データファイルに関連したログ情報を容易に抽出することができる。
【0039】
監査証跡レポート作成部43は上述したように抽出された多くのログ情報を時系列順に整理し、それぞれのログ情報の内容を簡単に表すメッセージやログ情報の一部をリスト化して監査証跡を作成する。
図7は自動的に作成される監査証跡レポートの一例を示す図である。
【0040】
[最終結果記録レポート作成処理]
図2は最終結果記憶作成処理を示すフローチャート、図3は最終結果記録レポートの様式の一例を示す模式図、図4は最終結果記録作成用のデータマネージャ画面の一例を示す模式図、図5は最終結果記録作成用のデータマネージャ画面の他の例を示す模式図である。
【0041】
オペレータは、最終結果記録の作成に先立ち、クライアント端末4の操作部5で所定の操作を行うことにより、最終結果記録レポートに記載する内容や様式を設定する(ステップS1)。例えば図3に示す例では、最終結果記録レポートには、分析結果・再解析結果リスト、監査証跡レポート、分析条件一覧、データ解析条件一覧、検量線情報、及び、試料毎の分析レポートの順に様々な項目の情報を記載することができるが、項目の順序を適宜入れ替える、或いは一部の項目を含めない、さらには別の項目を加えるなどのように、適宜項目や様式を変更することができる。なお、最終結果記録レポートに記載する内容や様式がデフォルトの設定でよい場合や前回設定されている状態のまま変更を要さない場合にはステップS1は省略することができる。
【0042】
次に、オペレータがクライアント端末4の操作部5で所定の操作を行うと、最終結果記録レポート作成部44が動作し、最終結果記録作成用のデータマネージャ画面100を表示部6の画面上に表示する。図4に示すように、データマネージャ画面100の左部にはファイル選択用設定領域101、右上部にはデータファイルリスト102が配置されている。ファイル選択用設定領域101は「絞り込み」と「バッチデータセット」という二種類の設定が選択可能であり、図4は「絞り込み」の設定の場合、図5は「バッチデータセット」の設定の場合である。
【0043】
いま、図4に示す「絞り込み」の設定の場合、オペレータがファイル選択用設定領域101において、一又は複数の絞り込み項目について絞り込み条件を設定すると、最終結果記録レポート作成部44はデータベース14にアクセスし、絞り込み条件を満たす分析データファイルを検索してヒットした分析データファイルの一覧のリストをデータファイルリスト102に表示する。もちろん、データファイルリスト102に表示された分析データファイルが多すぎる場合には、絞り込み条件を追加することでさらに絞り込んでヒット件数を減らすようにすることもできる。
【0044】
オペレータは、データファイルリスト102に表示された分析データファイルの中で最終結果記録レポートを作成したい一又は複数の分析データファイルを、画面上でマウスによりクリック操作する等によって指定する。図4では、図中に符号103で示す6個の分析データファイルが選択され、該ファイルが反転表示されている。そして、そのうえで例えばマウスの右ボタンを押下すると図4中に示すような操作メニュー104が表示されるから、その中で「レポートセットの作成」105を選択してクリック操作する。この操作が最終結果記録の作成指示に相当する(ステップS2)。
【0045】
上記指示を受けて最終結果情報抽出部46は、選択された一又は複数の分析データファイルと、該分析データファイルに関連する監査証跡レポートファイル及び分析レポートファイルとをデータベース14から読み出してくる(ステップS3)。なお、分析データファイルと監査証跡レポートファイル及び分析レポートファイルとの対応付けは、上述したように分析データファイルを特定するデータIDを用いて行うことができる。また、監査証跡レポートファイルや分析レポートファイルをデータベース14に登録する際に、分析データファイルとの関連を示すリンク情報を作成してデータベース14に登録しておくようにし、このリンク情報を参照して該当する監査証跡レポートファイル及び分析レポートファイルを見つけ出すようにしてもよい。
【0046】
データリスト作成部45は読み出された分析データファイルに格納されているデータや情報に基づいて、ファイル名、サンプル名、サンプルIDなどの項目についてリスト化したデータリストを作成する(ステップS4)。図8はこのデータリスト(一部)の一例である。なお、このデータリストで表示する項目もユーザが自由に設定できるようにしておくとよい。
【0047】
最終結果記録レポート作成部44は、ステップS1で設定された最終結果記録レポートの様式に従って、上記ステップS4で作成された分析結果・再解析結果リスト、図7に示したような監査証跡レポートの内容(時系列順のログ情報のリスト)、図6に示したような分析レポートの内容、さらには、分析データファイルに格納されている分析条件やデータ解析条件、検量線などの情報を配置した最終結果記録レポートのイメージを作成する。そして、その最終結果記録レポートのイメージをPDFファイルにし、データベース14に登録する(ステップS5)。
【0048】
このようにして、オペレータにより選択された一又は複数の分析データファイルに関連した様々な情報やデータが集約された最終結果記録レポートを作成し、そのレポートのPDFファイルをデータベース14に登録することができる。オペレータが該レポートの印刷を指示すれば、作成されたレポートが印刷部7から紙出力される。また、それ以降、任意の時点で、クライアント端末4においてデータベース14に登録されている最終結果記録レポートファイルのファイル名を指定して印刷を指示することで、常に同じ最終結果記録レポートファイルを再印刷することができる。
【0049】
図4に示したデータマネージャ画面100、つまりファイル選択用設定領域101が「絞り込み」の設定である場合にも、データファイルリスト102で複数の分析データファイルを選択することは可能であるが、予め選択すべき複数の分析データファイルが既知である場合やその分析データファイルの元となった複数の試料が一つのロットとして扱えるような場合には、上述した「バッチデータセット」の設定を使用したほうが簡便であり、ミスも起こりにくい。
【0050】
即ち、「バッチデータセット」の設定を使用する場合には、予め、ひとまとまりとして処理したい複数の分析データファイルを指定してバッチファイルに登録しておく。バッチファイルは実質的なデータ(分析結果など)は有さず、複数の分析データファイルの属性情報などが収録されたファイルである。
【0051】
図5に示す「バッチデータセット」の設定の場合、オペレータがファイル選択用設定領域101において、一又は複数の絞り込み項目について絞り込み条件を設定すると、ファイル選択用設定領域101中に表示されるバッチファイルリスト106に絞り込み条件を満たすバッチファイルが表示される。オペレータはその中から目的とするバッチファイルを、画面上でマウスによりクリック操作する等によって指定する。図5では、図中に符号107で示すバッチファイルが選択され、該ファイルが反転表示されている。バッチファイルが選択されると、そのバッチファイルに対して登録されている分析データファイルがデータファイルリスト102に表示される。そのうえでオペレータがマウスの右ボタンを押下すると図5中に示すような操作メニュー108が表示されるから、その中で「レポートセットの作成」109を選択してクリック操作する。この操作がバッチファイルとして指定された全ての分析データファイルについての最終結果記録の作成指示に相当する。
こうして複数の分析データファイルを一括して選択し、該分析データファイルに関連する最終結果記録を作成することができる。
【0052】
なお、上記説明では、分析によって得られたデータが格納されたデータファイルにデータ解析処理によって得られたデータ等も格納してもよいことについて述べたが、分析データを含まず、解析処理によって得られたデータ例えば定量解析結果を格納した計算結果データファイルについても上記説明と同様に、一又は複数の計算結果データファイルをユーザが選択するとそれに関連した最終結果記録を自動的に作成するようにすることができる。
【0053】
なお、上記実施例はいずれも本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜、修正、追加、変更を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
【符号の説明】
【0054】
1…データベースサーバ
11…分析データ収集部
12…ログ情報収集部
13…データベース管理部
14…データベース
2…分析機器
3…ネットワーク回線
4…クライアント端末
41…データ解析処理部
42…分析レポート作成部
43…監査証跡レポート作成部
44…最終結果記録レポート作成部
45…データリスト作成部
46…最終結果情報抽出部
5…操作部
6…表示部
7…印刷部
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8