特許第6699807号(P6699807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6699807
(24)【登録日】2020年5月7日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】非晶性ポリアミド樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/28 20060101AFI20200518BHJP
【FI】
   C08G69/28
【請求項の数】9
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2019-564115(P2019-564115)
(86)(22)【出願日】2019年8月13日
(86)【国際出願番号】JP2019031888
【審査請求日】2019年11月19日
(31)【優先権主張番号】特願2018-154373(P2018-154373)
(32)【優先日】2018年8月21日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】山下 桃子
(72)【発明者】
【氏名】小黒 葉月
(72)【発明者】
【氏名】小田 尚史
【審査官】 阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−296529(JP,A)
【文献】 特開平08−239469(JP,A)
【文献】 特開2016−030820(JP,A)
【文献】 特開2004−043812(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/174345(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G69/、C08L77/
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソホロンジアミンを70モル%以上含むジアミン成分と、炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸を含むジカルボン酸成分とを、リン原子含有化合物の存在下で溶融重縮合させることを含み、
前記リン原子含有化合物の熱分解温度が前記溶融重縮合温度の最高到達温度以上であり、
溶融状態の前記ジカルボン酸成分に、前記リン原子含有化合物の水溶液および前記ジアミン成分を添加して、かつ、重合速度調整剤の存在下で前記溶融重縮合させることを含み、
前記重合速度調整剤が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属酢酸塩およびアルカリ土類金属酢酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である、非晶性ポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記リン原子含有化合物が、次亜リン酸のアルカリ金属塩、次亜リン酸のアルカリ土類金属塩、亜リン酸のアルカリ金属塩、亜リン酸のアルカリ土類金属塩、リン酸のアルカリ金属塩、リン酸のアルカリ土類金属塩、ピロリン酸のアルカリ金属塩、ピロリン酸のアルカリ土類金属塩、メタリン酸のアルカリ金属塩およびメタリン酸のアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の非晶性ポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記リン原子含有化合物が、次亜リン酸のアルカリ金属塩、次亜リン酸のアルカリ土類金属塩、亜リン酸のアルカリ金属塩、亜リン酸のアルカリ土類金属塩、メタリン酸のアルカリ金属塩およびメタリン酸のアルカリ土類金属塩の少なくとも1種である、請求項1に記載の非晶性ポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記溶融重縮合温度の最高到達温度が、200℃以上300℃以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の非晶性ポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記リン原子含有化合物の熱分解温度が、230℃以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載の非晶性ポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記非晶性ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジカルボン酸由来の構成単位が、30〜80モル%の炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、70〜20モル%の芳香族ジカルボン酸由来の構成単位を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の非晶性ポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記非晶性ポリアミド樹脂は、前記炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位が、セバシン酸由来の構成単位およびドデカン二酸由来の構成単位の少なくとも一方を含む、請求項に記載の非晶性ポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記非晶性ポリアミド樹脂は、前記芳香族ジカルボン酸由来の構成単位が、2,6−ナフタレンジカルボン酸由来の構成単位およびイソフタル酸由来の構成単位の少なくとも一方を含む、請求項またはに記載の非晶性ポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記非晶性ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、
前記ジアミン由来の構成単位の90モル%以上が、イソホロンジアミン由来の構成単位であり、
前記ジカルボン酸由来の構成単位が、30〜80モル%の炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、70〜20モル%の芳香族ジカルボン酸由来の構成単位を含み、
前記炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位が、セバシン酸由来の構成単位およびドデカン二酸由来の構成単位の少なくとも一方を含み、
前記芳香族ジカルボン酸由来の構成単位が、2,6−ナフタレンジカルボン酸由来の構成単位およびイソフタル酸由来の構成単位の少なくとも一方を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の非晶性ポリアミド樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非晶性ポリアミド樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジアミンとジカルボン酸とを重縮合させて得られるポリアミド樹脂は、古くから研究が進められ、多様な化学構造の樹脂が様々な分野で活用されている。代表的なものとして、その原料モノマーの種類により、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミドMXD6等と称され取り扱われている。
【0003】
一方、近年、非晶性のポリアミド樹脂が合成され、その研究が進められている。非晶性ポリアミド樹脂は透明性が高く、その特徴をいかして、各種の包装容器や、スイッチカバー、レンズ用やメガネフレームなど、生活用品から、工業製品、意匠性の要求される用途に至るまで広く使用され始めている。
【0004】
このような非晶性ポリアミド樹脂として、特許文献1には、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上が、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の、10〜90モル%がイソフタル酸に由来し、90〜10モル%が炭素数8〜12の直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、かつ、テレフタル酸に由来する構成単位を実質的に含まない非晶性ポリアミド樹脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2016/208272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、本出願人は、非晶性ポリアミド樹脂として、イソホロンジアミン由来の構成単位と、炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、芳香族ジカルボン酸由来の構成単位とを有する樹脂を開発している。
【0007】
そして、本発明者がさらに検討を進めたところ、上記出願人が開発した非晶性ポリアミド樹脂において、樹脂中に微小な異物が生じる場合があることが分かった。その異物は、通常の製品においては特に問題となるレベルのものではないが、顕著に高い外観特性を求められる製品や、フィルム、薄肉成形品などの用途によっては、改善されることが望ましい。
本発明はかかる課題を解決することを目的とするものであって、イソホロンジアミン由来の構成単位と、炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、芳香族ジカルボン酸由来の構成単位とを有する非晶性ポリアミド樹脂を製造するに際し、樹脂中に生じる異物を抑制ないし防止することができる非晶性ポリアミド樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題のもと、本発明者らが検討を行った結果、特定の非晶性ポリアミド樹脂を合成する際に触媒として用いるリン原子含有化合物を、その水溶液として添加することで、上記の目的を達成することが可能であることを見出した。具体的には、下記手段<1>により、好ましくは<2>〜<11>により、上記課題は解決された。
【0009】
<1>イソホロンジアミンを70モル%以上含むジアミン成分と、炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸を含むジカルボン酸成分とを、リン原子含有化合物の存在下で溶融重縮合させることを含み、前記リン原子含有化合物の熱分解温度が前記溶融重縮合温度の最高到達温度以上であり、溶融状態の前記ジカルボン酸成分に、前記リン原子含有化合物の水溶液および前記ジアミン成分を添加して前記溶融重縮合を行う、非晶性ポリアミド樹脂の製造方法。
<2>前記リン原子含有化合物が、次亜リン酸のアルカリ金属塩、次亜リン酸のアルカリ土類金属塩、亜リン酸のアルカリ金属塩、亜リン酸のアルカリ土類金属塩、リン酸のアルカリ金属塩、リン酸のアルカリ土類金属塩、ピロリン酸のアルカリ金属塩、ピロリン酸のアルカリ土類金属塩、メタリン酸のアルカリ金属塩およびメタリン酸のアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種である、<1>に記載の非晶性ポリアミド樹脂の製造方法。
<3>前記リン原子含有化合物が、次亜リン酸のアルカリ金属塩、次亜リン酸のアルカリ土類金属塩、亜リン酸のアルカリ金属塩、亜リン酸のアルカリ土類金属塩、メタリン酸のアルカリ金属塩およびメタリン酸のアルカリ土類金属塩の少なくとも1種である、<1>に記載の非晶性ポリアミド樹脂の製造方法。
<4>さらに、重合速度調整剤の存在下で前記溶融重縮合させることを含む、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の非晶性ポリアミド樹脂の製造方法。
<5>前記重合速度調整剤が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属酢酸塩およびアルカリ土類金属酢酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である<4>に記載の非晶性ポリアミド樹脂の製造方法。
<6>前記溶融重縮合温度の最高到達温度が、200℃以上300℃以下である、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の非晶性ポリアミド樹脂の製造方法。
<7>前記リン原子含有化合物の熱分解温度が、200℃以上である、<1>〜<6>のいずれか1つに記載の非晶性ポリアミド樹脂の製造方法。
<8>前記非晶性ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位が、30〜80モル%の炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、70〜20モル%の芳香族ジカルボン酸由来の構成単位を含む、<1>〜<7>のいずれか1つに記載の非晶性ポリアミド樹脂の製造方法。
<9>前記非晶性ポリアミド樹脂は、前記炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位が、セバシン酸由来の構成単位およびドデカン二酸由来の構成単位の少なくとも一方を含む、<8>に記載の非晶性ポリアミド樹脂の製造方法。
<10>前記非晶性ポリアミド樹脂は、前記芳香族ジカルボン酸由来の構成単位が、2,6−ナフタレンジカルボン酸由来の構成単位およびイソフタル酸由来の構成単位の少なくとも一方を含む、<8>または<9>に記載の非晶性ポリアミド樹脂の製造方法。
<11>前記非晶性ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の90モル%以上が、イソホロンジアミン由来の構成単位であり、前記ジカルボン酸由来の構成単位が、30〜80モル%の炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、70〜20モル%の芳香族ジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位が、セバシン酸由来の構成単位およびドデカン二酸由来の構成単位の少なくとも一方を含み、前記芳香族ジカルボン酸由来の構成単位が、2,6−ナフタレンジカルボン酸由来の構成単位およびイソフタル酸由来の構成単位の少なくとも一方を含む、<1>〜<7>のいずれか1つに記載の非晶性ポリアミド樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、イソホロンジアミン由来の構成単位と、炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、芳香族ジカルボン酸由来の構成単位とを有する非晶性ポリアミド樹脂を製造するに際し、樹脂中に生じる異物を抑制ないし防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0012】
本発明の非晶性ポリアミド樹脂の製造方法は、イソホロンジアミンを70モル%以上含むジアミン成分と、炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸を含むジカルボン酸成分とを、リン原子含有化合物の存在下で溶融重縮合させることを含み、前記リン原子含有化合物の熱分解温度が前記溶融重縮合温度の最高到達温度以上であり、溶融状態の前記ジカルボン酸成分に、前記リン原子含有化合物の水溶液および前記ジアミン成分を添加して前記溶融重縮合を行うことを特徴とする。本製造方法により、得られる非晶性ポリアミド樹脂に生じる異物を抑制ないし防止することができる。
【0013】
尚、本発明における非晶性ポリアミド樹脂とは、明確な融点を持たないポリアミド樹脂であり、具体的には、結晶融解エンタルピーΔHmが5J/g未満であることをいい、3J/g以下が好ましく、1J/g以下がさらに好ましい。結晶融解エンタルピーΔHmは、後述する実施例に記載の方法に従う。
【0014】
<非晶性ポリアミド樹脂>
本発明の製造方法により製造される非晶性ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がイソホロンジアミン由来の構成単位であり、同構成単位は80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることがさらに好ましく、99モル%以上であることが一層好ましい。イソホロンジアミンを上記の下限値以上の比率で適用することにより、成形品においてより曇りの少ない高い透明性を付与することができ好ましい。
【0015】
本発明の製造方法で得られる非晶性ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸由来の構成単位が、炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位および芳香族ジカルボン酸由来の構成単位を含み、ジカルボン酸由来の構成単位が、30〜80モル%の炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、70〜20モル%の芳香族ジカルボン酸由来の構成単位を含む(但し、合計が100モル%を超えることはない)ことが好ましい。
前記ジカルボン酸由来の構成単位は、好ましくは30〜80モル%、より好ましくは45〜80モル%、さらに好ましくは50〜80モル%、一層好ましくは60〜80モル%、より一層好ましくは65〜80モル%が炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位である。
本発明においては、直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位の炭素数が相応の長さであることが、得られた非晶性ポリアミドの各種性能の面より好ましい。かかる観点からα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸の炭素数は10〜12がより好ましい。
また、前記ジカルボン酸由来の構成単位は、好ましくは70〜20モル%、より好ましくは55〜20モル%、さらに好ましくは、50〜20モル%、一層好ましくは40〜20モル%、より一層好ましくは35〜20モル%が芳香族ジカルボン酸由来の構成単位である。
非晶性ポリアミド樹脂において、炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸は、それぞれ、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明では、ジカルボン酸由来の構成単位のうち、炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と芳香族ジカルボン酸由来の構成単位の合計量が90モル%以上を占めることが好ましく、95モル%以上を占めることがより好ましく、99モル%以上を占めることがさらに好ましい。
【0016】
炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸は、炭素数8〜12のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸が好ましい。炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸およびドデカン二酸が例示され、セバシン酸およびドデカン二酸の少なくとも一方が好ましい。
芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸が例示され、イソフタル酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸の少なくとも1種が好ましく、2,6−ナフタレンジカルボン酸およびイソフタル酸の少なくとも一方がより好ましい。また、非晶性ポリアミド樹脂の実施形態の一例として、テレフタル酸由来の構成単位を実質的に含まない形態が例示される。実質的に含まないとは、非晶性ポリアミド樹脂を構成するジカルボン酸由来の構成単位のうち、テレフタル酸由来の構成単位の割合が5モル%以下、好ましくは3モル%以下、より好ましくは1モル%以下であることをいう。
炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸以外のジカルボン酸(他のジカルボン酸)としては、炭素数8未満のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸(例えば、アジピン酸、ピメリン酸)や脂環式ジカルボン酸(例えば、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸)が例示される。他のジカルボン酸は、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
【0017】
非晶性ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸由来の構成単位における、炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、芳香族ジカルボン酸由来の構成単位のモル比率(炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位/芳香族ジカルボン酸由来の構成単位)が、0.5〜3.5であることが好ましく、0.8〜3.2であることがより好ましく、2.0〜3.1であることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、各種性能により優れた非晶性ポリアミド樹脂が得られる。
【0018】
以下に、本発明の好ましい非晶性ポリアミド樹脂の実施形態を述べる。本発明がこれらの実施形態に限定されるものではないことは言うまでもない。
非晶性ポリアミド樹脂の第一の実施形態は、ジアミン由来の構成単位の90モル%以上が、イソホロンジアミン由来の構成単位であり、ジカルボン酸由来の構成単位が、30〜80モル%の炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、70〜20モル%の芳香族ジカルボン酸由来の構成単位を含み、炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位が、セバシン酸由来の構成単位およびドデカン二酸由来の構成単位の少なくとも一方を含み、芳香族ジカルボン酸由来の構成単位が、2,6−ナフタレンジカルボン酸由来の構成単位およびイソフタル酸由来の構成単位の少なくとも一方を含む非晶性ポリアミド樹脂である。第一の実施形態では、炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位が、セバシン酸由来の構成単位およびドデカン二酸由来の構成単位のいずれか一方を含む態様および両方を含む態様が例示される。また、第一の実施形態では、2,6−ナフタレンジカルボン酸由来の構成単位およびイソフタル酸由来の構成単位のいずれか一方を含む態様および両方を含む態様が例示される。
【0019】
非晶性ポリアミド樹脂の第二の実施形態は、第一の実施形態において、ジカルボン酸由来の構成単位が、30〜80モル%のドデカン二酸由来の構成単位と、70〜20モル%の芳香族ジカルボン酸由来の構成単位を含む態様である。第二の実施形態では、(ドデカン二酸由来の構成単位/芳香族ジカルボン酸由来の構成単位)のモル比率が2.3〜4.0であることが好ましく、2.8〜3.2であることがより好ましい。
【0020】
非晶性ポリアミド樹脂の第三の実施形態は、第一の実施形態において、ジカルボン酸由来の構成単位が、30〜80モル%のセバシン酸由来の構成単位と、70〜20モル%の芳香族ジカルボン酸由来の構成単位を含む態様である。第三の実施形態では、(セバシン酸由来の構成単位/芳香族ジカルボン酸由来の構成単位)のモル比率が2.3〜4.0であることが好ましく、2.8〜3.2であることがさらに好ましい。
【0021】
非晶性ポリアミド樹脂の第四の実施形態は、第一の実施形態において、ジカルボン酸由来の構成単位が、30〜80モル%の炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、70〜20モル%の2,6−ナフタレンジカルボン酸由来の構成単位を含む態様である。第四の実施形態では、(炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位/2,6−ナフタレンジカルボン酸由来の構成単位)のモル比率が2.3〜4.0であることが好ましく、2.8〜3.2であることがより好ましい。
【0022】
非晶性ポリアミド樹脂の第五の実施形態は、第一の実施形態において、ジカルボン酸由来の構成単位が、30〜80モル%の炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、70〜20モル%のイソフタル酸由来の構成単位を含む態様である。第五の実施形態では、(炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位/イソフタル酸由来の構成単位)のモル比率が2.3〜4.0であることが好ましく、2.8〜3.2であることがより好ましい。
【0023】
なお、非晶性ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸由来の構成単位とジアミン由来の構成単位から構成されるが、ジカルボン酸由来の構成単位およびジアミン由来の構成単位以外の構成単位や、末端基等の他の部位を含みうる。他の構成単位としては、ε−カプロラクタム、バレロラクタム、ラウロラクタム、ウンデカラクタム等のラクタム、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸等由来の構成単位が例示できるが、これらに限定されるものではない。さらに、非晶性ポリアミド樹脂は、合成に用いた添加剤等の微量成分が含まれる場合もあるであろう。
本発明で用いる非晶性ポリアミド樹脂は、通常95質量%以上、好ましくは98質量%以上が、より好ましくは99質量%以上がジカルボン酸由来の構成単位またはジアミン由来の構成単位である。
【0024】
<リン原子含有化合物>
本発明の製造方法では、溶融状態の前記ジカルボン酸成分に、リン原子含有化合物の水溶液および前記ジアミン成分を添加して前記溶融重縮合を行う。溶融重縮合の反応系内にリン原子含有化合物を添加することにより、アミド化を促進することができ、重縮合系内に存在する酸素によるポリアミド樹脂の着色も防止することができる。本発明においては、このような作用をもつリン原子含有化合物を水溶液の形態で溶融状態のジカルボン酸に対して添加することで、得られる樹脂中での異物の生成を効果的に抑制・防止することができる。これは、推定を含むが、リン原子含有化合物を水溶液にして添加することで、溶融状態のジカルボン酸中でのリン原子含有化合物の分散性が極めて良好になり、異物の生成を抑制することができるためと考えられる。すなわち、本発明では、溶融状態のジカルボン酸成分にリン原子含有化合物の水溶液を添加して、ジカルボン酸成分中にリン原子含有化合物を分散させた後に、ジアミン成分を添加することが好ましい。
【0025】
溶融状態のジカルボン酸成分とは、ポリアミド樹脂の原料となるジカルボン酸の少なくとも1種が融解して液体状態にあることをいう。ただし、本発明では、前記原料となるジカルボン酸の少なくとも1種のすべて(100質量%)が融解して液体状態になっている場合のほか、前記原料となるジカルボン酸の少なくとも1種の80質量%以上(好ましくは90質量%以上)が液体状態となっている場合も含む趣旨である。
本発明では、炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸の少なくとも一方が溶融状態にあることが好ましく、少なくとも炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸が溶融状態にあることがより好ましい。
【0026】
リン原子含有化合物の水溶液を添加したとき、ジカルボン酸の温度が水の沸点に対して十分に高温であると、水溶液が溶融ジカルボン酸に到達して間もなく水は蒸発する。水溶液がジカルボン酸中に分散した後に水が蒸発する場合には、リン原子含有化合物は水溶液中に均一に分散する。仮に水溶液が分散する前に水が蒸発したとしても、水の蒸発に伴う析出したリン原子含有化合物の微粉化によって、小粒径化されたリン原子含有化合物はジカルボン酸中に均一に分散されると推定される。この作用も、樹脂中の異物の生成を抑制ないし防止する効果につながると解される。
【0027】
本発明の製造方法において、前記リン原子含有化合物の熱分解温度(Td)は、前記溶融重縮合温度の最高到達温度(Tp)以上である(Td≧Tp)。
【0028】
リン原子含有化合物の分解温度(Td)は、230℃以上が好ましく、245℃以上がより好ましく、270℃以上がさらに好ましい。上限としては、1000℃以下が実際的であり、さらには、800℃以下、700℃以下、630℃以下であってもよい。
【0029】
水をその沸点以上の液体中に投入すると体積が膨張して反応槽内の圧力が上昇する傾向にある。または、水の蒸発に伴いジカルボン酸の著しい飛散が発生することがある。反応を制御する観点からは、溶融状態のジカルボン酸に対して水溶液を添加することは通常であれば避けることが好ましい。しかしながら、本発明では、リン原子含有化合物を水溶液の形態で反応槽内に添加することにより、上述の優れた効果を発揮する。かかる観点から、本発明では、水への溶解度が高いリン原子含有化合物を用いることが好ましい。
【0030】
リン原子含有化合物としては、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩であることが好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩またはマグネシウム塩であることがより好ましく、ナトリウム塩、カルシウム塩またはマグネシウム塩であることがさらに好ましい。
本発明におけるアルカリ土類金属とは、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムに加え、ベリリウムおよびマグネシウムも含む趣旨であり、カルシウムまたはマグネシウムが好ましい。
リン原子含有化合物は、また、次亜リン酸塩、亜リン酸塩、リン酸塩、ピロリン酸塩が挙げられ、次亜リン酸塩、亜リン酸塩およびリン酸塩が好ましく、次亜リン酸塩がより好ましい。
すなわち、リン原子含有化合物は、次亜リン酸のアルカリ金属塩、次亜リン酸のアルカリ土類金属塩、亜リン酸のアルカリ金属塩、亜リン酸のアルカリ土類金属塩、リン酸のアルカリ金属塩、リン酸のアルカリ土類金属塩、ピロリン酸のアルカリ金属塩、ピロリン酸のアルカリ土類金属塩、メタリン酸のアルカリ金属塩およびメタリン酸のアルカリ土類金属塩から選ばれることが好ましく、次亜リン酸のアルカリ金属塩、次亜リン酸のアルカリ土類金属塩、亜リン酸のアルカリ金属塩、亜リン酸のアルカリ土類金属塩、リン酸のアルカリ金属塩、リン酸のアルカリ土類金属塩、メタリン酸のアルカリ金属塩およびメタリン酸のアルカリ土類金属塩から選ばれることがより好ましい。
本発明では、特に、次亜リン酸のアルカリ金属塩、次亜リン酸のアルカリ土類金属塩、亜リン酸のアルカリ金属塩、亜リン酸のアルカリ土類金属塩、メタリン酸のアルカリ金属塩およびメタリン酸のアルカリ土類金属塩の少なくとも1種であることがより好ましく、次亜リン酸のアルカリ土類金属塩およびメタリン酸のアルカリ金属塩の少なくとも1種であることがより好ましく、次亜リン酸カルシウムであることがさらに好ましい。
【0031】
次亜リン酸のアルカリ金属塩の具体例としては、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウムが挙げられる。次亜リン酸のアルカリ土類金属塩の具体例としては、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸マグネシウムが挙げられる。亜リン酸のアルカリ金属塩の具体例としては、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸水素カリウム、亜リン酸リチウム、亜リン酸水素リチウムが挙げられる。亜リン酸のアルカリ土類金属塩の具体例としては、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸水素マグネシウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸水素カルシウムが挙げられる。リン酸のアルカリ金属塩の具体例としては、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸二水素リチウムが挙げられる。リン酸のアルカリ土類金属塩の具体例としては、リン酸マグネシウム、リン酸水素二マグネシウム、リン酸二水素マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸水素二カルシウム、リン酸二水素カルシウムが挙げられる。ピロリン酸のアルカリ金属塩の具体例としては、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸リチウムが挙げられる。ピロリン酸のアルカリ土類金属塩の具体例としては、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウムが挙げられる。メタリン酸のアルカリ金属塩の具体例としては、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸リチウムが挙げられる。メタリン酸のアルカリ土類金属塩の具体例としては、メタリン酸マグネシウム、メタリン酸カルシウムが挙げられる。
【0032】
ジアミンとジカルボン酸との溶融重縮合温度の最高到達温度(Tp)は、用いる反応基質の種類や反応装置、反応条件によっても異なるが、反応収率や反応速度の観点から、200℃以上が好ましく、230℃以上がより好ましく、245℃以上がさらに好ましく、260℃以上が一層好ましく、265℃以上であることがより一層好ましい。上限としては、例えば、300℃以下であり、280℃以下であってもよい。溶融重縮合温度の最高到達温度(Tp)の測定方法はこの種の反応に一般的な装置の構造や温度測定器の特徴等に準じて定めればよい。例えば、撹拌機能の十分なバッチ式の反応釜で行う場合には、溶融状態のジカルボン酸成分中に熱電対または温度計の先端が十分に浸漬し、かつ反応釜の壁面から十分に離れたところに位置するようにする態様が挙げられる。これにより、反応が進行する溶融原料の温度が的確に把握できる。
【0033】
溶融重縮合温度の最高到達温度(Tp)は、例えば、反応釜の上側面に設けられた熱電対挿入用の開口部より熱電対を差し入れ、熱電対の先端が、反応釜の底から10mm程度の高さに位置するように設定する。開口部は耐熱性の栓等によりシーリングして、密閉状態が保たれるようにすることが好ましい。熱電対は、0℃〜400℃の温度の測定に対応できるものを選定することが好ましい。
測定は、ジカルボン酸を加熱し溶融状態にして、そこにリン原子含有化合物の水溶液とジアミン成分と(必要により反応速度調整剤等を含む)を添加して反応を開始してから経時的に測定する。この測定において、最高の温度を示したときの温度を最高到達温度(Tp)とする。ただし、連続して3秒間その温度を維持したことを条件として温度を読み取る。
【0034】
本発明においてリン原子含有化合物の融点(Tm)は特に限定されないが、本発明の効果がより顕著に発揮される観点から、リン原子含有化合物の融点(Tm)が前記溶融重縮合温度の最高到達温度(Tp)より高くすることもできる。
【0035】
ポリアミド樹脂の重縮合系内に添加するリン原子含有化合物の添加量は、ポリアミド樹脂中のリン原子濃度換算(質量基準)で1ppm以上となる量が好ましく、15ppm以上であることがより好ましく、20ppm以上であることがさらに好ましい。また、前記リン原子含有化合物の添加量の上限は、1000ppm以下となる量が好ましく、400ppm以下であることがより好ましく、350ppm以下であることがさらに好ましく、300ppm以下であることがより一層好ましい。
ポリアミド樹脂中のリン原子濃度が上記下限値以上であれば、酸化防止剤としての効果を十分に得られ、ポリアミド樹脂の着色を防止することができる。一方、ポリアミド樹脂中のリン原子濃度が上記上限値以下であれば、リン原子含有化合物に起因すると考えられる異物の発生を抑制し、外観の優れた成形品を得ることができる。
【0036】
リン原子含有化合物の水溶液の濃度は、反応系内への過剰な水の添加を考慮し、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。但し、リン原子含有化合物の析出の観点から、リン原子含有化合物の水溶液の濃度は、25℃における水への溶解度を基準として、好ましくは前記溶解度の90質量%以下、より好ましくは前記溶解度の70質量%以下、さらに好ましくは前記溶解度の50質量%以下である。
また、リン原子含有化合物の水への溶解度は、高い方が好ましい。本発明では、リン原子含有化合物の25℃における水への溶解度が、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上であり、一層好ましくは20%以上である。また、上限値としては、100%以下であることが好ましい。リン原子含有化合物の水への溶解度を高くすることにより、より少量の水溶液の添加で、溶融重縮合反応をより効果的に進行させることができる。
リン原子含有化合物の水溶液を添加する際の水溶液の温度としては、好ましくは10〜80℃、より好ましくは15〜60℃、さらに好ましくは20〜35℃である。
リン原子含有化合物の水溶液の添加速度は、ジカルボン酸成分とジアミン成分との重縮合反応で発生する縮合水の発生速度と同等以下の添加速度であることが好ましく、また、水溶液添加ライン中をリン原子含有化合物の水溶液が通液している際に反応槽からの伝熱により水が気化しないような添加ラインを通過する速度であることが好ましい。したがって、リン原子含有化合物の水溶液を添加する際のリン原子含有化合物の水溶液の反応槽容積に対する添加速度v/V(v:滴下速度[ml/s]、V:反応槽容積[ml])は、好ましくは1.0×10−6〜1.0×10−3[1/s]、より好ましくは5.0×10−6〜7.0×10−4[1/s]、さらに好ましくは2.0×10−5〜5.0×10−4[1/s]である。
【0037】
<重合速度調整剤>
本発明の製造方法においては、ポリアミド樹脂のゲル化を防ぐ観点から、さらに重合速度調整剤を添加し、リン原子含有化合物および重合速度調整剤の存在下で溶融重縮合を行うことが好ましい。すなわち、本発明の非晶性ポリアミド樹脂の製造方法は、さらに、重合速度調整剤の存在下で前記溶融重縮合させることを含むことが好ましい。
重合速度調整剤は、原料モノマーの反応開始前に添加することが好ましいが、溶融状態のジカルボン酸成分に添加することがより好ましい。
重合速度調整剤としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属酢酸塩およびアルカリ土類金属酢酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、アルカリ金属水酸化物やアルカリ金属酢酸塩が好ましい。
アルカリ金属水酸化物の具体例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムが挙げられる。アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムが挙げられる。アルカリ金属酢酸塩の具体例としては、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウムが挙げられる。アルカリ土類金属酢酸塩の具体例としては、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウムが挙げられる。
これらの中でも、重合速度調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酢酸ナトリウムおよび酢酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウムおよび酢酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、酢酸ナトリウムがさらに好ましい。
重縮合系内に重合速度調整剤を添加する場合、アミド化反応の促進と抑制のバランスの観点から、リン原子含有化合物のリン原子と重合速度調整剤とのモル比(リン原子含有化合物/重合速度調整剤)は、好ましくは0.10以上であり、より好ましくは0.30以上であり、さらに好ましくは0.40以上である。好ましくは0.95以下であり、より好ましくは0.93以下であり、さらに好ましくは0.91以下であり、0.90以下であってもよい。
重合速度調整剤は、リン原子含有化合物とは別々に重縮合系内に添加してもよく、リン原子含有化合物および重合速度調整剤の水溶液として重縮合系内に添加してもよい。
【0038】
<分子量調整剤>
分子量調整剤として、ポリアミド樹脂の末端アミノ基または末端カルボキシル基と反応性を有する単官能化合物を少量添加してもよい。単官能化合物としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸等の脂肪族モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、ナフタレンカルボン酸等の芳香族モノカルボン酸;ブチルアミン、アミルアミン、イソアミルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン等の脂肪族モノアミン;ベンジルアミン、メチルベンジルアミン等の芳香脂肪族モノアミン;あるいはこれらの混合物が例示できるがこれらに限定されるものではない。
【0039】
重縮合系内に分子量調整剤を使用する場合の好適な使用量については、分子量調整剤の反応性や沸点、反応条件等に応じて異なるが、通常、原料のジアミン成分およびジカルボン酸成分の合計に対して0.002〜1質量%程度である。
【0040】
<ポリアミド樹脂の重縮合方法>
ポリアミド樹脂の重縮合方法としては、反応押出法、加圧塩法、常圧滴下法、加圧滴下法等が挙げられるが、本発明は、反応槽において、溶融状態のジカルボン酸成分に対してジアミン成分を連続的に滴下して重縮合を行う常圧滴下法または加圧滴下法に適用され、特に加圧滴下法に適用されることが好ましい。
常圧滴下法では、常圧下の反応槽にて、溶融状態のジカルボン酸成分にリン原子含有化合物の水溶液およびジアミン成分を連続的に滴下し、縮合水を除去しながら重縮合させる。なお、生成するポリアミド樹脂の重縮合が促進し、かつ、使用する重合釜のトルク上限を超えないように、反応系を昇温しながら重縮合反応を行うことが好ましい。
【0041】
加圧滴下法では、反応槽内を好ましくは0.4〜0.5MPa(Abs)程度に加圧しながら溶融状態のジカルボン酸成分にリン原子含有化合物の水溶液およびジアミン成分を連続的に滴下し、縮合水を除去しながら重縮合させる。この際、生成するポリアミド樹脂の重縮合が促進し、かつ、使用する重合釜のトルク上限を超えないように、反応系を昇温しながら重縮合反応を行う。設定モル比に達したらジアミン成分の滴下を終了し、反応槽内を徐々に常圧に戻しながら、ポリアミド樹脂の重縮合が促進し、かつ、使用する重合釜のトルク上限を超えない温度に保持した後、さらに、0.08MPa(Abs)まで徐々に減圧しつつ、そのままの温度で保持し、重縮合を継続する。一定の撹拌トルクに達したら、反応槽内を窒素で0.3MPa(Abs)程度に加圧してポリアミド樹脂を回収する。
【0042】
ジアミン成分の添加時間は、特に制限されないが、添加速度が速すぎる場合には、加熱能力不足によって反応系の昇温速度が遅くなることがある。反応装置の容積やヒータ等の加熱能力等にも依存するが、ジアミン成分の添加時間としては、好ましくは30分〜5時間、より好ましくは30分〜4時間である。
【0043】
反応の進行と共に生成する縮合水は、分縮器と全縮器(冷却器)を通して反応系外に留去される。縮合水と共に蒸気として反応系外に留出するジアミン成分や、蒸気として留出するジカルボン酸等は、分縮器で水蒸気と分離され、反応槽に再度戻されることが好ましい。
【0044】
また、ジアミン成分の添加終了直後、反応混合物の温度を一定に保ち、10〜30分程度撹拌を継続することが好ましい。
その後、好ましくは0.005〜0.03MPa/分の速度で、40〜90kPa(Abs)程度まで減圧し、5〜40分程度撹拌をし続け、ポリアミド樹脂を得ることができる。
【0045】
得られたポリアミド樹脂は、一旦取り出され、ペレット化し、乾燥して使用することができる。また、さらに重合度を高めるために、ペレット化したポリアミド樹脂を固相重合してもよい。
【0046】
<非晶性ポリアミド樹脂の物性等>
非晶性ポリアミド樹脂は、数平均分子量の下限値が8,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましい。前記数平均分子量の上限値は25,000以下であることが好ましく、20,000以下であることがより好ましい。数平均分子量の測定方法は、後述する実施例に記載の方法に従う。
【0047】
また、本発明の非晶性ポリアミド樹脂の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量=Mw/Mn)は、好ましくは1.5〜5.0、より好ましくは1.5〜3.5である。分子量分布を上記範囲とすることにより溶融時の流動性や溶融粘度の安定性が増し、溶融混練や溶融成形の加工性が良好となる。また靭性が良好であり、耐吸水性、耐薬品性、耐熱老化性といった諸物性も良好となる。
【0048】
非晶性ポリアミド樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が130℃以上であることが好ましく、140℃以上であることがより好ましく、145℃以上であることがさらに好ましい。本発明ではこのような高いTgとすることができるため、高温条件下でも物性低下しにくいというメリットがある。すなわち、高いガラス転移温度を維持しつつ、低い溶融粘度とすることができる点で価値が高い。ガラス転移温度の上限値は特に定めるものではないが、例えば、220℃以下であることが好ましく、200℃であってもよく、170℃以下でも十分実用レベルである。ガラス転移温度の測定方法は、後述する実施例に記載の方法に従う。
【0049】
本発明の非晶性ポリアミド樹脂は、JIS K7111−1に従ったノッチつきシャルピー衝撃強さが4.0kJ/m以上であることが好ましく、4.3kJ/m以上であることがより好ましい。上限値は特に定めるものではないが、例えば、9.0kJ/m以下、さらには8.7kJ/m以下であっても十分実用レベルである。測定には、特に断らない限り、4mm×10mm×80mmのISO試験片を用いることとする。本発明によれば、この衝撃強度が向上する点も利点である。
本発明の非晶性ポリアミド樹脂は、また、JIS K7111−1に従ったノッチなしシャルピー衝撃強さが70kJ/m以上であることが好ましく、90kJ/m以上であることがより好ましく、100kJ/m以上であることがさらに好ましく、110kJ/m以上であることが一層好ましい。上限値は特に定めるものではないが、例えば、160kJ/m以下、さらには155kJ/m以下であっても十分実用レベルである。測定には、特に断らない限り、4mm×10mm×80mmのISO試験片を用いることとする。本発明によれば、この衝撃強度が向上する点も利点である。
ノッチなしシャルピー衝撃強さは、後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0050】
本発明の非晶性ポリアミド樹脂は、2mmの厚さに成形したとき(例えば後記実施例の外観評価に用いた試験片)測定したヘイズの値が、2.0%以下であることが好ましく、1.7%以下であることがより好ましく、1.6%以下であることがさらに好ましく、1.5%以下であることが一層好ましい。下限値については、0%が理想であるが、1.0%以上であっても十分に実用レベルである。
【0051】
本発明の方法により得られる非晶性ポリアミド樹脂は、JIS K7373の色差試験におけるYI値は、好ましくは10以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは5以下である。ポリアミド樹脂のYI値が10以下であれば、後加工によって得られる成形品が黄色味を帯びることを防止でき、その商品価値が高いものとなる。
【0052】
<用途>
本発明の製造方法で得られる非晶性ポリアミド樹脂は、強化繊維を配合して繊維強化樹脂組成物とすることができる。強化繊維としては、炭素繊維およびガラス繊維が例示される。繊維強化樹脂組成物としては、ポリアミド樹脂と強化繊維を含む組成物を溶融混練してなるペレット、ポリアミド樹脂を強化繊維に含浸または近接させたプリプレグなどが例示される。
本発明の製造方法で得られる非晶性ポリアミド樹脂は、他の非晶性ポリアミド樹脂、結晶性ポリアミド樹脂、その他の熱可塑性樹脂、充填剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤、耐衝撃改良剤、滑剤、着色剤、導電性添加剤等の添加剤をブレンドして用いてもよい。これらの樹脂および添加剤は、それぞれ、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0053】
本発明に係る非晶性ポリアミド樹脂は、また、射出成形、ブロー成形、押出成形、圧縮成形、延伸、真空成形などの公知の成形方法によって、成形することができる。
【0054】
本発明に係る非晶性ポリアミド樹脂を用いて形成される成形品としては、フィルム、シート、薄肉成形品、中空成形品、繊維、ホース、チューブ等を含む各種成形品に用いることができる。
本発明に係る非晶性ポリアミド樹脂は、エンジニアリングプラスチック用途に好ましく用いられる。かかる成形品の利用分野としては、自動車等輸送機部品、一般機械部品、精密機械部品、電子・電気機器部品、OA機器部品、建材・住設関連部品、医療装置、光学製品、工業材料、レジャースポーツ用品、遊戯具、医療品、食品包装用フィルム等の日用品、防衛および航空宇宙製品等が挙げられる。本発明に係る成形品の実施形態の一例として、電子・電気機器部品の筐体、サングラス等が例示される。
また、本発明に係る非晶性ポリアミド樹脂を用いて形成される成形品の実施形態の他の一例として、単層または多層容器が挙げられる。
【実施例】
【0055】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0056】
<リン原子含有化合物>
リン原子含有化合物としては、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸マグネシウム、ピロリン酸ナトリウムを用いた。それぞれの分解温度は次亜リン酸カルシウム分解温度:320℃、次亜リン酸マグネシウム分解温度:340℃、ピロリン酸ナトリウムの分解温度:628℃であり、重合最高温度よりも高い熱分解温度を有するリン原子化合物を選定した。
【0057】
<実施例1>
<<IPD12Iの合成>>
撹拌機、分縮器、全縮器、圧力調整器、温度計、滴下槽およびポンプ、アスピレーター、窒素導入管、底排弁、ストランドダイを備えた内容積50Lの耐圧反応容器に、精秤したドデカン二酸(デカンジカルボン酸:DDA、ライヤンハイマウントバイオプロダクツテクノロジー社製(LAIYANG HIMOUNT BIO-PRODUCTS TECHNOLOGY CO.,LTD.))9500g(40.89mol)、イソフタル酸(PIA、三菱ガス化学社製)2267g(13.63mol)、酢酸ナトリウム(関東化学社製)1.14g(0.0139mol)を入れ、十分に窒素置換した後、反応容器内を密閉し、容器内を0.4MPaに保ちながら撹拌下180℃まで昇温した。180℃に到達後、次亜リン酸カルシウム(関東化学社製)2.63g(0.00154mol)を水50mLに溶解して調整した25℃の水溶液を、添加速度1.5mL/sにて反応槽内の溶融状態のドデカン二酸/イソフタル酸に対して連続的に添加した。さらに反応容器内の原料へ滴下槽に貯めたイソホロンジアミン(IPDA、BASF社製)9475g(55.53mol)の滴下を開始し、容器内を0.4MPaに保ちながら生成する縮合水を系外へ除きながら反応槽内を250℃まで昇温した。IPDAの滴下終了後、徐々に270℃まで昇温しつつ、反応容器内を徐々に常圧に戻し、次いでアスピレーターを用いて反応槽内を80kPaに減圧して縮合水を除いた。減圧中に撹拌機の撹拌トルクを観察し、所定のトルクに達した時点で撹拌を止め、反応槽内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化したのち、冷却してペレタイザーによりペレット化することにより、ポリアミド樹脂を得た。
得られたポリアミド樹脂のガラス転移温度は146℃であり、数平均分子量は13,300であった。
結晶融解エンタルピーΔHmは、1J/g以下であった。
【0058】
ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素気流中、室温から250℃まで昇温速度10℃/分で加熱したのち、ただちに室温以下まで冷却し、再び室温から250℃まで昇温速度10℃/分で加熱した際のガラス転移温度を測定した。本実施例では、示差走査熱量計として、(株)島津製作所社製のDSC−60を用いた。また、ポリアミド樹脂の結晶融解エンタルピーΔHmは、JIS K7121およびK7122に準じて、昇温過程における値を測定した。
【0059】
非晶性ポリアミド樹脂の数平均分子量は、以下の通り求めた。
非晶性ポリアミド樹脂0.3gを、フェノール/エタノール=4/1(体積比)の混合溶剤に投入して、25℃で撹拌し、完全に溶解させた後、撹拌しつつ、メタノール5mLで容器内壁を洗い流し、0.01mol/L塩酸水溶液で中和滴定して末端アミノ基濃度[NH2]を求めた。また、ポリアミド樹脂0.3gを、ベンジルアルコールに、窒素気流下170℃で撹拌し、完全に溶解させた後、窒素気流下80℃以下まで冷却し、撹拌しつつメタノール10mLで容器内壁を洗い流し、0.01mol/L水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定して末端カルボキシ基濃度[COOH]を求める。測定した末端アミノ基濃度[NH2](単位:μ当量/g)および末端カルボキシ基濃度[COOH](単位:μ当量/g)から、次式によって数平均分子量を求めた。
数平均分子量(Mn)=2,000,000/([COOH]+[NH2])
【0060】
<<外観評価>>
上記で得られたペレットは、120℃(露点−40℃)で24時間真空乾燥したのち、射出成形機(住友重機械工業(株)製、SE130DU−HP)にて、金型温度100℃、シリンダー温度を280℃の条件で、2mm×10mm×10mmの試験片に成形した。
上記の試験片について、顕微鏡(キーエンス社製デジタルマイクロスコープVHX-1000)を用いて観察し、異物の個数を計測した。試験片3枚をそれぞれ計測し、その平均値を採用した。異物は50〜200μmのサイズのものを対象とした。
A:異物が0個であった。
B:異物が1個以上30個未満であった。
C:異物が30個以上であった。
【0061】
<<シャルピー衝撃強さ>>
得られたポリアミド樹脂ペレットを、120℃(露点−40℃)で24時間真空乾燥したのち、射出成形機(住友重機械工業(株)、SE130DU−HP)にて、金型温度100℃、シリンダー温度を280℃の条件で、4mm×10mm×80mmの試験片を作製した。
得られた試験片について、JIS K7111−1に従って、ノッチなしシャルピー衝撃強さを測定した。単位は、kJ/mで示した。
射出成形機は、住友重機械工業(株)、SE130DU−HPを用いた。
【0062】
<比較例1>
<<IPD12Iの合成>>
撹拌機、分縮器、全縮器、圧力調整器、温度計、滴下槽およびポンプ、アスピレーター、窒素導入管、底排弁、ストランドダイを備えた内容積50Lの耐圧反応容器に、精秤したドデカン二酸(デカンジカルボン酸:DDA、ライヤンハイマウントバイオプロダクツテクノロジー社製(LAIYANG HIMOUNT BIO-PRODUCTS TECHNOLOGY CO.,LTD.))9500g(40.89mol)、イソフタル酸(PIA、三菱ガス化学社製)2267g(13.63mol)、次亜リン酸カルシウム(関東化学社製)2.63g(0.00154mol)、酢酸ナトリウム(関東化学社製)1.14g(0.0139mol)を入れ、十分に窒素置換した後、反応容器内を密閉し、容器内を0.4MPaに保ちながら撹拌下180℃まで昇温した。180℃に到達後、反応容器内の原料へ滴下槽に貯めたイソホロンジアミン(IPDA、BASF社製)9475g(55.53mol)の滴下を開始し、容器内を0.4MPaに保ちながら生成する縮合水を系外へ除きながら反応槽内を250℃まで昇温した。IPDAの滴下終了後、徐々に270℃まで昇温しつつ、反応容器内を徐々に常圧に戻し、次いでアスピレーターを用いて反応槽内を80kPaに減圧して縮合水を除いた。減圧中に撹拌機の撹拌トルクを観察し、所定のトルクに達した時点で撹拌を止め、反応槽内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化したのち、冷却してペレタイザーによりペレット化することにより、ポリアミド樹脂を得た。
得られたポリアミド樹脂のガラス転移温度は146℃であり、数平均分子量は12,900であった。
結晶融解エンタルピーΔHmは、1J/g以下であった。
<<外観評価>>
得られた非晶性ポリアミド樹脂について、実施例1と同様に、外観を評価した。
<<シャルピー衝撃強さ>>
得られた非晶性ポリアミド樹脂について、実施例1と同様に、シャルピー衝撃強さを測定した。
【0063】
<実施例2>
<<IPD12Iの合成>>
撹拌機、分縮器、全縮器、圧力調整器、温度計、滴下槽およびポンプ、アスピレーター、窒素導入管、底排弁、ストランドダイを備えた内容積50Lの耐圧反応容器に、精秤したドデカン二酸(デカンジカルボン酸:DDA、ライヤンハイマウントバイオプロダクツテクノロジー社製(LAIYANG HIMOUNT BIO-PRODUCTS TECHNOLOGY CO.,LTD.))9500g(40.89mol)、イソフタル酸(PIA、三菱ガス化学社製)2267g(13.63mol)、酢酸ナトリウム(関東化学社製)1.14g(0.0139mol)を入れ、十分に窒素置換した後、反応容器内を密閉し、容器内を0.4MPaに保ちながら撹拌下180℃まで昇温した。180℃に到達後、ピロリン酸ナトリウム(純正化学社製)4.11g(0.00154mol)を水50mLに溶解して調整した25℃の水溶液を、添加速度1.5mL/sにて反応槽内の溶融状態のドデカン二酸/イソフタル酸に対して連続的に添加した。さらに反応容器内の原料へ滴下槽に貯めたイソホロンジアミン(IPDA、BASF社製)9475g(55.53mol)の滴下を開始し、容器内を0.4MPaに保ちながら生成する縮合水を系外へ除きながら反応槽内を250℃まで昇温した。IPDAの滴下終了後、徐々に270℃まで昇温しつつ、反応容器内を徐々に常圧に戻し、次いでアスピレーターを用いて反応槽内を80kPaに減圧して縮合水を除いた。減圧中に撹拌機の撹拌トルクを観察し、所定のトルクに達した時点で撹拌を止め、反応槽内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化したのち、冷却してペレタイザーによりペレット化することにより、ポリアミド樹脂を得た。
得られたポリアミド樹脂のガラス転移温度は146℃であり、数平均分子量は12,100であった。
結晶融解エンタルピーΔHmは、1J/g以下であった。
<<外観評価>>
得られた非晶性ポリアミド樹脂について、実施例1と同様に、外観を評価した。
<<シャルピー衝撃強さ>>
得られた非晶性ポリアミド樹脂について、実施例1と同様に、シャルピー衝撃強さを測定した。
【0064】
<比較例2>
<<IPD12Iの合成>>
撹拌機、分縮器、全縮器、圧力調整器、温度計、滴下槽およびポンプ、アスピレーター、窒素導入管、底排弁、ストランドダイを備えた内容積50Lの耐圧反応容器に、精秤したドデカン二酸(デカンジカルボン酸:DDA、ライヤンハイマウントバイオプロダクツテクノロジー社製(LAIYANG HIMOUNT BIO-PRODUCTS TECHNOLOGY CO.,LTD.))9500g(40.89mol)、イソフタル酸(PIA、三菱ガス化学社製)2266.8g(13.63mol)、ピロリン酸ナトリウム(純正化学社製)4.11g(0.00154mol)、酢酸ナトリウム(関東化学社製)1.14g(0.0139mol)を入れ、十分に窒素置換した後、反応容器内を密閉し、容器内を0.4MPaに保ちながら撹拌下180℃まで昇温した。180℃に到達後、反応容器内の原料へ滴下槽に貯めたイソホロンジアミン(IPDA、BASF社製)9475g(55.53mol)の滴下を開始し、容器内を0.4MPaに保ちながら生成する縮合水を系外へ除きながら反応槽内を250℃まで昇温した。IPDAの滴下終了後、徐々に270℃まで昇温しつつ、反応容器内を徐々に常圧に戻し、次いでアスピレーターを用いて反応槽内を80kPaに減圧して縮合水を除いた。減圧中に撹拌機の撹拌トルクを観察し、所定のトルクに達した時点で撹拌を止め、反応槽内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化したのち、冷却してペレタイザーによりペレット化することにより、ポリアミド樹脂を得た。
得られたポリアミド樹脂のガラス転移温度は146℃であり、数平均分子量は11,600であった。
結晶融解エンタルピーΔHmは、1J/g以下であった。
<<外観評価>>
得られた非晶性ポリアミド樹脂について、実施例1と同様に、外観を評価した。
<<シャルピー衝撃強さ>>
得られた非晶性ポリアミド樹脂について、実施例1と同様に、シャルピー衝撃強さを測定した。
【0065】
<実施例3>
<<IPD12Iの合成>>
撹拌機、分縮器、全縮器、圧力調整器、温度計、滴下槽およびポンプ、アスピレーター、窒素導入管、底排弁、ストランドダイを備えた内容積50Lの耐圧反応容器に、精秤したドデカン二酸(デカンジカルボン酸:DDA、ライヤンハイマウントバイオプロダクツテクノロジー社製(LAIYANG HIMOUNT BIO-PRODUCTS TECHNOLOGY CO.,LTD.))9500g(40.89mol)、イソフタル酸(PIA、三菱ガス化学社製)2267g(13.63mol)、酢酸ナトリウム(関東化学社製)1.14g(0.0139mol)を入れ、十分に窒素置換した後、反応容器内を密閉し、容器内を0.4MPaに保ちながら撹拌下180℃まで昇温した。180℃に到達後、次亜リン酸マグネシウム六水和物(純正化学社製)3.99g(0.00154mol)を水50mLに溶解して調整した25℃の水溶液を、添加速度1.5mL/sにて反応槽内の溶融状態のドデカン二酸/イソフタル酸に対して連続的に添加した。さらに反応容器内の原料へ滴下槽に貯めたイソホロンジアミン(IPDA、BASF社製)9475g(55.53mol)の滴下を開始し、容器内を0.4MPaに保ちながら生成する縮合水を系外へ除きながら反応槽内を250℃まで昇温した。IPDAの滴下終了後、徐々に270℃まで昇温しつつ、反応容器内を徐々に常圧に戻し、次いでアスピレーターを用いて反応槽内を80kPaに減圧して縮合水を除いた。減圧中に撹拌機の撹拌トルクを観察し、所定のトルクに達した時点で撹拌を止め、反応槽内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化したのち、冷却してペレタイザーによりペレット化することにより、ポリアミド樹脂を得た。
得られたポリアミド樹脂のガラス転移温度は146℃であり、数平均分子量は12,800であった。
結晶融解エンタルピーΔHmは、1J/g以下であった。
<<外観評価>>
得られた非晶性ポリアミド樹脂について、実施例1と同様に、外観を評価した。
<<シャルピー衝撃強さ>>
得られた非晶性ポリアミド樹脂について、実施例1と同様に、シャルピー衝撃強さを測定した。
【0066】
<比較例3>
<<IPD12Iの合成>>
撹拌機、分縮器、全縮器、圧力調整器、温度計、滴下槽およびポンプ、アスピレーター、窒素導入管、底排弁、ストランドダイを備えた内容積50Lの耐圧反応容器に、精秤したドデカン二酸(デカンジカルボン酸:DDA、ライヤンハイマウントバイオプロダクツテクノロジー社製(LAIYANG HIMOUNT BIO-PRODUCTS TECHNOLOGY CO.,LTD.))9500g(40.89mol)、イソフタル酸(PIA、三菱ガス化学社製)2267g(13.63mol)、次亜リン酸マグネシウム六水和物(純正化学社製)3.99g(0.00154mol)、酢酸ナトリウム(関東化学社製)1.14g(0.0139mol)を入れ、十分に窒素置換した後、反応容器内を密閉し、容器内を0.4MPaに保ちながら撹拌下180℃まで昇温した。180℃に到達後、反応容器内の原料へ滴下槽に貯めたイソホロンジアミン(IPDA、BASF社製)9475g(55.53mol)の滴下を開始し、容器内を0.4MPaに保ちながら生成する縮合水を系外へ除きながら反応槽内を250℃まで昇温した。IPDAの滴下終了後、徐々に270℃まで昇温しつつ、反応容器内を徐々に常圧に戻し、次いでアスピレーターを用いて反応槽内を80kPaに減圧して縮合水を除いた。減圧中に撹拌機の撹拌トルクを観察し、所定のトルクに達した時点で撹拌を止め、反応槽内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化したのち、冷却してペレタイザーによりペレット化することにより、ポリアミド樹脂を得た。
得られたポリアミド樹脂のガラス転移温度は146℃であり、数平均分子量は11,900であった。
結晶融解エンタルピーΔHmは、1J/g以下であった。
<<外観評価>>
得られた非晶性ポリアミド樹脂について、実施例1と同様に、外観を評価した。
<<シャルピー衝撃強さ>>
得られた非晶性ポリアミド樹脂について、実施例1と同様に、シャルピー衝撃強さを測定した。
【0067】
<実施例4>
<<IPD12Nの合成>>
撹拌機、分縮器、全縮器、圧力調整器、温度計、滴下槽およびポンプ、アスピレーター、窒素導入管、底排弁、ストランドダイを備えた内容積50Lの耐圧反応容器に、精秤したドデカン二酸(デカンジカルボン酸:DDA、ライヤンハイマウントバイオプロダクツテクノロジー社製(LAIYANG HIMOUNT BIO-PRODUCTS TECHNOLOGY CO.,LTD.))9500g(40.89mol)、2,6−ナフタレンジカルボン酸(2,6−NDCA、ビーピー社製)2947g(13.63mol))、酢酸ナトリウム(関東化学社製)0.27g(0.0154mol)を入れ、十分に窒素置換した後、反応容器内を密閉し、容器内を0.4MPaに保ちながら撹拌下180℃まで昇温した。180℃に到達後、次亜リン酸カルシウム(関東化学社製)4.43g(0.0172mol)を水50mLに溶解して調整した25℃の水溶液を、添加速度1.5mL/sにて反応槽内の溶融状態のドデカン二酸/ナフタレンジカルボン酸に対して連続的に添加した。反応容器内の原料へ滴下槽に貯めたIPDA(BASF社製)9476g(55.53mol)の滴下を開始し、容器内を0.4MPaに保ちながら生成する縮合水を系外へ除きながら反応槽内を250℃まで昇温した。IPDA(BASF社製)の滴下終了後、徐々に270℃まで昇温しつつ、反応容器内を徐々に常圧に戻し、次いでアスピレーターを用いて反応槽内を80kPaに減圧して縮合水を除いた。減圧中に撹拌機の撹拌トルクを観察し、所定のトルクに達した時点で撹拌を止め、反応槽内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化したのち、冷却してペレタイザーによりペレット化することにより、ポリアミド樹脂を得た。
得られたポリアミド樹脂のガラス転移温度は150℃であり、数平均分子量は17,000であった。
結晶融解エンタルピーΔHmは、1J/g以下であった。
<<外観評価>>
得られた非晶性ポリアミド樹脂について、実施例1と同様に、外観を評価した。
<<シャルピー衝撃強さ>>
得られた非晶性ポリアミド樹脂について、実施例1と同様に、シャルピー衝撃強さを測定した。
【0068】
<比較例4>
<<IPD12Nの合成>>
撹拌機、分縮器、全縮器、圧力調整器、温度計、滴下槽およびポンプ、アスピレーター、窒素導入管、底排弁、ストランドダイを備えた内容積50Lの耐圧反応容器に、精秤したドデカン二酸(デカンジカルボン酸:DDA、ライヤンハイマウントバイオプロダクツテクノロジー社製(LAIYANG HIMOUNT BIO-PRODUCTS TECHNOLOGY CO.,LTD.))9500g(40.89mol)、2,6−ナフタレンジカルボン酸(2,6−NDCA、ビーピー社製)2947g(13.63mol))、次亜リン酸カルシウム(関東化学社製)4.43g(0.0172mol)、酢酸ナトリウム(関東化学社製)0.27g(0.0154mol)を入れ、十分に窒素置換した後、反応容器内を密閉し、容器内を0.4MPaに保ちながら撹拌下180℃まで昇温した。180℃に到達後、反応容器内の原料へ滴下槽に貯めたIPDA(BASF社製)9476g(55.53mol)の滴下を開始し、容器内を0.4MPaに保ちながら生成する縮合水を系外へ除きながら反応槽内を250℃まで昇温した。IPDAの滴下終了後、徐々に270℃まで昇温しつつ、反応容器内を徐々に常圧に戻し、次いでアスピレーターを用いて反応槽内を80kPaに減圧して縮合水を除いた。減圧中に撹拌機の撹拌トルクを観察し、所定のトルクに達した時点で撹拌を止め、反応槽内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化したのち、冷却してペレタイザーによりペレット化することにより、ポリアミド樹脂を得た。
得られたポリアミド樹脂のガラス転移温度は150℃であり、数平均分子量は15,300あった。
結晶融解エンタルピーΔHmは、1J/g以下であった。
<<外観評価>>
得られた非晶性ポリアミド樹脂について、実施例1と同様に、外観を評価した。
<<シャルピー衝撃強さ>>
得られた非晶性ポリアミド樹脂について、実施例1と同様に、シャルピー衝撃強さを測定した。
【0069】
<実施例5>
<<IPD10Iの合成>>
撹拌機、分縮器、全縮器、圧力調整器、温度計、滴下槽およびポンプ、アスピレーター、窒素導入管、底排弁、ストランドダイを備えた内容積50Lの耐圧反応容器に、精秤したセバシン酸(1,8−オクタンジカルボン酸:SA(CASDA製))9500g(46.51mol)、イソフタル酸(PIA、三菱ガス化学社製)2578g(15.50mol)、酢酸ナトリウム(関東化学社製)1.22g(0.0149mol)を入れ、十分に窒素置換した後、反応容器内を密閉し、容器内を0.4MPaに保ちながら撹拌下180℃まで昇温した。180℃に到達後、次亜リン酸カルシウム(関東化学社製)5.62g(0.0331mol)を水50mLに溶解して調整した25℃の水溶液を、添加速度1.5mL/sにて反応槽内の溶融状態のドデカン二酸/イソフタル酸に対して連続的に添加した。さらに反応容器内の原料へ滴下槽に貯めたイソホロンジアミン(IPDA、BASF社製)9475g(55.53mol)の滴下を開始し、容器内を0.4MPaに保ちながら生成する縮合水を系外へ除きながら反応槽内を250℃まで昇温した。IPDAの滴下終了後、徐々に270℃まで昇温しつつ、反応容器内を徐々に常圧に戻し、次いでアスピレーターを用いて反応槽内を80kPaに減圧して縮合水を除いた。減圧中に撹拌機の撹拌トルクを観察し、所定のトルクに達した時点で撹拌を止め、反応槽内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化したのち、冷却してペレタイザーによりペレット化することにより、ポリアミド樹脂を得た。
得られたポリアミド樹脂のガラス転移温度は161℃であり、数平均分子量は14,800であった。
結晶融解エンタルピーΔHmは、1J/g以下であった。
<<外観評価>>
得られた非晶性ポリアミド樹脂について、実施例1と同様に、外観を評価した。
<<シャルピー衝撃強さ>>
得られた非晶性ポリアミド樹脂について、実施例1と同様に、シャルピー衝撃強さを測定した。
【0070】
<比較例5>
<<IPD10Iの合成>>
撹拌機、分縮器、全縮器、圧力調整器、温度計、滴下槽およびポンプ、アスピレーター、窒素導入管、底排弁、ストランドダイを備えた内容積50Lの耐圧反応容器に、精秤したセバシン酸(1,8-オクタンジカルボン酸:SA(CASDA製)))9500g(46.51mol)、イソフタル酸(PIA、三菱ガス化学社製)2578g(15.50mol)、次亜リン酸カルシウム(関東化学社製)5.62g(0.0331mol)、酢酸ナトリウム(関東化学社製)1.22g(0.0149mol)を入れ、十分に窒素置換した後、反応容器内を密閉し、容器内を0.4MPaに保ちながら撹拌下180℃まで昇温した。180℃に到達後、反応容器内の原料へ滴下槽に貯めたイソホロンジアミン(IPDA、BASF社製)9475g(55.53mol)の滴下を開始し、容器内を0.4MPaに保ちながら生成する縮合水を系外へ除きながら反応槽内を250℃まで昇温した。IPDAの滴下終了後、徐々に270℃まで昇温しつつ、反応容器内を徐々に常圧に戻し、次いでアスピレーターを用いて反応槽内を80kPaに減圧して縮合水を除いた。減圧中に撹拌機の撹拌トルクを観察し、所定のトルクに達した時点で撹拌を止め、反応槽内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化したのち、冷却してペレタイザーによりペレット化することにより、ポリアミド樹脂を得た。
得られたポリアミド樹脂のガラス転移温度は161℃であり、数平均分子量は14,000であった。
結晶融解エンタルピーΔHmは、1J/g以下であった。
<<外観評価>>
得られた非晶性ポリアミド樹脂について、実施例1と同様に、外観を評価した。
<<シャルピー衝撃強さ>>
得られた非晶性ポリアミド樹脂について、実施例1と同様に、シャルピー衝撃強さを測定した。
【0071】
【表1】
【0072】
上記の結果から明らかなとおり、イソホロンジアミン由来の構成単位と、炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、芳香族ジカルボン酸由来の構成単位とを有する非晶性ポリアミド樹脂を製造するに際し、溶融状態のジカルボン酸中に、リン原子含有化合物を水溶液として添加することにより、樹脂中に生じる異物を抑制ないし防止し、成形品としたときに良好な外観を得ることができることが分かった。
これに対し、水溶液にせずに添加した場合、外観が劣ってしまった。
【要約】
イソホロンジアミン由来の構成単位と、炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、芳香族ジカルボン酸由来の構成単位とを有する非晶性ポリアミド樹脂を製造するに際し、樹脂中に生じる異物を抑制ないし防止することができる非晶性ポリアミド樹脂の製造方法を提供する。イソホロンジアミンを70モル%以上含むジアミン成分と、炭素数8〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸を含むジカルボン酸成分とを、リン原子含有化合物の存在下で溶融重縮合させることを含み、前記リン原子含有化合物の熱分解温度が前記溶融重縮合温度の最高到達温度以上であり、溶融状態の前記ジカルボン酸成分に、前記リン原子含有化合物の水溶液および前記ジアミン成分を添加して前記溶融重縮合を行う、非晶性ポリアミド樹脂の製造方法。