特許第6699863号(P6699863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6699863
(24)【登録日】2020年5月7日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】電界紡糸装置及びナノ繊維製造装置
(51)【国際特許分類】
   D01D 5/04 20060101AFI20200518BHJP
   D04H 1/728 20120101ALI20200518BHJP
【FI】
   D01D5/04
   D04H1/728
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-144250(P2015-144250)
(22)【出願日】2015年7月21日
(65)【公開番号】特開2017-25428(P2017-25428A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】315006883
【氏名又は名称】博裕繊維科技(蘇州)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】金 翼水
(72)【発明者】
【氏名】徐 ウェイホン
(72)【発明者】
【氏名】夏 建華
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−167408(JP,A)
【文献】 特開2010−031426(JP,A)
【文献】 特表2007−527959(JP,A)
【文献】 特開2011−174202(JP,A)
【文献】 特開2008−231636(JP,A)
【文献】 特開2012−122148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D1/00−13/02
D04H1/00−18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送方向に搬送されて行く長尺シートポリマー溶液を吐出することによってナノ繊維を堆積させる電界紡糸装置であって、
コレクターに対向し、かつ、前記長尺シートの搬送方向に沿って設けられ、前記ポリマー溶液を吐出する複数のノズルが2次元的に配置された第1ノズルブロック及び第2ノズルブロックと、当該第1ノズルブロック及び第2ノズルブロックに供給すべきポリマー溶液を一時的に保持するポリマー溶液一時貯留部と、を有する少なくとも1つのノズルブロックユニットを備え、
前記第1ノズルブロック及び第2ノズルブロックは、一方の端部がポリマー溶液流入口となっている管体をそれぞれ複数本有し、前記第1ノズルブロックの各管体及び前記第2ノズルブロックの各管体には、前記ノズルが前記各管体の長手方向に沿って所定数ずつ取り付けられており、
前記ポリマー溶液一時貯留部には、前記ポリマー溶液を前記各管体に供給するためのポリマー溶液流出口が設けられており、
前記各管体の各ポリマー溶液流入口と前記ポリマー溶液一時貯留部のポリマー溶液流出口との間は、ポリマー溶液流通パイプによって接続されており、
前記第1ノズルブロックの各管体及び前記第2ノズルブロックの各管体は、当該各管体の長手方向が前記長尺シートの搬送方向に沿うように前記長尺シートの幅方向に並び、かつ、前記第1ノズルブロックの各管体における各ポリマー溶液流入口と前記第2ノズルブロックの各管体における各ポリマー溶液流入口とが対向するように配置され、
前記ポリマー溶液一時貯留部は、前記第1ノズルブロックと前記第2ノズルブロックとの間に設けられており、前記ポリマー溶液一時貯留部の側面のうち、前記第1ノズルブロックに対向する側の側面には、当該第1ノズルブロックにおける各管体の各ポリマー溶液流入口に対応するポリマー溶液流出口が設けられているとともに、前記第2ノズルブロックに対向する側の側面には、当該第2ノズルブロックにおける各管体の前記各ポリマー溶液流入口に対応するポリマー溶液流出口が設けられており、
前記ポリマー溶液一時貯留部の各ポリマー溶液流出口と、前記第1ノズルブロックの各管体における各ポリマー溶液流入口及び前記第2ノズルブロックの各管体における各ポリマー溶液流入口との間は、前記ポリマー溶液流通パイプによって接続されており、
前記電界紡糸装置は、前記長尺シートの幅方向に沿って前記第1ノズルブロック及び第2ノズルブロックを所定の周期で往復動させる往復動駆動部をさらに備え、前記ポリマー溶液流通パイプは、可撓性を有していることを特徴とする電界紡糸装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電界紡糸装置において、
前記ノズルブロックユニットは、前記長尺シートの搬送方向に沿って2つ以上設けられていることを特徴とする電界紡糸装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電界紡糸装置において、
前記各管体の各ポリマー溶液流入口となっている端部と反対の端部の側には、前記各ポリマー溶液流入口から各管体内に流入した前記ポリマー溶液を各管体外部に流出させるためのポリマー溶液流出孔が設けられていることを特徴とする電界紡糸装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電界紡糸装置において、
前記ポリマー溶液流出孔から流出したポリマー溶液を回収するポリマー溶液回収装置を有することを特徴とする電界紡糸装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の電界紡糸装置において、
前記ポリマー溶液一時貯留部は、当該ポリマー溶液一時貯留部の各ポリマー溶液流出口が前記第1ノズルブロックの各管体における各ポリマー溶液流入口及び前記第2ノズルブロックの各管体における各ポリマー溶液流入口よりも重力方向において高い位置となるように設けられていることを特徴とする電界紡糸装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の電界紡糸装置において、
前記第1ノズルブロック及び第2ノズルブロックを所定の周期で往復動させる際の前記第1ノズルブロック及び第2ノズルブロックの往復動は、隣接するノズルブロックで互いに反対方向となるように設定されていることを特徴とする電界紡糸装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかにに記載の電界紡糸装置において、
前記第1ノズルブロック及び前記第2ノズルブロックと前記コレクターとの間隔を調整可能とする間隔調整駆動部をさらに備えることを特徴とする電界紡糸装置。
【請求項8】
長尺シートを所定の搬送方向に搬送する搬送装置と、前記所定の搬送方向に搬送されて行く長尺シートを電界紡糸する電界紡糸装置とを備えるナノ繊維製造装置であって、 前記電界紡糸装置は、請求項1〜7のいずれかに記載の電界紡糸装置であることを特徴とするナノ繊維製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界紡糸装置及びナノ繊維製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺シートの搬送方向に沿って設けられた電界紡糸装置によって電界紡糸を行うことによりナノ繊維を製造するナノ繊維製造装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図4は、従来のナノ繊維製造装置900を模式的に示す正面図である。
図5は、従来のナノ繊維製造装置900に用いられている電界紡糸装置920の要部を取り出して示す斜視図である。
なお、図4及び図5においては、説明に必要な構成要素のみに符号が付されている。
【0004】
従来のナノ繊維製造装置900は、図4に示すように、搬送装置910により搬送方向aに沿って搬送されて行く長尺シートWにポリマー溶液を吐出することによって長尺シートWを電界紡糸する電界紡糸装置920を備えている。
【0005】
電界紡糸装置920(従来の電界紡糸装置920という。)は、図4及び図5に示すように、コレクター930と、コレクター930に対向する位置に配設され、ポリマー溶液を吐出する複数のノズル940が2次元的に配置されたノズルブロック950と、コレクター930とノズルブロック950との間に高電圧を印加する電源装置960と、ポリマー溶液をノズル940に供給するポリマー溶液貯留タンク970とを有している。
【0006】
ノズルブロック950は、図5に示すように、一方の端部が閉塞端となっていて他方の端部がポリマー溶液流入口となっている複数本(図面の簡単化のため7本とする。)の管体980を有している。各管体980は、個々の管体の長手方向が長尺シートWの幅方向(図5におけるy−y’方向)に沿って配設されている。そして、各管体980とポリマー溶液貯留タンク970とは、それぞれポリマー溶液流通パイプ990によって接続されており、各管体980には、ポリマー溶液貯留タンク970に貯留されているポリマー溶液がポリマー溶液流通パイプ990を介して供給されるようになっている。
【0007】
また、各管体980は、ノズルブロック950に対して着脱自在に取り付けられており、これら各管体980には、各管体ごとに当該管体の長手方向に沿って所定数のノズル940が所定ピッチで取り付けられている。
【0008】
このように、従来の電界紡糸装置920においては、ノズルブロック950の内部に着雑自在に配設された複数の管体にノズル940を取り付けた構成としているため、ノズル940の補修や交換などを行う場合、管体単位でノズルの補修や交換などを行うことができる。これにより、ノズル940のメンテナンスを容易なものとすることができるといった効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012−167408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の電界紡糸装置920は、当該電界紡糸装置920に設けられているノズルブロック950は1台であるため、ナノ繊維を高速でかつ大量生産するには不向きであるといった課題がある。
【0011】
このような課題を解決するために、従来の電界紡糸装置920において、図4及び図5に示すようなノズルブロック950を長尺シートWの搬送方向aに沿って2台以上並べて設置することも可能であるが、この場合、1つのポリマー溶液貯留タンク970から各ノズルブロック950における各管体にポリマー溶液を供給しようとすると、ポリマー溶液流通パイプ990の配管が複雑となってしまうとともに、ポリマー溶液貯留タンク970に対するノズルブロックの位置によっては、ポリマー溶液貯留タンク970からのポリマー溶液が、各ノズルブロックにおける各管体に満遍なく安定して供給されないこともあり得る。
【0012】
このため、従来の電界紡糸装置920においては、高速でかつ安定した電界紡糸が行えないという課題がある。従って、このような従来の電界紡糸装置920を備えた従来のナノ繊維製造装置900においては、安定した品質のナノ繊維を高速でかつ大量生産できないという課題がある。
【0013】
そこで、本発明は、高速でかつ安定した電界紡糸が行える電界紡糸装置を提供することを目的とするとともに、安定した品質のナノ繊維を高速でかつ大量生産することができるナノ繊維製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
[1]本発明の電界紡糸装置は、所定の搬送方向に搬送されて行く長尺シートに前記ポリマー溶液を吐出することによってナノ繊維を堆積させる電界紡糸装置であって、コレクターに対向し、かつ、前記長尺シートの搬送方向に沿って設けられ、前記ポリマー溶液を吐出する複数のノズルが2次元的に配置された第1ノズルブロック及び第2ノズルブロックと、当該第1ノズルブロック及び第2ノズルブロックに供給すべきポリマー溶液を一時的に保持するポリマー溶液一時貯留部と、を有する少なくとも1つのノズルブロックユニットを備え、前記第1ノズルブロック及び第2ノズルブロックは、一方の端部がポリマー溶液流入口となっている管体をそれぞれ複数本有し、前記第1ノズルブロックの各管体及び前記第2ノズルブロックの各管体には、前記ノズルが前記各管体の長手方向に沿って所定数ずつ取り付けられており、前記ポリマー溶液一時貯留部には、前記ポリマー溶液を前記各管体に供給するためのポリマー溶液流出口が設けられており、前記各管体の各ポリマー溶液流入口と前記ポリマー溶液一時貯留部のポリマー溶液流出口との間は、ポリマー溶液流通パイプによって接続されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の電界紡糸装置によれば、ノズルブロックユニットごとに第1ノズルブロック及び第2ノズルブロックを有するとともに、当該第1ノズルブロック及び第2ノズルブロックに供給すべきポリマー溶液を一時的に保持するポリマー溶液一時貯留部を有する構成となっている。このように、ノズルブロックユニットごとにポリマー溶液一時貯留部が設けられているため、複数のノズルブロックが長尺シートの搬送方向に沿って設置されているような電界紡糸装置であっても、大容量の1つのポリマー溶液貯留タンクから、多数のノズルブロックの各管体にパイプを配管する必要がなくなる。
【0016】
これにより、複数のノズルブロックの各管体にポリマー溶液を供給するためのポリマー溶液流通パイプの配管を可能な限り短く、かつ簡素化することができるとともに、各管体に満遍なく安定して確実にポリマー溶液を供給することができる。それによって、本発明の電界紡糸装置によれば、高速でかつ安定した電界紡糸が行える。特に、本発明の電界紡糸装置は、ナノ繊維の堆積量を多くすることによって厚みのあるナノ繊維を製造する場合に適した電界紡糸装置となる。
【0017】
[2]本発明の電界紡糸装置においては、前記ノズルブロックユニットは、前記長尺シートの搬送方向に沿って2つ以上設けられていることが好ましい。
【0018】
このように、ノズルブロックユニットが長尺シートの搬送方向に沿って2つ以上設けられていることにより、ノズルブロックが少なくとも4台以上となるため、より高速で電界紡糸が行える。これにより、本発明の電界紡糸装置は、厚みのあるナノ繊維を生産する場合においては、厚みのあるナノ繊維を高速でかつ大量生産する場合に適したものとなる。
【0019】
なお、2つ以上の各ノズルブロックユニットには、各ノズルブロックユニットごとにポリマー溶液一時貯留部が設けられている。そして、各ノズルブロックユニットごとに設けられているポリマー溶液一時貯留部は、大容量のポリマー溶液貯留タンクからポリマー溶液が供給されるようにポリマー溶液貯留タンクに接続されており、当該ポリマー溶液貯留タンクから供給されるポリマー溶液を一時的に保持したのちに、それぞれ対応する各管体に供給する。
【0020】
[3]本発明の電界紡糸装置においては、前記各管体の各ポリマー溶液流入口となっている端部と反対の端部の側には、前記各ポリマー溶液流入口から各管体内に流入した前記ポリマー溶液を各管体外部に流出させるためのポリマー溶液流出孔が設けられていることが好ましい。
【0021】
このように、各管体の各ポリマー溶液流入口となっている端部と反対の端部(各管体の終端部ともいう。)の側にポリマー溶液流出孔が設けられていることにより、各管体内においては、ポリマー溶液が充填された状態で流通することとなり、ポリマー溶液一時貯留部から各管体には満遍なく安定して確実にポリマー溶液が供給されるとともに、各管体に設けられている各ノズルに満遍なく安定して確実にポリマー溶液が供給されることとなる。これにより、各ノズルは安定した吐出量でのポリマー溶液を吐出することができる。
【0022】
[4]本発明の電界紡糸装置においては、前記ポリマー溶液流出孔から流出したポリマー溶液を回収するポリマー溶液回収装置を有することが好ましい。
【0023】
このようなポリマー溶液回収装置を有することによって、各管体のポリマー溶液流出孔から流出したポリマー溶液を回収してナノ繊維の原料として再利用することができる。例えば、回収したポリマー溶液をポリマー溶液回収装置の再生タンクに移送した後、回収したポリマー溶液の組成を測定し、当該測定結果に応じてポリマー溶液に溶媒その他の必要な成分を添加するといった処理を行うことで、回収したポリマー溶液を元のポリマー溶液の組成と同じか極めて近い組成を有するポリマー溶液に再生することが可能となる。
【0024】
[5]本発明の電界紡糸装置においては、前記第1ノズルブロックの各管体及び前記第2ノズルブロックの各管体は、当該各管体の長手方向が前記長尺シートの搬送方向に沿うように前記長尺シートの幅方向に並び、かつ、前記第1ノズルブロックの各管体における各ポリマー溶液流入口と前記第2ノズルブロックの各管体における各ポリマー溶液流入口とが対向するように配置され、前記ポリマー溶液一時貯留部は、前記第1ノズルブロックと前記第2ノズルブロックとの間に設けられており、前記ポリマー溶液一時貯留部の側面のうち、前記第1ノズルブロックに対向する側の側面には、当該第1ノズルブロックにおける各管体の各ポリマー溶液流入口に対応するポリマー溶液流出口が設けられているとともに、前記第2ノズルブロックに対向する側の側面には、当該第2ノズルブロックにおける各管体の前記各ポリマー溶液流入口に対応するポリマー溶液流出口が設けられており、前記ポリマー溶液一時貯留部の各ポリマー溶液流出口と、前記第1ノズルブロックの各管体における各ポリマー溶液流入口及び前記第2ノズルブロックの各管体における各ポリマー溶液流入口との間は、前記ポリマー溶液流通パイプによって接続されていることが好ましい。
【0025】
このような構成とすることによって、第1ノズルブロックの各管体及び第2ノズルブロックの各管体にポリマー溶液を供給するためのポリマー溶液流通パイプの配管を短く、かつ簡素化することができる。それによって、第1ノズルブロックの各管体及び第2ノズルブロックの各管体に満遍なく安定して確実にポリマー溶液を供給することができる。
【0026】
[6]本発明の電界紡糸装置においては、前記第1ノズルブロックの各管体及び前記第2ノズルブロックの各管体は、当該各管体の長手方向が前記長尺シートの幅方向に沿うように長尺シートの搬送方向に並び、かつ、前記第1ノズルブロックの各管体における各ポリマー溶液流入口と前記第2ノズルブロックの各管体における各ポリマー溶液流入口とが長尺シートの搬送方向に沿うように一列に並んで設けられ、前記ポリマー溶液一時貯留部は、第1ノズルブロックの各管体における各ポリマー溶液流入口と前記第2ノズルブロックの各管体における各ポリマー溶液流入口に対向し、かつ、前記長尺シートの搬送方向に沿うように設けられており、前記ポリマー溶液一時貯留部の側面のうち、前記第1ノズルブロック及び前記第2ノズルブロックにおける各管体の各ポリマー溶液流入口と対向する側の側面には、当該第1ノズルブロック及び前記第2ノズルブロックにおける各管体の前記各ポリマー溶液流入口に対応するポリマー溶液流出口が設けられており、前記ポリマー溶液一時貯留部の各ポリマー溶液流出口と、前記第1ノズルブロック及び前記第2ノズルブロックの各管体における各ポリマー溶液流入口との間は、前記ポリマー溶液流通パイプによって接続されていることも好ましい
【0027】
このような構成とすることによっても、第1ノズルブロックの各管体及び第2ノズルブロックの各管体にポリマー溶液を供給するためのポリマー溶液流通パイプの配管を短く、かつ簡素化することができる。それによって、第1ノズルブロックの各管体及び第2ノズルブロックの各管体に満遍なく安定して確実にポリマー溶液を供給することができる。
【0028】
[7]本発明の電界紡糸装置においては、前記ポリマー溶液一時貯留部は、当該ポリマー溶液一時貯留部の各ポリマー溶液流出口が前記第1ノズルブロックの各管体における各ポリマー溶液流入口及び前記第2ノズルブロックの各管体における各ポリマー溶液流入口よりも重力方向において高い位置となるように設けられていることが好ましい。
【0029】
このような構成とすることによって、ポリマー溶液一時貯留部に保持されているポリマー溶液を所定の圧力で第1ノズルブロック及び第2ノズルブロックの各管体に対して供給することができる。
【0030】
[8]本発明の電界紡糸装置においては、前記長尺シートの幅方向に沿って前記第1ノズルブロック及び第2ノズルブロックを所定の周期で往復動させる往復動駆動部をさらに備え、前記ポリマー溶液流通パイプは、可撓性を有していることが好ましい。
することが好ましい。
【0031】
これにより、ポリマー溶液一時貯留部を固定した状態で第1ノズルブロック及び第2ノズルブロックを往復動させることができる。なお、第2ノズルブロックを往復動させる場合、往復動周期を適切な周期となるように制御すれば、搬送方向に搬送されて行く長尺シートに対し、各ノズルの吐出位置が他のノズルの吐出位置にできるだけ重複しないようにすることができる。これによって、長尺シートにおけるナノ繊維の堆積量の均一性を高めることができる。
【0032】
[9]本発明の電界紡糸装置においては、前記前記第1ノズルブロック及び第2ノズルブロックを所定の周期で往復動させる際の前記第1ノズルブロック及び第2ノズルブロックの往復動は、隣接するノズルブロックで互いに反対方向となるように設定されていることが好ましい。
【0033】
第1ノズルブロック及び第2ノズルブロックがこのような往復動を行うことにより、長尺シートにおけるナノ繊維の堆積量の均一性を高めることができる。
【0034】
[10]本発明の電界紡糸装置においては、前記第1ノズルブロック及び前記第2ノズルブロックと前記コレクターとの間隔を調整可能とする間隔調整駆動部をさらに備えることが好ましい。
【0035】
これにより、第1ノズルブロック及び第2ノズルブロックとコレクターとの間隔を調整することができる。この場合、電界紡糸を開始する前に、第1ノズルブロック及び第2ノズルブロックとコレクターとの間隔を最適な間隔に調整しておけば、第1ノズルブロック及び第2ノズルブロックとコレクターとの距離が最適に設定された状態で電界紡糸を行うことができる。なお、第1ノズルブロック及び第2ノズルブロックとコレクターとの間隔は、電界紡糸装置の紡糸条件、ポリマー溶液の種類、ナノ繊維の平均直径、ナノ繊維不織布の厚さなどを考慮して決定することができる。
【0036】
[11]本発明のナノ繊維製造装置は、長尺シートを所定の搬送方向に搬送する搬送装置と、前記所定の搬送方向に搬送されて行く長尺シートを電界紡糸する電界紡糸装置とを備えるナノ繊維製造装置であって、前記電界紡糸装置は、[1]〜[10]のいずれかに記載の電界紡糸装置であることを特徴とする。
【0037】
本発明のナノ繊維製造装置によれば、電界紡糸装置として[1]〜[10]のいずれかに記載の電界紡糸装置を備えるため、安定した品質のナノ繊維を高速でかつ大量生産することができる。特に、本発明のナノ繊維製造装置は、ナノ繊維の堆積量を多くすることによって厚みのあるナノ繊維を製造する場合に適したナノ繊維製造装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】実施形態1に係るナノ繊維製造装置1を説明するために示す図である。
図2】実施形態1に係る電界紡糸装置10に設けられている複数のノズルブロックユニット250A〜250Dのうちの1つのノズルブロックユニット250Aを取り出して示す平面図である。
図3】実施形態2に係る電界紡糸装置20に設けられているノズルブロックユニット250A〜250Dのうちの1つのノズルブロックを取り出して示す平面図である。
図4】従来のナノ繊維製造装置900を模式的に示す正面図である。
図5】従来のナノ繊維製造装置900に用いられている電界紡糸装置920の要部を取り出して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の電界紡糸装置及びナノ繊維製造装置について、図に示す実施形態に基づいて説明する。
【0040】
図1は、実施形態1に係るナノ繊維製造装置1を説明するために示す図である。なお、図1はナノ繊維製造装置1の正面図である。なお、図1においては、実施形態に1係るナノ繊維製造装置1を説明するために必要な構成要素以外の構成要素についての図示は省略されている。また、図1(a)においては、構成要素の一部が断面図で示されている。
【0041】
実施形態1に係るナノ繊維製造装置1は、図1に示すように、長尺シートWを所定の搬送方向aに搬送する搬送装置100と、搬送方向aに沿って搬送されて行く長尺シートWを電界紡糸する電界紡糸装置10と、搬送装置100の各動作部(後述する。)及び電界紡糸装置10の各動作部(後述する。)を制御する制御装置300とを備えている。
【0042】
搬送装置100は、図1に示すように、電界紡糸される前の長尺シートWを供給する供給ローラー101と、電界紡糸装置10によりナノ繊維を堆積させた長尺シート(ナノ繊維を堆積させた長尺シートW’又は単に長尺シートW’という。)を巻き取る巻き取りローラー102とを有する。
【0043】
なお、搬送装置100には、供給ローラー101及び巻き取りローラー102の他に、供給ローラー101と巻き取りローラー102との間に配置されている補助ローラー、電界紡糸される前の長尺シートW及びナノ繊維を堆積させた長尺シートW’に所定の張力を与えるためのテンションローラー及びナノ繊維を堆積させた長尺シートW’を加熱する加熱装置など種々の構成要素が設けられているがこれらは図示が省略されている。
【0044】
次に、実施形態1に係る電界紡糸装置10について説明する。実施形態1に係る電界紡糸装置10は、図1に示すように、電界紡糸装置10の筐体(図示せず。)に絶縁部材(図示せず。)を介して取り付けられたコレクター230と、コレクター230に対向する位置に設けられている複数(4つとする。)のノズルブロックユニット250A,250B,250C,250Dと、コレクター230と後述するノズル240との間に所定の高電圧を印加する電源装置260と、を有する。
【0045】
なお、ノズルブロックユニット250A,250B,250C,250Dについての詳細は後述する。これらノズルブロックユニット250A,250B,250C,250Dをまとめて説明する場合には、ノズルブロックユニット250A〜250Dと表記する場合もある。
【0046】
また、コレクター230及び電源装置260は、それぞれ各ノズルブロックユニット250A〜250Dに対応して設けられており、各ノズルブロックユニット250A〜250Dに対応したコレクターをコレクター230A,230B,230C,230Dとし、各ノズルブロックユニット250A〜250Dに対応した電源装置を電源装置260A,260B,260C,260,260Dとする。
【0047】
次に、複数のノズルブロックユニット250A〜250Dについて説明する。
ノズルブロックユニット250A〜250Dは、長尺シートWの搬送方向aに沿って一列に並んだ状態で設置されており、図1においては、図示の左側から、ノズルブロックユニット250A,250B,250C,250Dという順序で設置されている。
【0048】
図2は、実施形態1に係る電界紡糸装置10に設けられているノズルブロックユニット250A〜250Dのうちの1つのノズルブロックを取り出して示す平面図である。ノズルブロックユニット250A〜250Dは同様の構成となっているため、ここでは、ノズルブロックユニット250Aについて図2を参照して説明する。なお、図2(a)はノズルブロックユニット250Aの平面図であり、図2(b)は図2(a)に示すノズルブロックユニット250Aを長尺シートWの幅方向(y軸に沿った方向)に見た場合の正面図である。
【0049】
ノズルブロックユニット250Aは、図2に示すように、第1ノズルブロック270と、第2ノズルブロック280と、当該第1ノズルブロック270と第2ノズルブロック280との間に設けられ、第1ノズルブロック270及び第2ノズルブロック280のそれぞれに供給すべきポリマー溶液を一時的に保持するポリマー溶液一時貯留部290とを有している。なお、第1ノズルブロック270及び第2ノズルブロック280をまとめて説明する場合には、ノズルブロック270,280というように表記する場合もある。
【0050】
第1ノズルブロック270は、一方の端部がポリマー溶液流入口271aとなっている複数本(図面の簡単化のため7本とする。)の管体271を有している。各管体271は、各管体271の長手方向が長尺シートWの搬送方向a(x軸に沿った方向)に沿うように長尺シートWの幅方向に並んだ状態で第1ノズルブロック270に収納されている。なお、各管体271は、第1ノズルブロック270に対して着脱自在に取り付けられている。
【0051】
これら管体271には、各管体271ごとに当該管体の長手方向に沿って所定数のノズル240が所定ピッチごとに取り付けられている。このように、各管体271に所定数のノズルがとりつけられていることにより、第1ノズルブロック270を図2(a)に示すように平面視すると、多数のノズルが2次元的にマトリクス配置された状態となっている。
【0052】
第2ノズルブロック280も第1ノズルブロック2270と同様に、一方の端部がポリマー溶液流入口281aとなっている複数本(この場合も図面の簡単化のため7本とする。)の管体281を有している。各管体281は、各管体281の長手方向が長尺シートWの搬送方向a(x軸に沿った方向)に沿うように長尺シートWの幅方向に並んだ状態で第2ノズルブロック280に収納されている。なお、各管体281も、第2ノズルブロック280に対して着脱自在に取り付けられている。また、これら管体281には、第1ノズルブロック2270と同様に、各管体281ごとに当該管体の長手方向に沿って多数のノズル240が所定ピッチごとに取り付けられている。
【0053】
ところで、第1ノズルブロック270における各管体271の各終端部の側(ポリマー溶液流入口271aとなっている端部とは反対の端部の側)には、ポリマー溶液流入口271aから管体271内に流入したポリマー溶液を外部に流出させるためのポリマー溶液流出孔271b(図2(b)参照。)が設けられている。当該ポリマー溶液流出孔271bは、ポリマー溶液一時貯留部290から各管体271に供給されるポリマー溶液を各管体に充填させたのちに徐々に排出させることができる程度の内径を有している。
【0054】
第2ノズルブロックにおける各管体281も同様に、各管体281の各終端部の側(ポリマー溶液流入口281aとなっている端部とは反対の端部の側)には、ポリマー溶液流入口281aから管体281内に流入したポリマー溶液を外部に流出させるためのポリマー溶液流出孔281b(図2(b)参照。)が設けられている。当該ポリマー溶液流出孔281bは、ポリマー溶液流出孔271bと同様に、ポリマー溶液一時貯留部290から各管体281に供給されたポリマー溶液を各管体に充填させたのちに徐々に排出させることができる程度の内径を有している。
【0055】
このように、第1ノズルブロック270の各管体271の終端部の側にポリマー溶液流出孔271bが設けられているとともに、第2ノズルブロック280の各管体281の終端部の側にポリマー溶液流出孔281bが設けられていることにより、第1ノズルブロック270の各管体271及び第2ノズルブロック280の各管体281内においては、ポリマー溶液一時貯留部290から供給されたポリマー溶液が充填された状態で流通することとなる。
【0056】
これにより、第1ノズルブロック270の各管体271及び第2ノズルブロック280の各管体281には、ポリマー溶液一時貯留部290から満遍なく安定して確実にポリマー溶液が供給され、各管体271及び各管体281に設けられている各ノズル240に満遍なく安定して確実にポリマー溶液が供給されることとなる。これにより、各ノズル240は安定した吐出量でポリマー溶液を吐出することができる。なお、第1ノズルブロック270の各管体271及び第2ノズルブロック280の各管体281をまとめて説明する際には、各管体271,281と表記する場合もある。
【0057】
ところで、第1ノズルブロック270及び第2ノズルブロック280の各管体271,281は、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウムなど導電部材でなり、ノズル240は管体271に対して電気的に接続された状態で管体271に取り付けられている。
【0058】
また、ポリマー溶液一時貯留部290は、大容量のポリマー溶液貯留タンク400に接続されており、ポリマー溶液貯留タンク400から供給されたポリマー溶液を一時的に保持したのちに各管体271,281に供給するものである。なお、ポリマー溶液貯留タンク400は、ノズルブロックユニット250A〜250Dの各ポリマー溶液一時貯留部290それぞれにポリマー溶液を供給可能となるような量のポリマー溶液を貯留している。また、ポリマー溶液貯留タンク400からのポリマー溶液がポリマー溶液一時貯留部290に供給される際には、ポリマー溶液は所定の圧力が加えられた状態でポリマー溶液一時貯留部290に供給される。
【0059】
ポリマー溶液一時貯留部290は、実施形態1に係る電界防止装置10においては、y軸に沿った方向から見たときの面の形状が例えば四角形の筒状体をなしている。また、ポリマー溶液一時貯留部290のy軸に沿った長さL1は、第1ノズルブロック270及び第2ノズルブロック280のy軸に沿った長さL2と同程度としている。なお、ポリマー溶液一時貯留部290は、y軸に沿った方向から見たときの面の形状は四角形に限られるものではなく、円形や楕円形であってもよく、また、y軸に沿った長さL1は、第1ノズルブロック270及び第2ノズルブロック280のy軸に沿った長さL2よりも多少長くてもよく、また多少短くてもよい。
【0060】
また、ポリマー溶液一時貯留部290は、当該ポリマー溶液一時貯留部290の各側面(第1ノズルブロック270及び第2ノズルブロック280に対向する側の各側面291,292)の各下端部付近には、各管体271,281における各ポリマー溶液流入口271a,281aに対応したポリマー溶液流出口293a,294aが設けられている。
【0061】
具体的には、ポリマー溶液一時貯留部290の各側面のうちの第1ノズルブロック270に対向している側面291には、第1ノズルブロック270の各管体271における各ポリマー溶液流入口271aに対応した7個のポリマー溶液流出口293aが設けられており、ポリマー溶液一時貯留部290の各側面のうちの第2ノズルブロック280に対向している側面292には、第2ノズルブロック280の各管体281における各ポリマー溶液流入口281aに対応した7個のポリマー溶液流出口294aが設けられている。
【0062】
そして、7個のポリマー溶液流出口293aと、それぞれ対応する管体271のポリマー溶液流入口271aとの間は、ポリマー溶液流通パイプ295によって接続され、7個のポリマー溶液流出口294aと、それぞれ対応する管体281のポリマー溶液流入口281aとの間も、ポリマー溶液流通パイプ295によって接続されている。これらポリマー溶液流通パイプ295は、素材としては軟性材が用いられている。このため、ポリマー溶液流通パイプ295は可撓性を有している。
【0063】
また、ポリマー溶液一時貯留部290は、台座部297(図2(b)参照。)に固定された状態で設置されている。このとき、ポリマー溶液一時貯留部290の上下方向(z軸に沿った方向)の高さH1は、当該ポリマー溶液一時貯留部290の上面が当該ポリマー溶液一時貯留部290の上部に位置する長尺シートW(図1参照。)に接触することのない高さに設定されている。
【0064】
このように、ポリマー溶液一時貯留部290が設置されたときに、ポリマー溶液流出口293a及びポリマー溶液流出口294aの上下方向の位置(z軸に沿った位置)P1が、管体271のポリマー溶液流入口271a及び管体281のポリマー溶液流入口281aの上下方向の位置(z軸に沿った位置)P0よりも高い位置となるように設定されている。これにより、ポリマー溶液一時貯留部290に保持されているポリマー溶液は、各管体271,281に所定の圧力を有して供給される。
【0065】
なお、ポリマー溶液流出口293a及びポリマー溶液流出口294aの上下方向の位置P1は、ポリマー溶液流入口281aの上下方向の位置P0よりも数十mm以上高いことが好ましく、可能であれば、100mm以上とすることがより好ましい。
【0066】
このように構成されているノズルブロックユニット250Aにおける第1ノズルブロック270及び第2ノズルブロック280は、図1に示すように、ポリマー溶液を各ノズル240の吐出口から上向きに吐出するように設置されている。そして、ポリマー溶液一時貯留部290に保持されているポリマー溶液がポリマー溶液流通パイプ295によって各管体271,281に供給され、各管体271,281に供給されたポリマー溶液は、所定の圧力を有した状態で各管体271,281内を流通することにより、各ノズル240の吐出口からはポリマー溶液がオーバーフローしながら吐出し、それによって、長尺シートWを電界紡糸して長尺シートWにナノ繊維を堆積させる。
【0067】
また、各管体271,281内に供給されたポリマー溶液のうち、ノズル240から吐出されずに残ったポリマー溶液は、各管体271,281内を流通したのち、各管体271,281の終端部の側に設けられているポリマー溶液流出孔271b,281bから流出して各ノズルブロック270,280内部に一時的に溜められる。
【0068】
ここで、各ノズルブロック270,280は、ノズル240からオーバーフローしたポリマー溶液及び各管体271,281のポリマー溶液流出孔271b,281bから各管体271,281の外部に流出したポリマー溶液を貯留可能な容器状をなしており、ノズルブロック270,280の底面には、ポリマー溶液を排出するためのポリマー溶液排出口275,285(図2(b)参照。)が設けられている。これらポリマー溶液排出口275,285には、ポリマー溶液排出用パイプ(図示せず。)が接続されている。なお、各ノズルブロック270,280の底面は、ポリマー溶液排出口275,285に向かって下り坂となるような傾斜面となっていることが好ましい。
【0069】
なお、ポリマー溶液排出口275,285から排出されたポリマー溶液は、ポリマー溶液回収装置(図示せず。)によって回収されたのち、回収されたポリマー溶液をナノ繊維の原料として再利用することが可能である。
【0070】
また、各ノズルブロック270,280は、図2に示すように、上端開口面が蓋体276,286によって覆われた状態で用いられる。なお、蓋体276,286には、各ノズル240を上方に突出させるためのノズル貫通孔(符号は省略する。)が各ノズル240に対応して設けられている。
【0071】
図2においては、ノズルブロックユニット250Aについて説明したが、他のノズルブロックユニット250B〜250Dも同様の構成となっている。
【0072】
このように構成されている各ノズルブロックユニット250A〜250Dは、各ノズルブロックユニットごとに、長尺シートWの幅方向(図2におけるy軸に沿った方向)に往復動可能となっているとともに、図2におけるz軸に沿った上下方向に移動可能となっている。
【0073】
ノズルブロックユニット250Aを例にとって具体的に説明すると、当該ノズルブロックユニット250Aの第1ノズルブロック270は、往復動駆動部(図示せず。)によって、長尺シートWの幅方向(図2におけるy軸に沿った方向)に往復動可能となっているとともに、間隔調整駆動部(図示せず。)によって、図2におけるz軸に沿った上下動可能(コレクター230Aとの間隔が調整可能)となっている。
【0074】
ノズルブロックユニット250Aの第2ノズルブロック280も、往復動駆動部(図示せず。)によって、長尺シートWの幅方向(図2におけるy軸に沿った方向)に往復動可能となっているとともに、間隔調整駆動部(図示せず。)によって、図2におけるz軸に沿った方向に上下動可能(コレクター230Aとの間隔が調整可能)となっている。
これら各往復動駆動部及び間隔調整駆動部は、制御装置300(図1参照。)によって制御される。なお、制御装置300は各電源装置260A〜260Dの制御も行う。
【0075】
各ノズルブロック270,280は、ポリマー溶液一時貯留部290が固定の状態で各ノズルブロック270,280のみがy軸に沿った方向の往復動又はz軸に沿った方向の上下動を行う。このように、ポリマー溶液一時貯留部290は固定の状態で各ノズルブロック270,280のみが往復動又は上下動可能となるのは、ポリマー溶液流通パイプ295が可撓性を有しているからである。
【0076】
なお、各ノズルブロック270,280をy軸に沿った方向に往復動させるための機構及び各ノズルブロック270,280をz軸に沿った方向に上下動させるための機構(コレクター230A〜230Dとの間隔を調整するための機構)は、公知の機構を用いることができるので、これら各機構の具体的な構造などは図示及び説明を省略する。
【0077】
また、各ノズルブロックユニット250A〜250Dの各ノズルブロック270,280のy軸に沿った方向の往復動は、隣接するノズルブロックで、互いに反対方向となるように設定されている。
【0078】
例えば、ノズルブロックユニット250Aにおける第1ノズルブロック270と第2ノズルブロック280とを例に取って説明すると、第1ノズルブロック270が図2(a)における矢印y方向に移動するときは、第2ノズルブロック280が図2(a)における矢印y’方向に移動し、第1ノズルブロック270が図2(a)における矢印y’方向に移動するときは、第2ノズルブロック280が図2(a)における矢印y方向に移動する。
【0079】
このような往復動は他のノズルブロックユニット250B〜250Dにおける第1ノズルブロック270及び第2ノズルブロック280においても同様である。なお、隣接するノズルブロックの全てが互いに逆方向に移動することが好ましい。
【0080】
このため、例えば、ノズルブロックユニット250Aの第2ノズルブロック280が図2(a)における矢印y方向に移動するときは、ノズルブロックユニット250Bの第1ノズルブロック270は図2(a)における矢印y’方向に移動する。また、ノズルブロックユニット250Aの第2ノズルブロック280が図2(a)における矢印y’方向に移動するときは、ノズルブロックユニット250Bの第1ノズルブロック270は図2(a)における矢印y方向に移動する。
【0081】
このように、各ノズルブロックユニット250A〜250Dの各ノズルブロック270,280は、隣接するノズルブロックが互いに逆方向に移動するため、各ノズルブロックユニット250A〜250Dの各ノズルブロック270,280を全体的に平面視した場合には、各ノズルブロックユニット250A〜250Dの合計8台のノズルブロック270,280が互い違いにジグザグ移動することとなる。
【0082】
ところで、電源装置260A〜260Dは、コレクター230A〜230Dと各ノズル240との間に所定の電圧を与えるものであるが、実施形態1に係る電界紡糸装置10においては、各電源装置260A〜260Dの一方の電極(正極とする。)は、それぞれ対応するコレクター230A〜230Dに接続し、他方の電極(負極とする。)は、各ノズル240ではなく、各ノズルブロックユニット250A〜350Dにおける第1ノズルブロック270及び第2ノズルブロック280の各管体271,281に接続するようにしている。
【0083】
すなわち、各ノズル240側すなわち管体271,281側が接地電位となるようにしている。図1において、各電源装置260A〜260Dの各正極と各コレクター230A〜230Dとの間を電気的に接続するための接続線及び各電源装置260A〜260Dの各負極と各管体271,281との間を電気的に接続するための接続線は図示が省略されている。
【0084】
なお、各ノズルブロック270,280が導電性を有する部材でなり、かつ、当該第1ノズルブロック270と各管体271とが電気的に接続され、第2ノズルブロック280と各管体281とが電気的に接続された状態となっていれば、各電源装置260A〜260Dの各負極は、各ノズルブロックユニット250A〜250Dのノズルブロック270,280に接続するようにしてもよい。また、各ノズルブロック270,280と電界紡糸装置10の筐体(図示せず。)とが電気的に接続された状態となっていれば、各電源装置260A〜260Dの各負極は電界紡糸装置10の筐体に接続するようにしてもよい。いずれも場合であっても、ノズル240側が接地電位となるようにすることが好ましい。
【0085】
このように、ノズル240側が接地電位となるようにすることによって、ノズル240、各管体271,281、各ノズルブロック270,280及び電界紡糸装置10の筐体をはじめとして、ノズル240から吐出される前のポリマー溶液、ポリマー溶液一時貯留部290のすべてが接地電位となる。これにより、電界紡糸装置10及びナノ繊維製造装置1を操作する操作者の安全を確保することができるとともに、ポリマー溶液一時貯留部290などを高耐圧仕様とする必要がなくなる。
【0086】
以下、上記のように構成された実施形態1に係るナノ繊維製造装置1を用いてナノ繊維不織布を製造する方法について説明する。
【0087】
まず、長尺シートWを搬送装置100にセットし、その後、長尺シートWを供給ローラーから供給しながら巻き取りローラー102で巻き取ることにより、所定の搬送速度で搬送させる。そして、電界紡糸装置10においては、各ノズルブロックユニット250A〜250Dにおける各ノズルブロック270,280の各管体271,281に取り付けられている各ノズル240から長尺シートWにポリマー溶液を吐出することによって、長尺シートWにナノ繊維を順次堆積させる。
【0088】
なお、このような動作を開始する前に、コレクター230A〜230Dと各ノズルブロック270,280との間隔をそれぞれ対応する間隔調整駆動部によって最適な間隔に調整することができる。コレクター230A〜230Dと各ノズルブロック270,280との間隔は、電界紡糸装置10の紡糸条件、ポリマー溶液の種類、ナノ繊維の平均直径、製造すべきナノ繊維不織布の厚さなどを考慮して決定することができる。これにより、コレクター230A〜230Dと各ノズルブロック270,280との間隔が最適に設定された状態のもとで電界紡糸を行うことができる。
【0089】
また、長尺シートWにナノ繊維を順次堆積させる動作を行う際には、各ノズルブロック270,280をそれぞれ対応する往復動駆動部によって長尺シートWの幅方向に往復動させながら長尺シートWにポリマー溶液を吐出する動作を行う。
【0090】
なお、各往復動駆動部による第1ノズルブロック270及び第2ノズルブロック280の往復動周期は、ノズル240の配列ピッチ及び長尺シートWの搬送速度などに基づいて設定する。例えば、搬送方向aに搬送されて行く長尺シートWに対し、隣接する一方のノズルブロックにおける各ノズル240の吐出位置が隣接する他方のノズルの吐出位置とできるだけ重複しないように往復動周期を設定する。これによって、長尺シートWにおけるナノ繊維の堆積量の均一性を高めることができる。
【0091】
このようにして、長尺シートWにナノ繊維を堆積させることにより、ナノ繊維を堆積させた長尺シートW’が生成される。そして、ナノ繊維を堆積させた長尺シートW’を加熱装置(図示せず。)で加熱する。なお、長尺シートW’を加熱装置で加熱した状態のものをナノ繊維不織布と呼ぶこともある。
【0092】
また、実施形態1に係るナノ繊維製造装置1においては、長尺シートWの搬送方向aに沿って4つのノズルブロックユニット250A〜250Dが並設され、各ノズルブロックユニット250A〜250Dには、長尺シートWの搬送方向aに沿ってそれぞれ2台のノズルブロック270,280が並設されている。このため、安定した品質のナノ繊維を高速でかつ大量生産することができる。特に、ナノ繊維の堆積量を多くすることによって厚みのあるナノ繊維を製造する場合に適したものとなる。
【0093】
ここで、実施形態1に係るナノ繊維製造装置1におる紡糸条件を例示的に示す。長尺シートWとしては、各種材料からなる不織布、織物、編物などを用いることができる。
【0094】
ナノ繊維の原料となるポリマーとしては、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリプロピレン(PP)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸グリコール酸(PLGA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、シルク、セルロース、キトサンなどを用いることができる。
【0095】
ポリマー溶液に用いる溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、クロロホルム、アセトン、水、蟻酸、酢酸、シクロヘキサン、THF、デカヒドロナフタレン(Decalin)、ジメチルホルムアミド(DMAc)などを用いることができる。複数種類の溶媒を混合して用いてもよい。ポリマー溶液には、導電性向上剤などの添加剤を含有させてもよい。
【0096】
ところで、電界紡糸装置10において電界紡糸を行った際に、各ノズル240からオーバーフローしたポリマー溶液及び各管体271,281内を流通して各管体271,281のポリマー溶液流出孔271b,281bから流出したポリマー溶液は、各ノズルブロック270,280内の底部に溜められたのち、各ノズルブロック270,280からポリマー溶液排出口275,285を通って排出される。
【0097】
このとき、電界紡糸装置10において、ポリマー溶液回収装置(図示せず。)を設けておけば、排出されたポリマー溶液を回収してナノ繊維の原料として再利用することができる。例えば、回収したポリマー溶液をポリマー溶液回収装置の再生タンクに移送した後、回収したポリマー溶液の組成を測定し、当該測定結果に応じてポリマー溶液に溶媒その他の必要な成分を添加するといった処理を行うことで、回収したポリマー溶液を元のポリマー溶液(ポリマー溶液貯留タンク400に貯留されているポリマー溶液)の組成と同じか極めて近い組成を有するポリマー溶液に再生することが可能となる。
【0098】
次に、実施形態1に係るナノ繊維製造装置1及び実施形態1に係る電界紡糸装置10の効果について説明する。まずは、実施形態1に係る電界紡糸装置10の効果について説明する。
【0099】
実施形態1に係る電界紡糸装置10は、各ノズルブロックユニット250A〜250Dごとにポリマー溶液一時貯留部290が設けられ、各ノズルブロックユニット250A〜250Dごとに設けられているポリマー溶液一時貯留部290から当該ノズルブロックユニットの各ノズルブロック270,280の各管体271,281にポリマー溶液を供給するようにしている。
【0100】
このため、多数のノズルブロックが長尺シートの搬送方向に沿って設置されているような電界紡糸装置であっても、大容量の1つのポリマー溶液貯留タンク400から多数のノズルブロックの各管体にポリマー溶液流通パイプを接続する必要がなくなる。これにより、ノズルブロック270,280の各管体271,281にポリマー溶液を供給するためのポリマー溶液流通パイプの配管を可能な限り短く、かつ、簡素化することができるとともに、各管体271,281に満遍なく安定して確実にポリマー溶液を供給することができる。
【0101】
また、実施形態1に係る電界紡糸装置10は、ノズルブロック270,280における各管体271,281の終端部の側には、ポリマー溶液流出孔271b,281bが設けられている。これにより、各管体271,281内においては、ポリマー溶液が充填する子充填状態状態で流通することとなり、ポリマー溶液一時貯留部290から各管体271,281には満遍なく安定して確実にポリマー溶液が供給されるとともに、各管体271,281に設けられている各ノズル240に満遍なく安定して確実にポリマー溶液が供給されることとなる。これにより、各ノズル240は安定した吐出量でのポリマー溶液を吐出することができる。
【0102】
また、実施形態1に係る電界紡糸装置10は、長尺シートWの幅方向に沿って各ノズルブロック270,280を各ノズルブロックごとに所定の周期で往復動可能としているため、長尺シートWにおけるナノ繊維の堆積量の均一性を高めることが可能となる。また、各ノズルブロック270,280と当該ノズルブロックに対応するコレクター230A〜230Dとの間隔を各ノズルブロックごとに調整可能としているため、最適な条件で電界紡糸を行うことが可能となる。
【0103】
このように構成されている実施形態1に係る電界紡糸装置10によれば、高速でかつ安定した電界紡糸が行える。特に、実施形態1に係る電界紡糸装置10は、ナノ繊維の堆積量を多くすることによって厚みのあるナノ繊維を製造する場合に適した電界紡糸装置となる。
【0104】
また、実施形態1に係る電界紡糸装置10においては、各ノズル240からオーバーフローしたポリマー溶液及び各管体271,281内を流通して各管体のポリマー溶液流出孔271b,281bから流出したポリマー溶液を回収するようにしている。このため、各ノズル240からオーバーフローしたポリマー溶液及び各管体271,281内を流通して各管体のポリマー溶液流出孔271b,281bから流出したポリマー溶液をナノ繊維の原料として再利用することができる。
【0105】
また、実施形態1に係る電界紡糸装置10においては、各ノズルブロックユニット250A〜250Dに対応して、コレクター230A〜230Dと電源装置260A〜260Dとが設けられている。そして、電源装置260A〜260Dは、制御装置300によって制御可能としている。このため、例えば、ある1つのノズルブロックユニットに何らかの不具合が生じた場合などにおいては、当該不具合の生じたノズルブロックユニットに対応する電源装置のみの電源を遮断し、他の正常なノズルブロックユニットによる電界紡糸はそのまま継続することができる。これにより、実施形態1に係る電界紡糸装置10によれば、あるノズルブロックユニットに不具合が生じた場合であっても、電界紡糸動作を継続できることから、ナノ繊維の生産能力を大幅に落とすことがなくなる。
【0106】
また、各ノズルブロックユニットに供給する電力の大きさを適宜設定することも可能である。これにより、例えば、上記したように、あるノズルブロックユニットに不具合が生じた場合においては、他の正常なノズルブロックユニット対しては、より高い能力で電界紡糸が可能となるように電力供給を行うといったことも可能となる。このようにすることにより、あるノズルブロックユニットに不具合が生じた場合においても、平常時の生産能力を維持することができる。
【0107】
なお、実施形態1に係る電界紡糸装置10においては、各ノズルブロックユニット250A〜250Dに対応して電源装置260A〜260を設けるようにしたが、電源装置は、各ノズルブロックユニット250A〜250Dに共通の1台の電源装置とし、当該1台の電源装置の正極と各コレクター230A〜230Dとの間に、電力の供給/遮断が可能なフスイッチを介在させ、あるノズルブロックユニットに何らかの不具合が生じた場合などにおいては、当該不具合の生じたノズルブロックユニットに対応するスイッチをオフとするようにしてもよい。
【0108】
一方、実施形態1に係るナノ繊維製造装置1は、電界紡糸装置として実施形態1に係る電界紡糸装置10を備えるため、安定した品質のナノ繊維を高速でかつ大量生産することができる。特に、本発明のナノ繊維製造装置は、ナノ繊維の堆積量を多くすることによって厚みのあるナノ繊維を製造する場合に適したナノ繊維製造装置とすることができる。
【0109】
[実施形態2]
実施形態2に係るナノ繊維製造装置(ナノ繊維製造装置2とする。)及び実施形態2に係る電界紡糸装置(電界紡糸装置20とする。)について説明する。なお、実施形態2に係るナノ繊維製造装置2は、電界紡糸装置(実施形態1に係る電界紡糸装置10)が実施形態2に係る電界紡糸装置20に置き換わるだけであり、その他の構成は実施形態1に係るナノ繊維製造装置1(図1参照。)と同様である。このため、実施形態2に係るナノ繊維製造装置2の構成については図示を省略する。
【0110】
以下、実施形態2に係る電界紡糸装置20について説明する。実施形態2に係る電界紡糸装置20においても、実施形態1に係る電界紡糸装置10(図1参照。)と同様に、長尺シートWの搬送方向に沿って、4つのノズルブロックユニット250A〜250Dが存在し、各ノズルブロックユニット250A〜250Dには、それぞれ第1ノズルブロック270及び第2ノズルブロック280が存在している。
【0111】
実施形態2に係る電界紡糸装置20が実施形態1に係る電界紡糸装置10と異なるのは、第1ノズルブロック270に設けられている管体271及び第2ノズルブロック280に設けられている管体281の向きと、ポリマー溶液一時貯留部290の設置位置であり、その他は、実施形態1に係る電界紡糸装置10とほぼ同様の構成となっている。このため、実施形態2に係る電界紡糸装置20の全体的な構成については図示を省略する。なお、実施形態2に係る電界紡糸装置20において、実施形態1に係る電界紡糸装置10と同一構成要素には同一符号を用いて説明する。
【0112】
図3は、実施形態2に係る電界紡糸装置20に設けられているノズルブロックユニット250A〜250Dのうちの1つのノズルブロックを取り出して示す平面図である。なお、図3においては、ノズルブロックユニット250Aを取り出して示している。また、図3(a)はノズルブロックユニット250Aの平面図であり、図3(b)は図3(a)を長尺シートの搬送方向a(x軸に沿った方向)に見た場合の側面図である。
【0113】
実施形態2に係る電界紡糸装置20におけるノズルブロックユニット250Aは、図3に示すように、第1ノズルブロック270に設けられている各管体271及び第2ノズルブロック280に設けられている各管体281は、各管体271,281の長手方向が長尺シートWの幅方向に沿うように長尺シートWの搬送方向に並んで配設されている。
【0114】
このように配設されている各管体271及び各管体281は、この場合も図面の簡単化のためそれぞれ7本とする。そして、第1ノズルブロック270の各管体271における各ポリマー溶液流入口271aと第2ノズルブロック280の各管体281における各ポリマー溶液流入口281aとが長尺シートWの搬送方向aに沿って一列に並ぶように設けられている。
【0115】
また、ポリマー溶液一時貯留部290は、当該ポリマー溶液一時貯留部の側面のうちの一方の側面291が各管体271における各ポリマー溶液流入口271aと各管体281における各ポリマー溶液流入口281aに対向し、かつ、長尺シートWの搬送方向aに沿うように設けられている。そして、当該側面291には、各管体271の各ポリマー溶液流入口271a,281aに対応するポリマー溶液流出口293aが設けられている。
【0116】
そして、ポリマー溶液流出口293aと各管体271,281の各ポリマー溶液流入口271a,281aとの間は、可撓性を有するポリマー溶液流通パイプ295によってそれぞれ接続されている。
【0117】
また、実施形態2に係る電界紡糸装置20においても、実施形態1に係る電界紡糸装置10と同様に、各ノズルブロック270,280は、往復動駆動部によって、y軸に沿って往復動可能となっているとともに、間隔調整駆動部によってz軸に沿って上下動可能となっている。
【0118】
図3においては、ノズルブロックユニット250Aについて説明したが、他のノズルブロックユニット250B〜250Dについても同様の構成となっている。そして、各ノズルブロックユニット250A〜250Dは、実施形態1に係る電界紡糸装置10(図1参照。)と同様に、ナノ繊維製造装置1における長尺シートWの搬送方向aに沿って一列に並んで配置されている。
【0119】
実施形態2に係る電界紡糸装置20も実施形態1に係る電界紡糸装置10と同様の効果を有する。なお、実施形態2に係る電界紡糸装置20においては、実施形態1に係る電界紡糸装置10と同様の効果に加えて、ポリマー溶液一時貯留部290は、長尺シートWの幅方向において当該長尺シートWから外れた位置に配置することができる。
【0120】
このため、ポリマー溶液一時貯留部290の上下方向(z軸に沿った方向)の高さ制限は、実施形態1係る電界紡糸装置よりも少なくできる。すなわち、ポリマー溶液一時貯留部290の上下方向(z軸に沿った方向)の高さH2は、実施形態1に係る電界紡糸装置10のポリマー溶液一時貯留部290の上下方向(z軸に沿った方向)の高さH1よりも高いものとすることができる。
【0121】
また、ポリマー溶液一時貯留部290の長さL3(長尺シートWの搬送方向aに沿った長さL3)は、少なくとも第1ノズルブロック270及び第2ノズルブロック280の2台分の長さ、すなわち、第1ノズルブロック270の長尺シートWの搬送方向aに沿った長さL4と、第2ノズルブロック280の長尺シートWの搬送方向aに沿った長さL4とを足した長さとすることができる。このため、実施形態2に係る電界紡糸装置20においては、ポリマー溶液一時貯留部290の容量を実施形態1に係る電界紡糸装置10よりも大きくすることができるといった効果を有する。
【0122】
また、実施形態2に係る電界紡糸装置20を用いることによっても、実施形態1に係るナノ繊維製造装置1(図1参照。)とほぼ同様のナノ繊維製造装置(実施形態2に係るナノ繊維製造装置2)を構成することができ、当該実施形態2に係るナノ繊維製造装置2においても、実施形態1に係るナノ繊維製造装置1と同様の効果が得られる。
【0123】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変形実施が可能であり、例えば、下記に示すような変形も可能である。
【0124】
(1)上記各実施形態では、各ノズルブロック270,280における各管体271,281の数は、図面の簡単化のために、それぞれ7本としたが、7本に限られるものではなく、より多数の管体を設けることが可能である。また、各管体271,281に取り付けられるノズル240の数は、必ずしも各管体において同数である必要もない。また、上記各実施形態ではノズルブロックユニットは4つとした場合を例示したが、4つに限られるものではなく、ナノ繊維製造装置の規模などに応じて適宜の数のノズルブロックユニットを設けることが可能である。
【0125】
(2)上記各実施形態においては、ノズル240が上向きとなっているノズルブロック270,280を有する電界紡糸装置を備えたナノ繊維製造装置を例示ししたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ノズルが下向きとなっているノズルブロックを有する電界紡糸装置やノズルが横向きとなっているノズルブロックを有する電界紡糸装置を備えるナノ繊維製造装置であってもよい。
【0126】
(3)上記各実施形態においては、コレクター230及び電源装置260は、図1に示すように、各ノズルブロックユニット(4つのノズルブロックユニット250A〜250D)に対応するように4つのコレクター230A〜230D及び電源装置260A〜260Dを設けるようにしたが、これに限られるものではなく、4つのノズルブロックユニット250A〜250Dに共通の1台のコレクター及び電源装置としてもよい。
【0127】
(4)上記各実施形態において、各ポリマー溶液流通パイプ295には、ポリマー溶液の供給量の制御を可能とするためのポリマー溶液供給量制御バルブを個々のポリマー溶液流通パイプごとに設けるようにしてもよい。このように、ポリマー溶液の供給量の制御を可能とすることで、例えば、ポリマー溶液の供給量を各管体ごとに変えたり、ある特定の管体に対してはポリマー溶液を供給しないようにするということも可能となり、ポリマー溶液の供給の仕方を多様に設定することができる。
【符号の説明】
【0128】
1・・・ナノ繊維製造装置、10・・・電界紡糸装置、100・・・搬送装置、101・・・供給ローラー、102・・・巻き取りローラー、211・・・絶縁部材、230(230A〜230D)・・・コレクター、240・・・ノズル、250A〜250D・・・ノズルブロックユニット、260(260A〜260D)・・・電源装置、270・・・第1ノズルブロック、280・・・第2ノズルブロック、271,281・・・管体、271a,281a・・・ポリマー溶液流入口、271b,281b・・・ポリマー溶液流出孔、290・・・ポリマー溶液一時貯留部、291,292・・・ポリマー溶液一時貯留部の側面、293a,294a・・・ポリマー溶液流出口、295・・・ポリマー溶液流通パイプ、300・・・制御装置、400・・・ポリマー溶液貯留タンク、a・・・搬送方向、W・・・長尺シート、W’・・・ナノ繊維が堆積された長尺シート
図1
図2
図3
図4
図5