特許第6700019号(P6700019)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6700019
(24)【登録日】2020年5月7日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】半導体発光素子
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/22 20060101AFI20200518BHJP
   H01S 5/042 20060101ALI20200518BHJP
   H01S 5/028 20060101ALI20200518BHJP
【FI】
   H01S5/22
   H01S5/042 612
   H01S5/028
【請求項の数】16
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-206550(P2015-206550)
(22)【出願日】2015年10月20日
(65)【公開番号】特開2017-79265(P2017-79265A)
(43)【公開日】2017年4月27日
【審査請求日】2018年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】特許業務法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田澤 耕明
(72)【発明者】
【氏名】梁 吉鎬
【審査官】 百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−117695(JP,A)
【文献】 特開2001−358404(JP,A)
【文献】 特開2009−283605(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0273563(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00−5/50
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、第1半導体層、発光層、前記第1半導体層と反対導電型の第2半導体層がこの順に積層され、互いに対向する第1端面及び第2端面を有する積層体と、
前記第2半導体層上に形成され、前記第2端面から離間し、かつ、前記第1端面及び前記第2端面に平行な方向に互いに離間して設けられた一対の凹部と、
前記一対の凹部の間の凸部であって、前記第1端面及び前記第2端面に垂直な方向に沿って延在するリッジ部と、
前記リッジ部上に設けられた帯状電極と、
前記リッジ部と前記第2端面との間において前記第2半導体層上に形成され、前記発光層からの放射光を導波する光ガイド層と、
前記第2半導体層と前記光ガイド層との間に設けられ、前記帯状電極に電気的に接続された透明電極層と、
を有する半導体レーザ。
【請求項2】
前記一対の凹部は前記第1端面から離間して形成され、
前記光ガイド層は、前記リッジ部と前記第1端面との間の前記第2半導体層上に形成された副光ガイド層を含む請求項1に記載の半導体レーザ。
【請求項3】
前記一対の凹部は前記垂直な方向に関して互いにアライメントされて配され、前記リッジ部を形成する前記一対の凹部の側壁は前記垂直な方向に同一の長さを有する請求項1または2に記載の半導体レーザ。
【請求項4】
前記光ガイド層は、前記リッジ部の延在方向に関して前記帯状電極にアライメントされて設けられている請求項1乃至3のいずれか1に記載の半導体レーザ。
【請求項5】
前記光ガイド層は、前記リッジ部の延在方向に垂直な方向において、前記リッジ部の幅以下の幅を有する請求項1乃至4のいずれか1に記載の半導体レーザ。
【請求項6】
前記第2端面は前記第1端面よりも前記放射光に対して高い反射率を有する請求項1乃至5のいずれか1に記載の半導体レーザ。
【請求項7】
前記一対の凹部は前記第1端面から離間して形成され、
前記帯状電極は、前記リッジ部と前記第1端面との間の前記第2半導体層上に延在して形成されている請求項1乃至6のいずれか1に記載の半導体レーザ。
【請求項8】
前記帯状電極は透明電極層からなり、前記リッジ部と前記第2端面との間の前記第2半導体層上に延在して形成されている請求項1乃至のいずれか1に記載の半導体レーザ。
【請求項9】
前記光ガイド層は、誘電体により形成されている請求項1乃至のいずれか1に記載の半導体レーザ。
【請求項10】
前記第2半導体層は少なくとも1の半導体層からなり、前記光ガイド層は前記少なくとも1の半導体層のいずれか1よりも大きな屈折率を有する請求項1乃至のいずれか1に記載の半導体レーザ。
【請求項11】
前記光ガイド層はNb25からなる層を含む請求項10に記載の半導体レーザ。
【請求項12】
基板上に、第1半導体層、発光層、前記第1半導体層と反対導電型の第2半導体層がこの順に積層され、互いに対向する第1端面及び第2端面を有する積層体と、
前記第2半導体層上に形成され、前記第2端面から離間し、かつ、前記第1端面及び前記第2端面に平行な方向に互いに離間して設けられた一対の凹部と、
前記一対の凹部の間の凸部であって、前記第1端面及び前記第2端面に垂直な方向に沿って延在するリッジ部と、
前記リッジ部上に設けられた帯状電極と、
前記リッジ部と前記第2端面との間において前記第2半導体層上に形成され、前記発光層からの放射光を導波する光ガイド層と、を有し、
前記リッジ部と前記第2端面との間における前記第2半導体層は、前記リッジ部におけ
る前記第2半導体層の層厚よりも小なる層厚を有する半導体レーザ。
【請求項13】
前記リッジ部と前記第2端面との間における前記第2半導体層は、前記一対の凹部における前記第2半導体層の層厚よりも大なる層厚を有する請求項12に記載の半導体レーザ。
【請求項14】
前記一対の凹部に連通して前記第2端面に至り、前記一対の凹部よりも大きな離間距離で互いに離間して形成された一対の溝と、
前記一対の溝の間の凸部であって、前記リッジ部に連なり、前記リッジ部よりも大なる幅の延長リッジ部と、を有する請求項1乃至13のいずれか1に記載の半導体レーザ。
【請求項15】
前記一対の凹部は前記第1端面から離間して形成され、
前記一対の凹部に連通して前記第1端面に至り、前記一対の凹部よりも大きな離間距離で互いに離間して形成された一対の溝と、
前記一対の溝の間の凸部であって、前記リッジ部に連続し、前記リッジ部よりも大なる幅の延長リッジ部と、を有し、
前記光ガイド層は、前記リッジ部と前記第1端面との間の前記第2半導体層上に形成された前記副光ガイド層を含む請求項1乃至14のいずれか1に記載の半導体レーザ。
【請求項16】
前記一対の溝の底面は、前記一対の凹部の底面から延在して形成されている請求項14または15に記載の半導体レーザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子、特にレーザダイオード(LD: Laser Diode)素子に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光の横モード制御を目的とした電流狭窄構造としてリッジ構造を有する半導体レーザ素子が従来から用いられている。リッジ構造の半導体レーザでは、リッジの長手方向に直交する方向に劈開された両端面を共振器とする。特許文献1には、端面の近傍におけるリッジ構造の幅を、中央部よりも広幅にした半導体レーザ素子が開示されている。特許文献2には、端面側にリッジ部を設けない、またはリッジ部の幅が中央部よりも広く、リッジ上に設けられた電極の幅が中央部よりも端面側において狭い半導体発光素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−133877号公報
【特許文献2】特開2001−54677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
劈開によってリッジ構造の半導体レーザ素子を形成する場合、リッジが端面まで延在していると、劈開面にクラックが入りやすい。クラックが発生すると、閾値電流が増大する、レーザ出力特性が経時的に劣化するなどの性能劣化に繋がる。
【0005】
クラックの発生を回避するため、例えば引用文献1のように、端面近傍のリッジ幅を広幅にした場合、クラックは発生しにくくなる一方で、光の閉じ込め効率が低下(導波路損失)してしまっていた。また、このような導波路損失を補うために利得が必要となり、閾値電流の増大、消費電力の増大を招いていた。
【0006】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、横モード制御性及び発光特性に優れ、信頼性の高い半導体発光素子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
基板上に、第1半導体層、発光層、第1半導体層と反対導電型の第2半導体層がこの順に積層され、互いに対向する第1端面及び第2端面を有する積層体と、当該第2半導体層上に形成され、第2端面から離間し、かつ、第1端面及び第2端面に平行な方向に互いに離間して設けられた一対の凹部と、当該一対の凹部の間の凸部であって、第1端面及び第2端面に垂直な方向に沿って延在するリッジ部と、リッジ部上に設けられた帯状電極と、当該リッジ部と第2端面との間において当該第2半導体層上に形成され、発光層からの放射光を導波する光ガイド層を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1(a)は、実施例1の半導体発光素子を模式的に示す斜視図である。図1(b)は、図1(a)のCL−CL線に沿った断面図である。
図2】実施例1の半導体発光素子を模式的に示す上面図である。
図3図3(a)は、図2のA−A’線に沿った断面図である。図3(b)は、図2のB−B’線に沿った断面図である。
図4図4(a)、(b)はそれぞれ図3(b)に示す半導体発光素子の変形例を示す断面図である。
図5図5は、実施例1の半導体発光素子の変形例を模式的に示す上面図である。
図6図6(a)、(b)は、実施例1の半導体発光素子の変形例を模式的に示す上面図である。
図7図7(a)は、実施例2の半導体発光素子を模式的に示す斜視図である。図7(b)は、図7(a)のCL−CL線に沿った断面図である。
図8】実施例2の半導体発光素子を模式的に示す上面図である。
図9図8のCL―CL線に沿った断面図である。
図10図10(a)は、実施例3の半導体発光素子を模式的に示す斜視図である。図10(b)は、図10(a)のCL−CL線に沿った断面図である。
図11図11(a)は、実施例3の半導体発光素子を模式的に示す上面図である。図11(b)は、実施例3の半導体発光素子の変形例を模式的に示す上面図である。
図12図12(a)、(b)は、実施例3の半導体発光素子の変形例を模式的に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下の説明及び添付図面においては、実質的に同一または等価な部分には同一の参照符号を付している。
【実施例1】
【0010】
図1(a)は、実施例1の半導体発光素子10を模式的に示す斜視図であり、図1(b)は図1(a)のCL−CL線に沿った断面図である。図2は、半導体発光素子10の上面図である。半導体発光素子10について、図1及び図2を参照して説明する。図の明確さのため、図2においては上面図の一部の構成要素にハッチングを施して示す。半導体発光素子10は、第1電極11と、基板12と、第1導電型の第1半導体層としてのn型半導体層13、発光層15、第2導電型の第2半導体層としてのp型半導体層17がこの順に基板12上に積層された半導体積層体(以下、単に積層体とも称する。)SLと、第2電極21とを有している。積層体SLを構成する半導体層は、例えばGaN系半導体、例えばGaN、InGaN、AlGaNなどの組成を有している。なお、他の組成の半導体、例えばGaAs系半導体、InP系半導体であってもよい。
【0011】
半導体発光素子10は、互いに対向する端面である第1端面S1及び第2端面S2を有する。本実施例においては、半導体発光素子10が、ファブリペロー(FP)型の共振器構造を有する場合について説明する。すなわち、第1端面S1及び第2端面S2が共振器を構成している。
【0012】
第2端面S2は第1端面S1よりも、発光層15からの放射光に対して高い反射率を有している。第1端面S1及び第2端面S2は劈開面よりも高い反射率の反射膜を有している(図1(b)参照)。尚、図1(b)において当該反射膜28、29を模式的に図示しているが、本実施例に係る他の図においては図の明確さのため反射膜28、29を省略している。
【0013】
半導体発光素子10のp型半導体層17の表面には、凹部18Aと凹部18Bとからなり、第1端面S1及び第2端面S2から離間し、かつ、第1端面S1及び第2端面S2に平行な方向に互いに離間した一対の凹部18が設けられている。凹部18A及び凹部18Bは、p型半導体層17の表面から窪んだ1対の凹部として形成されている。より詳細には、凹部18A及び凹部18Bの各々は、矩形の開口部及び底面を有し、開口部の面積が底面の面積よりも大なる逆角錐台形状の凹部である。
【0014】
凹部18A及び凹部18Bは、同じ形状、同じ寸法を有し、第1端面S1及び第2端面S2に垂直な方向に関してアライメント(整列)されて配されている。凹部18A及び凹部18Bは、第1端面S1及び第2端面S2に平行な方向に関して互いに離間して配され、凹部18A及び凹部18Bの間の領域(凸部)がリッジ部20である。
【0015】
従って、リッジ部20は、第1端面S1及び第2端面S2に垂直な方向(共振方向RD)に沿って延在している。また、リッジ部20の底部及び頂部の幅は当該延在方向で一定である。さらに、リッジ部20は、底部から頂部の方向(リッジ部20の高さ方向)にその幅が狭くなる、いわゆる順メサ形状を有している。また、リッジ部20は、共振方向RDに平行な中心線CLに対して対称な断面形状を有している。
【0016】
より詳細には、凹部18A及び凹部18Bがそれぞれp型半導体層17の表面と形成する矩形の開口部の辺19A1及び19B1は第1端面S1に平行であり、辺19A1及び19B1は一直線上にある。以下において、辺19A1及び19B1がなす直線と第1端面S1との間のp型半導体層17の領域を第1領域AR1と称する。
【0017】
また、それぞれ辺19A1及び19B1の対辺である凹部18A及び凹部18Bの開口部の辺19A3及び19B3は第2端面S2に平行であり、辺19A3及び19B3は一直線上にある。以下において、辺19A3及び19B3がなす直線と第2端面S2との間のp型半導体層17の領域を第2領域AR2と称する。なお、辺19A1及び19B1がなす直線と辺19A3及び19B3がなす直線との間の、凹部18A及び凹部18Bを含めたp型半導体層17の領域を第3領域AR3と称する。
【0018】
凹部18Aがp型半導体層17の表面と形成し、辺19A1及び19A3に直交する辺が図2に19A2及び19A4で示されており、辺19A2がリッジ部20の頂部の辺であり、辺19A4は辺19A2の対辺である。同様に、凹部18Bがp型半導体層17の表面と形成し、辺19B1及び19B3に直交する辺が19B2及び19B4で示されており、辺19B2がリッジ部20の頂部の辺であり、辺19B4は辺19B2の対辺である。従って、辺19A2と辺19B2とは、リッジ部20の側壁20A、20B(図1(a)、図3(a)参照)を画定する辺である。
【0019】
上記したように、凹部18A及び凹部18Bは、第1端面S1及び第2端面S2に垂直な方向(共振方向RD)に関してアライメント(整列)されて配されているので、凹部18Aの辺19A2及び凹部18Bの辺19B2、すなわち凹部18Aの側壁20A及び凹部18Bの側壁20Bは当該垂直方向において同一の位置となるように配されている。尚、ここで凹部18A、18Bによってリッジ部20が形成されている。凹部18A、18Bはそれぞれ、第3領域AR3において共振方向RDに垂直な方向の積層体SLの側面に達していてもよい。
【0020】
リッジ部20上には、リッジ部20に沿って第2電極(p−電極)として帯状に形成された帯状電極21が設けられている。なお、図2において帯状電極21の形成領域にハッチングを施している。帯状電極21は、例えば金属によって形成されている。帯状電極21の一方の端部21Aは、第1領域AR1まで延在している。好ましくは、端部21Aは第1端面S1に至る位置まで延在している。帯状電極21の他方の端部21Bは、第2端面S2から離間しており、第2領域AR2内には延在していない。
【0021】
第2領域AR2には、光ガイド層23が設けられている。なお、図2において光ガイド層23の形成領域にハッチングを施している。光ガイド層23は、リッジ部20の中心線CL上にアライメントされて形成されている。本実施例においては、光ガイド層23の幅(共振方向RDに垂直な方向の幅)は、リッジ部20の頂部の幅RWに等しいか又は狭い。光ガイド層23は、例えばSiO2、Al23、Ta25、ZrO2、Nb25などの発光波長に対し透光性の誘電体膜により形成されている。光ガイド層23は例えばフォトリソグラフィによるマスク形成後に成膜することにより形成することができる。
【0022】
なお、光ガイド層23の長さ(すなわち、共振方向RDの長さ)及び幅(すなわち、共振方向RDに垂直な方向の幅)は、リッジ部20の長さ及び幅、光ガイド層23が設けられる第2領域AR2の共振方向RDの長さ(第1領域AR1に設けられる場合には第1領域AR1の長さ)に応じて、定めることができる。また、第2領域AR2(または第1領域AR1)の全長に亘って設けても、あるいは第2領域AR2(または第1領域AR1)の一部に設けてもよい。さらに、本実施例においては、光ガイド層23の平面形状(積層体SLに垂直な方向から見た形状)が矩形である場合について説明するが(図2)、これに限らない。例えば、第2端面S2(または第1端面S1)に向かってその幅が減少または増大する台形形状を有していてもよい。
【0023】
図3(a)は、図2におけるA−A’線に沿った断面図である。A−A’線は、一対の凹部18及びリッジ部20を通り半導体発光素子10の第1端面S1及び第2端面S2に平行な線である。
【0024】
n型半導体層13は、例えばn−GaNバッファ層13C、n−GaNクラッド層13B、n−InGaNクラッド層13Aからなる。バッファ層13C、クラッド層13Bは例えばSiがドープされたn−GaN層であり、クラッド層13Aは例えばSiがドープされたn−InGaN層である。なお、第1半導体層としてのn型半導体層13が複数の半導体層からなる場合を説明するが、少なくとも1の半導体層から構成されていれば良い。
【0025】
発光層15は、例えば複数の障壁層と複数の量子井戸層とからなる量子井戸(MQW:Multiple Quantum Well)構造を有している。量子井戸構造の障壁層は例えばGaNからなり、量子井戸層は例えばInGaNである。
【0026】
p型半導体層17は、例えばp−InGaNクラッド層17A、p−GaNクラッド層17B、p−GaNコンタクト層17Cからなる。クラッド層17Aは例えばMgがドープされたp−InGaN層であり、クラッド層17B及びコンタクト層17Cは例えばMgがドープされたp−GaN層である。なお、第2半導体層としてのp型半導体層17が複数の半導体層からなる場合を説明するが、少なくとも1の半導体層から構成されていれば良い。
【0027】
一対の凹部18の深さは、発光層15に到達しない深さが好ましい。言い換えれば、一対の凹部18の底部と発光層15との間にp型半導体層17が存在することが好ましい。一対の凹部18は、同一の深さ、幅及び長さを有する同一形状の一対の凹部として、p型半導体層17に、例えば反応性イオンエッチングなどのドライエッチング、あるいはウェットエッチングを施すことによって形成することができる。
【0028】
帯状電極21の形成部分を除き、p型半導体層17上には、絶縁層27が形成されている。より詳細には、p−GaNコンタクト層17C上、及び凹部18A及び凹部18B上の全体(すなわち、凹部18A及び凹部18Bの底面及び側壁上)に亘って絶縁層27が形成されている。絶縁層27は、例えばSiO2である。リッジ部20の頂部上において絶縁層27には帯状の開口部が形成され、当該開口から露出するp型コンタクト層17Cに接続されたp−電極である帯状電極21が形成されている。絶縁層27上に、帯状電極21に電気的に接続されたパッド電極(図示せず)が設けられている。
【0029】
図3(b)は、図2におけるB−B’線に沿った断面図である。B−B’線は、一対の凹部18及びリッジ部20を通らず、半導体発光素子10の第2端面S2に平行な線である。
【0030】
図3(b)及び図2を参照すると、ここでは、光ガイド層23は、第2領域AR2の帯状電極21の延在方向の中心線CLに対して対称な位置に、リッジ部20の幅以下、例えばリッジ部20の頂部の幅RW以下の幅で形成されている。光ガイド層23は、当該中心線CLに対して対称であることが好ましい。より詳細には、第2領域AR2のp−GaNコンタクト層17C上に光ガイド層23が形成され、光ガイド層23の形成部分を除いたp−GaNコンタクト層17C上に絶縁層27が形成されている。また、光ガイド層23は絶縁層27よりも大きな層厚を有している。
【0031】
第2領域AR2には、リッジが存在しないためリッジによる導波路は形成されていないが、光ガイド層23が存在する。すなわち、光ガイド層23によって、リッジ部20と第2端面S2との間に屈折率導波構造が付加され、光閉じ込め効率が高くなり、横モード制御性が向上する。従って、光ガイド層23を有しない場合と比較して、より高い横モード制御性が得られる。換言すれば、光ガイド層23は、リッジの非形成部分(第2領域AR2)においても発光層15からの放射光を導波する光導波構造を提供している。
【0032】
本実施例においては、帯状電極21の端部21Bが、光ガイド層23から離間している場合について説明したが、光ガイド層23の下層として電極層を設けることも可能である。例えば、図4(a)は、図2に示す発光素子の変形例であり、B−B’線に沿った断面図である。図4(a)に示すように、リッジ部20上に延在する帯状電極21を金属などの不透光性電極として形成し、帯状電極21と別体として発光層15からの放射光に対して透光性を有する透光性電極22を設け、透光性電極22上に光ガイド層23を設けてもよい。なお、この場合、透光性電極22は帯状電極21に電気的に接続されていることが好ましい。あるいは、帯状電極21の全体を、発光層15からの放射光に対して透光性を有するものとし(帯状電極24)、その上に光ガイド層23を設けてもよい。
【0033】
光ガイド層23は、図3(b)に示すように、絶縁層27の開口部において、p型半導体層17(例えば、p−GaNコンタクト層17C)に接して形成されていることが好ましい。しかしながら、図4(b)に示すように、絶縁層27上に光ガイド層23が設けられていても良い。図4(b)は、図2に示す発光素子の絶縁層27の上に光ガイド層23が設けられた変形例を示し、B−B’線に沿った断面図である。
【0034】
光ガイド層23として、屈折率が空気よりも大きく、積層体SLを構成しているGaN等の半導体層よりも小さい、例えばSiO2などの誘電体膜を用いることができる。積層体SLを構成している半導体層よりも光ガイド層23の屈折率が小さい場合であっても、光ガイド層23によって、発光層15を含む積層体SLへの光閉じ込め効率を向上できる。
【0035】
一方、積層体SLを構成している半導体層のいずれか1よりも大きな屈折率を有する光ガイド層23を用いることもでき、この場合、積層体SLへの大きな光閉じ込め効率が得られ、高い横モード制御性が得られる。例えば、Nb25の比屈折率は2.50であり、GaN系半導体、例えばGaNの比屈折率2.47、AlGaNの比屈折率2.23よりも大きい。このように、積層体SLを構成している半導体層と同等以上の屈折率を有するNb25などの高屈折率材料の光ガイド層23を用いることによって、さらに高い横モード制御性、高い光閉じ込め効率の半導体レーザを得ることができる。
【0036】
光ガイド層23は、半導体発光素子10の両端面の内、光反射率の高い方の面(第2端面S2)側の第2半導体層(第2領域AR2)上に設けられることが好ましい。この場合、高反射率側の端面近傍において、光閉じ込めが大きく、共振器内へのフィードバックが大きくなるため、端面部分にリッジの非形成部分(第2領域AR2)を設けたとしても増幅の効率が高く、閾値電流を増大させることなく大きな光強度の半導体レーザを得ることができる。
【0037】
本実施例において、高反射端面(第2端面S2)側である第2領域AR2にのみ光ガイド層23を有する構成について説明したが、この限りではない。図5に示すように、さらに第1端面S1側の第1領域AR1に副光ガイド層25を有していても良い。出射面である第1端面S1側の第1領域AR1に副光ガイド層25が設けられた場合、横方向の光閉じ込め効果が増大し、多モード発振も防ぐことができ、ニアフィールドパターン(NFP)及びファーフィールドパターン(FFP)形状が安定化する。すなわち、安定した横モード形状が得られ、レンズ等による集光性も向上する。
【0038】
なお、本実施例において、一対の凹部18が第1端面S1及び第2端面S2から離間している例について説明したが、第1端面S1から離間していなくても良い。図6(a
)に示すように、一対の凹部18の底部が第1端面S1に達していても良い。
【0039】
上記したように、凹部18A、18Bによってリッジ部20が形成されている。したがって、図6(b)に示すように、凹部18A、18Bはそれぞれ、第2半導体層17上において共振方向RDに垂直な方向の積層体SLの側面に及ぶ幅(共振方向RDに垂直な方向の幅)を有していても良い。
【0040】
本実施例において、第2端面S2及び第1端面S1は反射膜28、29を有し、第2端面S2は第1端面S1よりも、発光層15からの放射光に対して高い反射率を有している例について説明したが、変形例として、第1端面S1及び第2端面S2は同一の反射率を有していても良い。また、他の変形例として、第1端面S1は劈開面であって、反射膜28を有していなくても良い。
【実施例2】
【0041】
図7(a)は、実施例2の半導体発光素子30を模式的に示す斜視図であり、図7(b)は図7(a)のCL−CL線に沿った断面図である。図8は、実施例2の半導体発光素子30を模式的に示す上面図である。半導体発光素子30において、積層体SL及び一対の凹部18、リッジ部20、光ガイド層23等の基本的な構成は実施例1の半導体発光素子10と同様である。半導体発光素子30においては、第2領域AR2におけるp型半導体層17が他の部分よりも小さい層厚に形成されており、当該p型半導体層17の上に光ガイド層23が形成されている点が、実施例1の半導体発光素子10とは異なる。実施例1と同様に、第1端面S1及び第2端面S2の有する反射膜28、29を図7(b)に図示し、本実施例に係るその他の図においては省略している。
【0042】
図9は、図8のリッジ部20の中心線CL―CL線に沿った断面図である。第2領域AR2においてp型半導体層17の層厚は他の部分よりも小さい。また、第2領域AR2におけるp型半導体層17の層厚dは、凹部18A及び凹部18Bの底部におけるp型半導体層17の層厚以上であることが好ましい。
【0043】
半導体発光素子30において、第2領域AR2におけるp型半導体層17の層厚dが小さいほど、発光層15からの光のp型半導体層17による吸収量が減少し、光ガイド層23に到達する光量が増加する。従って、光ガイド層23による導波が強く、横方向光閉じ込めの効果がより顕著になる。さらに、第1領域AR1において副光ガイド層25を設けても良い。その場合においても、第1領域AR1におけるp型半導体層17の層厚dを小さくし、その上に副光ガイド層25を設ければよく、安定した横モード形状が得られる。
【0044】
本実施形態によれば、光ガイド層を設ける領域のp型半導体層を他の領域よりも薄くすることによって、光ガイド層と発光層の距離を小さくし、光ガイド層による横方向光閉じ込めの向上効果をより顕著に発現することができる。
【0045】
なお、本実施例においては、第2領域AR2の全体において(すなわち、半導体レーザ素子の幅方向の全体に亘って)p型半導体層17の層厚dが他の領域より小さい例について説明したが、この限りではない。第2領域AR2の中で劈開時に生じるクラックの影響が発光部に及ばない幅に亘って、第2領域AR2のp型半導体17の一部分の層厚dが小さくなっていればよい。
【実施例3】
【0046】
図10(a)は、実施例3における半導体発光素子50の模式的な斜視図であり、図10(b)は図10(a)のCL−CL線に沿った断面図である。図11(a)は、実施例3の半導体発光素子50を模式的に示す上面図である。半導体発光素子50において、積層体SL及び一対の凹部18、リッジ部20、光ガイド層23等の基本的な構成は実施例1の半導体発光素子10と同様であり、第2端面S2側のp型半導体層17上に、溝58Aと溝58Bとからなる一対の溝58が形成されている点が異なる。実施例1と同様に、第1端面S1及び第2端面S2の有する反射膜28、29を図10(b)に図示し、本実施例に係るその他の図においては省略している。
【0047】
溝58Aは凹部18Aと、溝58Bは凹部18Bとそれぞれ連通しており、第2端面S2に至るように形成されている。一対の溝58の底面は、一対の凹部18の底面から延在して(すなわち、同じ深さで)形成され、一対の溝58の底面及び一対の凹部18の底面は同一平面を形成している。溝58A、溝58Bは、例えばドライエッチング又はウェットエッチングなどにより形成することができる。
【0048】
溝58A及び溝58Bは、第2領域AR2においてリッジ部20の中心線CLに対して対称な位置に、凹部18A及び凹部18Bの離間距離よりも大きな離間距離で互いに離間して形成されている。従って、溝58Aと溝58Bの間の領域(凸部)が、リッジ部20と連なった延長リッジ部99として形成されている。すなわち、延長リッジ部99は、リッジ部20に連なり、リッジ部20の中心線CLに関して対称な断面形状を有し、リッジ部20よりも大なる幅を有している。
【0049】
なお、溝58A及び溝58Bは、第2端面S2まで到達しているため、劈開によりクラックの発生する原因となる可能性がある。しかしながら、溝58A及び溝58B間の距離、すなわち延長リッジ部99の幅DGを適宜設計することにより、クラックが発光層15の発光領域に及ぶことを回避できる。
【0050】
延長リッジ部99の幅DGはリッジ部20の幅RWよりも広く、第2領域AR2における光閉じ込め効果はリッジ部20と比較して低いが、延長リッジ部99を有しない場合と比較して光閉じ込め効果が高い。さらに、延長リッジ部99上には、光ガイド層23が形成されているため、屈折率導波構造が付加され、光閉じ込め効果が増大する。延長リッジ部99及び光ガイド層23を有することにより、劈開によるクラックを回避しながら、高い光閉じ込め効果を有する半導体レーザ素子を実現することができる。
【0051】
本実施例において、第2領域AR2に一対の溝58を追加した例について説明したが、図11(b)に示すように、さらに第1領域AR1にも溝58A及び溝58Bと同様な一対の溝、すなわち溝68A及び溝68B、副光ガイド層25を追加しても良い。横モード形状をさらに安定化することができる。
【0052】
また、溝58A及び溝58Bの形状は、図10、11に示したような形状の限りではなく、他の形状でも良い。図12(a)、(b)は、溝58A及び溝58Bの形状の変形例である半導体発光素子70及び80を示す上面図である。図12(a)に示すように、溝78A及び溝78Bは、第2端面S2から一対の凹部18まで直線的に延在する形状でも良く、図12(b)に示す溝88A及び溝88Bのように、矩形の溝の組み合わせであってもよい。半導体発光素子70及び80は、第1領域AR1にも第2領域AR2と同様な一対の溝(図12(a)79A、79B、図12(b)89A、89B)及び副光ガイド層25を有する例である。尚、溝58A、58B及び変形例における各々の溝によって延長リッジ部99が形成されている。各溝は、第1領域AR1、第2領域AR2において共振方向RDに垂直な方向の積層体SLの側面に達していてもよい。
【0053】
なお、上記した実施例においては、凹部18A及び凹部18Bが同じ形状、同じ寸法(長さ、幅及び深さ)を有する場合について説明したが、これに限らない。リッジ部20の側壁を構成する凹部18Aの側壁20A及び凹部18Bの側壁20Bが同じ長さを有し、当該凹部18Aの側壁及び凹部18Bの側壁が共振器端面に垂直な方向(共振方向)に関して同一位置となるように、凹部18A及び凹部18Bが当該垂直方向に関してアライメント(整列)されて配されていれば、凹部18A及び凹部18Bが互いに異なる形状、寸法を有していてもよい。上記した実施例は、組み合わせてもよい。例えば第2領域AR2においては実施例2のように層厚dの小さいp型半導体層17を有し、第1領域AR1において実施例3のように延長リッジ部99が形成されていても良い。
【0054】
以上、詳細に説明したように、本願発明によれば、リッジ構造の半導体レーザにおいて、リッジを共振器端面から離間して設け、リッジと共振器端面との間の半導体層上、すなわちリッジが設けられていない半導体レーザの共振器端部領域の半導体層上に光ガイド層を設けている。これによって、劈開に伴うクラックによる特性劣化を回避し、光閉じ込め効果が高く、横モード制御性及び発光特性に優れ、信頼性の高い発光素子を提供することができる。
【0055】
また、半導体レーザの共振器端部のリッジ幅を広げたリッジ構造を設けることによって、劈開に伴うクラックによる特性劣化を回避し、光閉じ込め効果が高く、横モード制御性及び発光特性に優れ、信頼性の高い発光素子を提供することができる。
【符号の説明】
【0056】
10、30、50 半導体発光素子
11 第1電極
12 基板
13 第1半導体層
15 発光層
17 第2半導体層
18 一対の凹部
18A、18B、 凹部
20 リッジ部
21 帯状電極
23 光ガイド層
27 絶縁層
28、29 反射膜
99 延長リッジ部
58A、58B 溝
S1 第1端面
S2 第2端面
RD 共振方向
RW リッジ部20の幅
DG 延長リッジ部99の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12