特許第6700035号(P6700035)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6700035
(24)【登録日】2020年5月7日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20200518BHJP
【FI】
   A47J27/00 103H
   A47J27/00 103L
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-249244(P2015-249244)
(22)【出願日】2015年12月22日
(65)【公開番号】特開2017-113102(P2017-113102A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年10月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083840
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【弁理士】
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】荒津 百合子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 ちひろ
(72)【発明者】
【氏名】永田 滋之
(72)【発明者】
【氏名】金井 孝博
【審査官】 川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/061483(WO,A1)
【文献】 特開2015−188491(JP,A)
【文献】 実開昭61−001294(JP,U)
【文献】 特開2010−146882(JP,A)
【文献】 特開2001−204623(JP,A)
【文献】 特開2013−252168(JP,A)
【文献】 特開2001−238791(JP,A)
【文献】 特開2010−244998(JP,A)
【文献】 特開2013−206549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
H05B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と、前記底部に対向する開口とを有する容器と、
前記容器を加熱する少なくとも1つの誘導加熱コイルと
を備え、
前記容器の前記底部を下方に向け、前記開口を上方に向けた状態で、
前記底部は、前記容器の内面において最も下方に位置する内面最下部と、前記内面最下部よりも上方に突出する凸形状部とを有し、
前記内面最下部は、前記容器の径方向における幅が1cm以下の環状の水平面であり、
前記容器の径方向における前記内面最下部の内側に、前記径方向の内側ほど高さが高くなる傾斜面を有し、
前記径方向における前記内面最下部の外側に、前記径方向の外側ほど高さが高くなる湾曲面を有し、
前記内面最下部は、前記容器の前記内面のうち、前記少なくとも1つの誘導加熱コイルの加熱によって最も高温となる部分である
ことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記容器の内面のうち、少なくとも前記底部の内面には、深さが1cm以下の複数の凹部、または高さが1cm以下の複数の凸部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記凸形状部は、前記底部の中央に形成され、
前記内面最下部は、前記凸形状部を囲むように環状に形成されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記少なくとも一つの誘導加熱コイルは、環状の単一の誘導加熱コイルであることを特徴とする請求項1から3までの何れか1項に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記内面最下部は、前記誘導加熱コイルの内周端と外周端との中間位置に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の炊飯器。
【請求項6】
前記少なくとも一つの誘導加熱コイルは、環状の第1の誘導加熱コイルと、前記第1の誘導加熱コイルを前記径方向の外側から囲むように配置された第2の誘導加熱コイルを有することを特徴とする請求項1から3までの何れか1項に記載の炊飯器。
【請求項7】
前記内面最下部は、前記第1の誘導加熱コイルおよび前記第2の誘導加熱コイルを流れる電流によって生じる磁束密度が最も高くなる位置に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の炊飯器。
【請求項8】
前記内面最下部は、前記第1の誘導加熱コイルと前記第2の誘導加熱コイルとの間に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の炊飯器。
【請求項9】
前記少なくとも一つの誘導加熱コイルは、環状の第1の誘導加熱コイルと、前記第1の誘導加熱コイルの前記径方向の外側に中心を有し、前記第1の誘導加熱コイルの周囲に等間隔に配置された複数の環状の第2の誘導加熱コイルとを有することを特徴とする請求項1からまでの何れか1項に記載の炊飯器。
【請求項10】
前記内面最下部は、前記第1の誘導加熱コイルおよび前記第2の誘導加熱コイルを流れる電流によって生じる磁束密度が最も高くなる位置に形成されていることを特徴とする請求項9に記載の炊飯器。
【請求項11】
前記内面最下部は、前記第1の誘導加熱コイルと前記第2の誘導加熱コイルとの間に形成されていることを特徴とする請求項9または10に記載の炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鍋と、鍋の底面に対向配置された加熱コイルとを備えた炊飯器に関し、鍋の底面における加熱コイルに対向していない内周部に凸形状を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、炊飯器用鍋の底面の中心点から側面に至る経路の中間点を、鍋の全高の最下点となるようにしたものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−252168号公報(段落0016,0017および図1参照)
【特許文献2】国際公開第2013/61483号(段落0045,0048および図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の炊飯器には、鍋の内部で気泡(沸騰泡)の分布に偏りが生じ、その結果、被加熱物の加熱が不均一になる(すなわち、炊きムラが生じる)という問題があった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたもので、気泡の分布を均一化し、被加熱物を均一に加熱することができる炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の炊飯器は、底部と、底部に対向する開口とを有する容器と、容器を加熱する少なくとも1つの誘導加熱コイルとを備える。容器の底部を下方に向け、開口を上方に向けた状態で、底部は、容器の内面において最も下方に位置する内面最下部と、内面最下部よりも上方に突出する凸形状部とを有する。内面最下部は、前記容器の径方向における幅が1cm以下の環状の水平面である。容器の径方向における内面最下部の内側に、径方向の内側ほど高さが高くなる傾斜面を有し、径方向における内面最下部の外側に、径方向の外側ほど高さが高くなる湾曲面を有する。内面最下部は、容器の内面のうち、当該少なくとも1つの誘導加熱コイルの加熱によって最も高温となる部分である
【発明の効果】
【0008】
本発明の炊飯器によれば、加熱によって発生した気泡を、容器内で均一に分散させることができる。そのため、容器内の被加熱物を均一に加熱することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1の炊飯器の構成を示す断面図である。
図2】本発明の実施の形態1の鍋状容器を示す断面図(A)、および鍋状容器の内面の表面形状を示す模式図(B)である。
図3】本発明の実施の形態1の炊飯器の炊飯工程における被加熱物および鍋状容器の温度の変化を示す模式図である。
図4】第1の比較例の鍋状容器を上方から見た図(A)、鍋状容器および加熱コイルを示す断面図(B)、並びに鍋状容器の内面の表面形状を示す模式図(C)である。
図5】本発明の実施の形態1の炊飯器の鍋状容器を上方から見た図(A)、鍋状容器および加熱コイルを示す断面図(B)、並びに鍋状容器の内面の表面形状を示す模式図(C)である。
図6】第2の比較例の鍋状容器を上方から見た図(A)、鍋状容器および加熱コイルを示す断面図(B)、並びに鍋状容器の内面の表面形状を示す模式図(C)である。
図7】第3の比較例の鍋状容器を上方から見た図(A)、鍋状容器および加熱コイルを示す断面図(B)、並びに鍋状容器の内面の表面形状を示す模式図(C)である。
図8】本発明の実施の形態1の炊飯器の鍋状容器を上方から見た図(A)、鍋状容器および加熱コイルを示す断面図(B)、並びに鍋状容器の内面の表面形状を示す模式図(C)である。
図9】本発明の実施の形態1の炊飯器において、鍋状容器の内面が平滑な場合(A)と鍋状容器の内面に微細な凹凸形状を設けた場合(B)の気泡の挙動を示す模式図である。
図10】本発明の実施の形態2の炊飯器の鍋状容器を上方から見た図(A)、並びに鍋状容器および加熱コイルを示す断面図(B)である。
図11】本発明の実施の形態3の炊飯器の鍋状容器を上方から見た図(A)、並びに鍋状容器および加熱コイルの断面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の各実施の形態の炊飯器について、家庭用IH(誘導加熱)式炊飯器を例に取って、図面を参照して説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1の炊飯器100の構成例を示す断面図である。炊飯器100は、本体1と、本体1に開閉自在に取り付けられた蓋体10と、本体1の内側に固定された容器カバー2と、容器カバー2の内側に装着された鍋状容器5(容器)と、容器カバー2の底部に配設された加熱コイル3(加熱部)とを備えている。
【0012】
本体1は、炊飯器100の筐体をなす部分であり、上方に開口を有している。容器カバー2は、底部21と円筒状の周壁部22とを有し、上方に開口を有している。容器カバー2の周壁部22の上端縁は、本体1の開口の内周面に固定されている。容器カバー2の底部21には、後述する鍋底温度センサ4を取り付けるための孔部23が設けられている。
【0013】
鍋状容器5は、容器カバー2の内側に着脱可能に取り付けられている。鍋状容器5は、上方に開口を有する鍋状の容器であり、被加熱物(ここでは米200および水201)を収容する。鍋状容器5は、誘導加熱によって発熱する磁性体の金属で構成されている。鍋状容器5の形状については、図2を参照して後述する。
【0014】
加熱コイル3は、容器カバー2の底部21に対向するように配設された誘導加熱コイルである。加熱コイル3は、鍋状容器5の中心軸(図2(A)に示す中心軸C)を中心としてスパイラル状に巻かれた単一の環状コイルで形成されている。
【0015】
加熱コイル3は、制御部8の制御により、図示しない電源部およびインバータ回路を介して高周波電流が供給され、高周波磁界を発生する。加熱コイル3の発生する高周波磁界によって、磁性体材料で構成される鍋状容器5に渦電流が発生し、渦電流と鍋状容器5の抵抗によりジュール熱が生じる。
【0016】
容器カバー2の底部21の孔部23には、鍋底温度センサ4が配置されている。鍋底温度センサ4は、鍋状容器5の底面に接触するように配置され、鍋状容器5の温度を検知する。鍋底温度センサ4は、検知した温度情報を制御部8に出力する。
【0017】
蓋体10は、鍋状容器5を開閉自在に覆うものであり、本体1に設けられたヒンジ部6を中心として開閉自在に支持されている。蓋体10は、外蓋11と内蓋12とを有している。
【0018】
外蓋11は、蓋体10の上部および側部を構成している。外蓋11の上面には、操作表示部15が設けられている。操作表示部15は、炊飯器100の状態を表す情報を表示すると共に、ユーザ(操作者)による操作入力を受け付ける部分である。
【0019】
外蓋11の下面(鍋状容器5に対向する面)には、係止材13を介して、内蓋12が着脱自在に取り付けられている。外蓋11には、着脱可能なカートリッジ14が取り付けられている。また、外蓋11の下面には、内部温度センサ16が取り付けられている。
【0020】
内蓋12は、鍋状容器5の開口を覆っている。内蓋12の外周縁には、鍋状容器5との間を封止するパッキン9が設けられている。内蓋12には孔部12aが設けられており、この孔部12aには、外蓋11に取り付けられた内部温度センサ16が挿入されている。内部温度センサ16は、鍋状容器5の内部温度を検知し、検知した温度情報を制御部8に出力する。
【0021】
内蓋12には、蒸気口12bが設けられている。蒸気口12bは、外蓋11に取り付けられたカートリッジ14に通じている。カートリッジ14は、内蓋12の蒸気口12bから放出された蒸気を外部に放出するものである。カートリッジ14内に入った蒸気は炊飯器100の外部に放出されるが、一部は復水される。
【0022】
炊飯器100は、さらに、制御部8と、時間計測部7とを備えている。制御部8および時間計測部7は、本体1に内蔵されている。制御部8は、例えばCPU(Central Processing Unit)で構成され、炊飯プログラムに従って炊飯器100の動作を制御する。
【0023】
制御部8には、鍋底温度センサ4および内部温度センサ16からの検出温度、および操作表示部15からのユーザの操作情報が入力される。制御部8は、これらの入力情報に基づいて炊飯工程を実行し、加熱コイル3に高周波電流を流す制御を行う。
【0024】
時間計測部7は、制御部8からの指示信号に基づいて経過時間をカウントする。時間計測部7がカウントした経過時間は、制御部8に出力される。
【0025】
図2(A)は、鍋状容器5の構成を示す断面図である。鍋状容器5は、上面視で円形の底部50と、底部50の周囲に沿って延在する円筒状の周壁部55と、底部50に対向する開口とを有している。周壁部55の上端部の外周に沿って、フランジ部56が形成されている。
【0026】
以下では、鍋状容器5を、底部50を下にし、開口部を上にして水平面上に置いたものとして説明する。また、円筒形状の周壁部55の中心軸(符号Cで示す)を、鍋状容器5の中心軸とする。周壁部55の半径方向を「径方向」と称する。
【0027】
底部50の径方向中央には、上方、すなわち鍋状容器5の内部側に突出(隆起)する凸形状部としての中央凸部51が形成されている。中央凸部51の中央部には水平な平面51aが形成されており、平面51aの周囲には、径方向外側ほど高さが低くなる傾斜面51bが形成されている。
【0028】
底部50の内面(表面)において、中央凸部51の周囲(径方向外側)には、内面最下部52aが形成されている。内面最下部52aは、鍋状容器5の内面のうち最も下方に位置する部分である。また、内面最下部52aは、加熱コイル3によって加熱された際に、鍋状容器5の内面で最も高温となる部分である。
【0029】
より具体的には、内面最下部52aは、環状の加熱コイル3の内周端3aと外周端3bとの中間位置の上に配置されている。言い換えると、内面最下部52aは、加熱コイル3を流れる電流によって生じる磁束密度が最も高くなる部分に配置されている。また、内面最下部52aは径方向に一定の幅Dを有する水平面であり、中央凸部51の周囲を囲むように環状に延在している。
【0030】
底部50の周壁部55と連続する部分には、湾曲形状の断面を有する湾曲部53が形成されている。湾曲部53の内面である湾曲面53aは、内面最下部52aの径方向外側に位置しており、径方向外側ほど高さが高くなるように湾曲している。
【0031】
底部50の内面(すなわち平面51a、傾斜面51b、内面最下部52aおよび湾曲面53a)は、図2(B)に示す微小な凹凸形状60を有していることが望ましいが、これについては後述する。
【0032】
次に、この実施の形態1の炊飯器100の炊飯工程について、図3を参照して説明する。図3は、実施の形態1の炊飯器100の炊飯工程における被加熱物および鍋状容器5の温度変化を示す模式図である。なお、被加熱物の温度(すなわち鍋状容器5の内部温度)は、内部温度センサ16の検出値に基づいて検出する。また、鍋状容器5の温度は、鍋底温度センサ4の検出値に基づいて検出する。
【0033】
図3に示すように、実施の形態1の炊飯工程は、予熱工程、昇温工程、沸騰工程およびむらし工程で構成される。予熱工程は、米200に吸水を促す工程である。昇温工程は、被加熱物(米200および水201)が沸騰温度に至るまでの工程である。沸騰工程は、被加熱物を沸騰温度に維持し、米200のデンプンの糊化を促進する工程である。むらし工程は、米200を蒸らすことにより米粒の中心部まで糊化を促進させ、米粒内の水分の分布を均一にする工程である。
【0034】
次に、各工程における鍋状容器5内の被加熱物(米200および水201)の挙動について説明する。予熱工程では、被加熱物は静止している。昇温工程が始まり、昇温工程後半に至ると、鍋状容器5の内面近傍の被加熱物が沸点に到達し、沸騰により小さな気泡(沸騰泡)が発生する。
【0035】
被加熱物の全体が沸点に到達すると、内部温度センサ16により沸騰状態が検知され、沸騰工程が開始される。沸騰工程では、昇温工程よりも大きな気泡(沸騰泡)が発生する。沸騰工程にて加熱が継続されると、炊飯液(米200から溶け出した成分と水201との混合液)が徐々に少なくなり、炊飯液が消失するとドライアップと判定され、むらし工程へ移行する。むらし工程では、被加熱物は流動性を失っているため、被加熱物は静止している。
【0036】
気泡が発生する昇温工程および沸騰工程では、鍋状容器5の内面で発生した熱は、気泡を含む炊飯液の対流伝熱によって移動し、米200に到達する。沸騰により生じた気泡は、その浮力が被加熱物を対流させる動力となるため、対流伝熱の効率を上げるための重要な要素である。米200全体に均一に熱を伝えるためには、気泡を均一に分散して、被加熱物の対流を促進させる必要がある。
【0037】
次に、第1の比較例の鍋状容器501を、環状の加熱コイル3で加熱した場合の温度分布と気泡の挙動について説明する。図4(A)は、第1の比較例の鍋状容器501を上方から見た図である。この図4(A)には、加熱コイル3の配置部分および鍋状容器501の内面の高温部分を、それぞれ斑点状のハッチングで示している。図4(B)は、第1の比較例の鍋状容器501および加熱コイル3を示す断面図であり、加熱時の気泡の状態を合わせて示している。図4(C)は、鍋状容器501の内面の表面形状を示す模式図である。
【0038】
第1の比較例の鍋状容器501は、底部50の全体が水平な平面で構成されている。また、底部50の表面は、図4(C)に模式的に示すように、微細な凹凸形状を有さない平滑面である。その他の点では、第1の比較例の鍋状容器501は、第1の実施の形態の鍋状容器5と同様に構成されている。
【0039】
この鍋状容器501を環状の加熱コイル3で加熱した場合、鍋状容器501の内面のうち、加熱コイル3の内周端3aと外周端3bとの中間位置の上に位置する部分の磁束密度が高くなり、最も高温に加熱される。すなわち、図4(A)に符号Aで示す環状の部分が、最も温度が高い部分となる。
【0040】
この場合、環状の高温部分Aで沸騰により局所的に発生した気泡は、鍋状容器501の内面から離脱してそのまま鉛直上方に上昇する。そのため、図4(B)に示すように、気泡の分布に偏りが生じる。その結果、被加熱物の対流による熱伝達が十分に行われず、炊きムラの大きい炊き上がりとなる。
【0041】
次に、この実施の形態1の鍋状容器5の温度分布と気泡の挙動について説明する。図5(A)は、実施の形態1の鍋状容器5を上方から見た図である。図5(A)には、加熱コイル3の配置部分および鍋状容器5の内面の高温部分を、それぞれ斑点状のハッチングで示している。図5(B)は、実施の形態1の鍋状容器5および加熱コイル3を示す断面図であり、加熱時の気泡の状態を合わせて示している。図5(C)は、鍋状容器5の内面の表面形状を示す模式図である。
【0042】
この実施の形態1では、上記の通り、鍋状容器5の内面最下部52aが、加熱コイル3による加熱時に鍋状容器5の内面で最も高温となる。また、内面最下部52aの径方向内側には中央凸部51の傾斜面51bが位置し、内面最下部52aの径方向外側には湾曲部53の湾曲面53aが位置している。
【0043】
このように構成されているため、鍋状容器5の内面最下部52a(最も高温となる部分)で局所的に発生した気泡のうち、一部の気泡は鉛直上方に上昇し、一部の気泡は中央凸部51の傾斜面51bに沿って上昇し、一部の気泡は湾曲部53の湾曲面53aに沿って上昇する。その結果、局所的に発生した気泡を3方向へ均一に分散させることができる。このように気泡を分散させることにより、被加熱物の対流による伝熱を促進し、被加熱物を均一に加熱することができる。その結果、炊きムラのない飯を炊き上げることができる。
【0044】
なお、図5(C)に模式的に示すように、鍋状容器5の底部50の内面(すなわち平面51a、傾斜面51b、内面最下部52aおよび湾曲面53a)は、いずれも平滑面Fである。底部50の内面に凹凸形状を設けた構成については、図8を参照して後述する。
【0045】
このように、この実施の形態1の炊飯器100では、鍋状容器5の内面最下部52aと、鍋状容器5の内面で最も高温となる部分が一致している。以下では、鍋状容器5の内面最下部52aと、鍋状容器5の内面で最も高温となる部分とが一致しない場合について説明する。
【0046】
図6(A)は、第2の比較例の鍋状容器502を上方から見た図である。図6(B)は、第2の比較例の鍋状容器502および加熱コイル3を示す断面図であり、加熱時の気泡の状態を合わせて示している。
【0047】
第2の比較例の鍋状容器502では、内面最下部52aが、鍋状容器502の内面で最も高温となる部分(加熱コイル3の内周端3aと外周端3bとの中間位置)よりも径方向内側に位置している。言い換えると、鍋状容器502の内面で最も高温となる部分は、湾曲部53の湾曲面53a上にある。
【0048】
この第2の比較例では、鍋状容器502の内面で最も高温となる部分で発生した気泡のうち、多くが湾曲部53の湾曲面53aに沿って上昇し、中央凸部51の傾斜面51bに沿って上昇する気泡は少ない。その結果、鍋状容器502の周壁部55側(径方向外側)では気泡が多くなり、中央部側(径方向内側)では気泡が少なくなる。すなわち、鍋状容器502の内部での気泡の分布が不均一になる。
【0049】
図7(A)は、第3の比較例の鍋状容器503を上方から見た図である。図7(B)は、第3の比較例の鍋状容器503および加熱コイル3を示す断面図であり、加熱時の気泡の状態を合わせて示している。
【0050】
第3の比較例の鍋状容器503では、内面最下部52aが、鍋状容器503の内面で最も高温となる部分(加熱コイル3の内周端3aと外周端3bとの中間位置)よりも径方向外側に位置している。言い換えると、鍋状容器503の内面で最も高温となる部分は、中央凸部51の傾斜面51b上にある。
【0051】
この第3の比較例では、鍋状容器503の内面で最も高温となる部分で発生した気泡のうち、多くが中央凸部51の傾斜面51bに沿って上昇し、湾曲部53の湾曲面53aに沿って上昇する気泡は少ない。その結果、鍋状容器503の中央部側(径方向内側)では気泡が多くなり、周壁部55側(径方向外側)では気泡が少なくなる。すなわち、鍋状容器503の内部での気泡の分布が不均一になる。
【0052】
これに対し、上述した実施の形態1の鍋状容器5(図5)では、鍋状容器5の内面で最も高温となる部分が内面最下部52aにあるため、当該最も高温となる部分で発生した気泡が、鉛直方向と、中央凸部51の傾斜面51bに沿った方向と、湾曲部53の湾曲面53aに沿った方向とにそれぞれ均等に上昇する。このように気泡を分散させることで、被加熱物の対流による伝熱を促進し、被加熱物を均一に加熱することができる。
【0053】
なお、内面最下部52aの径方向の幅D、すなわち内周端と外周端との距離は、1cm未満であることが望ましい。これは、一般にIH式の炊飯器100で発生する気泡の直径は1cm程度であり、内面最下部52aの幅を気泡の直径よりも小さくすることで、中央凸部51の傾斜面51bと湾曲部53の湾曲面53aとに沿って上昇する気泡の割合を増加させ、気泡を均一に分散する効果を高めることができるためである。
【0054】
次に、この実施の形態1における鍋状容器5の望ましい構成例について説明する。図8(A)は、この鍋状容器5を上方から見た図である。図8(A)には、加熱コイル3の配置部分および鍋状容器5の内面の高温部分を、それぞれ斑点状のハッチングで示している。図8(B)は、鍋状容器5および加熱コイル3を示す断面図であり、加熱時の気泡の状態を合わせて示している。図8(C)は、鍋状容器5の底部50の内面の表面形状を示す模式図である。
【0055】
図8(B)に示すように、鍋状容器5の断面形状は、図5(B)に示した鍋状容器5の断面形状と同じである。但し、図8(C)に模式的に示すように、鍋状容器5の底部50の内面(すなわち平面51a、傾斜面51b、内面最下部52aおよび湾曲面53a)には、微細な凹凸形状60が設けられている。
【0056】
微細な凹凸形状60とは、深さが1cm以下(例えば0.5mm)の複数の凹部を配列した形状、または高さが1cm以下(例えば0.5mm)の複数の凸部を配列した形状である。
【0057】
このように、底部50の内面に微細な凹凸形状60を設けると、それぞれの凹部または凸部が気泡の核(沸騰核)となるため、気泡が鍋状容器5の底部50の内面から離脱しやすくなり、気泡の径が小さくなる。そのため、鍋状容器5の底部50の内面を平滑面とした場合よりも、気泡の分布をさらに均一化することができる。
【0058】
鍋状容器5の内面最下部52aが鍋状容器5の内面で最も高温となることは、図5を参照して説明したとおりである。また、内面最下部52aの径方向内側には中央凸部51の傾斜面51bが位置し、内面最下部52aの径方向外側には湾曲部53の湾曲面53aが位置することも、図5を参照して説明したとおりである。
【0059】
ここで、鍋状容器5の底部50の内面に微細な凹凸形状60を設けることで気泡の分布を均一化できる理由について、図9(A)および(B)を参照して説明する。図9(A)は、底部50の内面を平滑面Fとした場合の挙動を示す模式図である。図9(B)は、底部50の内面に微細な凹凸形状60を設けた場合を示す模式図である。
【0060】
図9(A)に示すように、底部50の内面が平滑面Fである場合には、内面最下部52a(最も高温となる部分)で発生して平滑面Fに到達した気泡は、平滑面Fから離脱せずにそのまま平滑面Fに沿って移動しやすい。平滑面F上には、気泡を離脱させる起点となるものがないためである。また、気泡の径が大きくなりやすい。
【0061】
これに対し、図9(B)に示すように、底部50の内面に微細な凹凸形状60を設けた場合には、凹凸形状60に含まれる微細な凸部または凹部を起点として、底部50の内面から上方に離脱しやすい。そのため、気泡が底部50の内面から離脱する箇所が増加し、また気泡の径も小さくなる。その結果、より均一に気泡を分布させることが可能になる。
【0062】
以上説明したように、本発明の実施の形態1の炊飯器100では、鍋状容器5の底部50が、鍋状容器5の内面で最も下方に位置する内面最下部52aを有しており、この内面最下部52aは、鍋状容器5の内面のうち最も高温となる部分である。そのため、内面最下部52a(最も高温となる部分)で局所的に発生した気泡を分散させて上昇させることができる。このように気泡を鍋状容器5の内部で均一に分散させることにより、被加熱物の対流による伝熱を促進し、被加熱物を均一に加熱することができる。その結果、炊きムラのない飯を炊き上げることができる。
【0063】
また、鍋状容器5の底部50の内面(すなわち平面51a、傾斜面51b、内面最下部52aおよび湾曲面53a)に、深さが1cm以下の複数の凹部、または高さが1cm以下の複数の凸部を形成することにより、気泡が凹部または凸部を起点として底部50の内面から離脱しやすくなり、これにより気泡をより均一に分散することができる。
【0064】
また、鍋状容器5の底部50の中央部に中央凸部51形成され、内面最下部52aが中央凸部51を囲むように環状に形成されているため、内面最下部52aで発生した気泡を径方向内側(中央凸部51側)および外側(周壁部55側)に均一に分散させることができる。
【0065】
また、内面最下部52aの径方向の幅Dが1cm(気泡の大きさ)以下であるため、内面最下部52aの両側の面(傾斜面51bおよび湾曲面53a)に沿って上昇する気泡の割合を増加させることができる。
【0066】
また、底部50が、周壁部55と連続する部分に湾曲部53を有しているため、内面最下部52aで発生した気泡の一部を湾曲部53の内面(湾曲面53a)に沿って径方向外側に分散させることができる。
【0067】
また、中央凸部51が内面最下部52aに向けて傾斜する傾斜面51bを有しているため、内面最下部52aで発生した気泡の一部を傾斜面51bに沿って径方向内側に分散させることができる。
【0068】
また、単一の環状の加熱コイル3で鍋状容器5を加熱するため、炊飯器100の構成が簡単になり、製造コストを低減することができる。
【0069】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について説明する。上述した実施の形態1では、単一の環状の加熱コイル3を用いて鍋状容器5を加熱したが、この実施の形態2では、2つの加熱コイル(第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32)を用いて鍋状容器5Aを加熱する。
【0070】
図10(A)は、実施の形態2の鍋状容器5Aを上方から見た図である。この図10(A)では、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32の配置部分、並びに鍋状容器5Aの内面の高温部分を、それぞれ斑点状のハッチングで示している。図10(B)は、鍋状容器5、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32を示す断面図であり、加熱時の気泡の状態を合わせて示している。
【0071】
第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32は、鍋状容器5Aの中心軸を中心として、互いに同軸に形成された環状のコイルである。但し、第2の加熱コイル32は、第1の加熱コイル31の径方向外側に配置されている。
【0072】
第1の加熱コイル31は、鍋状容器5Aの底部50の下面に対向するように配置されており、第2の加熱コイル32は、鍋状容器5Aの湾曲部53の外周面に対向するように配置されている。第1の加熱コイル31は内周端31aと外周端31bとを有し、第2の加熱コイル32は内周端32aと外周端32bとを有している。
【0073】
第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32にそれぞれ電流(高周波電流)を流すと、それぞれの電流によって磁界が生じる。鍋状容器5Aの内面では、第1の加熱コイル31と第2の加熱コイル32との間の環状の部分A(図10(A))において、両加熱コイルの磁界の相互作用により磁束密度が最も高くなる。
【0074】
すなわち、鍋状容器5Aの内面で最も高温となる部分は、第1の加熱コイル31と第2の加熱コイル32との間の環状の部分Aである。より具体的には、第1の加熱コイル31の外周端31bと、第2の加熱コイル32の内周端32aとの間の部分である。
【0075】
そのため、この実施の形態2では、鍋状容器5Aの内面最下部52aは、第1の加熱コイル31と第2の加熱コイル32との間に対応する位置に、環状に配置されている。
【0076】
また、内面最下部52aは径方向に一定の幅Dを有し、中央凸部51の周囲を囲むように環状に延在している。内面最下部52aの幅Dは、第1の加熱コイル31と第2の加熱コイル32との間隔に対応する。内面最下部52a幅Dは、例えば1cm以下が望ましい。
【0077】
このように構成されているため、鍋状容器5Aの内面最下部52aで発生した気泡のうち、一部の気泡は鉛直上方に上昇し、一部の気泡は中央凸部51の傾斜面51bに沿って上昇し、一部の気泡は湾曲部53の湾曲面53aに沿って上昇する。その結果、高温部分で局所的に発生した気泡を3方向へ均一に分散させることができる。このように気泡を分散させることにより、被加熱物の対流による伝熱を促進し、被加熱物を均一に加熱することができる。
【0078】
また、鍋状容器5Aの底部50の内面(すなわち平面51a、傾斜面51b、内面最下部52aおよび湾曲面53a)に、実施の形態1で説明した微細な凹凸形状60を設けてもよい。このようにすれば、内面最下部52aで発生した気泡が、微細な凹凸形状60の凹部または凸部を起点として底部50の内面から離脱しやすくなるため、気泡をより均一に分散することができる。
【0079】
実施の形態2の炊飯器の構成は、上述した鍋状容器5A、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32を除き、実施の形態1の炊飯器と同様である。
【0080】
以上説明したように、本発明の実施の形態2の炊飯器では、鍋状容器5Aを、径が異なる第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32によって加熱する。そのため、各加熱コイルを流れる電流による磁束の相互作用で高い磁束密度を実現し、鍋状容器5Aでの発熱量を増加させることができる。
【0081】
また、鍋状容器5Aの内面最下部52aが、第1の加熱コイル31と第2の加熱コイル32との間(すなわち磁束密度が最も高くなる部分)に配置されているため、内面最下部52aで発生した気泡を分散させ、被加熱物の対流による伝熱を促進することができる。そのため、被加熱物を均一に加熱することができ、炊きムラのない飯を炊き上げることができる。
【0082】
なお、ここでは、第1の加熱コイル31および第2の加熱コイル32によって鍋状容器5Aを加熱する構成について説明したが、3つ以上の加熱コイルを用いてもよい。この場合も、各加熱コイルを流れる電流による磁束の相互作用で高い磁束密度を実現し、鍋状容器5Aでの発熱量を増加させることができる。
【0083】
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3について説明する。実施の形態3は、加熱コイル35,36(第1の加熱コイル35および第2の加熱コイル36)の配置が、実施の形態1の加熱コイル3および実施の形態2の加熱コイル31,32と異なるものである。
【0084】
図11(A)は、実施の形態3の鍋状容器5Bを上方から見た図である。この図11(A)では、第1の加熱コイル35および第2の加熱コイル36の配置部分、並びに鍋状容器5Bの内面の高温部分を、それぞれ斑点状のハッチングで示している。図10(B)は、鍋状容器5、第1の加熱コイル35および第2の加熱コイル36を示す断面図である。
【0085】
第1の加熱コイル35は、鍋状容器5Bの中心軸を中心として環状に形成されている。第2の加熱コイル36は、第1の加熱コイル31の径方向外側に中心を有し、その中心の周りに環状(より具体的には楕円形)に形成されている。ここでは、単一の第1の加熱コイル35の周囲に、4つの第2の加熱コイル36が等間隔で配置されている。
【0086】
第1の加熱コイル35および4つの第2の加熱コイル36にそれぞれ電流(高周波電流)を流すと、それぞれの電流によって磁界が生じる。鍋状容器5Bの内面では、第1の加熱コイル35と4つの第2の加熱コイル36のそれぞれとの間の楕円形状の部分A(4箇所)で、両加熱コイルの磁界の相互作用により磁束密度が最も高くなる。
【0087】
すなわち、鍋状容器5Bの内面で高温となる部分は、第1の加熱コイル35と各第2の加熱コイル36との間の楕円形状の部分A(4箇所)である。また、その中でも、楕円形状の部分Aの中心が最も高温となる。
【0088】
そのため、この実施の形態3では、鍋状容器5Bの内面最下部52aは、第1の加熱コイル35と各第2の加熱コイル36との間の部分を通るように、環状に形成されている。上記の楕円形状の部分Aの中心P(図11(B))は、内面最下部52a内に位置している。なお、内面最下部52aの幅Dは、実施の形態1および実施の形態2と同様に、1cm以下が望ましい。
【0089】
このように構成されているため、鍋状容器5Bの内面最下部52aで局所的に発生した気泡のうち、一部の気泡は鉛直上方に上昇し、一部の気泡は中央凸部51の傾斜面51bに沿って上昇し、一部の気泡は湾曲部53の湾曲面53aに沿って上昇する。その結果、高温部分で局所的に発生した気泡を3方向へ均一に分散させることができる。このように気泡を分散させることにより、被加熱物の対流による伝熱を促進し、被加熱物を均一に加熱することができる。
【0090】
また、中心が互いに異なる第1の加熱コイル35および4つの第2の加熱コイル36で鍋状容器5Bを加熱するため、鍋状容器5Bにおいて高温となる領域を広げることができる。その結果、より均一に被加熱物を加熱することができる。
【0091】
なお、ここでは4つの第2の加熱コイル36を用いたが、第2の加熱コイル36の数は4つ未満でもよく、4つより多くてもよい。被加熱物を均一に加熱するためには、複数の第2の加熱コイル36が、第1の加熱コイル35の周方向に等間隔に配置されていることが望ましい。
【0092】
また、鍋状容器5Bの底部50の内面(すなわち平面51a、傾斜面51b、内面最下部52aおよび湾曲面53a)に、実施の形態1で説明した微細な凹凸形状60を設けてもよい。このようにすれば、内面最下部52aで発生した気泡が、微細な凹凸形状60の凹部または凸部を起点として底部50の内面から離脱しやすくなるため、気泡をより均一に分散することができる。
【0093】
実施の形態3の炊飯器の構成は、上述した鍋状容器5B、第1の加熱コイル35および第2の加熱コイル36を除き、実施の形態1の炊飯器と同様である。
【0094】
以上説明したように、本発明の実施の形態3の炊飯器では、鍋状容器5Bを、中心が互いに異なる第1の加熱コイル35および複数の第2の加熱コイル36によって加熱する。そのため、鍋状容器5Bにおいて高温となる領域を広げ、より均一に被加熱物を加熱することができる。
【0095】
以上、本発明の望ましい実施の形態について具体的に説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良または変形を行なうことができる。
【0096】
例えば、上述した実施の形態1〜3では、具体的な加熱コイルの形状を例にとって説明したが、加熱コイルの形状は上述した例に限定されるものではない。すなわち、鍋状容器の内面で最も下方に位置する内面最下部が、鍋状容器の内面で最も高温となる部分であれば、加熱コイルの形状は他の形状でもよい。但し、加熱コイルとしてIH(誘導加熱)式の加熱コイルを用いれば、エネルギー消費量が少なく、加熱効率が良いというメリットが得られる。
【符号の説明】
【0097】
1 本体、 2 容器カバー、 21 底部、 22 周壁部、 23 孔部、 3 加熱コイル(加熱部)、 3a 内周端、 3b 外周端、 4 鍋底温度センサ、 5 鍋状容器(容器)、 50 底部、 51 中央凸部(凸形状部)、 51a 平面、 51b 傾斜面、 52a 内面最下部、 53 湾曲部、 53a 湾曲面、 55 周壁部、 6 ヒンジ部、 7 時間計測部、 8 制御部、 9 蓋パッキン、 10 蓋体、 11 外蓋、 12 内蓋、 12a 孔部、 12b 蒸気口、 13 係止材、 14 カートリッジ、 15 操作表示部、 16 内部温度センサ、 31,35 第1の加熱コイル(加熱部)、 32,36 第2の加熱コイル(加熱部)、 100 炊飯器、 200 米、 201 水。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図11