(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面などを用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記述内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同じものを指す符号は異なる図面間で共通して用いる。
【0022】
(実施の形態1)
本発明は、目的物を精製するための装置及び精製管に関するものである。以下、
図1、
図2、
図3を用いて具体的な説明を行う。
【0023】
図1、2、3は、本発明の精製装置を模式的に示した断面図である。
【0024】
本発明の精製装置100は、試料を気化し、目的物質を精製、回収するための精製部110と、試料を気化し、精製するための温度調節手段120と、真空排気手段130と、を有する。なお、本明細書で試料とは、目的物質、不純物、及び溶媒等が混在している物質のことを示す。
【0025】
図1に示すように、温度調節手段120は、精製部110に近接して設けられており、精製部110は温度調節手段120により温度勾配を付けられる。具体的には、試料が全て気化する温度領域、目的物質が析出又は凝縮する温度領域など、目的物質を精製できるように、精製部110は温度勾配を付けられる。温度勾配は、一方向に温度が低くなるようにしてもよいし、精製部110の中央を高温領域となるようにし、両方向に温度が低くなるようにしてもよい。
【0026】
精製部110で気化した試料は、蒸気圧の低い方へ拡散していく。蒸気圧は一般に温度の上昇とともに増大する。したがって、気化した試料は温度勾配に従い温度の低い方へ拡散していく。すなわち、気化した試料は精製管内の圧力及び温度勾配に従い、液体または固体に状態変化する温度で液体として凝縮するかまたは固体として析出する。なお、試料が気化する温度領域は、精製部110の最も高温の領域となる。
【0027】
温度調節手段120としては、ヒーター、ホットプレート等を用いればよく、精製部110に近接して(例えば、試料を気化する精製管の近傍等)設ければよい。なお、
図1では温度調節手段120を精製部110に近接して1つのみ設けた場合を示したが、本発明はこれに限らず、複数個設けても構わない。温度調節手段120の設置場所や個数は、適宜変更可能である。また、精製部110にかけた温度勾配の状態を維持できるように、保温手段や、精製部110を囲う保護カバー等を設けるのが好ましい。
【0028】
精製部110の温度調節をする際に、試料が気化する温度、目的物質が析出又は凝縮する温度等の温度領域を最適な温度に設定する必要がある。これは、目的物質の分解点、昇華点、又は沸点等を調べ、設定すればよい。
【0029】
真空排気手段130としては、真空ポンプを用いることができ、その中でもロータリーポンプ、油拡散ポンプ、ターボ分子ポンプ、クライオポンプなどを用いることができる。
【0030】
本発明の精製装置100の別の形態としては、
図2に示すように、試料を気化し、目的物質を精製、回収するための精製部110と、試料を気化し、精製するための温度調節手段120と、真空排気手段130と、精製部110を格納した真空容器140とを有する。
【0031】
精製部110を格納した真空容器140は、真空排気手段によってその内部を減圧させた時に形を変えないことと、精製時の高温に耐えられる耐熱性が求められる。その素材としては、耐熱性の樹脂や、ガラス、金属や合金などを用いることができる。
【0032】
本発明の精製装置100の別の形態としては、
図3に示すように、試料を気化し、目的物質を精製、回収するための精製部110と、試料を気化し、精製するための温度調節手段120と、真空排気手段130と、精製部110を格納した真空容器140と、気体供給手段150とを有する。気体供給手段150から供給する気体としては、アルゴン、窒素等の不活性ガスを用いればよい。これによって、試料の気化による内圧だけに頼ることなく、精製部110内部に物質の流れを作ることができる。
【0033】
次に、本発明の精製部110について、
図4と
図5を用いて詳しく説明する。
図4は精製部110が有する2つの精製管210と220と、これら2つの精製管を連結する連結部材310の斜視図を示したものである。
図4における連結部材310内部における、2つの精製管の連結状態を示すため、
図5においては、連結部材310内部の模式図を示している。
【0034】
精製部110には、
図4に示す実線の両方向矢印のような温度勾配が付けられる。
図4に示す実線は、紙面に対して右から左へと一方向に温度が低下していることを示している。第1の精製管210内の試料を配置する場所には、精製部110において最も高い温度がかけられる。
【0035】
本実施の形態では第1の精製管210に隣接して、目的物質を回収するための第2の精製管220を配置する。なお、本発明はこの限りでなく、第1の精製管210と第2の精製管220以外に、例えば、第3の精製管を第2の精製管に連結されるように配置しても構わない。目的物質を回収するための精製管を配置した領域が、予め調べた目的物質が析出又は凝縮する温度になればよい。
【0036】
第1の精製管210、及び第2の精製管220の基本構造は、円筒形の中空管である。さらに、第1の精製管210、及び第2の精製管220は、気化した試料(目的物質及び不純物を含む)が通過できるように、少なくとも隣接する精製管と連結部材によって連結される端部には開口が設けられている。精製管としては、樹脂、ガラス、石英、金属、合金等からなる中空管を用いるのが好ましい。また、本発明の精製管はこれに限らず、試料や目的物質及び不純物と反応しない材料で、且つ目的物質の回収時に目的物質中に混入せず、実施温度に耐えうる材質であればよい。
【0037】
図4および
図5では、第1の精製管210の右側は開口されておらず、精製管210の左側及び第2の精製管220の両端部に開口が設けられている。そして、2つの精製管210と220とが、これら2つの精製管を連結する連結部材310によってねじ方式によって連結されている。
【0038】
本明細書において、ねじ方式は次のように定義する。すなわち、雄ねじと雌ねじを組み合わせて固定する連結の方式であり、雄ねじは円筒や円錐の面に沿って螺旋状の突起が設けられており、雌ねじは雄ねじに対応するように円筒や円錐の面に沿って螺旋状の溝が設けられたものであり、雄ねじを雌ねじに挿入することで固定される。
【0039】
図5に示すように、第1の精製管210は、第1の端部211、中央部、第2の端部212の領域を有しており、第2の端部212の付近には、開口と雄ねじの突起形状215が設けられている。第2の精製管220は、第3の端部223、中央部、及び第4の端部224の領域を有しており、第3と第4の端部とには、それぞれ開口が設けられ、前記第3の端部付近には雄ねじ形状225が設けられている。また、連結部材310は、ねじ形状215および225に適合する雌ねじの溝315を有しており、端部212は端部223とねじ形状215、225、315によって、連結部材310に覆われながら連結されている。なお、
図5では、精製管側が雄ねじ、連結部材側が雌ねじとなる組み合わせの例が記載されているが、精製管側が雌ねじ、連結部材側が雄ねじとなる組み合わせでもよい。
【0040】
図6は、
図4の連結部の断面図を示している。
図6(A)は、連結部材310を中央部で紙面に垂直に切断したときの断面図である。
図6(B)は、連結部材310を中央部で紙面と平行に切断した時の断面図である。また
図6(C)は、連結部材310に精製管210および220を挿入した状態で、連結部材310を中央部で紙面と平行に切断した時の断面図である。
【0041】
本発明の効果を得るためには、本発明の連結部材310は、ねじの部位を含む形で2つ以上の部品に分割できる構造を有していることが必要である。例えば、
図7に示されるように、連結部材310のほぼ中央において2つの部品に分割できる方式でもよい。これによって、精製後に連結部材と連結された精製管を容易に取り外すことができる。
【0042】
連結部材を分割することによって取り外しを容易にできる原理は、次のように説明できる。
図8に示すように、精製中の熱勾配や圧力差によって、精製中に第2の精製管220が斜めにずれ、雄ねじと雌ねじが正常位置から斜めにずれてしまった場合、600で示される位置において雄ねじと雌ねじが接触し強い応力が発生する。この場合、ねじの螺旋方向に回転させて取り外そうとしても、この強い応力のために、雄ねじを雌ねじの溝に沿って進ませることができず、したがって取り外すことができない。ところが、連結部材310を分割できれば、600で示される位置の応力は簡単に開放でき、容易に取り外すことができるのである。また、連結部材を分割できる構造にしておけば、発生する応力は連結部材の分割面をずらす力として開放されるので、そもそもねじを回す力を妨げる応力が蓄積されにくい、という効果があることが見出された。
【0043】
ねじ方式の連結部材を分割する別の利点として、連結作業が容易になることが挙げられる。連結部材が分割できない場合、2つの精製管を連結させるためには、精製管のねじ部を一つずつ、連結部材の端からねじ回ししながら送りこまなければならない。これに対して、連結部材が分割できる場合、例えば
図8のような分割ができる雌ねじの連結部材と雄ねじの精製管の場合で説明すると、分割された部品を設置し、精製管をその上から分割された部品の雌ねじに合うように置いて仮設置ができ、さらにその上からもう片方の分割された連結部材をねじが合致するように組み合わせることで連結が完成できる。したがって、連結部材の端から精製管をねじ回しして送り込む必要と手間がない。この利点は、特に量産装置などで巨大な精製管が必要となるときに大きな利点となる。大型装置では、連結部材を温度調節手段(ヒーターや炉)側に固定してもよい。
【0044】
本発明によれば、精製工程の前に2つの精製管を連結部材によって簡便に連結でき、また、真空引きなどの気流によって精製管同士の位置関係がずれることがなく、設置が容易である。さらに、精製後に簡便に取り外すことができる。
【0045】
また、本発明によれば、精製工程の前に2つの精製管をお互いの相対的な位置が変わらないように固定した後に、精製装置内に設置でき、常に一定の位置関係を保つことができる。このため、繰り返し、同じ精製を実施した際にも、再現性よく精製ができる。
【0046】
また、本発明によれば、精製管同士を位置的に固定できるため、複数の管を連結したものをあたかも一つの管として扱えるようになるため、原料の配置や精製管同士の相対的な位置を確定したのちに、所望の位置に精製部を配置できる。
【0047】
また、本発明によれば、第1の精製管210の第2の端部212と、第2の精製管220の第3の端部223との間の空間は、連結部材によって覆われているので、内部で気化した材料が精製管の外に漏れだす量を大幅に低減できる。これにより、材料ロスが少ないので高い収率で精製できる。
【0048】
また、本発明によれば、内部で気化した材料が精製管の外部に漏れだす量を低減でき、真空容器(外管)140の汚染が低減できるので、精製装置を何度も使う場合に、装置の洗浄などの手間を低減できる。
【0049】
また、本発明によれば、精製管の外部に漏れだす量を低減できるので、高い収率で精製物を得ることができる。さらに、精製後に精製管を切り離すことができるので、精製物を回収しやすい。加えて、ねじ部を活用して適合するねじキャップなどで蓋をすれば、精製管を試料瓶として使うこともでき、保管が容易である。
【0050】
また、本発明によれば、汚染が低減でき、洗浄がより確実に行えるので、材料のコンタミネーションを防ぐことができるために高純度の精製が可能となる。
【0051】
本発明の精製装置は、
図9に示すように、本発明の精製管の端部212、223、224は精製管の中央部分の端部よりも細くしてあってもよい。このような構造にすることで、精製管から試料や目的物質の漏れを防ぐことができる。特に、精製中の加熱によって液体状態になる試料は、精製中に流動性を持ち、精製管の下側を自由に濡れ広がるが、
図9のように端部を中央部分よりも細くしてあれば、精製管中央部の下側の空間が液貯めとなるために、端部をオーバーフローして隣の精製管の析出物と混合しにくい。なお、
図9の構造でこの効果を得るためには第1の精製管210の第1の端部211は、試料の漏出を防ぐために塞いでおく(開口していない)必要がある。
【0052】
図5や
図9において連結される端部212と223の開口の大きさは、異なっていてもよいが、連結部材のねじ形状の作りやすさやねじの隙間からの漏れを考えた場合、ほぼ同じであることが好ましい。
【0053】
また、本発明において、第1の精製管の第2の端部212と第2の精製管の第3の端部223は、
図5のように接していなくてもよいし、
図10(A)のように接していてもよい。接触させる場合は、
図10(B)のように端部212と223の両方とも曲率を持たせて、ポイント290で互いに接触させてもよい。析出した材料による接着が強い箇所は、微小な空間に析出した箇所である。例えば、
図10(C)の黒点部分に析出した場合は接触部付近の接着力が強いが、その面積が小さいため、ねじによる外力によって砕きやすく、2つの精製管を取り外しやすい効果が得られる。
【0054】
また、本発明において、第1の精製管の第2の端部212と第2の精製管の第3の端部223は、ガスケットなどのシールを介して接していてもよい。本発明書において、シールとは精製部外部への液体や気体の漏れや精製部内部への液体や気体の侵入を防ぐ部材と定義し、ガスケットはボルトや外圧によって固定されるシールの一種、と定義する。ガスケットの形状としては、外観および断面が円形のOリングなどを好ましく用いることができる。また、ガスケットの断面が四角形でもよく、外管の形状に合わせて四角形など円形以外の外観のガスケットでもよい。ガスケットの材質としては、精製時の温度に耐えられればゴムや樹脂材料であってもよいが、精製温度が高温であれば、金属や膨張黒鉛、あるいはこれらの積層構造からなるガスケットを好ましく用いることができる。
【0055】
例えば、
図11(A)に示すように、第1の精製管の第2の端部212と第2の精製管の第3の端部223のシールとして、Oリング410を好ましく用いることができる。その接し方としては、
図11(B)に示すように2つの平坦な端部がOリングと接するように接触させてもよい。
図11(C)に示すように、2つの端部にOリングが入る溝を形成しておいて、そこにOリングが嵌め込まれるようにOリングと接触させてもよい。
図11(B)の方式であると、Oリングと端部との接触面積が小さいため外しやすい利点がある。
図11(c)の方式であると、Oリングが端からずれにくいのでOリングの設置が容易である利点がある。また、
図11(D)のように片側にOリングが入る溝を形成しておいて、そこにOリングをはめこみ、もう一方は平坦な端部としてもよい。この場合は、設置性と精製後の外しやすさを両立できる利点がある。Oリングによって、密閉性が十分に保たれた場合は、
図11(E)に示すように、気化した試料は精製管の外に出ることができないので、材料が付着するのは黒点で示した内側のみである。したがって、ねじ方式によって2つの精製管を容易に取り外しできるとともに、外管の汚れを完全に防ぐことができるために、洗浄の手間がなく、作業性が大幅に向上する。
【0056】
第1の精製管210の中央部、及び第2の精製管220の中央部については、一様の管内径、及び管外径を持つ円柱状の中空管とすればよい。なお、本発明はこれに限定されず、中央部が多様な管内径の領域を有してもよい。
【0057】
本発明は、隣接する精製管同士は同一形状でなくともよい。また、本発明は、一つの精製管が隣接する他の精製管に連結部材とねじ方式で連結されればよく、第1の端部、中央部、及び第2の端部の気化した試料の流路と垂直方向の断面は、同心円でなくともよい。なお、第1の端部、中央部、及び第2の端部の気化した試料の流路と垂直方向の断面が同心円である方が、配置する際に簡便になる。
【0058】
以上に述べたように、本発明の構成にすることで、1.目的物質を高い純度で精製でき、2.高い収率で精製でき、3.再現性が高く精製でき、4.精製管の設置が容易であり、5.精製物の回収と保管が容易であり、6.装置の洗浄の手間が少ない精製装置を提供できる。
【0059】
(実施の形態2)
本実施の形態では、精製部を直接に真空排気手段と連結した構成について、
図12を用いて説明する。
【0060】
本実施の形態の精製装置6000は、精製部6010と、温度調節手段6020と、真空排気手段6030を有する。
【0061】
精製部6010は、試料を配置するための第1の精製管6011、及び目的物質を回収するための第2の精製管6012と第3の精製管6013を有する。本実施の形態では、実施の形態1のように精製部6010を格納し真空を維持する外管がないため、精製管6011〜6013はそれ自体が、真空を維持できなければならない。精製管の材料は、ガラス、石英などのほか、試料や目的物質及び不純物と反応しない材料で、且つ目的物質の回収時に目的物質中に混入せず、実施温度に耐えうる材料であり、また、減圧しても強度を保てる材料であればよい。真空に耐えやすいよう、
図12では、精製管の形状に丸みを帯びさせていているが、真空に対する強度があれば、角ばった形状でもよい。
【0062】
精製部6010は、第1の精製管6011が隣接する第2の精製管6012に連結部材6031によってねじ方式によって連結されており、第2の精製管6012が隣接する第3の精製管6013に連結部材6032によってねじ方式によって連結されている。真空を保つために、精製管同士のつなぎ目には、外気との通気を遮断するためのシールが必要であり、Oリングなどの形状のガスケットを好適に用いることができる。
図12の中には、6051、6052で示してある。また、
図12の例では、精製管同士のみでなく、精製管6013と連結管6060も、連結部材6033とOリングなどのガスケット6053を用い、ねじ方式により連結されている。
【0063】
図13は、
図12の精製管の連結部の断面図を示している。
図13(A)は、連結部材6031を中央部で紙面に垂直に切断したときの断面図である。
図13(B)は、連結部材6031を中央部で紙面と平行に切断した時の断面図である。また
図13(C)は、連結部材6031に精製管を挿入した状態で、連結部材を中央部で紙面と平行に切断した時の断面図である。
【0064】
Oリングなどのガスケットの材質としては、精製温度において真空が保てるものであればよい。精製温度が100℃以下であれば、ゴムを用いることができる。この場合は、精製中や洗浄時の腐食に強いPTFEゴムなどの材質を好ましく用いることができる。精製温度が100℃〜350℃の場合は、この温度領域に耐えられる耐熱性の樹脂材料を用いればよい。精製温度が350℃以上の高温であれば、金属Oリングや膨張黒鉛などを好適に用いることができる。金属Oリングの例としては金属製の中空Oリングなどがあり、外圧によってその形状をかえることで気密性を保つことができる。
【0065】
本実施の形態では、精製部6010は3つの精製管で構成したが、本発明はこれに限らず、4つ以上の精製管で構成されていてもよい。
【0066】
温度調節手段6020は、精製部6010に近接して設ける。温度調節手段6020としては、少なくとも試料を気化する温度に加熱できるよう、ヒーター、ホットプレート等の加熱器を設ければよい。また、試料が配置される第1の精製管6011に、精製部6010のうち、最も高い温度がかけられる。
【0067】
また、精製部6010に温度勾配をかけた後、温度勾配の状態を保つため、精製部6010全体に保温機能のついた温度調節手段6020を設けてもよい。また、精製部6010を囲むように金属カバー、ガラスウール、セラミック等の保護カバーを設け、温度勾配の状態を保ってもよい。
【0068】
また、本実施の形態では、真空排気手段6030と精製部6010は配管6060によって連結されている。真空経路の途中に低温に保持できる排気トラップを設けておけば、気化した試料の一部が精製部6010で冷やしきれずに排出されてきた場合に捕捉できるため、真空排気手段6030へ吸い込まれて、設備が腐食などのダメージを受けるのを防止できる。
【0069】
また、本実施の形態では、真空排気手段6030側と逆側の精製管6011の右側の端部は塞がれており、内部の真空を保持できる構成としている。このような構成の場合、温度勾配による圧力分布と、試料の気化時に生成する局所的な圧力によって、気化した材料は真空排気手段6030側に運ばれていく。
【0070】
真空排気手段6030によって精製部6010内を真空状態とし、減圧することが可能となる。その結果、試料が気化する温度を下げることができる。すなわち、真空排気手段6030を用いて精製部6010を減圧すると、試料の昇華又は蒸発温度が低下し、大気圧下では気化しない試料も気化させることが可能となる。
【0071】
本発明の効果を得るためには、連結部材6031がねじ部位を含む形で2つ以上の部品に分割できる必要がある。
図14に示すように、連結部材が円筒形の円の中心付近で分割面6070によって2つの部品に分割できるようになっていてもよい。ねじが斜めにずれて雄ねじと雌ねじとの間で応力が発生して取り外しが困難となってしまった場合にも、
図14(C)に示すように、1つの部品を取り外すことによって、応力を容易に開放することができる。
図14(D)は、円筒系の連結部材を斜視したものであるが、2つの部品の取り外しをより容易にするために、連結部材の分割面において外壁から内部のねじ部に貫通する溝6080を設けてもよい。この溝6080に例えばマイナスドライバーのようなものを差し込み、てこの原理で2つの部品を容易に取り外すことができる。すなわち、雄ねじと雌ねじがずれて応力が発生した場合などにおいて、2つの連結部材の分割が困難となってしまった場合においても、このような機構を設けておくことで容易な取り外しが可能となる。なお、溝6080は外壁から差し込むことができれば、ねじ部まで貫通していなくてもその役割を果たしうるし、溝以外の形状であってもよい。
図14(E)は、
図14(D)の裏側の連結部材の分割面6070の近傍にちょうつがいを付けたものの図である。この例のように、組み合わせた位置を固定するための機構を連結部材に備え付けることにより、分割後に部品が散逸・紛失することが防ぐことができるとともに、分割後の部品の前方、後方の位置関係を固定できるために、組み合わせ時に前方と後方を逆に組み合わせてしまうことを防ぐことができる。組み合わせた位置を固定するための機構としては、ちょうつがい以外でもよく、たとえばワイヤ、ツメなどでもよい。
【0072】
図15に示すように、連結部材6031は、その中央部にねじ部をもたない平坦部6090があってもよい。このような構造とすることで、ガスケット6051がねじ溝に入りこむことを防ぎ、2つの精製管の端部と接触しやすくなり、また真空引きした時に平坦部6090から抑えられることによってガスケットが変形・接触して真空を作りやすい状況を作ることができる。この場合にも、本発明の効果を得るためには、連結部材6031がねじ部位を含む形で2つ以上の部品に分割できる必要がある。
図16に示すように、連結部材が円筒形の円の中心付近で2つの部品に分割できるようになっていてもよい。ねじが斜めにずれて雄ねじと雌ねじとの間で応力が発生して取り外しが困難となってしまった場合にも、
図16(C)に示すように、1つの部品を取り外すことによって、応力を容易に開放することができる。
図16(D)は、円筒系の連結部材を斜視したものであるが、2つの部品の取り外しを容易にするために、連結部材の結合断面において外壁から内部のねじ部に貫通する溝6080を設けてもよい。この場合において、溝6080に例えばマイナスドライバーのようなものを差し込み、てこの原理で2つの部品を容易に取り外すことができる。雄ねじと雌ねじがずれて応力が発生した場合などにおいて、連結部材の分割が困難となってしまった場合においても、このような機構を設けておくことで容易な取り外しが可能となる。なお、溝6080は外壁から差し込むことができれば、ねじ部まで貫通していなくてもその役割を果たしうるし、溝以外の形状であってもよい。
図16(E)は、
図16(D)の裏側の連結部材の分割面6070の近傍にちょうつがい6081を付けたものの図である。この例のように、組み合わせ位置を固定するための機構を連結部材に備え付けることにより、分割後に部品が散逸・紛失することが防ぐことができるとともに、分割後の部品の前方、後方の位置関係を固定できるために、組み合わせ時に前方と後方を逆に組み合わせてしまうことを防ぐことができる。組み合わせた位置を固定するための機構としては、ちょうつがい以外でもよく、たとえばワイヤ、ツメなどでもよい。
【0073】
本発明の2つ以上の部品に分割できる連結部材は、分割された2つ以上の部品を組み合わせる際に各部品を固定するための別の部品を用いてもよい。例えば、
図17に示されるように、中空の円筒形で2つの部品に分けられる連結部材の場合、その外周をベルト6100によって締めることで固定してもよい。また、ベルト6100の締めの度合いを調整するために、留め具6110を備えていてもよい。締め付けの強さは、2つの部品が互いに完全に動かなくなるように強く締めてもよいし、2つの部品が互いに少し位置を変えることができるように遊びを設けて緩めに締めてもよい。
【0074】
ベルト6100や留め具6110の材質としては、精製時の温度に耐えられることが好ましい。例えば、高温耐性があるゴム製のOリングや、アルミやステンレスなどの金属を好適に用いることができる。
(実施の形態3)
【0075】
本発明の精製方法と工程順について
図12の精製装置を用いて説明する。まず、2つ以上の部品から成る連結部材を組み立てる。
図16のような2つの部品に分かれた円筒形の連結部材であれば、2つの部品を組み合わせればよい。また、
図17のように、2つの部品を固定する部品もある場合は、固定する工程が含まれてもよい。
【0076】
連結部材を組み立てる別の手法としては、例えば、
図16の方式の連結部材の場合、分割された連結部材6031の片方の部品を使って、その内部の雌ねじ形状に嵌め込む形で、精製管6011と6012の雄ねじを固定し、その次に分割された連結部材のもう片方の部品を精製管6011と6012の雄ねじに覆いかぶせて、精製管6011と6012と連結部材6031を連結しながら連結部材を組み立てる。この方法にすることで、精製管を回して連結部材内部に送り込む工程を省略できるとともに、試料を先に精製管内部に設置していた場合は、ねじ回転が不要であるために、試料の位置が変わることを防ぐことができる。なお、本段落の方法であっても、設置後の増し締めのために精製管6011あるいは6012を多少ねじ回しすることは一般に必要である。したがって、連結方式がねじ方式である連結部材を組み立てる工程と、第1の精製管と第2の精製管とを、前記の組み立てられた連結部材によって連結させる工程とをこの順で行ったものとする。
【0077】
精製対象である試料は、配置可能であれば、真空引きと加熱を開始する前のどのタイミングで設置してもよいが、例えば、精製管同士の連結を行う前に第1の精製管6011の中に設置する。
【0078】
次に、
図12に記載の配置を行う。すなわち、第1の精製管6011と第2の精製管6012を連結部材6031によって、Oリング6051を介して、ねじ方式によって連結・固定する。
【0079】
次に、第2の精製管6012と第3の精製管6013を連結部材6032によって、Oリング6052を介して、ねじ方式によって連結・固定する。
【0080】
次に、横長の連結された6011、6012、6013は、所定の位置にて温度調節手段6020の上に配置される。
【0081】
次に、第3の精製管6013と配管6060を連結部材6033によって、Oリング6053を介して連結・固定する。この連結は、
図12では他の精製管と同じくねじ方式となっているが、そのほかの方式でもよい。
【0082】
次に、配管6060は真空排気手段6030と連結する。
【0083】
次に、真空排気手段によって、精製管1、2、3の中を真空にする。
【0084】
次に、温度調節手段6020によって、温度勾配を形成する。例えば、試料を設置した精製管6011に最も高い温度をかけて、試料から遠ざかるにしたがって温度を低くしていってもよい。高温をかけることによって、試料は気化して真空排気手段6030の方に移動していき、温度勾配によって、精製管6012や精製管6013の内部で冷やされて析出する。 所望量の試料の気化、あるいは析出物の析出ができれば、加熱をやめる。
【0085】
次に、連結部材を2つ以上の部品に分割する。
図16のような2つの部品に分かれた円筒形の連結部材であれば、2つの部品に分ければよい。この工程によって、精製管と連結部材の雄ねじと雌ねじがずれて、強い応力が発生している場合でも、応力を開放できるので、ねじが回らなくなることを防ぐことができる。このとき、
図16(D)の溝6080にマイナスドライバーなどを差し込んで、てこの原理で2つの部品に分割してもよい。また、
図17のように、2つの部品を固定する部品がある場合は、分割の前に固定する部品を外す。
【0086】
次に、精製管を互いに取り外す。第1の精製管6011と第2の精製管6012とOリング6051の接触部分に試料が析出してこれらを接着して取り外しが困難なときは、この連結部において、連結部材の部品を再度組み合わせて連結状態にして、ねじを使って容易に取り外すことができる。これは、ねじを使うことによって接着している試料に強い外力を加えて機械的に破壊でき、接着力を失わせることができるためである。
【0087】
次に、連結管内部の精製された試料を取り出す。 以上の方法および工程順によって、物質を精製することができる。
【実施例1】
【0088】
本発明の精製装置を用いた精製方法及び精製物について、
図18を用いて説明する。
【0089】
図18に示すように、本発明の精製装置9000は、精製部9010、温度調節手段9020、真空排気手段9030を有する。真空排気手段9030は、配管9060と配管連結部9070と第3の精製管の真空ジョイント9080を介して精製部9010と連結されている。
【0090】
精製部9010は、第1の精製管9011と、第2の精製管9012と、第3の精製管9013とを有する。第1の精製管9011の真空排気手段9030側の端部は、中央部よりも細口であり、雄ねじ形状を有する端部となっている。また、第1の精製管9011の真空排気手段9030と逆側の端部は閉じられた構造である。第2の精製管9012は、両側の端部が中央部よりも細口であり、第3の精製管9013は、第2の精製管9012側の端部が中央部よりも細口であり、雄ねじ形状を有する端部となっているものを用いた。
【0091】
第1の精製管9011と第2の精製管9012とは、2つに分割できる連結部材9031によって連結される。第2の精製管9012と第3の精製管9013とは、分割できない連結部材9032によって連結される。
【0092】
真空排気手段9030は、真空計と、コールドトラップ部と、真空ポンプとを有する構成とした。真空ポンプは油拡散ポンプをメインポンプとし、補助ポンプとしてロータリーポンプを有する構成を用いた。
【0093】
まず、第1の精製管9011に試料9111(3.4g)を入れた。試料9111は、構造式(1)で表されるAlqと、不純物と、溶媒との混合物であった。
【0094】
【化1】
【0095】
分割できる連結部材9031として、ねじの深さとピッチが精製管1〜3と適合する雌ねじを有しているナット形状のものを作製し、それを中央付近でレーザーカットすることで作製した。組み合わせた連結部材9031の外径は40mm、長さは44mmである。連結部材9031の材質としては成型加工性と軽量性、熱伝導性に優れるアルミを用いた。熱伝導性が高いことによって、断面積が小さく、析出しやすくなっている連結部内部での材料の析出を抑制し、接続部が材料の析出によって閉塞されることを防ぐことができる。
【0096】
次に、2つの部品からなる連結部材9031を組み立てて、連結部材の外周をステンレス製のホースバンドで固定した。
図19(A)の分割した写真に示されるように連結部材9031の内側は雌ねじとなっており、
図19(B)の結合した写真に示されるように前述の雌ねじの溝が一致するようにナット状に結合できる。組み立てられた連結部材9031は、精製管9011と9012の端部の雄ねじと適合して、精製管9011と9012を連結することができる。
【0097】
次いで、連結部材9031の雌ねじに対して、第1の精製管9011の雄ねじをねじこみ、次いで、第1の精製管9011と逆側から、連結部材9031の雌ねじに対して第2の精製管9012の雄ねじを第1の精製管9011の端部に接触する箇所までねじこむことによって、連結部材9031と第1の精製管9011と第2の精製管9012とを連結した。同様に、連結部材9032の雌ねじに対して、第2の精製管9012の雄ねじをねじこみ、次いで、第2の精製管9012と逆側から、連結部材9032の雌ねじに対して第3の精製管9013の雄ねじを第2の精製管9012の端部に接触する箇所までねじこむことによって、連結部材9032と第2の精製管9012と第3の精製管9013とを連結した。
【0098】
第1の精製管9011として、肉厚3.5mm、全長89mm、中央部外径47mm、端部外径25mm、端部内径18mmの強化ガラスからなる管を用いた。なお、精製管9011の真空ポンプと逆側端は閉じられている。第2の精製管9012として、肉厚3.5mm、全長145mm、中央部外径47mm、端部外径25mm、端部内径18mmの強化ガラスからなる管を用いた。第3の精製管9013として、肉厚3.5mm、全長75mm、中央部外径47mm、端部外径25mm、端部内径18mmの強化ガラスからなる管を用いた。第1〜3の精製管の雄ねじは、高さ1.3mm、ピッチ4.0mmのものを用いた。
【0099】
図20は精製管9011、9012、9013と連結部材9031、9032の連結後の写真の写真を示している。
【0100】
精製管9013と真空接続管9060との連結部は次の様式とした。ゴム製のOリングを備えた金属フランジ部9070を有する金属管をシリコーン栓に通し、このシリコーン栓を精製管9013の左側端部に挿入し、フランジ部が真空ポンプ側になるように設置した。次に、前記ゴム製のOリングを備えた金属フランジと真空接続管とを連結することで、密閉性が高い接続を得た。
【0101】
次いで、真空ポンプ9030にて精製管9011、9012、9013を真空排気し、1x10−2Paまで真空排気した。
【0102】
続けて、温度調節手段9020にて室温から320℃まで30分かけて昇温し、その後3時間加熱を続けた。温度勾配は、精製管9011、9012、9013の順に低くなるように設定し、精製管9013は全体が室温になるように設定した。この温度設定で時間が経つにつれて、精製管9012の内部に黄色の固体が凝縮した。
【0103】
精製終了後、加熱を止め、精製管9011、9012、9013を室温まで冷ました後、精製管9011、9012、9013をゆっくりと大気暴露した。
【0104】
図21は、精製工程後の精製管9011〜9013の写真である。中央の精製管9012に昇華された固体が主に析出しており、左側の精製管9013には若干の固体が析出しており、右側の精製管9011には黒色の埃状の残渣が残っていた。
【0105】
つぎに、連結部材9031を2つの部品に分解した。まず、固定具である外周のホースバンドを外し、続いてマイナスドライバーを分割面に設置された溝に差し込み、てこの原理を使うことで、簡単に連結部材を2つの部品に分解できた。このとき、部品の片側は、精製管9011、9012のねじ部から完全に外れ、片側は精製管9011、9012のねじ部にはまった状態であった。その後、少し力を加えることで、はまった状態の精製管9011、9012のねじ部と連結部材の片側の部品を簡単に取り外すことができた。また、もう一度、連結部材9031の2つの部品を組み合わせてホースバンドで固定し、ねじの原理を使うことによっても簡単に精製管9011、9012のねじ部と連結部材9031を外すことができることも確認できた。
【0106】
次に、連結部材9032と第3の精製管9013の真空ジョイント9080を取り外した。これらは、あまり温度がかかっておらず、周辺の材料の析出量も少ないので、いずれも少し力をくわえることで、簡単に外すことができた。
【0107】
取り外した精製管9012を、内部に析出物9112がある状態で秤量したところ144.4gであった。精製前の精製管9012のみの質量141.2gを差し引いて、析出物は3.2gであった。精製管9013の析出物9113は質量としては0.1g以下であtった。精製管9011の残留物も0.1g以下であった。析出物9112の収率は、3.2g/3.4=94%と高い収率であった。さらに、精製管9012内に析出した析出物9112は、精製管9012の一端からステンレス製のスパチュラを内部に入れて、精製管9012のガラス壁から析出物9112を剥離することによって容易に析出物9112を取り出すことができ、取得できた量は2.9gと析出した量のほぼすべてを回収することができた。
【0108】
この精製装置は、精製管を覆う外管がなく、精製管を直接真空引きする方式のため、使用後に外管を洗浄する手間が省け、また精製管9011、9012、9013のいずれも内部に微細な形状を持たないため、析出した試料の洗浄は、有機溶媒などを用いて容易に行うことができ、装置の洗浄の手間が少ないことが分かった。
【0109】
また、精製管9011の内部にのこっていた、黒色の埃状の残渣をテトラヒドロフラン溶媒に溶かして発光スペクトルを測定したが、発光は全く観測されず、Alqではない固体であることが分かった。このことから、試料9111に含まれていた不揮発性の不純物が残っていたと結論付けられた。
【0110】
また、精製管9012の内部に付着した固体9112をテトラヒドロフランに溶かして発光スペクトルを測定したところ、文献に記載の緑色の発光スペクトルが観測され、高純度のAlqが得られていることが分かった。
【0111】
以上の結果から、本発明の精製装置を用いて精製を行うことで、高い純度の目的物質が高収率で得られることが確認出来た。
【実施例2】
【0112】
本実施例では、構造式(2)で表されるNPDを主成分として含む試料2.12gを精製管9011に入れ、精製温度310℃で精製を実施した以外は、実施例1と同じように精製を実施した。以下、実施例1と異なる様相の部分と結果を記載する。
【化2】
【0113】
NPDは蒸留性で、一度溶融して液体になってから蒸発する性質があり、また、析出するときも液体として析出し、冷えて固体となる。この点において、実施例1の昇華性のAlqを精製する場合と様相が異なる。温度310℃において精製中に、精製部9010の様子を観察すると、
図22の写真で示すように、9110の初期位置においた試料は溶融し、精製管9011の下側を濡れ広がっていた。また、精製管9012内では液体状に析出し、固化した凝集物9112が主に9012の下側に観察された。このように、精製管9011と9012に細い口を設けることで、溶融した試料の液体が精製管9011から精製管9012に濡れ広がって精製された試料9112と混ざりあうことを防止できた。
【0114】
図23は、精製後に連結された状態で取り出された精製管9011〜9013の写真である。中央の精製管9012に析出した固体が主に析出しており、左側の精製管9013には若干の固体が析出しており、右側の精製管9011内部には黒色の埃状の残渣が残っていた。
【0115】
つぎに、連結部材9031を2つの部品に分解した。まず、固定具である外周のホースバンドを外し、続いてマイナスドライバーを分割面に設置された溝に差し込み、てこの原理を使うことで、簡単に連結部材を2つの部品に分解できた。このとき、
図24の写真に示すように、部品の片側は、精製管9011、9012のねじ部から完全に外れ、片側は精製管9011、9012のねじ部にはまった状態であった。精製管9011と9012、精製管9012と9013とは、連結部にNPDの固体が析出して固着していたが、もう一度、連結部材9031の2つの部品を組み合わせてホースバンドで固定し、ねじを外す方向に弱い力をかけることによって、析出したNPDの固体が容易に砕けて、簡単にはずすことができた。ねじを外したのちに、Oリング9051の連結部を観察したところ、砕けたNPDの固体が確認された。溶融したNPDは、そのガラス転移温度95℃以下でガラス状態となることが知られているが、このガラス状態はもろい。このことから、溶融し硬化した固体が精製管と連結部材の隙間に析出していても、本発明のねじ方式による機械的な破砕力によってNPDのガラス状態を砕き、接着性をなくすことで精製管およびOリングを取り外すことができる。
図25に取り外し後の精製管9011、9012のねじ部と連結部材9031およびOリング9051の写真を示す。
【0116】
次に、連結部材9032と第3の精製管9013の真空ジョイント9080を取り外した。これらは、あまり温度がかかっておらず、周辺の材料の析出量も少ないので、いずれも少し力をくわえることで、簡単に外すことができた。
【0117】
取り外した精製管9012を、内部に析出物9112がある状態で秤量したところ143.3gであった。精製前の精製管9012のみの質量141.2gを差し引いて、析出物は2.1gであった。精製管9013の析出物9113、精製管9011の残渣の質量はいずれも0.01g以下であった。析出物9112の収率は、2.1g/2.2g=95%と高い収率であった。さらに、精製管9012内に析出した析出物9112は、精製管9012の一端からステンレス製のスパチュラを内部に入れて、精製管9012のガラス壁から析出物9112を剥離することによって容易に析出物9112を取り出すことができ、取得できた量は2.1gと析出した量のほぼすべてを回収することができた。
【0118】
この精製装置は、精製管を覆う外管がなく、精製管を直接真空引きする方式のため、使用後に外管を洗浄する手間が省け、また精製管9011、9012、9013のいずれも内部に微細な形状を持たないため、析出した試料の洗浄は、有機溶媒などをもちいて容易に行うことができ、装置の洗浄の手間が少ないことが分かった。
【0119】
また、本実施例の精製前の試料(第1の精製管9011に入れた試料9110に相当)と精製後の回収物(第2の精製管9012の内部に析出した固体9112)を核磁気共鳴法(1H−NMR(400MHz、テトラヒドロフラン−d8))によって測定した。
【0120】
試料9110の1H−NMRチャートを
図26(A)に示す。また、
図26(A)のチャートの6.7ppm乃至8.0ppmの範囲を拡大したものを
図26(B)に示す。
【0121】
また、精製後の回収物9112の1H−NMRチャートを
図27(A)に示す。さらに、
図27(A)のチャートの6.7ppm乃至8.0ppmの範囲を拡大したものを
図27(B)に示す。
図27から、精製後の物質である固体9112は、精製されたNPDであることがわかった。
【0122】
精製前の試料を測定した
図26(A)、(B)と、精製後の回収物である固体9112を測定した
図27(A)、(B)を比較すると、
図26(A)では2.1ppm乃至2.3ppm付近に検出された不純物由来のピークが、
図27(A)ではほぼ消失していた。また、
図26(B)では6.80ppmと6.91ppm付近に検出された不純物由来のピークが、
図27(B)では見られなくなった。これらのピークは、主に試料9110に至る前に実施した精製に用いた溶媒に起因し、本実施例の精製によってきれいに除去されている。すなわち、NPDよりも揮発しにくい残渣として残る不純物の除去に加えて、NPDよりも揮発しやすい不純物も同時に除去できている。
【0123】
なお、
図26及び
図27の両方で見られる、3.55ppm、2.46ppmのピークはテトラヒドロフランに由来し、1.67ppmのピークは水由来のピークであり、これは1H−NMR用の溶媒由来のものであり、純度の評価とは関係ない。
【0124】
以上の結果から、本発明の精製装置を用いて精製を行うことで、高い純度の目的物質が得られることが確認出来た。
【0125】
次に、比較例1について説明する。比較例1は、連結部材9031として、実施例1および2の連結部材9032と同じ、分割できない連結部材を用いた以外は、実施例2と同じ実験条件とした。
【0126】
真空引き、加熱による精製工程後、室温に戻し、大気開放を行って、連結部材9031と精製管9011、9012を外そうとしたときに、まったく外れない場合があった。これをはずすために、連結部材をゴムハンマーでたたくなどの機械的な衝撃を与えることで外せるようになったが、ガラス製の精製管9011、9012のねじ部にひびが入ったり、割れたりして再利用が難しくなる場合があった。
【0127】
実施例2と比較例1の比較から、分割できる連結部材を用いて精製管を連結することで、加熱精製後にねじ部に応力が発生して取り外しが難しくなった場合においても、連結部材を分割することで容易に連結管と精製管が取り外しできることが分かった。
【0128】
以上の結果から、本発明の精製装置は、1.目的物質を高い純度で精製でき、2.高い収率で精製でき、3.再現性が高く精製でき、4.精製管の設置が容易であり、5.精製物の回収と保管が容易であり、6.装置の洗浄の手間が少ない。
【課題】1.目的物質を高い純度で精製でき、2.高い収率で精製でき、3.再現性が高く精製でき、4.精製管の設置が容易であり、5.精製物の回収と保管が容易であり、6.装置の洗浄の手間が少ない精製装置を提供する。
【解決手段】物質を気化して精製する精製部と、前記精製部に近接して設けられ、前記精製部に温度勾配を付ける温度調節部と、前記精製部の片方の端部側に設けられた真空排気手段と、を有し、前記精製部は、横長あるいは縦長に連なって設けられた第1の精製管6011と、連結部材6031と、第2の精製管6012とをこの順番で含み、連結の方式がねじ方式であり、前記連結部材が連結用の形状を含む形で2つ以上の部品に分割できる構造を有してなることを特徴とする精製装置。