(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、一実施形態を、
図1〜
図7に従って説明する。本実施形態では、建築工事の工事現場における工程の進捗状況を判定するための状況判定システムとして説明する。
図1に示すように、撮影装置10、管理サーバ20、管理者端末30を用いる。
撮影装置10は、工事現場を撮影する撮影手段である。撮影装置10としては、例えば、上下左右全方位の360度のパノラマ画像を撮影可能な全天球カメラを用いることが可能である。
【0018】
管理者端末30は、工事現場における工程の進捗状況を管理する管理者が用いるコンピュータ端末である。この管理者端末30は、キーボードやポインティングデバイス等、各種指示を入力するための入力部や、情報処理結果を出力するための出力部を備えている。
【0019】
管理サーバ20は、工事現場を撮影した撮影画像を用いて、工事の進捗状況の管理を支援するコンピュータである。この管理サーバ20は、制御部21、辞書記憶部22、教師情報記憶部23、スケジュール情報記憶部24、建築要素情報記憶部25、現場画像情報記憶部26、進捗情報記憶部27を備えている。
【0020】
制御部21は、CPU、RAM、ROM等から構成された制御手段として機能し、後述する処理(画像管理段階、学習処理段階、工程判定段階、識別段階等を含む処理)を行なう。このための状況判定プログラムを実行することにより、制御部21は、画像管理部211、学習処理部212、工程判定部213、識別部214等として機能する。
【0021】
画像管理部211は、管理者端末30や撮影装置10から、状況判定処理に用いる画像を取得する処理を実行する。本実施形態では、学習用画像、工事の進捗状況を判定するための撮影画像を取得する。
【0022】
学習処理部212は、管理者端末30から取得した学習用画像を用いて、教師データを生成する処理を実行する。本実施形態では、特徴量抽出アルゴリズムとして、公知のSIFT(Scale-Invariant Feature Transform)法を用いる。この特徴量抽出アルゴリズムによれば、画像に含まれる特徴量を算出する。本実施形態では、このSIFT法においては、所定数のピクセル毎に、128次元の特徴量を算出する。
【0023】
工程判定部213は、撮影装置10から取得した撮影画像を用いて、工事現場において用いられている建築要素を特定し、工事の進捗状況を判定する処理を実行する。
識別部214は、上述したSIFT法により、教師データを用いて、撮影画像に含まれる被写体の認識処理を実行する。本実施形態では、工事現場の撮影画像を用いて特徴量を算出し、この特徴量に基づいてヒストグラムを生成し(Bag-of-Features)、撮影画像に含まれる建築要素を特定する。
【0024】
図2(a)に示すように、辞書記憶部22には、ヒストグラムを生成するために用いる特徴量についてのコードブック220が記録される。このコードブック220は、教師データ作成処理を行なった場合に記録される。コードブック220は、1又は複数のクラスタ、各クラスタの特徴量に関するデータを含んで構成される。
【0025】
クラスタデータ領域には、ヒストグラムを作成する場合に用いるクラスタを特定するための識別子に関するデータが記録されている。
特徴量データ領域には、このクラスタを表わす代表的な特徴量に関するデータが記録されている。この特徴量としては、後述する教師データ作成処理において生成した複数の各クラスタの中心を表わす代表的特徴量を用いる。
【0026】
図2(b)に示すように、教師情報記憶部23には、画像認識を行なうための教師データ230が記録される。本実施形態では、撮影画像の被写体を構成する建築要素を画像認識により特定する場合を想定する。この教師データ230は、教師データ作成処理を行なった場合に記録される。教師データ230は、建築要素、ヒストグラムに関するデータを含んで構成される。
【0027】
建築要素データ領域には、建築に用いられる建築要素(例えば、建築材料や納まり等)を特定するための識別子(ここでは名称)に関するデータが記録される。
ヒストグラムデータ領域には、この建築要素を表わすグループに含まれるヒストグラムに関するデータが記録される。このヒストグラムは、この建築用の画像に含まれる特徴量の各クラスタの含有量によって構成される。
【0028】
図3(a)に示すように、スケジュール情報記憶部24には、建築工事における各工程のスケジュールに関するスケジュール管理データ240が記録される。このスケジュール管理データ240は、建築工事における各工程の予定日が決まった場合に記録される。スケジュール管理データ240は、場所、工程、完了予定日に関するデータを含んで構成される。
【0029】
場所データ領域には、工事現場の各場所を特定するための識別子に関するデータが記録される。この場所データとしては、例えば、工区や部屋を特定するためのデータを用いる。
工程データ領域には、この場所において実施される各工程を特定するための識別子に関するデータが記録される。
完了予定日データ領域には、この工程を完了する予定日に関するデータが記録される。この完了予定日に基づいて、工程の順番を特定することができる。
【0030】
図3(b)に示すように、建築要素情報記憶部25には、工事現場における各工程において用いられる建築要素に関する建築要素管理データ250が記録される。この建築要素管理データ250は、建築工事における各工程で用いられる建築要素が決まった場合に記録される。建築要素管理データ250は、工程、建築要素に関するデータを含んで構成される。
【0031】
工程データ領域には、建築工事における各工程を特定するための識別子に関するデータが記録される。
建築要素には、この工程において用いられる建築要素に関するデータが記録される。
図3(b)に示すように、工程「コンクリート打設前」においては、鉄筋、コンクリートが表面に露出している。また、工程「断熱前」においては、コンクリートが表面に露出している。このように、表面に露出している建築要素を特定し、この建築要素に基づいて、現在の工程を特定することができる。
【0032】
図3(c)に示すように、現場画像情報記憶部26には、工事現場を撮影した撮影画像についての画像管理データ260が記録される。この画像管理データ260は、撮影装置10から撮影画像を取得した場合に記録される。画像管理データ260は、画像コード、撮影日、場所、画像に関するデータを含んで構成される。
【0033】
画像コードデータ領域には、工事現場を撮影した各撮影画像を特定するための識別子に関するデータが記録される。
撮影日データ領域には、この撮影画像を撮影した年月日及び時刻に関するデータが記録される。
場所データ領域には、この撮影画像を撮影した工事現場の場所を特定するための識別子に関するデータが記録される。
画像データ領域には、工事現場を撮影した撮影画像に関するデータが記録される。
【0034】
図3(d)に示すように、進捗情報記憶部27には、建築工事の進捗状況を管理するための進捗管理データ270が記録される。この進捗管理データ270は、工程判定処理を行なった場合に記録される。進捗管理データ270は、場所、画像コード、工程、状況に関するデータを含んで構成される。
【0035】
場所データ領域には、工事現場の各場所を特定するための識別子に関するデータが記録される。
画像コードデータ領域には、この場所を撮影した撮影画像を特定するための識別子に関するデータが記録される。
【0036】
工程データ領域には、撮影画像に基づいて特定した工程を特定するための識別子に関するデータが記録される。
状況データ領域には、この工程について建築工事のスケジュールに対する状況を示すデータが記録される。
【0037】
次に、上記のように構成された管理サーバ20において、建築工事の進捗状況を判定する場合の処理手順について、
図4〜
図7を用いて説明する。
【0038】
(教師データ作成処理)
まず、
図4、
図6を用いて、教師データ作成処理を説明する。
ここでは、管理サーバ20の制御部21は、学習用画像の特定処理を実行する(ステップS1−1)。具体的には、制御部21の学習処理部212は、管理者端末30に対して、学習用画像の入力要求を出力する。この場合、管理者端末30を用いて、教師データの作成に用いる学習用画像を入力する。本実施形態では、学習用画像として、建築要素(被写体)を含む工事現場を撮影した複数の撮影画像(例えば、数万枚の画像)を用いる場合を想定する。各学習用画像には、被写体を特定する建築要素に関する情報が関連付けられている。この場合、学習処理部212は、管理者端末30から取得した学習用画像をメモリに仮記憶する。
ここでは、
図6(a)に示すように、学習用画像(1)〜(n)を用いる場合を想定する。
【0039】
次に、メモリに仮記憶した学習用画像を順次、処理対象として特定し、以下の処理を繰り返す。
【0040】
ここでは、管理サーバ20の制御部21は、特徴量の抽出処理を実行する(ステップS1−2)。具体的には、制御部21の学習処理部212は、処理対象の学習用画像に含まれる特徴量を算出する。本実施形態では、各画像において、複数画素毎の特徴量を算出する。そして、学習処理部212は、算出した特徴量を、処理対象の撮影画像に関連付けて仮記憶する。
そして、すべての学習用画像について、以上の処理を繰り返す。
【0041】
図6(b)では、各学習用画像(1)〜(n)において、複数の特徴量が算出されている。学習用画像(1)〜(n)に表示されている円表示は、SIFT法におけるキーポイントにおける特徴量のスケールと勾配強度が最も強い向きとを表わしている。
【0042】
次に、管理サーバ20の制御部21は、特徴量のクラスタリング処理を実行する(ステップS1−3)。具体的には、制御部21の学習処理部212は、公知のK−means法を用いて、算出したすべての特徴量を用いてクラスタリングを行なう。K−means法では、クラスタの平均を用い、与えられたクラスタ数k個に分類するための非階層型クラスタリングのアルゴリズムである。本実施形態では、撮影画像数、複数画素毎の特徴量数に応じた特徴点を用いて、複数のクラスタを生成する。
【0043】
次に、管理サーバ20の制御部21は、辞書の作成処理を実行する(ステップS1−4)。具体的には、制御部21の学習処理部212は、生成した各クラスタの中心(代表的特徴量)を特定する。そして、学習処理部212は、特定したすべての代表的特徴量を記録したコードブック220を辞書記憶部22に記録する。
図6(c)では、クラスタA〜Dを生成した場合を想定する。
【0044】
次に、管理サーバ20の制御部21は、学習用画像毎に以下の処理を繰り返す。
ここでは、管理サーバ20の制御部21は、ヒストグラムの作成処理を実行する(ステップS1−5)。具体的には、制御部21の学習処理部212は、辞書記憶部22に記録されたコードブック220に含まれる特徴量と、学習用画像に含まれる特徴量とを比較する。そして、学習処理部212は、各クラスタの含有量を示したヒストグラムを生成する。
図6(d)では、学習用画像(1)〜(n)において、各クラスタA〜Dの成分を表わすヒストグラムが生成されている。
【0045】
次に、管理サーバ20の制御部21は、ラベリング処理を実行する(ステップS1−6)。具体的には、制御部21の学習処理部212は、各学習用画像のヒストグラムに対して、学習用画像に関連付けられた建築要素をラベルとして付与して仮記録する。
【0046】
ここでは、
図6(e)に示すように、学習用画像(1)〜(n)において、共通する建築要素(ラベルα〜γ)がグループ分けされる。そして、学習用画像(1)〜(n)のヒストグラムからなる各グループに属する教師データが生成される。
以上の処理を、すべての学習用画像についての処理を終了するまで繰り返す。
【0047】
次に、管理サーバ20の制御部21は、教師データの出力処理を実行する(ステップS1−7)。具体的には、制御部21の学習処理部212は、ラベルリングされたヒストグラムを、教師データとして、教師情報記憶部23に記録する。
【0048】
(工程判定処理)
次に、
図5を用いて、工程判定処理を説明する。
まず、管理サーバ20の制御部21は、工事現場の撮影画像の取得処理を実行する(ステップS2−1)。具体的には、建築工事の工事現場を、撮影装置10を用いて撮影する。この場合、撮影装置10は、撮影日時及び撮影した場所を特定するための識別子を関連付けて記憶する。この撮影日時は、撮影装置10の内蔵タイマから取得することができる。また、撮影場所は、撮影装置10の入力手段を介しての手入力や、GPS(Global Positioning System)等の位置特定手段を用いて取得することができる。そして、撮影装置10に記憶された撮影画像を、管理サーバ20にアップロードする。例えば、撮影装置10に記録された複数の撮影画像を、管理者端末30を介してまとめてアップロードする。この撮影画像には、撮影日時及び場所に関する識別子が関連付けられている。この場合、制御部21の画像管理部211は、アップロードされた撮影画像に対して、画像コードを付与して、現場画像情報記憶部26に記録する。
【0049】
次に、管理サーバ20の制御部21は、撮影画像毎に以下の処理を繰り返す。
ここでは、管理サーバ20の制御部21は、撮影画像について領域分割処理を実行する(ステップS2−2)。具体的には、制御部21の工程判定部213は、公知の方法を用いて、撮影画像に含まれる複数の領域を分割する。例えば、撮影画像に含まれるエッジや、画素の色相情報や彩度情報を用いて領域分割を行なう。
【0050】
そして、管理サーバ20の制御部21は、各分割領域を順次、処理対象として特定し、以下の処理を繰り返す。
ここでは、管理サーバ20の制御部21は、処理対象の分割領域の特徴量の算出処理を実行する(ステップS2−3)。具体的には、制御部21の工程判定部213は、識別部214に分割領域の画像を提供する。この場合、識別部214は、この分割領域の特徴量を算出する。
【0051】
次に、管理サーバ20の制御部21は、分割領域のヒストグラムの作成処理を実行する(ステップS2−4)。具体的には、制御部21の識別部214は、分割領域の特徴量と、辞書記憶部22のコードブック220に記録された各代表的特徴量とのマッチングを行なう。そして、識別部214は、各代表的特徴量とのマッチング状況に応じて、各クラスタの含有量を示したヒストグラムを生成する。
【0052】
次に、管理サーバ20の制御部21は、分割領域の建築要素の特定処理を実行する(ステップS2−5)。具体的には、制御部21の識別部214は、教師情報記憶部23に記録された教師データ230を用いて、生成したヒストグラムが属するグループを特定する。例えば、サポートベクターマシン(support vector machine,SVM)を用いてグループを特定する。そして、識別部214は、特定したグループの建築要素(ラベル)を特定する。
以上の処理を、すべての分割領域について終了するまで繰り返す。
【0053】
図7(a)に示す撮影画像500を取得した場合を想定する。この場合には、
図7(b)に示すように、分割領域511〜514に分割した撮影画像510とする。そして、各分割領域の特徴量に基づいて、分割領域511〜514の建築要素を特定する。例えば、分割領域511,513は、建築要素として「コンクリート」、分割領域512は「ウレタン」、分割領域514は「ボード」を特定した場合を想定する。
【0054】
次に、管理サーバ20の制御部21は、工程を特定可能かどうかについての判定処理を実行する(ステップS2−6)。具体的には、制御部21の工程判定部213は、識別部214から、特定した建築要素を取得する。次に、工程判定部213は、建築要素情報記憶部25を用いて、特定した建築要素が含まれる工程を検索する。建築要素情報記憶部25の各工程に含まれるすべての建築要素が、撮影画像に含まれる場合には、工程を特定可能と判定する。例えば、
図7(b)の場合、建築要素情報記憶部25を用いて、「コンクリート」、「ウレタン」を含む工程として「断熱後」を特定する。一方、工程「ボード貼り前」の「軽鉄」や、工程「ボード貼り後」の「床パネル」は、撮影画像に含まれないため、対象外と判定する。なお、分割領域514の「ボード」は、ボード貼り作業の事前準備であり、ノイズとして判定の対象外とする。一方、建築要素情報記憶部25の各工程に含まれる建築要素が、撮影画像に含まれる建築要素において過不足がある場合には、工程を特定できないと判定する。
【0055】
ここで、工程を特定できないと判定した場合(ステップS2−6において「NO」の場合)、管理サーバ20の制御部21は、工程の選択処理を実行する(ステップS2−7)。具体的には、制御部21の工程判定部213は、撮影画像に含まれる建築要素の少なくとも一つが含まれる工程を、工程候補として特定する。そして、工程判定部213は、特定した建築候補を管理者端末30に出力する。この場合、建築要素情報記憶部25に記録された建築要素と、撮影画像に含まれる建築要素とで共通した建築要素が多い順番に、工程候補を出力する。そして、工程判定部213は、管理者端末30において指定された工程候補を取得する。
【0056】
一方、工程を特定できると判定した場合(ステップS2−6において「YES」の場合)、管理サーバ20の制御部21は、工程の選択処理(ステップS2−7)をスキップする。
【0057】
次に、管理サーバ20の制御部21は、工程の記録処理を実行する(ステップS2−8)。具体的には、制御部21の工程判定部213は、撮影画像に基づいて特定した工程、又は管理者端末30において指定された工程を記録した進捗管理データ270を進捗情報記憶部27に記録する。更に、工程判定部213は、スケジュール情報記憶部24から、撮影場所、工程が記録されたスケジュール管理データ240を取得する。次に、工程判定部213は、スケジュール管理データ240に記録された完了予定日と、現場画像情報記憶部26に記録された撮影日とを比較して差分日数を算出する。そして、工程判定部213は、進捗管理データ270に状況を記録する。ここでは、撮影日が完了予定日よりも遅い場合には、「差分日数の遅延」を状況データ領域に記録する。一方、撮影日が完了予定日よりも早い場合や、撮影日と完了予定日とが一致している場合には、「予定通り」を状況データ領域に記録する。
以上の処理を、すべての撮影画像について終了するまで繰り返す。
【0058】
本実施形態の状況判定システムによれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、管理サーバ20の制御部21は、教師データ作成処理、工程判定処理を実行する。これにより、工事現場を撮影した撮影画像を用いて、効率的に状況を判定することができる。
【0059】
(2)本実施形態では、管理サーバ20の制御部21は、学習用画像について、特徴量の抽出処理(ステップS1−2)、特徴量のクラスタリング処理(ステップS1−3)、辞書の作成処理(ステップS1−4)を実行する。これにより、工事現場の撮影画像に含まれる特徴量を分類するためのコードブック220を作成することができる。
【0060】
更に、管理サーバ20の制御部21は、ヒストグラムの作成処理(ステップS1−5)、ラベリング処理(ステップS1−6)を実行する。これにより、撮影画像に基づいて、建築要素を特定するための教師データを生成することができる。
【0061】
(3)本実施形態では、撮影画像について領域分割処理を実行する(ステップS2−2)。そして、管理サーバ20の制御部21は、処理対象の分割領域の特徴量の算出処理(ステップS2−3)、分割領域のヒストグラムの作成処理(ステップS2−4)、分割領域の建築要素の特定処理(ステップS2−5)を実行する。これにより、撮影画像に含まれる領域毎に、建築要素を特定することができる。
【0062】
(4)本実施形態では、管理サーバ20の制御部21は、工程を特定可能かどうかについての判定処理を実行する(ステップS2−6)。そして、工程を特定できないと判定した場合(ステップS2−6において「NO」の場合)、管理サーバ20の制御部21は、工程の選択処理を実行する(ステップS2−7)。この場合、撮影画像に含まれる建築要素の少なくとも一つが含まれる工程を、工程候補として特定する。そして、工程判定部213は、特定した建築候補を管理者端末30に出力する。これにより、撮影画像に基づいて自動判定が困難な場合には、工程候補に基づいて、効率的に工程を指定することができる。
【0063】
(5)本実施形態では、管理サーバ20の制御部21は、工程の記録処理を実行する(ステップS2−8)。これにより、建築工事の進捗状況を、効率的に判断することができる。
また、進捗情報記憶部27には、場所、画像コードと工程とが関連付けられて記録されるため、場所や工程毎に、撮影画像を効率的に整理することができる。
【0064】
また、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、教師データ作成処理において、管理サーバ20の制御部21は、学習用画像の特定処理を実行する(ステップS1−1)。この場合、被写体として建築要素を含む工事現場を撮影した複数の撮影画像を用いる。学習用画像は、工事現場の撮影画像に限定されるものではない。建築要素の写真が含まれるカタログ等からサンプル画像を取得して、学習用画像として用いるようにしてもよい。
【0065】
また、設計図面等の設計情報に基づいて、学習用画像を取得するようにしてもよい。この場合には、設計情報に含まれる建築要素(建築材料等)を取得し、この建築要素の画像を、インターネット等において検索する。また、設計情報に基づいて、建築要素の提供者を特定するようにしてもよい。この場合には、提供者の管理サーバに登録されている建築要素のサンプル画像を、教師データの作成処理時に、提供者の管理サーバにアクセスして取得する。
【0066】
・上記実施形態では、工程判定処理において、管理サーバ20の制御部21は、分割領域の建築要素の特定処理を実行する(ステップS2−5)。この場合、SIFT法を用いる。建築要素の特定方法は、SIFT法に限定されるものではなく、公知の各種画像認識方法を用いることができる。また、SIFT特徴量だけではなく、色彩等をパラメータとして、建築要素を特定するようにしてもよい。
【0067】
・上記実施形態では、工程判定処理において、管理サーバ20の制御部21は、工程の記録処理を実行する(ステップS2−8)。ここで、撮影画像において、建築要素情報記憶部25に記録されていない建築要素が含まれる場合、管理者端末30にアラームメッセージを出力するようにしてもよい。このアラームメッセージには、現在の工程及びこの工程で用いられない建築要素に関する情報を含める。これにより、工程において用いられる建築要素が適切でない場合に、管理者に対して注意喚起を行なうことができる。
【0068】
・上記実施形態では、管理サーバ20の制御部21は、工程を特定可能かどうかについての判定処理を実行する(ステップS2−6)。ここで、この工事現場における先行工程に基づいて、工程を判定するようにしてもよい。この場合には、制御部21は、進捗情報記憶部27を用いて、この工事現場において既に完了した直近の先行工程を特定する。そして、制御部21は、スケジュール情報記憶部24を用いて、先行工程以降の工程を特定し、建築要素情報記憶部25から、先行工程以降の工程を、撮影画像の工程候補として特定する。
【0069】
・上記実施形態では、工事現場を撮影する撮影装置10として、上下左右全方位の360度のパノラマ画像を撮影可能な全天球カメラを用いる。撮影装置10は、全天球カメラに限定されるものではない。広角レンズを有するカメラでの撮影画像や、複数の撮影画像を用いて、工程を特定するようにしてもよい。なお、同じ撮影日に同じ場所で撮影された複数の撮影画像を用いる場合には、異なる複数の工程が特定されることがある。この場合には、特定された複数の工程の中で、最も多い工程を採用する。
【0070】
また、撮影時に撮影向きを記録しておき、この撮影向きを考慮して、撮影画像を合成するようにしてもよい。この場合には、撮影装置10に、3次元位置における姿勢検出センサを設ける。
【0071】
・上記実施形態では、建築要素情報記憶部25には、工事現場における各工程において用いられる建築要素に関する建築要素管理データ250が記録される。ここでは、工程に対して、建築要素の有無を記録した。工程と建築要素との関係は、これに限定されるものではない。例えば、各建築要素が画像内で占める可能性がある面積割合(%)の範囲を数値で表現してもよい。この場合、建築要素情報記憶部25には、建築要素管理データ250を記録する。
【0073】
・上記実施形態では、特徴量を用いて、工事現場における工程を判定した。工程の判定方法は、これに限定されるものではない。例えば、ディープラーニング(深層学習)を利用して、工程を特定するようにしてもよい。ここでは、多数の画像からなる教師データを用いて学習処理を実行し、学習処理によって生成されたモデルを用いて、工程を特定する。
【0074】
(学習処理)
まず、
図8(a)を用いて、学習処理を説明する。
ここでは、管理サーバ20の制御部21は、教師データの特定処理を実行する(ステップS3−1)。具体的には、制御部21の学習処理部212は、管理者端末30に対して、学習用画像の入力要求を出力する。この場合、管理者端末30を用いて、教師データ(学習用画像、検証用画像)を入力する。本実施形態では、学習用画像として、建築要素(被写体)を撮影した複数の撮影画像(例えば、数万枚の画像)を用いる場合を想定する。各学習用画像、検証用画像には、被写体を特定する建築要素に関する情報が関連付けられている。この場合、学習処理部212は、管理者端末30から取得した学習用画像、検証用画像をメモリに仮記憶する。
【0075】
次に、管理サーバ20の制御部21は、ディープラーニング処理を実行する(ステップS3−2)。具体的には、制御部21の学習処理部212は、入力層、中間層(隠れ層)、出力層に含まれる複数のノードを結合する。なお、中間層は、必要に応じて複数階層を設けることが可能である。本実施形態では、入力層には、各学習用画像に含まれる画素を用いる。また、出力層の各ノードには、建築要素を用いる。そして、入力層のノードから出力層のノードを結びつける中間層のノード、結合からなるモデル(建築要素判定モデル)を生成する。
【0076】
次に、管理サーバ20の制御部21は、検証処理を実行する(ステップS3−3)。具体的には、制御部21の学習処理部212は、ディープラーニング処理により生成した建築要素判定モデルに、検証用画像を適用して、建築要素を算出する。次に、学習処理部212は、算出した建築要素が、検証用画像に関連付けられていた建築要素と一致するかどうかを判定する。そして、学習処理部212は、すべての検証用画像において、建築要素が一致しなかった割合(エラーレート)を算出する。
【0077】
次に、管理サーバ20の制御部21は、学習は完了かどうかについての判定処理を実行する(ステップS3−4)。具体的には、制御部21の学習処理部212は、算出したエラーレートと、予め定められた収束条件とを比較する。そして、エラーレートが収束条件を満たした場合には、学習は完了したと判定する。
【0078】
学習は完了でないと判定した場合(ステップS3−4において「NO」の場合)、管理サーバ20の制御部21は、ディープラーニング処理(ステップS3−2)を再実行する。
一方、学習は完了と判定した場合(ステップS3−4において「YES」の場合)、管理サーバ20の制御部21は、モデルの出力処理を実行する(ステップS3−5)。具体的には、制御部21の学習処理部212は、ディープラーニング処理により生成した建築要素判定モデルを、学習済みモデルとして工程判定部213に供給する。工程判定部213は、この学習済みモデルを記憶する。
【0079】
(工程判定処理)
次に、
図8(b)を用いて、工程判定処理を説明する。
まず、管理サーバ20の制御部21は、ステップS2−1と同様に、工事現場の撮影画像の取得処理を実行する(ステップS4−1)。
【0080】
次に、管理サーバ20の制御部21は、撮影画像毎に以下の処理を繰り返す。
ここでは、管理サーバ20の制御部21は、撮影画像について領域分割処理を実行する(ステップS4−2)。具体的には、制御部21の工程判定部213は、撮影画像を、任意の解像度のグリッドに分割する。例えば、解像度「3072×2304px」の画像を「256×256px」のグリッド(分割領域)に分割する。
【0081】
そして、管理サーバ20の制御部21は、各分割領域を順次、処理対象として特定し、以下の処理を繰り返す。
ここでは、管理サーバ20の制御部21は、モデルを用いて、分割領域の建築要素の特定処理を実行する(ステップS4−3)。具体的には、制御部21の工程判定部213は、学習済みモデル(建築要素判定モデル)を用いて、建築要素を特定する。そして、工程判定部213は、特定した建築要素を仮記憶する。
以上の処理を、すべての分割領域について終了するまで繰り返す。
【0082】
次に、管理サーバ20の制御部21は、工程の選択処理を実行する(ステップS4−4)。具体的には、制御部21の工程判定部213は、撮影画像に含まれるすべてのグリッド(分割領域)について、仮記憶した建築要素を、建築要素毎に集計する。次に、工程判定部213は、集計に基づいて、建築要素毎の割合を算出する。これにより、面積割合が算出される。そして、工程判定部213は、算出した面積割合に基づいて工程を選択する。この場合、上述した表1を用いることができる。
【0083】
次に、管理サーバ20の制御部21は、ステップS2−8と同様に、工程の記録処理を実行する(ステップS4−5)。
以上の処理を、すべての撮影画像について終了するまで繰り返す。
これにより、ディープラーニングを用いて、効率的かつ的確に建築要素を特定し、この建築要素により工程を特定することができる。
【0084】
更に、機械学習(ディープラーニング)により、工程を選択することも可能である。この場合には、学習処理における教師データとして、各工程がラベリングされ、各建築要素の面積割合のヒストグラムを算出した大量の撮影画像を準備する。例えば、工程「断熱後」がラベリングされた撮影画像に対して、建築要素「鉄筋」、「コンクリート」、「ウレタン」等についての面積割合のヒストグラムを生成しておく。
そして、ディープラーニング処理(ステップS3−2)において、各建築要素の面積割合のヒストグラムを算出した大量の撮影画像(学習用画像)を用いて、各学習用画像にラベリングされた工程を判定するための工程判定モデルを生成する。
検証処理(ステップS3−3)においては、検証用画像において、各建築要素の面積割合のヒストグラムを算出し、ディープラーニング処理により生成した工程判定モデルに適用することにより、工程を予測する。そして、検証用画像にラベリングされていた工程との一致を判定する。この判定により算出されるエラーレートに基づいて、学習を完了する。
【0085】
工程判定処理においては、管理サーバ20の制御部21は、撮影画像において、分割領域の建築要素の特定処理を実行する(ステップS4−3)。更に、領域毎の繰り返し処理により、管理サーバ20の制御部21は、建築要素の面積割合のヒストグラムを算出する。そして、管理サーバ20の制御部21は、建築要素の面積割合のヒストグラムについて、上述したディープラーニング処理により生成した工程判定モデルを適用して工程を特定する。
工程判定に機械学習手法(ディープラーニング)を用いることにより、分割領域毎の建築要素推定の誤差に対する頑健性を強化することができる。