特許第6700618号(P6700618)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6700618
(24)【登録日】2020年5月8日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】積層体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20200518BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20200518BHJP
   B32B 1/04 20060101ALI20200518BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20200518BHJP
【FI】
   C03C27/12 Z
   C03C27/12 K
   B32B17/10
   B32B1/04
   G06F3/041 460
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-505010(P2017-505010)
(86)(22)【出願日】2016年3月2日
(86)【国際出願番号】JP2016056451
(87)【国際公開番号】WO2016143636
(87)【国際公開日】20160915
【審査請求日】2018年10月16日
(31)【優先権主張番号】特願2015-46113(P2015-46113)
(32)【優先日】2015年3月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】濱野 憲司
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 博司
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−254626(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/157610(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C27/00−29/00
B32B17/10
B32B27/28,27/30
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着層を介して樹脂板の両面にガラスシートを積層して一体化した積層体において、
前記ガラスシートは、前記樹脂板の一方の面に接着される第1ガラスシートと、前記樹脂板の他方の面に接着される第2ガラスシートとを含み、
前記接着層は、前記樹脂板の前記一方の面に前記第1ガラスシートを接着する第1接着層と、前記樹脂板の前記他方の面に前記第2ガラスシートを接着する第2接着層とを含み、
前記第1ガラスシートは、前記第1接着層を介して前記樹脂板の前記一方の面に接着される第1の面と、前記第1の面とは反対側に位置する第2の面とを有し、
前記第2ガラスシートは、前記第2接着層を介して前記樹脂板の前記他方の面に接着される第1の面と、前記第1の面とは反対側に位置する第2の面とを有し、
前記樹脂板の端面及び前記第1ガラスシートの端面から前記第1接着層が食み出ることにより形成される第1食み出し部と、前記樹脂板の端面及び前記第2ガラスシートの端面から前記第2接着層が食み出ることにより形成される第2食み出し部とを備え、
前記第1食み出し部は、前記第1ガラスシートの前記端面の全面と前記第1ガラスシートの前記第2の面の少なくとも一部とに接触し、
前記第2食み出し部は、前記第2ガラスシートの前記端面の全面と前記第2ガラスシートの前記第2の面の少なくとも一部とに接触することを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記第1食み出し部及び前記第2食み出し部は、前記樹脂板の前記端面の少なくとも一部に接触することを特徴とする請求項に記載の積層体。
【請求項3】
前記第1食み出し部と前記第2食み出し部とが繋がって一体に構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
接着層を介して樹脂板の両面にガラスシートを積層して一体化した積層体において、
前記ガラスシートは、前記樹脂板の一方の面に接着される第1ガラスシートと、前記樹脂板の他方の面に接着される第2ガラスシートとを含み、
前記接着層は、前記樹脂板の前記一方の面に前記第1ガラスシートを接着する第1接着層と、前記樹脂板の前記他方の面に前記第2ガラスシートを接着する第2接着層とを含み、
前記樹脂板の端面及び前記第1ガラスシートの端面から前記第1接着層が食み出ることにより形成される第1食み出し部と、前記樹脂板の端面及び前記第2ガラスシートの端面から前記第2接着層が食み出ることにより形成される第2食み出し部とを備え、
前記第1食み出し部及び前記第2食み出し部は、前記樹脂板の前記端面の少なくとも一部に接触し、
前記第1食み出し部は、前記第1ガラスシートの前記端面の少なくとも一部に接触し、前記第2食み出し部は、前記第2ガラスシートの前記端面の少なくとも一部に接触することを特徴とする積層体。
【請求項5】
前記第1食み出し部は、前記第1ガラスシートの厚みの半分以上の範囲にわたって前記第1ガラスシートの前記端面に接触し、前記第2食み出し部は、前記第2ガラスシートの厚みの半分以上の範囲にわたって前記第2ガラスシートの前記端面に接触することを特徴とする請求項に記載の積層体。
【請求項6】
前記第1食み出し部と前記第2食み出し部とが繋がって一体に構成されることを特徴とする請求項4又は5に記載の積層体。
【請求項7】
接着層を介して樹脂板の両面にガラスシートを積層して一体化した積層体において、
前記ガラスシートは、前記樹脂板の一方の面に接着される第1ガラスシートと、前記樹脂板の他方の面に接着される第2ガラスシートとを含み、
前記接着層は、前記樹脂板の前記一方の面に前記第1ガラスシートを接着する第1接着層と、前記樹脂板の前記他方の面に前記第2ガラスシートを接着する第2接着層とを含み、
前記樹脂板の端面及び前記第1ガラスシートの端面から前記第1接着層が食み出ることにより形成される第1食み出し部と、前記樹脂板の端面及び前記第2ガラスシートの端面から前記第2接着層が食み出ることにより形成される第2食み出し部とを備え、
前記第1食み出し部と前記第2食み出し部とが繋がって一体に構成され
前記第1食み出し部は、前記第1ガラスシートの前記端面の少なくとも一部に接触し、前記第2食み出し部は、前記第2ガラスシートの前記端面の少なくとも一部に接触することを特徴とする積層体。
【請求項8】
前記第1食み出し部は、前記第1ガラスシートの厚みの半分以上の範囲にわたって前記第1ガラスシートの前記端面に接触し、前記第2食み出し部は、前記第2ガラスシートの厚みの半分以上の範囲にわたって前記第2ガラスシートの前記端面に接触することを特徴とする請求項に記載の積層体。
【請求項9】
接着層を介して樹脂板の両面にガラスシートを積層一体化してなる積層体を製造する方法において、
前記ガラスシートは、前記樹脂板の一方の面に接着される第1ガラスシートと、前記樹脂板の他方の面に接着される第2ガラスシートとを含み、
前記接着層は、前記樹脂板の前記一方の面に前記第1ガラスシートを接着する第1接着層と、前記樹脂板の前記他方の面に前記第2ガラスシートを接着する第2接着層とを含み、
前記第1ガラスシートは、前記第1接着層を介して前記樹脂板の前記一方の面に接着される第1の面と、前記第1の面とは反対側に位置する第2の面とを有し、
前記第2ガラスシートは、前記第2接着層を介して前記樹脂板の前記他方の面に接着される第1の面と、前記第1の面とは反対側に位置する第2の面とを有し、
前記樹脂板の端面及び前記第1ガラスシートの端面から前記第1接着層を食み出させることにより第1食み出し部を形成し、
前記樹脂板の端面及び前記第2ガラスシートの端面から前記第2接着層を食み出させることにより第2食み出し部を形成し、
前記第1食み出し部を、前記第1ガラスシートの前記端面の全面と前記第1ガラスシートの前記第2の面の少なくとも一部とに接触させ、
前記第2食み出し部を、前記第2ガラスシートの前記端面の全面と前記第2ガラスシートの前記第2の面の少なくとも一部とに接触させることを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項10】
接着層を介して樹脂板の両面にガラスシートを積層一体化してなる積層体を製造する方法において、
前記ガラスシートは、前記樹脂板の一方の面に接着される第1ガラスシートと、前記樹脂板の他方の面に接着される第2ガラスシートとを含み、
前記接着層は、前記樹脂板の前記一方の面に前記第1ガラスシートを接着する第1接着層と、前記樹脂板の前記他方の面に前記第2ガラスシートを接着する第2接着層とを含み、
前記樹脂板の端面及び前記第1ガラスシートの端面から前記第1接着層を食み出させることにより第1食み出し部を形成し、
前記樹脂板の端面及び前記第2ガラスシートの端面から前記第2接着層を食み出させることにより第2食み出し部を形成し、
前記第1食み出し部及び前記第2食み出し部を、前記樹脂板の前記端面の少なくとも一部に接触させ、
前記第1食み出し部を、前記第1ガラスシートの前記端面の少なくとも一部に接触させ、
前記第2食み出し部を、前記第2ガラスシートの前記端面の少なくとも一部に接触させることを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項11】
接着層を介して樹脂板の両面にガラスシートを積層一体化してなる積層体を製造する方法において、
前記ガラスシートは、前記樹脂板の一方の面に接着される第1ガラスシートと、前記樹脂板の他方の面に接着される第2ガラスシートとを含み、
前記接着層は、前記樹脂板の前記一方の面に前記第1ガラスシートを接着する第1接着層と、前記樹脂板の前記他方の面に前記第2ガラスシートを接着する第2接着層とを含み、
前記樹脂板の端面及び前記第1ガラスシートの端面から前記第1接着層を食み出させることにより第1食み出し部を形成し、
前記樹脂板の端面及び前記第2ガラスシートの端面から前記第2接着層を食み出させることにより第2食み出し部を形成し、
前記第1食み出し部と前記第2食み出し部とを繋げて一体に構成し、
前記第1食み出し部を、前記第1ガラスシートの前記端面の少なくとも一部に接触させ、
前記第2食み出し部を、前記第2ガラスシートの前記端面の少なくとも一部に接触させることを特徴とする積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着層を介して樹脂板とガラスシートとを積層一体化した積層体の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、使用場所が限定されずに携行性も良好であることから、携帯電話(スマートフォンなど)・タブレット型PC・携帯型ゲーム機器などの携帯用電子デバイスが普及している。これらの携帯用電子デバイスでは、携行性を良好に維持すべく、小型化及び軽量化が必要不可欠となる。しかしながら、小型化に伴って携帯用電子デバイスの画面も小さくすると、画面に表示される情報の視認性が低下し、携帯用電子デバイスとしての利便性が極端に低下するという問題がある。そのため、携帯用電子デバイスを小型化したとしても、その画面サイズは大きく確保することが必要となる。そこで、携帯用電子デバイスにおいては、画面外に設けられていた操作部を省略し、その操作機能を画面中に組み込んで画面サイズをできるだけ大きく確保するという試みがなされている。この種の携帯用電子デバイスの画面には、タッチパネルが採用されるのが通例である。
【0003】
このような携帯用電子デバイスに搭載されるタッチパネルの保護カバーには、高硬度(耐擦傷性)や高い気密性が確保でき、見た目の高級感や手触りが良好であるといった理由から、ガラスシートが使用されることが多い。しかしながら、ガラスは比重が高く重量が大きな物質であるため、保護カバーに要求される諸特性をガラスシートのみで実現しようとすると、携帯用電子デバイスの軽量化が困難になる。
【0004】
この問題に対処するものとして、樹脂板(有機ガラス板)の両面に、接着層を介してガラスシートを積層一体化した積層体が提案されている(例えば特許文献1参照)。このようにすれば、最外層がガラスシートで構成されることから、ガラスに由来する耐擦傷性などの諸特性を確保することができ、さらに、中心層がガラスシートよりも軽量な樹脂板で構成されることから、積層体全体の軽量化も実現可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−201049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような積層体を採用する上で、ガラスシートの厚みが、例えば300μm以下まで薄板化されると、ガラスシートの端面が非常に脆くなり、破損し易くなってしまう。また、破損に至らないとしても、ガラスシートの端面に他部材が直接接触すると、ガラスシートが樹脂板から剥離するおそれがある。このようにガラスシートが剥離してしまうと、後に破損の原因となるだけでなく、外観形状が悪くなって商品価値の低下を招くという問題も生じ得る。
【0007】
このための対策として、上記の特許文献1では、積層体の周縁部に、別体の樹脂(ポリイソブチレンテープ)を事後的に貼り付けることにより、ガラスシートの端面を保護するといった技術が開示されている(同文献の段落0015参照)。
【0008】
しかしながら、このように積層体の周縁部に樹脂を事後的に貼り付ける場合には、その接着力が弱く、他部材が接触することによって樹脂自体が剥離してしまい、ガラスシートの保護が十分に確保できないという問題があった。また、樹脂を事後的に貼り付けることによる製造工数が増加してしまい、積層体の製造コストが嵩むという問題もあった。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、接着層を介して樹脂板の両面にガラスシートを積層一体化させた積層体において、その製造工数を増加させることなく、ガラスシートの端面を強固に保護することにより、ガラスシートの端面における破損や剥離を防止することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために創案された本発明は、接着層を介して樹脂板の両面にガラスシートを積層して一体化した積層体において、前記ガラスシートは、前記樹脂板の一方の面に接着される第1ガラスシートと、前記樹脂板の他方の面に接着される第2ガラスシートとを含み、前記接着層は、前記樹脂板の前記一方の面に前記第1ガラスシートを接着する第1接着層と、前記樹脂板の前記他方の面に前記第2ガラスシートを接着する第2接着層とを含み、前記樹脂板の端面及び前記第1ガラスシートの端面から前記第1接着層が食み出ることにより形成される第1食み出し部と、前記樹脂板の端面及び前記第2ガラスシートの端面から前記第2接着層が食み出ることにより形成される第2食み出し部とを備え、前記第1食み出し部は、前記第1ガラスシートの前記端面の少なくとも一部に接触し、前記第2食み出し部は、前記第2ガラスシートの前記端面の少なくとも一部に接触することに特徴づけられる。
【0011】
かかる構成によれば、第1接着層による第1食み出し部が第1ガラスシートの端面の少なくとも一部に接触し、第2接着層による第2食み出し部が第2ガラスシートの端面の少なくとも一部に接触することから、例えば積層体の側方から他部材が接触する場合であっても、この他部材は各ガラスシートの端面よりも、各食み出し部に優先的に接触することになる。そのため、各ガラスシートの端面に他部材が直接接触する事態を回避できる。したがって、各ガラスシートの端面の破損や剥離の発生を効果的に防止できるようになる。さらに、各食み出し部は各接着層が食み出ることによって形成されるものであることから、各接着層と一体に構成され、他部材が接触したとしても脱落し難い構造となる。この構造により、各食み出し部は、対応する各ガラスシートの端面を強固に保護することが可能になる。
【0012】
また、第1食み出し部及び第2食み出し部は、樹脂板の両面に各ガラスシートを接着する際に、第1接着層及び第2接着層が樹脂板の端面及び各ガラスシートの端面から食み出ることによって形成されるものであることから、樹脂板に各ガラスシートを接着する工程において同時に形成されることになる。したがって、本発明では、従来のように事後的に樹脂を積層体の端面に貼り付けるという工程を経る必要はない。すなわち、本発明では、製造工数を増加させることなく積層体を製造することが可能である。
【0013】
上記の構成において、前記第1食み出し部は、前記第1ガラスシートの厚みの半分以上の範囲にわたって前記第1ガラスシートの前記端面に接触し、前記第2食み出し部は、前記第2ガラスシートの厚みの半分以上の範囲にわたって前記第2ガラスシートの前記端面に接触することが望ましい。
【0014】
このようにすることで、第1ガラスシートの端面及び第2ガラスシートの端面は、その半分以上の範囲が第1食み出し部及び第2食み出し部によって覆われることとなり、積層体に他部材が接触する場合であっても、この端面よりも各食み出し部に対して優先的に接触し易くなる。これによって、各ガラスシートの端面に他部材が直接接触する事態を回避でき、各ガラスシートの端面の破損や剥離の発生を効果的に防止できる。
【0015】
また、上記の構成において、前記第1ガラスシートは、前記第1接着層を介して前記樹脂板の前記一方の面に接着される第1の面と、前記第1の面とは反対側に位置する第2の面とを有し、前記第2ガラスシートは、前記第2接着層を介して前記樹脂板の前記他方の面に接着される第1の面と、前記第1の面とは反対側に位置する第2の面とを有し、前記第1食み出し部は、前記第1ガラスシートの前記端面の全面と前記第1ガラスシートの前記第2の面の少なくとも一部とに接触し、前記第2食み出し部は、前記第2ガラスシートの前記端面の全面と前記第2ガラスシートの前記第2の面の少なくとも一部とに接触するようにしてもよい。
【0016】
これにより、第1ガラスシートの端面の全面、及び第2ガラスシートの端面の全面が第1食み出し部及び第2食み出し部によって覆われることになり、他部材が各ガラスシートの端面に直接接触することがなくなる。すなわち、各食み出し部は、各ガラスシートの第1の面から端面を経て第2の面の一部にまで回り込むように接触することから、各ガラスシートの第1の面側と第2の面側との両側から挟み込むような状態でその端面の全面を覆うことになる。これにより、各ガラスシートの端面の全面をより強固に保護することができ、ガラスシートの端面を起点とする損傷や剥離の発生を一層効果的に防止できる。
【0017】
また、上記の構成において、前記第1食み出し部及び前記第2食み出し部は、前記樹脂板の前記端面の少なくとも一部に接触するように構成されてもよい。
【0018】
このようにすれば、第1食み出し部及び第2食み出し部は、第1ガラスシートの端面及び第2ガラスシートの端面に接触するだけでなく、樹脂板の端面にも接触することになり、各ガラスシートの端面と樹脂板の端面とを強固に連結する状態になる。これにより、特に各ガラスシートの端面の樹脂板からの剥離を効果的に防止できるようになる。
【0019】
また、上記の構成において、前記第1食み出し部と前記第2食み出し部とが繋がって一体に構成されてもよい。
【0020】
このように第1食み出し部と第2食み出し部とが一体に構成されることにより、各食み出し部は、他部材が接触したとしても、より一層脱落し難くなり、これらによる各ガラスシートの端面の保護がさらに強化されることになる。
【0021】
また、上記課題を解決するために創案された本発明は、接着層を介して樹脂板の両面にガラスシートを積層一体化してなる積層体を製造する方法において、前記樹脂板の端面及び前記ガラスシートの端面から前記接着層を食み出させることによって、前記接着層による食み出し部を形成するとともに、前記食み出し部を前記ガラスシートの前記端面の少なくとも一部に接触させることに特徴づけられる。
【0022】
これによれば、樹脂板の端面及びガラスシートの端面から接着層を食み出させることによって、ガラスシートの樹脂板への接着と同時に食み出し部を形成することができる。しかも、この食み出し部をガラスシートの端面の一部に接触させることにより、例えば積層体の側方から他部材が接触する場合であっても、この他部材を食み出し部に優先的に接触させ、ガラスシートの端面への接触を回避できる。さらに、食み出し部を接着層と一体に形成することにより、他部材が接触したとしても脱落し難い構造にでき、ガラスシートの端面を強固に保護できるようになる。これにより、ガラスシートの端面の破損や剥離を防止可能な積層体を、製造工数を増加させることなく製造することが可能になる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように本発明によれば、樹脂板の両面に接着層を介してガラスシートを積層一体化させた積層体において、その製造工数を増加させることなく、ガラスシートの端面を強固に保護することにより、ガラスシートの端面の破損や剥離を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、積層体の第1実施形態を示す断面図である。
図2図2は、積層体の第2実施形態を示す断面図である。
図3図3は、積層体の第3実施形態を示す断面図である。
図4図4は、積層体の第4実施形態を示す断面図である。
図5図5は、積層体の第5実施形態を示す断面図である。
図6図6は、積層体の第6実施形態を示す断面図である。
図7図7は、積層体の第7実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1は、本発明に係る積層体の第1実施形態を示す。本実施形態では、タッチパネルの保護カバーに用いられる積層体1を例示するが、これに限らず、積層体1は、フラットパネルディスプレイ(FPD)、太陽電池等の各種電気・電子機器用パネルに使用される他、建築構造物や各種車両の窓用パネル、展示物の保護カバー等にも使用され得る(他の実施形態において同じ)。
【0027】
図1に示すように、積層体1は、樹脂板2と、樹脂板2の一方の面(以下「第1の面」という)2aに接着される第1ガラスシート3と、樹脂板2の他方の面(以下「第2の面」という)2bに接着される第2ガラスシート4と、第1ガラスシート3を樹脂板2の第1の面2aに接着する第1接着層5と、第2ガラスシート4を樹脂板2の第2の面2bに接着する第2接着層6とを備え、これらによる5層構造を有する。積層体1を構成する樹脂板2、各ガラスシート3,4及び各接着層5,6には、透明な材質のものが使用される。
【0028】
この積層体1の総厚みは、各ガラスシート3,4の厚みの合計(第1ガラスシート3と第2ガラスシート4との厚みの和)の3倍以上とされることが好ましく、5倍以上とされることがより好ましく、10倍以上とされることが最も好ましい。これにより、積層体1に占める樹脂板2の割合を増加させることで、積層体1の軽量化を図ることができる。
【0029】
樹脂板2の厚みは、0.01mm以上20mm以下とされるが、携帯用電子デバイスに搭載されるタッチパネルの保護カバーに用いる場合は、0.1mm以上3mm以下、特に0.1mm以上2mm以下とされることが好ましい。樹脂板2の材質としては、ポリカーボネート、ポリメタアクリル酸メチル樹脂(PMMA)が好ましく、その他に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレート等の各種樹脂材料を利用できる。ここで、樹脂板2には、樹脂フィルムも含まれるものとする。
【0030】
各ガラスシート3,4としては、樹脂板2よりも薄板のものが好ましく、その厚みは、500μm以下とされ、好ましくは10μm以上300μm以下とされ、さらに好ましくは50μm以上200μm以下とされる。第1ガラスシート3の厚みと第2ガラスシート4の厚みは同一にされることが好ましいが、これらの厚みを異ならせて積層体1を構成してもよい。
【0031】
ガラスシート3,4の材質としては、ケイ酸塩ガラス、シリカガラスが用いられ、好ましくはホウ珪酸ガラス、ソーダライムガラス、アルミノ珪酸塩ガラス、化学強化ガラスが用いられ、最も好ましくは無アルカリガラスが用いられる。ガラスシート3,4として無アルカリガラスを使用することで、積層体1の透明性を向上させることができる。ここで、無アルカリガラスとは、アルカリ成分(アルカリ金属酸化物)が実質的に含まれていないガラスのことであって、具体的には、アルカリ成分の重量比が3000ppm以下のガラスのことである。本発明におけるアルカリ成分の重量比は、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは500ppm以下であり、最も好ましくは300ppm以下である。
【0032】
第1ガラスシート3及び第2ガラスシート4には、同じ種類のガラス材質のものを使用してもよく、また、異なった種類のガラス材質のものを使用してもよい。積層体1をタッチパネルの保護カバーとして使用する場合には、ユーザによるタッチ操作が行われる側のガラスシート(例えば第1ガラスシート3)に、耐候性や耐薬品性により優れる無アルカリガラスによるものを使用し、反対側のガラスシート(例えば第2ガラスシート4)にソーダライムガラス等によるものを使用することもできる。
【0033】
ガラスシート3,4は、その厚みを300μm以下にまで薄肉化しても、大きく撓むことのない適正な剛性を有するように、そのヤング率を可能な限り大きくすることが望ましい。この観点から、ガラスシート3,4のヤング率は、50GPa以上とされ、好ましくは60GPa以上とされ、70GPa以上とされることが最も好ましい。
【0034】
ガラスシート3,4は、公知のフロート法、ロールアウト法、スロットダウンドロー法、リドロー法等を使用することができるが、オーバーフローダウンドロー法によって成形されていることが好ましい。オーバーフローダウンドロー法は、断面が略くさび形の成形体の上部に設けられたオーバーフロー溝に溶融ガラスを流し込み、このオーバーフロー溝から両側に溢れ出た溶融ガラスを成形体の両側の側壁部に沿って流下させながら、成形体の下端部で融合一体化し、1枚の板ガラスを連続成形するというものである。
【0035】
オーバーフローダウンドロー法により、厚み300μm以下のガラスシート3,4を大量かつ安価に作製することができる。これにより作製されたガラスシート3,4は、研磨や研削、ケミカルエッチング等によってガラスシート3,4の厚みの調整をする必要がない。また、オーバーフローダウンドロー法は、成形時にガラス板の両面が、成形部材と接触しない成形法であり、得られたガラス板の両面(透光面)は火造り面となり、研磨しなくても高い表面品位を得ることができる。これにより、ガラスシート3,4に対する接着層5,6の密着力を向上させることができ、より正確かつ精密にガラスシート3,4と樹脂板2とを積層させることが可能となる。
【0036】
各ガラスシート3,4は、樹脂板2に接着される面(以下「第1の面」という)3a,4aと、この第1の面3a,4aとは反対側に位置する面(以下「第2の面」という)3b,4bと、第1の面3a,4aと第2の面3b,4bとの間に形成される端面3c,4cとを有する。第1ガラスシート3の第1の面3aは、第1接着層5によって樹脂板2の第1の面2aに接着される。また、第2ガラスシート4の第1の面4aは、第2接着層6によって樹脂板2の第2の面2bに接着される。各ガラスシート3,4の第2の面3b,4bは、積層体1の外面を構成するものである。各ガラスシート3,4の端面3c,4cは、樹脂板2の端面2cと面一になるように配置されている。
【0037】
各接着層5,6の厚みは、1μm以上500μm以下とされる。各接着層5,6の材質としては、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)、及びUV硬化樹脂が好適に使用され得るが、その他に、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、紫外線硬化性アクリル系接着剤、紫外線硬化性エポキシ系接着剤、熱硬化性エポキシ系接着剤、熱硬化性メラミン系接着剤、熱硬化性フェノール系接着剤等が使用され得る。
【0038】
また、積層体1は、第1接着層5及び第2接着層6が樹脂板2の端面2c及び各ガラスシート3,4の端面3c,4cから食み出ることによって形成される食み出し部7を有する。ガラスシート3,4の端面3c,4cからの食み出し部7の食み出し寸法(突出寸法)Dは、0.01mm以上5mm以下、好ましくは0.1mm以上3mm以下とされる(他の実施形態において同じ)。食み出し部7は、第1接着層5及び第2接着層6と一体に構成されるとともに、各ガラスシート3,4の端面3c,4cの全面、及び樹脂板2の端面2cの全面に接触している。また、食み出し部7は、各ガラスシート3,4の第2の面3b,4bの一部に接触した状態となっている。食み出し部7が各ガラスシート3,4の第2の面3b,4bに接触する範囲Lは、1mm以上3mm以下とされることが好ましい(他の実施形態において同じ)。
【0039】
以下、上記構成の積層体1を製造する方法について説明する。まず、樹脂板2と、樹脂板2と同じ大きさ(面積)のガラスシート3,4とを用意する。次に、ガラスシート3,4の一方(例えば第1ガラスシート3)に接着層(例えば第1接着層5)を積層し、その上に樹脂板2を積層し、この樹脂板2上に接着層(例えば第2接着層6)を積層し、その上に他方のガラスシート(例えば第2ガラスシート4)を積層する。このとき、後の工程において、各接着層5,6が樹脂板2の端面2c及びガラスシート3,4の端面3c,4cから食み出るように、所定サイズの各接着層5,6を積層することが必要である。
【0040】
その後、上記のように樹脂板2、ガラスシート3,4及び接着層5,6を積層した状態で、これらをオートクレーブ装置により熱圧着して接合させる。
【0041】
この熱圧着により、第1接着層5及び第2接着層6が樹脂板2の端面2c及び各ガラスシート3,4の端面3c,4cから食み出して、樹脂板2の端面2cと各ガラスシート3,4の端面3c,4cに接触し、さらに各ガラスシート3,4の第2の面3b,4bにまで達する。このようにして形成される食み出し部7は、各接着層5,6と一体となったままで硬化し、樹脂板2の端面2c,及び各ガラスシート3,4の端面3c,4cに強固に固着する。以上によって、その端部が食み出し部7によって覆われた積層体1が完成する。
【0042】
なお、紫外線硬化性の接着剤(UV硬化樹脂)を用いて積層体1を製造する場合には、オートクレーブ装置を使用せず、この接着剤を樹脂板2とガラスシート3,4との間に介在させた状態で紫外線を照射する。
【0043】
以上のように、積層体1は、樹脂板2、各ガラスシート3,4及び各接着層5,6による5層構造を基本とするが、これに限らず、例えば第1ガラスシート3に追加の接着層を介して別のガラスシートをさらに積層することにより、7層以上の多層構造を有していてもよい。
【0044】
また、積層体1の外面、すなわち、各ガラスシート3,4の第2の面3b,4bに、反射防止膜層や汚染防止膜層を形成してもよい。これらの層は、各ガラスシート3,4が樹脂板2に接着される前に形成され得る。
【0045】
例えば反射防止膜層は、無機材料から構成されていることが好ましく、低屈折率層と高屈折率層の交互膜からなることがより好ましい。低屈折率層としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム及びフッ化マグネシウムからなる群から選ばれた一種であることが好ましく、片面における低屈折膜の総物理膜厚は100nm〜700nmであることが好ましい。また、高屈折率膜としては、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化チタン、酸化スズ及び酸化亜鉛からなる群から選ばれた一種であることが好ましく、片面における高屈折率膜の総物理膜厚は、50nm〜250nmであることが好ましい。
【0046】
ガラスシート3,4に反射防止膜層を形成する方法としては、スパッタ法、真空蒸着法、ディッピング法、スピンコート法、イオンプレーティング法、CVD法等の方法が利用可能であるが、膜厚が均一となり、ガラスシート3,4との接着が強固になり、しかも膜硬度が高くなるという点で、スパッタ法が特に有利である。
【0047】
以上説明した本実施形態に係る積層体1及びその製造方法によれば、各接着層5,6に起因する食み出し部7が各ガラスシート3,4の端面3c,4cに接触していることから、積層体1の側方から他部材が接触したとしても、この他部材は、ガラスシート3,4の端面3c,4cに接触せず、これらを覆う食み出し部7に接触することになる。食み出し部7は、各接着層5,6と一体に構成されるとともに、各ガラスシート3,4の端面3c,4cに固着しているため、他部材が接触したとしても脱落し難くなっており、各端面3c,4cを長期にわたって強固に保護することになる。これにより、各ガラスシート3,4の端面3c,4cの破損や剥離の発生を確実に防止できる。さらに、食み出し部7は、樹脂板2の端面2cの全面と、各ガラスシート3,4の第2の面3b,4bの一部にも接触していることから、積層体1の端部の全てを覆うことになる。これにより、ガラスシート3,4の端面3c,4cに対する他部材の接触を確実に防止し、端面3c,4cにおける損傷や剥離の発生を一層効果的に防止できる。
【0048】
また、食み出し部7は、樹脂板2にガラスシート3,4を接着する際に、各接着層5,6が樹脂板2の端面2c及び各ガラスシート3,4の端面3c,4cから食み出ることによって形成されるものであることから、樹脂板2にガラスシート3,4を接着する工程で同時に形成されることになる。したがって、従来のように事後的に樹脂を積層体1の端面に貼り付けるという工程を経る必要はない。したがって、本発明では、製造工数を増加させることなく積層体を製造することが可能である。
【0049】
図2は、本発明に係る積層体の第2実施形態を示す。上記の第1実施形態では、食み出し部7が各ガラスシート3,4の第2の面3b,4bの一部にまで接触するように構成されていたが、本実施形態では、食み出し部7は、この第2の面3b,4bに接触しておらず、各ガラスシート3,4の端面3c,4cの全面と、樹脂板2の端面2cの全面とに接触し、これらを覆って保護している。
【0050】
図3は、本発明に係る積層体の第3実施形態を示す。本実施形態では、食み出し部7は、樹脂板2の端面2cの全面に接触しているが、各ガラスシート3,4に関しては、端面3c,4cの全面ではなく、その一部に接触している。食み出し部7がガラスシート3,4の端面3c,4cに接触する範囲Wは、ガラスシート3,4の厚みの半分(1/2)以上であることが望ましい(他の実施形態において同じ)。本実施形態では、食み出し部7は、ガラスシート3,4の厚みの約半分の範囲にわたってその端面3c,4cに接触している。
【0051】
このように、食み出し部7は、第1実施形態及び第2実施形態のように各ガラスシート3,4の端面3c,4cの全面に接触するのみならず、各ガラスシート3,4の端面3c,4cの一部に接触することによっても積層体1の端部を保護することができる。すなわち、食み出し部7は、各ガラスシート3,4の端面3c,4cの少なくとも一部に接触することにより、各ガラスシート3,4の損傷や剥離の発生を防止できる。
【0052】
図4は、本発明に係る積層体の第4実施形態を示す。本実施形態に係る積層体1は、樹脂板2の端面2c及び第1ガラスシート3の端面3cから第1接着層5が食み出ることにより形成される第1食み出し部8と、樹脂板2の端面2c及び第2ガラスシート4の端面4cから第2接着層6が食み出ることによって形成される第2食み出し部9とを備える。
【0053】
第1食み出し部8は、第1ガラスシート3の端面3cの一部に接触している。より具体的には、第1食み出し部8は、第1ガラスシート3の厚みの約半分までの範囲にわたって、その端面3cに接触している。また、第1食み出し部8は、樹脂板2の端面2cの一部にも接触している。
【0054】
第2食み出し部9は、第2ガラスシート4の端面4cの一部に接触している。より具体的には、第2食み出し部9は、第2ガラスシート4の厚みの約半分までの範囲にわたって、その端面4cに接触している。また、第2食み出し部9は、樹脂板2の端面2cの一部にも接触している。
【0055】
本実施形態と第1実施形態とを比較した場合、本実施形態における第1食み出し部8及び第2食み出し部9は、第1実施形態よりも、各接着層5,6の食み出し量(体積)を少なくすることにより、第1接着層5に対応する位置と第2接着層6に対応する位置との2個所に分かれて形成されることになる。換言すれば、第1実施形態の場合には、各接着層5,6の食み出し量(体積)を本実施形態の場合よりも多くすることにより、第1食み出し部8と第2食み出し部9とが繋がって一体となり、1つの食み出し部7を構成しているとも言える。
【0056】
図5は、本発明に係る積層体の第5実施形態を示す。本実施形態に係る積層体1では、第1食み出し部8及び第2食み出し部9の構成が第4実施形態と異なる。第4実施形態において、第1食み出し部8は、第1ガラスシート3の端面3cの一部に接触していたが、本実施形態では、第1ガラスシート3の端面3cの全面に接触するとともに、この第1ガラスシート3の第2の面3bの一部にも接触している。同様に、第2食み出し部9は、第2ガラスシート4の端面4cの全面に接触するとともに、この第2ガラスシート4の第2の面4bの一部にも接触している。
【0057】
図6は、本発明に係る積層体の第6実施形態を示す。本実施形態では、樹脂板2の大きさ(面積)が各ガラスシート3,4よりも大きくなっており、樹脂板2の端面2cが、各ガラスシート3,4の端面3c,4cよりも突出している。このため、各ガラスシート3,4の端面3c,4cからの各食み出し部8,9の食み出し寸法(以下「第1食み出し寸法」という)D1と、樹脂板2の端面2cからの各食み出し部8,9の食み出し寸法(以下「第2食み出し寸法」という)D2とが異なっている。具体的には、第2食み出し寸法D2が、第1食み出し寸法D1よりも小さくなっている(D2<D1)。また、各食み出し部8,9は、各ガラスシート3,4の端面3c,4cの一部に接触しているが、樹脂板2の端面2cには接触していない。
【0058】
図7は、本発明に係る積層体の第7実施形態を示す。本実施形態に係る積層体1は、第1食み出し部8及び第2食み出し部9の構成が第6実施形態と異なる。第6実施形態では、各食み出し部8,9は、各ガラスシート3,4の端面3c,4cの一部に接触していたが、本実施形態では、各食み出し部8,9は、各ガラスシート3,4の端面3c,4cの全面に接触するとともに、各ガラスシート3,4の第2の面3b,4bの一部にも接触している。なお、本実施形態においても第6実施形態と同様に、第2食み出し寸法D2が、第1食み出し寸法D1よりも小さくなっている(D2<D1)。
【0059】
なお、本発明に係る積層体は、上記実施形態の構成に限定されるものではない。また、本発明に係る積層体は、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明に係る積層体は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0060】
上記の第1実施形態乃至第7実施形態では、食み出し部7,8,9が樹脂板2の端面2cの全周に亘って食み出している例を示したが、これには限定されず、食み出し部7,8,9は、少なくとも樹脂板2の一部の端面2cから食み出していればよい。
【実施例】
【0061】
上記の第2実施形態(図2参照)に係る積層体の試験体(実施例)を製造し、その効果を確認した。この試験体では、樹脂板として、151mm×201mm、厚み3.0mmのポリカーボネート板を使用し、各ガラスシートとして、148mm×198mm、厚み200μmのものを使用した。なお、各ガラスシートには、日本電気硝子株式会社製の無アルカリガラス(製品名:OA−10G)を用いた。また、各接着層として、150mm×200mm、厚み400μmのエチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)によるものを使用した。
【0062】
接着層を介してポリカーボネート板の両面にガラスシートを重ね合わせ、これに対してオートクレーブ装置による加熱圧着を行った。この場合において、加熱温度120℃、圧力1MPa、加熱圧着時間1時間の条件により加熱圧着を実施した。このような手法により20個の試験体を作製し、各試験体について剥離・損傷の発生の有無に関する試験を実施した。その結果、全ての試験体について剥離・損傷に対する十分な防止効果を確認することができた。
【符号の説明】
【0063】
1 積層体
2 樹脂板
2a 樹脂板の一方の面
2b 樹脂板の他方の面
2c 樹脂板の端面
3 第1ガラスシート
3a 第1ガラスシートの第1の面
3b 第1ガラスシートの第2の面
3c 第1ガラスシートの端面
4 第2ガラスシート
4a 第2ガラスシートの第1の面
4b 第2ガラスシートの第2の面
4c 第2ガラスシートの端面
5 第1接着層
6 第2接着層
7 食み出し部
8 第1食み出し部
9 第2食み出し部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7