特許第6700639号(P6700639)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プロメティック・ファーマ・エスエムティ・リミテッドの特許一覧

特許6700639骨粗しょう症の予防及び治療用の置換芳香族化合物ならびに医薬組成物
<>
  • 特許6700639-骨粗しょう症の予防及び治療用の置換芳香族化合物ならびに医薬組成物 図000024
  • 特許6700639-骨粗しょう症の予防及び治療用の置換芳香族化合物ならびに医薬組成物 図000025
  • 特許6700639-骨粗しょう症の予防及び治療用の置換芳香族化合物ならびに医薬組成物 図000026
  • 特許6700639-骨粗しょう症の予防及び治療用の置換芳香族化合物ならびに医薬組成物 図000027
  • 特許6700639-骨粗しょう症の予防及び治療用の置換芳香族化合物ならびに医薬組成物 図000028
  • 特許6700639-骨粗しょう症の予防及び治療用の置換芳香族化合物ならびに医薬組成物 図000029
  • 特許6700639-骨粗しょう症の予防及び治療用の置換芳香族化合物ならびに医薬組成物 図000030
  • 特許6700639-骨粗しょう症の予防及び治療用の置換芳香族化合物ならびに医薬組成物 図000031
  • 特許6700639-骨粗しょう症の予防及び治療用の置換芳香族化合物ならびに医薬組成物 図000032
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6700639
(24)【登録日】2020年5月8日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】骨粗しょう症の予防及び治療用の置換芳香族化合物ならびに医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/192 20060101AFI20200518BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20200518BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20200518BHJP
【FI】
   A61K31/192
   A61P19/10
   A61P43/00 111
【請求項の数】14
【全頁数】56
(21)【出願番号】特願2017-518905(P2017-518905)
(86)(22)【出願日】2015年10月8日
(65)【公表番号】特表2017-530180(P2017-530180A)
(43)【公表日】2017年10月12日
(86)【国際出願番号】CA2015000540
(87)【国際公開番号】WO2016054728
(87)【国際公開日】20160414
【審査請求日】2018年10月5日
(31)【優先権主張番号】62/062,597
(32)【優先日】2014年10月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516212946
【氏名又は名称】リミナル・バイオサイエンシーズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Liminal BioSciences Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】リン・ギャニオン
(72)【発明者】
【氏名】ブリジット・グルー
【審査官】 長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】 特表2017−530179(JP,A)
【文献】 特表2013−545729(JP,A)
【文献】 特表2013−544799(JP,A)
【文献】 HORWOOD, N.J. et al.,IL-12 alone and in synergy with IL-18 inhibits osteoclast formation in vitro,The Journal of Immunology,2001年,Vol.166, No.8,pp.4915-4921.
【文献】 古賀 慎太郎,骨代謝関連細胞の機能評価系の確立,福岡県工業技術センター研究報告,2009年,No.19,pp.41-44.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/192
A61P 19/10
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨粗しょう症の予防および/または治療のための医薬であって、式I:
【化1】
式中、
AはCアルキル、Cアルキル、Cアルケニル、またはアルケニルであり、
はH、FまたはOHであり、
はH、F、OH、Cアルキル、Cアルキル、Cアルケニル、Cアルケニル、C(O)−(CH−CHまたはCH(OH)−(CH−CH、但し、nは3または4であり、
はH、F、OHまたはCHPhであり、
はH、FまたはOHであり、
Qは、
1)(CHC(O)OH、但し、mは1もしくは2、
2)CH(F)−C(O)OH、
3)CF−C(O)OH、または
4)C(O)−C(O)OH
である
によって表わされる化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、医薬。
【請求項2】
AおよびRがそれぞれ独立してCアルキルまたはCアルキルである、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
がH、OHまたはCHPhである、請求項1または2に記載の医薬。
【請求項4】
Qが(CHC(O)OH、但し、mは1である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項5】
AがCアルキルまたはCアルキルであり、RがH、F、OH、CアルキルまたはCアルキルであり、RがH、OHまたはCHPhであり、Qが(CHC(O)OH、但し、mは1または2である、請求項1に記載の医薬。
【請求項6】
化合物が、以下の構造:
【化2】


によって表される化合物、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される、請求項1に記載の医薬。
【請求項7】
化合物が以下の構造:
【化3】
によって表される化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項6に記載の医薬。
【請求項8】
化合物が以下の構造:
【化4】
によって表される化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項6に記載の医薬。
【請求項9】
薬学的に許容される塩が、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、アンモニウム、マンガン、亜鉛、鉄または銅からなる群より選択される金属対イオンを含む塩基付加塩である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項10】
骨粗しょう症が、閉経後骨粗しょう症(原発性1型)、原発性2型骨粗しょう症、続発性骨粗しょう症、異常に高い破骨細胞形成、骨軟化症様骨粗しょう症、骨減少症、骨形成不全症、大理石骨病、骨壊死、骨のパジェット病、低リン酸血症およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項11】
骨粗しょう症が、閉経後骨粗しょう症(原発性1型)、原発性2型骨粗しょう症または続発性骨粗しょう症である、請求項10に記載の医薬。
【請求項12】
骨減少の予防および/または低減のための医薬であって、請求項1〜9のいずれか1項に定義される、式Iによって表わされる化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、医薬。
【請求項13】
骨形成の刺激、ならびに/または骨再形成の刺激、ならびに/または骨芽細胞の分化および石灰化の刺激、ならびに/または骨吸収の阻害のための医薬であって、請求項1〜9のいずれか1項に定義される、式Iによって表わされる化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、医薬。
【請求項14】
化合物が、ビスホスホネート、オダナカチブ、アレンドロネート、リセドロネート、エチドロネート、ゾレドロネート、パミドロネート、テリパラチド、タモキシフェン、ラロキシフェンおよびデノスマブからなる群より選択される薬物と併用される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬分野に関する。本発明の特定の態様は、骨粗しょう症の予防または治療のための化合物、医薬組成物及びそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
骨は骨再形成として知られる過程によって常に代謝回転し更新される、非常に動的な組織である。骨を再形成することができることによって、古くなった骨または損傷を受けた組織が確実に再生され、骨格構造が最も効率よく機械的な必要事項に確実に適応することができる。骨再形成は、数週間継続する骨吸収段階における、破骨細胞による古い骨の除去から開始される。次いで骨芽細胞がびらん腔へと遊走し、3または4ヶ月にわたって新骨を沈着させる。正常な骨格においては、骨再形成は、沈着する新骨の量が除去された骨と等しくなるように、破骨細胞の活性と骨芽細胞の活性とを連結し、それによって健全な骨量を維持する。しかし、骨吸収が骨形成に勝ると骨の正味の減少が起こる。結果として起こる疾病である骨粗しょう症は、過剰な骨吸収及びそれに続く、骨の脆さの増大を伴う低骨量を特徴とする。
【0003】
骨粗しょう症とは、単位容積当たりの骨重量が十分な機械的支持に必要な水準以下にまで低下することを特徴とする、多様な病因の骨の疾患に対して用いられる総称である(Krane, S.M. et al., “Metabolic Bone Disease” in Harrison’s Principles of Internal Medicine, page 1889, Edition 11 (1987))。骨粗しょう症の一形態は、老齢層に費やされる医療費の大きな部分の要因になっている老人性骨粗しょう症である(Resnick, N.M. et al. “Senile Osteoporosis Reconsidered”, JAMA 261, 1025-1029 (1989))。骨粗しょう症の他の最も一般的な2つの形態は、閉経前または閉経後骨粗しょう症及び副腎皮質ステロイド誘導性骨粗しょう症である。慢性腎臓疾患(CKD)の患者は、ミネラルの代謝の変化及びそれに続く骨構造の変化の結果としての骨粗しょう症を含み得る、骨疾患を発症する場合がある。最も多くの場合、これらの変化は進行性の腎機能の低下に伴って悪化する。実際に、且つ以下の段落に概括するように、骨粗しょう症の発症の確率を高める多数の病的状況が起こり得る。骨軟化症様骨粗しょう症は、カルシウムの減少などの骨粗しょう症の多くの症状を共有する。骨減少症とは、正常な骨密度よりも低いが骨粗しょう症において観測される骨密度ほどは低くない骨密度をいう。骨減少症は骨粗しょう症の前兆と考えられる。骨形成不全症は骨折が発性しやすい脆い骨を特徴とする先天的な骨障害である。大理石骨病は希に見られる遺伝性の疾患であり、これにより骨が硬くなるが正常な骨よりも脆くなる。骨壊死は骨への血液供給の低下に起因して骨の死及び崩壊を起こす疾患である。骨のパジェット病は、骨の過剰な分解及び形成ならびにそれに続く無秩序な骨再形成によって起る。
【0004】
既知のとおり、様々な疾患及び疾病が骨粗しょう症を引き起し得る。すなわち、関節リウマチ、狼瘡及び多発性硬化症を含む自己免疫疾患;セリアック病、炎症性腸疾患、胃切除術及び胃腸バイパス術を含む消化管障害;糖尿病、副甲状腺機能亢進症、甲状腺中毒症及びクッシング症候群を含む内分泌/ホルモン障害;白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、鎌状赤血球病貧血(骨髄障害)及びサラセミアを含む血液学的障害;乳癌及び前立腺癌を含む癌;うつ病、パーキンソン病及び脊髄損傷を含む神経学的障害;肺疾患(COPD、気腫)、肝臓疾患及び慢性腎臓疾患を含む臓器疾患;強直性脊椎炎;エイズ/HIV;骨折;摂食障害及び栄養失調を含む粗食;ならびに更年期(閉経前及び閉経後)である。
【0005】
歴史的には、骨芽細胞が、破骨細胞発生の制御、したがって骨吸収の制御におけるマスターセルと考えられてきた。今日では、免疫系の細胞と骨細胞との間の相互作用が、骨吸収の調節に関する考え方を再定義している。破骨細胞及び骨破壊におけるその役割を識別すれば、破骨細胞の吸収能を低下させる標的療法が可能となる。かかる療法としては、破骨細胞分化を促進する重要なサイトカインの1つであるNFκB活性化受容体リガンド(RANKL)を妨害し得る薬剤の使用が挙げられる。これは、アムジェン社によって開発中の組換えFcオステオプロテジェリン(Fc−OPG)またはヒト化抗RANKL抗体(デノスマブ)の使用によって達成され得る。両製品は骨減少の前臨床モデルにおいて有効性を実証し、デノスマブは臨床治験を通じて進行中であり、Fc−OPGは免疫副作用のために臨床治験から撤退した。破骨細胞活性の他の阻害剤としては、ビスホスホネート、c−src阻害剤、カテプシンK阻害剤及び塩化物チャネルの阻害剤CLC7が挙げられる(Gillespie, M.T. (2007) Arthritis Research & Therapy, Volume 9, No. 2, pp. 103−105)。特に、ビスホスホネートは、関節炎のげっ歯類モデルにおいて骨減少の制限に成功している。但し、窒素含有ビスホスホネート(アルドロネート(aldronate)、イバンドロネート、パミドロネート及びゾレドロネートを含む)はγ/δTリンパ球の増殖を高める一方、非窒素含有ビスホスホネート(例えば、クロンドロネート)はこれを促進しないことに留意する必要がある(Gillespie, M.T. (2007) Arthritis Research & Therapy, Volume 9, No. 2, pp. 103−105)。
【0006】
現在の殆どの治療戦略は、骨粗しょう症の発症を遅延させるためにカルシウムの骨減少を低減することを試みている(Dawson−Hughes, B. et al., “A controlled trial of the effect of calcium supplementation on bone density in postmenopausal women” NEJM 323, 878-883 (1990))。従って、骨粗しょう症の治療に最も一般的に用いられる化合物は、ビスホスホネート薬物類に属する。ビスホスホネート薬物類は骨に強く結合し、破骨細胞の内部に移行して骨吸収を阻害する。ビスホスホネートは経口または静脈内経路によって投与することができる。アレンドロネート(Fosmax(商標)、経口用)は閉経後骨粗しょう症の治療に最も一般的に処方される薬物である。他の米国FDA認可のビスホスホネートは、リセドロネート(アクトネル(商標)、経口用)、エチドロネート(ダイドロネル(商標)、経口用)、ゾレドロネート(アクラスタ(商標)、輸液用)及びパミドロネート(Aredial(商標)、輸液用)である。経口用ビスホスホネートは消化管の副作用を伴う。一般的には、ビスホスホネートに伴う副作用としては、骨折の最も一般的な部位である骨の頭部ではない、大腿(大腿骨)における異常な骨折が挙げられる。但し、ビスホスホネートの長期使用に伴うこれらの骨折は、骨粗しょう症に伴う一般的な股関節骨折の頻度と比較すると稀である。それにもかかわらず、長期間ビスホスホネートを使用すると、骨代謝回転が過剰に抑制され、その後に骨の微小亀裂の治癒が困難になり、これらの亀裂が進展し、最終的には非外傷性骨折に至ることになり得るとの懸念がある。更に、食道癌の危険性の増加は経口ビスホスホネートの長期使用を伴う。また、ビスホスホネート、特にゾレドロネート及びアレンドロネートの使用は、心房細動に対する危険因子としての報告がなされている。最後に、癌の治療のために静脈内投与されるビスホスホネートは、顎の骨壊死と関連付けられている。
【0007】
副甲状腺ホルモン(1〜84PTH)は、カルシウム恒常性及び、断続的な投与に際しては、骨再形成に対する同化作用において中心的役割を果たす。米国FDA認可のテリパラチド(フォルテオ)は、骨折の危険性が高い男性及び閉経後の女性の骨粗しょう症の治療に用いられる、PTHの一部(アミノ酸1〜34)の組換え型である。テリパラチドは骨折の治癒を促進するために一部適応外で用いられる場合がある。テリパラチドは骨芽細胞形成を増進し、骨芽細胞のアポトーシスを防止する。しかし、テリパラチドの骨への同化作用にもかかわらず、関連する動物モデルにおける骨肉腫の高い発生率のために、骨粗しょう症の治療に対する使用は抑制されてきた。したがって、テリパラチドは骨腫瘍の危険性が高い患者には推奨されない。
【0008】
長期のホルモン補充療法の副作用(心血管系障害、子宮の及び癌等)の可能性の結果として、該療法はもはや骨粗しょう症の予防には推奨されない。したがって、該療法は、タモキシフェン及びラロキシフェンが例として挙げられる、選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)の部類の薬物の導入によってある程度置き換えられている。ラロキシフェン塩酸塩は、(エビスタ)閉経後の女性の骨粗しょう症の予防に対して米国FDAの認可を受けた。実際、毎日の経口投与によるアレンドロネート(ビスホスホネート)との直接の比較により、毎日の経口投与によるラロキシフェンは、骨折の危険性を低減しつつ、同等に有効であることが実証された。但し、ラロキシフェンの副作用には、致命的な脳卒中及び静脈血栓塞栓症の危険性の増加が含まれる。その他の副作用としては、脚の腫れ、呼吸困難及び視力の変化が挙げられる。
【0009】
デノスマブは骨粗しょう症、治療誘導性骨減少、骨転移、多発性骨髄腫及び骨の巨細胞腫瘍の治療のための完全ヒトモノクローナル抗体である。デノスマブは、(プロリア)閉経後の女性の骨粗しょう症の予防に対して、及び(Xgeva)固形腫瘍からの骨転移を有する患者の骨格関連事象の予防に対して米国FDAの認可を受けた。この抗体は、多くの骨減少疾病における骨除去に対する一次シグナルとして作用するタンパク質であるRANKL(RANKリガンド)に結合し、これを阻害する。破骨細胞前駆細胞(前破骨細胞)はRANK受容体を発現する。それに続くRANKLの結合が、受容体の活性化及び前破骨細胞の破骨細胞への成熟を誘導する。しかし、デノスマブの副作用としては、尿路及び気道の感染症、白内障、便秘、発疹及び関節痛が挙げられる。
【0010】
上記から分かるように、多数の選択肢が骨粗しょう症の予防及び/または治療に利用可能ではあるが、この選択には、骨粗しょう症の予防及び/または治療に利用可能な普遍的な薬物がないという事実が暗示されている。これも上記から明らかなように、引用したそれぞれの治療の選択肢は複数の副作用を伴う。実際、ヒトの使用に対して認可された上記の薬物及び副作用が、科学文献に詳細に記載されている。例えば、骨粗しょう症及び現在の療法及びその副作用の主題に関する比較的最近の総説として、“Osteoporosis − a current view of pharmacological prevention and treatment” Das, S. Crockett, J.C. Drug Design, Development and Therapy 7, 435-448 (2013)がある。このように、骨粗しょう症の予防及び/または治療のための、より普遍的で、(特に、寿命の増加、したがって薬物投与期間の長期化との観点から)安全な薬剤に対するニーズが存在する。したがって、新しい治療法が求められている。
【0011】
アストラゼネカAB社に譲渡された米国特許第6,372,728号(2002年)には、ビスホスホネート、例えばアレンドロネートの改良された経口製剤が記載される。該特許によれば、多くのビスホスホネートの経口での生物学的利用能は食間で1%〜10%である。上記改良された製剤は中鎖グリセリド吸収促進剤を使用している。ペンシルバニア大学に譲渡された米国特許第5,070,108号(1991年)は、エトレチネートなどのレチノイドによる骨粗しょう症の治療を権利請求する。エトレチネートは当初乾癬の治療に対してFDAによる認可を受けたが、先天性欠損症の危険性が高いために北米市場から排除されている。オダナカチブは酵素カテプシンKの阻害剤である新規薬物であり、骨粗しょう症及び骨転移の治療に向けて臨床開発中である。
【0012】
本発明は、骨粗しょう症に罹患しているまたは骨粗しょう症に感受性である患者向けの新規な治療方法、化合物及び医薬組成物に対するニーズに取り組むことを目的とする。
【0013】
本発明の更なる特徴は、本明細書における本発明の議論、図及び説明の検討から明らかになろう。
【発明の概要】
【0014】
本発明の概括的な態様は、本明細書に定義される式Iに基づく化合物及びそれらの薬学的に許容される塩の医薬としての使用に関する。
【0015】
本発明の特定の態様は、骨粗しょう症の予防及び/または治療のための化合物及び組成物の使用に関する。特定の態様は、対象における様々な形態の骨粗しょう症に対して、予防上有効な及び/または治療上有効な薬剤としての、本明細書に定義される式Iに基づく化合物及びそれらの薬学的に許容される塩に関する。特定の実施形態によれば、上記対象は、骨減少、骨折などに罹患しているかまたはそれらの罹患に感受性である。
【0016】
特定の実施形態によれば、本発明の化合物及び組成物は、骨形成の刺激、ならびに/または骨再形成の刺激、ならびに/または骨芽細胞の分化及び石灰化の刺激、ならびに/または骨吸収の阻害に有用である。
【0017】
本発明の特定の態様は、骨粗しょう症の予防及び/または治療方法であって、該方法を必要とする対象に、本明細書において定義される、式Iよって表わされる化合物、またはその薬学的な許容される塩を投与するステップを含む上記方法に関する。いくつかの実施形態において、上記骨粗しょう症は、閉経後骨粗しょう症(原発性1型)、原発性2型骨粗しょう症、続発性骨粗しょう症異常に高い破骨細胞形成、骨軟化症様骨粗しょう症、骨減少症、骨形成不全症、大理石骨病、骨壊死、骨のパジェット病、低リン酸血症及びこれらの組み合わせからなる群より選択される。特定の実施形態において、上記骨粗しょう症は、閉経後骨粗しょう症(原発性1型)、原発性2型骨粗しょう症または続発性骨粗しょう症である。より詳細な実施形態において、上記骨粗しょう症は閉経後骨粗しょう症(原発性1型)である。
【0018】
本発明はまた、本発明の化合物が、対象において1または複数の以下の生物学的活性、すなわち、破骨細胞形成の阻害、刺激された破骨細胞前駆細胞によるインターロイキン−12(IL−12)産生の刺激、骨細胞における酸性ホスファターゼ活性の低減(破骨細胞形成の低減の証拠となる)、破骨細胞形成の低減を示す、骨におけるオステオプロテジェリン(OPG)に対するNF−κB活性化受容体リガンド(RANKL)の比(RANKL/PG比)の低減、骨中のコラーゲン含有量の増加、及びアディポネクチンの血清レベルの調節(例えば増加)を示す治療方法に関する。
【0019】
別の態様によれば、本発明の態様は、骨減少の予防及び/または低減方法であって、該方法を必要とする対象に、本明細書において定義される、式Iによって表わされる化合物またはその薬学的な許容される塩を投与するステップを含む上記方法に関する。一実施形態において、上記化合物の上記投与はカルシウムの減少を低減する。一実施形態において、上記対象は骨粗しょう症に罹患しているかまたは骨粗しょう症に感受性である。一実施形態において、上記対象は閉経後の女性である。
【0020】
別の態様によれば、本発明は、破骨細胞前駆細胞を、本明細書に定義される、式Iよって表わされる化合物またはその薬学的な許容される塩に接触させることを含み、上記化合物が上記前駆細胞の破骨細胞への分化を阻害する、破骨細胞形成の阻害方法に関する。
【0021】
別の態様によれば、本発明は、刺激された破骨細胞前駆細胞によるインターロイキン−12(IL−12)産生の刺激方法であって、上記刺激された破骨細胞前駆細胞を、本明細書に定義される、式Iよって表わされる化合物またはその薬学的な許容される塩に接触させることを含み、上記化合物の存在で、IL−12産生の増加が測定可能である、上記方法に関する。
【0022】
別の態様によれば、本発明は、骨細胞における酸性ホスファターゼ活性の低減方法であって、上記骨細胞を、本明細書に定義される、式Iよって表わされる化合物またはその薬学的な許容される塩に接触させることを含み、上記化合物の存在で、ホスファターゼ活性の低減が測定可能である、上記方法に関する。
【0023】
別の態様によれば、本発明は、骨細胞におけるNF−κB活性化受容体リガンド/オステオプロテジェリン比(RANKL/OPG比)の発現及び/または活性の低減方法であって、上記骨細胞を、本明細書に定義される、式Iよって表わされる化合物またはその薬学的な許容される塩に接触させることを含む、上記方法に関する。
【0024】
別の態様によれば、本発明は、骨中のコラーゲン含有量の増加方法であって、上記骨を、本明細書に定義される、式Iよって表わされる化合物またはその薬学的な許容される塩に接触させることを含む、上記方法に関する。
【0025】
別の態様によれば、本発明は、骨形成の刺激方法、ならびに/または骨再形成の刺激方法、ならびに/または骨芽細胞の分化及び石灰化の刺激方法、ならびに/または骨吸収の阻害方法であって、上記骨における骨芽細胞を、本明細書に定義される、式Iよって表わされる化合物またはその薬学的な許容される塩に接触させることを含む、上記方法に関する。
【0026】
別の態様によれば、本発明は、対象におけるアディポネクチンの血清レベルの調節方法であって、該方法を必要とする対象に、本明細書に定義される、式Iよって表わされる化合物またはその薬学的な許容される塩を投与するステップを含む、上記方法に関する。一実施形態において、上記対象は肥満及び/または糖尿病である。
【0027】
本発明の更なる態様は、ビスホスホネート、オダナカチブ、アレンドロネート、リセドロネート、エチドロネート、ゾレドロネート、パミドロネート、テリパラチド、タモキシフェン、ラロキシフェン、及びデノスマブからなる群より選択される薬物を併用で投与するステップを更に含む、本明細書に上記した方法に関する。
【0028】
本発明の別の関連する態様は、薬剤、例えば骨粗しょう症の予防及び/または治療のための薬剤の製造用の、式Iの化合物を含む医薬組成物に関する。1つの特定の例は、本明細書に定義される式Iによって表わされる化合物、及び薬学的に許容される担体を含む、骨粗しょう症の予防または治療のための医薬組成物である。別の特定の例は、表1に定義される化合物を含む、骨粗しょう症の予防または治療に用いるための医薬組成物、より詳細には、化合物I及び/または化合物XXXIを含む医薬組成物である。関連する態様は、患者に、治療上有効な量の、本明細書に規定される医薬組成物を投与することを含む、骨粗しょう症の予防及び/または治療方法に関する。
【0029】
別の態様によれば、本発明は、骨粗しょう症の予防及び/もしくは治療に用いるための、本明細書に定義される、式Iによって表わされる化合物またはその薬学的に許容される塩、あるいはそれを含む組成物に関する。
【0030】
本発明の更なる態様は、本出願における以下の説明、特許請求の範囲、及び一般化から当業者に明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】実施例2に基づく、RAW264.7細胞におけるLPS誘導性破骨細胞形成に対する化合物Iの影響を図解する一連の写真である。
図2】実施例2に基づく、LPSに刺激されたRAW264.7細胞において、化合物IがIL−12の産生を誘導することを示す棒グラフである。
図3】実施例3に基づく、卵巣切除した(OVX)ラットの体重に対する化合物Iの影響を示す折れ線グラフである。
図4】実施例4に基づく、卵巣切除した(OVX)ラットの尿中のカルシウムに対する化合物Iの影響を示す一連の棒グラフである。
図5】実施例4に基づく、卵巣切除した(OVX)ラットの血清中の酸性ホスファターゼに対する化合物Iの影響を示す一連の棒グラフである。
図6】実施例4に基づく、卵巣切除した(OVX)ラットの脛骨中の破骨細胞マーカーのRANKL/OPG mRNA発現に対する化合物Iの影響を示す棒グラフである。
図7】実施例4に基づく、ラットの大腿骨の骨幹端におけるコラーゲン含有量に対する化合物Iの影響を示す棒グラフである。
図8】実施例4に基づく、ラットの大腿骨の骨幹端におけるコラーゲン含有量に対する化合物Iの影響を図解する一連の写真である。
図9】実施例5に基づく、化合物XIVが、骨形成及び骨再形成の調節のマーカーである、血清アディポネクチンレベルを増加させることを示す点グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は式Iの化合物、それらの薬学的に許容される塩、それらを含む組成物及びそれらの使用を開示する。本発明の種々の実施形態は以下を含む。
A)本発明の化合物
一態様によれば、本発明は式Iで表される化合物、またはその薬学的に許容される塩:
【化1】
式中、
AはCアルキル、Cアルキル、Cアルケニル、Cアルケニル、C(O)−(CH−CHもしくはCH(OH)−(CH−CH、但し、nは3もしくは4;または好ましくは、Cアルキル、Cアルケニル、C(O)−(CH−CHもしくはCH(OH)−(CH−CH、但し、nは3;または好ましくは、Cアルキル、Cアルケニル、C(O)−(CH−CHもしくはCH(OH)−(CH−CH、但し、nは4;または好ましくは、直鎖のCアルキル、Cアルキル、Cアルケニル、Cアルケニル、C(O)−(CH−CHもしくはCH(OH)−(CH−CH、但し、nは3もしくは4;または好ましくは、直鎖のCアルキル、Cアルケニル、C(O)−(CH−CHもしくはCH(OH)−(CH−CH、但し、nは3であり、
はH、FもしくはOH;または好ましくは、HもしくはOHであり、
はH、F、OH、Cアルキル、Cアルキル、Cアルケニル、Cアルケニル、C(O)−(CH−CHもしくはCH(OH)−(CH−CH、但し、nは3もしくは4;または好ましくは、H、F、OH、Cアルキル、Cアルケニル、C(O)−(CH−CHもしくはCH(OH)−(CH−CH、但し、nは3;または好ましくは、H、F、OH、Cアルキル、Cアルケニル、C(O)−(CH−CHもしくはCH(OH)−(CH−CH、但し、nは4;または好ましくは、H、F、OH、直鎖のCアルキル、Cアルキル、Cアルケニル、Cアルケニル、C(O)−(CH−CHもしくはCH(OH)−(CH−CH、但し、nは3もしくは4;または好ましくは、H、F、OH、直鎖のCアルキル、Cアルケニル、C(O)−(CH−CHもしくはCH(OH)−(CH−CH、但し、nは3;または好ましくは、H、OH、FもしくはCアルキル;または好ましくは、H、OH、Fもしくは直鎖のCアルキルであり、
はH、F、OHもしくはCHPh;または好ましくは、H、FもしくはOH;または好ましくは、HもしくはOHであり、
はH、FもしくはOH;または好ましくは、HもしくはOHであり、
Qは、
1)(CHC(O)OH、但し、mは1もしくは2、
2)CH(F)−C(O)OH、
3)CF−C(O)OH、または
4)C(O)−C(O)OH
である
の薬学的使用に関する。
【0033】
特定の実施形態によれば、AはCアルキルまたはCアルキルである。
【0034】
特定の実施形態によれば、RはHまたはOHである。
【0035】
特定の実施形態によれば、RはH、F、OH、CアルキルまたはCアルキルである。
【0036】
特定の実施形態によれば、RはHまたはOHである。
【0037】
特定の実施形態によれば、RはHまたはOHである。
【0038】
特定の実施形態によれば、Qは、
1)(CHC(O)OH、但し、mは1もしくは2、
2)CH(F)−C(O)OH、または
3)CF−C(O)OH
である。
【0039】
特定の実施形態によれば、Qは、
1)(CHC(O)OH、但し、mは1、
2)CH(F)−C(O)OH、
3)CF−C(O)OH、または
4)C(O)−C(O)OH
である。
【0040】
特定の実施形態によれば、Qは、
1)(CHC(O)OH、但し、mは1、
2)CH(F)−C(O)OH、または
3)CF−C(O)OH
である。
【0041】
特定の実施形態によれば、Qは(CHC(O)OH、但し、mは1または2である。
【0042】
別の実施形態によれば、上記化合物は、AがCアルキルまたはCアルキルであり、RがH、FまたはOHであり、RがH、F、OH、CアルキルまたはCアルキルであり、RがH、OHまたはCHPhであり、RがH、FまたはOHであり、Qが(CHC(O)OH、但し、mは1または2である、式Iの化合物である。
【0043】
別の実施形態によれば、上記化合物は、AがCアルキルであり、RがHであり、RがHまたはCアルキルであり、RがHであり、RがHであり、Qが(CHC(O)OH、但し、mは1である、式Iの化合物である。
【0044】
A、Q、R、R、R及びRの任意の組み合わせに相当する式Iの化合物またはそれらの特定のもしくは好ましい実施形態が、本発明によって明示的に対象となる。
【0045】
本明細書では、用語「アルキル」とは、直線的に配置された指定の数の炭素原子を有する、直鎖の飽和脂肪族炭化水素基を包含することを意図する。
【0046】
本明細書では、用語「アルケニル」とは、指定の数の炭素原子をその中に有し、少なくとも2の上記炭素原子が互いに二重結合によって結合され、EまたはZのいずれかの位置化学及びそれらの組み合わせを有する、不飽和の直鎖脂肪族炭化水素基を意味することを意図する。
【0047】
式Iの化合物の例としては、下記の表1に掲載される化合物I〜XXIVが挙げられるが、これらに限定はされない。好ましい実施形態において、上記化合物は、化合物I〜XXIVのいずれか1の酸の形態または薬学的に許容される塩によって表される。
【表1】
【表2】
【0048】
本出願人は、構造がいくつかの本発明の化合物の構造に関連する化合物を他所に記載している。例えば、参照によりその全体が本明細書に援用される、国際PCT特許公開第WO2010/127448号、第WO2010/127440号及び第WO2014/138906号が参照される。したがって、特定の実施形態において、これらのPCT出願に開示された、いずれか1のまたは全ての化合物が本発明の範囲から除外される。
【0049】

本明細書では、用語「薬学的に許容される塩」とは、塩基付加塩を意味することを意図する。薬学的に許容される塩の例は、例えば、Berge et al., “Pharmaceutical Salts”, J. Pharm. Sci. 66, 1−19 (1977)にも記載される。薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法により、酸性部分を含む親剤から合成することができる。一般に、かかる塩は、水中もしくは有機溶媒中、またはそれらの2種の混合物中で、遊離酸形態のこれらの薬剤を化学量論量の適当な塩基と反応させることによって調製される。塩は、当該薬剤の最終的な単離もしくは精製の間にイン・サイチューで、または遊離酸の形態の精製した本発明の化合物を、所望の相当する塩基と別個に反応させ、そのようにして生成した塩を単離することによって調製することができる。
【0050】
式Iの化合物の薬学的に許容される塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、アンモニウム、マンガン、亜鉛、鉄または銅の塩基付加塩からなる群より選択することができる。好ましい実施形態において、本発明に係る化合物の薬学的に許容される塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムまたはリチウム塩であってよい。上記薬学的に許容される塩はナトリウムであることがより好ましい。
【0051】
記載される化合物の全ての酸、塩及び他のイオン性及び非イオン性の形態が本発明の化合物として包含される。例えば、本明細書において、化合物が酸として示されている場合、当該化合物の塩の形態も包含される。同様に、化合物が塩として示されている場合、当該の酸の形態も包含される。
【0052】
プロドラッグ
特定の実施形態において、一般化された式Iによって表され、遊離カルボン酸の形態で存在する本発明の化合物はまた、それらの全ての薬学的に許容される塩、テトラゾールなどの等配電子性等価体及びプロドラッグの形態を包含することができる。後者の例としては、アルコールもしくはアミノ酸を始めとするアミンの、式Iによって定義される遊離酸との反応に際して得られる、薬学的に許容されるエステルまたはアミドが挙げられる。
【0053】
キラリティー
本発明の化合物、それらの薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグは、1または複数の不斉中心、キラル軸及びキラル面を含んでいてもよく、したがって、鏡像異性体、ジアステレオマー及び他の立体異性の形態を生じてもよく、(R)−または(S)−などの絶対立体化学の観点から規定されてもよい。本発明は、全てのかかる可能な異性体、ならびにそれらのラセミ及び光学的に純粋な形態を包含することを意図する。光学活性な(+)及び(−)、(R)−及び(S)−、異性体は、キラルな出発原料もしくはキラルな反応剤を用いて調製することができ、または逆相HPLCなどの従来の技法を用いて分割することができる。ラセミ混合物を調製し、その後に個々の光学異性体に分離してもよく、またはこれらの光学異性体をキラル合成によって調製してもよい。鏡像異性体は当業者に公知の方法によって、例えば、その後に結晶化によって分離し得るジアステレオ異性体塩の形成、気体−液体または液体クロマトグラフィー、一方の鏡像異性体の鏡像異性体特異的な反応剤との選択的反応によって分割することができる。所望のエナンチオマーが分離技術によって別の化学物質に転化される場合、その後に、所望のエナンチオマーの形態を生成させるための追加のステップが必要であることが当業者には理解されよう。あるいは、特定のエナンチオマーは、光学活性な反応剤、基質、触媒、またもしくは溶媒を用いた不斉合成によって、または一方の鏡像異性体を不斉変換によって他方の鏡像異性体に転化させることによって合成することができる。
【0054】
本発明の特定の化合物は双性イオンの形態で存在していてもよく、本発明はこれらの化合物の双性イオンの形態及びそれらの混合物を包含する。
【0055】
水和物
更に、本発明の化合物はまた、水和した形態及び無水の形態で存在してもよい。本明細書に記載のいずれの式の水和物も本発明の化合物として包含され、これらは一水和物または多水和物の形態で存在してもよい。
【0056】
B)調製方法
一般に、本発明の全ての化合物は、容易に入手可能な及び/または従来技術で調製可能な出発物質、反応剤ならびに従来の合成手法を用いた、任意の従来の方法によって調製することができる。特に興味深い手法はHundertmark, T.; Littke, A.F.; Buchwald, S.L.; Fu, G.C. Org. Lett. 12, 1729−1731 (2000)の研究である。
【0057】
後述する実施例においては、化合物I〜XXIVの合成のための概括的なスキーム及び具体的な、但しこれに限定されない例を提示する。
【0058】
C)医薬用途
本明細書に示し且つ例示するように、本発明の化合物は有益な医薬特性を有し、これらの化合物は対象において有用な医薬用途をもち得る。本発明者らが企図する医学的及び薬学的用途としては、種々の形態の骨粗しょう症の予防及び/または治療が挙げられるが、これらに限定はされない。本明細書では、用語「骨粗しょう症」とは、骨折の危険性を増加させる可能性のある骨量及び骨密度の減少を特徴とする進行性骨疾患をいう。用語「骨粗しょう症」は、原発性1型骨粗しょう症または閉経後骨粗しょう症(閉経後の女性に最も一般的)、原発性2型骨粗しょう症(一般には75歳以降の女性及び男性の両方に起こる)、及び続発性骨粗しょう症(いずれの年齢においても発症する場合があり、素因となる慢性の医学上の問題若しくは疾患、またはグルココルチコイドなどの薬剤の長期使用に由来する形態(そこで、当該疾患はステロイドまたはグルココルチコイド誘導性骨粗しょう症と呼ばれることがある。))を包含する。本明細書では、「骨粗しょう症」は、異常に高い破骨細胞形成、骨軟化症様骨粗しょう症、骨減少症、骨形成不全、大理石骨病、骨壊死、骨のパジェット病、低リン酸血症及びこれらの組み合わせなどの、骨量及び/または骨密度の減少を伴う骨障害も包含する。
【0059】
既知のとおり、種々の疾患及び疾病は骨粗しょう症を引き起こす場合があり、本発明は1または複数のこれらの原因、
・関節リウマチ、狼瘡及び多発性硬化症を含む自己免疫疾患、
・セリアック病、炎症性腸疾患、胃切除術及び胃腸バイパス術を含む胃腸障害、
・糖尿病、副甲状腺機能亢進症、甲状腺中毒症及びクッシング症候群を含む内分泌/ホルモン障害、
・白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、鎌状赤血球病貧血(骨髄障害)及びサラセミアを含む血液学的障害、
・乳癌及び前立腺癌を含む癌、
・うつ病、パーキンソン病及び脊髄損傷を含む神経学的障害、
・肺疾患(COPD、肺気腫)、肝臓疾患及び慢性腎臓疾患(CKD)を含む臓器疾患、
・強直性脊椎炎、
・エイズ/HIV、
・骨折、
・摂食障害及び栄養失調を含む粗食、ならびに
・閉経前及び閉経後骨粗しょう症及びコルチコステロイド誘導性骨粗しょう症
に、直接または間接的に関係する骨粗しょう症の予防及び/または治療に有用となり得る。
【0060】
一実施形態において、上記骨粗しょう症は原発性1型骨粗しょう症または閉経後骨粗しょう症である。別の実施形態において、上記骨粗しょう症は原発性2型骨粗しょう症である。
【0061】
用語「対象」は、骨粗しょう症が起こり得るか、またはかかる疾患に感受性である生物体を包含する。用語「対象」は哺乳類または鳥類などの動物を包含する。上記対象はヒト、ウマ、イヌ及びネコを含む、但しこれらに限定されない、哺乳動物であることが好ましい。いくつかの実施形態において、マウスは哺乳動物の範囲から除外される。上記対象はヒトであることがより好ましい。上記対象は治療を必要とするヒトの患者であることが最も好ましい。好ましい実施形態において、上記対象は、以下の状態、すなわち、原発性1型骨粗しょう症、閉経後骨粗しょう症、更年期(閉経前及び閉経後)、原発性2型骨粗しょう症、75歳を超える年齢、骨折、骨粗しょう症、素因となる慢性の医学上の問題もしくは疾患、グルココルチコイドなどの薬剤の長期使用、異常に高い破骨細胞形成、骨軟化症様骨粗しょう症、骨減少症、骨形成不全症、大理石骨病、骨壊死、骨のパジェット病、低リン酸血症及びこれらの組み合わせのいずれかを有するまたは上記状態に罹患している人である。好ましい実施形態において、上記対象は閉経後の女性である。
【0062】
本明細書では、「予防」(preventing)または「予防」(prevention)とは、疾患または障害に罹患する危険性(または感受性)の可能性を少なくとも低減すること(すなわち、上記疾患にさらされているかまたは該疾患の素因がある可能性があるが、まだ該疾患の症状が起きていないまたは表われていない患者において、上記疾患の少なくとも1の臨床症状を発症させないこと)を指すことを意図する。かかる患者を識別するための生物学的及び生理学的パラメータは本明細書に提示され、医師によって周知でもある。好ましい実施形態において、「予防」(preventing)または「予防」(prevention)とは、骨量及び/もしくは骨密度の低下を予防すること、ならびに/または骨折の危険性を低減することをいう。
【0063】
用語対象の「治療」(treatment)または「治療」(treating)は、上記疾患もしくは疾病、該疾患もしくは疾病の症状、または該疾患もしくは疾病の危険性(または該疾患もしくは疾病に対する感受性)の、遅延、安定化、治療、治癒、緩和、軽減、改変、救済、悪化低減、寛解、改善、あるいは該疾患もしくは疾病に影響を与えることを目的として、対象に対して本発明の化合物を適用または投与すること(あるいは、対象由来の細胞もしくは組織に対して本発明の化合物を適用または投与すること)を包含する。用語「治療」(treating)とは、寛解;鎮静;悪化速度の減速;疾患の重篤度の低減;安定化、症状の軽減または傷害、病状もしくは疾病を対象に対してより忍容可能にすること;変性もしくは衰弱速度の減速;変性の最終点をより衰弱していないようにすること;または対象の肉体的もしくは精神的な健康状態の改善などの、任意の客観的または主観的なパラメータを含む、傷害、病状もしくは疾病の治療(treatment)または寛解における成功の任意の徴候をいう。いくつかの実施形態において、用語「治療」(treating)とは、対象の余命を増加させること及び/または更なる治療が必要となる時期を遅延させることを包含し得る。好ましい実施形態において、「治療」(treatment)または「治療」(treating)とは、骨量及び/もしくは骨密度を増加させること、ならびに/または骨折の治癒を高めることをいう。
【0064】
更に、いくつかの実施形態において、本発明の化合物は骨粗しょう症の予防及び/または治療のための単剤療法に用いられる。他の実施形態において、本発明の化合物は、骨粗しょう症の治療のために用いられる薬剤を含む、但しこれらに限定されない、既に認可された薬物との併用で用いられる。本発明の化合物と併用で用いてもよい公知の骨粗しょう症関連の薬剤の例としては、ビスホスホネート、オダナカチブ、アレンドロネート、リセドロネート、エチドロネート、ゾレドロネート、パミドロネート、テリパラチド、タモキシフェン、ラロキシフェン、及びデノスマブが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0065】
したがって、本発明に係る治療方法はまた、別の治療上有効な薬剤の投与と共に、本発明に係る少なくとも1種の化合物、またはその薬学的に許容される塩を同時投与することを含んでもよい。それ故に、本発明の更なる態様は、対象の併用治療方法であって、該方法を必要とする対象に対して、有効量の第1の薬剤及び第2の薬剤を投与することを含み、第1の薬剤は式Iにおいて定義されるものであり、第2の薬剤は、上記に規定される障害もしくは疾患のいずれか1の予防または治療のためのものである、上記方法に関する。本明細書では、「併用治療」または「〜との併用で」との語句におけるような用語「併用の」または「併用で」は、第2の薬剤の存在下で第1の薬剤を投与することを包含する。併用治療方法は、第1、第2、第3または更なる薬剤が同時投与される方法を包含する。併用治療方法はまた、第1または更なる薬剤が、第2または更なる薬剤の存在下で投与され、当該第2のまたは更なる薬剤が、例えば、前もって投与されていてもよい方法も包含する。併用治療方法は、異なる実施者によって段階的に実行されてもよい。例えば、一人の実施者が対象に第1の薬剤を投与し、第2の実施者が当該の対象に第2の薬剤を投与してもよく、第1の薬剤(及び/または更なる薬剤)が、第2の薬剤(及び/または更なる薬剤)の存在下での後の投与である限り、投与ステップは同時に、またはほぼ同時に、または離れた時間に実施されてもよい。上記実施者及び対象は同一の存在(例えば、ヒト)であってもよい。
【0066】
したがって、本発明はまた、上述の疾患もしくは疾病のいずれか1つの症状または合併症の予防、低減あるいは排除方法に関する。この方法は、該方法を必要とする対象に対して、少なくとも1種の本発明の化合物を含む第1の医薬組成物、及び1種または複数種の更なる活性成分を含む第2の医薬組成物を投与することを含み、全ての活性成分が、治療を受ける疾患もしくは疾病の1または複数の症状または合併症を抑制、低減あるいは排除するために十分な量で投与される。一態様において、第1及び第2の医薬組成物の投与は、時間的に少なくとも約2分の間隔が空けられる。第1の薬剤は本明細書で定義される式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、例えば、ナトリウム塩であることが好ましい。第2の薬剤は上述される一連の化合物(例えば、骨粗しょう症の予防及び/又は治療のために用いられる薬剤または薬物)から選択することができる。
【0067】
破骨細胞形成の阻害
破骨細胞は骨組織を再吸収する骨細胞の1種である。破骨細胞は酸及びコラゲナーゼを分泌することによって、骨を分子レベルで分解する。この過程は骨吸収として知られている。破骨細胞形成とは破骨細胞の前駆細胞の破骨細胞への分化をいう。骨粗しょう症の予防及び/または治療においては、破骨細胞形成を低減することが望ましい。
【0068】
骨芽細胞は骨を合成する細胞の1種である。骨芽細胞は間葉系幹細胞から生じる。骨粗しょう症の予防及び/または治療においては、骨芽細胞の分化を刺激することが望ましい。
【0069】
後述の実施例に示すように、本発明の化合物は破骨細胞形成を阻害及び/または低減することが可能である。このことは、例えば、TRAP細胞の非存在(実施例2、図1)、LPSに刺激されたRAW264.7細胞におけるIL−12産生の強力な誘導(実施例2及び3)、イン・ビボでのカルシウム減少の低減(実施例4、図4)、イン・ビボでの酸性ホスファターゼ活性の低下(実施例4、図5)、イン・ビボでのRANKL/OPGのmRNA発現の減少(実施例4、図6)、イン・ビボでのコラーゲン含有量の増加(実施例4、図7及び8)、ならびにアディポネクチンの血清レベルの増加(実施例5、図9)によって実証される。
【0070】
これらの結果は、本発明の化合物が、破骨細胞の活性の阻害及び/または低減を介して骨粗しょう症を予防/治療する能力を有することを示唆している。
【0071】
上記結果はまた、本発明の化合物が、カルシウムの減少を始めとする、但しこれに限定されない骨減少を予防及び/または低減する能力を有することを実証する。したがって、これらの結果は、本発明の化合物が、骨芽細胞分化の刺激を介して骨粗しょう症を予防/治療する能力を有することを示唆している。
【0072】
インターロイキン−12(IL−12)産生の刺激
後述の実施例に示すように、本発明の化合物はLPSの存在下でIL−12の産生を誘導する。これらの結果は、これらの化合物が、IL−12の誘導の結果として、骨粗しょう症を予防及び/または治療する能力を有することを示唆している。このことは、IL−12が破骨細胞形成に対する直接的な阻害効果を有することを教示する科学文献によって支持される。
【0073】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明の化合物及び組成物は、刺激された破骨細胞前駆細胞による産生を始めとする、但しこれに限定されないインターロイキン12(IL−12)産生の刺激に有用である。
【0074】
酸性ホスファターゼ活性の低減
後述の実施例に示すように、本発明の化合物は、卵巣切除したラットの血清中で測定される酸性ホスファターゼの酵素活性を低下させる。これらの結果は、これらの化合物が、酸性ホスファターゼの酵素活性の低下の結果として、骨粗しょう症を予防及び/または治療する能力を有すること示唆している。
【0075】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明の化合物及び組成物は骨細胞における酸性ホスファターゼ活性の低減に有用である。
【0076】
NF−κB活性化受容体リガンド(RANKL)の発現の低減
後述の実施例に示すように、本発明の化合物は、卵巣切除ラットの脛骨において測定される、RANKLのmRNA発現を低減する。これらの結果は、これらの化合物が、RANKLの発現及び/または生物学的活性の低下の結果として、骨粗しょう症を予防及び/または治療する能力を有することを示唆している。
【0077】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明の化合物及び組成物は、骨細胞におけるRANKLの発現及び/または活性の低減に有用である。
【0078】
コラーゲン含有量の増加
後述の実施例に示すように、本発明の化合物は、卵巣切除ラットの大腿骨の骨幹端において測定される、骨中のコラーゲン含有量を増加させる。これらの結果は、これらの化合物が、骨中のコラーゲン含有量の増加によって実証される、骨粗しょう症を予防及び/または治療する能力を有することを示唆している。
【0079】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明の化合物及び組成物は、活動中の骨中のコラーゲン含有量の増加に有用である。
【0080】
アディポネクチンのレベルの増加
後述の実施例に示すように、本発明の化合物は、肥満性糖尿病マウスの血清において測定されるアディポネクチンのレベルを増加させる。これらの結果は、これらの化合物が、骨の形成、再形成及び石灰化の刺激によって、ならびに/または骨吸収の阻害によって、骨粗しょう症を予防及び/または治療する能力を有することを示唆している。
【0081】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明の化合物及び組成物は、骨形成の刺激、ならびに/または骨再形成の刺激、ならびに/または骨芽細胞の分化及び石灰化の刺激に対して、ならびに/または骨吸収の阻害に対して有用である。
【0082】
D)医薬組成物及び製剤
本発明の関連する態様は、治療上有効な量の、1種または複数種の、本明細書に記載の本発明の化合物(例えば、式Iの化合物)を含む医薬組成物に関する。上述のように、本発明の医薬組成物は、骨粗しょう症の予防及び/または治療において、破骨細胞形成の阻害において、刺激された破骨細胞前駆細胞によるインターロイキン−12(IL−12)産生の刺激において、骨細胞における酸性ホスファターゼ活性の低減において、骨細胞におけるNF−κB活性化受容体リガンド(RANKL)の発現の低減において、骨中のコラーゲン含有量の増加において、骨形成の刺激において、骨再形成の刺激において、骨石灰化の刺激において、及び/または骨吸収の阻害において有用であり得る。
【0083】
本明細書では、用語「治療上有効な量」とは、化合物の量であって、それが特定の障害、疾患もしくは疾病を治療または予防するために対象に投与された場合に、上記障害、疾患もしくは疾病のかかる治療または予防を達成するために十分な、上記化合物の量を意味する。投与量及び治療上有効な量は、例えば、用いる特定の薬剤の活性、対象の年齢、体重、全般的な健康状態、性別、及び食生活、投与時間、投与経路、排泄速度、及び該当する場合には任意の薬物の併用、医師が、当該化合物が有することを所望する対象に対する効果(例えば、骨量及び/もしくは骨密度の増加(またはそれらの減少の低減)、骨折の危険性の低下等を含む因子によって裏付けられる、全面的なまたは部分的な奏功)、当該化合物の特性(例えば、生物学的利用能、安定性、効能、毒性等)、ならびに対象が罹患している特定の障害(複数可)を含む多様な因子に応じて変化し得る。また、上記治療上有効な量は、対象の血液パラメータ(例えば、カルシウムレベル、脂質プロフィール、インスリンレベル、血糖)、病状の重篤度、臓器機能、または基礎疾患もしくは合併症に依存し得る。かかる適切な用量は、本明細書に記載のアッセイを始めとする任意の利用可能なアッセイを用いて決定することができる。本発明の化合物の1種または複数種がヒトに投与されることとなる場合、医師は、例えば、最初は相対的に低い用量を処方し、その後適切な奏功が得られるまで用量を増加させてもよい。投与される用量は最終的には腫瘍医の裁量にかかっている。但し、一般的には、本化合物の用量は、ヒトにおいて、1日当たり約1〜約50mg/kgの範囲とすることができることが想定される。選択された実施形態において、上記範囲は、ヒトにおいて、1日当たり1〜30mg/kgであってもよい。選択された実施形態において、上記範囲は、ヒトにおいて、1日当たり1〜20mg/kgであってもよい。選択された実施形態において、上記範囲は、ヒトにおいて、1日当たり5〜18mg/kgであってもよい。選択された実施形態において、上記範囲は、ヒトにおいて、1日当たり1〜18mg/kgであってもよい。
【0084】
本明細書では、用語「医薬組成物」とは、少なくとも1種の、本明細書において定義される式Iに基づく本発明の化合物及び少なくとも1種の薬学的に許容される担体、希釈剤、ビヒクルまたは賦形剤の存在をいう。本明細書では、用語「薬学的に許容される担体」、「薬学的に許容される希釈剤」または「薬学的に許容される賦形剤」とは、対象、好ましくはヒトにおける使用に対して許容される任意のアジュバント、担体、賦形剤、流動促進剤、甘味料、希釈剤、防腐剤、色素/着色剤、風味増強剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定剤、等張化剤、溶媒、乳化剤、または、リポソーム、シクロデキストリン、カプセル化する高分子送達システムもしくはポリエチレングリコール・マトリクスなどのカプセル化剤を意味することを意図するが、これらに限定はされない。上記用語は、好ましくは、動物、より詳細にはヒトにおける使用に対して、連邦もしくは州政府の規制当局によって認可されたもしくは認可可能な、または米国薬局方もしくは他の一般的に認知された薬局方に掲載された化合物あるいは組成物をいう。上記薬学的に許容されるビヒクルは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリンル、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、それらの好適な混合物、ならびに植物油を含有する、溶媒または分散媒であってよい。薬学的に許容されるビヒクルの更なる例としては、注射用水USP;塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース及び塩化ナトリウム注射液、及び乳酸加リンゲル注射液などの、但しこれらに限定されない水性ビヒクル;エチルアルコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールなどの、但しこれらに限定されない水混和性ビヒクル;ならびにトウモロコシ油、綿実油、落花生油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、及び安息香酸ベンジルなどの、但しこれらに限定されない非水性ビヒクルが挙げられるが、これらに限定はされない。微生物の活動の防止は、抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどの添加によって行うことができる。多くの場合、上記組成物には等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウム、またはマンニトール及びソルビトールなどの多価アルコールが含まれる。注射用組成物の持続的吸収は、当該組成物中に吸収を遅延させる添加剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを含有させることによって生じさせることができる。
【0085】
本発明の組成物は、1種または複数種の、本明細書に定義される式Iの化合物、または薬学的に許容されるそれらの誘導体、塩プロドラッグ、類似体及び異性体もしくは鏡像異性体を含んでいてもよい。上記活性化合物の製剤は、経腸、経粘膜(舌下、経肺及び経直腸を含む)、非経口(筋肉内、皮内、皮下及び静脈内を含む)または局所(軟膏、クリームもしくはローション剤を含む)投与に好適な形態の医薬組成物を提供するように調製することができる。上記製剤は、それが適切である場合、利便性よく別個の投薬単位で提供することができ、また医薬製剤の技術分野で周知の方法のいずれかによって調製することができる。全ての方法は、活性医薬成分を、必要に応じて、液体担体もしくは微細化した固体担体またはそれらの両方と組み合わせるステップを含む。上記製剤を、それが適当である場合には、活性な医薬成分の持続性放出を提供するように適合させることができる。当業者に周知の持続性放出製剤は、ボーラス注射、連続注入、生体適合性ポリマーまたはリポソームの使用を含む。
【0086】
E)キット
本発明の化合物(複数可)は、任意選択で容器(例えば、包材、箱、バイアル等)を含むキットの一部として包装されてもよい。上記キットは本明細書に記載の方法に従って市販品として使用することができ、本発明の方法に用いるための説明書を含んでいてもよい。更なるキットの成分としては、酸、塩基、緩衝剤、無機塩、溶媒、抗酸化剤、防腐剤、または金属キレート剤を挙げることができる。上記更なるキットの成分は、純粋な組成物、または1種または複数種の更なるキットの成分を組み込んだ水溶液若しくは有機溶液として存在する。いずれかのまたは全ての上記キットの成分は任意選択で緩衝剤を更に含む。
【0087】
本発明の化合物(複数可)は、対象に、同時にもしくは同一の投与経路によって投与されても、またはそのように投与されなくてもよい。したがって、本発明の方法は、医師によって用いられる場合に、適切な量の2種以上の活性成分の患者に対する投与を単純化できるキットを包含する。
【0088】
本発明の一般的なキットは、本明細書で定義される式Iによって定義される、本発明に係る少なくとも1種の化合物、またはその薬学的に許容される塩の単位剤形、及び少なくとも1種の更なる活性成分の単位剤形を含む。本発明の化合物と併用で用いることができる更なる活性成分の例としては、本発明の化合物(複数可)と併用で用いることができる、上記に示したいずれかの薬物(例えば、骨粗しょう症の治療に用いる薬物)が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0089】
本発明のキットは、1種または複数種の活性成分を投与するために用いることができる薬学的に許容されるビヒクルを更に含むことができる。例えば、活性成分が非経口投与のために再構成されなければならない固体形態で提供される場合、上記キットは、密封された容器または当該活性成分を溶解させて、非経口投与に好適な微粒子を含まない無菌溶液を形成することができる好適なビヒクルを含むことができる。薬学的に許容されるビヒクルの例は上述される。
【実施例】
【0090】
以下の実施例は本発明の実施を更に説明するが、本発明の限定とすることは意図しない。
【0091】
実施例1:特定の代表的な化合物の調製のための実験手順
全てのHPLCクロマトグラム及び質量スペクトルは、溶離液として0.01%のTFAを含む、5分間にわたる15〜99%のCHCN−HOの勾配及び2mL/分の流速を用いた、分析用C18カラム(250×4.6mm、5ミクロン)を使用したHP 1100 LC−MS アジレント(商標)装置上で記録した。
【0092】
化合物I:改変薗頭法を用いた(3−ペンチルフェニル)酢酸のナトリウム塩の合成
【化2】
ステップ1
室温の3−ブロモフェニル酢酸(5.02g、23.33mmol)のエタノール(100mL)溶液/懸濁液に濃硫酸(1mL)を添加した。次いでこの無色の固体を80℃で終夜撹拌した。この溶液を減圧下で濃縮した。残渣を酢酸エチル(25mL)、水(25mL)で希釈し、2層を分離した。水層を酢酸エチル(2×25mL)、飽和食塩水(20mL)で抽出した。一つにまとめた有機層をNaHCOの飽和水溶液(2×25mL)、飽和食塩水(25mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で脱水した。この溶液のろ過後に、これを留去、乾固させた。これにより明黄色の油状物を得た(5.4g、95%)。H−NMR (400 MHz, CDCl): δ 1.26 (t, J = 4.7 Hz, 3H), 3.57 (s, 2H), 4.15 (Q, J = 7.0 及び 14.3 Hz, 2H), 7.17−7.26 (m, 2H), 7.38−7.44 (m, 1H), 7.44 (d, J= 1.56 Hz, 1H)。
【0093】
ステップ2
封管中で、(3−ブロモフェニル)酢酸エチル(0.3g、1.24mmol)とフッ化テトラブチルアンモニウム水和物(0.97g、3.72mmol)との混合物をPdCl(PPh(26mg、0.037mmol、3モル%)及び1−ペンチン(367μL、3.72mmol)で処理した。この封管を80℃で2時間加熱した。この混合物を水で処理し、ジエチルエーテルで抽出した。有機抽出液を硫酸ナトリウム上で脱水し、ろ過し、減圧下で留去して粗生成物を得た。バイオタージ(商標)25Mカラム(シリカ)上、酢酸エチル/ヘキサン 0:1〜2:98で溶離させて精製し、(3−(ペンチン−1−イル)フェニル)酢酸エチルを淡黄色の油状物として得た(0.23g、79%)。
【0094】
ステップ3
窒素雰囲気下の[3−[ペンチン−1−イル]フェニル]−酢酸エチル(0.23g、0.98mmol)のエタノール(5mL)溶液に、炭素担持Pd(10%、25mg、10%w/w)を添加した。この混合物を水素雰囲気下、室温で終夜激しく撹拌した。この溶液をろ過し、パラジウム/炭素をエタノール(20mL)で洗浄した。ろ液をシリカゲルによって濃縮した。この粗生成物を10%のヘキサン/酢酸エチルの混合物を用いたフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。透明な油状物が得られた(0.21g、90%)。
【0095】
ステップ4
上記エステル(0.2g、0.9mmol)のテトラヒドロフラン(5mL)、メタノール(1.5mL)及び水(1.5mL)の溶液に、0℃で水酸化リチウム(0.09g、3.6mmolを添加した。この反応混合物を室温で終夜撹拌した。不溶分をろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。次いで残渣を2MのHClで処理し、酢酸エチルで抽出した。有機相を硫酸ナトリウム上で脱水し、減圧下で留去した。この粗製物質を40Lバイオタージカラム(シリカ)上で、酢酸エチル/ヘキサン(0:10〜4:6)を溶離液として用いて精製した。これにより純粋な(3−ペンチルフェニル)酢酸(0.19g、99%)を白色のガム状固体として得た。H NMR (400 MHz, CDOD): δ 0.90 (t, J = 7.0 Hz, 3H), 1.28−1.38 (m, 4H), 1.61 (qt, J = 7.6 Hz, 15.0 Hz, 2H), 2.58 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 3.56 (s, 2H), 7.07 (m, 3H), 7.20 (m, 1H); LRMS (ESI): m/z 207 (MH); HPLC: 4分。
【0096】
ステップ5
撹拌下の上記酸(0.19g、0.82mmol)のエタノール(4mL)及び水(1mL)の溶液に、炭酸水素ナトリウム(0.07g、0.82mmol)を添加した。この反応混合物を室温で終夜撹拌した。溶媒を留去し、白色のガム状固体を水に溶解させ、この溶液を凍結乾燥した。これによって純粋な(3−ペンチルフェニル)酢酸のナトリウム塩(0.17g、92%)を白色固体として得た。融点 110−112℃; H NMR (400 MHz, CDOD): δ 0.89 (t, J = 6.8 Hz, 3H), 1.28−1.37 (m, 4H), 1.60 (qt, J = 7.4 Hz, 15.0 Hz, 2H), 2.56 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 3.43 (s, 2H), 6.96 (m, 1H), 7.12 (m, 3H); LRMS (ESI): m/z 207 ((MH); HPLC: 4分。
【0097】
化合物II:3−(3−ペンチルフェニル)プロピオン酸のナトリウム塩
上記化合物を、3−オキソ−3−ブロモフェニルプロピオン酸エチルエステルから出発して、化合物Iの場合と同様に調製した。水素化圧下、エタノール中でパラジウム/炭素を用いて、ケトン基及び二重結合を同時に還元した。白色固体; H NMR (400 MHz, CDCl): δ 7.14−7.10 (m, 1H), 7.04−7.00 (m, 2H), 6.95−6.93 (m, 1H), 2.88−2.84 (m, 2H), 2.55 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 2.44−2.40 (m, 2H), 1.63−1.55 (m, 2H), 1.35−1.28 (m, 4H), 0.90 (m, 3H); 13C NMR (101 MHz, CDOD): δ 179.3, 141.2, 140.8, 126.7, 126.4, 124.0, 123.8, 38.6, 34.2, 31.2, 29.9, 29.8, 20.9, 11.7; LRMS (ESI): m/z 203 (MH−CO−NaOH); HPLC: 4.5分。
【0098】
化合物III:3−(3−ブチルフェニル)プロピオン酸のナトリウム塩
【化3】
ステップ1
丸底フラスコ(250mL)中でイソフタルアルデヒド(1.0g、7.5mmol)、続いてジクロロメタン(100mL)を秤量した。室温において、圧力平衡の分液ロートによって、上記(トリフェニル−ホスホラニリデン)酢酸メチル(2.7g、8.2mmol)のジクロロメタン(25mL)溶液を添加した。この反応混合物を室温で終夜撹拌した。この混合物をシリカゲルの小さいパッド上でろ過し、ジクロロメタン(150mL)で洗浄した。次いで減圧下で溶媒を留去し、この粗生成物を更に精製することなく次のステップに用いた。
【0099】
ステップ2
上記プロピルトリフェニルホスホニウムブロミド(3.2g、8.2mmol)を窒素下で丸底フラスコ中に仕込み、無水THF(5mL)を加えた。このフラスコを氷/アセトン(−10℃)浴中で冷却し、nブチルリチウム(2.5Mのヘキサン溶液、3.28mL、8.2mmol)をゆっくりと添加した。この混合物を30分間撹拌すると暗色に変化した。氷/アセトン(−10℃)浴中窒素下で、前のステップの粗反応混合物を無水THF(5mL)中に仕込んだ。−10℃で、上記ホスホニウム溶液を上記アルデヒド溶液にゆっくりと添加し、この反応混合物をゆっくりと室温まで加温し、4時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液(10mL)を添加し、有機層を酢酸エチルで抽出した(3×)。有機層を無水硫酸ナトリウム上で脱水し、ろ過し、シリカゲルを加えてドライパック(drypack)を得た。化合物をSP1(酢酸エチル/ヘキサン)によって精製した。これにより予期した生成物を得た(8.8g、54%)。H NMR (400 MHz, CDCl): δ 7.70−7.65 (m, 1H), 7.45−7.24 (m, 4.5H), 6.45−6.28 (m, 2.5H), 5.70−5.67 (m, 0.5H), 3.78 (m, 3H), 2.34−2.20 (m, 2H), 1.10−1.03 (m, 3H)。
【0100】
ステップ3
丸底フラスコ(25mL)中に上記不飽和エステル(140mg、0.65mmol)を仕込み、酢酸エチル(10mL)に溶解させた。この溶液に活性炭担持10%パラジウム Pd/C(10mg)を添加した。このフラスコにセプタムで栓をし、上部に水素入り風船を取り付けた。このフラスコを水素で3回パージし、上記反応混合物を室温で終夜撹拌した。次いで固体をセライト(商標)上でろ過した。シリカゲルを加えてドライパックを調製した。0〜20%の酢酸エチル/ヘキサンを用いたフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、所望の生成物を得た(124mg、87%)。LRMS (ESI): m/z 221 (MH); HPLC: 5.0分。
【0101】
ステップ4
丸底フラスコ中に上記エステル(124mg、0.56mmol)、続いてメタノール(4mL)及び水酸化リチウム(118mg、2.8mmol)を仕込んだ。水(1mL)を加え、この反応混合物を撹拌下、50℃で17時間加熱した。この反応混合物を分液ロートに移し、HCl(1M)でpH4未満に酸性化し、酢酸エチルで抽出した(3×)。有機層を無水硫酸ナトリウム上で脱水し、ろ過し、留去した。この粗製物質をHPLC/ウォーターズ社によって精製した。これにより白色固体が得られた(80mg、70%)。H NMR (400 MHz, CDOD): δ 7.16−7.12 (m, 1H), 7.01−6.96 (m, 3H), 2.88−2.84 (m, 2H), 2.57−2.53 (m, 4H), 1.60−1.52 (m, 2H), 1.37−1.28 (m, 2H), 0.91(t, 3H, J = 7.3Hz); LRMS (ESI): m/z 205 (M−H); HPLC: 4.2分。
【0102】
ステップ5
フラスコ(20mL)中に上記酸(80mg、0.39mmol)、続いてNaHCO(33mg、0.39mmol)及び水(8mL)を仕込んだ。この混合物にアセトニトリル(3mL)を加え、この反応混合物に超音波照射し、これを、殆ど全ての固体が溶解するまで加熱撹拌した。この溶液をナイロンフィルタ上でろ過した。バイアルをドライアイス/アセトン浴中に入れることによって水を固化させ、終夜凍結乾燥する。これによって所望の生成物を白色固体として得た。H NMR (400 MHz, CDOD): δ 7.14−7.10 (m, 1H), 7.04−6.93 (m, 3H), 2.88−2.84 (m, 2H), 2.57−2.54 (m, 2H), 2.44−2.40 (m, 4H), 1.61−1.53 (m, 2H), 1.39−1.30 (m, 2H), 0.93(t, 3H, J = 7.3Hz);13C NMR (101 MHZ, CDOD): δ 142.7, 142.4, 128.2, 128.0, 125.6, 125.4, 125.3, 40.1, 35.5, 33.9, 32.7, 22.2, 13.1; LRMS (ESI): m/z 251.0 (m, MNa), 229.0 (w, MH), 189.2 (100%,アシリウムイオン[M − Na + 2H −H2O]); HPLC: 4.1分。
【0103】
化合物IV:E−(3−ペンタ−1−エニル−フェニル)酢酸のナトリウム塩
上記化合物を、E−(3−ペンタ−1−エニル−フェニル)酢酸メチルエステルから出発して、化合物Iの場合と同様に調製した。後者は3−ブロモフェニル酢酸メチルエステルを鈴木の条件下でトランス−1−ペンテニルボロン酸ピナコールエステルと反応させることによって調製した。白色固体; H NMR (400 MHz, CDOD): δ = 7.32 (s, 1H), 7.11−7.18 (m, 3H), 6.35 (d, J = 15.7 Hz, 1H), 6.20−6.27 (m, 1H), 3.44 (s, 2H), 2.19 (m, 2H), 1.45−1.54 (m, 2H), 0.96 (t, J = 7.4, 3H); 13C NMR (101 MHz, CDOD): δ = 179.26, 138.25, 137.92, 130.32, 130.04, 128.06, 127.59, 126.60, 123.52, 45.21, 35.06, 22.52, 12.89; LRMS (ESI): m/z 205 (MH); HPLC: 4.1分。
【0104】
化合物V:2−(3−(ヘキサ−1−エニル)フェニル)酢酸のナトリウム塩
上記化合物を、化合物VIIの場合と同様の2−(3−ブロモフェニル)酢酸メチルと(E)−ヘキサ−1−エニルボロン酸ピナコールエステルとの鈴木カップリング、ならびにそれに続く、化合物Iの場合と同様のエステルの加水分解及びナトリウム塩の生成によって調製した。白色固体: H NMR (400 MHz, CDOD): δ 7.33 (s, 1H), 7.12−7.19 (m, 3H), 6.35 (d, J = 15.8 Hz, 1H), 6.20 (dt, J = 15.8, 6.8 Hz, 1H), 3.46 (s, 2H), 2.17−2.22 (m, 2H), 1.33−1.49 (m, 4H), 0.93 (t, J = 7.2 Hz, 3H); 13C NMR (101 MHz, CDOD): δ 179.35, 138.27, 137.95, 130.27, 130.16, 128.10, 127.61, 126.64, 123.56, 45.24, 32.66, 31.67, 22.16, 13.22; LRMS (ESI): m/z 263.1 (100%, M + Na); HPLC : 4.4分。
【0105】
化合物VI:2−(3−ヘキシルフェニル)酢酸のナトリウム塩
上記化合物を、化合物VIIの場合と同様の2−(3−ブロモフェニル)酢酸メチルと(E)−ヘキサ−1−エニルボロン酸ピナコールエステルとの鈴木カップリング、ならびにそれに続く、化合物Iの場合と同様の水素化、エステルの加水分解及びナトリウム塩の生成によって調製した。白色固体; H NMR (400 MHz, DO): δ7.14 (dd, J = 7.8, 7.6 Hz, 1H), 7.01 (s, 1H), 7.00 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 6.96 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 3.34 (s, 2H), 2.46 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 1.41−1.48 (m, 2H), 1.10−1.18 (m, 6H), 0.70 (t, J = 6.8 Hz, 3H); 13C NMR (101 MHz, DO): δ 181.23, 143.98, 137.46, 129.47, 128.73, 126.63, 126.48, 44.58, 35.14, 31.12, 30.94, 28.23, 22.13, 13.53; LRMS (ESI): m/z 265 (100%, M + Na); HPLC: 4.6分。
【0106】
化合物VII:3−ヒドロキシ−5−ペンチルフェニル酢酸のナトリウム塩
【化4】
ステップ1
[3,5−ジヒドロキシフェニル]酢酸メチル(2.1g、11.5mmol)のアセントン(100mL)溶液を炭酸カリウム(2.4g、17.4mmol)、ヨウ化カリウム(383mg、2.31mmol)及びベンジルブロミド(1.5mL、12.7mmol)で処理し、この混合物を室温で終夜撹拌した。この反応混合物を水で希釈し、ジクロロメタンで抽出した(×3)。一つにまとめた有機抽出液を硫酸ナトリウム上で脱水し、減圧下で留去した。この粗製物質をバイオタージ(商標)40Mカラム(シリカ)上、40%の酢酸エチル/ヘキサンで溶離させて精製し、[3−ベンジルオキシ−5−ヒドロキシフェニル]酢酸メチルを得た(1.0g、33%)。H NMR (400 MHz, CDCl): δ 7.32−7.42 (m, 5H), 6.48 (d, J = 1.4 Hz, 1H), 6.38−6.39 (m, 2H), 4.99 (s, 2H), 3.69 (s, 3H), 3.53 (s, 2H)。
【0107】
ステップ2
0℃の上記ベンジルエステル(1.04g、3.8mmol)のジクロロメタン(15mL)溶液をN−フェニル−ビス(トリフルオロスルホニル)イミド(1.40g、3.9mmol)で処理し、次いでトリエチルアミン(0.6mL、4.1mmol)をゆっくりと添加した。この反応混合物を0℃で1時間、次いで室温で1時間撹拌した。この反応混合物を水で希釈し、次いでジエチルエーテルで抽出した(×2)。一つにまとめた有機抽出液を1Mの水酸化ナトリウム水溶液、水(×2)及び飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、次いで硫酸ナトリウム上で脱水し、ろ過し、減圧下で留去して粗生成物を得た。バイオタージ(商標)40Mカラム(シリカ)上、25%の酢酸エチル/ヘキサンで溶離させて精製し、[3−ベンジルオキシ−5−トリフルオロメタンスルホニルオキシフェニル]酢酸メチルを得た(1.2g、79%)。H NMR (400 MHz, CDCl): δ 7.36−7.46 (m, 5H), 6.98 (s, 1H), 6.97 (s, 1H), 6.84 (s, 1H), 5.06 (s, 2H), 3.72 (s, 3H), 3.63 (s, 2H)。
【0108】
ステップ3
E−1−ペンテン−1−イルボロン酸ピナコールエステル(0.8g、3.9mmol)のジメトキシエタン(5mL)溶液を上記トリフレート(1.2g、3.0mmol)のジメトキシエタン(5mL)溶液で処理した。この溶液をパラジウム(0)(0.7g、0.6mmol)及び2Mの炭酸ナトリウム水溶液(1.3mL、2.6mmol)で処理した。次いでこの混合物を90℃で3日間加熱した。この反応混合物を室温まで冷却し、セライト(商標)を通してろ過した。ろ液を減圧下で留去し、この粗製物質をバイオタージ(商標)25Mカラム(シリカ)上、5%の酢酸エチル/ヘキサンで溶離させて精製し、[3−ベンジルオキシ−5−[ペンタ−1−エニル]フェニル]酢酸メチルを得た(0.4g、40%)。H NMR (400 MHz, CDCl): δ 7.36−7.47 (m, 5H), 6.90−6.92 (m, 2H), 6.79 (dd, J = 2.0, 2.0 Hz, 1H), 6.35 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 6.24 (dt, J = 15.9, 6.8 Hz, 1H), 5.07 (s, 2H), 3.70 (s, 3H), 3.59 (s, 2H), 2.20 (td, J = 7.4, 6.8 Hz, 2H), 1.51 (dt, J = 7.4 Hz, 2H), 0.98 (t, J = 7.4 Hz, 3H)。
【0109】
ステップ4
上記アルケン(0.4g、1.2mmol)のエタノール(13mL)溶液を炭素担持1%パラジウム(40mg)で処理した。この混合物を、1気圧の水素下、室温で終夜撹拌した。この反応混合物をろ過し、減圧下で留去し、バイオタージ(商標)25Sカラム(シリカ)上、15%の酢酸エチル/ヘキサンで溶離させて精製し、[3−ヒドロキシ−5−ペンチルフェニル]酢酸メチルを得た(0.3g、93%)。H NMR (400 MHz, CDCl): δ 6.64 (s, 1H), 6.58−6.60 (m, 2H), 3.70 (s, 3H), 3.55 (s, 2H), 2.51 (t, J = 7.7 Hz, 2H), 1.55−1.59 (m, 2H), 1.28−1.34 (m, 4H), 0.88 (t, J = 7.0 Hz, 3H)。
【0110】
ステップ5
上記エステル(0.3g、1.3mmol)のエタノール(12mL)溶液を水(3mL)及び水酸化リチウム(155mg、6.4mmol)で処理し、この混合物を室温で終夜激しく撹拌した。この反応混合物を水(100mL)で希釈し、ジクロロメタンで洗浄し、次いで1Mの塩酸水溶液でpH1に酸性化し、ジクロロメタンで抽出した(×3)。一つにまとめた有機抽出液を硫酸ナトリウム上で脱水した(0.3g、95%)。この物質を更に精製することなく用いた。H NMR (400 MHz, CDCl): δ 6.66 (s, 1H), 6.58−6.59 (m, 2H), 3.55 (s, 2H), 2.52 (t, J = 7.7 Hz, 2H), 1.55−1.59 (m, 2H)。
【0111】
ステップ6
上記酸(0.27g、1.23mmol)のエタノール(6mL)及び水(6mL)の溶液を炭酸水素ナトリウム(0.1g、1.2mmol)で処理し、この反応混合物を室温で数時間撹拌した。溶媒を減圧下で濃縮し、この溶液を水で希釈し、ろ過し(0.2μm)、凍結乾燥して、[3−ヒドロキシ−5−ペンチルフェニル]酢酸ナトリウムを白色固体として得た(0.3g、95%)。融点 63−66℃; H NMR (400 MHz, CDOD): δ 6.63 (s, 1H), 6.58 (s, 1H), 6.42 (s, 1H), 3.36 (s, 2H), 2.48 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 1.55−1.62 (m, 2H), 1.26−1.38 (m, 4H), 0.89 (t, J = 6.8 Hz, 3H); 13C NMR (101 MHz, CDOD): δ 177.79, 155.31, 142.36, 137.62, 119.08, 111.66, 111.18, 43.70, 34.17, 29.95, 29.56, 20.87, 11.64; LRMS (ESI): m/z 445.2 (2M − 2Na + 3H), m/z 223 (M − Na + 2H); HPLC: 3.5分。
【0112】
化合物VIII:2−(4−ヒドロキシ−3−ペンチルフェニル)酢酸のナトリウム塩
上記化合物を、実施例VIIの場合と同様の2−(4−(ベンジルオキシ)−3−ブロモフェニル)酢酸ベンジルと(E)−ペンタ−1−エニルボロン酸ピナコールエステルとの鈴木カップリング、及びそれに続く水素化によって調製した。白色固体;融点 192−195℃; H NMR (400 MHz, CDOD): δ 7.01 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 6.93 (dd, J = 8.2, 2.3 Hz, 1H), 6.64 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 3.35 (s, 2H), 2.53 (t, J = 7.7 Hz, 2H), 1.54−1.61 (m, 2H), 1.30−1.37 (m, 4H), 0.90 (t, J = 7.2 Hz, 3H); 13C NMR (101 MHz, CDOD): δ 180.25, 153.20, 130.54, 128.80, 128.76, 127.10, 114.49, 44.45, 31.84, 30.10, 29.73, 22.52, 13.31; LRMS (ESI): m/z 245.2 (55%, MH), 177.4 (100%, M − CONa); HPLC: 1.9分。
【0113】
化合物IX:2−(2−ヒドロキシ−3−ペンチルフェニル)酢酸のナトリウム塩
【化5】
ステップ1
2−(2−ヒドロキシフェニル)酢酸(3.00g、19.7mmol)のメタノール(40mL)溶液を硫酸(0.95mL、17.8mmol)で処理し、この反応混合物を室温で18時間撹拌した。この反応混合物を酢酸エチル(250mL)で希釈し、この溶液を水(2×150mL)及び飽和塩化ナトリウム水溶液(150mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で脱水し、ろ過し、減圧下で留去して粗生成物を得た。熱ヘキサンから再結晶して2−(2−ヒドロキシフェニル)酢酸メチルを得た(2.83g、87%)。H NMR (400 MHz, CDCl): δ 7.20 (ddd, J = 7.7, 7.4, 1.8 Hz, 1H), 7.09−7.11 (m, 1H), 6.94 (dd, J = 8.0, 1.2 Hz, 1H), 6.88 (ddd, J = 7.4, 7.4, 1.2 Hz, 1H), 3.75 (s, 3H), 3.69 (s, 2H)。
【0114】
ステップ2
2−(2−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル(1.00g、6.0mmol)、トリフェニルホスフィン(2.37g、9.0mmol)及びペンタ−1−エン−3−オール(0.78g、9.0mmol)のテトラヒドロフラン(30mL)溶液を窒素下で0℃に冷却し、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(1.86mL;9.0mL)を10分間かけて滴下により添加した。次いでこの反応混合物を60℃で21.5時間加熱した。減圧下で溶媒を留去し、残渣をヘキサン中5%の酢酸エチルで抽出した。抽出液をろ過し、減圧下で留去して粗生成物を得た。バイオタージ(商標)SP1システム(120gのシリカ・カートリッジ)上、ヘキサン中0〜3%の酢酸エチルで溶離させて精製し、2−(2−(ペンタ−1−エン−3−イルオキシ)フェニル)酢酸メチルを得た(0.39g、28%)。H NMR (400 MHz, CDCl): δ 7.21−7.26 (m, 1H), 7.20 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 6.91 (ddd, J = 7.4, 7.4, 1.0 Hz, 1H), 6.87 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 5.84 (ddd, J = 17.4, 10.7, 6.0 Hz, 1H), 5.26 (d, J = 17.4 Hz, 1H), 5.22 (d, J = 10.7 Hz, 1H), 4.63 (dt, J = 6.0, 6.0 Hz, 2H), 3.70 (s, 3H), 3.68 (s, 2H), 1.71−1.87 (m, 2H), 1.02 (t, J = 7.5 Hz, 3H); 13C NMR (101 MHz, CDCl): δ 172.58,. 156.28, 137.75, 131.19, 128.50, 123.87, 120.52, 116.66, 113.18, 79.76, 52.00, 36.61, 28.71, 9.62。
【0115】
ステップ3
2−(2−(ペンタ−1−エン−3−イルオキシ)フェニル)酢酸メチル(0.24g、1.0mmol)のN−メチル−2−ピロリドン(1.0mL)溶液を、バイオタージ イニシエータ中、180℃で30分間、次いで15分間、マイクロ波照射を照射した。この溶液を酢酸エチル(25mL)で抽出し、次いで水(4×25mL)及び飽和塩化ナトリウム水溶液(25mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で脱水し、ろ過し、減圧下で留去して粗生成物を得た。バイオタージ(商標)SP1システム(40gのシリカ・カートリッジ)上、ヘキサン中0〜7%の酢酸エチルで溶離させて精製し、(E)−2−(2−ヒドロキシ−3−(ペンタ−2−エニル)フェニル)酢酸メチルを得た(0.89g、37%)。H NMR (400 MHz, CDCl): δ 7.09 (s, 1H), 7.08 (dd, J = 7.4, 1.6 Hz, 1H), 7.01 (dd, J = 7.6, 1.6 Hz, 1H), 6.85 (dd, J = 7.6, 7.4 Hz, 1H), 5.59−5.70 (m, 2H), 3.75 (s, 3H), 3.69 (s, 2H), 3.41 (d, J = 4.7 Hz, 2H), 2.04−2.11 (m, 2H), 1.01 (t, J = 7.4 Hz, 3H); 13C NMR (101 MHz, CDCl): δ 174.31, 153.53, 134.44, 129.86, 129.32, 128.62, 127.13, 121.08, 120.82, 52.79, 37.59, 34.17, 25.77, 13.97。
【0116】
ステップ4
(E)−2−(2−ヒドロキシ−3−(ペンタ−2−エニル)フェニル)酢酸メチル(0.14g、0.6mmol)を、化合物Iの場合のステップ3と同様に、但し溶媒としてメタノールを用いて水素化して、2−(2−ヒドロキシ−3−ペンチルフェニル)酢酸メチルを得た(0.11g,76%)。H NMR (400 MHz, CDCl):δ 7.57 (s, 1H), 7.11 (dd, J = 7.4, 1.6 Hz, 1H), 6.96 (dd, J = 7.4, 1.6 Hz, 1H), 6.84 (dd, J = 7.4, 7.4 Hz, 1H), 3.76 (s, 3H), 3.70 (s, 2H), 2.68 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 1.61−1.67 (m, 2H), 1.36−1.43 (m, 4H), 0.93 (t, J = 7.0 Hz, 3H); 13C NMR (101 MHz, CDCl): δ 175.01, 153.48, 131.75, 129.98, 128.75, 120.74, 120.60, 53.01, 38.30, 32.10, 30.50, 29.91, 22.87, 14.34。
【0117】
2−(2−ヒドロキシ−3−ペンチルフェニル)酢酸メチル(0.11g、0.5mmol)を、化合物Iの場合のステップ4と同様に、アセトニトリル/水(4:1)を溶媒として用いて加水分解して、2−(2−ヒドロキシ−3−ペンチルフェニル)酢酸を得た(0.57g、57%)。H NMR (400 MHz, CDCl): δ 8.70 (br s, 1H), 7.09 (dd, J = 7.6, 1.6 Hz, 1H), 6.98 (dd, J = 7.4, 1.6 Hz, 1H), 6.84 (dd, J = 7.6, 7.4 Hz, 1H), 3.68 (s, 2H), 2.62 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 1.57−1.65 (m, 2H), 1.31−1.40 (m, 4H), 0.91 (t, J = 7.0 Hz, 3H); 13C NMR (101 MHz, CDCl): δ 179.89, 152.79, 130.92, 130.04, 128.98, 121.08, 120.24, 37.74, 32.02, 30.34, 29.78, 22.80, 14.30。
【0118】
ステップ6
2−(2−ヒドロキシ−3−ペンチルフェニル)酢酸(22mg、0.098mmol)を、化合物Iの場合のステップ5と同様にナトリウム塩に転化させて、2−(2−ヒドロキシ−3−ペンチルフェニル)酢酸ナトリウムを得た(24mg、98%)。H NMR (400 MHz, CDOD): δ 6.91 (dd, J = 7.5, 1.6 Hz, 1H), 6.87 (dd, J = 7.5, 1.6 Hz, 1H), 6.66 (dd, J = 7.5, 7.5 Hz, 1H), 3.49 (s, 2H), 2.59 (t, J = 7.7 Hz, 2H), 1.55−1.62 (m, 2H), 1.28−1.38 (m, 4H), 0.90 (t, J = 7.0 Hz, 3H); 13C NMR (101 MHz, CDOD): δ 180.26, 154.27, 130.75, 128.21, 127.90, 124.24, 119.23, 42.91, 31.83, 30.21, 29.82, 22.51, 13.29; LRMS (ESIネガティブ): m/z 220.8 (100%, M −Na);UPLC(システムA):5.0分 UPLC システムA:移動相A=10mMのギ酸アンモニウム水溶液;移動相B=アセトニトリル;固相=HSS T3カラム;勾配=10分間にわたるA中5〜100%のB。
【0119】
化合物X:2−(3−フルオロ−5−ペンチルフェニル)酢酸のナトリウム塩
【化6】
ステップ1
窒素下、0℃の3−ブロモ−5−フルオロ安息香酸(2.74g、12.5mmol)のテトラヒドロフラン(6mL)溶液を、ボラン−テトラヒドロフラン錯体(1M、15mL、15mmol)で12分間にわたって少しずつ処理し、次いでこの反応混合物を0℃で70分間、及び室温で22時間撹拌した。反応をメタノール(10mL)の添加によってクエンチし、このメタノール性混合物を室温で3時間撹拌し、次いで減圧下でメタノールから、次いで酢酸エチルからの同時留去によって留去して粗生成物を得た。この物質を酢酸エチル(200mL)に溶解させ、この溶液を0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液(200mL)、及び飽和塩化ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄し、次いで硫酸ナトリウム上で脱水し、ろ過し、減圧下で留去して3−ブロモ−5−フルオロベンジルアルコールを得た(1.79g、67%)。H NMR (400 MHz, CDCl): δ 7.29 (s, 1H), 7.15 (ddd, JHF = 8.2 Hz, JHH = 2.2, 1.8 Hz, 1H), 7.00−7.02及び7.02−7.04 (dm, JHF = 9.2 Hz, JHH =未分裂, 1H), 4.66 (s, 2H), 2.04 (br s, 1H); 19F NMR (377 MHz, CDCl): δ −111.05 (dd, JHF = 9.3, 8.0 Hz, 1F); 13C NMR (101 MHz, CDCl): δ 162.87 (d, JCF = 250.6 Hz), 145.42 (d, JCF = 6.9 Hz), 125.45 (d, JCF = 3.1 Hz), 122.69 (d, JCF = 9.2 Hz), 118.01 (d, JCF = 24.6 Hz), 112.51 (d, JCF = 21.5 Hz), 63.60 (d, JCF = 2.3 Hz)。
【0120】
ステップ2
3−ブロモ−5−フルオロベンジルアルコール(1.79g、8.39mmol)及びトリフェニルホスフィン(3.65g、10.10mmol)のジクロロメタン(45mL)溶液を、四臭化炭素(3.34g、10.10mmol)で10分間にわたって少しずつ処理し、次いでこの反応混合物を室温で終夜撹拌した。溶媒を減圧下で留去し、残渣をジエチルエーテル(50mL)で処理した。得られた白色のスラリーを室温で撹拌し、次いでセライト(商標)を通してろ過した。残渣をジエチルエーテル(2×50mL)で洗浄し、一つにまとめたろ液と洗浄液を減圧下で留去して粗生成物を得た。シリカパッド上、2%の酢酸エチル/ヘキサンで溶離させて精製し、3−ブロモ−5−フロオロベンジルブロミドを得た(2.21g、98%)。H NMR (400 MHz, CDCl): δ 7.33 (s, 1H), 7.18 (ddd, JHF = 8.2 Hz, JHH = 2.0, 2.0 Hz, 1H), 7.05 (ddd, JHF = 9.0 Hz, JHH = 1.8, 1.6 Hz, 1H), 4.38 (s, 2H); 19F NMR (377 MHz, CDCl): δ −110.19 to −110.14 (m, 1F); 13C NMR (101 MHz, CDCl): δ 162.67 (d, JCF = 252.1 Hz), 141.61(d, JCF = 8.5 Hz), 128.17 (d, JCF = 3.1 Hz), 122.94 (d, JCF = 10.0 Hz), 119.39 (d, JCF = 24.6 Hz), 115.34 (d, JCF = 22.3 Hz), 31.31 (d, JCF = 2.3 Hz)。
【0121】
ステップ3
シアン化ナトリウム(0.38g、7.73mmol)の水(0.35mL)懸濁液を3−ブロモ−5−フルオロベンジルブロミド(1.38g、5.15mmol)のジメチルホルムアミド(2.6mL)溶液で処理し、この反応混合物を封管中、75℃で3時間加熱した。この反応混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル(50mL)と2.5%w/vの炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)との間で分配させた。水層を別の酢酸エチル(50mL)で抽出し、一つにまとめた抽出液を水(2×50mL)及び飽和塩化ナトリウム水溶液(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で脱水し、ろ過し、減圧下で留去して粗生成物を得た。バイオタージ(商標)40iMカラム(シリカ)上において、10%の酢酸エチル/ヘキサンで溶離させて精製し、2−[3−ブロモ−5−フルオロフェニル]アセトニトリルを得た(0.64g、58%)。H NMR (400 MHz, CDCl): δ 7.26−7.28 (m, 1H), 7.17−7.19及び7.19−7.21 (dm, JHF = 8.0 Hz, JHH =未分裂, 1H), 6.98−7.00及び7.00−7.02 (dm, JHF = 8.8 Hz, JHH =未分裂, 1H), 3.73 (s, 2H); 19F NMR (377 MHz, CDCl): δ −109.46 (dd, JHF = 8.0, 8.0 Hz, 1F); 13C NMR (101 MHz, CDCl): δ 162.90 (d, JCF = 252.1 Hz), 133.95 (d, JCF = 8.5 Hz), 127.24 (d, JCF = 3.8 Hz), 123.53 (d, JCF = 10.0 Hz), 119.22 (d, JCF = 23.8 Hz), 117.00, 114.50 (d, JCF = 23.1 Hz), 23.30 (d, JCF = 1.5 Hz)。
【0122】
ステップ4
上記アリールブロミド(0.55g、2.58mmol)及び(E)−1−ペンテン−1−イルボロン酸ピナコールエステル(0.61g、3.13mmol)のジメトキシエタン(13mL)溶液を炭酸ナトリウム(0.55g、5.17mmol)の水(3mL)溶液で処理した。この溶液を窒素によって脱酸素し、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.15g、0.13mmol;5モル%)で処理した。次いでこの混合物を封管中、90℃で17時間加熱した。この反応混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル(50mL)と1Mの塩酸(50mL)との間で分配させた。有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液(30mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で脱水し、ろ過し、減圧下で留去して粗生成物を得た。バイオタージ(商標)40iMカラム(シリカ)上、(3%の)酢酸エチル/ヘキサンで溶離させて精製し、(E)−2−[3−フルオロ−5−[ペンタ−1−エニル]フェニル]アセトニトリルを得た(0.43g、82%)。H NMR (400 MHz, CDCl): δ 7.04 (s, 1H), 6.97 (ddd, JHF = 9.8 Hz, JHH = 2.0, 1.5 Hz, 1H), 6.82−6.85 (m, 1H), 6.31 (d, J = 15.8 Hz, 1H), 6.25 (ddd, J = 15.8, 5.9, 0 Hz, 1H), 3.68 (s, 2H), 2.18 (td, J = 7.2, 5.4 Hz, 2H), 1.49 (qt, J = 7.4, 7.4 Hz, 2H), 0.95 (t, J = 7.4 Hz, 3H); 19F NMR (377 MHz, CDCl): δ −112.93 (dd, JHF = 10.6, 9.3 Hz, 1F); 13C NMR (101 MHz, CDCl): δ 163.43 (d, JCF = 246.0 Hz), 141.44 (d, JCF = 8.5 Hz), 133.99, 132.37 (d, JCF = 8.5 Hz), 128.42 (d, JCF = 2.3 Hz), 121.60 (d, JCF = 3.1 Hz), 117.66, 113.40 (d, JCF = 23.1 Hz), 112.21 (d, JCF = 22.3 Hz), 35.22, 23.49 (d, JCF = 2.3 Hz), 22.51, 13.94。
【0123】
ステップ5
上記フェニルアセトニトリル誘導体(0.43g、2.10mmol)のメタノール(42mL)溶液を水酸化ナトリウム水溶液(5M;21mL、105mmol)で処理し、この混合物を封管中、75℃で4.5時間加熱した。この反応混合物を室温まで冷却し、6Mの塩酸水溶液(21mL)でクエンチし、室温で10分間撹拌し、次いで酢酸エチル(2×75mL)で抽出した。この有機抽出液を飽和塩化ナトリウム水溶液(75mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で脱水し、ろ過し、減圧下で留去して粗生成物を得た。バイオタージ(商標)40iMカラム(シリカ)上、70%の酢酸エチル/ヘキサンで溶離させて精製し、所望の生成物のメチルエステル(0.09g、18%)、及び純度約95%の(E)−2−[3−フルオロ−5−[ペンタ−1−エニル]フェニル]酢酸(0.22g、48%)を得た。H NMR (400 MHz, CDCl): δ 11.17 (br s, 1H), 7.02 (s, 1H), 6.98 (ddd, JHF = 9.8 Hz, JHH = 2.0, 1.8 Hz, 1H), 6.85 (ddd, JHF = 9.0 Hz, JHH = 1.8, 1.6 Hz, 1H), 6.33 (d, J = 15.8 Hz, 1H), 6.25 (dt, J = 15.8, 6.4 Hz, 1H), 3.62 (s, 2H), 2.17−2.22 (m, 2H), 1.51 (qt, J = 7.4, 7.4 Hz, 2H), 0.96 (t, J = 7.4 Hz, 3H); 19F NMR (377 MHz, CDCl): δ −114.10 (dd, JHF = 9.3, 9.3 Hz, 1F)。
【0124】
ステップ6
上記不完全に精製された酸(0.28g、1.26mmol)のアセトン(5mL)溶液を、炭酸カリウム(0.26g、1.90mmol)、ヨウ化カリウム(0.04g、0.25mmol)及びベンジルブロミド(0.18mL、1.5mmol)で処理し、この反応混合物を室温で18時間撹拌した。この反応混合物を酢酸エチル(25mL)と1Mの塩酸水溶液(25mL)との間で分配させた。次いで有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液(25mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で脱水し、ろ過し、減圧下で留去して粗生成物を得た。バイオタージ(商標)40iMカラム(シリカ)上、5%の酢酸エチル/ヘキサンで溶離させて精製し、(E)−2−[3−フルオロ−5−[ペンタ−1−エニル]フェニル]酢酸ベンジル(0.3g、75%)を得た。H NMR (400 MHz, CDCl): δ 7.32−7.40 (m, 5H), 7.03 (s, 1H), 6.97 (ddd, JHF = 10.0 Hz, JHH = 2.3, 1.5 Hz, 1H), 6.86 (ddd, JHF = 9.0 Hz, JHH = 2.0, 1.7 Hz, 1H), 6.33 (d, J = 15.8 Hz, 1H), 6.23 (dt, J = 15.8, 6.5 Hz, 1H), 5.16 (s, 2H), 3.64 (s, 2H), 2.17−2.23 (m, 2H), 1.52 (qt, J = 7.4, 7.4 Hz, 2H), 0.97 (t, J = 7.4 Hz, 3H); 19F NMR (377 MHz, CDCl): δ −114.34 (dd, JHF = 9.3, 9.3 Hz, 1F); 13C NMR (101 MHz, CDCl): δ 171.08, 163.32 (d, JCF = 244.4 Hz), 140.65 (d, JCF = 7.7 Hz), 136.17 (d, JCF = 8.5 Hz), 135.93, 133.05, 128.95 (d, JCF = 3.1 Hz), 128.84, 128.52 (d, JCF = 9.2 Hz), 128.48, 123.09 (d, JCF = 2.3 Hz), 114.78 (d, JCF = 22.3 Hz), 111.46 (d, JCF = 22.3 Hz), 67.04, 41.26 (d, JCF = 1.5 Hz), 35.27, 22.63, 14.00。
【0125】
ステップ7
上記ベンジルエステル(0.16g、0.50mmol)の酢酸エチル(2mL)溶液を炭素担持パラジウム(1%w/wのPd;15mg)で処理した。この混合物を水素で脱気し、1気圧の水素下、室温で終夜撹拌した。この反応混合物をろ過し、減圧下で留去して2−[3−フルオロ−5−ペンチルフェニル]−酢酸を得た(0.11g、97%)。H NMR (400 MHz, CDCl): δ 11.47 (br s, 1H), 6.89 (s, 1H), 6.81−6.86 (m, 2H), 3.62 (s, 2H), 2.60 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 1.58−1.66 (m, 2H), 1.28−1.41 (m, 4H), 0.92 (t, J = 6.8 Hz, 3H); 19F NMR (377 MHz, CDCl): δ −114.34 (dd, JHF = 9.3, 9.3 Hz, 1F); 13C NMR (101 MHz, CDCl): δ 178.15, 163.08 (d, JCF = 246.0 Hz), 145.02 (d, JCF = 7.7 Hz), 135.04 (d, JCF = 8.5 Hz), 125.49 (d, JCF = 2.3 Hz), 114.49 (d, JCF = 20.8 Hz), 113.83 (d, JCF = 22.3 Hz), 41.01 (d, JCF = 1.5 Hz), 35.87 (d, JCF = 1.5 Hz), 31.67, 31.03, 22.74, 14.24。
【0126】
ステップ8
上記酸(0.11g、0.49mmol)のエタノール(3mL)溶液を炭酸水素ナトリウム(0.041g、0.49mmol)の水(0.75mL)溶液で処理し、この反応混合物を室温で17時間撹拌した。エタノールを減圧下で留去し、残留した水性シロップ状液を水(10mL)で希釈し、ろ過し(0.2μm)、凍結乾燥して2−[3−フルオロ−5−ペンチルフェニル]酢酸ナトリウムを白色固体として得た(0.12g、99%)。融点 120−123℃; H NMR (400 MHz, CDOD): δ 6.94 (s, 1H), 6.87 (ddd, JHF = 9.8 Hz, JHH = 2.0, 2.0 Hz, 1H), 6.70 (ddd, JHF = 10.0 Hz, JHH = 2.0, 2.0 Hz, 1H), 3.45 (s, 2H), 2.56 (t, J = 7.7 Hz, 2H), 1.58−1.63 (m, 2H), 1.26−1.39 (m, 4H), 0.90 (t, J = 7.0 Hz, 3H); 19F NMR (377 MHz, CDOD): δ −117.54 (dd, JHF = 10.0, 10.0 Hz, 1F); 13C NMR (101 MHz, CDOD): δ 178.66, 163.04 (d, JCF = 242.9 Hz), 145.07 (d, JCF = 7.7 Hz), 140.42 (d, JCF = 8.5 Hz), 125.03 (d, JCF = 2.3 Hz), 112.99 (d, JCF = 22.3 Hz), 112.30 (d, JCF = 20.8 Hz), 44.96, 35.53 (d, JCF = 1.5 Hz), 31.46, 31.00, 22.45, 13.30; HPLC: 1.2分。
【0127】
化合物XI:2−(2−フルオロ−3−ペンチルフェニル)酢酸のナトリウム塩
上記化合物を、3−ブロモ−2−フルオロ安息香酸から出発して、化合物Xの場合と同様に調製した。白色固体; H NMR (400 MHz, CDOD): δ 7.13 (ddd, JHF = 7.0 Hz, JHH = 7.4, 1.9 Hz, 2H), 7.03 (ddd, JHF = 7.0 Hz, JHH = 7.4, 1.9 Hz, 1H), 6.97 (dd, JHH = 7.4, 7.4 Hz, 1H), 3.51 (d, JHF = 1.4 Hz, 2H), 2.61 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 1.56−1.63 (m, 2H), 1.28−1.40 (m, 4H), 0.90 (t, J = 6.9 Hz, 3H); 13C NMR (101 MHz, CDOD): δ 178.21, 159.70 (d, JCF = 242.9 Hz), 129.07 (d, JCF = 4.6 Hz), 128.88, 128.43 (d, JCF = 5.4 Hz), 125.02 (d, JCF = 17.7 Hz), 123.31 (d, JCF = 4.6 Hz), 37.89 (d, JCF = 3.8 Hz), 31.55, 29.98, 28.91 (d, JCF = 3.1 Hz), 22.41, 13.26; 19F NMR (377 MHz, CDOD): δ −126.09 to −126.05 (m, 1F); LRMS (ESI): m/z 220.0 (M − CONa + アセトニトリル), 179.4 (M − CONa); HPLC: 1.2分。
【0128】
化合物XII:2−(4−フルオロ−3−ペンチルフェニル)酢酸のナトリウム塩
上記化合物を、2−(3−ブロモ−4−フルオロフェニル)酢酸メチルから、化合物VIIの場合と同様の鈴木カップリング、ならびにそれに続く、化合物Iの場合と同様の水素化、エステルの加水分解及び塩の生成によって調製した。上記出発物質であるエステルは、硫酸存在下での2−(3−ブロモ−4−フルオロフェニル)酢酸のメタノールとの反応によって調製した。白色固体; H NMR (400 MHz, CDOD): δ 7.16 (dd, JHF = 7.4 Hz, JHH = 2.3 Hz, 2H), 7.08 (ddd, JHF = 5.0 Hz, JHH = 8.3, 2.3 Hz, 1H), 6.88 (dd, JHF = 10.1 Hz, JHH = 8.3 Hz, 1H), 3.40 (s, 2H), 2.59 (t, J = 7.7 Hz, 2H), 1.55−1.63 (m, 2H), 1.28−1.40 (m, 4H), 0.90 (t, J = 7.0 Hz, 3H); 13C NMR (101 MHz, CDOD): δ 179.12, 159.88 (d, JCF = 240.6 Hz), 133.88 (d, JCF = 3.8 Hz), 131.26 (d, JCF = 4.6 Hz), 128.78 (d, JCF = 16.1 Hz), 127.96 (d, JCF = 8.5 Hz), 114.26 (d, JCF = 23.1 Hz), 44.38, 31.51, 30.00, 28.76 (d, JCF = 1.5 Hz), 22.36, 13.18; 19F NMR (377 MHz, CDOD): δ −126.45〜−126.40 (m, 1F); LRMS (ESI): m/z 225.2 (M − Na + 2H); HPLC: 1.9分。
【0129】
化合物XIII:(RS)−2−フルオロ−2−(3−ペンチルフェニル)酢酸のナトリウム塩
上記化合物を、2−フルオロ−2−(3−ペンチルフェニル)酢酸エチルから、化合物Iの場合と同様に調製した。該エステルは、テトラヒドロフラン中、−78℃での2−(3−ペンチルフェニル)酢酸エチルのリチウムジイソプロピルアミド及びN−フルオロベンゼンスルホンイミドとの反応によって調製した。白色固体; H NMR (400 MHz, CDOD): δ 7.34 (s, 1H), 7.30 (dd, J = 7.6, 1.4 Hz, 1H), 7.24 (dd, J = 7.6, 7.6 Hz, 1H), 7.13 (dd, J = 7.4, 1.0 Hz, 1H), 5.53 (d, JHF = 51.3 Hz, 1H), 2.60 (t, J = 7.7 Hz, 2H), 1.59−1.65 (m, 2H), 1.27−1.39 (m, 4H), 0.76 (t, J = 6.9 Hz, 3H); 13C NMR (101 MHz, CDOD): δ 173.73 (d, JCF = 23.9 Hz), 141.34, 136.37 (d, JCF = 20.0 Hz), 126.79 (d, JCF = 2.3 Hz), 126.40, 125.41 (d, JCF = 5.4 Hz), 122.84 (d, JCF = 5.4 Hz), 90.34 (d, JCF = 183.4 Hz), 34.13, 29.91, 29.65, 20.85, 11.64; 19F NMR (377 MHz, CDOD): δ −168.83 (d, JHF = 51.7 Hz, 1F); LRMS (ESIネガティブ): m/z 223.0 (100%, M − Na); HPLC: 4.1分。
【0130】
化合物XIV:2−[3,5−ジペンチルフェニル]酢酸ナトリウム
【化7】
ステップ1
窒素下、0℃の2−[3,5−ジヒドロキシフェニル]酢酸メチル(1.00g、5.49mmol)及びN−フェニル−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(4.31g、12.1mmol)のジクロロメタン(20mL)懸濁液をトリエチルアミン(1.68mL、12.1mmol)で処理した。透明な溶液が生成した。次いでこの反応混合物を窒素下、0℃で2時間、及び室温で21時間撹拌した。この反応混合物を酢酸エチル(100mL)で希釈し、この溶液を0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液(2×100mL)、及び飽和塩化ナトリウム水溶液(75mL)で洗浄し、次いで硫酸ナトリウム上で脱水し、ろ過し、減圧下で留去して粗生成物を得た。バイオタージ(商標)40iMカラム(シリカ)上、酢酸エチル/ヘキサン 0:1〜1:9で溶離させて精製し、2−[3,5−ビス(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フェニル]酢酸メチルを淡色の油状物として得た(2.23g、91%)。H NMR (400 MHz, CDCl): δ 7.32 (d, J = 2.2 Hz, 2H), 7.18 (dd, J = 2.2, 2.2 Hz, 1H), 3.72 (s, 5H); 19F NMR (377 MHz, CDCl): δ −73.20 (s, 3F); 13C NMR (101 MHz, CDCl): δ 170.05, 149.48, 139.01, 122.95, 118.87 (q, JCF = 320.5 Hz), 114.42, 52.62, 40.29。
【0131】
ステップ2
上記アリールビス(トリフレート)(2.23g、4.99mmol)及び(E)−1−ペンテン−1−イルボロン酸ピナコールエステル(2.45g、12.5mmol)の1,2−ジメトキシエタン(25mL)溶液を、炭酸ナトリウム(1.59g、15.0mmol)の水(8mL)溶液で処理した。この溶液を窒素で脱酸素し、次いでテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.58g、0.50mmol)で処理した。この混合物を封管中、90℃で17時間加熱した。この反応混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル(200mL)と1Mの塩酸水溶液(150mL)との間で分配させた。有機相を5%の炭酸水素ナトリウム水溶液(150mL)、及び飽和塩化ナトリウム水溶液(150mL)で洗浄し、次いで硫酸ナトリウム上で脱水し、ろ過し、減圧下で留去して粗生成物を得た。バイオタージ(商標)40iLカラム(シリカ)上、酢酸エチル/ヘキサン 0:1〜3:97で溶離させて精製し、2−[3,5−ジ[(E)−1−ペンタ−1−エニル]フェニル]酢酸メチルを、分離不能な過剰の(E)−1−ペンテン−1−イルボロン酸ピナコールエステルとの10:4の混合物として得た(1.12g、61%)。H NMR (400 MHz, CDCl): δ 7.21 (s, 1H), 7.10 (d, J = 1.3 Hz, 2H), 6.34 (d, J = 15.8 Hz, 1H), 6.22 (dd, J = 15.8, 6.7 Hz, 1H), 3.65 (s, 3H), 3.55 (s, 2H), 2.18 (tdd, J= 6.8, 6.8, 1.0 Hz, 2H), 1.49 (qt, J = 7.4, 7.2 Hz, 2H), 0.96 (t, J = 7.4 Hz, 3H); 13C NMR (101 MHz, CDCl): δ 172.04, 138.59, 134.47, 131.34, 129.97, 125.57, 122.75, 52.07, 41.32, 35.39, 22.77, 13.97。
【0132】
ステップ3
上記不飽和化合物(1.12g、78.5%w/w、3.07mmol)の酢酸エチル(1mL)及びメタノール(1mL)の溶液を、炭素担持パラジウム(10%w/wのPd;0.12g)で処理した。この混合物を水素で脱気し、1気圧の水素下、室温で22時間撹拌した。この反応混合物をろ過し、減圧下で留去して2−[3,5−ジペンチルフェニル]酢酸メチルを、分離不能なペンチルボロン酸ピナコールエステルとの10:4の混合物として得た(0.86g、76%)。H NMR (400 MHz, CDCl): δ 6.93 (s, 3H), 3.70 (s, 3H), 3.59 (s, 2H), 2.58 (t, J = 7.9 Hz, 2H), 1.58−1.66 (m, 2H), 1.32−1.38 (m, 4H), 0.91 (t, J = 6.8 Hz, 3H)。
【0133】
ステップ4
上記メチルエステル(0.86g、79%w/w、2.34mmol)のアセトニトリル(24mL)溶液を水酸化リチウム(0.28g、11.7mmol)の水(6mL)溶液で処理し、この反応混合物を室温で22時間撹拌した。この反応混合物を1Mの塩酸水溶液(55mL)でクエンチし、次いで酢酸エチル(100mL)で抽出した。有機抽出液を飽和塩化ナトリウム水溶液(50mL)で洗浄し、次いで硫酸ナトリウム上で脱水し、ろ過し、減圧下で留去して粗生成物を得た。SiliaSep酸化ケイ素カラム上、酢酸エチル/ヘキサン 0:1〜1:4で溶離させて精製し、2−[3,5−ジペンチル]フェニル]酢酸を無色の油状物として得た(0.55g、84%)。H NMR (400 MHz, CDCl): δ 6.99 (s, 3H), 3.65 (s, 2H), 2.63 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 1.64−71 (m, 2H), 1.36−1.44 (m, 4H), 0.97 (t, J = 6.9 Hz, 3H); 13C NMR (101 MHz, CDCl): δ 178.96, 143.55, 133.21, 127.93, 127.06, 41.47, 36.13, 31.94, 31.47, 22.86, 14.34。
【0134】
ステップ5
上記の酸(0.48g、1.75mmol)のエタノール(12mL)溶液を炭酸水素ナトリウム(0.15g、1.75mmol)の水(3mL)溶液で処理し、この反応混合物を室温で3日間撹拌した。エタノールを減圧下で留去し、残留した水性シロップ状液を水(50mL)で希釈し、ろ過し(PES、0.2μm)、凍結乾燥して、2−[3,5−ジペンチルフェニル]酢酸ナトリウムを白色固体として得た(0.52g、定量的)。融点 225−230℃; H NMR (400 MHz, CDOD + DO): δ 6.92 (s, 2H), 6.76 (s, 1H), 3.41 (s, 2H), 2.50 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 1.52−1.59 (m, 2H), 1.23−1.33 (m, 4H), 0.85 (t, J = 6.9 Hz, 3H); 13C NMR (101 MHz, CDOD + DO): δ 179.99, 142.66, 137.63, 126.66, 126.16, 45.11, 35.61, 31.36, 31.19, 22.41, 13.47; LRMS (ESI): m/z 277.5 (w, [M − Na+ + 2H+]), 231.1 (100%,カルボキシ基の脱離に由来するトロピリウムイオン); HPLC: 3.0分。
【0135】
化合物XV:2−[3,5−ジヘキシルフェニル]酢酸のナトリウム塩
上記化合物を、(E)−ヘキサ−1−エニルボロン酸ピナコールエステルから、化合物XIVの場合と同様に調製した。白色固体; H NMR (400 MHz, CDOD): δ 6.96 (s, 2H), 6.79 (s, 1H), 3.43 (s, 2H), 2.54 (d, J = 7.7 Hz, 4H), 1.55−1.63 (m, 4H), 1.28−1.36 (m, 12H), 0.89 (t, J = 6.8 Hz, 6H); 13C NMR (101 MHz, CDOD): δ 179.68, 142.38, 137.82, 126.55, 126.07, 45.30, 35.87, 31.83, 31.67, 29.02, 22.61, 13.42; LRMS (ESI): m/z 322.0 (100%, M − Na+ + H+ + NH+)及び259.0 (35%, M − CONa);UPLC(システムA):8.9分 UPLC システムA:移動相A=10mMの炭酸水素アンモニウム水溶液;移動相B=アセトニトリル;固相=HSS T3カラム;勾配=10分間にわたるA中5〜100%のB。
【0136】
化合物XVI:2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジペンチルフェニル)酢酸のナトリウム塩
【化8】
ステップ1
2,4−ジブロモ−6−(ブロモメチル)フェノール(3.5g、10.0mmol)のアセトニトリル(17mL)溶液をシアン化ナトリウム(2.5g、50.0mmol)の溶液で処理し、この反応混合物を還流下、100℃で1時間加熱した。この反応混合物を室温まで冷却し、水(100mL)に注ぎ込んだ。1Mの塩酸水溶液でpHを10〜8に調節し、この混合物を酢酸エチル(3×250mL)で抽出した。一つにまとめた抽出液を1Mの塩酸水溶液(250mL)及び飽和塩化ナトリウム水溶液(250mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で脱水し、ろ過し、減圧下で留去して粗生成物を得た。アセトンで抽出し、ろ過し、減圧下で留去して2−(3,5−ジブロモ−2−ヒドロキシフェニル)アセトニトリルを得た(2.6g、90%)。H NMR (400 MHz, d6−アセトン): δ 8.75 (br s, 1H), 7.69 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 7.54 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 3.92 (s, 2H); 13C NMR (101MHz, d6−アセトン): δ 151.31, 134.51, 131.92, 122.80, 117.43, 111.89, 111.53, 18.70。
【0137】
ステップ2
2−(3,5−ジブロモ−2−ヒドロキシフェニル)アセトニトリル(2.6g、9.0mmol)を、硫酸(2.5mL)、酢酸(2.5mL)及び水(2.5mL)の混合物で処理し、この反応混合物を還流下、125℃で2時間加熱した。この反応混合物を室温まで冷却し、氷(50mL)と水(50mL)の混合物中に注ぎ込み、次いで氷が融解するまで撹拌した。この混合物を酢酸エチル(250mL)で抽出し、次いで抽出液を水(100mL)及び飽和塩化ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で脱水し、ろ過し、減圧下で留去して粗製の2−(3,5−ジブロモ−2−ヒドロキシフェニル)酢酸を得た(3.1g)。この物質を更に精製またはキャラクタライズすることなく、次のステップに直接用いた。
【0138】
ステップ3
粗製の2−(3,5−ジブロモ−2−ヒドロキシフェニル)酢酸(3.1g、9.0mmol)のメタノール(17mL)溶液を硫酸(0.43mL、8.1mmol)で処理し、この反応混合物を周囲温度で16時間撹拌した。減圧下でメタノールを留去し、残渣を酢酸エチル(270mL)に溶解させた。この溶液を水(2×200mL)及び飽和塩化ナトリウム水溶液(130mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で脱水し、ろ過し、減圧下で留去して粗生成物を得た。バイオタージ(商標)SP1システム(120gのシリカ・カートリッジ)上、ヘキサン中0〜20%の酢酸エチルで溶離させて精製し、2−(3,5−ジブロモ−2−ヒドロキシフェニル)酢酸メチルを得た(1.4g、49%)。H NMR (400 MHz, CDCl): δ 7.52 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 7.23 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 6.42 (br s, 1H), 3.72 (s, 3H), 3.65 (s, 2H); 13C NMR (101 MHz, CDCl): δ 172.06, 150.60, 133.74, 133.50, 123.94, 112.62, 111.77, 52.78, 36.61。
【0139】
ステップ4
2−(3,5−ジブロモ−2−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル(0.5g、1.54mmol)のアセトン(5mL)溶液を、炭酸カリウム(0.26g、1.86mmol)、ヨウ化カリウム(0.05g、0.32mmol)及びベンジルブロミド(0.20mL、1.7mmol)で処理し、この反応混合物を室温で1時間撹拌した。減圧下でアセトンを留去し、残渣を酢酸エチル(50mL)と1Mの塩酸水溶液(50mL)との間で分配させた。有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で脱水し、ろ過し、減圧下で留去して粗生成物を得た。バイオタージ(商標)SP1システム(40gのシリカ・カートリッジ)上、ヘキサン中0〜10%の酢酸エチルで溶離させて精製し、2−(2−(ベンジルオキシ)−3,5−ジブロモフェニル)酢酸メチルを得た(0.6g、95%)。H NMR (400 MHz, CDCl): δ 7.67 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.48−7.51 (m, 2H), 7.37 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.34−7.43 (m, 3H), 4.99 (s, 2H), 3.66 (s, 3H), 3.60 (s, 2H); 13C NMR (101 MHz, CDCl): δ 171.26, 153.79, 136.56, 135.38, 133.57, 132.04, 128.82, 128.64, 128.52, 118.69, 117.56, 75.53, 52.50, 35.86。
【0140】
ステップ5
2−(2−(ベンジルオキシ)−3,5−ジブロモフェニル)酢酸メチル(0.3g、0.73mmol)及び(E)−ペンタ−1−エニルボロン酸ピナコールエステル(0.4g、1.79mmol)を、化合物Iの場合のステップ2と同様にカップリングして、2−(2−(ベンジルオキシ)−3,5−ジ((E)−ペンタ−1−エニル)フェニル)酢酸メチルを得た(0.21mg、72%)。H NMR (400 MHz, CDCl): δ 7.50 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 7.44 (dd, J = 7.2, 7.2 Hz, 2H), 7.43 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 7.38 (dd, J = 7.2, 7.2 Hz, 1H), 7.18 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 6.72 (d, J = 15.8 Hz, 1H), 6.39 (d, J = 15.8 Hz, 1H), 6.32 (dt, J = 15.8, 7.0 Hz, 1H), 6.22 (dt, J = 15.8, 6.8 Hz, 1H), 4.87 (s, 2H), 3.69 (s, 3H), 3.67 (s, 2H), 2.20−2.29 (m, 4H), 1.50−1.60 (m, 4H), 1.01 (t, J = 7.3 Hz, 3H), 1.00 (t, J = 7.4 Hz, 3H); 13C NMR (101 MHz, CDCl): δ 172.49, 153.59, 137.58, 134.35, 132.91, 131.91, 130.84, 129.53, 128.78, 128.32, 128.30, 128.24, 127.26, 125.21, 123.89, 75.89, 52.21, 35.94, 35.74, 35.42, 22.87, 22.77, 14.07, 14.06。
【0141】
ステップ6
2−(2−(ベンジルオキシ)−3,5−ジ((E)−ペンタ−1−エニル)フェニル)酢酸メチル(0.2g、0.53mmol)を、化合物Iの場合のステップ3と同様に水素化して、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジペンチルフェニル)酢酸メチルを得た(0.12g、73%)。H NMR (400 MHz, CDCl): δ 7.37 (s, 1H), 6.92 (d, J = 2.1 Hz, 2H), 6.77 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 3.76 (s, 3H), 3.67 (s, 2H), 2.65 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 2.51 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 1.58−1. 66 (m, 4H), 1.31−1.41 (m, 8H), 0.93 (t, J = 7.0 Hz, 3H), 0.92 (t, J = 6.9 Hz, 3H); 13C NMR (101 MHz, CDCl): δ 175.01, 151.27, 135.14, 131.48, 129.92, 128.52, 120.30, 52.95, 38.35, 35.34, 32.15, 31.86, 31.74, 30.61, 30.03, 22.87, 22.83, 14.34, 14.31。
【0142】
ステップ7
2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジフェニルペンチル)酢酸メチル(0.2g、0.53mmol)を、化合物Iの場合のステップ4と同様に加水分解して、ラクトン化した物質が混入した粗生成物を得た。少量を、バイオタージ(商標)SP1システム(120gのシリカ・カートリッジ)上、ヘキサン中0〜100%の酢酸エチルで溶離させて精製し、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジペンチルフェニル)酢酸を得た(13.5mg)。H NMR (400 MHz, CDCl): δ 10.5 (br s, 1H), 6.89 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 6.78 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 6.32 (br s, 1H), 3.66 (s, 2H), 2.58 (t, J = 7.9 Hz, 2H), 2.48 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 1.52−1. 63 (m, 4H), 1.26−1.37 (m, 8H), 0.90 (t, J = 7.0 Hz, 3H), 0.88 (t, J = 6.8 Hz, 3H)。
【0143】
ステップ8
2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジペンチルフェニル)酢酸(13.5mg、0.046mmol)を、化合物Iの場合のステップ5と同様にナトリウム塩へと転化させて、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジペンチルフェニル)酢酸ナトリウムを得た(11mg、77%)。H NMR (400 MHz, CDOD): δ 6.72 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 6.69 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 3.46 (s, 2H), 2.56 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 2.44 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 1.50−1. 61 (m, 4H), 1.25−1.37 (m, 8H), 0.90 (t, J = 6.8 Hz, 3H), 0.88 (t, J = 7.0 Hz, 3H); 13C NMR (101 MHz, CDOD): δ 180.33, 151.94, 133.47, 130.37, 128.21, 127.81, 123.99, 42.90, 34.97, 31.81, 31.60, 31.40, 30.25, 29.88, 22.51, 22.45, 13.29, 13.24; LRMS (ESIネガティブ): m/z 291.2 (100%, M −Na+);UPLC (システムB):7.7分 UPLC システムB:移動相A=0.1%のギ酸水溶液;移動相B=0.1%ギ酸のアセトニトリル溶液;固相=HSS T3カラム;勾配=10分間にわたるA中5〜100%のB。
【0144】
化合物XVII:2−(3,5−ジヘキシル−2−ヒドロキシフェニル)酢酸のナトリウム塩
上記化合物を、(E)−ヘキサ−1−エニルボロン酸ピナコールエステルを用いて、化合物XVIの場合と同様に調製した。H NMR (400 MHz, CDOD): δ 6.72 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 6.69 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 3.46 (s, 2H), 2.56 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 2.44 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 1.50−1. 60 (m, 4H), 1.27−1.37 (m, 12H), 0.89 (t, J = 6.6 Hz, 3H), 0.88 (t, J = 6.80 Hz, 3H); LRMS (ESIネガティブ): m/z 319 (100%, M − Na+);UPLC(システムB):8.7分 UPLC システムB:移動相A=0.1%のギ酸水溶液;移動相B=0.1%ギ酸のアセトニトリル溶液;固相=HSS T3カラム;勾配=10分間にわたるA中5〜100%のB。
【0145】
化合物XVIII:2−(4−ヒドロキシ−3,5−ジペンチルフェニル)酢酸のナトリウム塩
上記化合物を、2−(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)酢酸から、化合物XVIの場合と同様に調製した。H NMR (400 MHz, CDOD): δ 6.87 (s, 2H), 3.33 (s, 2H), 2.55 (t, J = 7.7 Hz, 4H), 1.53−1. 61 (m, 4H), 1.31−1.37 (m, 8H), 0.90 (t, J = 7.0 Hz, 6H); LRMS (ESIネガティブ): m/z 291.1 (100%, M − Na+);UPLC(システムB):6.8分 UPLC システムB:移動相A=0.1%のギ酸水溶液;移動相B=0.1%ギ酸のアセトニトリル溶液;固相=HSS T3カラム;勾配=10分間にわたるA中5〜100%のB。
【0146】
化合物XIX:2−(3,5−ジヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸のナトリウム塩
上記化合物を、2−(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)酢酸、及び(E)−ヘキサ−1−エニルボロン酸ピナコールエステルから、化合物XVIの場合と同様に調製した。H NMR (400 MHz, CDOD): δ 6.72 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 6.69 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 3.46 (s, 2H), 2.56 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 2.44 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 1.50−1.60 (m, 4H), 1.27−1.37 (m, 12H), 0.89 (t, J = 6.6 Hz, 3H), 0.88 (t, J = 6.8 Hz, 3H); LRMS (ESIネガティブ): m/z 319.1 (100%, M − Na+);UPLC(システムB):7.6分 UPLC システムB:移動相A=0.1%のギ酸水溶液;移動相B=0.1%ギ酸のアセトニトリル溶液;固相=HSS T3カラム;勾配=10分間にわたるA中5〜100%のB。
【0147】
化合物XX:2−(4−フルオロ−3,5−ジヘキシルフェニル)酢酸のナトリウム塩
上記化合物を、3,5−ジブロモ−4−フルオロベンジルブロミド及び(E)−ヘキサ−1−エニルボロン酸ピナコールエステルから出発して、化合物XVIの場合と同様に調製した。3,5−ジブロモ−4−フルオロベンジルブロミドは、アセトニトリル中80℃での、N−ブロモスクシンイミド及びアゾビスイソブチルニトリルを用いた3,5−ジブロモ−4−フルオロトルエンの臭素化によって調製した。H NMR (400 MHz, CDOD): δ 6.98 (d, JHF = 7.0 Hz, 2H), 3.38 (s, 2H), 2.57 (t, J = 7.7 Hz, 4H), 1.54−1.61 (m, 4H), 1.28−1.37 (m, 12H), 0.89 (t, J = 6.7 Hz, 6H); 19F NMR (377 MHz, CDOD): δ −132.17 (d, JHF = 6.6 Hz, 1F); 13C NMR (101 MHz, CDOD): δ 179.44, 158.11 (d, JCF = 239.8 Hz), 133.26 (d, JCF = 3.8 Hz), 128.73 (d, JCF = 5.4 Hz), 128.56 (d, JCF = 16.9 Hz), 44.52, 31.69, 30.35 (d, JCF = 1.5 Hz), 28.98, 28.97 (d, JCF = 3.1 Hz), 22.51, 13.29; LRMS (ESIネガティブ): m/z 321.0 (100%, M − Na+);UPLC(システムB):9.2分 UPLC システムB:移動相A=0.1%のギ酸水溶液;移動相B=0.1%ギ酸のアセトニトリル溶液;固相=HSS T3カラム;勾配=10分間にわたるA中5〜100%のB。
【0148】
化合物XXI:2−(4−フルオロ−3,5−ジペンチルフェニル)酢酸のナトリウム塩
上記化合物を、3,5−ジブロモ−4−フルオロベンジルブロミドから出発して、化合物XVIの場合と同様に調製した。H NMR (400 MHz, CDOD): δ 6.98 (d, JHF = 6.8 Hz, 2H), 3.37 (s, 2H), 2.57 (t, J = 7.6 Hz, 4H), 1.54−1.62 (m, 4H), 1.28−1.37 (m, 8H), 0.90 (t, J = 7.0 Hz, 6H); 19F NMR (377 MHz, CDOD): δ −132.34 (d, JHF = 6.6 Hz, 1F); 13C NMR (101 MHz, CDOD): δ 179.41, 158.10 (d, JCF = 239.8 Hz), 133.26 (d, JCF = 3.8 Hz), 128.72 (d, JCF = 4.6 Hz), 128.56 (d, JCF = 16.9 Hz), 44.51, 31.54, 30.07, 28.92 (d, JCF = 3.1 Hz), 22.38, 13.22; LRMS (ESIネガティブ): m/z 293.0 (100%, M − Na+);UPLC(システムB):8.4分 UPLC システムB:移動相A=0.1%のギ酸水溶液;移動相B=0.1%ギ酸のアセトニトリル溶液;固相=HSS T3カラム;勾配=10分間にわたるA中5〜100%のB。
【0149】
化合物XXII:2−(2−ベンジル−3,5−ジペンチルフェニル)酢酸のナトリウム塩
標記化合物を、2−(2−ベンジル−3,5−ジ((E)−ペンタ−1−エニル)フェニル)酢酸メチルから、化合物XIVの場合と同様に調製した。後者は、化合物XIVの規模拡大実験由来の副生成物(収率1.1%)として単離した。H NMR (400 MHz, CDOD): δ 7.17 (dd, J = 7.3, 7.3 Hz, 2H), 7.09 (dd, J = 7.3, 7.3 Hz, 1H), 6.97−6.99 (m, 3H), 6.86 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 4.13 (s, 2H), 3.40 (s, 2H), 2.55 (t, J = 7.7 Hz, 2H), 2.49 (t, J = 7.8Hz, 2H), 1.59−1.67 (m, 2H), 1.31−1.45 (m, 6H), 1.21−1.26 (m, 4H), 0.91 (t, J = 7.0 Hz, 3H), 0.82 (t, J = 7.0 Hz, 3H); 13C NMR (101 MHz, CDOD): δ 179.48, 141.46, 141.24, 140.47, 137.46, 133.70, 128.36, 128.05, 127.86, 127.75, 125.42, 43.25, 35.54, 33.90, 33.61, 31.86, 31.65, 31.25, 30.96, 22.49, 22.40, 13.31, 13.23; LRMS (ESIネガティブ): m/z 365.0 (20%, M − Na), 321.1 (100%, M − CONa);UPLC(システムB):9分 (UPLC システムB:移動相A=0.1%のギ酸水溶液;移動相B=0.1%ギ酸のアセトニトリル溶液;固相=HSS T3;勾配=10分間にわたるA中5〜100%のB。)
【0150】
化合物XXIII:2−[3,5−ジ[(E)−ペンタ−1−エニル]フェニル]酢酸ナトリウム
標記化合物を、化合物XIVの場合と同様の手順を用い、但し水素化のステップを割愛して調製した。融点 226−30℃; H NMR (400 MHz, CDOD): δ 7.18 (d, J = 1.2 Hz, 2H), 7.11 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 6.34 (d, J = 15.9 Hz, 2H), 2.23 (dt, J = 15.9, 6.7 Hz, 2H), 3.44 (s, 2H), 2.14−2.19 (m, 4H), 1.49 (tq, J = 7.4, 7.4 Hz, 4H), 0.95 (t, J = 7.3 Hz, 6H); 13C NMR (101MHz, CDOD): δ 179.41, 138.34, 138.06, 130.30, 130.16, 125.26, 121.60, 45.24, 35.10, 22.55及び12.98; LRMS (ネガティブモード): m/z 271 (w, [M − Na]), 227.2 (100%, [M − Na− CO]);UPLC:8分 (UPLC;条件 溶媒A=0.1%のギ酸水溶液;溶媒B=0.1%ギ酸のアセトニトリル溶液;勾配:0.7mL/分における10分間にわたるA中5〜100%のB)。
【0151】
化合物XXIV:3−[3,5−ジペンチルフェニル]プロピオン酸ナトリウム
標記化合物を、3−[3,5−ジブロモフェニル]プロピオン酸から出発して、化合物XIVの場合と同様の手順を用いて調製した。融点 211−217℃; H NMR (400 MHz, CDCl): δ 6.73 (s, 1H), 6.68 (s, 2H), 2.73−2.77 (m, 2H), 2.42−2.46 (m, 2H), 2.38 (t, J = 7.8 Hz, 4H), 1.43−1.51 (m, 4H), 1.19−1.28 (m, 8H), 0.83 (t, J = 6.9 Hz, 6H); 13C NMR (101 MHz, CDCl): δ 182.55, 142.93, 141.85, 125.96, 125.77, 39.80, 36.13, 32.77, 31.99, 31.47, 22.79及び14.27; LRMS (ネガティブモード): m/z 289.4 (100%, [M − Na]);UPLC:9分 (UPLC:条件 溶媒A=0.1%のギ酸水溶液,溶媒B=0.1%ギ酸のアセトニトリル溶液;勾配:0.7mL/分における10分間にわたるA中5〜100%のB。)
【0152】
実施例2:LPSに刺激されたRAW264.7細胞に対する化合物の効果;破骨細胞前駆細胞
細菌由来の細胞壁産物であるLPSは、長い間、骨減少の発症における主要因として認知されている。LPSは骨吸収において重要な役割を果たし、骨吸収は炎症細胞のリクルート、サイトカイン(インターロイキン6(IL−6)、IL−12及び腫瘍壊死因子a(TNF−a)など)の合成、及び破骨細胞形成及び分化の活性化を伴う。
【0153】
RAW264.7細胞は破骨細胞の前駆細胞であり、NF−κB活性化受容体リガンド(RANKL)またはリポ多糖(LPS)を含むいくつかの因子によって分化し得る。破骨細胞は、高発現または、破骨細胞のマーカーとして用いることができる酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(TRACP)及びマトリクスメタロプロテアーゼ−9(MMP−9)を特徴とする。カプリン酸の存在でRAW264.7細胞をインキュベートしたところ、IL−12産生が増加し、ホスファターゼ(TRAP)陽性の細胞(TRAP発現、破骨細胞分化マーカー)が減少したことが明らかになっている(Wang et al., J. Biol. Chem. (2006), Vol. 281, No. 45, pp.34457−64)。更に、LPSは誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)のmRNAレベル及び一酸化窒素(NO)産生を強力に上方制御した一方で、カプリン酸はこれらを阻害した。また、カプリン酸は単球走化性タンパク質1(MCP−1)のmRNA発現も阻害した。
【0154】
マウスの破骨細胞前駆細胞株であるRAW264.7細胞において、選択された化合物のTRAP(破骨細胞マーカー)及びIL−12に対する効果を、破骨細胞形成の低下に関する陽性対照としてのカプリン酸と比較して行った(Park et al. (2011) PLOS One Volume 6, Issue 11, 8 pages)。カプリン酸もしくは化合物Iの存在下または非存在下で、LPS(1ug/ml)と共にインキュベートすることによってRAW264.7細胞を分化させた。第3〜5日に、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)の染色を用いて破骨細胞形成を評価した。
【0155】
図1は、TRAPの高発現(濃色の染色)によって示される、RAW264.7細胞におけるLPSの破骨細胞形成効果を表わす。カプリン酸及び化合物Iと共に行ったインキュベーションは、対照及びLPS誘導性の細胞及びTRAPを産生しない細胞を観察することができるという異なる表現型を示し、このことはこれらの細胞が破骨細胞に分化していないことを示す。
【0156】
LPSに刺激されたRAW264.7において、カプリン酸がIL−12の産生を増加させることも報告されている(Wang et al., J. Biol. Chem. (2006), Vol. 281, No. 45, pp.34457−64)。カプリン酸は既知の破骨細胞形成阻害剤でもあることから、化合物IがIL−12産生の増加を促進することができるかを判定するために実験を行った。95%の空気−5%の二酸化炭素の加湿した雰囲気中、37℃で21時間、化合物の存在または非存在で、RAW264.7細胞を100ng/mLのLPSと共に培養した。IL−12 ELISAを用い、製造者(BD Biosciences社)の推奨に従って、培養培地中のIL−12濃度を測定した。図2は、種々の濃度の化合物Iの存在での、LPSに刺激されたRAW264.7細胞におけるIL−12産生の強力な誘導を示している。
【0157】
実施例3:LPSに刺激されたRAW264.7細胞におけるIL−12産生に対する式Iの化合物の効果;破骨細胞前駆細胞
IL−12はまた、破骨細胞形成を阻害することも報告されている(Horwood and al. (2001) J. of Immunology, Volume 166, No. 8, pp. 4915−4921)。化合物1の存在でインキュベートしたLPSに刺激されたRAW264.7細胞が、IL−2を増加させ、破骨細胞形成(TRAP)を低減することが実施例1において実証されるように。可能性のある破骨細胞形成の阻害剤をスクリーニングするために、イン・ビトロでのIL−12産生アッセイを使用した。表2は、代表的な式Iの化合物のIL−12産生に対する効果を表わす。全てのこれらの化合物はIL−12産生の有意な増加を誘導した。
【0158】
【表3】
【表4】
【0159】
これらの結果は、LPSの存在下で、被験化合物がIL−12の産生を誘導することを実証している。IL−12の産生をシミュレートできるということは、式Iの化合物が、IL−12の誘導の結果として骨粗しょう症を予防及び/または治療するために有用であり得ることを意味する。このことは実施例1及び2に上記した引用文献によって支持され、これらの文献は、IL−12が破骨細胞形成に対する直接的な阻害効果を有することを教示する。
【0160】
実施例4 卵巣切除ラットモデルにおける骨粗しょう症の低減に対する化合物Iの効果
ラットの骨格量はヒトと比較して、その寿命の間に長期間安定ではあるが、ラットを卵巣切除して、性ホルモン欠失にすること及び女性において閉経後に起こる骨の減少の加速を刺激することができる。卵巣切除はラットにおいて骨減少を誘導し、閉経後の骨減少はこれと多くの類似の特徴を共有する。これらの特徴としては、骨の形成を上回る吸収を伴う骨の代謝回転速度の増加、初期の急速な骨減少の段階とその後の大幅に緩やかな段階、皮質骨よりも大きな海綿質の減少、カルシウムの腸内吸収の低下、肥満による骨減少に対する多少の防御、ならびにエストロゲン、タモキシフェン、ビスホスホネート、副甲状腺ホルモン、カルシトニン及び運動による療法と類似する骨格への奏功が挙げられる。これらの広範な類似性は、卵巣切除ラット骨減少モデルが閉経後の骨減少に関連する問題の研究に好適であることの強力な証左である。
【0161】
スプラーグ・ドーリーラット(250g)を第0日に卵巣切除(OVX)した。第14日から第68日まで、強制経口摂取によりラットを化合物I(200mg/kg)によって治療した。種々のパラメータ(体重、カルシウム減少、破骨細胞マーカー(RANKL及びTRAP mRNAの発現)、コラーゲン含有量及び組織学)の評価を第68日に行った。
【0162】
図3は卵巣切除ラットの体重増加を示す(「閉経後の肥満」と類似)。化合物Iは卵巣切除誘導性肥満を低減した。
【0163】
図4は卵巣切除ラットにおけるカルシウム減少に対する化合物Iの効果を表す。カルシウム減少は、第28日から第56日まで、卵巣切除ラットの尿において検知される。化合物Iは卵巣切除ラットにおけるカルシウム減少を有意に低減した。
【0164】
更に、血清中の酸性ホスファターゼ活性が破骨細胞形成の指標であることが知られている(Park et al. (2011) PLOS One Volume 6, Issue 11, pp. 1−8)。血清酸性ホスファターゼ活性を測定したところ、この活性は卵巣切除ラットにおいて、第28日目から第56日目まで有意に増加する(図5)。但し、化合物Iは、卵巣切除ラットの血清中の酸性ホスファターゼ活性を低下させ(図5)、減少は破骨細胞形成の低下の成功を示す。
【0165】
図6は、第68日のラットの脛骨におけるRANKL/OPGのmRNA発現の比に対する化合物Iの効果を表す。該図に示すように、RANKL/OPGのmRNA発現は、骨粗しょう症を発症するラットにおいて増加した一方、化合物Iによる治療に伴って減少し、減少は破骨細胞形成の低減に成功したことを示す。
【0166】
骨減少の結果としてコラーゲン含有量が減少する。これは卵巣切除ラットで観測された。化合物Iは卵巣切除ラットの大腿骨の骨幹端におけるコラーゲン含有量を増加させ、このことは骨減少の低減を示唆する(図7)。
【0167】
図8は、大腿骨の骨幹端の組織学的骨切片の代表的な写真を示す。化合物Iは当該大腿骨の骨幹端部における骨減少を低減した。
【0168】
実施例5 糖尿病性肥満(db/db)のマウスのモデルにおける血清アディポネクチンレベルに対する式Iの化合物の効果
アディポネクチンが骨形成及び再形成を刺激し、ならびに骨吸収を阻害することが報告されており、このことはアディポネクチンが骨量の負の調節因子であり得ることを示唆している(Lubkowska et al. (2014) Disease Markers, Volume 2014, Article ID975178, 14 pages)。また、殆どのイン・ビトロでの研究は、アディポネクチンが骨芽細胞の分化及び石灰化ならびにオステオカルシンの発現を刺激することを実証しており、オステオカルシンはグルコース代謝及び脂肪量を調節するホルモンとして作用する(Lubkowska et al. (2014))。アディポネクチンの骨芽細胞及び破骨細胞に対する、延いては骨再形成に対する影響の可能性は、おそらくは内分泌系と脂肪代謝の間の相互関係と関係している(Lubkowska et al. (2014))。
【0169】
本発明の選択された化合物が血清アディポネクチンレベルに影響を及ぼすことができるかを判定するために、II型糖尿病/肥満のモデルを用いた。簡単に説明すると、db/dbマウス(6週齢を一側性腎摘出し、化合物XIVによって113日間治療した(構造は上記表1に示す)。マウスアディポネクチン酵素が結合した免疫吸着剤アッセイキット(R&D Systems社)を用いて血清アディポネクチンレベルを測定した。
【0170】
図9は肥満db/db糖尿病マウスにおいて測定した血清アディポネクチンレベルを示す。非治療db/dbマウスでは血清アディポネクチンレベルが低下した一方、化合物XIVで治療するとアディポネクチンのレベルが偽マウスのレベルまで上昇し、この化合物が骨粗しょう症を予防または低減する可能性を示唆する。化合物XIVの変化形、特に類似の化学構造を有する化合物もまたアディポネクチンのレベルを上昇させ、骨粗しょう症を予防及び/または低減する可能性がある。化合物XIVの化学的変化形の非網羅的な一覧には上記の表1に示される化合物XV〜XXIV(及びその薬学的に許容される塩)が含まれるが、これらに限定はされない。
【0171】
見出しは、参照として及び特定の節の位置を示すために本明細書に加えてある。これらの見出しはそこに記載される概念の範囲を限定することを意図するものではなく、これらの概念は、明細書全体を通じて他の節にも適用可能である。したがって、本発明は、本明細書に示す実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示される原理及び新規な特徴と一致する最も広い範囲が付与されることを意図する。
【0172】
単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上別段の明確な指示がない限り、相当する複数形での言及を包含する。
【0173】
別段の表示がない限り、明細書及び特許請求の範囲において用いられる、成分、反応条件、濃度、特性等の量を表わす数値は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されると解釈されるべきである。少なくとも、各数値パラメータは少なくとも記載された有効桁の数に照らして、且つ通常の端数処理技法を適用することによって解釈する必要がある。したがって、それに反する表示がない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に示される数値パラメータは、得ようとする特性に応じて変化し得る近似値である。実施形態の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは近似値であるにもかかわらず、具体的な実施例で示される数値は可能な限り正確に記載される。但し、いずれの数値も、実験における変動、試験測定、統計的解析等に由来する特定の誤差を本質的に含む。
【0174】
本発明は、下記の発明を包含する。
[発明1]
骨粗しょう症の予防及び/または治療方法であって、該方法を必要とする対象に、式Iによって表わされる化合物またはその薬学的に許容される塩:
【化9】
式中、
AはCアルキル、Cアルキル、Cアルケニル、Cアルケニル、C(O)−(CH−CHまたはCH(OH)−(CH−CH、但し、nは3または4であり、
はH、FまたはOHであり、
はH、F、OH、Cアルキル、Cアルキル、Cアルケニル、Cアルケニル、C(O)−(CH−CHまたはCH(OH)−(CH−CH、但し、nは3または4であり、
はH、F、OHまたはCHPhであり、
はH、FまたはOHであり、
Qは、
1)(CHC(O)OH、但し、mは1もしくは2、
2)CH(F)−C(O)OH、
3)CF−C(O)OH、または
4)C(O)−C(O)OH
である
を投与するステップを含む、前記方法。
[発明2]
AがCアルキルまたはCアルキルである、発明1に記載の方法。
[発明3]
がH、F、OH、CアルキルもしくはCアルキルである、発明1または2のいずれか1項に記載の方法。
[発明4]
がH、OHまたはCHPhである、発明1〜3のいずれか1項に記載の方法。
[発明5]
Qが(CHC(O)OH、但し、mは1または2である、発明1〜4のいずれか1項に記載の方法。
[発明6]
AがCアルキルまたはCアルキルであり、RがH、FまたはOHであり、RがH、F、OH、CアルキルまたはCアルキルであり、RがH、OHまたはCHPhであり、RがH、FまたはOHであり、Qが(CHC(O)OH、但し、mは1または2である、発明1に記載の方法。
[発明7]
AがCアルキルであり、RがHであり、RがHまたはCアルキルであり、RがHであり、RがHであり、Qが(CHC(O)OH、但し、mは1である、発明1に記載の方法。
[発明8]
前記化合物が、以下の構造
【化10】

によって表される化合物、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される、発明1〜7のいずれか1項に記載の方法。
[発明9]
前記化合物が以下の構造
【化11】
またはその薬学的に許容される塩によって表される、発明1〜8のいずれか1項に記載の方法。
[発明10]
前記化合物が以下の構造
【化12】
またはその薬学的に許容される塩によって表される、発明1〜8のいずれか1項に記載の方法。
[発明11]
前記薬学的に許容される塩が、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、アンモニウム、マンガン、亜鉛、鉄、または銅からなる群より選択される金属対イオンを含む塩基付加塩である、発明1〜10のいずれか1項に記載の方法。
[発明12]
前記薬学的に許容される塩がナトリウムである、発明1〜11のいずれか1項に記載の方法。
[発明13]
前記骨粗しょう症が、閉経後骨粗しょう症(原発性1型)、原発性2型骨粗しょう症、続発性骨粗しょう症、異常に高い破骨細胞形成、骨軟化症様骨粗しょう症、骨減少症、骨形成不全症、大理石骨病、骨壊死、骨のパジェット病、低リン酸血症及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、発明1〜12のいずれか1項に記載の方法。
[発明14]
骨粗しょう症が閉経後骨粗しょう症(原発性1型)、原発性2型骨粗しょう症または続発性骨粗しょう症である、発明1〜13のいずれか1項に記載の方法。
[発明15]
骨粗しょう症が閉経後骨粗しょう症(原発性1型)である、発明1〜13のいずれか1項に記載の方法。
[発明16]
・前記化合物の投与が、1または複数の以下の生物学的活性前記対象:
・破骨細胞形成の阻害、
・破骨細胞形成の低減、
・骨におけるインターロイキン−12(IL−12)産生の刺激、
・骨における酸性ホスファターゼ活性の低減、
・骨におけるNF−κB活性化受容体リガンド/オステオプロテジェリン比(RANKL/OPG比)の低減、
・骨におけるコラーゲン含有量の増加、及び
・アディポネクチンの血清レベルの調節
をもたらす、発明1〜15のいずれか1項に記載の方法。
[発明17]
骨減少の予防及び/または低減方法であって、該方法を必要とする対象に、発明1〜12のいずれか1項に定義される、式Iによって表わされる化合物またはその薬学的に許容される塩を投与するステップを含む、前記方法。
[発明18]
前記化合物がカルシウムの減少を低減する、発明17に記載の方法。
[発明19]
前記対象が骨粗しょう症に罹患しているかもしくは骨粗しょう症に感受性である、発明17または18に記載の方法。
[発明20]
前記対象が閉経後の女性である、発明1〜19のいずれか1項に記載の方法。
[発明21]
破骨細胞前駆細胞を、発明1〜12のいずれか1項に定義される、式Iによって表わされる化合物またはその薬学的に許容される塩に接触させることを含み、前記化合物が前記前駆細胞の破骨細胞への分化を阻害する、破骨細胞形成の阻害方法。
[発明22]
刺激された破骨細胞前駆細胞によるインターロイキン−12(IL−12)産生の刺激方法であって、前記刺激された破骨細胞前駆細胞を、発明1〜12のいずれか1項に定義される、式Iによって表わされる化合物またはその薬学的に許容される塩に接触させることを含み、前記化合物の存在で、IL−12産生の増加が測定可能である、前記方法。
[発明23]
骨細胞における酸性ホスファターゼ活性の低減方法であって、前記骨細胞を、発明1〜12のいずれか1項に定義される、式Iによって表わされる化合物またはその薬学的に許容される塩に接触させることを含み、前記化合物の存在で、ホスファターゼ活性の低減が測定可能である、前記方法。
[発明24]
骨細胞におけるNF−κB活性化受容体リガンド/オステオプロテジェリン比(RANKL/OPG比)の発現及び/または活性の低減方法であって、前記骨細胞を、発明1〜12のいずれか1項に定義される、式Iによって表わされる化合物またはその薬学的に許容される塩に接触させることを含む、前記方法。
[発明25]
骨中のコラーゲン含有量の増加方法であって、前記骨を、発明1〜12のいずれか1項に定義される、式Iによって表わされる化合物またはその薬学的に許容される塩に接触させることを含む、前記方法。
[発明26]
骨形成の刺激方法、ならびに/または骨再形成の刺激方法、ならびに/または骨芽細胞の分化及び石灰化の刺激方法、ならびに/または骨吸収の阻害方法であって、前記骨における骨芽細胞を、発明1〜12のいずれか1項に定義される、式Iによって表わされる化合物またはその薬学的に許容される塩に接触させることを含む、前記方法。
[発明27]
対象におけるアディポネクチンの血清レベルの調節方法であって、該方法を必要とする対象に、発明1〜12のいずれか1項に定義される、式Iによって表わされる化合物またはその薬学的に許容される塩を投与するステップを含む、前記方法。
[発明28]
前記化合物が、以下の構造
【化13】

によって表される化合物、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される、発明27に記載の方法。
[発明29]
前記化合物が以下の構造
【化14】
またはその薬学的に許容される塩によって表される、発明27または28に記載の方法。
[発明30]
前記対象が肥満及び/または糖尿病である、発明27〜29のいずれか1項に記載の方法。
[発明31]
ビスホスホネート、オダナカチブ、アレンドロネート、リセドロネート、エチドロネート、ゾレドロネート、パミドロネート、テリパラチド、タモキシフェン、ラロキシフェン、及びデノスマブからなる群より選択される薬物を併用で投与するステップを更に含む、発明1〜30のいずれか1項に記載の方法。
[発明32]
発明1〜12のいずれか1項に定義される、式Iによって表わされる化合物またはその薬学的に許容される塩の、骨粗しょう症の予防及び/または治療における使用。
[発明33]
発明1〜12のいずれか1項に定義される、式Iによって表わされる化合物またはその薬学的に許容される塩の、骨粗しょう症の予防及び/または治療のための薬剤の製造への使用。
[発明34]
骨粗しょう症の予防及び/または治療に用いるための、発明1〜12のいずれか1項に定義される、式Iによって表わされる化合物またはその薬学的に許容される塩。
また、本明細書に記載の実施例及び実施形態は説明することのみを目的とし、それらに照らした多様な改変または変更が当業者に示唆されることとなり、これらは本発明及び添付の特許請求の範囲の範囲内に包含されるべきものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9