(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6700650
(24)【登録日】2020年5月8日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】建築板
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20200518BHJP
【FI】
E04F13/08 Y
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-15193(P2014-15193)
(22)【出願日】2014年1月30日
(65)【公開番号】特開2015-140607(P2015-140607A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2017年1月18日
【審判番号】不服2019-4708(P2019-4708/J1)
【審判請求日】2019年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村井 陽平
【合議体】
【審判長】
小林 俊久
【審判官】
秋田 将行
【審判官】
有家 秀郎
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭63−34837(JP,U)
【文献】
特開2009−133151(JP,A)
【文献】
特開2003−314022(JP,A)
【文献】
特開2011−190659(JP,A)
【文献】
特開平09−088293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の凸条を平行に設けて形成された建築板であって、
前記建築板を隣り合わせて設置する場合に隣り合う前記建築板の接合箇所に形成される接合目地と同じ形状の第1疑似目地が前記接合目地と平行に複数設けられ、
前記接合目地は、断面が逆台形状の溝として形成され、
前記接合目地と前記第1疑似目地との間隔と、前記第1疑似目地同士の間隔とが等しく、
前記第1疑似目地の幅よりも狭い幅を有し、かつ前記第1疑似目地の深さ以下の深さを有する第2疑似目地が前記接合目地と平行に複数設けられ、
前記第1疑似目地及び前記第2疑似目地の断面形状が相似であり、
前記第2疑似目地が、前記接合目地と前記第1疑似目地との間、及び前記第1疑似目地同士の間に設けられ、
前記第2疑似目地と前記接合目地との間隔、前記第2疑似目地と前記第1疑似目地との間隔、及び前記第2疑似目地同士の間隔が等しいことを特徴とする
建築板。
【請求項2】
前記第1疑似目地が、隣り合う凸条同士の間に設けられ、
前記第2疑似目地が、前記第1疑似目地が設けられた隣り合う凸条同士とは異なる隣り合う凸条同士の間に設けられていることを特徴とする
請求項1に記載の建築板。
【請求項3】
前記建築板は、上下方向の長さが250〜1000mm、厚さが5〜50mmであり、表面に複数の凸条が左右方向に平行に設けられて形成され、
前記凸条は、底辺の長さが2〜24mm、高さが1〜8mmであり、
前記接合目地及び前記第1疑似目地の開口幅が1.5〜18mm、深さが1〜8mmであり、
前記第2疑似目地の深さが0.5〜7.5mmである、
請求項1又は2に記載の建築板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁材等の建築板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築板として、表面にタイルやレンガ状の疑似目地が設けられた外装材が知られている(例えば、特許文献1参照)。そしてこの外装材においては、縦目地の仕上り幅を疑似目地と略同じ幅としたことにより、外観上、横方向に隣接する両外装材間の目地の外装材表面の疑似目地との差異をなくして、複数枚の外装材を使用した外装面の外観の向上を図ることができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−152966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の疑似目地は、隣接する両外装材間の目地を目立ちにくくする点では有効であるが、他方において1枚の外装材が複数の単位からなることを強調しすぎる。特許文献1に記載の外装材のように、表面にタイルやレンガ状の模様が形成されている場合には、1枚の外装材が複数枚のタイルやレンガからなることが強調されてもよいが、このような模様以外の模様が外装材の表面に形成されている場合には、複数の単位からなることを強調したくない場合もある。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、建築板同士の接合箇所を目立ちにくくすることができ、さらに1枚の建築板が複数の単位からなることを認識しにくくすることができる建築板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る建築板は、複数の凸条を平行に設けて形成された建築板であって、
前記建築板を隣り合わせて設置する場合に隣り合う前記建築板の接合箇所に形成される接合目地と同じ形状の第1疑似目地が前記接合目地と平行に複数設けられ、
前記接合目地は、断面が逆台形状の溝として形成され、
前記接合目地と前記第1疑似目地との間隔と、前記第1疑似目地同士の間隔とが等しく、
前記第1疑似目地の幅よりも狭い幅を有し、かつ前記第1疑似目地の深さ以下の深さを有する第2疑似目地が前記接合目地と平行に複数設けられ、
前記第1疑似目地及び前記第2疑似目地の断面形状が相似であり、
前記第2疑似目地が、前記接合目地と前記第1疑似目地との間、及び前記第1疑似目地同士の間に設けられ
、
前記第2疑似目地と前記接合目地との間隔、前記第2疑似目地と前記第1疑似目地との間隔、及び前記第2疑似目地同士の間隔が等しいことを特徴とする。
【0007】
本発明の第2の態様に係る建築板は、第1の態様において、
前記第1疑似目地が、隣り合う凸条同士の間に設けられ、
前記第2疑似目地が、前記第1疑似目地が設けられた隣り合う凸条同士とは異なる隣り合う凸条同士の間に設けられていることを特徴とする。
本発明の第3の態様に係る建築板は、第1又は第2の態様において、
前記建築板は、上下方向の長さが250〜1000mm、厚さが5〜50mmであり、表面に複数の凸条が左右方向に平行に設けられて形成され、
前記凸条は、底辺の長さが2〜24mm、高さが1〜8mmであり、
前記接合目地及び前記第1疑似目地の開口幅が1.5〜18mm、深さが1〜8mmであり、
前記第2疑似目地の深さが0.5〜7.5mmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1疑似目地と第2疑似目地とが相俟って、建築板同士の接合箇所を目立ちにくくすることができ、さらに1枚の建築板が複数の単位からなることを認識しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る建築板の一例を示す正面図である。
【
図2】(a)は凸条の一例を示す断面図、(b)は凸条の他の一例を示す断面図、(c)は凸条のさらに他の一例を示す断面図である。
【
図3】本発明に係る建築板の一例の一部を拡大して示す断面図である。
【
図4】(a)は接合目地の一例を示す断面図、(b)は第1疑似目地の一例を示す断面図、(c)は第2疑似目地の一例を示す断面図である。
【
図5】(a)は第1疑似目地及び第2疑似目地を設けた建築板の一例を示す概略正面図、(b)は(a)に示す建築板を上下に2枚隣り合わせて設置した場合の概略正面図である。
【
図6】(a)は第1疑似目地を設け、かつ第2疑似目地を設けない建築板の一例を示す概略正面図、(b)は(a)に示す建築板を上下に2枚隣り合わせて設置した場合の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
本発明に係る建築板1は、
図1に示すように矩形状に形成され、表面に複数の凸条2を左右方向に平行に設けて形成されている。本発明の効果を損なわなければ、複数の凸条2,2同士は厳密に平行である必要はなく、略平行でもよい。特に断らない限り、上下左右は建築板1を外壁材(サイディング)として設置した状態での方向を意味する。凸条2は建築板1の屋外側に突出して細長く形成されている。凸条2が上下に隣り合い、この凸条2,2同士の間に凹条4が形成されて、建築板1の表面に横縞の凹凸模様7が形成されることになる。建築板1の表面に設けられる凸条2の本数は特に限定されないので、その間に形成される凹条4の本数も特に限定されない。なお、建築板1の上下方向の長さは250〜1000mm程度、左右方向の長さは300〜4200mm程度、厚さは5〜50mm程度である。
【0012】
凸条2は、例えば、
図2(a)に示すように断面が三角形状に形成されている。この場合、断面の三角形は正三角形でも二等辺三角形でもその他の三角形でもよいが、底辺の長さは2〜16mm程度、高さは1〜8mm程度である。
【0013】
また凸条2は、
図2(b)(c)に示すように断面が台形状に形成されていてもよい。この場合、断面の台形は等脚台形でもその他の台形でもよいが、上底の長さは0.5〜10mm程度、下底の長さは3〜24mm程度、高さは1〜8mm程度である。
【0014】
建築板1の表面には、断面形状が同じ1種類の凸条2のみを複数設けてもよいし、
図3に示すように断面形状が異なる複数種類の凸条2を設けてもよい。複数種類の凸条2を設ける場合、これらの凸条2の配列は規則的でもよいし、不規則でもよい。凹条4は、隣り合う凸条2の斜面によって、断面が逆三角形状や逆台形状などに形成されている。
【0015】
建築板1を上下に隣り合わせて各建築板1の凸条2,2同士が平行となるように設置する場合に上下に隣り合う建築板1,1の接合箇所に接合目地3が形成される。接合目地3は、
図4(a)に示すように、断面が逆台形状の溝として形成されてもよいし、図示省略しているが逆三角形状の溝として形成されてもよい。
【0016】
そして、本発明においては、建築板1の表面に第1疑似目地41及び第2疑似目地42が設けられている。第1疑似目地41及び第2疑似目地42は凹条4の一部又は全部を構成している。
【0017】
第1疑似目地41は、主として建築板1,1同士の接合箇所である接合目地3を目立ちにくくするためのものであり、隣り合う凸条2,2同士の間において接合目地3と平行に設けられている。本発明の効果を損なわなければ、第1疑似目地41と接合目地3とは厳密に平行である必要はなく、略平行でもよい。第1疑似目地41の本数は特に限定されないが、接合目地3と第1疑似目地41との間隔、第1疑似目地41,41同士の間隔は等しいことが好ましい。また第1疑似目地41は、接合目地3と同じ形状である。例えば、
図4(a)に示すように接合目地3が、断面が逆台形状の溝として形成されている場合、第1疑似目地41も、
図4(b)に示すように断面が逆台形状の溝として形成されている。第1疑似目地41の開口幅W1及び深さD1は、接合目地3の開口幅W0及び深さD0と実質的に等しく、接合目地3が目立たなければ厳密に等しくなくてもよい。なお、接合目地3及び第1疑似目地41の開口幅W0,W1は、1.5〜18mm程度、深さD0,D1は1〜8mm程度である。
【0018】
第2疑似目地42も、第1疑似目地41と同様に接合目地3と平行に設けられている。本発明の効果を損なわなければ、第2疑似目地42と接合目地3とは厳密に平行である必要はなく、略平行でもよい。第2疑似目地42は、第1疑似目地41が設けられた隣り合う凸条2,2同士とは異なる凸条2,2同士の間に設けられている。第2疑似目地42の本数も特に限定されない。第2疑似目地42は、接合目地3と第1疑似目地41との間や、第1疑似目地41,41同士の間に設けられる。第2疑似目地42と接合目地3との間隔、第2疑似目地42と第1疑似目地41との間隔、第2疑似目地42,42同士の間隔は等しくても等しくなくてもよい。
【0019】
また本発明の第1の態様において第2疑似目地42は、第1疑似目地41の幅よりも狭い幅を有し、かつ第1疑似目地41の深さ以下の深さを有するが、断面形状は相似であることが好ましい。例えば、
図4(b)に示すように第1疑似目地41が、断面が逆台形状の溝として形成されている場合、好ましくは第2疑似目地42も
図4(c)に示すように断面が逆台形状の溝として形成されている。そして第2疑似目地42は、第1疑似目地41よりも幅が狭いが、断面が逆台形状の溝のように深さによって幅が異なる場合には、幅とは、対向する開口縁間の距離である開口幅を意味する。この場合、第2疑似目地42の開口幅W2は、第1疑似目地41の開口幅W1よりも狭く、好ましくは第1疑似目地41の開口幅W1の80%以下である。また第2疑似目地42の深さD2は、第1疑似目地41の深さD1と同じか又はこれよりも浅い深さであり、好ましくは0.5〜7.5mmである。特に深さD2の異なる複数種類の第2疑似目地42を混在させて建築板1に設けることが好ましい。
【0020】
また本発明の第2の態様において第2疑似目地42は、幅及び深さの少なくともいずれか一方の寸法が第1疑似目地41よりも小さい。すなわち、次の3つの場合がある。
【0021】
第一に、第2疑似目地42が、第1疑似目地41の幅よりも狭い幅を有し、かつ第1疑似目地41の深さよりも浅い深さを有する場合である。
【0022】
第二に、第2疑似目地42が、第1疑似目地41の深さよりも浅い深さを有する場合である。この場合、第2疑似目地42の幅は、第1疑似目地41の幅と同じか又はこれよりも広い幅であるが、好ましくは第1疑似目地41の幅と同じである。
【0023】
第三に、第2疑似目地42は、第1疑似目地41の幅よりも狭い幅を有する場合である。この場合、第2疑似目地42の深さは、第1疑似目地41の深さと同じか又はこれよりも深い深さであるが、好ましくは第1疑似目地41の深さと同じである。
【0024】
次に、本発明において第1疑似目地41及び第2疑似目地42がもたらす効果について具体例を挙げて説明する。
【0025】
図6(a)は1枚の建築板に第1疑似目地41を等間隔に2本平行に設け、第2疑似目地42を設けない一例を示すものである。このような建築板1において、第2疑似目地42を除く凹条4は設けられていてもよいが、その図示は省略している。そして、
図6(a)に示す建築板1を上下に2枚隣り合わせ、上の建築板1の下端と下の建築板1の上端とを突き合わせて設置すると、
図6(b)に示すようになるが、第1疑似目地41は接合目地3と同じ形状であるので、両者の区別がつきにくくなり、建築板1,1同士の接合箇所を目立ちにくくすることができる。
【0026】
しかしその反面、接合目地3への視線が第1疑似目地41にも分散されることで、接合目地3と第1疑似目地41とで囲まれた領域A1,A3や、上下の第1疑似目地41で囲まれた領域A2がそれぞれ1つの単位として、全体が複数の単位からなることが際立ってしまう。例えば、実際には1枚の建築板1であるにもかかわらず、この建築板1があたかも領域A1,A2,A3をそれぞれ有する3枚の建築板からなっているような錯覚を、建築板1を見る者に与える。
【0027】
そこで、本発明においては、第1疑似目地41のほか、所定の幅及び深さを有する第2疑似目地42を建築板1に設けるようにしている。すなわち、
図6(a)に示す建築板1にさらに第2疑似目地42を設けた建築板1が、
図5(a)に示す建築板1である。この建築板1には、他の建築板1と隣り合って接合目地3が形成される接合箇所と第1疑似目地41との間、第1疑似目地41,41同士の間にそれぞれ第2疑似目地42を2本、等間隔に平行に設けられている。そして、
図5(a)に示す建築板1を上下に2枚隣り合わせて設置すると、
図5(b)に示すようになる。このように設置された建築板1の表面に光が当たった場合、第2疑似目地42は、第1疑似目地41とは幅及び深さの少なくともいずれか一方の寸法が異なるので、この両者に生じる陰影は異なるものとなる。よって、第2疑似目地42を設けると、接合目地3や第1疑似目地41に対する視線を弱めることができる。これにより、全体が複数の単位、例えば複数の建築板などからなっていると錯覚することを抑制することができる。
【0028】
上記のように、本発明においては、第1疑似目地41と第2疑似目地42とが相俟って、建築板1,1同士の接合箇所である接合目地3を目立ちにくくすることができ、さらに1枚の建築板1が複数の単位からなることを認識しにくくすることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 建築板
2 凸条
3 接合目地
41 第1疑似目地
42 第2疑似目地