(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された測定装置においては、ロールの側面形状の検知情報を読み取る触針と触針をロール長手方向に移動するガイド手段とが、ロールの長手方向において一致しない状態で使用されている。このため、ロールの長手方向の特定位置、即ち長手方向のいずれか一端部については、1回の操作では測定できないおそれがある。このため、特許文献1の装置では、1回の操作で圧延ロールの全長にわたってロールプロフィールを測定することが困難である。
【0006】
また、特許文献1に開示された測定装置においては、ロール直径寸法を正確に測るように2つの触針をロールの表面に対向設置することが困難であり、ロールプロフィールを正確に測定することができないおそれがある。
【0007】
さらに、特許文献1に開示された測定装置においては、触針のガイド手段としてのローラーがロール外表面を転動することに起因して、ロール直径の変化に応じて鉛直方向に移動するおそれがあるので、常にロール直径部を正確に計測することが困難である。
【0008】
さらにまた、特許文献1に開示された測定装置においては、連結アームを移動させるガイド用ローラーがロールの表面をその長手方向に移動するに際し、その周方向にも幾分移動するおそれがある。このため、ロールの表面をロール軸芯とは平行にトレースすることが困難である。よって、特に、特許文献1に開示された測定装置をロール研削後のプロフィール測定に用いた場合には、ロールの長手方向距離とロール表面形状の変化とを正確に一致させることができないことがあり、ひいては圧延ロールの品質が十分に担保されないおそれがある。
【0009】
加えて、特許文献1に開示された測定装置においては、触針のガイド手段としてローラーが、ロール18の表面上で、あらゆる方向にスリップするおそれがあり、このスリップによっても圧延ロールのプロフィールを正確に測定できないおそれがある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、圧延ロールの全長にわたってロールプロフィールを測定することが可能であり、かつ、ロールプロフィールが精度高く測定できる、ロールプロフィール導出装置及び導出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、特許文献1に開示された側面形状測定方法及びその装置を用いた圧延ロールのプロフィール測定技術とは異なり、圧延ロール全長にわたって精度高く圧延ロールのプロフィールを測定、導出可能な、装置及び方法について、鋭意検討した。
【0012】
その結果、圧延ロールのプロフィールを測定するための治具に関し、
(I)圧延ロールの長手方向の全領域において接触可能とし、かつ、
(II)圧延ロールに接触している際に、その先端を、仮想軸芯方向断面視で、圧延ロールの軸芯に向ければ、
圧延ロール全長にわたって精度高く当該プロフィールを測定することができる、との知見を得た。以上の知見に基づき、本発明者らは発明を完成した。その要旨は以下のとおりである。
【0013】
[1] 長手方向両端部にロール押圧部材を有し、各ロール押圧部材同士を結んだ線分がロールの仮想軸芯となる、ロール設置台と、上記ロール設置台の長手方向と平行な方向に移動可能であり、かつ、当該移動量を検出可能な往復台と、上記往復台に配置され、上記仮想軸芯にレーザーを照射可能なレーザー照射ユニットと、上記往復台に配置され、仮想軸芯方向断面視で先端が上記仮想軸芯に指向可能な変位計を有する、プロフィール導出ユニットであって、ロール半径の変化量を測定し、上記往復台の移動量と上記ロール半径の変化量とを相関させてロールプロフィール形状を導く機能を備える、プロフィール導出ユニットと、を備えることを特徴とするロールプロフィール導出装置。
【0014】
[2]ロール設置台の長手方向両端部にロール押圧部材を配置して、上記ロール押圧部材同士を結ぶ線分をロールの仮想軸芯とする、仮想軸線設定工程と、上記仮想軸芯にレーザーを照射する、レーザー照射工程と、上記ロール設置台に被測定ロールを設置する、ロール設置工程と、被測定ロール表面の、レーザーが投影された位置に、変位計を接触させるとともに、仮想軸芯方向断面視で上記変位計の先端を上記仮想軸芯に向ける、変位計の配向工程と、上記変位計を上記ロール設置台の長手方向に移動させて上記
変位計のロール長手方向移動量とロール半径の変化量とを測定し、これらの相関関係に基づいてロールプロフィール形状を導く、ロールプロフィール導出工程と、を含むことを特徴とするロールプロフィール導出方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るロールプロフィール導出装置(及び方法)では、圧延ロールのプロフィールを測定するための治具に関し、(I)圧延ロールの長手方向の全領域において接触可能とし、かつ、(II)圧延ロールに接触している際に、その先端を、仮想軸芯方向断面視で、圧延ロールの軸芯に向けている。その結果、本発明に係るロールプロフィール導出装置(及び方法)によれば、圧延ロール全長にわたって精度高く当該プロフィールを測定することができ、ひいては、圧延ロールの品質を高いレベルで保証することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、単に「実施形態」と称する場合がある)を詳細に説明する。これらの実施形態は、本発明を限定するものではない。また、上記実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。さらに、上記実施形態に含まれる各種形態は、当業者が自明の範囲内で任意に組み合わせることができる。
【0018】
<本発明者らの知見の詳細>
従来の、特許文献1に開示されたロール側面形状測定方法(及び装置)を用いた、圧延ロールのプロフィール測定では、
(A)圧延ロールの長手方向端部が実施的に測定できず、
(B)ロール軸芯方向断面視で、ロールの長手方向の各位置におけるプロフィール測定に際して、ロール表面をロール軸芯とは平行にトレースすることができず、しかも
(C)ロールと接触する接触部材が、ロールの表面上であらゆる方向においてスリップするおそれがある、
という懸念事項があった。
【0019】
そこで、本発明者らは、まず、上記懸念事項(A)、(C)に対して、圧延ロールの長手方向の全領域を精度高く測定するため、また、測定治具が圧延ロール上でスリップしないようにするために、変位計(圧延ロールに対する接触子)のトレース手段として往復台を用い、当該変位計を圧延ロール表面に接触させた状態で、圧延ロールの表面上を移動させて、圧延ロールのプロフィールの、ロール半径方向変位量を測定することを考えた。
【0020】
なお、ここで用いる変位計とは、特定の基準位置(変位計内部の特定位置であって、先端位置以外の位置)からロール軸芯に向かう方向における、当該基準位置からロール表面までの距離を計測することのできる計測機器である。この変位計は、上記基準位置に対して(例えば、弾性体により)その長手方向に伸縮自在な構造を有するので、ロール表面にその先端を接触させた状態で、当該先端をロールの長手方向に移動させた場合に、当該先端がロールの半径方向に変位した量を検出し、ロールの長手方向プロフィールを導出する機器である。この変位計を用いれば、圧延ロールの長手方向の全領域にわたって、ロール半径の寸法変化を知ることができる。
【0021】
次に、本発明者らは、上記懸念事項(B)に対して、ロール表面のロールの長手方向の各位置を正確にトレースすべく、圧延ロール表面上の線分であって、圧延ロールの長手方向に平行な線分に沿って、上記変位計を移動させて、圧延ロールのプロフィールを測定することを考えた。
【0022】
具体的には、本発明者らは、ロール軸芯となる線分位置を仮に設定し、この線分位置にレーザーを照射した上で、圧延ロールを所定位置に設置して上記レーザーを圧延ロール上に投影させ、圧延ロール上に現れた線分に沿って、上記変位計を移動させて、圧延ロールのプロフィールを測定することを考えた。
【0023】
また、本発明者らは、懸念事項(B)に対して、変位計の先端を、ロール軸芯上の点であって、当該先端からのロール軸芯までの最短距離にある点に向けた状態で、圧延ロールのプロフィールを測定すれば、特定の基準位置(変位計内部の特定位置)からロール表面までの寸法の、ロール長手方向における変化量(即ちロール半径の変化量)が高精度に測定できる、と考えた。
【0024】
図1は圧延ロール10、30の表面10a、30aに変位計20、40を接触させた状態を示すロール軸芯方向断面図であり、(a)は変位計20の先端20aを、仮想軸芯方向断面視で仮想軸芯10bに向けた場合を示し、(b)は変位計40の先端40aを、同視で仮想軸芯30bではない点30cに向けた場合を示す。即ち、
図1(a)では変位計20の先端20aの向く方向X1がロールの半径方向Y1と一致している一方、
図1(b)では変位計40の先端40aの向く方向X2がロールの半径方向Y2と一致していない。
【0025】
即ち、
図1(a)に示す例では、圧延ロール10のプロフィールは、特定の基準位置(図示しない変位計内部の特定位置)からロール軸芯10bに向かう方向における、当該基準位置からロール表面10aまでの距離を、ロール長手方向にトレースすることで、ロール長手方向におけるロール半径の変化量を正確に導出することができる。これに対し、
図1(b)に示す例では、圧延ロール30のプロフィールは、特定の基準位置(図示しない変位計内部の特定位置)からロール軸芯30bではない点30cに向かう方向における、当該基準位置からロール表面30aまでの距離を、ロール長手方向にトレースすることで、ロール長手方向におけるロール半径ではない寸法の変化量を導出することになる。
【0026】
本発明者らは、上述のとおり、
図1(a)に示す例を採用することで、圧延ロールの半径の、その長手方向変化量に基づくプロフィールを、精度高く導出することとした。
【0027】
本発明に係る圧延ロールのプロフィール導出装置及び方法は、以上の知見に基づいて得られたものである。
【0028】
<圧延ロールのプロフィール導出装置及び方法>
(基本形態)
図2は、本実施形態の圧延ロールプロフィール導出装置の、圧延ロールが設置されていない状態を示す斜視図である。これに対し、
図3は、本実施形態の圧延ロールプロフィール導出装置の、圧延ロールが設置されている状態を示す斜視図である。
図2に示すように、本実施形態の圧延ロールプロフィール導出装置50は、ロール設置台52と、ロール設置台52と平行に配置された往復台移動ガイド54、54と、往復台移動ガイド54、54上をロール設置台52の長手方向に移動可能な往復台56と、往復台56上に設置されたレーザー照射ユニット58と、往復台56上に設置された取り付け台60と、取り付け台60の側面に取り付けられたプロフィール導出ユニット62とを備える。
【0029】
ロール設置台52は、被測定用の圧延ロールを設置するための台であり、その長手方向両端部にはロール押圧部材52a、52bが形成されており、ロール押圧部材52a、52b間に圧延ロールを挟み込んで、ロールを固定する。例えば、圧延ロールをロール押圧部材52a、52b間に挟み込む態様としては、これら52、52bの少なくとも一方を、圧延ロールの長手方向に移動可能とすることが挙げられる。
【0030】
往復台移動ガイド54、54は、往復台56をロール設置台52の長手方向と平行な方向に移動可能とするための部材である。
【0031】
往復台56は、レーザー照射ユニット58及びプロフィール導出ユニット60を載置して、これらをロール設置台52の長手方向と平行な方向に移動可能可とする際に、支持部材としての役割を果たす部材である。また、往復台56は、その移動量、ひいてはレーザー照射ユニット58の移動量及び/又はプロフィール導出ユニット60の移動量を検出可能である。
【0032】
レーザー照射ユニット58は、レーザー発振器58aを含み、ロール設置台52のロール設置箇所に向かってレーザーを照射するための部材である。
【0033】
取り付け台60は、その側面にプロフィール導出ユニット62やその他の部材(例えば、後述する砥石ユニット)を取り付けるため部材である。
【0034】
プロフィール導出ユニット62は、ロール長手方向におけるロール半径の変化量を測定することができるユニットであって、変位計62aと、変位計取り付け用治具62bとを含み、変位計62aによって圧延ロールのプロフィールを導出するための部材である。変位計62aは、仮想軸芯方向断面視で先端が仮想軸芯に指向可能な構造となっている。変位計62aは、特定の基準位置(変位計内部の特定位置であって、先端位置以外の位置)から仮想軸芯Zに向かう方向における、当該基準位置からロール表面までの距離を計測する計測機器であり、基準位置に対して(例えば、ばねにより)その長手方向に伸縮自在な構造を有する。プロフィール導出に際しては、往復台56の移動量とロール半径の変化量とを相関させて、ロールプロフィール形状を導く。このように、上記基準位置からロール表面までの距離のロール長手方向変化量を測定することで、ロール半径の変化量を算出することができる。
【0035】
このような装置構成の下、
図2に示すように、ロール設置台52の長手方向両端部に形成されたロール押圧部材52a、52b同士を結ぶ線分をロールの仮想軸芯Zとして確認する。
【0036】
次に、レーザー照射ユニット58のレーザー発振器58aから、仮想軸芯Zに対してレーザーを照射する。この際、
図2に示すように、レーザーは仮想軸芯Zを含む面上に存在することとなる。
【0037】
続いて、
図3に示すように、ロール設置台52に被測定ロールRを設置する。この状態では、レーザーがロールRの側面上では軸芯部分Zaを通る直径L1として投影されるとともに、ロールRの表面上では(ロールRの長手方向において)軸芯から等角度での位置を正確にトレースした線分L2として投影され、これらの線分L1、L2が連通した状態が目視される。
【0038】
さらに、被測定ロールRの表面の、レーザーが投影された位置(線分L2上の任意の位置)に、変位計62aを接触させるとともに、仮想軸芯方向断面視(
図1(a)で示した方向視)で変位計62aの先端を仮想軸芯Zに向ける。
【0039】
最後に、このような変位計62aのロールRに対する接触状態を保持したまま、往復台56を往復台移動ガイド54、54上で往復運動させる。そして、変位計62aをロール設置台52の長手方向に移動させると、変位計62aが内蔵されているばねによりロール半径方向に伸縮し、基準位置からロール表面までの距離の変化量を測定することができる。そして、この変化量と変位計62aのロール長手方向移動量との相関関係に基づいてロールプロフィール形状を導く。
【0040】
以上のような構成の装置及び方法によれば、圧延ロールRのプロフィールを測定するための治具(
図2、3に示す例では変位計62a)に関し、(I)圧延ロールRの長手方向の全領域において接触可能とすることができ、しかも、(II)圧延ロールRに接触している際に、その先端を、仮想軸芯方向断面視で、圧延ロールRの仮想軸芯Zに向けることができる。その結果、本実施形態のロールプロフィール導出装置(及び方法)によれば、圧延ロールRの全長にわたって精度高く当該プロフィールを測定することができ、ひいては、圧延ロールRの品質を高いレベルで保証することができる。
【0041】
(その他の好ましい形態)
上述した圧延ロールプロフィール導出装置においては、レーザー照射ユニットを複数台設けることが好ましい。例えば、
図2に示す例では、往復台56上にレーザー照射ユニットが1台設置されているが、往復台56の長手方向の異なる2つの位置にそれぞれ、計2台のレーザー照射ユニットを設けることができる。このような構成によれば、圧延ロールの長手方向の両端部付近の表面のいずれにおいても
図3に示す線分L2を明確に投影させることができ、ロール表面における変位計の移動箇所を確実に目視することができる。
【0042】
また、上述した圧延ロールプロフィール導出装置においては、
図2に示すプロフィール導出ユニット62を取り付け台60に対して着脱可能とすることが好ましい。例えば、取り付け台60の所定箇所とプロフィール導出ユニットの所定箇所に、マグネットを取り付けることで、2つの部材60、62の着脱態様を容易に実現することができる。このような構成によれば、例えば、プロフィール導出ユニットを測定しない際にプロフィール導出ユニット62を取り付け台60から取り外すとともに、図示しない砥石ユニットを取り付け台60に取り付け、圧延ロールの研磨や研削を行うことができ、圧延ロールの研磨や研削とプロフィール測定とを交互に行うことができる。
【0043】
さらに、上述した圧延ロールプロフィール導出装置においては、
図2に示す取り付け台60のプロフィール導出ユニット62が取り付けられた側面とは反対側の側面に、図示しない砥石ユニットを取り付けることが好ましい。例えば、取り付け台60の各側面に対して、プロフィール導出ユニットと砥石ユニットとを固定しても良いし、上述したようにマグネットによって着脱可能としてもよい。このような構成によれば、圧延ロールのプロフィール測定、研磨や研削、再度のプロフィール測定を、迅速かつ的確に行うことができ、ひいては、圧延ロールの精密なプロフィール形成を効率的に行うことができる。
【実施例】
【0044】
長さ1727.2mmの圧延ロールのプロフィール測定を行った。この圧延ロールの理想プロフィール曲線(加工プロフィール曲線)は
図4の点線で示す曲線である(理想例)。なお、
図4の横軸(X軸)、縦軸(Y軸)において、理想例の示す関数は縦軸(Y軸)方向下に凸の正弦曲線であり、当該関数は具体的にはY=−0.125Sin(πX/1727.2)+7.020で示される。
【0045】
まず、本発明例として、
図2に示す装置を用い、
図1(a)に示すように、変位計20の先端20aを仮想軸芯方向断面視で仮想軸芯10bに向けたプロフィール測定を行った。その結果を
図4に併記する。
【0046】
これに対し、比較例として、
図2に示す装置を用い、
図1(b)に示すように、変位計40の先端40aを仮想軸芯方向断面視で仮想軸芯30bに向けないプロフィール測定を行った。なお、この際、
図1(b)に示す矢印X2と矢印Y2とのなす角を17.2度とした。その結果を
図4に併記する。
【0047】
図4から明らかなように、(I)圧延ロールの長手方向の全領域において接触可能とし、かつ、(II)圧延ロールに接触している際に、変位計先端を、仮想軸芯方向断面視で、圧延ロールの軸芯に向けてロール半径方向に寸法変化量を測定した、本発明例では、比較例に比べて、実際の圧延ロールの長手方向測定部位の殆どの位置において、理想例に近い値となっていることが判る。