特許第6700892号(P6700892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6700892-低温液化ガス貯蔵設備 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6700892
(24)【登録日】2020年5月8日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】低温液化ガス貯蔵設備
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20200518BHJP
   F17C 13/02 20060101ALI20200518BHJP
【FI】
   F17C13/00 302A
   F17C13/02 302
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-59105(P2016-59105)
(22)【出願日】2016年3月23日
(65)【公開番号】特開2017-172690(P2017-172690A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2018年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】吉川 紗耶
(72)【発明者】
【氏名】倉木 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】山下 眞輝
(72)【発明者】
【氏名】飯田 淳
【審査官】 矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−301398(JP,A)
【文献】 特開2006−258118(JP,A)
【文献】 特開2013−209000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00−13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温液化ガスを貯蔵する第1タンクと、
前記第1タンクの運用タンク圧よりも高い運用タンク圧で運用され、低温液化ガスを貯蔵する第2タンクと、
前記第1タンクに第1ボイルオフガス通路を介して接続され、ボイルオフガスを前記第1タンクから取出して圧縮処理するガス圧縮機と、
前記第1ボイルオフガス通路と前記第2タンクとに亘って設けられ、前記第2タンクで発生したボイルオフガスを前記第1ボイルオフガス通路に流入させる第2ボイルオフガス通路と、
前記第2ボイルオフガス通路に設けられ、前記第1ボイルオフガス通路へ流動するボイルオフガスの圧力を調整する圧力調整弁と、
前記圧力調整弁を制御する圧力制御手段とを備え、
前記圧力制御手段は、前記第2タンクの内圧と前記第1タンクの内圧との差圧値を計測し、前記第2タンクの内圧が前記第1タンクの内圧よりも高圧で、差圧値が設定値以上であることを計測した場合、前記圧力調整弁を開き側に調整制御し、前記第2タンクの内圧が前記第1タンクの内圧よりも高圧であっても、差圧値が前記設定値未満であることを計測した場合、前記圧力調整弁を閉じ側に調整制御する低温液化ガス貯蔵設備。
【請求項2】
前記第2タンクで発生したボイルオフガスを前記第1ボイルオフガス通路に前記圧力調整弁を迂回させて流入させるバイパス通路と、
前記バイパス通路に設けられたバイパス弁とを備えている請求項1に記載の低温液化ガス貯蔵設備。
【請求項3】
前記第1タンクの内圧または前記ガス圧縮機の入口圧力を検出する第1圧力センサと、
前記第2ボイルオフガス通路のうちの前記圧力調整弁と前記第2タンクとの間の部位に設けられた第2圧力センサと、を備え、
前記圧力制御手段は、前記第1圧力センサによる検出圧力と、前記第2圧力センサによる検出圧力とを基に、前記第2タンクの内圧と前記第1タンクの内圧との差圧値を計測する請求項1に記載の低温液化ガス貯蔵設備。
【請求項4】
前記ガス圧縮機が前記第1タンクの内圧に基づいて制御される請求項1から3のいずれか一項に記載の低温液化ガス貯蔵設備。
【請求項5】
前記第2タンクの内圧が設定高圧を超えると、前記圧力調整弁が開き側に調整制御される請求項1から4のいずれか一項に記載の低温液化ガス貯蔵設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化天然ガスや液化石油ガスなどの低温液化ガスを貯蔵する低温液化ガス貯蔵設備に関する。
【背景技術】
【0002】
低温液化ガス貯蔵設備では、例えば特許文献1に示されるように、タンクにガス圧縮機(公報では、圧縮機)が接続される。すなわち、タンクに液化ガスを供給する際の入熱等によってタンクにボイルオフガスが多量に発生すると、ボイルオフガスを圧縮機へ取出して燃焼用などに圧縮処理され、タンクの内圧が上昇し過ぎることを防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−175488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、タンクが既に存在する基地に新たにタンクを増設する場合、液化ガスの受入方法や受入量が将来において変更されることなどを考慮し、新たなタンクの設計圧力を既存のタンクの設計圧力よりも高く設定することがある。近年、液化天然ガスを貯蔵するタンクにおいて、タンクの設計圧力は、運用のタンク圧力をあげボイルオフガス発生を抑えるため、従来に比べて上昇傾向であり、設計圧力を変更する場合は、以前より高く設定する傾向にある。
また、新設タンクの受入れ量などのボイルオフガス発生量の増減を左右する条件を変更した場合、既設の基地の設備条件により新設タンクのみ運用タンク圧を高く設定する必要がある場合もある。
設計圧力を既設タンクより高くする場合は、屋根板などの板厚の増加等につながり、設備費がかかるが、この設備費を回収する手法がこれまでなかった。
また、運用タンク圧が異なるタンクを備える低温液化ガス貯蔵設備において、運用タンク圧が低いタンク及び運用タンク圧が高いタンクのための専用のガス圧縮機を設けた場合、ガス圧縮機を設置するための高い設備費が必要になる。これに加え、数多いガス圧縮機を駆動したり、制御したりせねばならず、運用費も高くなる。
【0005】
本発明は、運用タンク圧または設計圧力が異なるタンクを備えるにもかかわらず、安価で済む低温液化ガス貯蔵設備を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による低温液化ガス貯蔵設備は、
低温液化ガスを貯蔵する第1タンクと、
前記第1タンクの運用タンク圧よりも高い運用タンク圧で運用され、低温液化ガスを貯蔵する第2タンクと、
前記第1タンクに第1ボイルオフガス通路を介して接続され、ボイルオフガスを前記第1タンクから取出して圧縮処理するガス圧縮機と、
前記第1ボイルオフガス通路と前記第2タンクとに亘って設けられ、前記第2タンクで発生したボイルオフガスを前記第1ボイルオフガス通路に流入させる第2ボイルオフガス通路と、
前記第2ボイルオフガス通路に設けられ、前記第1ボイルオフガス通路へ流動するボイルオフガスの圧力を調整する圧力調整弁と、
前記圧力調整弁を制御する圧力制御手段とを備え、
前記圧力制御手段は、前記第2タンクの内圧と前記第1タンクの内圧との差圧値を計測し、前記第2タンクの内圧が前記第1タンクの内圧よりも高圧で、差圧値が設定値以上であることを計測した場合、前記圧力調整弁を開き側に調整制御し、前記第2タンクの内圧が前記第1タンクの内圧よりも高圧であっても、差圧値が前記設定値未満であることを計測した場合、前記圧力調整弁を閉じ側に調整制御する
【0007】
上記構成によると、圧力調整弁を適切に人為操作するとか自動制御させるとかにより、第2タンクに発生したボイルオフガスを第1タンクの運用タンク圧に影響しないように減圧した状態でガス圧縮機に供給できる。また、圧力調整弁の適切な操作により、第2タンクのボイルオフガスが流出し過ぎることを防止して、第2タンクにボイルオフガスの圧力を蓄圧できる。
【0008】
つまり、第1タンクに発生したボイルオフガスを圧縮処理するガス圧縮機と、第2タンクに発生したボイルオフガスを圧縮処理するガス圧縮機とを共用してガス圧縮機の必要数を少なくできる。第1タンク用のガス圧縮機と、第1タンクよりも運用タンク圧が高い第2タンク用のガス圧縮機とを共用するものでありながら、第2タンクをこれの運用タンク圧の蓄圧状態にして第2タンクにおけるボイルオフガスの発生を抑制し、第2タンクに発生するボイルオフガスの圧縮処理のためにガス圧縮機を駆動する時間や圧縮ガス量を低減できる。
【0009】
従って、運用タンク圧が異なる第1タンクと第2タンクとを備える低温液化ガス貯蔵設備であっても、数少ないガス圧縮機を設置すればよく、またガス圧縮機の駆動時間や圧縮ガス量を少なくできるので、安価に設置できると共に安価に運用できる。
タンクの設計圧力が異なる場合であっても、その設計圧力の差にあたる圧力をタンク運用圧の差とすることにより、ボイルオフガス抑制に寄与でき、効率的に設備費が回収できる。また、低温液化ガスのタンク受入時に発生するボイルオフガス発生量はタンク圧力を上げることで大幅に削減が可能であり、ガス圧縮機の動力費を削減できる。ボイルオフガス発生量が増え、基地の既存のガス圧縮機の処理能力をオーバすると、ボイルオフガス処理量を増やす必要があるため、場合によってはガス圧縮機の増設または、処理能力アップが必要になる。
【0011】
加えて、本構成によると、第2タンクのボイルオフガスの圧力に適切に対応した操作状態に圧力調整弁が自動的に調整されるので、第2タンクのボイルオフガスの排出や第2タンクのボイルオフガスによる蓄圧を適切にでき、ガス圧縮機の駆動時間や圧縮ガス量の調整を適確にできる。
【0012】
本発明をより好適なものにするよう、次の構成を備えた。
前記第2タンクで発生したボイルオフガスを前記第1ボイルオフガス通路に前記圧力調整弁を迂回させて流入させるバイパス通路と、前記バイパス通路に設けられたバイパス弁と、を備えているという構成を備えた。
【0013】
クールダウン時等、バイパス弁を開けることにより、第2タンクの多量のボイルオフガスをバイパス通路によって圧力調整弁を迂回させてガス圧縮機にスムーズに排出できる。また、圧力調整弁のメインテナンス時に第2タンクのボイルオフガスをバイパス通路によってガス圧縮機に排出できる。
【0014】
本発明をより好適なものにするよう、次の構成を備えた。
前記第1タンクの内圧または前記ガス圧縮機の入口圧力を検出する第1圧力センサと、
前記第2ボイルオフガス通路のうちの前記圧力調整弁と前記第2タンクとの間の部位に設けられた第2圧力センサと、を備え、
前記圧力制御手段は、前記第1圧力センサによる検出圧力と、前記第2圧力センサによる検出圧力とを基に、前記第2タンクの内圧と前記第1タンクの内圧との差圧値を計測するという構成を備えた。
【0015】
ガス圧縮機の性能による影響で第1タンクの内圧の変動が大きいため、第2タンクの内圧を定められた値に制御する方式とする場合、流量の変動が生じ、圧力調整弁の制御範囲を逸脱する可能性が高い。
本構成によると、第1タンクの圧力と第2タンクの圧力の差圧に基づいて制御する方式であるので、流量の変動を抑えることができ、ガス圧縮機などの後流の機器への影響を回避することができる。
【0016】
本発明をより好適なものにするよう、次の構成を備えた。
前記ガス圧縮機が前記第1タンクの内圧に基づいて制御されるという構成を備えた。
【0017】
本構成によると、第1タンクの運用タンク圧を適切に維持しつつ、第1タンクのボイルオフガスをガス圧縮機に排出できる。
【0018】
本発明をより好適なものにするよう、次の構成を備えた。
前記第2タンクの内圧が設定高圧を超えると、前記圧力調整弁が開き側に調整制御されるという構成を備えた。
【0019】
本構成によると、第2タンクにボイルオフガスが多く発生して第2タンクの内圧が設定高圧を超えると、第2タンクのボイルオフガスを第2ボイルオフガス通路へ流出させることができ、第2タンクの内圧が上昇し過ぎないように第2タンクを保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】低温液化ガス貯蔵設備を示す構成図である。
図2】圧縮制御のフロー図である。
図3】圧力制御のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係る低温液化ガス貯蔵設備を示す構成図である。低温液化ガス貯蔵設備は、図1に示すように、2基の第1タンク1及び1基の第2タンク2を備えている。
【0022】
2基の第1タンク1には、ガス供給路3及びガス出荷路4が接続されている。各第1タンク1において、液化天然ガス(以下、LNGと呼称する。)がガス供給路3を介して第1タンク1に供給されて貯蔵される。第1タンク1に貯蔵されたLNGは、ガス出荷路4を介して取出されてユーザなどの供給先に出荷される。
【0023】
第2タンク2には、ガス供給路5及びガス出荷路6が接続されている。LNGがガス供給路5を介して第2タンク2に供給されて貯蔵される。第2タンク2に貯蔵されたLNGは、ガス出荷路6を介して取出されてユーザなどの供給先に出荷される。
【0024】
2基の第1タンク1の運用タンク圧[T1]は、同じ運用タンク圧に設定されている。第2タンク2の運用タンク圧[T2]は、第1タンク1の運用タンク圧[T1]よりも高い運用タンク圧に設定されている。第1タンク1におけるボイルオフガスの発生にかかわらず2基の第1タンク1の内圧が運用タンク圧[T1]になるように2基の第1タンク1を運用し、かつ第2タンク2におけるボイルオフガスの発生にかかわらず第2タンク2の内圧が運用タンク圧[T2]になるように第2タンク2を運用する運用装置7が図1に示す如く構成されている。
【0025】
運用装置7は、図1に示すように、ガス圧縮機8及び圧縮制御手段9を備えている。
【0026】
ガス圧縮機8は、第1ボイルオフガス通路10を介して2基の第1タンク1に接続されている。第1ボイルオフガス通路10は、ガス圧縮機8から分岐点10aに至る圧縮機側通路部10bと、分岐点10aから2基の第1タンク1へ分かれて延びる2つのタンク側通路部10cとを備えている。第1ボイルオフガス通路10のうちの圧縮機側通路部10bに圧力センサ11が設けられている。圧力センサ11が位置する圧縮機側通路部10bは、第1タンク1に連通しているので、圧力センサ11は、圧縮機側通路部10bの内圧を第1タンク1の内圧として検出する。
【0027】
圧縮制御手段9は、マイクロコンピュータを利用した制御装置12によって構成されている。圧縮制御手段9は、ガス圧縮機8及び圧力センサ11に連係されており、圧力センサ11によって検出された第1タンク1の圧力[P1](図2参照)と、図2に示す圧縮制御のフローとに基づいて作動する。
【0028】
図2に示すように、圧縮制御手段9は、圧力センサ11によって検出された第1タンク1の圧力[P1]と、運用タンク圧[T1]とを比較し、検出された圧力[P1]が運用タンク圧[T1]を超えているか否かを判断する。圧縮制御手段9は、検出された圧力[P1]が運用タンク圧[T1]を超えていると判断した場合、ガス圧縮機8を駆動させるべき指令をガス圧縮機8の駆動部(図示せず)に出力することによってガス圧縮機8を駆動する。圧縮制御手段9は、検出された圧力[P1]が運用タンク圧[T1]を超えていないと判断した場合、ガス圧縮機8を停止させるべき指令をガス圧縮機8の駆動部に出力することによってガス圧縮機8を停止させる。
【0029】
第1タンク1にボイルオフガスが発生しても、第1タンク1の内圧が運用タンク圧[T1]を超えない間は、ガス圧縮機8が停止され、第1タンク1のボイルオフガスの流出が防止されて、第1タンク1が蓄圧状態にされる。第1タンク1におけるボイルオフガスの発生を蓄圧によって抑制できる。第1タンク1の内圧が運用タンク圧[T1]を超えた場合、ガス圧縮機8が駆動され、第1タンク1のボイルオフガスがガス圧縮機8によって取出されて圧縮処理される。ガス圧縮機8によって圧縮処理されたボイルオフガスは、供給路8aによってユーザに供給される。本実施例では、ガス圧縮機8によって圧縮処理されたボイルオフガスをユーザに供給するよう構成しているが、第1タンク1に戻したり、基地内の第1タンク以外の設備に供給したりするよう構成してもよい。ガス圧縮機8によって圧縮処理されたボイルオフガスの供給先としては、ユーザに限らず、各種の供給先を設定してもよい。
【0030】
運用装置7は、第2ボイルオフガス通路20、圧力調整弁21及び圧力制御手段22を備えている。
【0031】
第2ボイルオフガス通路20は、第1ボイルオフガス通路10と第2タンク2とに亘って設けられている。具体的には、第2ボイルオフガス通路20は、第1ボイルオフガス通路10のうちの圧縮機側通路部10bと、第2タンク2とに亘って設けられている。圧力調整弁21は、第2ボイルオフガス通路20に設けられている。具体的には、圧力調整弁21は、第2ボイルオフガス通路20のうち、圧縮機側通路部10bに接続している箇所と、第2タンク2に接続している箇所との間に設けられている。第2ボイルオフガス通路20は、圧力調整弁21が調整制御されることにより、第2タンク2で発生したボイルオフガスを第1ボイルオフガス通路10のうちの圧縮機側通路部10bに流入させる。
【0032】
圧力調整弁21は、調整制御されることにより、第2ボイルオフガス通路20を流動するボイルオフガスの圧力を調節する。すなわち、圧力調整弁21を開き側に調整制御させることにより、圧力調整弁21がボイルオフガスに付与する流動抵抗が小になり、圧力調整弁21は、第2タンク2のボイルオフガスを圧縮機側通路部10bへ流入し易くする。圧力調整弁21の開度が大になるほど、第2タンク2のボイルオフガスが圧縮機側通路部10bへより流入し易くなる。圧力調整弁21を閉じ側に調整制御させることにより、圧力調整弁21がボイルオフガスに付与する流動抵抗が大になり、圧力調整弁21は、第2タンク2から圧縮機側通路部10bへのボイルオフガスの流入を停止したり、抑制したりする。圧力調整弁21の開度が小になるほど、第2タンク2のボイルオフガスが圧縮機側通路部10bへより流入し難くなる。
【0033】
第2ボイルオフガス通路20のうちの圧縮機側通路部10bに接続されている箇所と圧力調整弁21との間の部位に第1圧力センサ23が設けられている。第2ボイルオフガス通路20のうちの第1圧力センサ23が位置する部位、すなわち第2ボイルオフガス通路20のうちの圧力調整弁21よりも下流側の部位は、第1ボイルオフガス通路10を介して第1タンク1に連通しているので、第1圧力センサ23は、第1圧力センサ23が位置する第2ボイルオフガス通路20の部位の圧力を第1タンク1の内圧[P1](図3参照)として検出する。本実施例では、第2ボイルオフガス通路20の圧力を第1タンク1の内圧として検出する第1圧力センサ23を採用しているが、この第1圧力センサ23に替え、ガス圧縮機8の入口圧力を第1タンク1の内圧として検出する圧力センサを採用してもよい。
【0034】
第2ボイルオフガス通路20のうちの圧力調整弁21が設けられている箇所と第2タンク2との間の部位に第2圧力センサ24が設けられている。第2ボイルオフガス通路20のうちの第2圧力センサ24が位置する部位、すなわち第2ボイルオフガス通路20のうちの圧力調整弁21よりも上流側の部位は、第2タンク2に連通しているので、第2圧力センサ24は、第2圧力センサ24が位置する第2ボイルオフガス通路20の部位の圧力を第2タンク2の内圧[P2](図3参照)として検出する。
【0035】
圧力制御手段22は、制御装置12によって構成されている。圧力制御手段22は、圧力調整弁21、第1圧力センサ23、及び第2圧力センサ24に連係されており、第1圧力センサ23による検出結果と、第2圧力センサ24による検出結果と、図3に示す圧力制御のフローとに基づいて作動する。
【0036】
図3に示すように、圧力制御手段22は、第1圧力センサ23によって検出された第1タンク1の内圧[P1]と、第2圧力センサ24によって検出された第2タンク2の内圧[P2]とを比較し、第2タンク2の内圧[P2]が第1タンク1の内圧[P1]よりも高圧であるか否かを判別する。
【0037】
圧力制御手段22は、第2タンク2の内圧[P2]が第1タンク1の内圧[P1]よりも高圧であると判断した場合、第2タンク2の内圧[P2]と、第1タンク1の内圧[P1]との差圧値[PS]を計測(演算)する。圧力制御手段22は、計測した差圧値[PS]と、予め設定された設定値[PA]とを比較し、差圧値[PS]が設定値[PA]以上であるか、差圧値[PS]が設定値[PA]未満であるかを判断する。圧力制御手段22は、差圧値[PS]が設定値[PA]以上であると判断した場合、圧力調整弁21を開き側に調整制御すべき信号を圧力調整弁21の駆動部21aに出力することにより、圧力調整弁21を開き側に調節制御する。
【0038】
圧力制御手段22は、第2タンク2の内圧[P2]が第1タンク1の内圧[P1]よりも高圧であると判断した場合でも、差圧値[PS]が設定値[PA]未満であると判断した場合、圧力調整弁21を閉じ側に調整制御すべき信号を駆動部21aに出力することにより、圧力調整弁21を閉じ側に調節制御する。
【0039】
例えば、第1タンク1の運用タンク圧[T1]が4〜8kPaであり、第2タンク2の運用タンク圧[T2]が9〜13kPaである場合、設定値[PA]として[5kPa]を設定する。このように、第1タンク1の運用タンク圧[T1]及び第2タンク2の運用タンク圧[T2]に基づいて設定値[PA]を適切に設定する。
【0040】
その場合、第2タンク2にボイルオフガスが発生しても、第2タンク2の内圧が運用タンク圧[T2]を超えない間は、差圧値[PS]が設定値[PA]未満になって圧力調整弁21が閉じ側に調節制御されるので、第2タンク2から第1ボイルオフガス通路10へのボイルオフガスの流出が停止したり、抑制されたりして、第2タンク2が蓄圧状態にされる。第2タンク2におけるボイルオフガスの発生を蓄圧によって抑制できる。第2タンク2の内圧が運用タンク圧[T1]を超えた場合、差圧値[PS]が設定値[PA]以上になって圧力調整弁21が開き側に調節制御されるので、第2タンク2のボイルオフガスが第2ボイルオフガス通路20へ流出して第2ボイルオフガス通路20から第1ボイルオフガス通路10に流入する。
【0041】
このとき、ガス圧縮機8が第1タンク1の内圧に基づいて駆動制御される。すなわち、第1タンク1から流出したボイルオフガスの圧力が圧力センサ11に作用し、圧縮制御手段9が圧力センサ11による検出結果に基づいてガス圧縮機8を駆動する。また、第1タンク1から流出したボイルオフガスのみならず、圧力調整弁21により減圧された第2タンクから流出したボイルオフガスも同時にガス圧縮機8によって圧縮処理される。ガス圧縮機8によって圧縮処理されたボイルオフガスは、供給路8aによってユーザに供給される。本実施例では、ガス圧縮機8によって圧縮処理されたボイルオフガスをユーザに供給するよう構成しているが、第2タンク2に戻したり、基地内の第2タンク以外の設備に供給したりするよう構成してもよい。ガス圧縮機8によって圧縮処理されたボイルオフガスの供給先としては、ユーザに限らず、各種の供給先を設定してもよい。
【0042】
圧力制御手段22は、第2圧力センサ24によって検出された第2タンクの内圧[P2]と、予め設定された設定高圧[PH]とを比較して、検出された内圧[P2]が設定高圧[PH]を超えているか否かを判断する。圧力制御手段22は、検出された内圧[P2]が設定高圧[PH]を超えていると判断した場合、圧力調整弁21を開き側に調整制御する。設定高圧[PH]として、第2タンク2の運用タンク圧よりも大きい設計圧力(例えば18kPa)、または設計圧力に近い圧力が設定されている。
【0043】
つまり、第2タンク2の内圧が設定高圧[PH]を超えた場合、圧力調整弁21が圧力制御手段22によって開き側に調節制御され、第2タンク2のボイルオフガスが第2ボイルオフガス通路20を介して第1ボイルオフガス通路10に流出し、第2タンク2の内圧の異常上昇を回避できる。この場合も、圧力センサ11による検出結果に基づいて作動する圧縮制御手段9によってガス圧縮機8が駆動される。
【0044】
図1に示すように、第2ボイルオフガス通路20に、圧力調整弁21を迂回するバイパス通路25が設けられている。バイパス通路25には、バイパス弁26が設けられている。クールダウン時等、バイパス弁26を開けることにより、第2タンク2の多量のボイルオフガスをバイパス通路25によって圧力調整弁21を迂回させて第1ボイルオフガス通路10に流出させ、ガス圧縮機8にスムーズに排出できる。また、圧力調整弁21のメインテナンス時において、バイパス弁26を開けることにより、第2タンク2のボイルオフガスをバイパス通路25によって圧力調整弁21を通さずに第1ボイルオフガス通路10に排出でき、ガス圧縮機8に排出できる。バイパス弁26は、圧力制御手段22による圧力調整弁21の調整制御を行なわせる場合、閉じておく。
【0045】
〔別実施例〕
(1) 上記した実施例では、第1圧力センサ23及び第2圧力センサ24を第2ボイルオフガス通路20に設けた例を示したが、第1圧力センサ23を第1タンク1に設け、第2圧力センサ24を第2タンク2に設けて実施してもよい。
【0046】
(2) 上記した実施例では、2基の第1タンク1を設けた例を示したが、2基に限らず、1基あるいは3基以上の第1タンク1を設けてもよい。
【0047】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、液化天然ガスに限らず、液化石油ガスなど各種の低温液化ガスを貯蔵対象とする低温液化ガス貯蔵設備に利用できる。
【符号の説明】
【0049】
1 第1タンク
2 第2タンク
8 ガス圧縮機
10 第1ボイルオフガス通路
20 第2ボイルオフガス通路
21 圧力調整弁
23 第1圧力センサ
24 第2圧力センサ
25 バイパス通路
26 バイパス弁
P1 第1タンクの内圧
P2 第2タンクの内圧
PH 設定高圧
PS 差圧値
T1 第1タンクの運用タンク圧
T2 第2タンクの運用タンク圧
図1
図2
図3