【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、タンクが既に存在する基地に新たにタンクを増設する場合、液化ガスの受入方法や受入量が将来において変更されることなどを考慮し、新たなタンクの設計圧力を既存のタンクの設計圧力よりも高く設定することがある。近年、液化天然ガスを貯蔵するタンクにおいて、タンクの設計圧力は、運用のタンク圧力をあげボイルオフガス発生を抑えるため、従来に比べて上昇傾向であり、設計圧力を変更する場合は、以前より高く設定する傾向にある。
また、新設タンクの受入れ量などのボイルオフガス発生量の増減を左右する条件を変更した場合、既設の基地の設備条件により新設タンクのみ運用タンク圧を高く設定する必要がある場合もある。
設計圧力を既設タンクより高くする場合は、屋根板などの板厚の増加等につながり、設備費がかかるが、この設備費を回収する手法がこれまでなかった。
また、運用タンク圧が異なるタンクを備える低温液化ガス貯蔵設備において、運用タンク圧が低いタンク及び運用タンク圧が高いタンクのための専用のガス圧縮機を設けた場合、ガス圧縮機を設置するための高い設備費が必要になる。これに加え、数多いガス圧縮機を駆動したり、制御したりせねばならず、運用費も高くなる。
【0005】
本発明は、運用タンク圧または設計圧力が異なるタンクを備えるにもかかわらず、安価で済む低温液化ガス貯蔵設備を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による低温液化ガス貯蔵設備は、
低温液化ガスを貯蔵する第1タンクと、
前記第1タンクの運用タンク圧よりも高い運用タンク圧で運用され、低温液化ガスを貯蔵する第2タンクと、
前記第1タンクに第1ボイルオフガス通路を介して接続され、ボイルオフガスを前記第1タンクから取出して圧縮処理するガス圧縮機と、
前記第1ボイルオフガス通路と前記第2タンクとに亘って設けられ、前記第2タンクで発生したボイルオフガスを前記第1ボイルオフガス通路に流入させる第2ボイルオフガス通路と、
前記第2ボイルオフガス通路に設けられ、前記第1ボイルオフガス通路へ流動するボイルオフガスの圧力を調整する圧力調整弁と、
前記圧力調整弁を制御する圧力制御手段とを備え、
前記圧力制御手段は、前記第2タンクの内圧と前記第1タンクの内圧との差圧値を計測し、前記第2タンクの内圧が前記第1タンクの内圧よりも高圧で、差圧値が設定値以上であることを計測した場合、前記圧力調整弁を開き側に調整制御し、前記第2タンクの内圧が前記第1タンクの内圧よりも高圧であっても、差圧値が前記設定値未満であることを計測した場合、前記圧力調整弁を閉じ側に調整制御する。
【0007】
上記構成によると、圧力調整弁を適切に人為操作するとか自動制御させるとかにより、第2タンクに発生したボイルオフガスを第1タンクの運用タンク圧に影響しないように減圧した状態でガス圧縮機に供給できる。また、圧力調整弁の適切な操作により、第2タンクのボイルオフガスが流出し過ぎることを防止して、第2タンクにボイルオフガスの圧力を蓄圧できる。
【0008】
つまり、第1タンクに発生したボイルオフガスを圧縮処理するガス圧縮機と、第2タンクに発生したボイルオフガスを圧縮処理するガス圧縮機とを共用してガス圧縮機の必要数を少なくできる。第1タンク用のガス圧縮機と、第1タンクよりも運用タンク圧が高い第2タンク用のガス圧縮機とを共用するものでありながら、第2タンクをこれの運用タンク圧の蓄圧状態にして第2タンクにおけるボイルオフガスの発生を抑制し、第2タンクに発生するボイルオフガスの圧縮処理のためにガス圧縮機を駆動する時間や圧縮ガス量を低減できる。
【0009】
従って、運用タンク圧が異なる第1タンクと第2タンクとを備える低温液化ガス貯蔵設備であっても、数少ないガス圧縮機を設置すればよく、またガス圧縮機の駆動時間や圧縮ガス量を少なくできるので、安価に設置できると共に安価に運用できる。
タンクの設計圧力が異なる場合であっても、その設計圧力の差にあたる圧力をタンク運用圧の差とすることにより、ボイルオフガス抑制に寄与でき、効率的に設備費が回収できる。また、低温液化ガスのタンク受入時に発生するボイルオフガス発生量はタンク圧力を上げることで大幅に削減が可能であり、ガス圧縮機の動力費を削減できる。ボイルオフガス発生量が増え、基地の既存のガス圧縮機の処理能力をオーバすると、ボイルオフガス処理量を増やす必要があるため、場合によってはガス圧縮機の増設または、処理能力アップが必要になる。
【0011】
加えて、本構成によると、第2タンクのボイルオフガスの圧力に適切に対応した操作状態に圧力調整弁が自動的に調整されるので、第2タンクのボイルオフガスの排出や第2タンクのボイルオフガスによる蓄圧を適切にでき、ガス圧縮機の駆動時間や圧縮ガス量の調整を適確にできる。
【0012】
本発明をより好適なものにするよう、次の構成を備えた。
前記第2タンクで発生したボイルオフガスを前記第1ボイルオフガス通路に前記圧力調整弁を迂回させて流入させるバイパス通路と、前記バイパス通路に設けられたバイパス弁と、を備えているという構成を備えた。
【0013】
クールダウン時等、バイパス弁を開けることにより、第2タンクの多量のボイルオフガスをバイパス通路によって圧力調整弁を迂回させてガス圧縮機にスムーズに排出できる。また、圧力調整弁のメインテナンス時に第2タンクのボイルオフガスをバイパス通路によってガス圧縮機に排出できる。
【0014】
本発明をより好適なものにするよう、次の構成を備えた。
前記第1タンクの内圧または前記ガス圧縮機の入口圧力を検出する第1圧力センサと、
前記第2ボイルオフガス通路のうちの前記圧力調整弁と前記第2タンクとの間の部位に設けられた第2圧力センサと、を備え、
前記圧力制御手段は、前記第1圧力センサによる検出圧力と、前記第2圧力センサによる検出圧力とを基に、前記第2タンクの内圧と前記第1タンクの内圧との差圧値を計測するという構成を備えた。
【0015】
ガス圧縮機の性能による影響で第1タンクの内圧の変動が大きいため、第2タンクの内圧を定められた値に制御する方式とする場合、流量の変動が生じ、圧力調整弁の制御範囲を逸脱する可能性が高い。
本構成によると、第1タンクの圧力と第2タンクの圧力の差圧に基づいて制御する方式であるので、流量の変動を抑えることができ、ガス圧縮機などの後流の機器への影響を回避することができる。
【0016】
本発明をより好適なものにするよう、次の構成を備えた。
前記ガス圧縮機が前記第1タンクの内圧に基づいて制御されるという構成を備えた。
【0017】
本構成によると、第1タンクの運用タンク圧を適切に維持しつつ、第1タンクのボイルオフガスをガス圧縮機に排出できる。
【0018】
本発明をより好適なものにするよう、次の構成を備えた。
前記第2タンクの内圧が設定高圧を超えると、前記圧力調整弁が開き側に調整制御されるという構成を備えた。
【0019】
本構成によると、第2タンクにボイルオフガスが多く発生して第2タンクの内圧が設定高圧を超えると、第2タンクのボイルオフガスを第2ボイルオフガス通路へ流出させることができ、第2タンクの内圧が上昇し過ぎないように第2タンクを保護できる。