特許第6700900号(P6700900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6700900
(24)【登録日】2020年5月8日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】自動車ドア用シール材
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/76 20160101AFI20200518BHJP
   B60J 10/75 20160101ALI20200518BHJP
【FI】
   B60J10/76
   B60J10/75
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-64659(P2016-64659)
(22)【出願日】2016年3月28日
(65)【公開番号】特開2017-177894(P2017-177894A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】升本 敦生
【審査官】 高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3726658(JP,B2)
【文献】 特開2004−090735(JP,A)
【文献】 特開2015−063162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/00−10/90
B60R 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドアに昇降可能に設けられたウインドガラスの外周部を支持するウインドフレームに組み付けられるグラスランと、
上記ドアの本体のベルトライン部の車室内側に設けられ、車両前後方向に延びるベルトラインインナーシールとを備え、
上記グラスランは、上記ウインドガラスの昇降方向に延びて下端部が上記ドアの本体の内部に達し、該本体の内部において開放する縦辺部を有し、
上記ベルトラインインナーシールの車両前後方向の端部が上記縦辺部に一体成形された自動車ドア用シール材において、
上記グラスランの上記縦辺部には、上記ウインドガラスの車室内面に接触して弾性変形する縦辺部シールリップが設けられ、
上記ベルトラインインナーシールには、上記ウインドガラスの車室内面に接触して弾性変形するアッパベルトラインシールリップ及びロアベルトラインシールリップがそれぞれ車両前後方向に延び、かつ、互いに上下方向に間隔をあけて設けられ、
上記縦辺部シールリップには、上記アッパベルトラインシールリップ及び上記ロアベルトラインシールリップの車両前後方向の端部が連続し、
上記縦辺部における上記アッパベルトラインシールリップ及び上記ロアベルトラインシールリップの間には、車室外側へ突出して上下方向に延びる仕切壁部が設けられ、上記仕切壁部は、下側へ行くほど上記自動車ドア用シール材の車室内方に位置するように形成され、
上記自動車ドア用シール材と上記ウインドガラスで囲まれた空間が上記縦辺部側と上記ベルトラインインナーシール側とに仕切られることを特徴とする自動車ドア用シール材。
【請求項2】
自動車のドアに昇降可能に設けられたウインドガラスの外周部を支持するウインドフレームに組み付けられるグラスランと、
上記ドアの本体のベルトライン部の車室内側に設けられ、車両前後方向に延びるベルトラインインナーシールとを備え、
上記グラスランは、上記ウインドガラスの昇降方向に延びて下端部が上記ドアの本体の内部に達し、該本体の内部において開放する縦辺部を有し、
上記ベルトラインインナーシールの車両前後方向の端部が上記縦辺部に一体成形された自動車ドア用シール材において、
上記グラスランの上記縦辺部には、上記ウインドガラスの車室内面に接触して弾性変形する縦辺部シールリップが設けられ、
上記ベルトラインインナーシールには、上記ウインドガラスの車室内面に接触して弾性変形するアッパベルトラインシールリップ及びロアベルトラインシールリップがそれぞれ車両前後方向に延び、かつ、互いに上下方向に間隔をあけて設けられ、
上記縦辺部シールリップには、上記アッパベルトラインシールリップ及び上記ロアベルトラインシールリップの車両前後方向の端部が連続し、
上記縦辺部における上記アッパベルトラインシールリップ及び上記ロアベルトラインシールリップの間には、車室外側へ突出して上下方向に延びる仕切壁部が設けられ、上記仕切壁部の上部及び下部は上記縦辺部シールリップに連続しており、
上記自動車ドア用シール材と上記ウインドガラスで囲まれた空間が上記縦辺部側と上記ベルトラインインナーシール側とに仕切られることを特徴とする自動車ドア用シール材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の自動車ドア用シール材において、
開状態にある上記ウインドガラスが上記ロアベルトラインシールリップから離れたときに該ロアベルトラインシールリップが上記仕切壁部から離れて該仕切壁部との間に所定の隙間が形成される一方、閉状態にある上記ウインドガラスに接触して弾性変形した上記ロアベルトラインシールリップが上記仕切壁部に接触することにより、上記自動車ドア用シール材と上記ウインドガラスで囲まれた空間が上記縦辺部側と上記ベルトラインインナーシール側とに仕切られることを特徴とする自動車ドア用シール材。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の自動車ドア用シール材において、
上記仕切壁部の車室外側の縁部には、閉状態にある上記ウインドガラスに接触して弾性変形した上記ロアベルトラインシールリップが嵌まる切欠部が形成されていることを特徴とする自動車ドア用シール材。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1つに記載の自動車ドア用シール材において、
上記縦辺部は、上記ウインドガラスを挟むように配置される車室内側壁部及び車室外側壁部を有し、
上記車室内側壁部における車室外面に上記縦辺部シールリップが形成され、
上記車室内側壁部と上記縦辺部シールリップとは、該車室内側壁部から該縦辺部シールリップまで延びる接続壁部により接続され、
上記接続壁部は、上記縦辺部シールリップの基端部から先端部まで延びていることを特徴とする自動車ドア用シール材。
【請求項6】
請求項に記載の自動車ドア用シール材において、
上記接続壁部の車両前後方向一側が他側に比べて下に位置し、かつ、該接続壁部の車室内外方向一側が他側に比べて下に位置するように傾斜していることを特徴とする自動車ドア用シール材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアとウインドガラスとの間をシールする自動車ドア用シール材に関し、特に、ドアのベルトライン部に配設されるベルトラインシールと枠部に配設されるグラスランとを一体成形する構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車のドアにウインドガラスが昇降可能に設けられる場合には、該ウインドガラスの外周部を支持する枠状のウインドフレームと、該ウインドフレームに組み付けられる弾性部材からなるグラスランとを備えた構造が採用されることがある。グラスランは、ウインドガラスの昇降方向に延びる前後一対の縦辺部と、前側縦辺部及び後側縦辺部を繋ぐ上辺部とを有している。また、自動車のドアのベルトライン部の車室内側には、前後方向に延びるベルトラインインナーシールが設けられている。このベルトラインインナーシールの前端部と、上記グラスランの前側縦辺部とを一体成形するとともに、ベルトラインインナーシールの後端部と、上記グラスランの後側縦辺部とを一体成形した自動車ドア用シール材が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1、2のグラスランの前側縦辺部及び後側縦辺部はコ字状断面を有しており、ドア本体の内部に達するまで延び、その端部はドア本体の内部で開放されている。前側縦辺部及び後側縦辺部にはウインドガラスの車室内面に接触するインナーリップが設けられている。また、ベルトラインインナーシールにもウインドラスの内面に接触するインナーリップが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3726658号公報
【特許文献2】特許第4284804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1、2の自動車ドア用シール材では、ベルトラインインナーシールの前端部と、グラスランの前側縦辺部とを一体成形するとともに、ベルトラインインナーシールの後端部と、グラスランの後側縦辺部とを一体成形しているので、グラスランとベルトラインインナーシールとの間に隙間が無くなる。これにより、ドア本体の内部の音や空気がグラスランとベルトラインインナーシールとの間から車室に入るのを抑制することができる。
【0006】
しかしながら、グラスランの前側縦辺部及び後側縦辺部はドア本体の内部に達するまで延び、その端部はドア本体の内部で開放されているので、ドア本体の内部の音や空気が前側縦辺部及び後側縦辺部の内部を通って上方へ向かうことが考えられる。その過程において、前側縦辺部及び後側縦辺部の上下方向の中途部にベルトラインインナーシールが一体化していることから、前側縦辺部及び後側縦辺部の内部の音や空気の流れがベルトラインインナーシールの内部にも達することになる。このとき、ベルトラインインナーシールは、通常、乗員の側方に位置しているので、ベルトラインインナーシールの内部の音や空気の流れが乗員の近くに達し、静粛性の悪化を招く恐れがある。
【0007】
このことに対し、グラスランやベルトラインインナーシールの内部に壁を設けて音や空気の流れを遮断することが考えられるが、このようにした場合、壁は車室内外方向に延びる形状とせざるを得ないことから、壁を設けた部分が昇降時のウインドガラスの車室内面に接触した際、壁による車室内外方向の反発力が強く作用し、その部分の摩耗が懸念される。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、グラスランとベルトラインインナーシールとを一体成形する場合に、グラスランの縦辺部の内部を通ってベルトラインインナーシールの内部に達する音や空気の流れを遮断して静粛性を高めながら、昇降時のウインドガラスとの摺動によるシール材の耐摩耗性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1の発明は、
自動車のドアに昇降可能に設けられたウインドガラスの外周部を支持するウインドフレームに組み付けられるグラスランと、
上記ドアの本体のベルトライン部の車室内側に設けられ、車両前後方向に延びるベルトラインインナーシールとを備え、
上記グラスランは、上記ウインドガラスの昇降方向に延びて下端部が上記ドアの本体の内部に達し、該本体の内部において開放する縦辺部を有し、
上記ベルトラインインナーシールの車両前後方向の端部が上記縦辺部に一体成形された自動車ドア用シール材において、
上記グラスランの上記縦辺部には、上記ウインドガラスの車室内面に接触して弾性変形する縦辺部シールリップが設けられ、
上記ベルトラインインナーシールには、上記ウインドガラスの車室内面に接触して弾性変形するアッパベルトラインシールリップ及びロアベルトラインシールリップがそれぞれ車両前後方向に延び、かつ、互いに上下方向に間隔をあけて設けられ、
上記縦辺部シールリップには、上記アッパベルトラインシールリップ及び上記ロアベルトラインシールリップの車両前後方向の端部が連続し、
上記縦辺部における上記アッパベルトラインシールリップ及び上記ロアベルトラインシールリップの間には、車室外側へ突出して上下方向に延びる仕切壁部が設けられ、上記仕切壁部は、下側へ行くほど上記自動車ドア用シール材の車室内方に位置するように形成され、
上記自動車ドア用シール材と上記ウインドガラスで囲まれた空間が上記縦辺部側と上記ベルトラインインナーシール側とに仕切られることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、グラスランの縦辺部とベルトラインインナーシールとが一体成形されているので、縦辺部とベルトラインインナーシールとの間に隙間が無くなる。これにより、ドアの本体の内部の音や空気がグラスランとベルトラインインナーシールとの間から車室に入り難くなる。
【0011】
また、ウインドガラスが閉状態にあるときには、グラスランの縦辺部シールリップ、ベルトラインインナーシールのアッパベルトラインシールリップ及びロアベルトラインシールリップがウインドガラスの車室内面に接触してシール性が確保される。また、自動車ドア用シール材とウインドガラスで囲まれた空間が上記縦辺部側と上記ベルトラインインナーシール側とに仕切られるので、ドアの本体の内部の音や空気が縦辺部の内部を通って上方へ向った場合に、その音や空気が仕切壁部に当たり、ベルトラインインナーシールの内部へ向かうことはない。これにより静粛性が向上する。
【0012】
また、開状態にあるウインドガラスが上昇するとき、該ウインドガラスの前側や後側には角部があるので、この角部が仕切壁部に引っ掛かるようになる恐れがあるが、この発明では、仕切壁部の下側が内外方向の内方に位置することになるので、ウインドガラスの角部から外れたところに位置付けられる。これにより、ウインドガラスが上昇するときに該ウインドガラスの前側や後側の角部が仕切壁部に引っ掛かり難くなる。
【0013】
第2の発明は、自動車のドアに昇降可能に設けられたウインドガラスの外周部を支持するウインドフレームに組み付けられるグラスランと、
上記ドアの本体のベルトライン部の車室内側に設けられ、車両前後方向に延びるベルトラインインナーシールとを備え、
上記グラスランは、上記ウインドガラスの昇降方向に延びて下端部が上記ドアの本体の内部に達し、該本体の内部において開放する縦辺部を有し、
上記ベルトラインインナーシールの車両前後方向の端部が上記縦辺部に一体成形された自動車ドア用シール材において、
上記グラスランの上記縦辺部には、上記ウインドガラスの車室内面に接触して弾性変形する縦辺部シールリップが設けられ、
上記ベルトラインインナーシールには、上記ウインドガラスの車室内面に接触して弾性変形するアッパベルトラインシールリップ及びロアベルトラインシールリップがそれぞれ車両前後方向に延び、かつ、互いに上下方向に間隔をあけて設けられ、
上記縦辺部シールリップには、上記アッパベルトラインシールリップ及び上記ロアベルトラインシールリップの車両前後方向の端部が連続し、
上記縦辺部における上記アッパベルトラインシールリップ及び上記ロアベルトラインシールリップの間には、車室外側へ突出して上下方向に延びる仕切壁部が設けられ、上記仕切壁部の上部及び下部は上記縦辺部シールリップに連続しており、
上記自動車ドア用シール材と上記ウインドガラスで囲まれた空間が上記縦辺部側と上記ベルトラインインナーシール側とに仕切られることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、アッパベルトラインシールリップ及びロアベルトラインシールリップの間にある仕切壁部が縦辺部シールリップに連続しているので、アッパベルトラインシールリップ及びロアベルトラインシールリップの間を確実に塞ぐことが可能になる。
【0015】
の発明は、第1または2の発明において、
開状態にある上記ウインドガラスが上記ロアベルトラインシールリップから離れたときに該ロアベルトラインシールリップが上記仕切壁部から離れて該仕切壁部との間に所定の隙間が形成される一方、閉状態にある上記ウインドガラスに接触して弾性変形した上記ロアベルトラインシールリップが上記仕切壁部に接触することにより、上記自動車ドア用シール材と上記ウインドガラスで囲まれた空間が上記縦辺部側と上記ベルトラインインナーシール側とに仕切られることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、閉状態にあるウインドガラスに接触したロアベルトラインシールリップが車室内側へ弾性変形すると、そのロアベルトラインシールリップの車室内面がグラスランの仕切壁部に接触する。これにより、自動車ドア用シール材の内部が縦辺部側とベルトラインインナーシール側とに仕切られるので、ドアの本体の内部の音や空気が縦辺部の内部を通って上方へ向った場合に、その音や空気が仕切壁部に当たり、ベルトラインインナーシールの内部へ向かうことはない。これにより静粛性が向上する。
【0017】
一方、ウインドガラスが開状態にあるときには、該ウインドガラスがロアベルトラインシールリップから離れる。このとき、ロアベルトラインシールリップは復元しようとし、該ロアベルトラインシールリップの車室内面が仕切壁部から離れる。これにより、ロアベルトラインシールリップと仕切壁部との間に所定の隙間が形成される。つまり、ウインドガラスが閉状態にあるときだけロアベルトラインシールリップと仕切壁部が接触するように各部の形状及び寸法を設定しているので、ウインドガラスが開状態から閉状態になるときに、仕切壁部に対応する部分がウインドガラスの車室内面に強く接触してしまうのが回避される。よって、昇降時のウインドガラスとの摺動によるシール材の耐摩耗性が向上する。
【0018】
の発明は、第1から3のいずれか1つの発明において、
上記仕切壁部の車室外側の縁部には、閉状態にある上記ウインドガラスに接触して弾性変形した上記ロアベルトラインシールリップが嵌まる切欠部が形成されていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、ウインドガラスが閉状態にあるときには、ロアベルトラインシールリップが弾性変形して仕切壁部の切欠部に嵌まる。これにより、ロアベルトラインシールリップと仕切壁部との間に隙間ができにくくなり、縦辺部の内部を通って上方へ向った音や空気がベルトラインインナーシールの内部へ向かわないようにすることが可能になる。また、ロアベルトラインシールリップが仕切壁部の切欠部に嵌まることで、昇降時のウインドガラスとの摺動抵抗がより一層小さくなる
【0020】
の発明は、第1からのいずれか1つに発明において、
上記縦辺部は、上記ウインドガラスを挟むように配置される車室内側壁部及び車室外側壁部を有し、
上記車室内側壁部における車室外面に上記縦辺部シールリップが形成され、
上記車室内側壁部と上記縦辺部シールリップとは、該車室内側壁部から該縦辺部シールリップまで延びる接続壁部により接続され、
上記接続壁部は、上記縦辺部シールリップの基端部から先端部まで延びていることを特徴とする。
【0021】
すなわち、縦辺部の車室内側壁部と縦辺部シールリップとの間が空洞になるので、ドアの本体の内部の音や空気が車室内側壁部と縦辺部シールリップとの間を通って上方へ向かい、乗員の側方において騒音の発生源となることが考えられるが、この発明では、車室内側壁部と縦辺部シールリップとを接続壁部により接続し、その接続壁部が縦辺部シールリップの基端部から先端部まで延びているので、車室内側壁部と縦辺部シールリップとの間を通って上方へ向かう音や空気を接続壁部で遮断することが可能になる。これにより、音や空気が乗員の側方にまで達しなくなるので、静粛性がより一層向上する。
【0022】
の発明は、第の発明において、
上記接続壁部の車両前後方向一側が他側に比べて下に位置し、かつ、該接続壁部の車室内外方向一側が他側に比べて下に位置するように傾斜していることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、接続壁部が前後方向に傾斜するとともに、車室内外方向にも傾斜した状態で配置されることになる。従って、閉状態にあるウインドガラスが縦辺部シールリップに接触して縦辺部シールリップが車室内側に弾性変形するときに、接続壁部が車室内側壁部と縦辺部シールリップとの間で突っ張るようになることはなく、小さい力で容易に変形し始める。よって、昇降時のウインドガラスとの摺動抵抗が小さくなる。
【発明の効果】
【0024】
第1の発明によれば、ベルトラインインナーシールの車両前後方向の端部をグラスランの縦辺部に一体成形したので、ドアの本体の内部の音や空気がグラスランとベルトラインインナーシールとの間から車室に入るのを抑制できる。また、グラスランの縦辺部シールリップと、ベルトラインインナーシールのアッパベルトラインシールリップ及びロアベルトラインシールリップとを連続させ、縦辺部におけるアッパベルトラインシールリップ及びロアベルトラインシールリップの間に仕切壁部を設け、自動車ドア用シール材とウインドガラスで囲まれた空間が縦辺部側とベルトラインインナーシール側とに仕切られるので、グラスランの縦辺部の内部を通ってベルトラインインナーシールの内部に達する音や空気の流れを遮断して静粛性を高めながら、昇降時のウインドガラスとの摺動によるシール材の耐摩耗性を向上させることができる。
【0025】
また、仕切壁部が下側へ行くほど自動車ドア用シール材の車室内方に位置しているので、ウインドガラスが上昇するときに該ウインドガラスの前側や後側の角部が仕切壁部に引っ掛かり難くなり、シール材の耐久性をより一層向上させることができる。
【0026】
第2の発明によれば、仕切壁部が縦辺部シールリップに連続しているので、静粛性をより一層向上させることができる。
【0027】
第3の発明によれば、ウインドガラスが開状態にあるときにロアベルトラインシールリップと仕切壁部との間に所定の隙間を形成する一方、ウインドガラスを閉状態にしたときにロアベルトラインシールリップを仕切壁部に接触させて自動車ドア用シール材の内部を縦辺部側とベルトラインインナーシール側とに仕切ることができるので、静粛性を高めながら、シール材の耐摩耗性を向上させることができる。
【0028】
の発明によれば、閉状態にあるウインドガラスに接触して弾性変形したロアベルトラインシールリップが仕切壁部の切欠部に嵌まるようになっているので、静粛性及びシール材の耐摩耗性をより一層向上させることができる
【0029】
の発明によれば、縦辺部の車室内側壁部と縦辺部シールリップと接続壁部により接続し、その接続壁部が縦辺部シールリップの基端部から先端部まで延びているので、車室内側壁部と縦辺部シールリップとの間を通って上方へ向かう音や空気を接続壁部で遮断することができ、静粛性をより一層向上させることができる。
【0030】
の発明によれば、接続壁部が車両前後方向及び車室内外方向に傾斜しているので、閉状態にあるウインドガラスが縦辺部シールリップに接触して縦辺部シールリップが車室内側に弾性変形するときに、接続壁部が小さい力で容易に変形する。よって、昇降時のウインドガラスとの摺動抵抗を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】実施形態に係る自動車ドア用シール材を備えた自動車の左側面図である。
図2】フロントドアに配設される自動車ドア用シール材を車室外側から見た側面図である。
図3】リヤドアに配設される自動車ドア用シール材を車室外側から見た側面図である。
図4図2におけるIV−IV線に相当する断面図であり、ウインドフレームに組み付けられている状態を示す。
図5図2におけるV−V線に相当する断面図であり、フロントドアに組み付けられている状態を示す。
図6図2におけるA部拡大図であり、グラスラン後側縦辺部の車室外側を省略した図である。
図7図2におけるA部を車室外側の斜め前方、かつ、上方から見た斜視図であり、グラスラン後側縦辺部の車室外側を省略した図である。
図8図2におけるA部を車室外側の斜め前方、かつ、下方から見た斜視図であり、グラスラン後側縦辺部の車室外側を省略した図である。
図9】ウインドガラスが開状態にある場合の図6におけるIX−IX線断面図である。
図10】ウインドガラスが閉状態にある場合の図9相当図である。
図11】第2実施形態に係る図9相当図である。
図12】第2実施形態に係る図10相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。尚、この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」というものとする。
【0033】
(実施形態1)
(自動車ドアの概略構造)
図1は、本発明の実施形態1に係る自動車ドア用シール材を備えた自動車100の左側面図である。この自動車100には、フロントドア101とリヤドア102とが設けられている。フロントドア101及びリヤドア102は、車体の側部に形成されている開口部(図示せず)をそれぞれ開閉するためのものであり、上下方向に延びる軸周りに回動するようになっている。フロントドア101は、該フロントドア101の略下半部を構成する中空状のドア本体104と、略上半部を構成するウインドフレーム105とを有しており、このフロントドア101には、ウインドガラスGが昇降可能に設けられている。ドア本体104の内部には、ウインドガラスGを昇降動作させるためのウインドレギュレータ(図示せず)が収容されている。また、ウインドガラスGは、下降した状態で開状態となり、ドア本体104の内部に収容される。
【0034】
リヤドア102も中空状のドア本体114とウインドフレーム115とを有している。ウインドガラスGは昇降可能となっている。
【0035】
尚、本実施形態では、自動車の前側に設けられるフロントドア101に本発明を適用する場合について説明するが、リヤドア102に本発明を適用することもでき、また、図示しないスライドドアに本発明を適用することもできる。つまり、昇降動作するウインドガラスを有するドアであれば本発明を適用することができ、実施形態に記載されたものに限定されない。
【0036】
ウインドフレーム105は、ウインドガラスGの外周部を支持するサッシュとして機能する枠状のものである。この実施形態のウインドフレーム105は、図4に示すように鋼板等をプレス成形してなるチャンネル部材107と、パネル材108とを少なくとも組み合わせて構成されたものである。尚、ウインドフレーム105は、例えばロール成形法によって構成されたものであってもよい。
【0037】
図1に示すように、ウインドフレーム105は、前側サッシュ縦辺部105aと、後側サッシュ縦辺部105bと、サッシュ上辺部105cとを有している。前側サッシュ縦辺部105aは、フロントドア101の前部において上下方向に延びており、その断面は後側に開放されている。後側サッシュ縦辺部105bは、フロントドア101の後部において上下方向に延びており、その断面は前側に開放されている。前側サッシュ縦辺部105a及び後側サッシュ縦辺部105bの下部はドア本体104の内部に達しており、ウインドガラスGを下降させた際にドア本体104の内部まで案内することができるようになっている。また、サッシュ上辺部105cは、前側サッシュ縦辺部105aの上端部から後側サッシュ縦辺部105bの上端部まで延びるとともに下側に開放されており、ウインドフレーム105の形状及び自動車100のルーフ形状に対応して後側へ行くほど上に位置するように傾斜している。
【0038】
ウインドガラスGは、全閉状態にあるときには、該ウインドガラスGの上部がサッシュ上辺部105cに挿入されて自動車ドア用シール材1を介してサッシュ上辺部105cに支持され、また、ウインドガラスGの前部及び後部がそれぞれ前側サッシュ縦辺部105a及び後側サッシュ縦辺部105bに挿入されて自動車ドア用シール材1を介して前側サッシュ縦辺部105a及び後側サッシュ縦辺部105bに支持される。
【0039】
また、ドア本体104の上部がベルトライン部109であり、前後方向に延びている。このベルトライン部109は乗員の側方に配置される。
【0040】
(自動車ドア用シール材の構造)
フロントドア101に設けられる自動車ドア用シール材1は図2に示すように構成されている。すなわち、ウインドフレーム105に組み付けられるグラスラン10と、ドア本体104のベルトライン部109の車室内側に設けられ、前後方向に延びるベルトラインインナーシール30とを備えており、グラスラン10とベルトラインインナーシール30とは一体成形されている。
【0041】
グラスラン10は、その大部分がチャンネル部材107の内部に収容された状態で該チャンネル部材107に組み付けられる。つまり、グラスラン1は、チャンネル部材107を介してウインドフレーム105に組み付けられることになる。グラスラン10は、全体としてウインドフレーム105の前側サッシュ縦辺部105aからサッシュ上辺部105cを経て後側サッシュ縦辺部105bに達するように、前側サッシュ縦辺部105a、サッシュ上辺部105c、後側サッシュ縦辺部105bに沿って延びるように形成されている。グラスラン1における前側サッシュ縦辺部105aに沿って延びる部分、サッシュ上辺部105cに沿って延びる部分、後側サッシュ縦辺部105bに沿って延びる部分が、それぞれの境界部分を除いて、押出成形された押出成形部とされる一方、前側サッシュ縦辺部105aに沿って延びる部分とサッシュ上辺部105cに沿って延びる部分との境界部分であるC部と、サッシュ上辺部105cに沿って延びる部分と後側サッシュ縦辺部105bに沿って延びる部分との境界部分であるD部とが金型で成形された型成形部とされている。グラスラン10は、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等の熱可塑性エラストマーや、ゴム等の弾性材からなり、弾性材を一体成形することによって得られたものである。尚、グラスラン10は、発泡材であってもよいし、非発泡のソリッド材であってもよい。
【0042】
グラスラン10のサッシュ上辺部105cに沿って延びるグラスラン上辺部11と、前側サッシュ縦辺部105aに沿って延びるグラスラン前側縦辺部12と、後側サッシュ縦辺部105bに沿って延びるグラスラン後側縦辺部13との基本的な断面形状は類似であることから、以下、グラスラン後側縦辺部13について詳しく説明する。
【0043】
図4に示すように、グラスラン10のグラスラン後側縦辺部13は、底壁部20と、車室外側壁部21と、車室内側壁部22とを有している。底壁部20は、ウインドフレーム105が有するフレーム底壁部107aに沿って車室内外方向に延びている。グラスラン10の底壁部20の車室内外方向の寸法は、フレーム底壁部107aの車室内外方向の寸法よりも短く設定されている。
【0044】
グラスラン1の車室外側壁部21は、底壁部20の車室外側の端部からウインドフレーム105が有するフレーム外側壁部107bに沿って前後方向に延びている。車室外側壁部21の車室外面には、外側凸部21aが形成されている。また、車室外側壁部21の前端部には、後方へ延びる車外側第1シールリップ21bと、前方へ延びる車外側第2シールリップ21cとが設けられている。車外側第1シールリップ21b及び車外側第2シールリップ21cは、それぞれウインドガラスGの車室外面に弾接するようになっている。
【0045】
グラスラン1の車室内側壁部22は底壁部20の車室内側の端部からウインドフレーム105が有するフレーム内側壁部107cに沿って前後方向に延びている。これにより、グラスラン10は、ウインドフレーム105と同方向に開放するチャンネル形状をなす。車室外側壁部21と車室内側壁部22とは、ウインドガラスGの端部を車室内外に挟むように配置される。車室内側壁部22は、前側へ行くほど車室内側に位置するように傾斜している。
【0046】
車室内側壁部22の前後方向の寸法は、車室外側壁部21の前後方向の寸法よりも長く設定されおり、これにより、車室内側壁部22の前端部が車外側壁部22の前端部よりも前に位置することになる。また、車室内側壁部22の車室内面には、内側凸部22aが形成されている。内側凸部22aは、ウインドフレーム105が有する係合凹部107dに係合するようになっている。
【0047】
車室内側壁部22における底壁部20側とは反対側の端部(前端部)には、ウインドフレーム105のフレーム内側壁部107cの前端部及びパネル材108の車室内面を覆う内側意匠リップ23が形成されている。内側意匠リップ23は、車室内側壁部22の前端部から車室内側へ延びた後、後側へ延びるように形成されており、後端部はパネル材108の車室内側面に弾接するようになっている。
【0048】
車室内側壁部22の車室外面には、ウインドガラスGの車室内面に接触する車室内側シールリップ(縦辺部シールリップ)24が形成されている。車室内側シールリップ24は、車室内側壁部22の前部近傍から後方へ湾曲しながら延びるように形成されている。車室内側シールリップ24にウインドガラスGが接触すると、車室内側シールリップ24が車室内側へ向けて撓むように弾性変形してウインドガラスGの車室内面に密着し、これによりシール性が得られるようになっている。
【0049】
図5に示すベルトラインインナーシール30は、全体として、ベルトライン部109に沿って延びており、図2に示すように、ベルトラインインナーシール30の前端部がグラスラン10のグラスラン前側縦辺部12の上下方向中間部であるB部で一体型成形され、また、ベルトラインインナーシール30の後端部がグラスラン10のグラスラン後側縦辺部13の上下方向中間部であるA部で一体型成形されている。したがって、ベルトラインインナーシール30によってグラスラン前側縦辺部12とグラスラン後側縦辺部13とが連結されて枠状をなしている。図1に示すように、グラスラン前側縦辺部12及びグラスラン後側縦辺部13におけるベルトラインインナーシール30よりも下側部分は、ドア本体104のベルトライン部109よりも下方まで延びていて、グラスラン前側縦辺部12及びグラスラン後側縦辺部13の下端部はドア本体104の内部で開放されている。
【0050】
図5に示すように、ベルトラインインナーシール30は、ベルトライン部109よりも車室内側に位置する車室内側壁部31と、ベルトライン部109よりも車室外側に位置する車室外側壁部32と、上壁部33とを有している。車室内側壁部31及び車室外側壁部32は、共に上下方向に延びている。車室内側壁部31の下端部は、車室外側壁部32の下端部よりも下方に位置している。上壁部33は車室内側壁部31の上部と車室外側壁部32とに接続している。
【0051】
車室内側壁部31の下部と車室外側壁部32の下部との間は下方に開放されている。これにより、ベルトラインインナーシール30には、ベルトライン部109が挿入されるパネル挿入溝34が下方に開放するように形成されることになる。このパネル挿入溝34は、ベルトラインインナーシール30の前後方向(長手方向)両端部に亘って形成されている。
【0052】
車室内側壁部31の車室外面には、前後方向に延びる一対の内側係止リップ31a、31aが上下方向に間隔をあけて設けられている。また、車室外側壁部32の車室内面には、前後方向に延びる一対の外側係止リップ32a、32aが上下方向に間隔をあけて設けられている。車室内側壁部31と車室外側壁部32の間、即ちパネル挿入溝34に挿入されたベルトライン部109には、内側係止リップ31a、31a及び外側係止リップ32a、32aが弾接することによって係止するようになっている。
【0053】
また、車室内側壁部31の車室内面には、ドアトリム120の上部に設けられた取付部121に係合する上側係合部31bと下側係合部31cとが設けられている。ドアトリム120の取付部121は、上側係合部31b及び下側係合部31cによって上下方向に挟持されるようになっている。
【0054】
車室外側壁部32の車室外面には、前後方向に延びるアッパベルトラインシールリップ32bとロアベルトラインシールリップ32cとが車室外側へ突出するように設けられている。アッパベルトラインシールリップ32bとロアベルトラインシールリップ32cは、グラスラン10と同様な弾性材で構成されており、互いに上下方向に間隔をあけて設けられている。また、アッパベルトラインシールリップ32bとロアベルトラインシールリップ32cは、車室外側へ行くほど上に位置するように傾斜している。
【0055】
ウインドガラスGがアッパベルトラインシールリップ32b及びロアベルトラインシールリップ32cに接触すると、アッパベルトラインシールリップ32b及びロアベルトラインシールリップ32cが車室内側へ撓むように弾性変形してウインドガラスGの車室内面に密着する。これにより、シール性が確保される。また、車室外側壁部32、ウインドガラスG、アッパベルトラインシールリップ32b、ロアベルトラインシールリップ32cの4部材により囲まれた閉鎖空間Sが構成される。
【0056】
尚、図示しないが、ベルトラインインナーシール30は芯材を備えていてもよい。芯材は、例えばコ字状の断面を有しており、ベルトラインインナーシール30の車室内側壁部31、上壁部33及び車室外側壁部32に埋め込むことができる。芯材を構成する硬質材としては、例えばアルミニウム合金、鋼材、ステンレス鋼、硬質樹脂(例えばタルクやガラス繊維を混合した樹脂)等を使用することができる。
【0057】
更に、図示は省略するが、ベルトラインインナーシール30は、2本のシールリップを有していればよく、図5に示した断面形状のものに限定されない。例えば特許第3746866号公報の図4(b)や、特許第3357830号公報の図5に示されているような断面形状でもよい。
【0058】
図6に示すように、グラスラン後側縦辺部13の車室内側シールリップ24には、アッパベルトラインシールリップ32b及びロアベルトラインシールリップ32cの後端部が連続している。また、後端部と同様に、アッパベルトラインシールリップ32b及びロアベルトラインシールリップ32cの前端部は、グラスラン前側縦辺部12の車室内側シールリップ(図示せず)に連続している。
【0059】
具体的には、図7に示すように、グラスラン後側縦辺部13の車室内側シールリップ24は基本的には上下方向に延びているが、この車室内側シールリップ24におけるベルトライン部109付近に対応する部分は一部のみ非連続とされていて車室内側シールリップ24が途切れた状態となっている。車室内側シールリップ24は、その途切れた部分よりも上側の上側車室内側シールリップ24Aと、途切れた部分よりも下側の下側車室内側シールリップ24Bとに分割される。上側車室内側シールリップ24Aの下端部付近と、アッパベルトラインシールリップ32bの後端部とが連続している。また、下側車室内側シールリップ24Bの上端部付近と、ロアベルトラインシールリップ32cの後端部とが連続している。
【0060】
グラスラン後側縦辺部13の車室内側壁部22におけるアッパベルトラインシールリップ32b及びロアベルトラインシールリップ32cの間には、車室外側へ突出して上下方向に延びる仕切壁部25が設けられている。仕切壁部25は、自動車ドア用シール材1とウインドガラスGで囲まれた空間をグラスラン後側縦辺部13側とベルトラインインナーシール30側とに仕切るためのものである。図9に示すように、仕切壁部25の上部は上側車室内側シールリップ24Aに接続し、仕切壁部25の下部は下側車室内側シールリップ24Bに連続しており、上側車室内側シールリップ24A及び下側車室内側シールリップ24Bが仕切壁部25により連結されている。
【0061】
また、図7に示すように、仕切壁部25は、下側へ行くほど自動車ドア用シール材1の車両前後方向の内方に位置するように形成されている。つまり、グラスラン後側縦辺部13の仕切壁部25の車室外側の縁部25aは、下側へ行くほど前に位置するとともに、車室内側に傾斜または湾曲しながら延びている。これにより、仕切壁部25は、下側へ行くにつれて上側車室内側シールリップ24Aよりも徐々に長さが短くなるとともに、仕切壁部25の下側が、ウインドガラスGの後側の角部から前方に外れたところに位置付けられる。従って、図9に示すようにウインドガラスGが仕切壁部25よりも下まで下降した状態から図10に示すような状態まで上昇するときに、該ウインドガラスGの後側の上端角部が仕切壁部25の下側に引っ掛かり難くなる。
【0062】
図7図8に示すように、仕切壁部25の車室外側の縁部25aは上下方向に延びており、この縁部25aの上下方向中間部から下側にかけて切欠部25bが形成されている。ウインドガラスGが上昇し、図10に示すような閉状態になると、アッパベルトラインシールリップ32bの型成形部分及びロアベルトラインシールリップ32cの型成形部分にウインドガラスGの車室内面が接触し、アッパベルトラインシールリップ32bの型成形部分及びロアベルトラインシールリップ32cの型成形部分が車室内側へ弾性変形することになるが、このとき、ロアベルトラインシールリップ32cの型成形部分の先端側が上記切欠部25bに嵌まるようになっている(図10参照)。
【0063】
また、図9に示すように、切欠部25bの深さT1は、ロアベルトラインシールリップ32cの型成形部分の先端側の厚みT2と略同程度に設定されており、図10に示すようにロアベルトラインシールリップ32cの型成形部分の先端側が切欠部25bに嵌まった状態で、ロアベルトラインシールリップ32cの型成形部分の先端側の車室外面と、仕切壁部25の縁部25aにおける切欠部25bよりも上側部分とが略同一面上に位置するようになっている。また、ウインドガラスGが閉状態になると、下側車室内側シールリップ24BもウインドガラスGの車室内面に押されて車室内側へ弾性変形し、この弾性変形した下側車室内側シールリップ24Bの車室内面が仕切壁部25の縁部25aにおける切欠部25bよりも下側部分に接触する。
【0064】
したがって、上側車室内側シールリップ24A及び下側車室内側シールリップ24Bが仕切壁部25により連結されていることと、図10に示すように閉状態のウインドガラスGによってロアベルトラインシールリップ32cの先端側が切欠部25bに嵌まって切欠部25bの周縁部に接触した状態になることと、下側車室内側シールリップ24Bの車室内面が仕切壁部25の縁部25aにおける切欠部25bよりも下側部分に接触することとにより、自動車ドア用シール材1とウインドガラスGで囲まれた空間がグラスラン後側縦辺部13側の空間Rとベルトラインインナーシール30側の空間Sとに仕切られる。これにより、下側車室内側シールリップ24Bと車室内側壁部22との間の空間R(図4図7図9及び図10に示す)と、ロアベルトラインシールリップ32cと車室外側壁部32との間の空間S(図5図7に示す)との連通状態が遮断される。
【0065】
一方、図9に示すように、ウインドガラスGが開状態にある場合には、ウインドガラスGがロアベルトラインシールリップ32cの型成形部分から離れる。このときにロアベルトラインシールリップ32cの型成形部分は元の形状に復元して仕切壁部25から離れて仕切壁部25との間に所定の隙間U1が形成される。また、閉状態のウインドガラスGによって押されたロアベルトラインシールリップ32cを車室内側へ逃がすための空間(スペース)は、切欠部25bを形成することによって確保されている。切欠部25bの深さT1が深すぎると閉状態のウインドガラスGによって押されたロアベルトラインシールリップ32cの型成形部分を該ウインドガラスGにしっかりと密着させることができなくなってシール性が悪化する一方、切欠部25bの深さT1が浅すぎると閉状態のウインドガラスGによって押されたロアベルトラインシールリップ32cの型成形部分の逃げが十分でなくなってウインドガラスGとロアベルトラインシールリップ32cの型成形部分との摺動抵抗が大きくなり過ぎる。よって、ロアベルトラインシールリップ32cの型成形部分をウインドガラスGに十分に密着させつつ、ウインドガラスGとロアベルトラインシールリップ32cの型成形部分との摺動抵抗の増大を回避できるように、切欠部25bの深さT1を所定深さとする。切欠部25bの深さT1とロアベルトラインシールリップ32cの型成形部分の先端側の厚みT2とを略同程度に設定する。
【0066】
また、図8に示すように、グラスラン後側縦辺部13には、車内側壁部22と下側車室内側シールリップ24Bとを接続する接続壁部26が設けられている。接続壁部26は、車室内側壁部22から下側車室内側シールリップ24Bまで延びるとともに、下側車室内側シールリップ24Bの基端部から先端部まで延びている。これにより、下側車室内側シールリップ24Bと車室内側壁部22との間の空間R(図9及び図10に示す)は、接続壁部26により上下に2つに区切られることになる。図6に破線で示すように接続壁部26は後側が前側よりも下に位置するように傾斜するとともに、図8に示すように車室内側が車室外側よりも下に位置するように傾斜している。
【0067】
また、図8に示すように、グラスラン後側縦辺部13の車内側壁部22の車室外面には、凹部28が設けられている。凹部28は、アッパベルトラインシールリップ32bの後端部と上側車室内側シールリップ24Aの下端部との接続部分と対向するように配置されている。アッパベルトラインシールリップ32b及び上側車室内側シールリップ24AがウインドガラスGによって車室内側へ押されて変形した際に、アッパベルトラインシールリップ32bの後端部及び上側車室内側シールリップ24Aの下端部の接続部分の厚肉部が凹部28に入ることができるようになっており、これにより、アッパベルトラインシールリップ32b及び上側車室内側シールリップ24Aが容易に弾性変形可能になる。
【0068】
尚、自動車ドア用シール材1のグラスラン前側縦辺部12は、後側に開放する断面形状である点でグラスラン後側縦辺部13と異なっているが、基本的な構成はグラスラン後側縦辺部13と同様である。そして、ベルトラインインナーシール30の前端部とグラスラン前側縦辺部12は一体成形されており、ベルトラインインナーシール30の後端部とグラスラン後側縦辺部13との接続部分と同様な構造となっており、図示しないが仕切壁部及び接続壁部を備えている。
【0069】
また、自動車ドア用シール材1は、型成形部と押出成形部とで構成されている。型成形部は、図7に示す境界線L1、L2、L3、L4(L4は図8にも示す)で囲まれた範囲であり、グラスラン後側縦辺部13における境界線L1、L2、L3で囲まれた範囲外は押出成形部であり、ベルトラインインナーシール30の境界線L4よりも前側は押出成形部である。
【0070】
さらに、図1及び図3に示すように、リヤドア102に設けられる自動車ドア用シール材50については、基本的な構成はフロントドア101に設けられる自動車ドア用シール材1と同様であるが、リヤドア102の形状に合わせて形状変更されている。すなわち、自動車ドア用シール材50は、グラスラン51とベルトラインインナーシール55とを備えており、グラスラン51は、グラスラン上辺部52と、グラスラン前側縦辺部53と、グラスラン後側縦辺部54とで構成されている。そして、ベルトラインインナーシール55の前端部とグラスラン前側縦辺部53との接続部分には、図示しないが仕切壁部及び接続壁部が設けられており、また、ベルトラインインナーシール55の後端部とグラスラン後側縦辺部54との接続部分にも図示しないが仕切壁部及び接続壁部が設けられている。
【0071】
(実施形態の作用効果)
以下、フロントドア101に設けられる自動車ドア用シール材1のグラスラン後側縦辺部13及びベルトラインインナーシール30による作用効果について説明するが、グラスラン前側縦辺部12及びベルトラインインナーシール30による作用効果、及びリヤドア102に設けられる自動車ドア用シール材50による作用効果も同様である。
【0072】
ウインドガラスGが開状態にあるときには、図9に示すようにウインドガラスGの上縁部がロアベルトラインシールリップ32cの型成形部分よりも下に位置している。このとき、ロアベルトラインシールリップ32cの型成形部分と仕切壁部25との間に所定の隙間Tが形成されており、下側車室内側シールリップ24Bと車室内側壁部22との間の空間R(図9及び図10に示す)と、ロアベルトラインシールリップ32cの型成形部分と車室外側壁部32との間の空間S(図5に示す)とが連通状態にある。
【0073】
ウインドガラスGを閉状態にする際には、ウインドガラスGが図9に示す位置から上昇し、ウインドガラスGの車室内面が下側車室内側シールリップ24Bの車室外面を摺動していく。このとき、下側車室内側シールリップ24Bの車室内側には接続壁部26が設けられており、この接続壁部26が下側車室内側シールリップ24Bと車室内側壁部22との間で突っ張るようになることが考えられるが、この実施形態では、図6に示すように、接続壁部26が前後方向に傾斜するとともに、図8に示すように、車室内外方向にも傾斜した状態で配置されているので、ウインドガラスGが下側車室内側シールリップ24Bに接触して下側車室内側シールリップ24Bが車室内側に弾性変形するときに、接続壁部26が車室内側壁部22と下側車室内側シールリップ24Bとの間で突き当たるようになることはなく、比較的小さい力で容易に撓み変形し始める。よって、昇降時のウインドガラスGとの摺動抵抗が極端に増大することはない。
【0074】
そして、ウインドガラスGが更に上昇してロアベルトラインシールリップ32cに達する。このとき、グラスラン後側縦辺部13には仕切壁部25が設けられており、この仕切壁部25の車室外側の縁部25aは、下側へ行くほど前に位置するとともに車室内側に傾斜または湾曲しながら延びているので、仕切壁部25の下側が、ウインドガラスGの後側の角部から前方へ離れたところに位置付けられることになり、従って、上昇中のウインドガラスGの後側の上端角部が仕切壁部25の下側に引っ掛かり難くなる。これにより、自動車ドア用シール材1の耐ガラス摩耗性を向上させることができる。
【0075】
ウインドガラスGが更に上昇すると、ウインドガラスGによって押されたロアベルトラインシールリップ32cが車室内側へ弾性変形し、ロアベルトラインシールリップ32cの先端側が切欠部25bに嵌まる。これにより、ロアベルトラインシールリップ32cの先端側が車室内側へ逃げることができるので、ウインドガラスGの摺動抵抗の極端な増大が回避される。また、ロアベルトラインシールリップ32cの先端側が切欠部25bに嵌まって切欠部25bの周縁部に接触した状態になるとともに、下側車室内側シールリップ24Bの車室内面が仕切壁部25の縁部25aにおける切欠部25bよりも下側部分に接触し、これにより、下側車室内側シールリップ24Bと車室内側壁部22との間の空間R(図9及び図10に示す)と、ロアベルトラインシールリップ32cと車室外側壁部32との間の空間S(図5に示す)との連通状態が遮断される。
【0076】
したがって、フロントドア101のドア本体104の内部の音や空気がグラスラン後側縦辺部13の空間Rを通って上方へ向った場合に、その音や空気が仕切壁部25に当たることで、ベルトラインインナーシール30の内部へ向かうことはない。また、グラスラン10のグラスラン後側縦辺部13とベルトラインインナーシール30とが一体成形されているので、グラスラン後側縦辺部13とベルトラインインナーシール30との間に隙間が無くなる。これにより、ドア本体104の内部の音や空気がグラスラン10とベルトラインインナーシール30との隙間から車室に入り難くなる。さらに、グラスラン後側縦辺部13の車室内側壁部22と下側車室内側シールリップ24Bとの間を通って上方へ向かう音や空気を接続壁部26で遮断することができる。これにより、音や空気が乗員の側方の耳位置付近にまで達することを抑制できる。
【0077】
以上説明したように、この実施形態1によれば、車室内の静粛性を高めながら、昇降時のウインドガラスGとの摺動による自動車ドア用シール材1の耐ガラス摩耗性を向上させることができる。
【0078】
(実施形態2)
図11及び図12は、本発明の実施形態2に係るものである。この実施形態2は、実施形態1のものに対し、仕切壁部27が下側の下側車室内側シールリップ24Bに一体成形されている点で異なっており、他の部分は実施形態1と同様に構成されていることから、以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0079】
すなわち、仕切壁部27は、下側車室内側シールリップ24Bにおける車室内面と一体化しており、下側車室内側シールリップ24Bの変位に従って変位するようになっている。図11に示すように、ウインドガラスGが開状態にあるときには、仕切壁部27における車室内側の縁部27aが車室内側壁部22から車室外側へ離れており、また、仕切壁部27における上縁部27bは上側車室内側シールリップ24Aから下方へ離れている。よって、仕切壁部27における上縁部27bと上側車室内側シールリップ24Aとの間には、隙間U2が形成される。
【0080】
一方、図12に示すように、ウインドガラスGが閉状態にあるときには、下側車室内側シールリップ24BがウインドガラスGの内面により車室内側に押されて弾性変形し、仕切壁部27における車室内側の縁部27aが車室内側壁部22に接し、また、仕切壁部27における上縁部27bが上側車室内側シールリップ24Aに接する。これにより、仕切壁部27が、自動車ドア用シール材1とウインドガラスGで囲まれた空間をグラスラン後側縦辺部13側とベルトラインインナーシール30側とに仕切るので、実施形態1と同様な作用効果を奏することができる。
【0081】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上説明したように、本発明に係る自動車ドア用シール材は、例えば自動車のフロントドアやリヤドアに配設することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 自動車ドア用シール材
10 グラスラン
13 グラスラン後側縦辺部
21 車室外側壁部
22 車室内側壁部
24 車室内側シールリップ(縦辺部シールリップ)
25 仕切壁部
25b 切欠部
26 接続壁部
30 ベルトラインインナーシール
32b アッパベルトラインシールリップ
32c ロアベルトラインシールリップ
101 フロントドア
104 ドア本体
G ウインドガラス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12