(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本件出願に係る発明はアロエ含有発酵乳の製造方法、アロエ含有発酵乳、及びアロエ含有発酵乳のアロエ由来臭気のマスキング方法である。
「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(以下、「乳等省令」という。)において、発酵乳とは「乳又はこれと同等以上の無脂乳固形分を含む乳等を乳酸菌又は酵母で発酵させ、糊状又は液状にしたもの又はこれらを凍結したもの」と定義されている。その成分規格は「無脂乳固形分8%以上、乳酸菌数又は酵母数(1ml当たり)1,000万以上、大腸菌群陰性」とされている。なお、本明細書において乳酸菌数又はビフィズス菌数の単位は、CFU(colony forming unit;コロニー形成単位)で表される。
また、乳等省令において乳製品乳酸菌飲料とは「乳等を乳酸菌又は酵母で発酵させたものを加工し、又は主要原料とした飲料(発酵乳を除く。)」と定義されている。その成分規格は「無脂乳固形分3%以上、乳酸菌数又は酵母数(1ml当たり)1,000万以上、大腸菌群陰性」とされている。
乳等省令において乳等を主要原料とする食品の乳酸菌飲料とは「乳等を乳酸菌又は酵母で発酵させたものを加工し、又は主要原料とした飲料(発酵乳を除く。)」と定義されている。その成分規格は「無脂乳固形分3%未満、乳酸菌数又は酵母数(1ml当たり)1,000万以上、大腸菌群陰性」とされている。
本明細書において「発酵乳」とは、固形状、糊状、液状のいずれの形状であってもよく、上記乳等省令の発酵乳の定義に加えて、乳等省令に定義された乳製品乳酸菌飲料、乳等を主要原料とする食品の乳酸菌飲料のいずれも含む。
本明細書において「アロエ由来臭気のマスキング」とは、ビフィズス菌を含む発酵乳ベースと乾燥アロエ葉肉とを含有するアロエ含有発酵乳において、発酵前にビフィズス菌が添加されることにより、アロエ含有発酵乳に含有している乾燥アロエ葉肉の含有量が半分以下に低減された時のアロエ由来臭気に相当する程度にまでアロエ由来臭気が低減されたことを意味するものである。
なお、本明細書において「市販品のアロエ入り発酵乳」、「従来のアロエ入り発酵乳」とは、発酵乳中にサイコロ状にカットされたアロエ葉肉を含有している発酵乳を表すものである。
【0018】
1.アロエ含有発酵乳の製造方法
以下、本発明のアロエ含有発酵乳の製造方法について詳細に説明する。本発明のアロエ含有発酵乳の製造方法は、少なくとも、発酵乳ベース調製工程と、分散液調製工程と、混合工程との3つの工程を有する。このうち、発酵乳ベース調製工程及び分散液調製工程については同時に行ってもよいし、どちらの工程を先に行ってもよい。混合工程については、発酵乳ベース調製工程と分散液調製工程とを行った後に行う。また、これら3つの工程以外の工程(添加剤を加える工程等)を有してもよい。
【0019】
<発酵乳ベース調製工程>
発酵乳ベース調製工程とはビフィドバクテリウム属細菌と乳酸菌スターターとを含む発酵乳原料を発酵させて発酵乳ベースを得る工程である。
【0020】
発酵乳原料とは、乳由来の原料を加熱処理したものにビフィドバクテリウム属細菌と乳酸菌スターターとを添加して得られる発酵乳の製造に用いられる原料である。
前記の乳由来の原料は、発酵乳の製造に通常用いられる乳又は乳製品であれば特に限定なく用いることができる。例えば、牛乳、水牛乳、羊乳、山羊乳、馬乳、脱脂乳、脱脂濃縮乳、脱脂粉乳、濃縮乳、全脂粉乳、クリーム、バター、バターミルク、練乳、乳蛋白等がある。これらは1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
乳由来の原料には必要に応じて水、甘味料、安定剤、脂肪等の発酵乳の製造において通常用いられる成分を含んでもよい。水は食品製造に通常用いられるものを用いる。甘味料としては砂糖、オリゴ糖、ブドウ糖等を特に限定なく用いることができる。
【0021】
乳由来の原料を加熱処理する前に均質化処理を行ってもよい。均質化処理は例えばホモジナイザーを用いて10〜15MPa程度の均質圧で行うことができる。
加熱処理は発酵乳の製造で通常行われている加熱処理を行うことができ、その処理条件は85〜95℃、加熱時間は5〜15分間とすることができる。加熱処理は、例えば、プレート式殺菌機、チューブラー式殺菌機、直接加熱式殺菌機、ジャケット付きタンク等の加熱殺菌装置を用いて行うことができる。加熱処理後、続く発酵処理に用い易いように発酵温度付近(37〜40℃)まで冷却することが好ましい。
【0022】
次に、加熱処理した乳由来の原料にビフィドバクテリウム属細菌と乳酸菌スターターとを添加(接種)して発酵乳原料とする。
【0023】
ビフィドバクテリウム属細菌としては、発酵乳の製造に通常用いられるものであれば特に限定なく用いることができる。例えば、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(B.breve)種、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(B.bifidum)種、ビフィドバクテリウム・インファンティス(B.longum subsp. infantis)種、ビフィドバクテリウム・ロンガム(B.longum subsp. longum)種等のビフィドバクテリウム属細菌が例示される。なかでも、ビフィドバクテリウム・ロンガム種を用いることが好ましい。なお、ビフィドバクテリウム属細菌は、1種のみ用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
乳酸菌スターターとしては、発酵乳の製造に通常用いられているものであれば特に限定なく用いることができる。例えば、ラクトバチルス・ブルガリクス(L.delbrueckii subsp. bulgaricus)種、ラクトコッカス・ラクチス(L.lactis)種、スプレストコッカス・サーモフィラス(S.thermophilus)種等の乳酸菌が例示される。なお、乳酸菌スターターは、1種のみ用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
ビフィドバクテリウム属細菌は得られる発酵乳ベース中に0.5×10
8〜10×10
8CFU/mlとなるよう添加することが好ましく、1×10
8〜10×10
8CFU/mlとなるように添加することがより好ましい。前記ビフィドバクテリウム属細菌数の範囲内では、最終的に得られるアロエ含有発酵乳においてアロエ由来臭気が良好にマスキングされるため好ましい。ビフィドバクテリウム属細菌の生菌数の測定方法は、TOSプロピオン酸寒天平板培地(ヤクルト薬品工業社製)を用い、嫌気条件下で混釈培養を37℃で72時間行い、ビフィドバクテリウム属細菌のコロニー数を計測することによって実施できる。
【0026】
乳酸菌スターターは、得られる発酵乳ベース中に1×10
5〜1×10
10CFU/mlとなるよう添加することが好ましい。発酵乳に含まれる乳酸菌数(生菌数)の測定方法は、乳等省令の別表に規定されていて、BCP(brom−cresol purple)を含んだ標準寒天培地(plate count agar)で通常の混釈培養を35〜37℃で72時間行い、黄変するコロニー数を計測することによって実施できる。
【0027】
次に発酵乳原料を発酵させて発酵乳ベースを得る。
発酵乳原料の発酵は、ビフィドバクテリウム属細菌と選定した乳酸菌スターターとの両者に満たされる発酵条件で行うことが好ましい。前記で例示された乳酸菌スターターを用いる場合の発酵温度は、37〜40℃が好ましい。発酵時間は、発酵物のpHが4.4〜4.8に到達するまでの時間を設定することが好ましい。こうして得られた発酵乳ベースは、10℃付近まで冷却され、混合工程に用いられる。なお、得られた発酵乳ベースはホモジナイザーで破砕する等、公知の手法により破砕してもよい。
【0028】
<分散液調製工程>
分散液調製工程とは、アロエ葉肉を乾燥させて得られる乾燥アロエ葉肉と水とを混合してアロエ葉肉分散液を得る工程である。
【0029】
「アロエ葉肉」とは、アロエの可食部であり、ユリ科アロエ属に属する植物の葉肉である。「乾燥アロエ葉肉」とは、アロエ葉肉の乾燥物であり、粉末状のものを含むものである。乾燥アロエ葉肉は市販品を用いてもよいし、アロエの葉から製造してもよい。市販品としては例えば森永乳業社製の森永アロエベラゲル粉末AVGP010を用いることができる。
【0030】
乾燥アロエ葉肉(水分量8質量%含む)と水とを混合してアロエ葉肉分散液を得る。なお、アロエ葉肉分散液中の乾燥アロエ葉肉の含有量は、0.4〜10質量%であることが好ましく、1〜8質量%がより好ましく、2〜5質量%が特に好ましい。前記アロエ葉肉分散液中の乾燥アロエ葉肉の含有量の範囲である場合、その後に続く混合工程において発酵乳ベースとアロエ葉肉分散液とを混合する際、撹拌・分散が良好である。
乾燥アロエ葉肉と水とを混合して得られるアロエ葉肉分散液は、アロエ葉肉が十分に分散するように撹拌して調製することができる。また、アロエ葉肉分散液には必要に応じてアロエ葉肉の分散性を高めるような分散性向上剤、乳化剤、粘度調整剤等の添加物を含んでもよい。このように調製されたアロエ葉肉分散液は、続く混合工程に用いられる。
【0031】
アロエの葉から乾燥アロエ葉肉を製造する場合は、例えば国際公開第2011/096122号に記載されたアロエパウダーの製造方法を参考にすることが可能である。例えば以下の方法により製造された乾燥アロエ葉肉を本発明の分散液調製工程に用いることができる。
【0032】
≪乾燥アロエ葉肉の製造方法≫
乾燥アロエ葉肉の原料に用いられるアロエとしては、例えば、アロエベラ(Aloe barbadensis Miller)、キダチアロエ(Aloe arborescen Miller var. natalensis Berger)、ケープアロエ(Aloe ferox Miller)等が挙げられる。中でも、アロエベラ及びキダチアロエを用いることが好ましい。
アロエの葉は主に、表皮部分である厚いクチクラ層、表皮の内側の緑色組織細胞と柔組織細胞とからなる葉肉(透明な粘液様のゼリー)、およびクチクラ層と葉肉の間に含まれる緩下性の黄色い液汁から構成されている。本発明における「乾燥アロエ葉肉」とは、前記の葉肉部分の乾燥物をいう。
【0033】
乾燥アロエ葉肉は、常法により調製できる。例えば、以下(i)、(ii)の工程を経て調製することができる。
(i)アロエ葉肉を回収する工程
アロエの葉から葉皮を剥き取り、さらに黄色液汁を洗浄し、除去してアロエ葉肉を分取する。
(ii)乾燥アロエ葉肉を調製する工程
(i)で分取したアロエ葉肉を乾燥し、水分を除去して乾燥アロエ葉肉を調製する。アロエ葉肉の乾燥方法として、熱風乾燥機や凍結乾燥機(例えば、共和真空社製)を用いて乾燥することができるが、特に限定されない。水分が除去された乾燥アロエ葉肉は、粗い粉末状となる。
また、乾燥アロエ葉肉は市販されているアロエ葉肉を乾燥させることで調製することもできる。
【0034】
乾燥アロエ葉肉は、例えば気流式粉砕機で粉砕して粉末状のものとして得ることができる。気流式粉砕機には、流動層ジェット吹込み型(カウンタージェットミル、クロスジェットミルなど)、気流吸込み型(ジェットマイザー、マイクロナイザーなど)、ノズル内通過型(超音速ジェット粉砕機PJMなど)、衝突型(マジャックミル、I型ジェットミルなど)がある。
【0035】
前記工程によって調製される乾燥アロエ葉肉は、水分を8質量%程度含むものである。なお、当該乾燥アロエ葉肉1gは、原料アロエ葉から分取された状態のアロエ葉肉(前記(i)のアロエ葉肉)180gに相当する。
【0036】
<混合工程>
混合工程とは、最終的に得られるアロエ含有発酵乳に対して乾燥アロエ葉肉の含有量が0.2質量%以上となるように、前記発酵乳ベース調製工程で得られた発酵乳ベースと前記分散液調製工程で得られたアロエ葉肉分散液とを質量比が
発酵乳ベース:アロエ葉肉分散液=70:30〜95:5
で混合される工程である。
【0037】
「最終的に得られるアロエ含有発酵乳」とは混合工程を経て得られるアロエ含有発酵乳である。「最終的に得られるアロエ含有発酵乳に対して乾燥アロエ葉肉の含有量が0.2質量%以上となるよう混合される」とは、例えばアロエ含有発酵乳が1000g得られる場合、乾燥アロエ葉肉が2g以上含まれるように混合されるという意味である。乾燥アロエ葉肉の含有量は好ましくは0.3〜3質量%であり、さらに好ましくは0.5〜1質量%である。当該乾燥アロエ葉肉の含有量の範囲であると、従来の市販品のアロエ入り発酵乳より高濃度でアロエ葉肉に含まれる有用成分を含有するアロエ含有発酵乳を製造することができる。さらにアロエ由来臭気がマスキングされたおいしいアロエ含有発酵乳を製造することができる。
【0038】
発酵乳ベースとアロエ葉肉分散液とを混合する際は、最終的に得られるアロエ含有発酵乳に対する乾燥アロエ葉肉の含有量と、アロエ葉肉分散液中の乾燥アロエ葉肉の含有量とを考慮に入れて配合比を適宜選択することが好ましい。例えば発酵乳ベース:アロエ葉肉分散液の質量比は、70:30〜95:5の範囲とすることが好ましく、75:25〜90:10の範囲とすることがより好ましい。
【0039】
前記工程を経て調製されるアロエ含有発酵乳は、必要に応じて香料、甘味料、増粘剤、保存剤、分散性向上剤、乳化剤などの食品添加物を含んでもよい。さらに、果汁、果肉等を含んでもよい。
【0040】
本発明のアロエ含有発酵乳の製造方法によれば、従来の市販品のアロエ入り発酵乳より高濃度でアロエ葉肉に含まれる有用成分を含有しているにも関わらず、アロエ由来の臭気がマスキングされたおいしいアロエ含有発酵乳を製造することができる。
【0041】
製造されたアロエ含有発酵乳は、80〜500ml容程度、好ましくは80〜250ml容程度の容器に充填し、密閉する。また、容器入りの製品は、通常10℃以下、好ましくは5℃以下で保存する。
容器は、紙製、ガラス製、プラスチック製(例えばポリプロピレン製、ポリエチレンテレフタレート(PET)製、ポリスチレン製、ポリエチレン製)が好ましい。
【0042】
2.アロエ含有発酵乳
前記のとおり、本発明の製造方法によって得られる本発明のアロエ含有発酵乳は、乾燥アロエ葉肉とビフィドバクテリウム属細菌とを含むアロエ含有発酵乳であって、前記アロエ含有発酵乳に乾燥アロエ葉肉を0.2質量%以上含有し、及びビフィドバクテリウム属細菌を0.35×10
8〜9.5×10
8CFU/ml含有するアロエ含有発酵乳である。なお、アロエ含有発酵乳における乾燥アロエ葉肉の含有量は、0.5〜1質量%であることが好ましい。
【0043】
本発明のアロエ含有発酵乳によれば、従来の市販品のアロエ入り発酵乳より高濃度でアロエ葉肉に含まれる有用成分を含有しているにも関わらず、アロエ由来の臭気がマスキングされたおいしいアロエ含有発酵乳を提供することができる。
【0044】
3.アロエ含有発酵乳のアロエ由来臭気のマスキング方法
本発明におけるアロエ含有発酵乳のアロエ由来臭気のマスキング方法とは、ビフィドバクテリウム属細菌を含む発酵乳ベースと乾燥アロエ葉肉とを含有するアロエ含有発酵乳において、発酵前にビフィドバクテリウム属細菌が添加されることに基づく当該アロエ含有発酵乳のアロエ由来臭気のマスキング方法(以下、「本発明のマスキング方法」という)である。
【0045】
本発明のマスキング方法で規定される「アロエ含有発酵乳」とは、乾燥アロエ葉肉を含有する発酵乳であり、本発明のアロエ含有発酵乳の製造方法により得られるアロエ含有発酵乳に限定されるものではない。
当該アロエ含有発酵乳中には、乾燥アロエ葉肉換算で5質量%以下の範囲で乾燥アロエ葉肉を含有することができる。下限値については特に限定されず、乾燥アロエ葉肉が含有されていればよく、例えば乾燥アロエ葉肉換算で乾燥アロエ葉肉を0.01質量%以上含有することができる。アロエ含有発酵乳中のアロエ由来臭気を良好にマスキングするという点では、アロエ含有発酵乳に含まれる乾燥アロエ葉肉換算での乾燥アロエ葉肉の含有量は0.2〜3質量%が好ましく、0.5〜1質量%がより好ましい。
【0046】
本発明のマスキング方法でマスキングされるアロエ由来臭気とは、アロエ葉肉特有の青臭い臭気であり、具体的にはプロパナール、2−プロパノン、ブタナール、酢酸エチル、2−ブタノン、2−メチルブタナール、3−メチルブタナール、エタノール、ペンタナール、3−ヘキサノン、ヘキサナール、1−ペンテン−3−オール、2−ヘプタノン、ヘプタナール、d−リモネン、トランス−2−ヘキサナール、1−ペンタノール、1−オクタナール、酢酸メチル、1−オクテン−3−オン、酢酸オクチル、1−ノナナール、トランス−2−オクテナール、α−アンジェリカラクトン、酢酸、フルフラール、2,4−ヘプタジエナール、2−エチルヘキサノール、ベンズアルデヒド、プロピオン酸、イソブチル酸、5−メチル−2−フルフラール、酪酸、フルフリルアルコール、3−メチルブタン酸、γ−ヘキサラクトン、ナフタレン、ジメチルスルフォン等が挙げられる。
【0047】
ここで「アロエ由来臭気のマスキング」とは、ビフィズス菌を含む発酵乳ベースと乾燥アロエ葉肉とを含有するアロエ含有発酵乳において、発酵前にビフィズス菌が添加されることにより、アロエ含有発酵乳に含有している乾燥アロエ葉肉の含有量が半分以下に低減された時のアロエ由来臭気に相当する程度にまでアロエ由来臭気が低減されたことを意味するものである。
【0048】
本発明のマスキング方法におけるビフィドバクテリウム属細菌を含む発酵乳ベースとは、本発明のアロエ含有発酵乳の製造方法の発酵乳ベース調製工程で得られる発酵乳ベースが含まれるものである。すなわち、乳由来の原料を加熱処理し、当該加熱処理された原料に発酵前にビフィドバクテリウム属細菌を添加(接種)して、発酵乳原料を調製し、調製された発酵乳原料を発酵させてビフィドバクテリウム属細菌を含む発酵乳ベースを得ることができる。ビフィドバクテリウム属細菌は、本発明のアロエ含有発酵乳の製造方法の発酵乳ベース調製工程で用いられるものを用いることができる。
発酵乳ベース中のビフィドバクテリウム属細菌の含有量は、0.5×10
8〜10×10
8CFU/mlであることが好ましく、1×10
8〜10×10
8CFU/mlであることがより好ましい。当該ビフィドバクテリウム属細菌数の範囲であると、アロエ含有発酵乳中のアロエ由来臭気が良好にマスキングされるために好ましい。
【0049】
本発明のマスキング方法で用いられるアロエ含有発酵乳に含まれる乾燥アロエ葉肉の形状は特に限定されず、固形、粉末、ピューレ状等であってもよく、本発明のアロエ含有発酵乳の製造方法の分散液調製工程で調製されるアロエ葉肉分散液のように水に分散させたものであってもよい。
本発明のマスキング方法に用いられるビフィドバクテリウム属細菌を含む発酵乳ベースと乾燥アロエ葉肉とを含有するアロエ含有発酵乳は、前記発酵乳ベースと前記アロエ葉肉分散液とを質量比が
発酵乳ベース:アロエ葉肉分散液=70:30〜95:5
で含有されるアロエ含有発酵乳であることが好ましく、75:25〜95:5の範囲とすることがより好ましい。
【0050】
本発明のマスキング方法によれば、アロエ含有発酵乳の発酵前の発酵乳原料にビフィドバクテリウム属細菌が添加されることにより、アロエ含有発酵乳中のアロエ由来臭気が良好にマスキングされ、風味が良好なアロエ含有発酵乳を得ることができる。
【実施例】
【0051】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下において含有割合を示す「%」は特に断りのない限り「質量%」を意味する。また、ビフィドバクテリウム属細菌を「ビフィズス菌」と記載することがある。
【0052】
≪製造例≫
本製造例では、本発明に係るアロエ含有発酵乳の製造方法により、発酵乳中に乾燥アロエ葉肉を0.5質量%含有するアロエ含有発酵乳を製造した。
[発酵乳ベース調製工程]
脱脂濃縮乳(森永乳業社製)1275g、砂糖(東洋精糖社製)105g、水3495gをミキサーを用いて混合し、65℃に加温して溶解した。次にこれを15MPaの均質圧で均質化し、続いて90℃で5分間殺菌処理を行い38℃まで冷却した。これに、乳酸菌スターター(クリスチャン・ハンセン社製、S.thermophilus及びL.delbrueckii subsp. bulgaricus)を0.1g、ビフィズス菌(森永乳業社製、B.longum)を125g接種し、発酵乳原料とした。発酵乳原料の組成を表1(試験品1)に示す。発酵乳原料をpH4.4になるまで38℃で7時間発酵させた後、10℃まで冷却した。得られたカードをホモジナイザーにより破砕してビフィズス菌を含有する発酵乳ベース5000gを調製した。
なお、調製された発酵乳ベースは、ビフィズス菌を13×10
8CFU/ml含むものであった。
[分散液調製工程]
アロエ葉肉粉末(森永乳業社製、AGVP010)25gを水475gに配合し、よく撹拌して5%のアロエ葉肉分散液500gを調製した。
[混合工程]
前記のとおり調製された発酵乳ベース90gに5%のアロエ葉肉分散液10gを混合し(90:10の割合で混合し)、乾燥アロエ葉肉の含有量が0.5質量%のアロエ含有発酵乳100mlを調製し、100ml容のポリエチレンテレフタレート(PET)製容器に100ml充填し、密閉して、アロエ含有発酵乳を製造した。
【0053】
≪試験例1≫
本試験は、アロエ含有発酵乳のアロエ由来臭気及び発酵乳風味を評価するために行った。
(1)試料の調製
(a)試験品1:ビフィズス菌を含有するアロエ含有発酵乳
前記≪製造例≫で得られたアロエ含有発酵乳を試験品1として本試験に用いた。
(b)比較品1:ビフィズス菌を含有しないアロエ含有発酵乳
次の方法により比較品1を調製し、本試験に用いた。
前記≪製造例≫において、発酵乳原料にビフィズス菌を接種せずに発酵乳ベースを調製し、当該発酵乳ベースとアロエ葉肉分散液とを90:10の割合で混合して、ビフィズス菌を全く含まないアロエ含有発酵乳を製造し、当該アロエ含有発酵乳を比較品1として本試験に用いた。
試験品1、比較品1の製造に用いた発酵乳原料の組成を表1に示す。試験品1、比較品1はいずれも発酵乳中に乾燥アロエ葉肉を0.5質量%含有するものである。
(2)試験方法
得られた試験品1、比較品1を試食し、アロエ由来臭気の有無及びおいしさに係る以下の評価基準により評価した。試験結果を表1に示す。
(評価基準)
○:アロエ特有の臭気は全く感じられず、良好な発酵乳の風味を有する
△:アロエ特有の臭気が感じられ、発酵乳の風味を損なう
×:アロエ特有の臭気が強く感じられ、発酵乳の風味を著しく損なう
(3)試験結果
試験品1は、アロエ由来臭気が良好にマスキングされた良好な風味を有するアロエ含有発酵乳であった。比較品1はアロエ特有の臭気が感じられ、発酵乳の風味を損なうものであった。
【0054】
【表1】
【0055】
≪試験例2≫:ビフィズス菌含有量の検討
本試験は、発酵乳ベース中のビフィズス菌含有量を変化させて、アロエ含有発酵乳の官能評価試験を行った。
(1)試料の調製
以下の(c)〜(g)の方法により、発酵乳ベース調製工程において接種されるビフィズス菌数を変更して実施品2〜6を調製した。
(c)実施品2
発酵乳ベース中のビフィズス菌含有量が0.5×10
8CFU/mlとなるように発酵乳ベースを調製した以外は、≪製造例≫と同じ製造方法を行い、乾燥アロエ葉肉0.5質量%含有するアロエ含有発酵乳を製造して、実施品2を調製した。
(d)実施品3
発酵乳ベース中のビフィズス菌含有量が1×10
8CFU/mlとなるように発酵乳ベースを調製した以外は、≪製造例≫と同じ製造方法を行い、乾燥アロエ葉肉0.5質量%含有するアロエ含有発酵乳を製造して、実施品3を調製した。
(e)実施品4
発酵乳ベース中のビフィズス菌含有量が2.5×10
8CFU/mlとなるように発酵乳ベースを調製した以外は、≪製造例≫と同じ製造方法を行い、乾燥アロエ葉肉0.5質量%含有するアロエ含有発酵乳を製造して、実施品4を調製した。
(f)実施品5
発酵乳ベース中のビフィズス菌含有量が5×10
8CFU/mlとなるように発酵乳ベースを調製した以外は、≪製造例≫と同じ製造方法を行い、乾燥アロエ葉肉0.5質量%含有するアロエ含有発酵乳を製造して、実施品5を調製した。
(g)実施品6
発酵乳ベース中のビフィズス菌含有量が10×10
8CFU/mlとなるように発酵乳ベースを調製した以外は、≪製造例≫と同じ製造方法を行い、乾燥アロエ葉肉0.5質量%含有するアロエ含有発酵乳を製造して、実施品6を調製した。
(2)試験方法
調製した実施品2〜6の各試料について、9名のよく訓練されたパネラーにより試食し、官能評価試験を10段階で行った。基準として、≪試験例1≫で用いられた比較品1の試料も試食した。
[評価基準]
アロエ由来臭気:弱い 1・2・3・4・5・6・7・8・9・10 強い
おいしさ:おいしくない 1・2・3・4・5・6・7・8・9・10 おいしい
アロエ由来臭気のスコアは、数値が小さいほどアロエ由来臭気が弱いことを意味する。おいしさのスコアは、数値が大きいほどおいしいことを意味する。
(3)試験結果
本試験の結果を表2に示す。表2より、ビフィズス菌が0.5×10
8〜10×10
8CFU/ml添加された実施品2〜6のサンプルは、ビフィズス菌の含有量が増加するに従ってアロエ由来臭気が低下し、おいしさが増加することが示された。
比較品1のサンプルは、アロエ由来臭気スコアが9.7、おいしさスコアが3.2であり、アロエ由来臭気が強く感じられるものであった。実施品2〜6のサンプルはいずれも比較品1に対してアロエ由来臭気スコアが低く、おいしさスコアが高いことが示された。
【0056】
【表2】
【0057】
≪試験例3≫:乾燥アロエ葉肉含有量の検討
アロエ含有発酵乳中の乾燥アロエ葉肉含有量を変化させて、アロエ含有発酵乳の官能評価試験を行った。
(1)試料の調製
以下の(h)〜(p)の方法により、分散液調製工程におけるアロエ葉肉分散液に添加される乾燥アロエ葉肉の含有量と発酵乳ベース調製工程において接種されるビフィズス菌数とを変更して実施品7〜12、比較品2〜4を調製した。
(h)実施品7
前記≪製造例≫と同様の製造方法に基づき、発酵乳ベース中のビフィズス菌含有量を1×10
8CFU/mlに変更し、発酵乳ベースとアロエ葉肉分散液とを90:10の割合で混合して、アロエ含有発酵乳中の乾燥アロエ葉肉を0.5質量%含有するアロエ含有発酵乳を製造して、実施品7を調製した。
(i)実施品8
発酵乳ベース中のビフィズス菌含有量を10×10
8CFU/mlに変更した以外は、前記(h)実施品7と同様の方法によりアロエ含有発酵乳を製造して、実施品8を調製した。
(j)実施品9
前記≪製造例≫と同様の製造方法に基づき、発酵乳ベース中のビフィズス菌含有量を1×10
8CFU/mlに変更し、発酵乳ベースとアロエ葉肉分散液とを85:15の割合で混合して、アロエ含有発酵乳中の乾燥アロエ葉肉を0.75質量%含有するアロエ含有発酵乳を製造して、実施品9を調製した。
(k)実施品10
発酵乳ベース中のビフィズス菌含有量を10×10
8CFU/mlに変更した以外は前記(j)実施品9と同様の方法によりアロエ含有発酵乳を製造して、実施品10を調製した。
(l)実施品11
前記≪製造例≫と同様の製造方法に基づき、発酵乳ベース中のビフィズス菌含有量を1×10
8CFU/mlに変更し、発酵乳ベースとアロエ葉肉分散液とを80:20の割合で混合して、アロエ含有発酵乳中の乾燥アロエ葉肉を1質量%含有するアロエ含有発酵乳を製造して、実施品11を調製した。
(m)実施品12
発酵乳ベース中のビフィズス菌含有量を10×10
8CFU/mlに変更した以外は前記(l)実施品11と同様の方法によりアロエ含有発酵乳を製造して、実施品12を調製した。
(n)比較品2
前記≪製造例≫において、発酵乳原料にビフィズス菌を接種せずに発酵させて得た発酵乳ベースとアロエ葉肉分散液とを90:10の割合で混合して、乾燥アロエ葉肉の含有量が0.5質量%であるアロエ含有発酵乳(ビフィズス菌なし)を製造して、比較品2を調製した。
(o)比較品3
発酵乳原料にビフィズス菌を接種せずに発酵させて得た発酵乳ベースとアロエ葉肉分散液とを85:15の割合で混合した以外は前記(n)比較品2と同様の方法を行い、乾燥アロエ葉肉の含有量が0.75質量%であるアロエ含有発酵乳(ビフィズス菌なし)を製造して、比較品3を調製した。
(p)比較品4
発酵乳原料にビフィズス菌を接種せずに発酵させて得た発酵乳ベースとアロエ葉肉分散液とを80:20の割合で混合して、以外は前記(n)比較品2と同様の方法を行い、乾燥アロエ葉肉の含有量が1質量%であるアロエ含有発酵乳(ビフィズス菌なし)を製造して、比較品4を調製した。
(2)試験方法
調製された実施品7〜12、及び比較品2〜4のアロエ含有発酵乳について、9名のよく訓練されたパネラーにより試食し、官能評価試験を10段階で行った。なお、評価基準は≪試験例2≫と同じである。
(3)試験結果
本試験の結果を表3に示す。表3より、乾燥アロエ葉肉0.5質量%含有する実施品7、8の試料は、乾燥アロエ葉肉0.5%含有しビフィズス菌を含有しない比較品2の試料よりアロエ由来臭気のスコアが低く、おいしさスコアが高いことが示された。
乾燥アロエ葉肉0.75質量%含有する実施品9、10の試料は、乾燥アロエ葉肉0.75%含有しビフィズス菌を含有しない比較品3の試料よりアロエ由来臭気のスコアが低く、おいしさスコアが高いことが示された。
乾燥アロエ葉肉1質量%含有する実施品11、12の試料は、乾燥アロエ葉肉1%含有しビフィズス菌を含有しない比較品4の試料よりアロエ由来臭気のスコアが低く、おいしさスコアが高いことが示された。
よって、乾燥アロエ葉肉0.5〜1質量%、発酵乳ベース中のビフィズス菌含有量を1〜10×10
8CFU/mlの範囲に設定して発酵乳ベースを調製し、最終的に得られるアロエ含有発酵乳に対して乾燥アロエ葉肉の含有量が0.5〜1質量%となるようにアロエ含有発酵乳を製造することにより、アロエ由来臭気が低減された風味が良好なアロエ含有発酵乳が得られることが示された。
【0058】
【表3】
【0059】
≪試験例4≫
本試験は、アロエ由来臭気のマスキングの評価基準を検討するために行った。
(1)試料の調製
(A)ビフィズス菌を含有するアロエ含有発酵乳の調製
前記の≪製造例≫と同様の製造方法に基づき、発酵乳ベース中のビフィズス菌含有量を10×10
8CFU/mlに変更し、発酵乳ベースとアロエ葉肉分散液とを90:10の割合で混合して、アロエ含有発酵乳中に乾燥アロエ葉肉を0.5質量%含有するアロエ含有発酵乳を調製した。
(B)ビフィズス菌を含有しないアロエ含有発酵乳の調製
前記の≪製造例≫において、発酵乳原料にビフィズス菌を接種せずに発酵させて得た発酵乳ベースとアロエ葉肉分散液とを90:10の割合で混合して、アロエ含有発酵乳中に乾燥アロエ葉肉を0.5質量%含有するアロエ含有発酵乳(ビフィズス菌を含有しない)を調製した。
(C)5種類の濃度のアロエ葉肉分散液(0.1〜0.5%)の調製
乾燥アロエ葉肉粉末(森永乳業社製、AGVP010)25gと水475gとを混合し、よく撹拌して乾燥アロエ葉肉の含有量が0.5質量%のアロエ葉肉分散液500gを調製した。調製した0.5質量%アロエ葉肉分散液を水を用いて希釈して、乾燥アロエ葉肉の含有量がそれぞれ0.1、0.2、0.3、0.4質量%のアロエ葉肉分散液を調製した。
(2)アロエ由来臭気の評価
まず、5種類の濃度のアロエ葉肉分散液を試飲し、アロエ由来臭気の程度の確認をし、これを「アロエ由来臭気のマスキング」を評価する際の基準とした。
次に、2種類のアロエ含有発酵乳(ビフィズス菌を含有するもの、含有しないもの)を試食し、アロエ含有発酵乳中のアロエ由来臭気が、どの濃度のアロエ葉肉分散液中のアロエ由来臭気に相当するかを検討した。
(3)試験結果
本試験の結果を表4に示す。表4より、乾燥アロエ葉肉を0.5質量%含有するアロエ含有発酵乳(ビフィズス菌なし)中のアロエ由来臭気は、乾燥アロエ葉肉を0.4質量%含有するアロエ葉肉分散液中のアロエ由来臭気に相当するものであった。また、乾燥アロエ葉肉を0.5質量%含有し、ビフィズス菌を含有するアロエ含有発酵乳中のアロエ由来臭気は、乾燥アロエ葉肉を0.2質量%含有するアロエ葉肉分散液中のアロエ由来臭気に相当するものであった。
この結果より、アロエ含有発酵乳にビフィズス菌を含有させることで、アロエ含有発酵乳中のアロエ由来臭気は、アロエ葉肉の固形分量が1/2以下に低減される程度に、アロエ由来臭気がマスキングされていることが判明した。
すなわち、本明細書において、「アロエ由来臭気のマスキング」とは、ビフィズス菌を含む発酵乳ベースと乾燥アロエ葉肉とを含有するアロエ含有発酵乳において、発酵前にビフィズス菌が添加されることにより、アロエ含有発酵乳に含有している乾燥アロエ葉肉の含有量が半分以下に低減された時のアロエ由来臭気に相当する程度にまでアロエ由来臭気が低減されたことを意味するものである。
【0060】
【表4】