(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
自動車ドアのウインド開口を形成するように延びるウインドフレームに車室外側から組み付けられ、該ウインドフレームとウインドガラスとの間をシールする自動車ドア用グラスランにおいて、
上記自動車ドア用グラスランは、
上記ウインドフレームの上部に沿って車両前後方向に延びる上辺部と、該上辺部の車両前後方向の端部から下方へ延びる縦辺部と、該上辺部及び縦辺部の境界部分に形成されたコーナー部から上記ウインドフレームの上部に沿って車両前後方向に突出する突出部とを備え、
上記突出部は、上記ウインドフレームの上部の角部の車室外側を覆う外側カバー部と、上記ウインドフレームの上部の角部の車室内側を覆う内側カバー部と、上記外側カバー部から上記内側カバー部まで延びるとともに該外側カバー部及び該内側カバー部を接続する接続部とを有し、
上記外側カバー部及び上記内側カバー部の間は車両前後方向一方に開放され、
上記接続部は、上記ウインドフレームを構成するパネル材に、車両前後方向他方に開放するように形成された切欠部に挿入されて組み付けられることを特徴とする自動車ドア用グラスラン。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1ではコーナー部から後方へ延びるコーナー係合部が弾性材からなり、このコーナー係合部によってウインドフレームの上部の角部を覆うことができるので、ウインドフレームの上部の角部が露出している場合に比べてユーザーに対する安全性を高めることができるとともに、外観見栄えの観点からも好ましい。同様に、特許文献2も取付延長部によってウインドフレームの上部の角部を覆うことができるので、安全性及び外観見栄えの観点から好ましい。
【0008】
ところが、特許文献1では、同文献の
図1に記載されているように、コーナー係合部に一体成形されたフック状の係合突部をガーニッシュの上部に対して車室内側から係合させただけの構造となっている。ユーザーの様々な使用状況を考えたとき、例えばコーナー係合部に手を掛けるようにしてドアに開閉力を作用させることが想定され、このような外力がコーナー係合部に作用すると、コーナー係合部が弾性材からなるものであることからそれに一体成形されている係合突部が容易に変形してしまい、ガーニッシュの上部から離脱してしまう恐れがある。こうなると外観見栄え上、問題となる。
【0009】
そこで、特許文献2の取付延長部の固定構造のようにクリップを用いる方法が考えられるが、このようにした場合には部品点数が増加して組み付け時の作業性が悪化するとともにコストの増加を招くことになる。また、特許文献2ではクリップをウインドフレームの孔に差し込んでいるだけなので、上述したような外力が作用した場合にはクリップが抜けてしまう恐れもある。
【0010】
また、クリップの代わりに粘着テープ等を使用して特許文献2の取付延長部をウインドフレームに固定する方法も考えられるが、この場合も粘着テープが必要になる分、部品点数が増加して組み付け時の作業性が悪化するとともにコストの増加を招くことになる。また、粘着テープの場合、経年変化による粘着力の低下も懸念される。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ウインドフレームの車室外側から組み付けられるグラスランのコーナー部に、ウインドフレームの角部を覆うカバー部を設ける場合に、部品点数やコストの増加を抑制しながら、カバー部がウインドフレームから容易に外れないようにして安全性を確保するとともに、良好な外観品質を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明では、ウインドフレームの上部の角部を外側カバー部と内側カバー部とで車室内外方向両側から覆うようにし、外側カバー部及び内側カバー部を接続する接続部を設け、この接続部を、自動車ドアを構成するドア側部材の切欠部に挿入して組み付けるようにした。
【0013】
第1の発明は、
自動車ドアのウインド開口を形成するように延びるウインドフレームに車室外側から組み付けられ、該ウインドフレームとウインドガラスとの間をシールする自動車ドア用グラスランにおいて、
上記自動車ドア用グラスランは、
上記ウインドフレームの上部に沿って車両前後方向に延びる上辺部と、該上辺部の車両前後方向の端部から下方へ延びる縦辺部と、該上辺部及び縦辺部の境界部分に形成されたコーナー部から上記ウインドフレームの上部に沿って車両前後方向に突出する突出部とを備え、
上記突出部は、上記ウインドフレームの上部の角部の車室外側を覆う外側カバー部と、上記ウインドフレームの上部の角部の車室内側を覆う内側カバー部と、上記外側カバー部から上記内側カバー部まで延びるとともに該外側カバー部及び該内側カバー部を接続する接続部とを有し、
上記外側カバー部及び上記内側カバー部の間は車両前後方向一方に開放され、
上記接続部は、上記
ウインドフレームを構成するパネル材に
、車両前後方向他方に開放するように形成された切欠部に挿入されて組み付けられることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、グラスランがウインドフレームに組み付けられた状態で、ウインドフレームの上部の角部が、グラスランの外側カバー部及び内側カバー部によってそれぞれ車室外側及び車室内側から覆われる。これにより、ウインドフレームの角部が露出しないので安全性が高まるとともに、外観見栄えが良好になる。
【0015】
ウインドフレームの上部の角部が外側カバー部及び内側カバー部によって覆われた状態では、外側カバー部から内側カバー部まで延びる接続部がドア側部材の切欠部に挿入して組み付けられている。したがって、例えば、外側カバー部に手を掛けるようにしてドアに開閉力を作用させた場合に、外側カバー部が接続部によって内側カバー部に接続されていて、その接続部がドア側部材の切欠部に組み付けられているので、外側カバー部がドア側部材から離脱しにくくなる。同様に、内側カバー部に手を掛けるようにしてドアに開閉力を作用させた場合にも、その内側カバー部が接続部によって外側カバー部に接続されていて、接続部がドア側部材の切欠部に組み付けられているので、内側カバー部がドア側部材から離脱しにくくなる。
【0016】
つまり、外側カバー部や内側カバー部に外力が作用した場合に、クリップや粘着テープ等を用いることなく、外側カバー部及び内側カバー部の組み付け状態が維持されるので、部品点数の増加が抑制されるとともに、コスト増も抑制される。さらに、粘着テープを用いた場合のような経年変化による粘着力の低下の心配もない。
【0017】
また、ウインドフレームを覆う外側カバー部及び内側カバー部と、これらを接続する接続部とが同一部材、即ちウインドフレームに組み付けられることになる。これにより、外側カバー部及び内側カバー部と接続部とをスムーズに組み付けることが可能になる。
【0018】
また、外側カバー部及び内側カバー部をウインドフレームに組み付ける際には、パネル材を、外側カバー部及び内側カバー部の開放部分に対して車両前後方向一方から他方に向けて差し込むことになる。このとき、パネル材に形成されている切欠部は、車両前後方向他方に開放しているので、外側カバー部及び内側カバー部の組み付け時に、パネル材の差し込み方向と同方向から接続部を切欠部に挿入することが可能になる。
【0019】
第
2の発明は、
自動車ドアのウインド開口を形成するように延びるウインドフレームに車室外側から組み付けられ、該ウインドフレームとウインドガラスとの間をシールする自動車ドア用グラスランにおいて、
上記自動車ドア用グラスランは、
上記ウインドフレームの上部に沿って車両前後方向に延びる上辺部と、該上辺部の車両前後方向の端部から下方へ延びる縦辺部と、該上辺部及び縦辺部の境界部分に形成されたコーナー部から上記ウインドフレームの上部に沿って車両前後方向に突出する突出部とを備え、
上記突出部は、上記ウインドフレームの上部の角部の車室外側を覆う外側カバー部と、上記ウインドフレームの上部の角部の車室内側を覆う内側カバー部と、上記外側カバー部から上記内側カバー部まで延びるとともに該外側カバー部及び該内側カバー部を接続する接続部とを有し、
上記接続部は、
上記ウインドフレームに取り付けられるガーニッシュに形成された切欠部に挿入されて組み付けられることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、ウインドフレームの車室外側に、自動車ドアを構成するガーニッシュが取り付けられている場合に、このガーニッシュに対して接続部が組み付けられる。
【0021】
第
3の発明は、第1
または2の発明において、
上記接続部は、上記切欠部の周縁部に嵌るように形成されていることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、接続部が切欠部から抜けにくくなるので、外側カバー部及び内側カバー部の位置ずれが抑制される。
【発明の効果】
【0023】
第1の発明によれば、ウインドフレームの上部の角部をグラスランの外側カバー部と内側カバー部とで覆うようにし、外側カバー部及び内側カバー部を接続する接続部をグラスランに設け、この接続部を、自動車ドアを構成するドア側部材の切欠部に挿入して組み付けるようにしている。これにより、クリップや粘着テープを不要にして部品点数やコストの増加を抑制しながら、外側カバー部及び内側カバー部がウインドフレームから容易に外れないようにして安全性を確保することができるとともに、良好な外観品質を確保することができる。
【0024】
また、ウインドフレームを構成するパネル材に形成された切欠部に接続部を組み付けるようにしたので、外側カバー部及び内側カバー部と接続部とを同一部材に対してスムーズに組み付けることができ、組み付け時の作業性をより一層良好にすることができる。
【0025】
また、外側カバー部及び内側カバー部の間が車両前後方向一方に開放しており、車両前後方向他方に開放するようにパネル材に形成された切欠部に接続部を挿入するようにしたので、外側カバー部及び内側カバー部の組み付け時に、外側カバー部及び内側カバー部の間にパネル材を差し込む方向と同方向から接続部を切欠部に挿入して組み付けることができる。これにより、組み付け時の作業性をより一層良好にすることができる。
【0026】
第
2の発明によれば、自動車ドアを構成するガーニッシュに対して接続部を組み付けることができる。
【0027】
第
3の発明によれば、接続部が切欠部の周縁部に嵌るように形成されているので、外側カバー部及び内側カバー部をドア側部材に対して位置決めすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0030】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態に係る左側フロントドア用グラスラン(自動車ドア用グラスラン)20を備えた左側フロントドア(自動車ドア)1を車室外側(左側)から見た側面図である。この左側フロントドア1は、自動車(図示せず)の左側において前側に配設され、自動車の左側において前側に形成された開口部(図示せず)を開閉する。左側フロントドア用グラスラン20は
図3に示している。
【0031】
また、
図2は左側リヤドア用グラスラン(自動車ドア用グラスラン)50を備えた左側リヤドア(自動車ドア)10を車室外側(左側)から見た側面図である。この左側リヤドア10は、自動車(図示せず)の左側においてフロントドア1の後側に配設され、自動車の左側において後側に形成された開口部(図示せず)を開閉する。左側リヤドア用グラスラン50は
図4に示している。
【0032】
尚、この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」というものとする。また、図示しないが右側フロントドアは左側フロントドア1と左右対称構造であり、また、図示しないが右側リヤドアは左側リヤドア10と左右対称構造である。
【0033】
(ドアの構造)
図1に示すように、左側フロントドア1は、該左側フロントドア1の略下半部を構成するドア本体2と、略上半部を構成するウインドフレーム3とを有している。ドア本体2の前端部は、図示しないが、上下方向に延びる回動軸を有するヒンジを介して車体のピラーに取り付けられている。ドア本体2は、鋼板等からなるインナパネル(図示せず)とアウタパネル2aとで構成されており、内部には、昇降動作するウインドガラス4や、ウインドガラス4を昇降動作させるための昇降装置(図示せず)等が収容可能になっている。
【0034】
ウインドフレーム3は、ウインドガラス4の周縁部を保持するサッシュとして機能するものであり、ウインド開口7を形成するように延びている。ウインドフレーム3によって形成されているウインド開口7がウインドガラス4によって開閉されるようになっている。この実施形態のウインドフレーム3は、
図5に示すように鋼板等をプレス成形してなるアウタパネル材5及びインナパネル材6を組み合わせて構成されたものである。尚、ウインドフレーム3は、例えばロール成形法によって構成されたものであってもよい。
【0035】
図1に示すように、ウインドフレーム3は、前側フレーム部3aと、後側フレーム部3bと、フレーム上辺部3cとで構成されている。前側フレーム部3aは、ドア本体2の上縁における前部から上方へ突出している。後側フレーム部3bは、ドア本体2の上縁における後部から上方へ延びている。後側フレーム部3bの方が前側フレーム部3aよりも上方まで延びている。フレーム上辺部3cは、前側フレーム部3aの上端から後側フレーム部3bの上端まで、車体のルーフ側縁部(図示せず)に沿って前後方向に延びており、ウインドフレーム3の上部は、前端から後端に亘ってこのフレーム上辺部3cによって構成されている。
【0036】
尚、フレーム上辺部3cの形状は図示した形状に限られるものではなく、全体的に上方へ向けて湾曲した形状であってもよいし、湾曲部の位置やフレーム上辺部3cの傾斜角度も車体のルーフ形状に対応するように任意に設定することができる。
【0037】
ウインドフレーム3の前側フレーム部3aの前方には、ドアミラー(図示せず)が取り付けられるドアミラー取付部3dが設けられている。ドアミラー取付部3dの上縁部は、ウインドフレーム3のフレーム上辺部3cの前端部と連続するように形成されている。
【0038】
図5に示すように、ウインドフレーム3には、車室外側へ延びるグラスラン取付板部8と、ウインド開口7(
図1に示す)内へ向けて突出する内周側フランジ9とが形成されている。内周側フランジ9はウインド開口7内へ向けて突出しているため、
図1におけるフレーム上辺部3cでは下方へ突出することになる。前側フレーム部3a及び後側フレーム部3bにおいても同様な構造とすることもでき、前側フレーム部3aの場合は内周側フランジ9が後方へ向けて突出することになり、後側フレーム部3bの場合は内周側フランジ9が前方へ向けて突出することになる。尚、前側フレーム部3a及び後側フレーム部3bはフレーム上辺部3cとは相違した構造であってもよい。
【0039】
図5に示すように、ウインドフレーム3を構成しているアウタパネル材5におけるウインド開口7内側には、該ウインド開口7内へ向けて延びる内側板部5bが形成されている。インナパネル材6におけるウインド開口7内側には、該ウインド開口7内へ向けて延びる内側板部6bが形成されている。アウタパネル材5におけるウインド開口7外側には、車室外側へ向けて延びる外側板部5aが形成されている。インナパネル材6におけるウインド開口7外側には、車室外側へ向けて延びる外側板部6aが形成されている。
【0040】
そして、アウタパネル材5の内側板部5bと、インナパネル材6の内側板部6bを車室内外方向に重ねて接合することで内周側フランジ9が構成される。また、アウタパネル材5の外側板部5aと、インナパネル材6の外側板部6aとを上下方向に重ねて接合することにより、グラスラン取付板部8が構成される。
【0041】
図7及び
図9に示すように、ウインドフレーム3のフレーム上辺部3cの後側における上端部には角部Aが形成されることになる。そして、ウインドフレーム3のフレーム上辺部3cにおける角部Aの近傍は一部が切り欠かれている。すなわち、ウインドフレーム3のフレーム上辺部3cを構成しているアウタパネル材5及びインナパネル材6における後縁部には、角部Aから下方へ離れた部位に切欠部3eが形成されている。切欠部3eは、後方(車両前後方向他方)に開放して前方へ向かって延びるように形成されている。切欠部3eにおける前後方向中央部よりも後側の幅(上下方向の寸法)は全体に亘って略等しく設定される一方、切欠部3eにおける前後方向中央部よりも前側の幅は、前方へ向かって狭くなるように設定されている。切欠部3eが形成された部位及びその近傍の部位は、アウタパネル材5及びインナパネル材6がヘミング接合されていない部位となっている。
【0042】
左側リヤドア10の基本的な構造は左側フロントドア1と同じである。すなわち、
図2に示すように、左側リヤドア10は、インナパネル(図示せず)及びアウタパネル12aからなるドア本体12とウインドフレーム13とを有している。ウインドフレーム13は、前側フレーム部13aと、後側フレーム部13bと、フレーム上辺部13cとで構成されている。図示しないが、左側リヤドア10のウインドフレーム13にも、車室外側へ延びるグラスラン取付板部と、ウインド開口17内へ向けて突出する内周側フランジとが形成されている。
【0043】
(グラスランの構成)
図5に示すように、左側フロントドア用グラスラン20は、ウインドフレーム3の少なくとも車室外側を覆い隠す、いわゆるヒドンタイプであり、詳細は後述するが、ウインドフレーム3に対して車室外側から組み付けられ、ウインドフレーム3とウインドガラス4との間をシールするためのシール材として機能する。左側フロントドア用グラスラン20は、ウインドフレーム3の車室外側部分であるグラスラン取付板部8と、ウインドフレーム3のウインド開口7側の部分である内周側フランジ9も覆うように形成されている。
【0044】
図3に示すように、左側フロントドア用グラスラン20は、グラスラン上辺部21と、グラスラン前側縦辺部22と、グラスラン後側縦辺部23と、前側突出部24と、後側突出部25とを備えている。グラスラン上辺部21は、ウインドフレーム3の上部であるフレーム上辺部3cに沿って前後方向に延びている。グラスラン前側縦辺部22は、グラスラン上辺部21の前端部からウインドフレーム3の前側フレーム部3aに沿って下方に延びている。グラスラン後側縦辺部23は、グラスラン上辺部21の後端部からウインドフレーム3の後側フレーム部3bに沿って下方へ延びている。
図1に示すように、グラスラン前側縦辺部22及びグラスラン後側縦辺部23の下側は、ドア本体2の内部に達するまで延びている。
【0045】
グラスラン上辺部21の前部とグラスラン前側縦辺部22との境界部分には、前側コーナー部26が形成されている。前側突出部24は、前側コーナー部26から前方へ向かって突出しており、前端に近づくほど下に位置するように全体として傾斜している。この前側コーナー部26は、ドアミラー取付部3dの上縁部に沿って延びている。また、グラスラン上辺部21の後部とグラスラン後側縦辺部23との境界部分には、後側コーナー部27が形成されている。後側突出部25は、後側コーナー部27からウインドフレーム3のフレーム上辺部3cに沿って後方に突出している。後側突出部25の後端部は、フレーム上辺部3cの後端部に達するまで延びている。
【0046】
図3における一点鎖線L1〜L4は、押出成形された押出成形部と、型成形された型成形部との境界を示す線である。前側突出部24における一点鎖線L1よりも前側部分は、型成形部である。また、前側コーナー部26における一点鎖線L2で囲まれた部分は、型成形部である。さらに、後側コーナー部27における一点鎖線L3、L4で囲まれた部分は、型成形部である。上記以外の部分は押出成形部である。左側フロントドア用グラスラン20を製造する際には、まず、押出成形部を成形しておき、この押出成形部に型成形部を一体に成形することによって
図3に示すような形状を持った一体成形品を得ることができる。
【0047】
また、
図4に示す左側リヤドア用グラスラン50は基本的な構造は、左側フロントドア用グラスラン20と同様であり、グラスラン上辺部51と、グラスラン前側縦辺部52と、グラスラン後側縦辺部53と、後側突出部54と、前側突出部55とを備えている。後側突出部54における一点鎖線L5よりも後側部分は、型成形部である。また、後側コーナー部56における一点鎖線L6で囲まれた部分は、型成形部である。さらに、前側コーナー部57における一点鎖線L7、L8で囲まれた部分は、型成形部である。上記以外の部分は押出成形部である。
【0048】
図5に示すように、左側フロントドア用グラスラン20のグラスラン上辺部21は、ウインドフレーム3のグラスラン取付板部8に組み付けられるグラスラン本体30と、グラスラン本体30に一体成形されたインナー側装飾リップ31とを備えている。グラスラン本体30には、芯材33が設けられている。この芯材33と、グラスラン本体30の芯材33以外の部分とでは、材質が異なっている。具体的には、芯材33の材料としては、例えば硬質樹脂(例えばタルクやガラス繊維を混合した樹脂)、アルミニウム合金、鋼材、ステンレス鋼等を使用することができる。グラスラン本体30の芯材33以外の部分の材料としては、例えばEPDM(エチレンプロピレンゴム)やTPO(オレフィン系エラストマー)等のように、芯材33よりも軟らかく弾性を有する材料を使用することができる。また、インナー側装飾リップ31は、上記EPDMやTPO等で構成することができる。上記EPDMやTPOは、発泡材であってもよいし、ソリッド材であってもよい。
【0049】
芯材33は、車室内外方向に延びる上板部33aと、上板部33aの車室外側端部から下方へ延びる端板部33bと、端板部33bの下端部から上記上板部33aと略平行に車室内側へ延びる下板部33cとで構成され、車室内側に開放した略コ字状断面を有する部材からなる。
【0050】
グラスラン本体30のグラスラン上辺部21は、上側シール板部34と、外側板部35と、下側シール板部36と、延出板部37とを有しており、これら上側シール板部34、外側板部35、下側シール板部36及び延出板部37は一体成形されている。上側シール板部34は、ウインドフレーム3のグラスラン取付板部8の上面に沿って車室内外方向に延びている。外側板部35は、上側シール板部34の車室外側端部から下方へ延びている。下側シール板部36は、外側板部35の下端部からウインドフレーム3のグラスラン取付板部8の下面に沿って車室内方に延びている。上側シール板部34、外側板部35及び下側シール板部36により、車室内側に開放する略コ字状断面が形成される。ウインドフレーム3のグラスラン取付板部8が上側シール板部34、外側板部35及び下側シール板部36により車室外側から覆われる。芯材33は上側シール板部34、外側板部35及び下側シール板部36に埋め込まれている。上側シール板部34には、上側シールリップ38が上方へ突出するように設けられている。この上側シールリップ38は、車体の開口部周縁に接触するようになっている。
【0051】
延出板部37は、下側シール板部36の車室内側端部からウインドガラス4の車室内面に沿って延びており、この延出板部37によりアウタパネル材5が覆われるようになっている。延出板部37における車室外面には、第1インナーシールリップ39と第2インナーシールリップ40とが上下方向に互いに間隔をあけて形成されている。第1インナーシールリップ39と第2インナーシールリップ40は、ウインドガラス4の車室内面に接触するようになっている。また、外側板部35の下端部には、下方へ突出するアウターシールリップ41が形成されている。アウターシールリップ41は、ウインドガラス4の車室外面に接触するようになっている。
【0052】
また、インナー側装飾リップ31は、延出板部37の下端部から車室内側へ延びた後、上方へ屈曲している。このインナー側装飾リップ31によってウインドフレーム3の内周側フランジ9が覆われるようになっている。
【0053】
図9にも示すように、左側フロントドア用グラスラン20の後側突出部25の後部には、ウインドフレーム3の上部の角部Aの車室外側を覆う外側カバー部25aと、ウインドフレーム3の上部の角部の車室内側を覆う内側カバー部25bと、外側カバー部25aから内側カバー部25bまで延びるとともに外側カバー部25a及び内側カバー部25bを接続する接続部25cと、端部カバー部25dとが一体成形されている。外側カバー部25aは、少なくとも、ウインドフレーム3のフレーム上辺部3cにおける角部Aの近傍から切欠部3eの形成部位を覆うことができるように、該切欠部3eの形成部位よりも下方まで延びている。また、内側カバー部25bは、外側カバー部25aから車室内側へ離れて配置され、少なくとも、ウインドフレーム3のフレーム上辺部3cにおける角部Aの近傍から切欠部3eの形成部位を覆うことができるように、該切欠部3eの形成部位よりも下方まで延びている。
【0054】
また、端部カバー部25dは、外側カバー部25aの後端部から内側カバー部25bの後端部まで延びている。この端部カバー部25dにより外側カバー部25aの後端部と内側カバー部25bの後端部とが接続され、外側カバー部25a、内側カバー部25b及び端部カバー部25dによって前方に開放されたカバーとなる。端部カバー部25dによってウインドフレーム3のフレーム上辺部3cにおける後縁部が覆われることになる。また、外側カバー部25aの下端部と内側カバー部25bの下端部とは非接続状態とされており、外側カバー部25aの下端部と内側カバー部25bの下端部の間にフレーム上辺部3cを構成しているアウタパネル材5及びインナパネル材6を差し込むことができるようになっている。
【0055】
接続部25cは、ウインドフレーム3の切欠部3eに挿入されて該ウインドフレーム3に組み付けられる部分である。すなわち、接続部25cは、外側カバー部25a及び内側カバー部25bの上下方向中間部に配置されて車室内外方向に延びる柱状に形成されている。接続部25cの形成位置は、ウインドフレーム3の切欠部3eの形成位置に対応するように設定されている。また、接続部25cの鉛直方向の断面形状は、切欠部3eの周縁部の形状と略同じに設定されており、これにより、接続部25cをウインドフレーム3の切欠部3eに挿入した状態で接続部25cが切欠部3eの周縁部に嵌ることになる。また、接続部25cの上下方向の寸法は接続部25cの前側へ行くほど小さくなっている。
【0056】
また、接続部25cの前後方向の寸法は、切欠部3eの前後方向の寸法と略等しく設定することができるが、接続部25cの前後方向の寸法を切欠部3eの前後方向の寸法よりも小さくしてもよい。
【0057】
また、接続部25cは端部カバー部25dと一体成形されている。これにより、接続部25cを端部カバー部25dによって補強することができるとともに、端部カバー部25dを接続部25cによって補強することもできる。尚、接続部25cは端部カバー部25dから前方へ離して設けてもよい。
【0058】
(グラスランの組付方法)
次に、上記のように構成された左側フロントドア用グラスラン20を左側フロントドア1に組み付ける場合について説明する。
図7及び
図9に組み付け直前の状態を示すように、左側フロントドア用グラスラン20の後側突出部25の前方にウインドフレーム3のフレーム上辺部3cの後端部を配置した後、フレーム上辺部3cの切欠部3eの高さと、後側突出部25の接続部25cの高さとを略一致させる。その後、左側フロントドア用グラスラン20をフレーム上辺部3cに対して前方へ移動させていく。すると、フレーム上辺部3cの後部が後側突出部25の外側カバー部25aと内側カバー部25bとの間の開放部分から外側カバー部25aと内側カバー部25bとの間に差し込まれていき、接続部25cが切欠部3eに挿入される。このとき、接続部25cの上下方向の寸法が前側へ行くほど小さくなっているので、切欠部3eと接続部25cとが上下方向に多少ずれていたとしても、接続部25cの前側を切欠部3eに容易に挿入することができる。そして、接続部25cを切欠部3eに完全に挿入すると、左側フロントドア用グラスラン20がフレーム上辺部3cに組み付けられた状態となり、接続部25cが切欠部3eの周縁部に嵌合してフレーム上辺部3cに組み付けられる。組み付け時には、ウインドフレーム3のグラスラン取付板部8をグラスラン本体30に挿入し、また、ウインドフレーム3の内周側フランジ9が覆うようにインナー側装飾リップ31を配置する。
【0059】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態1によれば、ウインドフレーム3の上部の角部Aを左側フロントドア用グラスラン20の外側カバー部25aと内側カバー部25bとで覆うことができ、外側カバー部25a及び内側カバー部25bを接続する接続部25cを、ウインドフレーム3の切欠部3eに挿入して組み付けることができる。これにより、例えば、外側カバー部25aに手を掛けるようにしてドア1に開閉力を作用させた場合に、外側カバー部25aが接続部25cによって内側カバー部25bに接続されていて、その接続部25cがウインドフレーム3に組み付けられているので、外側カバー部25aがウインドフレーム3から離脱しにくくなる。同様に、内側カバー部25bに手を掛けるようにしてドア1に開閉力を作用させた場合にも、その内側カバー部25bが接続部25cによって外側カバー部25aに接続されていて、接続部25cがウインドフレーム3に組み付けられているので、内側カバー部25bがウインドフレーム3から離脱しにくくなる。
【0060】
したがって、クリップや粘着テープを不要にして部品点数やコストの増加を抑制しながら、外側カバー部25a及び内側カバー部25bがウインドフレーム3から容易に外れないようにして安全性及び良好な外観品質を確保することができる。さらに、粘着テープを用いた場合のような経年変化による粘着力の低下の心配もない。
【0061】
また、ウインドフレーム3を構成するパネル材5、6に形成された切欠部3eに接続部25cを組み付けるようにしたので、外側カバー部25a及び内側カバー部25bと接続部25cとを同一部材(パネル材5、6)に対してスムーズに組み付けることができ、組み付け時の作業性をより一層良好にすることができる。
【0062】
また、外側カバー部25a及び内側カバー部25bの間が前方(車両前後方向一方)に開放しており、後方(車両前後方向他方)に開放するようにパネル材5、6に形成された切欠部3eに接続部25cを挿入するようにしたので、外側カバー部25a及び内側カバー部25bの組み付け時に、外側カバー部25a及び内側カバー部25bの間にパネル材5、6を差し込む方向と同方向から接続部25cを切欠部3eに挿入して組み付けることができる。これにより、組み付け時の作業性をより一層良好にすることができる。
【0063】
尚、左側リヤドア用グラスラン50も同様に構成することができる。すなわち、図示しないが、左側リヤドア用グラスラン50の前側突出部55に、左側リヤドア10の上部の前側の角部を覆う外側カバー部及び内側カバー部を設けるとともに、外側カバー部及び内側カバー部を接続する接続部を設ける。一方、左側リヤドア10の前側フレーム部13aに切欠部(図示せず)を設ける。そして、左側リヤドア用グラスラン50の接続部を左側リヤドア10の切欠部に挿入して組み付ける。これにより、左側リヤドア用グラスラン50の外側カバー部及び内側カバー部がウインドフレーム13から容易に外れないようにして安全性及び良好な外観品質を確保することができる。
【0064】
(実施形態2)
図10は、本発明の実施形態2に係る斜視図であり、この実施形態2では、ウインドフレーム3の車室外側に樹脂製のガーニッシュ60が設けられていて、このガーニッシュ60に、左側フロントドア用グラスラン20の外側カバー部25a及び内側カバー部25bを固定するようにした点で実施形態1と異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0065】
ガーニッシュ60は、ウインドフレーム3の後側フレーム部3bの車室外面を覆うための部材であり、後側フレーム部3bに沿って上下方向に長く延び、該後側フレーム部3bに固定される。
図10ではガーニッシュ60を一部のみ示している。
【0066】
ガーニッシュ60は後側フレーム部3bの車室内側に回り込むように形成された内側板部61を有している。内側板部61によって後側フレーム部3bの車室内側が覆われる。内側板部61の上部には、切欠部61eが形成されている。切欠部61eは、上方に開放して下方へ向かって延びるように形成されている。切欠部61eにおける上下方向中央部よりも上側の幅(前後方向の寸法)は全体に亘って略等しく設定される一方、切欠部61eにおける上下方向中央部よりも下側の幅は、下方へ向かって小さくなるように設定されている。
【0067】
切欠部61eの形成位置に対応するように、左側フロントドア用グラスラン20の後側突出部25の接続部25cの形成位置が設定されている。接続部25cは、上下方向に長い断面形状を有しており、接続部25cの前後方向の寸法は接続部25cの下側へ行くほど小さくなっている。
【0068】
また、実施形態2では、左側フロントドア用グラスラン20の後側突出部25の外側カバー部25aと内側カバー部25bとの間に、下方からガーニッシュ60の内側板部61が挿入されるようになっている。
図10では、挿入直前の状態を示しており、この状態からガーニッシュ60を矢印の方向に沿って上方へ移動させると、図示しないが、ガーニッシュ60の切欠部61eに左側フロントドア用グラスラン20の接続部25cが挿入されて該ガーニッシュ60に組み付けられる。ガーニッシュ60の切欠部61eに左側フロントドア用グラスラン20の接続部25cを挿入した後に、ガーニッシュ60をウインドフレーム3の後側フレーム部3bに固定する。
【0069】
この実施形態2によれば、ウインドフレーム3の上部の角部Aを左側フロントドア用グラスラン20の外側カバー部25aと内側カバー部25bとで覆うことができ、外側カバー部25a及び内側カバー部25bを接続する接続部25cを、ガーニッシュ60の切欠部61eに挿入して組み付けることができる。ガーニッシュ60はウインドフレーム3に固定されているものなので、外側カバー部25a及び内側カバー部25bがウインドフレーム3から離脱しにくくなる。したがって、クリップや粘着テープを不要にして部品点数やコストの増加を抑制しながら、外側カバー部25a及び内側カバー部25bがウインドフレーム3から容易に外れないようにして安全性及び良好な外観品質を確保することができる。
【0070】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。