特許第6701029号(P6701029)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6701029
(24)【登録日】2020年5月8日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】開閉タイプのソレノイド
(51)【国際特許分類】
   H01F 7/14 20060101AFI20200518BHJP
【FI】
   H01F7/14 C
   H01F7/14 E
   H01F7/14 F
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-163284(P2016-163284)
(22)【出願日】2016年8月24日
(65)【公開番号】特開2018-32698(P2018-32698A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091904
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 重雄
(72)【発明者】
【氏名】大川 高徳
(72)【発明者】
【氏名】小平 修
(72)【発明者】
【氏名】山之井 靖高
(72)【発明者】
【氏名】矢島 克英
(72)【発明者】
【氏名】久保田 將広
【審査官】 木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第4701734(US,A)
【文献】 特開昭63−126207(JP,A)
【文献】 特開平1−246803(JP,A)
【文献】 特開平2−244605(JP,A)
【文献】 特開昭62−291006(JP,A)
【文献】 実開平2−148542(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/14
H01F 7/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部に平板状の鍔部が形成されたコアと、このコアの外周に巻回された励磁コイルと、上記コアの他端部に一体的に設けられて上記励磁コイルの外周に沿って軸線方向に延在する平板状の固定ヨークと、平板部材がL字状に屈曲されることにより板面が上記鍔部に対向する第1の平板部および上記固定ヨークに対向する第2の平板部が形成され、上記第1の平板部および第2の平板部が各々上記鍔部および上記固定ヨークに接離する方向に回動自在に設けられた可動ヨークとを備えた開閉タイプのソレノイドにおいて、
上記固定ヨークの側部に、上記可動ヨークの第2の平板部の先端側に向けて突出する第1の突部形成されるとともに、上記可動ヨークの上記第1の平板部の外周部に上記鍔部の縁部の外方側に向けて突出する第2の突部形成されており、
上記可動ヨークは、上記鍔部の外周部に隣接して配置された合成樹脂からなる回転軸回りに回動自在に設けられるとともに、上記回転軸に隣接する上記鍔部の外周面は、上記回転軸から離間するに従って漸次上記コアの軸線側に近接する傾斜面によって形成されていることを特徴とする開閉タイプのソレノイド。
【請求項2】
上記コアの上記鍔部を、方形板状に形成したことを特徴とする請求項1に記載の開閉タイプのソレノイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、励磁コイルへの通電により固定ヨークに対して可動ヨークが回動する開閉タイプのソレノイドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気機器類や弁等の開閉装置には、駆動源やメカニズム制御用として、通電により作動する各種のソレノイドが組み込まれている。
このようなソレノイドとしては、例えば下記特許文献1に見られるような固定ヨークに対して可動ヨークが直線状に往復移動する直動タイプと、固定ヨークに対して可動ヨークが回動する開閉タイプのものが広く用いられている。
【0003】
図12は、従来のこの種の開閉タイプのソレノイド(以下、ソレノイドと略す。)における要部を示すもので、一端部に円板状の鍔部1が形成された円柱状のコア2と、このコア2の外周に巻回された励磁コイル3と、コア2の他端部に一体的に設けられて励磁コイル3の外周に沿って軸線方向に延在する平板状の固定ヨーク4と、平板部材がL字状に屈曲されることにより板面が鍔部1に対向する第1の平板部5aおよび固定ヨーク4に対向する第2の平板部5bが形成され可動ヨーク5とから概略構成されたものである。
【0004】
ここで、可動ヨーク5は、合成樹脂製の回転軸6を中心として回動自在に設けられており、図示されないコネクタ内の端子から励磁コイル3に通電されることにより、磁力によって第1の平板部5aおよび第2の平板部5bが各々鍔部1および固定ヨーク4に吸引されて作動し、また通電が解除されることにより、鍔部1および固定ヨーク4から離間する方向に回動するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−257231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記構成からなる従来のソレノイドにあっては、図13に示すように、開状態において、可動ヨーク5の第1の平板部5aの先端と鍔部1との間および第2の平板部5bの先端と固定ヨーク4との間に、大きなギャップGが形成される。
【0007】
そして、このギャップGには、透磁率が低い空気が介在しているために、図14(a)および(b)に示すように、励磁コイル3に通電した際に、可動ヨーク5の第1の平板部5aと鍔部1との間および第2の平板部5bと固定ヨーク4との間に、大きな漏れ磁束が発生し、吸引力が弱まって所望とするトルク特性が得難いという問題点があった。
【0008】
このため、可動ヨーク5の最大開角度に合わせて、必要な吸引トルクが得られるように励磁コイル3におけるコイル巻数を設定する必要が有り、この結果製品コストの増加を招くという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、簡易な構造によって漏れ磁束を低減させることにより吸引トルクを向上させることができ、よって従来よりもコイル巻数を減少させることができて経済性に優れる開閉タイプのソレノイドを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、一端部に平板状の鍔部が形成されたコアと、このコアの外周に巻回された励磁コイルと、上記コアの他端部に一体的に設けられて上記励磁コイルの外周に沿って軸線方向に延在する平板状の固定ヨークと、平板部材がL字状に屈曲されることにより板面が上記鍔部に対向する第1の平板部および上記固定ヨークに対向する第2の平板部が形成され、上記第1の平板部および第2の平板部が各々上記鍔部および上記固定ヨークに接離する方向に回動自在に設けられた可動ヨークとを備えた開閉タイプのソレノイドにおいて、上記固定ヨークの側部に、上記可動ヨークの第2の平板部の先端側に向けて突出する第1の突部を形成するとともに、上記可動ヨークの上記第1の平板部の外周部に上記鍔部の縁部の外方側に向けて突出する第2の突部を形成したことを特徴とするものである。ここで、上記可動ヨークは、上記鍔部の外周部に隣接して配置された合成樹脂からなる回転軸回りに回動自在に設けられるとともに、上記回転軸に隣接する上記鍔部の外周面は、上記回転軸から離間するに従って漸次上記コアの軸線側に近接する傾斜面によって形成されている。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記コアの上記鍔部を、方形板状に形成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1又は2に記載の発明によれば、開状態において最もギャップが大きくなる固定ヨークと可動ヨークの第2の平板部の先端との間に、上記固定ヨークの側部から可動ヨークの第2の平板部の先端側に向けて突出する第1の突部を形成するとともに、上記可動ヨークの第1の平板部の外周部に、鍔部の縁部の外方側に向けて突出する第2の突部を形成しているために、開状態から閉状態に作動させる際の漏れ磁束を減少させることができ、よって吸引トルクを増加させることができる。
【0014】
この結果、従来よりもコイル巻数を減少させても、所望のトルク特性を得ることが可能になり、製品コストの低減化も図ることができる。
【0015】
この際に、さらに請求項2に記載の発明のように、上記コアの鍔部を方形板状に形成すれば、上記第2の突部と対向する面積を大きく確保することができるために、一層漏れ磁束を低減させることができる。
【0016】
さらに、請求項に記載の発明によれば、可動ヨークの回転軸がコアの鍔部に隣接している場合に、回転軸に隣接する鍔部の外周面を、上記回転軸から離間するに従って漸次上記コアの軸線側に近接する傾斜面によって形成しているために、上記回転軸よりも第2の平板部側から閉状態への回転方向に対して逆方向に作用する吸引力を減少させて吸引トルクを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態を示す要部の斜視図である。
図2図1の作用効果を説明するための模式図である。
図3】本発明の第2の実施形態を示す要部の斜視図である。
図4】本発明の第3の実施形態を示す要部の斜視図である。
図5】本発明の第4の実施形態を示す要部の斜視図である。
図6】本発明の第5の実施形態を示す要部の斜視図である。
図7】本発明の第6の実施形態を示す要部の斜視図である。
図8】本発明の第7の実施形態を示す要部の斜視図である。
図9】本発明の第8の実施形態を示す要部の斜視図である。
図10】本発明の第9の実施形態における鍔部を示す正面図である。
図11図10の作用効果を説明するための磁束線の拡大図である。
図12】従来の開閉タイプのソレノイドを示す要部の斜視図である。
図13図12の側面図である。
図14図12の作用を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明に係るソレノイドの第1〜第9の実施形態について説明する。なお、図12に示した従来のソレノイドと同一構成部分については、同一符号を付してその説明を簡略化する。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態を示すもので、このソレノイド10においては、可動ヨーク5の第2の平板部5bの先端部に対向する固定ヨーク4の両側部に、上記第2の平板部5bの先端側に向けて屈曲されることにより、当該第2の平板部5bの先端部の両側方に向けて突出する第1の突部11が形成されている。
【0020】
また、可動ヨーク5の第1の平板部5aにおける先端部の両側部には、鍔部1側に向けて屈曲されることにより、鍔部1の周縁部の外方側に向けて突出する第2の突部12が形成されている。
【0021】
上記構成からなるソレノイド10によれば、図2(a)および(b)に示すように、開状態において最もギャップが大きくなる固定ヨーク4と可動ヨーク5の第2の平板部5bの先端との間に、固定ヨーク4の両側部から可動ヨーク5の第2の平板部5bの先端側に向けて突出する第1の突部11を形成するとともに、可動ヨーク5の第1の平板部5aの先端部両側に、鍔部1の周縁部の外方側に向けて突出する第2の突部12を形成しているために、開状態から閉状態に作動させる際の通電時における漏れ磁束を減少させることができ、よって吸引トルクを増加させることができる。
【0022】
この結果、従来よりもコイル巻数を減少させても、所望のトルク特性を得ることが可能になり、製品コストの低減化も図ることができる。
【0023】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態を示すもので、このソレノイド20は、第1の実施形態における円板状の鍔部1に代えて、方形板状の鍔部21をコア2の端部に一体に形成したものである。
【0024】
上記構成からなるソレノイド20によれば、第1の実施形態に示したものと同様に効果が得られることに加えて、さらにコア2の鍔部21を方形板状に形成しているために、第2の突部12と近接して対向する面積を大きく確保することができ、よって一層漏れ磁束を低減させることができる。
【0025】
(第3の実施形態)
図4は、本発明の第3の実施形態を示すもので、このソレノイド30は、第2の実施形態に示した固定ヨーク4の両側部であって、かつ第1の突部11よりも先端側に、さらに第1の突部31を形成したものである。
【0026】
(第4の実施形態)
図5は、本発明の第4の実施形態を示すもので、このソレノイド40は、第2の実施形態における第2の突部12に代えて、可動ヨーク5の第1の平板部5aの先端両側部に、先端側が鍔部21の周縁部の外方に向けて突出する第2の突部41を形成したものである。
【0027】
(第5の実施形態)
図6は、本発明の第5の実施形態を示すもので、このソレノイド50は、第2の実施形態における第2の突部12に代えて、可動ヨーク5の第1の平板部5aの先端両側部に、これと対向する鍔部21の辺部の長さ部分を上記鍔部21側に向けて屈曲することにより、鍔部21の対向辺の外方に向けて突出する第2の突部51を形成したものである。
【0028】
(第6の実施形態)
図7は、本発明の第6の実施形態を示すもので、このソレノイド60は、第5の実施形態における第2の突部51に代えて、可動ヨーク5の第1の平板部5aの先端部に、当該先端と対向する鍔部21の辺部側に向けて屈曲することにより、鍔部21の対向辺の外方に向けて突出する第2の突部61を形成したものである。
【0029】
(第7の実施形態)
図8は、本発明の第7の実施形態を示すもので、このソレノイド70は、第2の実施形態における第1の突部11に代えて、固定ヨーク4の両側部に可動ヨーク5の第2の平板部5bの先端側に向けて漸次突出量が増大する三角形状の第1の突部71を形成したものである。
【0030】
図9は、本発明の第8の実施形態を示すもので、このソレノイド80は、第7の実施形態における第2の突部12に代えて、可動ヨーク5の第1の平板部5aの外周部に、第5の実施形態において示した第2の突部51、および第6の実施形態において示した第2の突部61を形成したものである。
【0031】
これら第3〜第8の実施形態のソレノイド30、40、50、60、70、80にあっても、第2の実施形態に示したものと同様の作用効果を得ることができる。
【0032】
さらに、図10は、本発明の第9の実施形態を示すもので、このソレノイド90は、第2の実施形態に示した方形板状の鍔部21の外周面であって、かつ可動ヨーク5の回転軸6に隣接する部分を、回転軸6から離間するに従って漸次コア2の軸線側に近接する傾斜面91によって形成したものである。
【0033】
上記第9の実施形態のソレノイド90によれば、第2の実施形態に示したものと同様の効果を得ることができるとともに、さらに可動ヨーク5の回転軸6がコア2の鍔部21に隣接している場合に、回転軸6に隣接する鍔部21の外周面を、回転軸6から離間するに従って漸次コア2の軸線側に近接する傾斜面91によって形成しているために、図11に示すように、回転軸6よりも第2の平板部5b側から閉状態への回転方向に対して逆方向に作用する磁束線(A部参照)を減少させて吸引トルクを向上させることができる。
【0034】
なお、上記第1〜第9の実施形態においては、いずれも第1の突部11、31、71あるいは第2の突部12、41、51を、固定ヨーク4あるいは可動ヨーク5の第1の平板部5aの両方の側部に設けた場合に付いてのみ説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、一方の側部のみに設けてもよい。
【実施例】
【0035】
本発明の効果を検証するために、上記第1〜第9の実施形態に示したソレノイドおよび図12に示した従来のソレノイドを用いて通電時の吸引トルクを解析によって求めた。
この際に、いずれのソレノイドの解析においても、固定ヨークに対する可動ヨークの開状態における角度を15度、コイル設計値を75Ω、コイル巻数を2495巻、通電電圧を9V、環境温度を155℃とした。
【0036】
以下は、その結果を示すものである。
トルク(mNm) Rate(%)
従来のソレノイド 2.88 Base:0
第1の実施形態のソレノイド10 3.44 19.3
第2の実施形態のソレノイド20 3.70 28.4
第3の実施形態のソレノイド30 3.81 32.3
第4の実施形態のソレノイド40 3.89 34.8
第5の実施形態のソレノイド50 4.55 57.8
第6の実施形態のソレノイド60 3.98 38.2
第7の実施形態のソレノイド70 4.35 51.1
第8の実施形態のソレノイド80 5.69 97.3
第9の実施形態のソレノイド90 3.72 28.9
【符号の説明】
【0037】
1 鍔部
2 コア
3 励磁コイル
4 固定ヨーク
5 可動ヨーク
5a 第1の平板部
5b 第2の平板部
6 回転軸
10、20、30、40、50、60、70、80、90 ソレノイド
11、31、71 第1の突部
12、41、51、61 第2の突部
91 傾斜面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14