(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6701064
(24)【登録日】2020年5月8日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】走行経路生成装置
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20200518BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20200518BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
G05D1/02 N
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-242204(P2016-242204)
(22)【出願日】2016年12月14日
(65)【公開番号】特開2018-93799(P2018-93799A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2018年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】阪口 和央
(72)【発明者】
【氏名】鈴川 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】冨田 さくら
(72)【発明者】
【氏名】奥山 裕二
【審査官】
吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2015/132928(WO,A1)
【文献】
特表2011−524017(JP,A)
【文献】
特開2015−112071(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0174459(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0016726(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
G05D 1/02
G01C 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業地を走行しながら作業する作業車のための走行経路を生成する走行経路生成装置であって、
前記作業地の外形データを含む作業地データを入力する作業地データ入力部と、
ユーザによって指定された指定走行経路パターンと前記作業地データとに基づいて前記指定走行経路パターンに対応する前記走行経路を生成する走行経路生成部と、
ユーザによる走行経路イメージの手書き入力を受け付けるタッチパネルと、
前記手書き入力から手書き軌跡を検出し、検出された手書き軌跡に基づいて、予め登録されている走行経路パターン群から合致する走行経路パターンを前記指定走行経路パターンとして前記走行経路生成部に与える走行経路パターン決定モジュールと、を備えた走行経路生成装置。
【請求項2】
前記手書き入力時には、前記タッチパネルの表示パネル部に前記作業地の外形データに基づく作業地外形が表示される請求項1に記載の走行経路生成装置。
【請求項3】
前記作業地データは、障害物を含む請求項1または2に記載の走行経路生成装置。
【請求項4】
前記走行経路パターン群から合致する走行経路パターンとして複数の走行経路パターンが決定された場合、前記タッチパネルの表示パネル部に前記複数の走行経路パターンが表示され、前記複数の走行経路パターンからユーザが前記指定走行経路パターンを選択できる請求項1から3のいずれか一項に記載の走行経路生成装置。
【請求項5】
前記作業地を複数の作業区画に分割するための分割線が前記タッチパネルでの手書き入力によって指定され、前記作業区画毎に前記指定走行経路パターンが決定される請求項1から4のいずれか一項に記載の走行経路生成装置。
【請求項6】
前記走行経路の始点が前記タッチパネルでの手書き入力によって指定される請求項1から5のいずれか一項に記載の走行経路生成装置。
【請求項7】
前記作業車の自車位置を受け取る通信制御部が備えられ、前記走行経路の始点を前記作業車の自車位置とする請求項1から5のいずれか一項に記載の走行経路生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業地を走行しながら作業する作業車のための走行経路を生成する走行経路生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された、作業車の走行経路作成装置は、走行する圃場の3次元形状を計測する作業地形状計測手段の計測情報に基づいて、作業車を圃場内で走行させるための予定走行経路のデータを作成する走行用データ作成手段を備えている。この走行用データ作成手段は、予定走行経路として、圃場内に平行状態で設定間隔を隔てて隣接して並ぶ複数の作業経路、いわゆる、直線経路とUターン経路とを組み合わせた直線往復走行用の作業経路を形成する。このように、作業地内に平行状態で設定間隔を隔てて隣接して並ぶ複数の作業経路を形成する走行経路作成装置の別形態として、矩形状の作業地の外周の4辺に沿って、90°の向き変更を行いながら順次作業走行する、いわゆる、周り走行用の作業経路を形成する走行経路作成装置も提案されている。この走行経路作成装置では、直線往復走行用の作業経路と周り走行用の作業経路とを、ユーザの好みによって簡単に選択するような使用形態は考慮されていない。
【0003】
特許文献2には、地図情報が表示されたタッチパネル式の入力部に、所望の2点を押圧して入力することで、それらの位置を特定すると、仮想誘導進路生成部が、入力部に特定された2点を連結する直線状の基準線を生成し、その生成した基準線を基準にして、所定間隔をあけて離隔した基準経路を生成する技術が開示されている。さらに、生成された基準経路を基準にして、車体に連結した作業部に応じて設定される作業幅を一定間隔とした単数又は複数の仮想誘導進路が目標となる走行経路として生成される。この走行経路生成技術では、ユーザによって指定された2点を結ぶ直線に平行な走行経路しか生成することができない。また、ユーザが正確にタッチパネル上の2点を狙って押圧しないと、不適正な走行経路が生成されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−243708号公報
【特許文献2】特開2015−173630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した実情から、簡単な入力操作で、ユーザのイメージに合った走行経路を生成することができる走行経路生成装置が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
作業地を走行しながら作業する作業車のための走行経路を生成する走行経路生成装置であって、前記作業地の外形データを含む作業地データを入力する作業地データ入力部と、ユーザによって指定された指定走行経路パターンと前記作業地データとに基づいて前記指定走行経路パターンに対応する前記走行経路を生成する走行経路生成部と、ユーザによる走行経路イメージの手書き入力を受け付けるタッチパネルと、前記手書き入力から手書き軌跡を検出し、検出された手書き軌跡に基づいて
、予め登録されている走行経路パターン群から合致する走行経路パターンを前記指定走行経路パターンとして前記走行経路生成部に与える走行経路パターン決定モジュールとを備えている。
【0007】
この構成によれば、指定された作業地での作業車による作業を管理するユーザ(運転者や監視者など)が所望する作業車の走行経路イメージを、タッチパネルに手書きで描き込むことで、前もって記録されている走行経路パターン群から、その走行経路イメージに近い走行経路パターンが選択され、前記走行経路パターンがユーザによって指定された指定走行経路パターンとして走行経路生成部に与えられる。この指定走行経路パターンに基づいて、走行経路生成部は、作業地の外形データから得られる作業地領域を作業するために必要な走行経路を生成する。したがって、生成された走行経路は、ユーザのイメージに合致する。しかも、ユーザが所望する走行経路イメージは、ラフな手書きで入力することができるので、ユーザの入力操作負担が少ない。
【0008】
ユーザがイメージする走行経路は、作業地の外形に影響される。このため、作業地の外形とイメージする走行経路との位置関係を明確にすることが重要である。したがって、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記手書き入力時には、前記タッチパネルの表示パネル部に前記作業地の外形データに基づく作業地外形が表示されるように構成されている。
タッチパネルに表示された作業地の外形の上から、走行経路イメージを手書きすることができるので、作業地の外形とイメージする走行経路との位置関係を誤ることなく、走行経路イメージを手書き入力することができる。さらに、作業地データに、作業地に存在する障害物が含まれていれば、その障害物を回避する走行経路を描くことができるので好都合である。
【0009】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記走行経路パターン群から合致する走行経路パターンとして複数の走行経路パターンが決定された場合、前記タッチパネルの表示パネル部に前記複数の走行経路パターンが表示され、前記複数の走行経路パターンからユーザが前記指定走行経路パターンを選択できる。これにより、手書き入力から走行経路パターンの決定が困難な場合でも、より確実な選択が可能となる。
【0010】
作業地の面積が大きい場合は、その形状が複雑な場合、作業地を複数の領域に分割し、それぞれの領域を別個の走行経路で作業する必要がある。このような状況においても、本発明による走行経路生成装置を適用可能とするために、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記作業地を複数の作業区画に分割するための分割線が前記タッチパネルでの手書き入力によって指定され、前記作業区画毎に前記指定走行経路パターンが決定されるように構成されている。この構成では、まず、作業地を分割する分割線を手書きで入力することで、作業地は分割されるので、分割された作業区画毎に手書き入力によって、指定走行経路パターンを決定することができる。
【0011】
走行経路の始点は、一般的には、出入口に隣接する位置となるので、デフォルトで走行経路の始点は出入口に設定されることが好ましい。しかしながら、出入口が複数ある場合や、ユーザが特定の位置を走行経路の始点にしたい場合には、ユーザによって走行経路の始点を指定する必要がある。このため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記走行経路の始点が前記タッチパネルでの手書き入力によって指定されるように構成されている。
このような始点の指定は、タッチパネルでの手書き入力の一形態としてのタッチパネルに対する長押し操作などで入力することが可能である。
【0012】
この走行経路生成装置が、作業車に装備されている場合や、作業車の乗務者が携帯する通信端末に構築されている場合、作業車の現在位置を走行経路の始点とすれば、作業車は、生成された走行経路に沿う走行にスムーズに移行することができる。このことを実現するため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記作業車の自車位置を受け取る通信制御部が備えられ、前記走行経路の始点を前記作業車の自車位置とするように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明による走行経路生成装置における処理の流れを説明する説明図である。
【
図2】走行経路生成装置によって生成された走行経路に基づいて、有人または無人で走行する作業車の一例であるトラクタの側面図である。
【
図3】走行経路生成装置として機能する携帯通信端末と、トラクタとにおける基本的な制御機能部を示す機能ブロック図である。
【
図4】走行経路生成装置におけるデータの流れを示すデータ流れ図である。
【
図5】走行経路パターン決定モジュールにおける手書き入力処理を説明する説明図である。
【
図6】走行障害物を回避する走行経路の手書き入力処理を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1には、本発明による走行経路生成装置における処理の基本的な流れが模式的に示されている。サーバなどからダウンロードされた作業地情報に含まれている作業地データ、特に作業地の外形データが入力されると、この外形データに基づく作業地外形の外形輪郭線がメモリに展開され、この外形輪郭線がタッチパネル42に表示される。なお、外形データが含まれていない場合には、地図情報である作業地データから作成することも可能である。ユーザは、所望する走行経路イメージを、外形輪郭線の内側の領域に手書きする。
例えば、作業地の中心から渦巻き状に外周に向かって走行する螺旋走行パターンを所望する場合には、
図1の左側のタッチパネル42に示すような渦巻きを手書きする。あるいは、圃場の耕耘作業や刈取り収穫作業によく用いられる、直進とUターンとの繰り返しからなる直進往復走行パターンを所望する場合には、
図1の右側のタッチパネル42に示すような複数の直線列を手書きする。
【0015】
走行経路パターン決定処理により、手書き入力された入力データから手書き軌跡が検出され、検出された手書き軌跡に基づいて走行経路パターン群から合致する走行経路パターンが指定走行経路パターンとして抽出される。指定走行経路パターンは、行経路生成処理に用いられる。走行経路生成処理では、指定走行経路パターンと、作業地の外形や出入口などを含む作業地データ及び作業幅や適正旋回半径などを含む作業データとに基づいて、指定走行経路パターンに対応する走行経路が生成される。
【0016】
走行経路生成処理で生成された走行経路は、作業車の制御系において、目標走行経路として設定される。作業車が自動走行する場合には、自車位置を目標走行経路に合わせる自動操舵が実行される。作業車が手動走行する場合には、ディスプレイに目標走行経路と自車位置とを表示して、運転者の操舵を支援する。
【0017】
図2には、走行経路生成装置によって生成された走行経路に基づいて、有人または無人で走行する作業車の一例であるトラクタが示されている。このトラクタは、畦によって境界づけられた圃場(作業地)に対して耕耘作業を行うロータリ耕耘装置を作業装置30として装備している。このトラクタは、前輪11と後輪12とによって支持された車体1の中央部に操縦部20が設けられている。車体1の後部には油圧式の昇降機構31を介して作業装置30を昇降可能に支持している。前輪11は操向輪として機能し、その操舵角を変更することでトラクタの走行方向が変更される。前輪11の操舵角は操舵機構13の動作によって変更される。操舵機構13には自動操舵のための操舵モータ14が含まれている。手動走行の際には、前輪11の操舵は操縦部20に配置されているステアリングホイール22の操作によって可能である。トラクタのキャビン21には、GNSSモジュールやGPSモジュールとして構成される衛星測位モジュール80が設けられている。衛星測位モジュール80の構成要素として、GPS信号やGNSS信号を受信するための衛星用アンテナがキャビン21の天井領域に取り付けられている。なお、衛星測位モジュール80には、衛星航法を補完するために、ジャイロ加速度センサや磁気方位センサを組み込んだ慣性航法モジュールを含めることができる。もちろん、慣性航法モジュールは、衛星測位モジュール80とは別の場所に設けてもよい。
【0018】
図3には、このトラクタに構築されている制御系と、このトラクタの動きを監視する監視者(運転者)が携帯する携帯通信端末4の制御系が示されている。この実施形態では、この携帯通信端末4には、本発明による走行経路生成装置を構成する各機能部が、実質的にはコンピュータプログラムの形で組み込まれている。この携帯通信端末4に構築された走行経路生成装置は、この実施形態では、走行経路生成部60、作業地データ入力部67、走行経路パターン決定モジュール6、分割データ生成部65、始点データ生成部66を備えている。
【0019】
それ以外に、携帯通信端末4は、通信制御部40や表示制御部41やタッチパネル42など、一般的なコンピュータシステムの諸機能を備えている。携帯通信端末4は、無線通信または有線通信によってデータ交換可能に、トラクタの制御系の中核要素である制御ユニット5と接続可能である。さらに、携帯通信端末4は、遠隔地の管理センタKSに構築された管理コンピュータ100とも、無線回線やインターネットを通じて、データ交換可能である。この実施形態では、作業地としての圃場の地形図や圃場の属性情報などを含む圃場情報は、管理コンピュータ100の圃場情報格納部101に格納されており、この圃場情報は、走行経路の生成に必要となる。管理コンピュータ100は、指定された圃場での走行作業を記述した作業計画書を管理している作業計画管理部102も備えている。携帯通信端末4は、管理コンピュータ100にアクセスし、圃場情報格納部101から作業対象となる圃場の圃場情報を抽出し、ダウンロードする。ダウンロードされた圃場情報は作業地データ入力部67に与えられる。
【0020】
作業地データ入力部67は、与えられた圃場情報から外形データを取り出して、表示制御部41や走行経路生成部60など、外形データを必要とする機能部に与える。走行経路生成部60は、走行経路パターン決定モジュール6を通じてユーザによって指定された指定走行経路パターンをベースとして、作業地データ入力部67から与えられた外形データ及び作業幅や旋回半径などのトラクタ仕様を参照して、指定走行経路パターンに対応する走行経路を生成する。
【0021】
走行経路パターン決定モジュール6は、ユーザがタッチパネル42を用いて、手書き入力した所望の走行経路イメージから指定走行経路パターンを決定する。この実施形態では、走行経路パターン決定モジュール6は、タッチ検出部61、軌跡検出部62、タッチ操作判定部63、パターン認識部64を備えている。タッチ検出部61は、タッチパネル42に対する押圧点の座標を継時的に検出して、軌跡検出部62に与える。軌跡検出部62は、押圧点の継時的な動きからユーザが入力した手書き軌跡を検出して、ベクトルデータ化またはビットマップデータ化して、メモリに記録する。なお、軌跡検出部62は、実質的に動きのない押圧点を長押し点とみなして、メモリに記録する。タッチ操作判定部63は、メモリに記録された手書き軌跡から、走行経路パターンのイメージを表すものをパターン認識部64に与える。パターン認識部64は、与えられた手書き軌跡データから、パターン認識技術を用いて、予め登録されている走行経路パターン群から、合致する走行経路パターンを抽出して、指定走行経路パターンとして、走行経路生成部60に与える。
【0022】
なお、タッチ操作判定部63は、メモリに記録された手書き軌跡が、圃場(作業地)の分割線の可能性が高いと判定した場合には、手書き軌跡のデータを分割データ生成部65に与える。また、タッチ操作判定部63は、メモリに記録された手書き軌跡が長押し点である可能性が高いと判定すると、その長押し点のデータを始点データ生成部66に与える。
【0023】
次に、
図4を用いて、携帯通信端末4に構築された走行経路生成装置における走行経路作成処理の流れを説明する。
作業地データ入力部67がこれから作業を行う圃場の情報からその外形データを取り出して表示制御部41に与える。表示制御部41は、受け取った外形データに基づいて、圃場の外形を概略的に示す圃場外形線をタッチパネル42の表示パネル部に表示する。ユーザは、圃場外形線の内側に、これから行う走行作業において所望する走行経路パターンのイメージを手書き入力する。その際、走行作業の出発点あるいは出入口を指定したい場合は、長押しなどの操作形態で、その場所の指定を行うことができる。また、圃場を分割し、分割された作業区画毎に走行作業を行う場合には、圃場に対する分割線を手書き入力する。ユーザが手書き入力した内容が、走行経路パターンのイメージを示す手書き軌跡、出発点、分割線のいずれであるかは、タッチ操作判定部63によって判定される。
【0024】
ユーザの手書き入力に対するタッチ操作判定部63による判定結果が、分割線であれば、その分割線を示すデータが分割データ生成部65によってメモリから読み出される。読み出されたデータに基づいて、分割データ生成部65は、圃場を分割する分割データを生成して、走行経路生成部60に与える。ユーザの手書き入力に対するタッチ操作判定部63による判定結果が、始点(または出入口)であれば、そのデータが始点データ生成部66によって読み出される。読み出されたデータに基づいて、始点データ生成部66は、走行経路の始点を設定する始点データを生成して、走行経路生成部60に与える。
【0025】
ユーザの手書き入力に対するタッチ操作判定部63による判定結果が、走行経路パターンのイメージを示す手書き軌跡であれば、その軌跡データがパターン認識部64によって読み出される。パターン認識部64は、読み出された軌跡データをパターン認識の入力データとし、指定走行経路パターンを決定する。
【0026】
なお、ユーザの手書き入力による手書き軌跡から、パターン認識部64が走行経路パターンを1つに決定できなかった場合には、類似する複数の走行経路パターンを合致する走行経路パターンとして決定し、その複数の走行経路パターンをタッチパネル42の表示パネル部に表示し、ユーザによって選択されるように構成することも可能である。
【0027】
ユーザがイメージする走行経路パターンがタッチパネル42に手書き入力されると、
図5に示すように、走行経路パターン決定モジュール6は、その手書き入力の内容に応じて決定された指定走行経路パターンを走行経路生成部60に与える。例えば、横方向直進とUターンとの組み合わせである横往復直進走行パターン、縦方向直進とUターンとの組み合わせである縦往復直進走行パターン、渦巻走行パターンなどは、指定走行経路パターンとして走行経路生成部60に与えられる。なお、圃場の分割や走行経路の始点は、それぞれ、分割データ生成部65と始点データ生成部66とによって処理され、走行経路生成補助データとして、走行経路生成部60に与えられる。走行経路生成部60は、走行経路パターン決定モジュール6によって与えられる指定走行経路パターン毎に分けられた走行経路生成アルゴリズムを備えており、与えられた指定走行経路パターンと、外形データ、及び走行経路生成補助データに基づいて、走行経路を生成する。生成された走行経路は、トラクタによる走行作業時の目標走行経路として、制御ユニット5に転送される。制御ユニット5では、走行経路生成部60によって生成された走行経路を示す走行経路データが走行経路設定部55に転送されると、これを、走行経路設定部55が目標走行経路として設定する。自動走行時には、自動走行制御部52が、この目標走行経路としての走行経路データと、自車位置とに基づいて、自動操舵指令を生成する。
【0028】
上述した説明では、圃場には、走行障害物が存在していないと見なしていたが、実際の圃場には、井戸や送電鉄塔など種々の走行障害物が存在していることがある。そのような既知の走行障害物が、圃場の情報に含まれておれば、タッチパネル42の表示パネル部に、走行障害物を示す障害マークを圃場外形線とともに表示することができる。障害マークは走行障害物の大きさに対応してその大きさを変えてもよい。ユーザは、走行経路パターンのイメージを示す手書き入力する際、表示された圃場外形線内に障害マークが含まれている場合には、
図6に示されているように、その障害マーク(走行障害物)を回避するような走行経路パターンをラフに描く。このように手書き入力された障害物回避を含む走行経路の軌跡に基づいて、走行経路パターン決定モジュール6は、障害物回避経路を含む指定走行経路パターンを決定する。走行障害物の正確な座標位置は圃場の情報に含まれているので、走行経路生成部60は、走行経路パターン決定モジュール6によって決定された指定走行経路パターンに基づいて、障害物回避経路を含む正確な走行経路データを生成することができる。
【0029】
なお、実際の圃場には走行障害物が存在しているにも関わらず、走行障害物のデータが圃場の情報に含まれていない場合は、タッチパネル42を通じて、走行障害物の位置や大きさなどのデータを手書き入力することも可能である。
【0030】
図3に示すように、トラクタの制御系の中核要素である制御ユニット5には、入出力インタフェースとして機能する、出力処理部7、入力処理部8、通信処理部70が備えられている。出力処理部7は、トラクタに装備されている、車両走行機器群71、作業装置機器群72、報知デバイス73などと接続している。車両走行機器群71には、操舵モータ14をはじめ、図示されていないが変速機構やエンジンユニットなど車両走行のために制御される機器が含まれている。作業装置機器群72には、作業装置30の駆動機構や、作業装置30を昇降させる昇降機構31などが含まれている。報知デバイス73には、ディスプレイやランプやスピーカが含まれている。特に、ディスプレイには、圃場の外形とともに、走行済の走行経路(走行軌跡)やこれから走行すべき走行経路など、種々の報知情報が表示される。ランプやスピーカは、走行注意事項や自動操舵走行での目標走行経路からの外れなど、注意情報や警告情報を運転者や監視者に報知するために用いられる。通信処理部70は、制御ユニット5で処理されたデータを管理コンピュータ100に送信するとともに、管理コンピュータ100から種々のデータを受信する機能を有する。
【0031】
入力処理部8は、衛星測位モジュール80、走行系検出センサ群81、作業系検出センサ群82、自動/手動切替操作具83などと接続している。走行系検出センサ群81には、エンジン回転数や変速状態などの走行状態を検出するセンサが含まれている。作業系検出センサ群82には、作業装置30の位置や傾きを検出するセンサ、作業負荷などを検出するセンサなどが含まれている。自動/手動切替操作具83は、自動操舵で走行する自動走行モードと手動操舵で走行する手動操舵モードとのいずれかを選択するスイッチである。
【0032】
さらに、制御ユニット5には、走行制御部50、作業制御部54、自車位置算出部53、走行経路設定部55、報知部56が備えられている。自車位置算出部53は、衛星測位モジュール80から送られてくる測位データに基づいて、自車位置を算出する。車両走行機器群71を制御する走行制御部50には、このトラクタが自動走行(自動操舵)と手動走行(手動操舵)の両方で走行可能に構成されているため、手動走行制御部51と自動走行制御部52とが含まれている。手動走行制御部51は、運転者による操作に基づいて車両走行機器群71を制御する。自動走行制御部52は、走行経路設定部55で設定された走行経路と自車位置との間の方位ずれ及び位置ずれを算出し、自動操舵指令を生成し、出力処理部7を介して操舵モータ14に出力する。作業制御部54は、作業装置30の動きを制御するために、作業装置機器群72に制御信号を与える。報知部56は、ディスプレイなどの報知デバイス73を通じて運転者や監視者に必要な情報を報知するための報知信号(表示データや音声データ)を生成する。
【0033】
走行経路設定部55は、走行経路生成部60によって生成された走行経路を携帯通信端末4から通信処理部70を介して受け取り、目標走行経路として設定する。走行経路には、出発点が示されているので、作業の開始時には、トラクタを出発点まで運転する。その後は、自動走行または手動走行で、設定された走行経路に沿った走行が行われる。
【0034】
〔別実施の形態〕(1)トラクタの走行系検出センサ群81にレーザレーダ(LIDAR)などの走行障害物検出センサが含まれており、走行経路生成部60が障害物回避走行経路を生成する機能を有する場合、タッチパネル42を通じて障害物回避走行経路を手書き入力して、その結果としての障害物回避走行経路を走行経路パターン決定モジュール6が決定して、走行経路生成部60に与えることも可能である。このような構成によれば、走行中に走行障害物が検出されても、ユーザが所望する障害物回避経路で走行障害物を回避することができる。その際、走行障害物の大きさに基づいて、別な障害物回避走行経路が実行されるように、走行障害物の大きさごとに障害物回避走行経路を手書き入力してもよい。
(2)
図3で示された機能ブロック図における各機能部は、主に説明目的で区分けされている。実際には、各機能部は他の機能部と統合または複数の機能部に分けることができる。例えば、携帯通信端末4に構築された走行経路生成装置の全体またはその一部を管理コンピュータ100や作業車の制御ユニット5に構築してもよい。
(3)上述した実施形態では、作業車として、ロータリ耕耘機を作業装置30として装備したトラクタを、作業車として取り上げたが、そのようなトラクタ以外にも、例えば、田植機、施肥機、コンバインなどの農作業車にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明による走行経路生成装置は、設定された走行経路に沿って作業地を作業する作業車のために適用可能である。走行経路に沿った走行は、手動走行であってもよいし、自動走行であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
4 :携帯通信端末
40 :通信制御部
41 :表示制御部
42 :タッチパネル
5 :制御ユニット
52 :自動走行制御部
55 :走行経路設定部
6 :走行経路パターン決定モジュール
60 :走行経路生成部
61 :タッチ検出部
62 :軌跡検出部
63 :タッチ操作判定部
64 :パターン認識部
65 :分割データ生成部
66 :始点データ生成部
67 :作業地データ入力部