特許第6701134号(P6701134)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6701134
(24)【登録日】2020年5月8日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】車椅子固定装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/10 20060101AFI20200518BHJP
   A61G 3/08 20060101ALI20200518BHJP
【FI】
   A61G5/10
   A61G3/08
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-145149(P2017-145149)
(22)【出願日】2017年7月27日
(65)【公開番号】特開2019-24683(P2019-24683A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2018年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 茂
【審査官】 小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−088566(JP,A)
【文献】 特開2004−299504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/10
A61G 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後に車輪を有する車椅子を車体に固定するための車椅子固定装置であって、
前記車体に固定した前記車椅子の少なくとも前輪をフロアから上方に変位させる上方変位機構部と、
前記車椅子を車体後部側に固定するためのシートベルト装置と、
車体側に設けられ、前記車椅子の前部を車体側に固定するための固定手段と、を有し、
前記上方変位機構部は、前記車椅子の後輪の車軸よりも前側のフレームに固定される車椅子側固定部と、
前記固定手段に着脱可能に固定される車体側固定部と、
前記車椅子側固定部と前記車体側固定部との間に配置した前側リンク機構と、を有し、
前記前側リンク機構は、前記車椅子側固定部に対して前記車体側固定部を下方に相対変位させることで、前記車椅子の前輪を上方に変位させることが可能であること、
を特徴とする車椅子固定装置。
【請求項2】
前記車体側固定部は、前記固定手段に係合する係合部を有し、
前記前側リンク機構を下方に相対変位させることで、前記係合部が前記固定手段に係合して移動不能に固定されるとともに、
前記前側リンク機構を上方に相対変位させることで、前記固定手段との係合が解除されて上方に移動可能となること、
を特徴とする請求項1に記載の車椅子固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子を車体に固定するための車椅子固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車椅子を車体のフロアに固定するものとしては、例えば、特許文献1に記載された車椅子固定装置が知られている。その車椅子固定装置は、フロア前部に設けられてフックを備えた左右一対の前脚ベルトと、フロア後部に設けられてフックを備えた左右一対の後部固定ベルトと、後部固定ベルトを巻き取るベルト巻取装置とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−300609号公報(図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の車椅子固定装置は、車椅子を車体に固定する場合、車椅子の車輪が車体のフロアに接地した状態で固定されている。このため、車両が走行中に上下方向等に揺れた際には、その車両の揺れによる荷重が車輪に入力されて、車輪に負荷がかかるという問題点があった。
特に乗員が乗った車椅子を車体に固定した場合は、走行中の衝撃荷重と、乗員の体重と、車椅子の荷重とが、タイヤと、クッション機能を有していないキャスタ(前輪)とにかかるため、キャスタが故障したり、破損したりし易いという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、車椅子を車体に固定しているときに、車椅子の車輪にかかる負荷を低減させることが可能な車椅子固定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の車椅子固定装置は、前後に車輪を有する車椅子を車体に固定するための車椅子固定装置であって、前記車体に固定した前記車椅子の少なくとも前輪をフロアから上方に変位させる上方変位機構部と、前記車椅子を車体後部側に固定するためのシートベルト装置と、車体側に設けられ、前記車椅子の前部を車体側に固定するための固定手段と、を有し、前記上方変位機構部は、前記車椅子の後輪の車軸よりも前側のフレームに固定される車椅子側固定部と、前記固定手段に着脱可能に固定される車体側固定部と、前記車椅子側固定部と前記車体側固定部との間に配置した前側リンク機構と、を有し、前記前側リンク機構は、前記車椅子側固定部に対して前記車体側固定部を下方に相対変位させることで、前記車椅子の前輪を上方に変位させることが可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、車椅子を車体に固定しているときに、車椅子の車輪にかかる負荷を低減させることが可能な車椅子固定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係る車椅子固定装置を示す図であり、車椅子固定装置で車椅子を固定する前の状態を示す概略側面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る車椅子固定装置を示す図であり、車椅子固定装置で車椅子を固定しているときの状態を示す概略側面図である。
図3】(a)はシートを示す概略斜視図、(b)はシートベルトでシートを車椅子にするときの状態を示す要部概略斜視図である。
図4】固定手段の使用時の状態を示す図であり、(a)は要部拡大概略平面図、(b)は要部拡大概略側面図である。
図5】固定手段の未使用時の状態を示す図であり、(a)は要部拡大概略平面図、(b)は要部拡大概略側面図である。
図6】前側リンク機構を示す拡大概略側面図である。
図7】ロック機構のロック時の状態を示す拡大断面模式図である。
図8】ロック機構のアンロック時の状態を示す拡大断面模式図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る車椅子固定装置によって車体に固定される車椅子を示す概略側面図である。
図10】本発明の第2実施形態に係る車椅子固定装置によって車体に固定される車椅子を示す概略正面図である。
図11】本発明の第2実施形態に係る車椅子固定装置を示す図であり、車椅子を車体に固定しているときの状態を示す概略側面図である。
図12】本発明の第2実施形態に係る車椅子固定装置を示す図であり、車椅子を車体に固定する前の状態を示す概略側面図である。
図13】本発明に係る車椅子固定装置の変形例を示す図であり、固定手段の未使用時の状態を示す要部拡大概略平面図である。
図14】本発明に係る車椅子固定装置の変形例を示す図であり、固定手段の使用時の状態を示す要部拡大概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
図1図8を参照して本発明の第1実施形態に係る車椅子固定装置3を説明する。
以下、「前」は車両のフロント側、「後」は車両のリア側、「上」は鉛直上方側、「下」は鉛直下方側、「左右」は車幅方向側とする。まず、車椅子固定装置3を説明する前に、図1に示す車椅子2と、車椅子2を搭載する車両1と、シートベルト装置5と、について説明する。
【0010】
≪車椅子≫
図1に示すように、車椅子2は、身体障害者や、怪我人等の乗員Mが使用するもので、大きさ、型式等は特に限定されない。以下、車椅子2として、日本工業規格JIS T9201で定めされた大型タイプのものを使用する場合を例に挙げて説明する。
車椅子2は、前輪21と、後輪22と、前輪21及び後輪22を支えるフレーム23と、フレーム23に載設されたシート24と、上方変位機構部30及び車椅子側固定部31を有する車椅子固定装置3と、を備えている。車椅子2は、例えば、左右方向に折畳み可能な折畳み式のものから成る。
【0011】
図2に示すように、車椅子2は、シートベルト装置5によって後方に引っ張られた状態に車体10に固定されると共に、車椅子2の前端部が固定手段6によって車体10に保持される。前後方向に引っ張られた状態に車体10に固定された車椅子2は、搭載された車両1が走行する際に、上方変位機構部30によって前輪21がフロア11から上昇した状態に車体10に固定される。
【0012】
図1に示すように、左右前側に配置された前輪21は、キャスタ等の小型の車輪から成る。左右後側に配置された後輪22は、前輪21よりも大きい大型の車輪から成る。
フレーム23は、例えば、前側フレーム23aと、レッグサポート部23bと、座フレーム部23cと、下側フレーム23dと、アームレスト部23eと、背もたれ部23fと、車椅子介助者用の把手23gと、を金属製パイプ材で一体に形成して成る。
【0013】
車椅子2の前部に配置された左右一対の前側フレーム23aは、上下方向に延設されている。左右の前側フレーム23aの前側下端には、左右方向中央側に延設されたレッグサポート部23bが接合されている。左右の前側フレーム23aの上端には、シート24が載設される座フレーム部23cが後方向に延設されている。左右の前側フレーム23aの中央部には、下側フレーム23dが後方向に延設されている。
背もたれ部23fは、車椅子2の後部下方から上方向に延設された左右一対のフレーム部材から成り、乗員Mの背中を支持する張設布体(図示省略)が設けられている。背もたれ部23fには、略中央部から方向に延設された左右一対のアームレスト部23eと、略中央部から後方向に延設された左右一対の把手23gと、が接合されている。
【0014】
<シート>
図3(a)、(b)に示すように、シート24は、背もたれが無いブースターシートから成る。シート24は、市販のブースタージュニアシートと同様、シートベルト51によって、車椅子2の座フレーム部23cに設けられた張設布体(図示省略)上に置かれた状態で固定される(図1参照)。シート24には、座面24aと、腰支持板部24bと、側板部24c,24dと、シートベルト配置溝24e,24fと、が形成されている。
【0015】
乗員Mが座る座面24aの左右端から上方向にそれぞれ延設された側板部24c,24dの上部には、シートベルト51を係止させるシートベルト配置溝24e,24fが切欠形成されている。シートベルト配置溝24eは、シートベルト51の腰ベルト部51aを通して支持するための切欠溝である。シートベルト配置溝24fは、シートベルト51の腰ベルト部51a及び肩ベルト部51bを通して支持するための切欠溝である。
【0016】
≪車両≫
図1に示すように、車椅子固定装置3を搭載した車両1は、車椅子2を運転席等の前席の位置に搭載可能な福祉車両である。車両1は、乗員Mがその車椅子2に乗った状態で車両1を運転する場合や、助手席の位置に車椅子2を載せる場合に、運転席あるいは助手席等の前席を後方に移動させて、車椅子2を前席の位置に配置可能になっている。車両1は、車椅子2を載置するフロア11と、フロア11に移動可能に設けられた座席(図示省略)と、車椅子2をフロア11等の車体10に固定するためのシートベルト装置5と、車椅子2をキャビン内の前部に固定するための固定手段6と、を備えている。
【0017】
<フロア及びトウボード>
フロア11は、キャビンの床面を構成する金属製板状部材によって水平に形成されている。ダッシュボードの下方のフロア11の前端には、図4及び図5に示すように、トウボード12が設けられている。トウボード12には、固定手段6が設けられている。
【0018】
≪シートベルト装置≫
図1に示すように、シートベルト装置5は、シートベルト51でシート24を車椅子2の座フレーム部23c上に固定すると共に、乗員Mの身体をシート24に拘束させ、さらに、車椅子2を車体10に固定させるための装置である。シートベルト装置5は、乗員Mの腰部及びシート24を支える腰ベルト部51aと、乗員Mの肩を支える肩ベルト部51bと、を有するシートベルト51を備えた三点シートベルト装置から成る。
シートベルト装置5は、シートベルト51と、リトラクタ(図示省略)と、スルーアンカー(図示省略)と、アンカー(図示省略)と、タング53と、バックル54と、アンカーベルト52と、Dリング55と、ダイダウンベルト56と、ベルト固定手段57と、を備えて構成されている。
【0019】
腰ベルト部51aの基端部には、車体10に固定されたアンカー(図示省略)が設けられている。肩ベルト部51bの基端側は、スルーアンカー(図示省略)を挿通して、リトラクタ(図示省略)に取り付けられている。
腰ベルト部51a及び肩ベルト部51bの先端部に設けられたタング53は、アンカーベルト52の先端のバックル54に着脱可能に装着される。アンカーベルト52の基端部には、ダイダウンベルト56に連結されるD字型の金具から成るDリング55が設けられている。ダイダウンベルト56の基端部は、フロア11上に設置されたベルト固定手段57に連結されている。ベルト固定手段57は、ダイダウンベルト56を車体後方側に引っ張った状態で車体10に固定するための固定器具である。
【0020】
≪車椅子固定装置≫
図1及び図2に示すように、車椅子固定装置3は、前輪21及び後輪22を有する車椅子2をフロア11、トウボード12(図4及び図5参照)等の車体10に固定するための装置である。車椅子固定装置3は、車椅子2を車体後部に固定する前記シートベルト装置5と、車椅子2の前部を車体10に固定するための固定手段6と、少なくとも前輪21をフロア11からを上方に変位させる上方変位機構部30と、を備えている。
【0021】
<上方変位機構部>
上方変位機構部30は、車椅子2を固定手段6で車体10に固定しているときに、操作部35bを前方向に操作して前側リンク機構33を駆動させることで、前輪21を接地面から上昇させるための装置である。上方変位機構部30は、車椅子2の後輪22の車軸22aよりも前側のフレーム23に固定される車椅子側固定部31と、車体10側に固定される車体側固定部32と、車椅子側固定部31と車体側固定部32との間に配置した前側リンク機構33と、を有している。上方変位機構部30は、車椅子2の前端部の左右両側に設けられている。
【0022】
<車椅子側固定部>
車椅子側固定部31は、車椅子2のパイプ状の前側フレーム23aにネジ部材(図示省略)等によって固定された筒状部材から成る。図6に示すように、車椅子側固定部31は、前側リンク機構33の後側リンクの役目を果す車椅子固定リンク31aと、前側上部から前方向に向けて突設された連結片31bと、前側下部から前方向に向けて突設された連結片31cと、を備えている。
【0023】
<車体側固定部>
車体側固定部32は、車椅子2の前端を前側リンク機構33及び固定手段6を介在して車体10側に固定するための固定箇所である。車体側固定部32は、前側リンク機構33の前端に配置された前側リンク34の下端部に設けられている。車体側固定部32には、トウボード12に枢支された固定手段6のステイアーム61の先端に装着されたリンク取付具60が取り付けられる(図4(a)参照)。
【0024】
<前側リンク機構>
図6に示す前側リンク機構33は、操作用リンク35の操作部35bを操作して駆動させることで、車椅子2の前部に取り付けた車椅子固定リンク31a(車椅子側固定部31)及び前輪21側を上方に変位させることが可能なリンク機構である。前側リンク機構33は、車椅子固定リンク31aと、操作用リンク35と、媒介リンク36と、前側リンク34と、車椅子固定リンク31aに軸支された下側リンク37と、をそれぞれリンク連結具38a〜38dで順次回動自在に連結した五節リンク機構から成る。
【0025】
操作用リンク35は、前側リンク機構33を駆動させるためのリンク部材である。操作用リンク35は、連結片31bと媒介リンク36との間に介在された駆動リンク部35aと、駆動リンク部35aの前端からL字状に曲げて形成された操作部35bと、L字形状の操作用リンク35を補強するための補強部材35cと、を備えている。
【0026】
駆動リンク部35aの後端部は、リンク連結具38aによって車椅子側固定部31の連結片31bに回動自在に連結されている。駆動リンク部35aの前端部は、リンク連結具38bによって媒介リンク36の後端部に回動自在に連結されている。
操作部35bは、フロア11上にある前輪21を、図2に示すように、フロア11から上昇させるための操作を行うレバーである。図6に示すように、操作用リンク35を後方(矢印e方向)に操作すると、車体側固定部32が上昇すると共に、駆動リンク部35aと媒介リンク36が山形状に屈曲する。また、操作用リンク35を前方(矢印f方向)に操作すると、車体側固定部32が下降すると共に、駆動リンク部35aと媒介リンク36が谷状に屈曲する。
補強部材35cは、てこの支点の役目をする駆動リンク部35aと操作部35bとの連結部の近傍に架設されている。
【0027】
前側リンク34の中央部には、下側リンク37の前端部が固定されている。前側リンク34の上端部には、長孔34aに遊挿されたリンク連結具38cにより、媒介リンク36の前端側が回動自在及び上下動可能に連結されている。前側リンク34の下端部の車体側固定部32には、リンク取付具60により、ステイアーム61の後端部が着脱可能に取り付けられる。前側リンク34には、ロック機構4(図7参照)が設けられている。ロック機構4は、車体側固定部32がリンク取付具60から脱落するのを防止する機構である。ロック機構4は、プッシュロッド41と、ばね部材42と、球体43,44と、を備えている(図7参照)。なお、前側リンク34及びロック機構4は、後で詳述する。
【0028】
図6に示すように、前記下側リンク37の後端部は、リンク連結具38dによって車椅子固定リンク31aの連結片31cに回動自在に連結されている。
このように構成された前側リンク機構33は、操作部35bを前後方向(矢印e,f方向)に操作すると、図6に示すように、車椅子側固定部31を固定リンクとして、上下方向に回動する。つまり、媒介リンク36を回動自在に連結した操作用リンク35は、リンク連結具38aを中心として上下方向(矢印i,j方向)に回動する。前側リンク34及び下側リンク37は、リンク連結具38dを中心として上下方向(矢印g,h方向)に回動する。よって、前側リンク34の前側下端部の車体側固定部32は、上下方向に高さH1上下動する。
【0029】
次に、図2に示すように、前輪21をフロア11から上昇させる場合の動作を説明する。まず、図6に示すように、操作部35bを後方向(矢印e方向)に操作して車体側固定部32を上方向に移動させる。
次に、車椅子2を前進させて、車体側固定部32をリンク取付具60の上に配置する。このとき、車体側固定部32とリンク取付具60との間隔H2は、高さH1以下である(H2<H1)。
続いて、操作部35bを前方向に任意の第1段階位置f1まで操作して車体側固定部32を降下させると、車体側固定部32がリンク取付具60に嵌る。
さらに、操作部35bを前方向の任意の第2段階位置f2まで操作すると、高さH3(H3=H1−H2)だけ前輪21がフロア11から上昇する。
【0030】
次に、図7を参照して、前記した前側リンク34の形状等を詳述する。前側リンク34には、長孔34aと、縦穴34bと、ばね部材設置穴34cと、球体配置孔34dと、膨出部34eと、が形成されている。
長孔34aは、媒介リンク36と前側リンク34とを回動自在に連結したリンク連結具38cを、上下方向に所定距離だけ移動可能に支持するための軸支孔である。
縦穴34bは、プッシュロッド41が上下動可能に挿入される穴である。縦穴34bは、前側リンク34の上端面から下端部の膨出部34eの内部まで形成されている。
ばね部材設置穴34cは、ばね部材42を設置するための穴である。ばね部材設置穴34cは、縦穴34bの下側に連続形成されている。
球体配置孔34dは、球体43,44を出没自在に挿設するための貫通孔である。球体配置孔34dは、縦穴34bの下端部寄りの位置に直交して横設されている。
膨出部34eは、リンク取付具60の取付部本体60aの内側に係合するように、取付部本体60aの内面形状に合わせて略球状に形成されている。
【0031】
<リンク取付具>
図6に示すように、リンク取付具60は、ステイアーム61を前側リンク34の下端部の車体側固定部32に着脱可能に取り付けるための取付部材である(図7及び図8参照)。ステイアーム61の先端に装着されたリンク取付具60は、上方変位機構部30の操作部35bを後方向(矢印e方向)に操作したときの車体側固定部32の位置よりも、高さH2低い位置に配置されている。また、リンク取付具60は、上方変位機構部30の操作部35bを前方向(矢印f方向)に操作したときの車体側固定部32の位置よりも、高さH3高い位置に配置されている。
図7及び図8に示すように、リンク取付具60は、例えば、側面視して略クリップ状の弾性部材によって形成されている。リンク取付具60は、前側リンク34の下端部の膨出部34eに係合する取付部本体60aと、球体43,44をそれぞれ支持する球体支持部60bと、車体側固定部32を膨出部34eに着脱させるための着脱操作部60cと、を一体形成して成る。
【0032】
取付部本体60aは、側面視して、膨出部34eの形状に合わせて略半円状に形成されている。球体支持部60bは、球体43,44の左右外側部位が係合するように、取付部本体60aの上端に曲面状に連続形成されている。着脱操作部60cは、球体支持部60bの上端から斜め外側上方向に向けて拡開するように形成された突起から成る。
着脱操作部60cは、リンク取付具60の上に配置した車体側固定部32を下降させたときに、車体側固定部32を取付部本体60a内に導いて係合させるためのガイドの機能を果す(図6参照)。また、着脱操作部60cは、指や工具で広げることによって、膨出部34eを係合させた車体側固定部32から離脱できるように構成されている。
【0033】
<ロック機構>
図7及び図8に示す前記したロック機構4は、車体側固定部32に取り付けたリンク取付具60をロック・アンロック自在に保持する装置である。ロック機構4において、前側リンク34は、ロック機構4の各部材を支持する筐体を構成している。
【0034】
プッシュロッド41は、前側リンク34の縦穴34bに上下動可能に挿入された棒状部材である。プッシュロッド41は、上端部に媒介リンク36連結用のリンク連結具38cを直交状態に連結し、下端面にばね部材42を配置し、下端部外周に球体43,44に当接するテーパ形状部41aを有している。プッシュロッド41は、図6に示すように、操作部35bを後方向(矢印e方向)に操作した状態の場合、媒介リンク36が長孔34aに対して上昇したアンロック状態にある(図8参照)。また、プッシュロッド41は、操作部35bを前方向(矢印e方向)に操作した状態の場合、媒介リンク36が長孔34aに対して下降したロック状態にある(図7参照)。
【0035】
プッシュロッド41は、図8に示すように、アンロック時に、ばね部材42によって上方向に押されて上昇した位置状態にある。プッシュロッド41が上昇しているとき、下部のテーパ形状部41aは、球体43,44から離間して、球体43,44を径方向に遊動する状態にしている。このため、アンロック時には、リンク取付具60は、球体43,44によって保持されないので、容易に係合・離脱可能になっている。
【0036】
プッシュロッド41は、図7に示すように、ロック時に、リンク連結具38c及び媒介リンク36の下降によって、ばね部材42のばね力に抗して下降する。下降したプッシュロッド41の下部の大径部は、球体43,44を径方向外側に移動させてリンク取付具60に押し当てる。このため、ロック時には、リンク取付具60を車体側固定部32から脱落できないようにロック状態にする。
【0037】
ばね部材42は、下端がばね部材設置穴34cの内底に固定され、上端がプッシュロッド41の下端面を常に上方向に押圧して付勢する圧縮コイルばねから成る。
球体43,44は、図8に示すように、アンロック時に、プッシュロッド41のテーパ形状部41aと、リンク取付具60の球体支持部60bとの間の球体配置孔34d内に没入した状態に配置されている。球体43,44は、図7に示すように、ロック時に、下降したプッシュロッド41の大径部によって外方向に押圧されて、リンク取付具60の球体支持部60bを外方向に押し広げて、リンク取付具60を保持する。
【0038】
≪固定手段≫
固定手段6は、図2に示すように、前席に配置された車椅子2の前部を車体10に固定するための固定装置である。固定手段6は、図4に示すように、トウボード12に突設された軸支部62と、軸支部62に水平に回動自在に軸支されたステイアーム61と、ステイアーム61の後端部を車体側固定部32に着脱可能に連結するためのリンク取付具60と、を備えている。
【0039】
図2に示すように、ステイアーム61は、車椅子2の前輪21をフロア11上から上昇させているときに、車椅子2の前端にある前側リンク機構33の前側下端部(車体側固定部32)を、下降しないように所定の高さに保持するための保持部材である。
ステイアーム61の前端部には、図4(a)、(b)に示すように、軸支部62に水平方向に回動可能に軸支された軸部61aを有している。ステイアーム61は、使用する際に、後方向(矢印a方向)に回動させて、トウボード12から突出した状態にして、リンク取付具60によって車体側固定部32に連結される。
また、ステイアーム61は、未使用時に、図5(a)、(b)に示すように、車幅方向に延在するトウボード12側(矢印b方向)に傾倒させた状態に配置される。
軸支部62は、ステイアーム61の軸部61aを回動自在に軸支する軸孔を有する左右一対の軸支片である。軸支部62は、トウボード12から後方に向けて水平に突設されている。
【0040】
≪第1実施形態の作用≫
次に、本発明の第1実施形態に係る車椅子固定装置3の作用を説明する。
図1に示す車椅子2を運転席の位置に搭載する場合は、フロントドア(図示省略)を開けて、運転席の座席を車体10の後方に移動させ、乗員Mが乗っている車椅子2を運転席の位置に配置する。続いて、図3(b)に示すように、シートベルト51及びアンカーベルト52をシート24に装備する。
【0041】
次に、図5(a)、(b)に示す未使用時の状態になっている左右一対のステイアーム61を、図4(a)、(b)に示すように、後方向(矢印a方向)に回動させる。続いて、図6に示すように、操作部35bを後方向(矢印e方向)に操作して車体側固定部32を上方向に移動させる。次に、車椅子2を前進させて、車体側固定部32をリンク取付具60の上に配置する。続いて、操作部35bを前方向(矢印f方向)の任意の第1段階位置f1まで回動操作して車体側固定部32を高さH2降下させ、車体側固定部32をリンク取付具60に嵌める。すると、車椅子2の前端の車体側固定部32は、リンク取付具60を備えたステイアーム61によって、高さH2降下させたときの高さに保持される。
【0042】
続いて、さらに、操作部35bを前方向(矢印f方向)の任意の第2段階位置f2まで回動操作する。すると、前側リンク34及び下側リンク37が、車体側固定部32を中心として上方向(矢印k方向)に回動して、車椅子2の前端部の車椅子固定リンク31aを上昇させる。このため、前輪21が、図2に示すように、フロア11から高さH3上昇する。
【0043】
このとき、前側リンク機構33は、操作用リンク35と媒介リンク36とを連結したリンク連結具38bがリンク連結具38a,38cよりも下降している(図6参照)。このため、駆動リンク部35aと媒介リンク36は、谷状に屈曲した状態になり、操作用リンク35を操作してリンク連結具38bをリンク連結具38a,38cよりも上方向に引き上げない限り、前側リンク機構33全体を駆動不能なロック状態にする(図6参照)。その結果、車椅子2は、前輪21をフロア11から浮かし、後輪22だけがフロア11に載置した状態で車体10に固定されて積載される。
【0044】
また、操作部35bを前方向(矢印f方向)に操作した際に、媒介リンク36は、リンク連結具38aを中心として下方向(矢印j方向)に回動する駆動リンク部35aに押されて、図7に示すように、リンク連結具38cを下降させる。そのリンク連結具38cは、プッシュロッド41を下降させて、プッシュロッド41の下端部外周面によって球体43,44をリンク取付具60の球体支持部60bに押し当てて、リンク取付具60を車体側固定部32に固定させる。これにより、ステイアーム61に装着されたリンク取付具60は、車椅子2の前端の車体側固定部32にしっかりと連結される。
【0045】
次に、図2に示すように、車椅子2の座フレーム部23cに装備したアンカーベルト52のDリング55を、ダイダウンベルト56を介在してベルト固定手段57に固定する。すると、シート24は、基端部がアンカーに固定された腰ベルト部51aと、アンカーベルト52と、後端部がベルト固定手段57に固定されたダイダウンベルト56とによって、緩みなく車体後方側に引っ張った状態に車椅子2を介して車体側に固定される。このため、シートベルト装置5は、車両1が前面衝突した際に、乗員Mを保護することができる。
【0046】
このようにして、前輪21がフロア11から上昇した状態の車椅子2は、前側が、固定手段6のステイアーム61により車体側固定部32が一定の高さに保持され、後側が、シートベルト装置5により後方向に引っ張られた状態で、車体10に固定される。
乗員Mは、このようにして運転席の位置に固定させた車椅子2に乗った状態で車両1を運転する。
【0047】
この場合、車椅子固定装置3は、前後に車輪(前輪21及び後輪22)を有する車椅子2を車体10に固定するための車椅子固定装置3であって、車体10に固定した車椅子2の少なくとも前輪21をフロア11から上方に変位させる上方変位機構部30を有している。
これにより、上方変位機構部30は、車椅子2を車体10に固定しているときに、車椅子2の少なくとも前輪21を上方に変位させて、フロア11から上昇させることができる。このため、車椅子2の荷重、乗員Mの体重、及び、走行中の衝撃荷重が車輪に伝達されなくなる。その結果、車椅子固定装置3は、車輪及び車椅子2にかかる負荷を低減させて、前輪21の故障を防止することができると共に、前輪21の耐久性を向上させることができる。
【0048】
上方変位機構部30は、車椅子2の後輪22の車軸22aよりも前側のフレーム23に固定される車椅子側固定部31と、車体10側に固定される車体側固定部32と、車椅子側固定部31と車体側固定部32との間に配置した前側リンク機構33と、を有し、前側リンク機構33は、車椅子側固定部31に対して車体側固定部32を下方に相対変位させることで、車椅子2の前輪21を上方に変位させることが可能である。
これにより、前側リンク機構33は、簡易な構成で、車椅子2の前輪21を上方に変位させることができる。車椅子2は、前輪21を上方に変位させたことで、車椅子2を後傾姿勢にさせることができる。このため、車椅子2に着座している乗員Mを、車両1の走行中の揺れによって座っている位置からズレないように、安定した状態に着座させることができる。また、車椅子2を後傾姿勢にして運転席に固定させることができるため、乗員Mを運転し易い姿勢角度にすることができる。
【0049】
[第2実施形態]
次に、図9図12を参照して、本発明の第2実施形態に係る車椅子固定装置3Aを説明する。以下、既に説明した構成は、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0050】
≪車椅子≫
図9及び図10に示すように、車椅子2Aは、左右に前輪21と後輪22を有している。車椅子2Aのフレーム23Aは、複数の金属製パイプ材を接合して形成されている。左右のフレーム23Aは、車椅子2Aの下方にそれぞれ配置された下側フレーム23Aaに、係止ピン23Ab,23Acを有している。
【0051】
係止ピン23Abは、前後方向に延設された下側フレーム23Aaの中央部上面に、下側フレーム23Aaから横方向に突出した状態に接合されている。係止ピン23Abは、後輪22の車軸22aよりも前側に配置されている。
係止ピン23Acは、下側フレーム23Aaの後端部上面に、下側フレーム23Aaから横方向に突出した状態に接合されている。係止ピン23Acは、後輪22の車軸22aよりも後側に配置されている。
【0052】
第2実施形態の車椅子2Aは、図1に示す第1実施形態の車椅子2とは、シート24と、シートベルト装置5と、前側リンク機構33と、固定手段6と、を備えていない点で相違している。図11に示すように、車椅子2Aは、下側フレーム23Aaの下方に設けた車椅子固定装置3Aで車体10Aに着脱可能に固定されると共に、車椅子固定装置3Aに設けられた押上手段7Aでフロア11Aから上昇可能に保持される。
【0053】
≪車椅子固定装置≫
図11に示す車椅子固定装置3Aは、車椅子2Aを車体10Aに固定するための装置である。車椅子固定装置3Aは、車椅子2Aを車体10Aに固定して、前輪21及び後輪22をフロア11Aから上方に変位させる上方変位機構部30Aを有している。
【0054】
<上方変位機構部>
上方変位機構部30Aは、車椅子2Aの下部のフレーム23Aに連結される下側リンク機構33Aと、下側リンク機構33Aの上側リンク36Aを上方向に押し上げる押上手段7Aと、を備えて構成されている。
【0055】
下側リンク機構33Aは、車椅子2Aの前輪21及び後輪22をフロア11Aから上方に変位させることが可能なリンク機構である。下側リンク機構33Aは、車椅子2Aの下部のフレーム23Aに固定するための車椅子側固定部31A,31Aと、車体10Aに固定するための車体側固定部32Aa,32Abと、の間に配置されている。下側リンク機構33Aは、前側リンク34Aと、後側リンク35Aと、前側リンク34Aと後側リンク35Aとの間に配置された上側リンク36Aと、固定リンクとしてのフロア11Aと、を備えた四節(台形)リンク機構から成る。
【0056】
前側リンク34Aの上端部は、リンク連結具38Aaによって上側リンク36Aの前端部、及び、押上手段7Aのピストン部72Aの上端部に回動自在に連結されている。前側リンク34Aの下端部は、リンク連結具38Abによって車体側固定部32Aaに前後方向(矢印q,r方向)に回動自在に連結されている。前側リンク34Aの上端には、係止ピン23Ab(車椅子側固定部31A)に係合・離脱可能なフック形状の掛止部34Aaが一体形成されている。前側リンク34Aは、後側リンク35Aよりも長く形成されている。
【0057】
後側リンク35Aの上端部は、リンク連結具38Acによって上側リンク36Aの後端部に回動自在に連結されている。後側リンク35Aの下端部は、リンク連結具38Adによって車体側固定部32Abに前後方向(矢印o,p方向)に回動自在に連結されている。後側リンク35Aの上端には、係止ピン23Ac(車椅子側固定部31A)に係合・離脱可能なフック形状の掛止部35Aaが一体形成されている。
【0058】
上側リンク36Aは、前側リンク34Aの上部と、後側リンク35Aの上部と、にリンク連結具38Aa,38Acによって回動自在に連結されたリンク部材である。上側リンク36Aの前端部は、リンク連結具38Aaから前方向に突出した状態にされている。このため、前側リンク34Aが押上手段7によって前方向に前傾状態に回動した際に、上側リンク36Aの前端部と掛止部34Aaとは、係止ピン23Abを挟むように構成されている。このとき、上側リンク36Aと掛止部35Aaとは、係止ピン23Acを挟むように構成されている。
【0059】
<押上手段>
押上手段7Aは、例えば、ピストン部72Aが延出する延出方向に下側リンク機構33Aを押圧して駆動させる油圧ジャッキ等のジャッキ装置から成る。押上手段7Aは、シリンダ部71Aと、下端部がシリンダ部71A内に挿入され、上端部が下側リンク機構33Aの前側上端部に回動自在に連結されたピストン部72Aと、シリンダ部71Aの下端部と車体側固定部74Aとを回動自在に連結した連結具73Aと、を備えている。このため、押上手段7Aの下端部は、連結具73Aを中心として上下方向(矢印s,t方向)に回動自在にフロア11Aに連結されている。押上手段7Aは、下側リンク機構33Aがフロア11Aから上昇したときに、下側リンク機構33Aの前側上端部を前側上方向に付勢するように構成されている。
【0060】
フロア11Aには、先端部を前側リンク34Aの上部、または、後側リンク35Aの上部に連結されて、上方向に押し上げる押上手段7Aと、車体側固定部32Aa,32Ab,74Aと、が設けられている。
【0061】
≪第2実施形態の作用≫
次に、本発明の第2実施形態に係る車椅子固定装置3Aの作用を説明する。
まず、図12に示すように、乗員Mの乗った車椅子2Aを車椅子固定装置3Aが設置されているフロア11Aの上に配置する。次に、押上手段7Aを駆動させて、ピストン部72Aを延ばすと、後方向に傾倒していた前側リンク34A及び後側リンク35Aが起立して上側リンク36Aを上昇させる。
【0062】
上昇した上側リンク36Aは、図11に示すように、係止ピン23Ab,23Acに当接して上方向に押し上げる。このため、車椅子2Aは、フロア11Aから上昇して、前輪21及び後輪22がフロア11Aと非接触状態になる。前側リンク34A及び後側リンク35Aは、前傾するまで回動して、前側リンク34A及び後側リンク35Aと、上側リンク36Aとで、係止ピン23Ab,23Ac(車椅子側固定部31A)を挟んで固定する。この状態で押上手段7Aを停止させて、車椅子2Aが上昇した状態を維持する。
【0063】
このように、本発明の第2実施形態に係る車椅子固定装置3Aは、押上手段7Aと上方変位機構部30Aとで車椅子2A全体を上昇させて前輪21及び後輪22をフロア11Aから離間させて保持する。このため、車椅子固定装置3Aは、車椅子2Aを車体10Aに固定しているときに、車椅子2Aの車輪にかかる負荷を低減させることができる。
【0064】
この場合、車椅子固定装置3Aは、図11及び図12に示すように、前後に車輪(前輪21及び後輪22)を有する車椅子2Aを車体10Aに固定するための車椅子固定装置3Aであって、車体10Aに固定した車椅子2Aの少なくとも前輪21をフロア11Aから上方に変位させる上方変位機構部30Aを有している。
これにより、車椅子固定装置3Aは、車椅子2Aを車体10Aに固定しているときに、上方変位機構部30Aによって、前輪21及び後輪22をフロア11Aから上昇させることができる。このため、車椅子2Aの荷重、乗員Mの体重、及び、走行中の衝撃荷重が車椅子2Aの前輪21及び後輪22に伝達されないようにすることができる。その結果、上方変位機構部30Aは、前輪21及び後輪22にかかる負荷を低減させて、前輪21及び後輪22の耐久性を向上させることができる。
【0065】
上方変位機構部30Aは、車椅子2Aの下部のフレーム23Aに固定するための車椅子側固定部31A,31Aと、車体10Aに固定するための車体側固定部32Aa,32Abと、車椅子側固定部31A,31Aと車体側固定部32Aa,32Abとの間に配置した下側リンク機構33Aと、を有し、下側リンク機構33Aは、車椅子2Aの前輪21及び後輪22を上方に変位させることが可能である。
これにより、下側リンク機構33Aは、上方向に変位することによって、簡易な構成で、前輪21及び後輪22をフロア11Aから上昇させることができる。
【0066】
下側リンク機構33Aは、上下方向に延びる前側リンク34A及び後側リンク35Aを備え、前側リンク34Aは、前側リンク34Aの後側に配置された後側リンク35Aよりも長い。
これにより、下側リンク機構33Aは、前側リンク34Aの長さを後側リンク35Aよりも長くしたことで、車体10Aに車椅子2Aを固定した際に、トルソー角を付けて、車椅子2Aを後傾姿勢にすることができる。このため、運転席に載置した車椅子2Aを、運転時に運転し易い姿勢角度にすることができる。
【0067】
前側リンク34A及び後側リンク35Aの上端部には、車椅子側固定部31A,31Aに係合・離脱可能な掛止部34Aa,35Aaが設けられ、フロア11Aには、先端部を前側リンク34Aの上部、または、後側リンク35Aの上部に連結されて、前側リンク34A及び後側リンク35Aの上端部には、車椅子側固定部31A,31Aに係合・離脱可能な掛止部34Aa,35Aaが設けられ、フロア11Aには、先端部を前側リンク34Aの上部、または、後側リンク35Aの上部に連結されて、上方向に押し上げる押上手段7Aが設けられている。
これにより、前側リンク34A及び後側リンク35Aは、掛止部34Aa,35Aaをフレーム23Aに連結したり、離間したりすることができる。また、押上手段7Aは、先端部を前側リンク34Aの上部、または、後側リンク35Aの上部に連結しているので、下側リンク機構33Aを介在して車椅子2A全体を上昇させることができる。
このため、前輪21及び後輪22は、フロア11Aから上昇して、乗員Mの体重と、車椅子2Aの重量と、走行中に上下方向等に揺れた際の荷重と、がかからないので、車載中に、車輪が故障したり、破損したりするのを防止することができる。
【0068】
[変形例]
なお、本発明は、前記第1及び第2実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。次に、図1図2図13及び図14を参照して、本発明に係る車椅子固定装置の変形例を説明する。
【0069】
第1実施形態で説明した車両1は、図1に示す車椅子2を後席等の車体後部のフロア11上の位置に搭載可能な福祉車両であってもよい。車椅子2を車体後部のフロア11上に搭載する場合、介補者は、バックドア等を開けて、フロア11と地面との間に不図示のスロープを架け渡す。次に、介補者は、電動ウインチ等を利用して車椅子2を地上からスロープ上、フロア11上に引き上げて、車体後部のフロア11上に搭載させる。
【0070】
その場合、図13及び図14に示すように、車椅子固定装置3Bは、車椅子2の前部の車体側固定部32を、キャビンの側壁13に固定する固定手段6Bと、第1実施形態と同じシートベルト装置5と、を備えている(図1参照)。固定手段6Bは、後端部を車体側固定部32に連結するステイアーム61Bと、ステイアーム61Bの前端部に設けた軸部61Baを回動可能に保持する軸支部62Bと、を備えている。固定手段6Bは、第1実施形態の固定手段6と同様の構造の装置をキャビンの左右の側壁13にステイアーム61Bを水平方向に回動自在に配置したものである。
【0071】
ステイアーム61Bは、未使用時、図13に示すように、側壁13側方向(矢印c方向)に傾倒させて状態にする。ステイアーム61Bは、使用時、図14に示すように、車内側方向(矢印d方向)に傾倒させて、側壁13から突出した状態に配置する。
軸支部62Bは、側壁13から車内側に水平に突出した上下一対の軸支片から成る。
【0072】
固定手段6Bは、このように構成しても、車椅子2をフロア11上の後部座席の位置に配置した場合、第1実施形態と同様に、車椅子2の前端の車体側固定部32を所定の高さに保持した状態で側壁13に固定させることができる。この状態で操作用リンク35の操作部35bを前方向(矢印f方向)に回動操作すると、前側リンク機構33の車椅子側固定部31を上昇させて前輪21をフロア11から上昇させることができる(図2参照)。
【0073】
[その他の変形例]
例えば、図1に示すシートベルト51、アンカーベルト52、ダイダウンベルト56、及び、ベルト固定手段57は、シートベルト51を後方に引っ張った状態に車体10に固定できるものであればよく、その構成は適宜変更してもよい。例えば、ベルト固定手段57は、シートベルト51を後方に引っ張った状態に車体10に固定することができる電動式ウインチや、手動式レバーウインチや、油圧式ウインチ等でもよい。
また、図1に示すアンカーベルト52は、さらに長さを長くして、先端のDリング55を直接ベルト固定手段57に固定してもよい。また、固定手段6の軸支部62には、ステイアーム61の回動をロックするアームロック機構(図示省略)を設けてもよい。
【符号の説明】
【0074】
2,2A 車椅子
3,3A,3B 車椅子固定装置
6,6B 固定手段
7A 付勢部材
10,10A 車体
11,11A フロア
21 前輪(車輪)
22 後輪(車輪)
22a 車軸
23,23A フレーム
23a 前側フレーム
30,30A 上方変位機構部
31,31A 車椅子側固定部
32,32Aa,32Ab 車体側固定部
33 前側リンク機構
33A 下側リンク機構
34A 前側リンク
34Aa,35Aa 掛止部
35A 後側リンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14