特許第6701306号(P6701306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6701306
(24)【登録日】2020年5月8日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】ミキサ車
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/16 20060101AFI20200518BHJP
   B28C 5/42 20060101ALI20200518BHJP
【FI】
   B60P3/16 A
   B28C5/42
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-215555(P2018-215555)
(22)【出願日】2018年11月16日
【審査請求日】2020年3月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 貴史
【審査官】 森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−224015(JP,A)
【文献】 特表2007−521997(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/068020(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/16
B28C 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生コンクリートを搭載可能なミキサドラムを備えるミキサ車であって、
前記ミキサドラムを回転駆動する駆動装置と、
前記駆動装置の駆動状態を検出する駆動状態検出器と、
前記ミキサドラムの回転数を検出するドラム回転検出器と、
前記ミキサドラムの回転数が目標回転数となるように、前記駆動装置へ駆動指令値を出力するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記ミキサドラムの回転数と目標回転数との差が所定の基準差以上である場合に、前記駆動指令値と前記ドラム回転検出器の検出値と前記駆動状態検出器の検出値とに基づいて異常箇所を判定する異常判定部を有することを特徴とするミキサ車。
【請求項2】
前記駆動装置は、
駆動源によって駆動され作動流体を吐出する流体圧ポンプと、
前記流体圧ポンプから供給される作動流体によって作動し前記ミキサドラムを回転駆動する流体圧モータと、を有し、
前記駆動状態検出器は、
前記流体圧ポンプの回転数を検出するポンプ回転検出器と、
前記流体圧ポンプから前記流体圧モータに供給される作動流体の圧力を検出する供給圧検出器と、を有し、
前記駆動指令値は、前記流体圧ポンプから前記流体圧モータへの作動流体の供給を指令する供給指令値であり、
前記異常判定部は、前記供給指令値と前記ドラム回転検出器の検出値と前記ポンプ回転検出器の検出値と前記供給圧検出器の検出値とに基づいて異常箇所を判定することを特徴とする請求項1に記載のミキサ車。
【請求項3】
前記異常判定部は、
前記供給指令値が所定の基準指令値以下である場合に、前記供給圧検出器の検出値が所定の第1基準値以上であれば、前記流体圧ポンプに異常があると判定し、前記供給圧検出器の検出値が前記第1基準値未満であれば、前記ドラム回転検出器に異常があると判定することを特徴とする請求項2に記載のミキサ車。
【請求項4】
前記異常判定部は、
前記ポンプ回転検出器により前記流体圧ポンプが回転していないと検出された場合に、前記供給圧検出器の検出値が所定の第2基準値以上であれば、前記ポンプ回転検出器に異常があると判定し、前記供給圧検出器の検出値が前記第2基準値未満であれば、前記駆動源が停止していると判定することを特徴とする請求項2または3に記載のミキサ車。
【請求項5】
前記異常判定部は、
前記供給指令値が所定の基準指令値よりも大きく、前記ポンプ回転検出器により前記流体圧ポンプが回転していると検出された場合に、
前記供給圧検出器の検出値が第3基準値以上であり、且つ、前記ドラム回転検出器により前記ミキサドラムが回転していないと検出されると、前記ドラム回転検出器に異常があると判定し、
前記供給圧検出器の検出値が前記第3基準値以上であり、且つ、前記ドラム回転検出器により前記ミキサドラムが回転していると検出されると、前記流体圧ポンプに異常があると判定し、
前記供給圧検出器の検出値が前記第3基準値未満であると、前記流体圧ポンプに異常があると判定することを特徴とする請求項2から4の何れか1つに記載のミキサ車。
【請求項6】
前記流体圧ポンプは、前記流体圧ポンプの吐出量を調整する吐出量調整機構と、前記流体圧モータの負荷に応じて前記流体圧ポンプの吐出圧を変化させるロードセンシング機構と、を有し、
前記異常判定部は、
前記供給指令値が所定の基準指令値よりも大きく、前記ポンプ回転検出器により前記流体圧ポンプが回転していると検出され、前記供給圧検出器の検出値が所定の第3基準値以上であり、前記ドラム回転検出器により前記ミキサドラムが回転していると検出された場合に、
前記供給圧検出器の検出値の変動幅が所定の基準幅以上であれば、前記吐出量調整機構に異常があると判定し、
前記供給圧検出器の検出値の変動幅が前記基準幅未満であれば、前記ロードセンシング機構に異常があると判定することを特徴とする請求項2から5の何れか1つに記載のミキサ車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミキサ車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ミキサドラムの回転数が目標回転数となるようにドラム駆動装置を制御するコントローラを備えたミキサ車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−84105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるような一般的なミキサ車では、ミキサドラムの回転数制御に異常が生じミキサドラムの回転数を目標回転数に制御することができなくなるとミキサドラムに搭載された生コンクリートの品質が低下してしまう。したがって、ミキサ車においてミキサドラムの回転数制御に異常が生じた場合には、迅速に修理を行うために、故障部位を即座に特定する必要がある。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ミキサ車において、ミキサドラムの回転数制御に異常が生じた場合に故障部位を迅速に特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ミキサ車が、ミキサドラムを回転駆動する駆動装置と、駆動装置の駆動状態を検出する駆動状態検出器と、ミキサドラムの回転数を検出するドラム回転検出器と、ミキサドラムの回転数が目標回転数となるように駆動装置へ駆動指令値を出力するコントローラと、を備え、コントローラは、ミキサドラムの回転数と目標回転数との差が所定の基準値以上である場合に、駆動指令値とドラム回転検出器の検出値と駆動状態検出器の検出値とに基づいて異常箇所を判定する異常判定部を有することを特徴とする。
【0007】
この発明では、コントローラが、ミキサドラムの回転数と目標回転数との差が所定の基準値以上である場合に、駆動指令値とドラム回転検出器の検出値と駆動状態検出器の検出値とに基づいて異常箇所を判定する異常判定部を有する。このように、ミキサドラムの回転数制御に異常が生じた場合に、コントローラの異常判定部によって異常箇所が自動的に判定されるため、故障部位を特定するための確認作業を行うことなく、故障部位を迅速に特定することができる。
【0008】
本発明は、駆動装置が、駆動源によって駆動され作動流体を吐出する流体圧ポンプと、流体圧ポンプから供給される作動流体によって作動しミキサドラムを回転駆動する流体圧モータと、を有し、駆動状態検出器は、流体圧ポンプの回転数を検出するポンプ回転検出器と、流体圧ポンプから流体圧モータに供給される作動流体の圧力を検出する供給圧検出器と、を有し、駆動指令値は、流体圧ポンプから流体圧モータへの作動流体の供給を指令する供給指令値であり、異常判定部は、供給指令値とドラム回転検出器の検出値とポンプ回転検出器の検出値と供給圧検出器の検出値とに基づいて異常箇所を判定することを特徴とする。
【0009】
この発明では、コントローラが、ミキサドラムの回転数と目標回転数との差が所定の基準値以上である場合に、流体圧ポンプから流体圧モータへの作動流体の供給を指令する供給指令値と、ドラム回転検出器の検出値と、ポンプ回転検出器の検出値と、供給圧検出器の検出値と、に基づいて異常箇所を判定する異常判定部を有する。このように、ミキサドラムの回転数制御に異常が生じた場合に、コントローラの異常判定部によって異常箇所が自動的に判定されるため、故障部位を特定するための確認作業を行うことなく、故障部位を迅速に特定することができる。
【0010】
本発明は、異常判定部が、供給指令値が所定の基準指令値以下である場合に、供給圧検出器の検出値が所定の第1基準値以上であれば、流体圧ポンプに異常があると判定し、供給圧検出器の検出値が第1基準値未満であれば、ドラム回転検出器に異常があると判定することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、異常判定部が、ポンプ回転検出器により流体圧ポンプが回転していないと検出された場合に、供給圧検出器の検出値が所定の第2基準値以上であれば、ポンプ回転検出器に異常があると判定し、供給圧検出器の検出値が第2基準値未満であれば、駆動源が停止していると判定することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、異常判定部が、供給指令値が所定の基準指令値よりも大きく、ポンプ回転検出器により流体圧ポンプが回転していると検出された場合に、供給圧検出器の検出値が第3基準値以上であり、且つ、ドラム回転検出器によりミキサドラムが回転していないと検出されると、ドラム回転検出器に異常があると判定し、供給圧検出器の検出値が第3基準値以上であり、且つ、ドラム回転検出器によりミキサドラムが回転していると検出されると、流体圧ポンプに異常があると判定し、供給圧検出器の検出値が第3基準値未満であると、流体圧ポンプに異常があると判定することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、流体圧ポンプが、流体圧ポンプの吐出量を調整する吐出量調整機構と、流体圧モータの負荷に応じて流体圧ポンプの吐出圧を変化させるロードセンシング機構と、を有し、異常判定部が、供給指令値が所定の基準指令値よりも大きく、ポンプ回転検出器により流体圧ポンプが回転していると検出され、供給圧検出器の検出値が所定の第3基準値以上であり、ドラム回転検出器によりミキサドラムが回転していると検出された場合に、供給圧検出器の検出値の変動幅が所定の基準幅以上であれば、流体圧ポンプの吐出量調整機構に異常があると判定し、供給圧検出器の検出値の変動幅が基準幅未満であれば、流体圧ポンプのロードセンシング機構に異常があると判定することを特徴とする。
【0014】
これらの発明では、流体圧ポンプから流体圧モータへの作動流体の供給を指令する供給指令値と、ドラム回転検出器の検出値と、ポンプ回転検出器の検出値と、供給圧検出器の検出値と、に基づいて、コントローラの異常判定部により異常箇所が判定される。このように、ミキサドラムの回転数制御に異常が生じた場合に、コントローラの異常判定部によって異常箇所が自動的に判定されるため、ミキサ車の修理を迅速に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ミキサ車においてミキサドラムの回転数制御に異常が生じた場合に故障部位を迅速に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A図1Aは、本発明の実施形態に係るミキサ車の平面図である。
図1B図1Bは、ミキサ車の側面図である。
図2図2は、ミキサ車のミキサドラムを駆動する装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3A図3Aは、本発明の実施形態に係るミキサ車において故障部位を特定する際の処理手順を示すフローチャートの一部である。
図3B図3Bは、図3Aに示されるフローチャートに続く処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
まず、図1A図1B及び図2を参照して、本発明の実施形態に係るミキサ車1の全体構成について説明する。図1Aは、ミキサ車1の平面図であり、図1Bは、ミキサ車1の側面図であり、図2は、ミキサ車1のミキサドラム2を駆動する装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0019】
ミキサ車1は、ミキサドラム2内に投入されたモルタルやレディミクストコンクリート等のいわゆる生コンクリート(以下、「生コン」と称する。)を運搬する車両である。以下の説明では、ミキサ車1が積載物として生コンを積載する場合について説明する。
【0020】
ミキサ車1は、図1A図1Bに示すように、運転室11と架台3とを備える車両であり、架台3に搭載されて生コンを搭載可能なミキサドラム2と、ミキサドラム2を回転駆動する駆動装置4と、ミキサドラム2の回転を制御するコントローラ20と、を備える。なお、図1Bでは、駆動装置4等の図示を省略している。
【0021】
ミキサドラム2は、架台3に回転可能に搭載される有底円筒形の容器であり、その後端には生コンの投入と排出とが行われる開口部2aが設けられる。ミキサドラム2は、その回転軸Oが車両の前部から後部に向かって徐々に高くなるように傾斜して搭載される。ミキサドラム2内には、図示しないドラムブレードがドラム内壁面に沿って螺旋状に配設されており、ミキサドラム2とともにドラムブレードが回転することによって、ミキサドラム2内に積載された生コンの攪拌等が行われる。
【0022】
ミキサドラム2の開口部2aの後方上部には、ホッパ16が設けられる。生コン工場においてミキサ車1に投入される生コンは、ホッパ16によって開口部2aへと導かれる。ミキサドラム2の開口部2aの後方下部には、フローガイド17及びシュート18が設けられる。開口部2aから排出される生コンは、フローガイド17によってシュート18に導かれ、シュート18によって所定の方向に排出される。
【0023】
ミキサドラム2は、ミキサ車1に搭載された走行用のエンジン10を駆動源として、駆動装置4を介して回転駆動される。駆動装置4は、エンジン10の回転によって駆動され、作動流体の流体圧によってミキサドラム2を回転駆動する流体圧装置である。
【0024】
図2に示すように、エンジン10は、エンジン10の出力及び回転数を調整するためのスロットル弁10aを有する。スロットル弁10aの開度は、エンジン10によって駆動装置4を駆動させる際に図示しないアクチュエータを介してコントローラ20により制御される。また、エンジン10には、エンジン10の回転速度を検出し、検出された回転速度に応じた信号をコントローラ20へ出力する回転センサ10bが設けられる。回転センサ10bにより検出されるエンジン10の回転数は、後述の油圧ポンプ5の回転数に相関することから、回転センサ10bは、油圧ポンプ5の回転数を検出するポンプ回転検出器に相当する。
【0025】
駆動装置4を駆動する際のエンジン10の回転数は、回転センサ10bによって検出された回転速度が所定の大きさとなるように、スロットル弁10aを介してコントローラ20により制御される。なお、回転センサ10bは、駆動装置4の入力軸である後述のPTO軸9やドライブシャフト8の回転速度を検出するものであってもよいし、後述の油圧ポンプ5の回転速度を検出するものであってもよい。
【0026】
エンジン10の回転は、エンジン10から常時動力を取り出すPTO軸9(PTO:Power take−off)と、PTO軸9と駆動装置4とを連結するドライブシャフト8(図2参照)と、を介して駆動装置4に伝達される。
【0027】
駆動装置4は、エンジン10によって駆動され作動流体としての作動油を吐出する流体圧ポンプとしての油圧ポンプ5と、油圧ポンプ5から供給される作動油によって作動しミキサドラム2を回転駆動する流体圧モータとしての油圧モータ6と、を有する。なお、駆動装置4では、作動流体として作動油ではなく、他の非圧縮性流体が用いられてもよい。
【0028】
油圧ポンプ5は、図示しない斜板の傾転角に応じて吐出量が変更される斜板型アキシャルピストンポンプであり、油圧ポンプ5から油圧モータ6への作動油の供給を制御する制御弁5aと、斜板の傾転角を変化させることで油圧ポンプ5の吐出量を調整する吐出量調整機構としての傾転角調整機構5bと、油圧モータ6に供給される作動油の圧力を検出する供給圧検出器としての圧力センサ5cと、油圧モータ6に流入する作動油の圧力と油圧ポンプ5から吐出される作動油の圧力との差圧が所定の大きさとなるように斜板の傾転角を調整するロードセンシング機構5dと、を有する。
【0029】
油圧ポンプ5は、PTO軸9を介してエンジン10から常時取り出される動力によって回転駆動される。なお、油圧ポンプ5を回転駆動させる駆動源としては、走行用のエンジン10に限定されず、走行に用いられない補機用のエンジンや電動モータであってもよい。
【0030】
制御弁5aは、ミキサドラム2を正回転方向である撹拌方向に回転させるように油圧モータ6へ油圧ポンプ5から作動油を供給する第1位置と、ミキサドラム2を逆回転方向である排出方向に回転させるように油圧モータ6へ油圧ポンプ5から作動油を供給する第2位置と、油圧ポンプ5から油圧モータ6への作動油の供給を遮断する遮断位置と、を有する電磁式3位置切換弁である。
【0031】
制御弁5aは、制御弁5aの位置を遮断位置から第1位置へと移動させる図示しない第1ソレノイドと、制御弁5aの位置を遮断位置から第2位置へと移動させる図示しない第2ソレノイドと、を有する。
【0032】
制御弁5aの位置は、コントローラ20から各ソレノイドに供給される駆動電流の大きさに応じて変更され、例えば、第1ソレノイドに供給される駆動電流が大きくなるにつれて、制御弁5aの位置は、遮断位置から第1位置へと徐々に変化する。このように制御弁5aの位置が遮断位置から第1位置へと変位することによって、制御弁5aを通過する作動油に付与される抵抗が徐々に減少し、結果として、油圧ポンプ5から油圧モータ6へ供給される作動油の流量が徐々に増加する。つまり、制御弁5aの第1ソレノイドに供給される電流を制御することによって油圧ポンプ5から油圧モータ6へ供給される作動油の流量を調整することが可能である。なお、制御弁5aは、第1ソレノイドに供給される駆動電流が大きくなるにつれて、制御弁5aの位置が、第1位置から遮断位置へと徐々に変化する形式のものであってもよい。
【0033】
傾転角調整機構5bは、斜板の傾転角を変化させる図示しない油圧アクチュエータを有する。傾転角調整機構5bは、後述のロードセンシング機構5dから油圧アクチュエータに導かれる作動油の圧力に応じて斜板の傾転角を変化させ、斜板の傾転角の変化に応じて油圧ポンプ5の吐出量が変更される。
【0034】
圧力センサ5cは、検出された作動油の圧力に応じた信号をコントローラ20に出力する。なお、圧力センサ5cは、油圧モータ6に設けられ、油圧ポンプ5から油圧モータ6に供給される作動油の圧力を検出するものであってもよい。このように、圧力センサ5cは、駆動装置4における作動油の圧力を検知する。
【0035】
ロードセンシング機構5dは、油圧モータ6に流入する作動油の圧力である負荷圧と油圧ポンプ5から吐出される作動油の圧力である吐出圧との差圧が所定の大きさとなるように油圧ポンプ5の斜板の傾転角を制御する機構である。ロードセンシング機構5dは、油圧モータ6に流入する作動油の圧力と油圧ポンプ5から吐出される作動油の圧力とが互いに対向して作用する図示しないスプール弁を有し、斜板の傾転角を変化させる傾転角調整機構5bの油圧アクチュエータに導かれる作動油圧をスプール弁の変位に応じて変化させることによって油圧ポンプ5の吐出圧を制御している。
【0036】
このように、油圧ポンプ5は、斜板の傾転角に応じて吐出量が変更され、制御弁5aにより吐出方向が変更される。油圧ポンプ5は、上記形式のポンプに限定されず、吐出容量が可変であるポンプであればどのような形式のポンプであってもよい。また、油圧ポンプ5は、斜板の傾転角に応じて吐出量及び吐出方向が変更される斜板型アキシャルピストンポンプであってもよい。
【0037】
油圧モータ6は、図示しない斜板の傾転角に応じて容量が変更される斜板型アキシャルピストンモータであり、油圧モータ6の図示しない出力軸の回転方向と回転速度とを検出する回転センサ6aと、斜板の傾転角を調整する傾転角調整機構6bと、を有する。
【0038】
回転センサ6aは、検出された出力軸の回転方向と回転速度とに応じた信号をコントローラ20に出力する。回転センサ6aにより検出される油圧モータ6の回転数は、ミキサドラム2の回転数に相関することから、回転センサ6aは、ミキサドラム2の回転数を検出するドラム回転検出器に相当する。なお、回転センサ6aは、ミキサドラム2の回転数を検出するものであってもよい。
【0039】
傾転角調整機構6bは、斜板の傾転角を変化させる図示しない油圧アクチュエータと、油圧アクチュエータに導かれる作動油圧を制御する図示しないソレノイドバルブと、を有する。コントローラ20からソレノイドバルブに供給される電流値に応じて斜板の傾転角が変化し油圧モータ6の容量が変更される。
【0040】
なお、油圧モータ6は、容量が高速回転用の小容量と通常回転用の大容量との二段階に切り換えられる斜板型アキシャルピストンモータであってもよい。
【0041】
上記構成の駆動装置4において、油圧ポンプ5から吐出された作動油が油圧モータ6に供給されることによって油圧モータ6が回転し、供給される油量や油圧モータ6の斜板の傾転角に応じて、油圧モータ6の回転速度が変更される。また、油圧モータ6の回転方向は、油圧ポンプ5の制御弁5aの位置が切り換えられることで切り換わる。
【0042】
駆動装置4の出力軸、すなわち油圧モータ6の出力軸は、減速機7を介してミキサドラム2の回転軸Oに連結される。このため、油圧モータ6の回転速度を増減することによって、ミキサドラム2の回転速度を増減させることが可能であり、油圧モータ6の回転方向を切り換えることによって、ミキサドラム2の回転方向を正回転方向である撹拌方向と逆回転方向である排出方向とに切り換えることが可能である。
【0043】
ミキサドラム2が撹拌方向に回転駆動される場合、ミキサドラム2内の生コンはドラムブレードにより攪拌されながら前方へと移動する。一方、ミキサドラム2が排出方向に回転駆動される場合、ミキサドラム2内の生コンはドラムブレードにより攪拌されながら後方へと移動する。
【0044】
このようにミキサドラム2を撹拌方向とは反対の方向である排出方向に回転させることで、ミキサドラム2の開口部2aから生コンを排出することができる。ミキサドラム2から排出された生コンは、フローガイド17及びシュート18を介して所定位置に誘導される。
【0045】
なお、ホッパ16を介して、ミキサドラム2内へ生コンを投入する場合には、攪拌時よりもミキサドラム2を高速で撹拌方向に回転させることで、投入された生コンを速やかにミキサドラム2の前方へと移動させる。
【0046】
コントローラ20は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)等を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。CPUやRAM等をROMに格納されたプログラムに従って動作させることによって駆動装置4の作動が制御される。
【0047】
コントローラ20には、上述のように、油圧モータ6の回転センサ6aと、駆動装置4の駆動状態を検出する駆動状態検出器としての回転センサ10b及び圧力センサ5cが接続され、これらのセンサで検出された検出値が入力される。また、コントローラ20には、上述のように、傾転角調整機構6bのソレノイドバルブと、制御弁5aの第1及び第2ソレノイドと、スロットル弁10aと、が接続され、これらを作動させる指令値がコントローラ20から出力される。
【0048】
また、コントローラ20には、ミキサドラム2の駆動を操作するための操作部22と、ミキサドラム2の駆動状態や駆動装置4の異常を表示する表示部23と、生コン工場等の外部施設との通信が可能な通信部24と、が接続される。
【0049】
操作部22には、ミキサドラム2の回転方向及び回転速度を変更するための操作スイッチやミキサドラム2を自動的に撹拌回転させるための自動撹拌スイッチ、緊急時にミキサドラム2の回転を停止させるための非常停止スイッチといった図示しないスイッチ類が設けられる。操作部22は、作業者が主に操作を行う運転室11内や車両の後方といった複数の箇所に設けられる。
【0050】
表示部23は、操作部22とともに運転室11内や車両の後方といった複数の箇所に設けられる。なお、表示部23は、操作部22と一体化されていてもよい。
【0051】
通信部24は、Wi−Fi(登録商標)等の無線LANに対応する無線通信部や第三世代移動通信(3G)等の携帯電話通信網に対応する無線通信部である。ミキサ車1の故障箇所やミキサ車1の作業状態は、通信部24を介して生コン工場や車両メンテナンス工場等の外部施設へ随時送信される。なお、通信部24は、コントローラ20の内部に設けられていてもよいし、外部施設との通信状態を良好な状態とするためにコントローラ20とは別に車外に露出される場所に配置されてもよい。また、通信部24は設けられなくてもよい。
【0052】
作業者により操作部22の各種スイッチが操作されると、コントローラ20は、ミキサドラム2の回転状態が、操作されたスイッチに応じた状態となるように、油圧モータ6の斜板の傾転角や油圧ポンプ5の制御弁5aといった駆動装置4を構成する各機構を制御する。
【0053】
例えば、操作部22において作業者により自動撹拌スイッチが操作されると、コントローラ20は、油圧モータ6の回転センサ6aの検出値から換算されたミキサドラム2の実際の回転数が予め設定された目標回転数となるように、駆動装置4へ駆動指令値を出力するとともに、エンジン10のスロットル弁10aを介してエンジン10の回転数を増減させることによって、駆動装置4の駆動状態を制御する。
【0054】
コントローラ20から出力される駆動指令値は、油圧ポンプ5から油圧モータ6への作動油の供給を指令する供給指令値や油圧モータ6の容量を増減させる容量指令値であり、具体的には、油圧ポンプ5の制御弁5aの第1及び第2ソレノイドにコントローラ20から供給される電流値が供給指令値に相当し、油圧モータ6の傾転角調整機構6bのソレノイドバルブにコントローラ20から供給される電流値が容量指令値に相当する。
【0055】
また、コントローラ20は、ミキサドラム2の実際の回転数と目標回転数との差が所定の基準差以上である場合には、回転数制御が正常に行われていないとして表示部23を介して制御異常を作業者へ報知する。
【0056】
ここで、回転数の制御異常が報知された後、車両メンテナンス工場に向かったとしても、車両メンテナンス工場において所定の条件においてミキサドラム2の回転状態を確認し、制御異常の原因となった故障部位を特定する作業を行う必要がある。このように車両メンテナンス工場において故障部位を特定する作業を行うとメンテナンスに要する時間が長くなり、ミキサ車1を使用できない時間が長時間に及ぶおそれがある。
【0057】
このような状況を避けるために、本実施形態に係るミキサ車1のコントローラ20は、ミキサドラム2の回転数と目標回転数との差が所定の基準差以上である場合に、異常の原因となった故障部位を自動的に判定する異常判定部21を有する。なお、異常判定部21は、コントローラ20の特定の機能を、仮想的なユニットとして示したものであり、物理的に存在することを意味するものではない。例えば、異常判定部21で行われる後述の判定は、主にCPUにより行われ、異常判定部21の判定で用いられる後述の基準値等は、主にROMに記憶されている。
【0058】
以下に、図3A及び図3Bのフローチャートを参照して、コントローラ20の異常判定部21によって行われる異常箇所判定の処理手順について説明する。
【0059】
まず、ステップS11では、コントローラ20において、ミキサドラム2が撹拌回転しているときに、油圧モータ6の回転センサ6aの検出値から換算されたミキサドラム2の実際の回転数と、ミキサドラム2の目標回転数と、の回転差が所定の基準差以上となっているか否かが判定される。
【0060】
回転差が基準差以上である場合は、ミキサドラム2の回転数制御に異常が生じているとして、ステップS12に進み、異常判定部21による故障部位の判定を開始する。回転差が基準差未満である場合は、ミキサドラム2の回転数制御が正常に行われているとして、一旦処理を終了する。なお、ミキサドラム2の回転数制御に異常が生じているか否かの判定は、回転差の大きさだけではなく、回転差が基準差以上となる状態の継続時間や頻度に基づいて行われてもよい。
【0061】
ステップS12では、油圧ポンプ5の制御弁5aの第1ソレノイドにコントローラ20から供給される電流値が基準指令値としての基準電流値以下となっているか否かが判定される。
【0062】
ここで、油圧モータ6の回転センサ6aの検出値から換算されたミキサドラム2の実際の回転数がミキサドラム2の目標回転数よりも高い状態が続いた場合、コントローラ20は、ミキサドラム2の回転数を下げるために、油圧ポンプ5から油圧モータ6へ供給される作動油の流量を低減させる。具体的には、油圧ポンプ5の制御弁5aの第1ソレノイドに供給される電流値をゼロとし、制御弁5aの位置を遮断位置とする。
【0063】
一方で、油圧モータ6の回転センサ6aの検出値から換算されたミキサドラム2の実際の回転数がミキサドラム2の目標回転数よりも低い状態が続いた場合、コントローラ20は、ミキサドラム2の回転数を上げるために、油圧ポンプ5から油圧モータ6へ供給される作動油の流量を増大させる。具体的には、油圧ポンプ5の制御弁5aの第1ソレノイドに供給される電流値を最大値とし、制御弁5aの位置を第1位置とする。
【0064】
つまり、ステップS12では、ミキサドラム2の実際の回転数が目標回転数よりも低い状態と高い状態との何れの状態であるのかが、コントローラ20から制御弁5aの第1ソレノイドに供給される電流値に基づいて判定される。具体的には、電流値が基準電流値以下の場合は、ミキサドラム2の実際の回転数が目標回転数よりも高い状態であり、電流値が基準電流値より大きい場合は、ミキサドラム2の実際の回転数が目標回転数よりも低い状態であると判定される。ステップS12において判定に用いられる基準電流値の大きさは、最大値未満であればよく、例えば、ゼロに設定される。
【0065】
ステップS12において、制御弁5aの第1ソレノイドにコントローラ20から供給される電流値が基準電流値以下、例えばゼロであると判定されるとステップS13に進む。
【0066】
ステップS13では、油圧モータ6に供給される作動油の圧力を検出する圧力センサ5cの検出値が第1基準値以上となっているか否かが判定される。
【0067】
ここで、制御弁5aの第1ソレノイドにコントローラ20から供給される電流値がゼロである場合、油圧ポンプ5から油圧モータ6へ供給される作動油の流量はゼロ、つまり、圧力センサ5cの検出値はゼロとなるはずである。これに対して、圧力センサ5cの検出値がある程度の大きさであり、ミキサドラム2の回転数が目標回転数を超えているということは、コントローラ20からの指令に反して油圧ポンプ5から油圧モータ6へ作動油が供給されていることを意味する。
【0068】
したがって、ステップS13において、圧力センサ5cの検出値が第1基準値以上であると判定される場合はステップS14に進み、ミキサドラム2の回転数制御の異常の原因は、油圧ポンプ5の制御弁5aの作動不良により油圧ポンプ5から油圧モータ6への作動油の供給を遮断することができないことによるものと特定される。なお、ステップS13において判定に用いられる第1基準値は、ゼロよりも大きい値であり、油圧ポンプ5から油圧モータ6へ作動油が明らかに供給されていると判断される値に設定される。
【0069】
ステップS14において故障部位が特定されると、ステップS15に進み、コントローラ20は、表示部23に油圧ポンプ5の制御弁5aの故障によりミキサドラム2の回転数制御に異常が生じていることを表示するとともにアラーム音を発報する。
【0070】
一方、ステップS13において、圧力センサ5cの検出値が第1基準値よりも小さい、すなわち、油圧ポンプ5から油圧モータ6へ作動油が供給されていないと判定された場合、油圧ポンプ5の制御弁5aはコントローラ20からの指令通りに油圧ポンプ5から油圧モータ6への作動油の供給を遮断しているものと解される。そして、油圧ポンプ5から油圧モータ6へ作動油が供給されていなければ、油圧モータ6も駆動されないことから、油圧モータ6により駆動されるミキサドラム2も当然に回転していないはずである。それにも関わらず、ミキサドラム2の回転数が目標回転数を超えているということは、ミキサドラム2の回転数に相関する回転数を検出している油圧モータ6の回転センサ6aが異常に高い値を出力していることを意味する。
【0071】
したがって、ステップS13において、圧力センサ5cの検出値が第1基準値よりも小さいと判定されるとステップS16に進み、ミキサドラム2の回転数制御の異常の原因は、回転センサ6aの出力異常であることが特定される。
【0072】
ステップS16において故障部位が特定されると、ステップS15に進み、コントローラ20は、表示部23に回転センサ6aの故障によりミキサドラム2の回転数制御に異常が生じていることを表示するとともにアラーム音を発報する。
【0073】
一方、ステップS12において、制御弁5aの第1ソレノイドにコントローラ20から供給される電流値が基準電流値を超えた値、例えば、最大電流値であると判定されるとステップS17に進む。
【0074】
ステップS17では、油圧ポンプ5の回転数がゼロとなっているか否か、すなわち、油圧ポンプ5が停止しているか否かが、油圧ポンプ5の回転数に相関する回転数を検出するエンジン10の回転センサ10bの検出値に基づいて判定される。
【0075】
ここで、回転センサ10bの検出値がゼロである場合は、油圧ポンプ5が実際に回転していないか、あるいは、油圧ポンプ5の回転数が正常に検出されていないことが考えられる。したがって、ステップS17において、回転センサ10bの検出値がゼロであると判定されるとステップS18に進み、油圧ポンプ5が回転していないと判定された原因が特定される。
【0076】
ステップS18では、油圧モータ6に供給される作動油の圧力を検出する圧力センサ5cの検出値が第2基準値以上となっているか否かが判定される。
【0077】
圧力センサ5cの検出値がある程度の大きさであれば、油圧ポンプ5は作動油を吐出する状態、すなわち、回転駆動されている状態にあるはずである。それにも関わらず油圧ポンプ5の回転数がゼロであるということは、油圧ポンプ5の回転が正常に検出されていないことを意味する。一方、圧力センサ5cの検出値がゼロであれば、油圧ポンプ5が実際に停止している、つまり油圧ポンプ5を回転駆動させるエンジン10が停止していることを意味する。
【0078】
したがって、ステップS18において、圧力センサ5cの検出値が第2基準値以上であると判定されるとステップS19に進み、ミキサドラム2の回転数制御の異常の原因は、回転センサ10b系の異常、例えば、回転センサ10b自体の故障や回転センサ10bとコントローラ20とを接続するハーネスの断線等であることが特定される。
【0079】
一方、ステップS18において、圧力センサ5cの検出値が第2基準値よりも小さいと判定されるとステップS20に進み、ミキサドラム2の回転数制御の異常の原因は、エンジン10の停止であり、駆動装置4の故障ではないことが特定される。
【0080】
なお、ステップS18において判定に用いられる第2基準値は、ゼロよりも大きい値であり、油圧ポンプ5から作動油が明らかに吐出されていると判断される値に設定される。第2基準値は、第1基準値と同じ大きさであってもよい。
【0081】
ステップS19において故障部位が特定されると、ステップS21に進み、ミキサドラム2の回転数がゼロとなっているか否か、すなわち、ミキサドラム2が停止しているか否かがミキサドラム2の回転数に相関する回転数を検出する油圧モータ6の回転センサ6aの検出値に基づいて判定される。
【0082】
圧力センサ5cの検出値がある程度の大きさであれば、油圧モータ6に作動油が供給されている状態、すなわち、ミキサドラム2が油圧モータ6により回転駆動されている状態にあるはずである。それにも関わらずミキサドラム2の回転数がゼロであるということは、ミキサドラム2の回転が正常に検出されていないことを意味する。
【0083】
このため、ステップS21において、ミキサドラム2の回転数がゼロであると判定されるとステップS22に進み、ミキサドラム2の回転数制御の異常の原因は、ステップS19で特定されたエンジン10の回転センサ10b系の異常に加えて、油圧モータ6の回転センサ6a系の異常、例えば、回転センサ6a自体の故障や回転センサ6aとコントローラ20とを接続するハーネスの断線等であることが特定される。
【0084】
一方、ステップS21において、ミキサドラム2の回転数がゼロではないと判定された場合、ミキサドラム2の回転は正常に検出されており、ミキサドラム2の回転数制御の異常の原因は、ステップS19で特定されたエンジン10の回転センサ10b系の異常のみであると特定される。
【0085】
ステップS22において故障部位が特定されると、ステップS15に進み、コントローラ20は、表示部23に回転センサ10b系及び回転センサ6a系の異常によりミキサドラム2の回転数制御に異常が生じていることを表示するとともにアラーム音を発報する。
【0086】
また、ステップS21において、ミキサドラム2の回転数がゼロではないと判定された場合には、ステップS15に進み、コントローラ20は、表示部23に回転センサ10b系のみの異常によりミキサドラム2の回転数制御に異常が生じていることを表示するとともにアラーム音を発報する。
【0087】
また、ステップS20において駆動装置4には故障がないことが特定された場合も、ステップS15に進み、コントローラ20は、表示部23にエンジン10が停止したことによりミキサドラム2の回転数制御に異常が生じていることを表示するとともにアラーム音を発報する。
【0088】
一方、ステップS17において、油圧ポンプ5の回転数がゼロではない、つまり、油圧ポンプ5が回転駆動されていると判定されると、ステップS23へと進む。
【0089】
ステップS23では、油圧モータ6に供給される作動油の圧力を検出する圧力センサ5cの検出値が第3基準値以上となっているか否かが判定される。
【0090】
圧力センサ5cの検出値が第3基準値よりも小さい場合、例えばほぼゼロである場合、油圧ポンプ5は回転駆動されているにも関わらず吐出量を増大させることができない状態にあることを意味する。
【0091】
このため、ステップS23において、圧力センサ5cの検出値が第3基準値よりも小さいと判定されるとステップS25に進み、ミキサドラム2の回転数制御の異常の原因は、油圧ポンプ5の作動不良、例えば、斜板の固着やシール部の破損、制御弁5aの切り換え不良等により油圧ポンプ5の吐出量を増大させることができないことによることが特定される。
【0092】
なお、ステップS23において判定に用いられる第3基準値は、ゼロよりも大きい値であり、油圧ポンプ5から作動油が明らかに吐出されていると判断される値に設定される。第3基準値は、第1基準値や第2基準値と同じ大きさであってもよい。
【0093】
一方、ステップS23において、圧力センサ5cの検出値が第3基準値以上であり、油圧ポンプ5からある程度の作動油が吐出されていると判定されるとステップS24に進み、ミキサドラム2の回転数がゼロとなっているか否か、すなわち、ミキサドラム2が停止しているか否かがミキサドラム2の回転数に相関する回転数を検出する油圧モータ6の回転センサ6aの検出値に基づいて判定される。
【0094】
圧力センサ5cの検出値がある程度の大きさであれば、油圧モータ6に作動油が供給されている状態、すなわち、ミキサドラム2が油圧モータ6により回転駆動されている状態にあるはずである。それにも関わらずミキサドラム2の回転数がゼロであるということは、ミキサドラム2の回転が正常に検出されていないことを意味する。
【0095】
このため、ステップS24において、ミキサドラム2の回転数がゼロであると判定されるとステップS26に進み、ミキサドラム2の回転数制御の異常の原因は、油圧モータ6の回転センサ6a系の異常、例えば、回転センサ6a自体の故障や回転センサ6aとコントローラ20とを接続するハーネスの断線等であることが特定される。
【0096】
一方、ステップS24において、ミキサドラム2の回転数がゼロではないと判定されると、ステップS27に進む。
【0097】
ステップS27に進む場合は、油圧ポンプ5が回転駆動されているにも関わらず、ミキサドラム2の回転数が低く目標回転数とならない場合であることから、油圧ポンプ5に何らかの異常があり、ミキサドラム2を回転駆動する油圧モータ6へ油圧ポンプ5から十分な作動油が供給されていない可能性が高い。
【0098】
ステップS27では、油圧ポンプ5の異常箇所をさらに特定するために、油圧モータ6に供給される作動油の圧力を検出する圧力センサ5cの検出値が所定の基準幅以上で変動しているか否かが判定される。
【0099】
油圧ポンプ5の吐出圧は、斜板を回動自在に支持するクレードルブッシュや斜板の傾転角を変化させる油圧アクチュエータといった斜板の作動に影響を及ぼす部分の摩耗等によって斜板の作動に遅れが生じることで変動し易くなる。また、油圧ポンプ5の吐出圧は、ロードセンシング機構5dのスプール弁が摺動不良等により正常に作動しなくなると、正常時よりも低い状態となり、油圧ポンプ5から油圧モータ6へ十分な作動油を供給することができなくなる。
【0100】
このため、ステップS27において、圧力センサ5cの検出値が基準幅以上で変動していると判定されるとステップS28に進み、ミキサドラム2の回転数制御の異常の原因は、油圧ポンプ5の傾転角調整機構5bに関連する部位の異常であることが特定され、圧力センサ5cの検出値が基準幅以上で変動していないと判定されるとステップS29に進み、ミキサドラム2の回転数制御の異常の原因は、油圧ポンプ5のロードセンシング機構5dに関連する部位の異常であることが特定される。
【0101】
ステップS25、ステップS26、ステップS28及びステップS29において故障部位が特定されると、ステップS15に進み、コントローラ20は、表示部23に各ステップで特定された故障部位を表示するとともにアラーム音を発報する。
【0102】
このように、車両メンテナンス工場にミキサ車1が入庫される前に故障部位が特定されるため、車両メンテナンス工場において故障部位を特定するための確認作業が不要となることで、ミキサ車1の修理を迅速に行うことができる。この結果、ミキサ車1を使用できない時間が短くなるため、ミキサ車1の稼働率が低下してしまうことを抑制することができる。
【0103】
また、異常箇所が判定されることで、交換すべき部品が特定されるため、駆動装置4全体を交換する場合と比較し、修理費用を低減させることができるとともに、交換作業時間を短くすることができる。
【0104】
また、コントローラ20は、表示部23への表示を行うとともに、通信部24を介して、生コン工場や車両メンテナンス工場等の外部施設へミキサ車1の識別番号と故障内容を送信する。故障内容を受信した車両メンテナンス工場では、交換用の部品を迅速に用意し車両の受け入れ態勢を整えることが可能となることで、ミキサ車1の修理をさらに迅速に行うことができる。また、生コン工場では、ミキサ車1の故障内容を把握することで、打設現場へ代わりの車両によって生コンを配送することが可能となる。
【0105】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0106】
上記構成のミキサ車1では、コントローラ20が、ミキサドラム2の回転数と目標回転数との差が所定の基準値以上である場合に、油圧ポンプ5の制御弁5aの第1ソレノイドにコントローラ20から供給される電流値と、回転センサ6aの検出値と、回転センサ10bの検出値と、圧力センサ5cの検出値と、に基づいて異常箇所を判定する異常判定部21を有する。このように、ミキサドラム2の回転数制御に異常が生じた場合に、コントローラ20の異常判定部21によって異常箇所が自動的に判定されるため、車両メンテナンス工場等において故障部位を特定するための確認作業を行うことなく、故障部位を迅速に特定することができる。
【0107】
また、車両メンテナンス工場にミキサ車1が入庫される前に故障部位が特定されることで、ミキサ車1の修理を迅速に行うことが可能となり、結果として、ミキサ車1を使用できない時間が短くなるため、ミキサ車1の稼働率が低下してしまうことを抑制することができる。
【0108】
以下に、本発明の実施形態の変形例について説明する。
【0109】
上記実施形態では、油圧ポンプ5の制御弁5aの第1ソレノイドにコントローラ20から供給される電流値が基準電流値以下となっているか否かを判定するステップS12の後に、油圧ポンプ5の回転数がゼロとなっているか否かを判定するステップS17が実行される。これに代えて、ステップS17をステップS12の前に実行してもよい。この場合、ステップS12における判定が否定された場合にステップS23以降のステップが実行されることになる。
【0110】
また、上記実施形態では、ミキサドラム2の実際の回転数が目標回転数よりも基準差以上に高い状態であるのか低い状態であるのかを判定するために、ステップS12において、制御弁5aの第1ソレノイドにコントローラ20から供給される電流値が基準電流値以下となっているか否かを判定している。
【0111】
また、上記実施形態では、油圧ポンプ5は、斜板型アキシャルピストンポンプである。油圧ポンプ5は、これに限定されず、吐出容量が可変であれば、どのような形式のポンプであってもよく、例えば、吐出容量が可変であるベーンポンプであってもよい。この場合、ベーンが摺接するカムリングを回動させる機構が吐出量調整機構に相当し、カムリングを変位させるアクチュエータ等を駆動するために供給される電流値が供給指令値に相当する。
【0112】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0113】
ミキサ車1は、ミキサドラム2を回転駆動する駆動装置4と、駆動装置4の駆動状態を検出する駆動状態検出器5c,10bと、ミキサドラム2の回転数を検出するドラム回転検出器としての回転センサ6aと、ミキサドラム2の回転数が目標回転数となるように、駆動装置4へ駆動指令値を出力するコントローラ20と、を備え、コントローラ20は、ミキサドラム2の回転数と目標回転数との差が所定の基準値以上である場合に、駆動指令値と回転センサ6aの検出値と駆動状態検出器5c,10bの検出値とに基づいて異常箇所を判定する異常判定部21を有する。
【0114】
この構成では、コントローラ20が、ミキサドラム2の回転数と目標回転数との差が所定の基準値以上である場合に、駆動指令値と回転センサ6aの検出値と駆動状態検出器5c,10bの検出値とに基づいて異常箇所を判定する異常判定部21を有する。このように、ミキサドラム2の回転数制御に異常が生じた場合に、コントローラ20の異常判定部21によって異常箇所が自動的に判定されるため、車両メンテナンス工場等において故障部位を特定するための確認作業を行うことなく、故障部位を迅速に特定することができる。また、車両メンテナンス工場にミキサ車1が入庫される前に故障部位が特定されることで、ミキサ車1の修理を迅速に行うことが可能となり、結果として、ミキサ車1を使用できない時間が短くなるため、ミキサ車1の稼働率が低下してしまうことを抑制することができる。
【0115】
また、駆動装置4は、駆動源としてのエンジン10によって駆動され作動油を吐出する油圧ポンプ5と、油圧ポンプ5から供給される作動油によって作動しミキサドラム2を回転駆動する油圧モータ6と、を有し、駆動状態検出器は、油圧ポンプ5の回転数を検出するポンプ回転検出器としての回転センサ10bと、油圧ポンプ5から油圧モータ6に供給される作動油の圧力を検出する圧力センサ5cと、を有し、駆動指令値は、油圧ポンプ5から油圧モータ6への作動油の供給を指令する供給指令値であり、異常判定部21は、供給指令値と回転センサ6aの検出値と回転センサ10bの検出値と圧力センサ5cの検出値とに基づいて異常箇所を判定する。
【0116】
この構成では、コントローラ20が、ミキサドラム2の回転数と目標回転数との差が所定の基準値以上である場合に、油圧ポンプ5から油圧モータ6への作動油の供給を指令する供給指令値と、回転センサ6aの検出値と、回転センサ10bの検出値と、圧力センサ5cの検出値と、に基づいて異常箇所を判定する異常判定部21を有する。このように、ミキサドラム2の回転数制御に異常が生じた場合に、コントローラ20の異常判定部21によって異常箇所が自動的に判定されるため、車両メンテナンス工場等において故障部位を特定するための確認作業を行うことなく、故障部位を迅速に特定することができる。
【0117】
また、異常判定部21は、供給指令値が所定の基準指令値(基準電流値)以下である場合に、圧力センサ5cの検出値が所定の第1基準値以上であれば、油圧ポンプ5に異常があると判定し、圧力センサ5cの検出値が第1基準値未満であれば、回転センサ6aに異常があると判定する。
【0118】
また、異常判定部21は、回転センサ10bにより油圧ポンプ5が回転していないと検出された場合に、圧力センサ5cの検出値が所定の第2基準値以上であれば、回転センサ10bに異常があると判定し、圧力センサ5cの検出値が第2基準値未満であれば、エンジン10が停止していると判定する。
【0119】
また、異常判定部21は、供給指令値が所定の基準指令値(基準電流値)よりも大きく、回転センサ10bにより油圧ポンプ5が回転していると検出された場合に、圧力センサ5cの検出値が第3基準値以上であり、且つ、回転センサ6aによりミキサドラム2が回転していないと検出されると、回転センサ6aに異常があると判定し、圧力センサ5cの検出値が第3基準値以上であり、且つ、回転センサ6aによりミキサドラム2が回転していると検出されると、油圧ポンプ5に異常があると判定し、圧力センサ5cの検出値が第3基準値未満であると、油圧ポンプ5に異常があると判定する。
【0120】
また、油圧ポンプ5は、油圧ポンプ5の吐出量を調整する傾転角調整機構5bと、油圧モータ6の負荷に応じて油圧ポンプ5の吐出圧を変化させるロードセンシング機構5dと、を有し、異常判定部21は、供給指令値が所定の基準指令値(基準電流値)よりも大きく、回転センサ10bにより油圧ポンプ5が回転していると検出され、圧力センサ5cの検出値が所定の第3基準値以上であり、回転センサ6aによりミキサドラム2が回転していると検出された場合に、圧力センサ5cの検出値の変動幅が所定の基準幅以上であれば、油圧ポンプ5の傾転角調整機構5bに異常があると判定し、圧力センサ5cの検出値の変動幅が基準幅未満であれば、油圧ポンプ5のロードセンシング機構5dに異常があると判定する。
【0121】
これらの構成では、油圧ポンプ5から油圧モータ6への作動油の供給を指令する供給指令値と、回転センサ6aの検出値と、回転センサ10bの検出値と、圧力センサ5cの検出値と、に基づいて、コントローラ20の異常判定部21により異常箇所が判定される。このように、ミキサドラム2の回転数制御に異常が生じた場合に、コントローラ20の異常判定部21によって異常箇所が自動的に判定されるため、ミキサ車1の修理を迅速に行うことが可能となる。また、異常箇所が判定されることで、交換すべき部品が特定されるため、駆動装置4全体を交換する場合と比較し、修理費用を低減させることができるとともに、交換作業時間を短くすることができる。
【0122】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0123】
1・・・ミキサ車、2・・・ミキサドラム、4・・・駆動装置、5・・・油圧ポンプ(流体圧ポンプ)、5a・・・制御弁、5b・・・傾転角調整機構(吐出量調整機構)、5c・・・圧力センサ(供給圧検出器,駆動状態検出器)、5d・・・ロードセンシング機構、6・・・油圧モータ(流体圧モータ)、6a・・・回転センサ(ドラム回転検出器)、10・・・エンジン(駆動源)、10b・・・回転センサ(ポンプ回転検出器,駆動状態検出器)、20・・・コントローラ、21・・・異常判定部
【要約】
【課題】ミキサドラムの回転数制御に異常が検出された際に故障部位を特定する。
【解決手段】ミキサ車1は、ミキサドラム2を回転駆動する駆動装置4と、駆動装置4の駆動状態を検出する駆動状態検出器5c,10bと、ミキサドラム2の回転数を検出するドラム回転検出器としての回転センサ6aと、ミキサドラム2の回転数が目標回転数となるように、駆動装置4へ駆動指令値を出力するコントローラ20と、を備える。コントローラ20は、ミキサドラム2の回転数と目標回転数との差が所定の基準値以上である場合に、駆動指令値と回転センサ6aの検出値と駆動状態検出器5c,10bの検出値とに基づいて異常箇所を判定する異常判定部21を有する。
【選択図】図2
図1A
図1B
図2
図3A
図3B