特許第6701412号(P6701412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6701412
(24)【登録日】2020年5月8日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】水溶性高分子を含む水性液剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/498 20060101AFI20200518BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20200518BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20200518BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20200518BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20200518BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20200518BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20200518BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20200518BHJP
【FI】
   A61K31/498
   A61P27/02
   A61P27/06
   A61K9/08
   A61K47/18
   A61K47/38
   A61K47/32
   A61K47/36
【請求項の数】13
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2019-96298(P2019-96298)
(22)【出願日】2019年5月22日
(62)【分割の表示】特願2018-229557(P2018-229557)の分割
【原出願日】2018年12月7日
(65)【公開番号】特開2019-142974(P2019-142974A)
(43)【公開日】2019年8月29日
【審査請求日】2019年11月13日
(31)【優先権主張番号】特願2017-235962(P2017-235962)
(32)【優先日】2017年12月8日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000199175
【氏名又は名称】千寿製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100165892
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 啓司
(72)【発明者】
【氏名】家本 涼香
(72)【発明者】
【氏名】杉原 涼
【審査官】 参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/050416(WO,A1)
【文献】 特許第6603785(JP,B2)
【文献】 有機合成化学,1975年,第33巻第3号,pp.155-162
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/498
A61K 9/08
A61K 47/18
A61K 47/32
A61K 47/36
A61K 47/38
A61P 27/02
A61P 27/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリモニジン及び/又はその塩、水溶性高分子、及びクロルヘキシジングルコン酸塩を含有する水性液剤であって、
ブリモニジン及び/又はその塩の含有量が0.05w/v%〜0.2w/v%であり、水溶性高分子の含有量が0.05w/v%〜3w/v%であり、クロルヘキシジングルコン酸塩の含有量が0.001w/v%〜0.01w/v%であり、
該水溶性高分子が、ポリビニル系高分子化合物、セルロース系高分子化合物、及び天然高分子化合物から選択される1種又は2種以上の組合せを含む、水性液剤。
【請求項2】
ブリモニジン及び/又はその塩と、水溶性高分子と、クロルヘキシジングルコン酸塩との重量比が1:1〜15:0.01〜0.1である、請求項1に記載の水性液剤。
【請求項3】
該ポリビニル系高分子化合物が、ポリビニルピロリドン及びカルボキシビニルポリマーからなる群より選択される1種又は2種組合せを含み、
該セルロース系高分子化合物がヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、及びヒドロキシプロピルセルロースらなる群より選択される1種又は2種以上の組合せを含み、
該天然高分子が、キサンタンガム、及びコンドロイチン硫酸ナトリウムらなる群より選択される1種又は2種組合せを含む、請求項1又は2に記載の水性液剤。
【請求項4】
水性液剤を60℃で4週間保管した後の該水性液剤の粘度を当該4週間保管する前の該水性液剤の粘度で除して算出した粘度安定性が、90%以上である、請求項1〜のいずれか一項に記載の水性液剤。
【請求項5】
該水性液剤が眼科用である、請求項1〜のいずれか一項に記載の水性液剤。
【請求項6】
該眼科用の水性液剤が点眼剤である、請求項に記載の水性液剤。
【請求項7】
緑内障を治療するための、請求項1〜のいずれか一項に記載の水性液剤。
【請求項8】
水性液剤の粘度低下を抑制する方法であって、水溶性高分子を含有する水性液剤中にブリモニジン及び/又はその塩と、クロルヘキシジングルコン酸塩との両方を共存させる工程を含み、ブリモニジン及び/又はその塩の含有量が0.05w/v%〜0.2w/v%であり、水溶性高分子の含有量が0.05w/v%〜3w/v%であり、クロルヘキシジングルコン酸塩の含有量が0.001w/v%〜0.01w/v%であり、
該水溶性高分子が、ポリビニル系高分子化合物、セルロース系高分子化合物、及び天然高分子化合物から選択される1種又は2種以上の組合せを含む、粘度低下を抑制する方法。
【請求項9】
ブリモニジン及び/又はその塩と、水溶性高分子と、クロルヘキシジングルコン酸塩との重量比が1:1〜15:0.01〜0.1である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
該ポリビニル系高分子化合物が、ポリビニルピロリドン及びカルボキシビニルポリマーからなる群より選択される1種又は2種組合せを含み、
該セルロース系高分子化合物がヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、及びヒドロキシプロピルセルロースらなる群より選択される1種又は2種以上の組合せを含み、
該天然高分子が、キサンタンガム、及びコンドロイチン硫酸ナトリウムらなる群より選択される1種又は2種組合せを含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
水溶性高分子を含有する水性液剤の粘度低下を抑制するための、ブリモニジン及び/又はその塩と、クロルヘキシジングルコン酸塩との両方を含有する粘度低下抑制剤であって、
水溶性高分子の濃度が0.05w/v%〜3w/v%となるように用いられ、
ブリモニジン及び/又はその塩の含有量が0.05w/v%〜0.2w/v%であり、クロルヘキシジングルコン酸塩の含有量が0.001w/v%〜0.01w/v%となるように配合され
該水溶性高分子が、ポリビニル系高分子化合物、セルロース系高分子化合物、及び天然高分子化合物から選択される1種又は2種以上の組合せを含む、粘度低下抑制剤。
【請求項12】
ブリモニジン及び/又はその塩と、水溶性高分子と、クロルヘキシジングルコン酸塩との重量比が1:1〜15:0.01〜0.1となるように配合される、請求項11に記載の粘度低下抑制剤。
【請求項13】
該ポリビニル系高分子化合物が、ポリビニルピロリドン及びカルボキシビニルポリマーからなる群より選択される1種又は2種組合せを含み、
該セルロース系高分子化合物がヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、及びヒドロキシプロピルセルロースらなる群より選択される1種又は2種以上の組合せを含み、
該天然高分子が、キサンタンガム、及びコンドロイチン硫酸ナトリウムらなる群より選択される1種又は2種組合せを含む、請求項11又は12に記載の粘度低下抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性高分子、ブリモニジン及び/又はその塩、及びクロルヘキシジングルコン酸塩を含む水性液剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
ブリモニジンは、選択的アドレナリンα2受容体作動薬であり、眼房水の産生を抑制すると共に、ぶどう膜強膜流出路を介した眼房水の流出を促進し、それにより、眼圧低下作用を示す。このため、ブリモニジン及びその塩は緑内障の治療に使用されている。
【0003】
水性液剤に含有される薬理成分の生物学的利用能を高めるために、眼粘膜での該成分の滞留性を向上させることが行われている。例えば、粘稠剤又は増粘剤として水溶性高分子を水性液剤に配合することで、該水性液剤に含有される薬理成分の滞留性を向上させ得ることが知られている。
【0004】
しかしながら、水溶性高分子を水性液剤に配合すると、粘度安定性が低く、経時的に液剤の粘度が低下するという問題点がある。このような粘度の低下は、使用感を損なったり、所期の薬効を発現できなくしたりするため、これらの水溶性高分子を配合した水性液剤(特に点眼剤)の製剤設計や品質保証の上で、経時的な粘度低下を抑制することが重要になっている。特に、点眼剤では、その粘度を涙液と同程度に設定することによって、角結膜の湿潤性の保持、乾燥の防止、眼球運動における眼瞼と眼球の間の潤滑油としての作用等を付与したり、点眼時の違和感を無くすように調整したりしている。それ故、点眼剤の粘度が低下すると、これらの機能の減弱化を招くことになるため、点眼剤の粘度安定性を向上させることはとりわけ重要である。
【0005】
従来、水溶性高分子を含む水性液剤における経時的な粘度の低下を抑制する製剤技術について報告されている。例えば、水溶性高分子の1種であるカルボキシメチルセルロース(以下「CMC」ともいう。)を含有する組成物にアスパラギン酸又はその塩を配合し、粘度低下が抑制された粘膜適用組成物が知られている(特許文献1)。ヒアルロン酸を含有する組成物にグルコン酸又はその金属塩を配合し、粘度の安定性を高めた眼科用水性液剤が知られている(特許文献2)。しかしながら、ブリモニジン又はクロルヘキシジングルコン酸塩を用いた粘度の低下を抑制できる製剤技術は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−104114
【特許文献2】WO2008−050776
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、水溶性高分子を含有する水性液剤において、経時的な粘度の低下を抑制できる製剤技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、水溶性高分子の1種であるCMCを含有する水性液剤の粘度低下を抑制するための成分について鋭意研究した結果、驚くべきことに、眼圧降下剤であるブリモニジン自体が、そのような粘度低下抑制作用を示すことを見出した。本発明者はまた、防腐剤又は保存剤であるクロルヘキシジングルコン酸塩がCMCを含有する水性液剤の粘度低下を抑制することを見出した。更に本発明者は、ブリモニジンとクロルヘキシジングルコン酸塩とを組み合わせて用いることで、優れた粘度低下抑制作用を示すことを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明者は、更に、ブリモニジン及び/又はその塩とクロルヘキシジングルコン酸塩との組み合わせが、水溶性高分子の1種であるポリビニルアルコール(PVA)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、又はヒアルロン酸を含有する水性液剤において、優れた粘度低下抑制作用を示すことを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明者は、クロルヘキシジングルコン酸塩が、ブリモニジン及び/又はその塩と水溶性高分子の1種であるCMC、PVA、HPMC、又はヒアルロン酸とを含有する水性液剤において、前記水性液剤中のブリモニジン及び/又はその塩の含有量低下を抑制する優れた作用を示すことを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
本発明者は、ブリモニジン及び/又はその塩とクロルヘキシジングルコン酸塩との組み合わせが、水溶性高分子の1種であるポリビニルピロリドン(PVP)を含有する水性液剤において、そのpHを安定化させる作用を示すことを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の水性液剤、粘度低下を抑制する方法、及び粘度低下抑制剤に関する。
【0013】
[項1]
ブリモニジン及び/又はその塩、水溶性高分子、及びクロルヘキシジングルコン酸塩を含有する水性液剤。
[項2]
ブリモニジン及び/又はその塩の含有量が0.05w/v%〜0.2w/v%であり、水溶性高分子の含有量が0.05w/v%〜3w/v%であり、クロルヘキシジングルコン酸塩の含有量が0.001w/v%〜0.01w/v%である、項1に記載の水性液剤。
[項3]
ブリモニジン及び/又はその塩と、水溶性高分子と、クロルヘキシジングルコン酸塩との重量比が1:1〜15:0.01〜0.1である、項1又は項2に記載の水性液剤。
[項4]
水溶性高分子がカルボキシメチルセルロース及び/又はその塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びヒアルロン酸及び/又はその塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、項1〜項3のいずれか一項に記載の水性液剤。
[項5]
ブリモニジン及び/又はその塩の含有量が0.1w/v%であり、カルボキシメチルセルロース及び/又はその塩の含有量が0.5w/v%であり、クロルヘキシジングルコン酸塩の含有量が0.0025w/v%〜0.005w/v%である、項1〜4のいずれか一項に記載の水性液剤。
[項6]
水性液剤を60℃で4週間保管した後の該水性液剤の粘度を当該4週間保管する前の該水性液剤の粘度で除して算出した粘度安定性が、90%以上である、項1〜項5のいずれか一項に記載の水性液剤。
[項7]
該水性液剤が眼科用である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の水性液剤。
[項8]
該眼科用の水性液剤が点眼剤である、請求項7に記載の水性液剤。
[項9]
緑内障を治療するための、項1〜項8のいずれか一項に記載の水性液剤。
[項10]
水性液剤の粘度低下を抑制する方法であって、水性液剤中にブリモニジン及び/又はその塩と、クロルヘキシジングルコン酸塩とのいずれか一方又は両方を共存させる工程を含む、粘度低下を抑制する方法。
[項11]
水性液剤中にブリモニジン及び/又はその塩と、クロルヘキシジングルコン酸塩との両方を共存させる工程を含む、項10に記載の方法。
[項12]
ブリモニジン及び/又はその塩の含有量が0.05w/v%〜0.2w/v%であり、水溶性高分子の含有量が0.05w/v%〜3w/v%であり、クロルヘキシジングルコン酸塩の含有量が0.001w/v%〜0.01w/v%である、項10又は項11に記載の方法。
[項13]
ブリモニジン及び/又はその塩と、水溶性高分子と、クロルヘキシジングルコン酸塩との重量比が1:1〜15:0.01〜0.1である、項10〜項12のいずれか一項に記載の方法。
[項14]
水溶性高分子がカルボキシメチルセルロース及び/又はその塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びヒアルロン酸及び/又はその塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、項10〜項13のいずれか一項に記載の方法。
[項15]
水溶性高分子を含有する水性液剤の粘度低下を抑制するための、ブリモニジン及び/又はその塩と、クロルヘキシジングルコン酸塩とのいずれか一方又は両方を含有する粘度低下抑制剤。
[項16]
ブリモニジン及び/又はその塩と、クロルヘキシジングルコン酸塩との両方を含有する、項15に記載の粘度低下抑制剤。
[項17]
ブリモニジン及び/又はその塩の含有量が0.05w/v%〜0.2w/v%であり、クロルヘキシジングルコン酸塩の含有量が0.001w/v%〜0.01w/v%となるように配合される、項15又は項16に記載の粘度低下抑制剤。
[項18]
ブリモニジン及び/又はその塩と、水溶性高分子と、クロルヘキシジングルコン酸塩との重量比が1:1〜15:0.01〜0.1となるように配合される、項15〜項17のいずれか一項に記載の粘度低下抑制剤。
[項19]
水溶性高分子がカルボキシメチルセルロース及び/又はその塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びヒアルロン酸及び/又はその塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、項15〜項18のいずれか一項に記載の粘度低下抑制剤。
[項20]
水性液剤におけるブリモニジン及び/又はその塩の含有量低下を抑制する方法であって、ブリモニジン及び/又はその塩を含有する水性液剤中に、水溶性高分子及びクロルヘキシジングルコン酸塩を共存させる工程を含む、含有量低下を抑制する方法。
[項21]
水溶性高分子を含む水性液剤におけるpHの安定化方法であって、水溶性高分子を含有する水性液剤中に、ブリモニジン及び/又はその塩とクロルヘキシジングルコン酸塩とを共存させる工程を含む、pHの安定化方法。
[項22]
ブリモニジン及び/又はその塩、水溶性高分子、及びクロルヘキシジングルコン酸塩を含有する水性液剤を、その必要のある対象の眼に投与することを含む、緑内障の治療方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水性液剤は、水溶性高分子を含んでいながら、経時的な粘度低下を抑制できるので、使用感の向上、薬物の滞留性の向上、薬効の増強等の、水溶性高分子によって付与される効果を長期間維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。従って、他に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語及び科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0016】
(定義)
本明細書において「ブリモニジン」は、選択的アドレナリンα2受容体作動薬であり、一般的な水性液剤、特に点眼剤において有効成分として配合される。ブリモニジン及びその塩は商業的に入手可能である。ブリモニジンの塩としては、限定するものではないが、酒石酸塩、塩酸塩又は酢酸塩が挙げられる。本明細書において、ブリモニジン及び/又はその塩の含有量又は濃度に関する言及は、そうではないと明記しない限り、ブリモニジン酒石酸塩に換算された含有量又は濃度を意味する。
【0017】
本明細書において「水溶性高分子」とは、水に可溶な高分子のことをいう。「水溶性高分子」は、限定するものではないが、水性液剤に所望の粘度を付与するための増粘剤又は粘稠剤として用いられるものである。「水溶性高分子」は、増粘剤又は粘稠剤として水性液剤に一般的に使用されるものであれば、特に限定されず、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー(架橋ポリアクリル酸ポリマー等)等のポリビニル系高分子化合物;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース系高分子化合物;及びキサンタンガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム等の天然高分子である。
【0018】
本明細書において「カルボキシメチルセルロース(CMC)」は、セルロース系高分子化合物の1種である。「カルボキシメチルセルロース(CMC)」は、商業的に入手可能であり、一般的に水性液剤に所望の粘度を付与するための増粘剤又は粘稠剤として用いられる。具体的には例えば、NS−300(五徳薬品社製)等が用いられる。CMCの塩としては、限定するものではないが、ナトリウム塩が挙げられ、具体的には例えば、T.P.T(五徳薬品社製)、セロゲンシリーズ(第一工業製薬社製)、サンローズ(日本製紙ケミカル社製)等が用いられる。本明細書において、CMC及び/又はその塩の含有量又は濃度に関する言及は、そうではないと明記しない限り、カルボキシメチルセルロースナトリウムに換算された含有量又は濃度を意味する。
【0019】
本明細書において「ポリビニルアルコール(PVA)」は、ポリビニル系合成樹脂の1種である。PVAは、商業的に入手可能であり、一般的に水性液剤に所望の粘度を付与するための増粘剤又は粘稠剤として用いられる。具体的には例えば、ゴーセノール(日本合成化学工業(株)製)等が用いられる。
【0020】
本明細書において「ポリビニルピロリドン(PVP)」は、ポリビニル系合成樹脂の1種である。PVPは、商業的に入手可能であり、一般的に水性液剤に所望の粘度を付与するための増粘剤又は粘稠剤として用いられる。具体的には例えば、コリドン30(BASFジャパン(株)製)等が用いられる。
【0021】
本明細書において「ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)」は、セルロース系高分子の1種である。HPMCは、商業的に入手可能であり、一般的に水性液剤に所望の粘度を付与するための増粘剤又は粘稠剤として用いられる。具体的には例えば、METOLOSE/ヒプロメロース2906(信越化学工業(株)製)等が用いられる。
【0022】
本明細書において「ヒアルロン酸」は、天然高分子の1種である。ヒアルロン酸は、商業的に入手可能であり、一般的に水性液剤に所望の粘度を付与するための増粘剤又は粘稠剤として用いられる。具体的には例えば、精製ヒアルロン酸ナトリウム(生化学工業(株)製)等が用いられる。ヒアルロン酸の塩としては、限定するものではないが、ナトリウム塩が挙げられる。本明細書において、ヒアルロン酸及び/又はその塩の含有量又は濃度に関する言及は、そうではないと明記しない限り、ヒアルロン酸ナトリウムに換算された含有量又は濃度を意味する。
【0023】
本明細書において「クロルヘキシジングルコン酸塩」は、クロルヘキシジン(C22H30Cl2N10)のグルコン酸塩であり、一般的な水性液剤において防腐剤又は保存剤として配合される。クロルヘキシジングルコン酸塩は、商業的に入手可能である。
【0024】
本明細書において「水性液剤」は水性の液体の薬剤である。水性液剤は、常法に従って調製することができる。本明細書の「水性液剤」は限定するものではないが、眼科用、歯科用、耳鼻科用、皮膚科用等、様々な用途の局所投与製剤を含んでいる。水性液剤は、限定するものではないが、水溶性高分子を精製水に溶解して水溶液を得て、該水溶液を他の固形成分及び場合により液体成分と共に精製水に溶解して調製することができる。調製した水性液剤を、適宜、塩酸又は水酸化ナトリウムを用いてpHを調整してもよい。水性液剤は、常法に従って滅菌処理した後、製品容器に充填してよい。滅菌方法は、一般的に用いられる方法であれば、特に限定されず、フィルター滅菌、濾過滅菌、乾熱滅菌、電子線滅菌、ガンマ線滅菌等が挙げられる。1つの実施形態において、滅菌処理はフィルター濾過である。
【0025】
本明細書において水性液剤の「粘度」は、実施例に記載されるように、第十七改正日本薬局方の一般試験法に定める粘度測定法 第2法 回転粘度計法に従って測定される(25℃、回転速度50rpm、円すい−平板形回転粘度計、使用コーンロータ:0.8°×R24(ロータコード:00))。水性液剤の粘度は、使用目的に応じて適宜設定される。
【0026】
本明細書において「粘度安定性」とは、実施例に記載されているように、水性液剤をガラスアンプルに充填した後に、60℃の恒温器中で4週間保管し、保管後の水性液剤の粘度が維持された度合を意味する。また、「粘度安定性」の程度は、保管後の水性液剤の粘度を保管前の該水性液剤の粘度で除して算出される値で表すことができる(=保管後の水性液剤の粘度[mPa・s]/保管前の水性液剤の粘度[mPa・s]×100)。
【0027】
本明細書において「粘度低下抑制」は、水溶性高分子を含有する水性液剤において、ブリモニジン及び/又はその塩と、クロルヘキシジングルコン酸塩とのいずれか一方又は両方を配合した場合の粘度安定性が、ブリモニジン及び/又はその塩もクロルヘキシジングルコン酸塩も配合していない場合の粘度安定性よりも高いことを意味する。また、本明細書において「粘度低下抑制剤」とは、水溶性高分子を含有する水性液剤において、ブリモニジン及び/又はその塩と、クロルヘキシジングルコン酸塩とのいずれか一方又は両方を配合することにより、粘度の経時的低下を抑制するための剤を意味する。
【0028】
本明細書においてブリモニジン及び/又はその塩の「含有量」は、実施例に記載されているように、液体クロマトグラフィーにより測定される(検出器:紫外吸光光度計(測定波長:230nm))。本明細書において水性液剤におけるブリモニジン及び/又はその塩の含有量は、水性液剤の容積(ml)あたりの重量(g)の百分率(w/v%)を意味する。
【0029】
本明細書においてブリモニジン及び/又はその塩の「含有量低下の抑制」は、実施例に記載されているように、60℃にて2週間保管した後の水性液剤におけるブリモニジン及び/又はその塩の含有量が、ブリモニジン及び/又はその塩と水溶性高分子とを含有する水性液剤にクロルヘキシジングルコン酸塩を配合した場合に、クロルヘキシジングルコン酸塩を配合していない場合よりも高いことを意味する。
【0030】
本明細書において、水性液剤におけるブリモニジン及び/又はその塩の「含有量低下の抑制」は、水性液剤におけるブリモニジン及び/又はその塩の「残存率の向上」又は「安定化」等と言い換えることができる。本明細書において、水性液剤におけるブリモニジン及び/又はその塩の「残存率」は、実施例に記載されているように、60℃にて2週間保管した後の水性液剤におけるブリモニジン及び/又はその塩の含有量を、保管前の当該水性液剤におけるブリモニジン及び/又はその塩の含有量で除した値を意味する。本明細書において、水性液剤におけるブリモニジン及び/又はその塩の「安定化」は、水性液剤におけるブリモニジン及び/又はその塩の含有量が、60℃での2週間の保管の前後で安定していること(即ち、含有量の差が小さいこと)を意味する。
【0031】
本明細書において「含有量低下抑制剤」又は「安定化剤」は、ブリモニジン及び/又はその塩を含有する水性液剤において、水溶性高分子及びクロルヘキシジングルコン酸塩を共存させることにより、前記水性液剤におけるブリモニジン及び/又はその塩の含有量が経時的に低下するのを抑制するための剤を意味する。
【0032】
本明細書において水性液剤の「pH」は、実施例に記載されているように、ガラス電極を用いてpH計により測定される。水性液剤のpHは、使用目的に応じて適宜設定される。
【0033】
本明細書において「pHの安定化」は、実施例に記載されているように、60℃にて2週間保管した後の水性液剤のpHと保管前の水性液剤のpHとの差が、水溶性高分子を含有する水性液剤にブリモニジン及び/又はその塩とクロルヘキシジングルコン酸塩を配合した場合に、ブリモニジン及び/又はその塩もクロルヘキシジングルコン酸塩も配合していない場合よりも小さいことを意味する。
【0034】
本明細書において「pHの安定化剤」は、水溶性高分子を含有する水性液剤に、ブリモニジン及び/又はその塩とクロルヘキシジングルコン酸塩とを配合することにより、前記水性液剤のpHを安定化させるための剤を意味する。
【0035】
本明細書において「治療」とは、症状の軽減、緩和もしくは進行速度の低下を意味する。また、本明細書において「緑内障」とは、視神経と視野に特徴的変化を有し、通常、眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患を意味し、原発性開放隅角緑内障、正常眼圧緑内障、房水産生過多緑内障、高眼圧症、急性閉塞隅角緑内障、慢性閉塞隅角緑内障、混合型緑内障、ステロイド緑内障、アミロイド緑内障、血管新生緑内障、悪性緑内障、水晶体の嚢性緑内障、台地状虹彩シンドローム(plateau iris syndrome)等を含むものである。
【0036】
本明細書において「対象」は、症状の軽減、緩和もしくは進行速度の低下を必要とする動物を意味する。前記動物としては、限定するものではないが、ヒトを含む哺乳動物が挙げられる。1つの実施形態において、前記動物はヒトである。他の実施形態において、前記動物は、治療の必要がある判断されたヒト患者である。
【0037】
本明細書において言及される各要素、例えば配合される水溶性高分子(例えばCMC及び/又はその塩)、クロルヘキシジングルコン酸塩及びブリモニジンの水性液剤における濃度、水性液剤の粘度、粘度安定性、任意の添加成分、水性液剤におけるpH、浸透圧などに関する特徴は、第1〜第7の態様に関する各要素に適用される。本明細書に記載の数値範囲は、「超」又は「未満」と明記された場合を除き、その上限値と下限値を含む範囲を示す。
【0038】
(好ましい実施形態の説明)
以下に好ましい実施形態の説明を記載するが、この実施形態は本発明の例示であり、本発明の範囲はそのような好ましい実施形態に限定されないことが理解されるべきである。当業者はまた、以下のような好ましい実施例を参考にして、本発明の範囲内にある改変、変更などを容易に行うことができることが理解されるべきである。これらの実施形態について、当業者は適宜、任意の実施形態を組み合わせ得る。
【0039】
1.水性液剤
本発明の第1の態様は、ブリモニジン及び/又はその塩、水溶性高分子及びクロルヘキシジングルコン酸塩を含む水性液剤に関する。
【0040】
[ブリモニジン]
本発明の水性液剤において、ブリモニジン及び/その塩は、限定するものではないが、水性液剤に配合された水溶性高分子により付与される粘度が低下するのを抑制するための粘度低下抑制剤の1成分として水性液剤に配合される。
【0041】
ブリモニジンの塩としては、薬学的に許容されることを限度として限定するものではないが、酒石酸塩、塩酸塩又は酢酸塩等が挙げられる。ブリモニジン又はその塩のいずれか一方を単独で使用してもよく、またこれらを組み合わせて使用してもよい。ブリモニジン及びその塩の中でも、好ましくはブリモニジン酒石酸塩が挙げられる。
【0042】
本発明の水性液剤において、ブリモニジン及び/又はその塩の濃度については、限定するものではないが、適用対象となる患者の症状の程度、1回当たりの適用量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.05w/v%〜0.2w/v%、好ましくは0.07w/v%〜0.15w/v%、より好ましくは0.09w/v%〜0.12w/v%、更に好ましくは0.1w/v%が挙げられる。
【0043】
[クロルヘキシジングルコン酸塩]
本発明の水性液剤において、クロルヘキシジングルコン酸塩は、限定するものではないが、水性液剤に配合された水溶性高分子により付与される粘度が低下するのを抑制するための粘度低下抑制剤の1成分として水性液剤に配合される。クロルヘキシジングルコン酸塩の濃度については、限定するものではないが、例えば0.001w/v%〜0.01w/v%、好ましくは0.002w/v%〜0.007w/v%、より好ましくは0.002w/v%〜0.005w/v%である。
【0044】
[水溶性高分子]
本発明の水性液剤において、水溶性高分子は、限定するものではないが、水性液剤に所望の粘度を付与するための増粘剤又は粘稠剤として用いられる。水溶性高分子は、増粘剤又は粘稠剤として水性液剤に一般的に使用されるものであれば、特に限定されず、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー(架橋ポリアクリル酸ポリマー等)等のポリビニル系高分子化合物;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース系高分子化合物;及びキサンタンガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム等の天然高分子が挙げられる。本発明の水性液剤は、上記した水溶性高分子を1種単独で含んでもよく、また2種以上の組合せを含んでもよい。
【0045】
水溶性高分子の濃度は、限定するものではないが、例えば0.05w/v%〜3w/v%であり、好ましくは0.1w/v%〜1.5w/v%であり、より好ましくは0.2w/v%〜1.0w/v%であり、さらに好ましくは0.3w/v%〜0.7w/v%である。
【0046】
1つの実施形態において、本発明の水性液剤はポリビニル系高分子化合物、セルロース系高分子化合物、又は天然高分子を含む。他の実施形態において、水溶性高分子は、好ましくはセルロース系高分子化合物又は天然高分子、更に好ましくはセルロース系高分子化合物である。また、他の実施形態において、本発明の水性液剤はポリビニル系高分子化合物、セルロース系高分子化合物及び天然高分子から選択される少なくとも2種の水溶性高分子を含む。
【0047】
1つの実施形態において、ポリビニル系高分子化合物はポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール又はカルボキシビニルポリマー(架橋ポリアクリル酸ポリマー等)であり、粘度の低下をより効果的に抑制するという観点から、好ましくはポリビニルアルコール又はカルボキシビニルポリマー(架橋ポリアクリル酸ポリマー等)であり、より好ましくはポリビニルアルコールである。これらのポリビニル系高分子化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
1つの実施形態において、セルロース系高分子化合物は、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースであってもよく、粘度の低下をより効果的に抑制するという観点から、好ましくはカルボキシメチルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、より好ましくはカルボキシメチルセルロースである。これらのセルロース系高分子化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
1つの実施形態において、CMCの塩はカルボキシメチルセルロースナトリウムである。CMC及びその塩はいずれか一方を単独で使用してもよく、又はこれらを組み合わせて使用してもよい。
【0050】
1つの実施形態において、CMC及び/又はその塩の濃度は、例えば0.1w/v%〜1.5w/v%であり、好ましくは0.2w/v%〜1.0w/v%であり、より好ましくは0.3w/v%〜0.7w/v%である。
【0051】
1つ実施形態において、セルロース系高分子化合物はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。HPMCの濃度は、例えば、0.01w/v%〜1.5w/v%であり、好ましくは0.05w/v%〜1.0w/v%であり、より好ましくは0.1w/v%〜0.5w/v%である。
【0052】
1つの実施形態において、天然高分子は、キサンタンガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウムであってもよく、粘度の低下をより効果的に抑制するという観点から、好ましくはキサンタンガム又はヒアルロン酸ナトリウムであり、より好ましくはヒアルロン酸ナトリウムである。これらの天然高分子は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0053】
1つの実施形態において、天然高分子はヒアルロン酸ナトリウムである。ヒアルロン酸ナトリウムの濃度は、例えば、0.01w/v%〜1.5w/v%であり、好ましくは0.01w/v%〜0.5w/v%であり、より好ましくは0.01w/v%〜0.1w/v%である。
【0054】
他の実施形態において、本発明の水性液剤は、増粘剤又は粘稠剤として少なくとも1種のポリビニル系高分子化合物、セルロース系高分子又は天然高分子を含み、実質的に他の増粘剤又は粘稠剤を含まず、粘度低下抑制剤としてブリモニジン及び/又はその塩及びクロルヘキシジングルコン酸塩の組合せを含み、粘度低下を抑制させる他の成分を実質的に含まない。粘度低下を抑制させる他の成分として、例えばヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等が挙げられる。
【0055】
1つの実施形態において、ポリビニル系高分子はポリビニルアルコール(PVA)である。PVAの濃度は、例えば、0.01w/v%〜1.5w/v%であり、好ましくは0.1w/v%〜1.5w/v%であり、より好ましくは0.5w/v%〜1.5w/v%である。
【0056】
1つの実施形態において、本発明の水性液剤は、ブリモニジン及び/又はその塩を0.05w/v%〜0.2w/v%、水溶性高分子(例えばセルロース系高分子、一例としてCMC及び/又はその塩)を0.1w/v%〜1.5w/v%、及びクロルヘキシジングルコン酸塩を0.001w/v%〜0.01w/v%含有する。他の実施形態において、本発明の水性液剤は、ブリモニジン酒石酸塩を0.07w/v%〜0.15w/v%(好ましくは0.09w/v%〜0.12w/v%、より好ましくは0.1w/v%)、水溶性高分子を0.2w/v%〜1w/v%(好ましくは0.3w/v%〜0.7w/v%、より好ましくは0.5w/v%)、及びクロルヘキシジングルコン酸塩を0.002w/v%〜0.007w/v%(好ましくは0.002w/v%〜0.005w/v%、より好ましくは0.0025w/v%〜0.005w/v%)を含有する。
【0057】
1つの実施形態において、本発明の水性液剤は、ブリモニジン及び/又はその塩を0.05w/v%〜0.2w/v%、水溶性高分子(例えばセルロース系高分子、一例としてHPMC;天然高分子、一例としてヒアルロン酸;又はポリビニル系高分子、一例としてPVA)を0.01w/v%〜1.5w/v%、及びクロルヘキシジングルコン酸塩を0.001w/v%〜0.01w/v%含有する。他の実施形態において、本発明の水性液剤は、ブリモニジン酒石酸塩を0.07w/v%〜0.15w/v%(好ましくは0.09w/v%〜0.12w/v%、より好ましくは0.1w/v%)、水溶性高分子を0.03w/v%〜1.3w/v%(好ましくは0.05w/v%〜1.0w/v%)、及びクロルヘキシジングルコン酸塩を0.002w/v%〜0.007w/v%(好ましくは0.002w/v%〜0.005w/v%、より好ましくは0.0025w/v%〜0.005w/v%)を含有する。
【0058】
[重量比]
1つの実施形態において、本発明の水性液剤における、ブリモニジン及び/又はその塩と、水溶性高分子と、クロルヘキシジングルコン酸塩との重量比が1:1〜15:0.01〜0.1であり、好ましくは1:2〜10:0.02〜0.07、より好ましくは1:3〜7:0.02〜0.05である。この例において、水性液剤は、更に、ホウ酸及びホウ砂を含む(浸透圧比:0.9〜1.1、pH:6.7〜7.5)。
【0059】
他の実施形態において、本発明の水性液剤における、ブリモニジン及び/又はその塩と、水溶性高分子と、クロルヘキシジングルコン酸塩との重量比は1:0.1〜15:0.01〜0.1であり、好ましくは1:0.2〜12:0.02〜0.07、より好ましくは1:0.5〜10:0.02〜0.05である。この例において、水性液剤は、更に、ホウ酸及びホウ砂を含む(浸透圧比:0.9〜1.1、pH:6.7〜7.5)。
【0060】
他の実施形態において、本発明の水性液剤における、ブリモニジン及び/又はその塩とクロルヘキシジングルコン酸塩との重量比が1:0.01〜0.1であり、好ましくは1:0.02〜0.07であり、より好ましくは1:0.02〜0.05である。
【0061】
他の実施形態において、本発明の水性液剤における、ブリモニジン及び/又はその塩と、水溶性高分子との重量比は、1:1〜15で、好ましくは1:2〜10で、より好ましくは1:3〜7である。
【0062】
他の実施形態において、本発明の水性液剤における、ブリモニジン及び/又はその塩と、水溶性高分子との重量比は、1:0.1〜15で、好ましくは1:0.2〜12で、より好ましくは1:0.5〜10である。
【0063】
他の実施形態において、本発明の水性液剤における、クロルヘキシジングルコン酸塩と、水溶性高分子との重量比は、1:30〜500で、好ましくは1:60〜330で、より好ましくは1:90〜230である。
【0064】
他の実施形態において、本発明の水性液剤における、クロルヘキシジングルコン酸塩と、水溶性高分子との重量比は、1:10〜500である。
【0065】
[粘度]
本発明の水性液剤の粘度は、限定するものではないが、配合された水溶性高分子によって付与される。1つの実施形態において、本発明の水性液剤の粘度は、少なくとも1種の水溶性高分子の配合によって調整される。1つの実施形態において、本発明の水性液剤の粘度は、CMC及び/又はその塩の配合によって調整される。他の実施形態において、本発明の水性液剤の粘度は、CMC及び/又はその塩と本明細書に記載の他の水溶性高分子との組合せの配合によって調整される。
【0066】
本発明の水性液剤の粘度は、限定するものではないが、25℃、回転速度50rpmにて、1.0mPa・s以上30mPa・s未満である。1つの実施形態において、調製後の水性液剤の25℃、回転速度50rpmでの粘度は、1.0mPa・s以上15mPa・s未満である。1つの実施形態において、調製後の水性液剤の25℃での粘度は、1.5mPa・s以上10mPa・s未満、2.0mPa・s以上8.0mPa・s未満である。
【0067】
[粘度安定性]
本発明の水性液剤の粘度安定性の程度は、水性液剤を60℃で4週間保管した後の該水性液剤の粘度を当該4週間保管する前の該水性液剤の粘度で除して算出される。1つの実施形態において、水性液剤を60℃で4週間保管した後の該水性液剤の粘度を当該4週間保管する前の該水性液剤の粘度で除して算出した粘度安定性が、80%以上である。該粘度安定性は、好ましくは83%以上、より好ましくは85%以上、更により好ましくは90%以上、最も好ましくは92%以上である。
【0068】
[粘度低下抑制の程度]
1つの実施形態において、粘度低下抑制の程度は、ブリモニジン及び/又はその塩と、クロルヘキシジングルコン酸塩との両方を配合した水溶性高分子含有水性液剤についての粘度安定性と、ブリモニジン及び/又はその塩もクロルヘキシジングルコン酸塩も配合していないこと除いて同一の水溶性高分子を含有する水性液剤の粘度安定性との差で表される。当該粘度低下抑制の程度は、10%以上、12%以上、15%以上又は20%以上であることが好ましい。
【0069】
他の実施形態において、粘度低下抑制の程度は、ブリモニジン及び/又はその塩とクロルヘキシジングルコン酸塩とのいずれか一方を配合した水溶性高分子含有水性液剤についての粘度安定性と、ブリモニジン及び/又はその塩もクロルヘキシジングルコン酸塩も配合していないこと除いて同一の水溶性高分子を含有する水性液剤の粘度安定性との差で表される。当該粘度低下抑制の程度は、8%以上、10%以上、12%以上又は14%以上であることが好ましい。
【0070】
[製剤形態]
本発明の水性液剤の製剤形態は、限定するものではないが、眼科用、歯科用、耳鼻科用、皮膚科用等、様々な用途の局所投与製剤が挙げられる。1つの実施形態として、本発明の水性液剤は眼科用、歯科用、耳鼻科用、皮膚科用であり、好ましくは眼科用である。
【0071】
本発明の眼科用の水性液剤は、限定するものではないが、点眼剤、洗眼剤、コンタクトレンズ用剤、注射剤等が挙げられる。本発明の水性液剤は、点眼剤がとりわけ好ましい。また、本発明の点眼剤の形態は、限定するものではないが、水溶液剤、懸濁剤、乳剤等が挙げられるが、好ましくは、水溶液剤である。
【0072】
[用途]
1つの実施形態において、本発明の水性液剤は、緑内障を治療するためのものである。
【0073】
[その他の添加剤]
本発明の水性液剤は、前記成分の他に、必要に応じて、防腐剤又は保存剤(クロルヘキシジングルコン酸塩以外)、緩衝剤、キレート剤、清涼化剤、等張化剤などの任意の添加剤を更に含有してもよい。
【0074】
防腐剤又は保存剤としては、限定するものではないが、ソルビン酸又はその塩、安息香酸又はその塩、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン塩酸塩、クロルヘキシジン酢酸塩、デヒドロ酢酸又はその塩、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化亜鉛、パラクロルメタキシレノール、クロルクレゾール、フェネチルアルコール、塩化ポリドロニウム、チメロサール、ジブチルヒドロキシトルエンが挙げられる。これらの追加の防腐剤又は保存剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0075】
他の実施形態において、水性液剤は、防腐剤又は保存剤としてクロルヘキシジングルコン酸塩を含み、実質的に他の防腐剤又は保存剤を含まない。
【0076】
緩衝剤としては、限定するものではないが、リン酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酒石酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、Tris緩衝剤、アミノ酸が挙げられる。これらの緩衝剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。1つの実施形態において、緩衝剤は、ホウ酸緩衝剤であり、好ましくはホウ酸及びホウ酸ナトリウムの組合せである。
【0077】
緩衝剤は、限定するものではないが、水性液剤に十分な緩衝能を付与するために一般的に使用される量で配合され、1つの実施形態において、緩衝剤の含有量は、例えば0.01〜5w/v%、好ましくは0.05〜1w/v%、更に好ましくは0.1〜0.5w/v%である。
【0078】
キレート剤としては、限定するものではないが、エデト酸塩、クエン酸又はその塩が挙げられる。これらのキレート剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0079】
清涼化剤としては、限定するものではないが、l−メントール、ボルネオール、カンフル、ユーカリ油が挙げられる。これらの清涼化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0080】
等張化剤としては、限定するものではないが、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及びこれらの水和物が挙げられる。これらの清涼化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0081】
[その他薬理成分]
1つの実施形態において、水性液剤は、ブリモニジン及び/又はその塩以外に、本発明の効果を妨げない範囲で、緑内障に対して治療効果を示す他の薬理成分を含んでもよい。このような他の薬理成分としては、例えば、タフルプロスト、ラタノプロスト、イソプロピルウノプロストンなどのプロスタグランジン類;ピロカルピン塩酸塩などの副交感神経刺激薬;ジスチグミン臭化物などの抗コリンエステラーゼ薬;ジピベフリン塩酸塩などの交感神経刺激薬;チモロールマレイン酸塩などのβ遮断剤;ベタキソロール塩酸塩などのβ1遮断薬;ニプラジロール、レボブノロール塩酸塩などのα1・β遮断薬;ブナゾシン塩酸塩などのα1遮断薬が挙げられる。これらの薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0082】
他の実施形態において、水性液剤は、緑内障に対する直接的な有効成分としてブリモニジン及び/又はその塩を含み、実質的に他の有効成分を含まない。
【0083】
[pH]
本発明の水性液剤のpHについては、目的とする用途に適用可能であることを限度として特に制限されない。例えば眼粘膜に適用される場合、pHは6.7〜7.5であるが、より粘度安定性を向上させるという観点からは、好ましくはpH6.7〜7.3、より好ましくはpH6.9〜7.1、更に好ましくはpH7.0である。
【0084】
[浸透圧・浸透圧比]
本発明の水性液剤の浸透圧については、目的とする用途に適用可能であることを限度として特に制限されない。例えば眼粘膜に適用される場合、浸透圧は250〜350ミリオスモルである。また、本発明の水性液剤の浸透圧比については、目的とする用途に適用可能であることを限度として特に制限されない。例えば眼粘膜に適用される場合、浸透圧比は0.85〜1.15である。より粘度安定性を向上させるという観点からは、好ましくは浸透圧比0.9〜1.1、更に好ましくは浸透圧比1.0である。浸透圧は、常法に従って調整される。1つの実施形態において、浸透圧は、水性液剤に等張化剤として薬学上許容される塩を配合することにより調整される。
【0085】
[点眼回数]
点眼剤は、限定するものではないが、1回数滴を、1日1回又は複数回点眼される。1つの実施形態において、点眼剤は、1回1滴を1日2回点眼される。点眼剤は、用法及び用量に応じて配合される各成分の濃度は適宜設定される。
【0086】
2.水性液剤の粘度低下を抑制する方法
本発明の第2の態様は、水溶性高分子(例えばCMC及び/又はその塩)を含有する水性液剤中に、ブリモニジン及び/又はその塩とクロルヘキシジングルコン酸塩とのいずれか一方又は両方を共存させる工程を含む、水性液剤の粘度低下を抑制する方法に関する。
【0087】
1つの実施形態において、水溶性高分子を含有する水性液剤中に、ブリモニジン及び/又はその塩とクロルヘキシジングルコン酸塩との両方を共存させることを含む、水性液剤の粘度低下を抑制する方法に関する。
【0088】
当該方法は、例えば、該水性液剤に、ブリモニジン及び/又はその塩とクロルヘキシジングルコン酸塩とのいずれか一方又は両方を配合することにより実施されるが、ブリモニジン及び/又はその塩、及びクロルヘキシジングルコン酸塩のそれぞれの成分における添加順序は特に限定されない。配合する際の各成分は、限定するものではないが、固体又は液体である。
【0089】
本発明の水性液剤の粘度低下を抑制する方法において、使用するブリモニジン及び/又はその塩、水溶性高分子及びクロルヘキシジングルコン酸塩について、それらの種類、濃度、重量比、粘度、粘度安定性、粘度低下抑制の程度、製剤形態、用途等は「1.水性液剤」の欄に記載のものを単独又は組み合わせて採用し得る。また、本発明の水性液剤の粘度低下を抑制する方法において、水性液剤に配合可能なその他の添加剤及び薬理成分、pH、浸透圧、浸透圧比、点眼回数等についても、前記「1.水性液剤」の欄に記載のものを単独又は組み合わせて採用し得る。
【0090】
3.粘度低下抑制剤
本発明の第3の態様は、水溶性高分子を含有する水性液剤の粘度低下を抑制するための、ブリモニジン及び/又はその塩と、クロルヘキシジングルコン酸塩とのいずれか一方又は両方を含有する粘度低下抑制剤に関する。
【0091】
1つの実施形態において、粘度低下抑制剤は、水溶性高分子を含有する水性液剤において、ブリモニジン及び/又はその塩と、クロルヘキシジングルコン酸塩との両方を含有している。
【0092】
粘度低下抑制剤は、限定するものではないが、液体又は固体(例えば粉剤又は錠剤)の形態であってよい。前記粉剤又は錠剤は、常法により製造することができる。
【0093】
本発明の粘度低下抑制剤において、使用するブリモニジン及び/又はその塩、水溶性高分子及びクロルヘキシジングルコン酸塩について、それらの種類、濃度、重量比、粘度、粘度安定性、粘度低下抑制の程度、製剤形態、用途等は「1.水性液剤」の欄に記載ものを単独又は組み合わせて採用し得る。また、本発明の粘度低下抑制剤において、水性液剤に配合可能なその他の添加剤及び薬理成分、pH、浸透圧、浸透圧比、点眼回数等についても、前記「1.水性液剤」の欄に記載ものを単独又は組み合わせて採用し得る。
【0094】
4.水性液剤の製造方法
本発明の第4の態様は、ブリモニジン及び/又はその塩、水溶性高分子及びクロルヘキシジングルコン酸塩を、薬学上許容される水性媒体に混合する工程を含む、水性液剤の製造方法に関する。「薬学上許容される水性媒体」は、眼への局所適用に使用可能な水性媒体を意味し、限定するものではないが、精製水であってよい。1つの実施形態において、前記配合工程は、水溶性高分子(例えばCMC)と精製水を配合し、次いで、ブリモニジン及び/又はその塩、及びクロルヘキシジングルコン酸塩を配合してもよい。前記製造方法は、限定するものではないが、追加の添加成分を配合する工程を更に含んでよい。前記製造方法は、限定するものではないが、滅菌処理する工程を更に含んでよい。1つの実施形態において、滅菌処理はフィルター濾過である。
【0095】
本発明の水性液剤の製造方法において、使用するブリモニジン及び/又はその塩、水溶性高分子及びクロルヘキシジングルコン酸塩について、それらの種類、濃度、重量比、粘度、粘度安定性、粘度低下抑制の程度、製剤形態、用途等は「1.水性液剤」の欄に記載ものを単独又は組み合わせて採用し得る。また、本発明の水性液剤の製造方法において、水性液剤に配合可能なその他の添加剤及び薬理成分、pH、浸透圧、浸透圧比、点眼回数等についても、前記「1.水性液剤」の欄に記載ものを単独又は組み合わせて採用し得る。
【0096】
5.ブリモニジン及び/又はその塩の含有量低下を抑制する方法
本発明の第5の態様は、ブリモニジン及び/又はその塩を含有する水性液剤中に、水溶性高分子とクロルヘキシジングルコン酸塩とを共存させる工程を含む、水性液剤におけるブリモニジン及び/又はその塩の含有量低下を抑制する方法に関する。
【0097】
[配合順序]
1つの実施形態において、水性液剤におけるブリモニジン及び/又はその塩の含有量低下を抑制する方法は、ブリモニジン及び/又はその塩と水溶性高分子とを含有する水性液剤に、クロルヘキシジングルコン酸塩を配合して、ブリモニジン及び/又はその塩と水溶性高分子とクロルヘキシジングルコン酸塩とを水性液剤中に共存させることを含む。
【0098】
前記含有量低下を抑制する方法は、ブリモニジン及び/又はその塩と水溶性高分子とクロルヘキシジングルコン酸塩とを水性液剤中に共存させることにより実施され、該方法において、ブリモニジン及び/又はその塩、水溶性高分子、及びクロルヘキシジングルコン酸塩を水性液剤に配合する順序は特に限定されない。配合する際の各成分は、限定するものではないが、固体又は液体である。
【0099】
[含有量低下抑制の程度]
1つの実施形態において、含有量低下抑制の程度は、保管後の水性液剤におけるブリモニジン及び/又はその塩の含有量を、保管前の当該水性液剤におけるブリモニジン及び/又はその塩の含有量で除して算出される値で表すことができる([保管後の水性液剤におけるブリモニジン及び/又はその塩の含有量]/[保管前の水性液剤におけるブリモニジン及び/又はその塩の含有量]×100)。当該含有量低下抑制の程度は、98%以上、好ましくは98.5%以上、より好ましくは99%以上である。
【0100】
[含有量低下抑制剤]又は[安定化剤]
第5の態様の1つ実施形態として、水性液剤中のブリモニジン及び/又はその塩の「含有量低下抑制剤」又は「安定化剤」であって、水溶性高分子と、クロルヘキシジングルコン酸塩とのいずれか一方又は両方を含む前記含有量低下抑制剤又は安定化剤が提供される。前記含有量低下抑制剤又は安定化剤は、限定するものではないが、液体又は固体(例えば粉剤又は錠剤)の形態であってよい。前記粉剤又は錠剤は、常法により製造することができる。1つの実施形態において、含有量低下抑制剤又は安定化剤は、水溶性高分子と、クロルヘキシジングルコン酸塩との両方を含有している。
【0101】
本発明に係る水性液剤におけるブリモニジン及び/又はその塩の「含有量低下を抑制する方法」、「含有量低下抑制剤」又は「安定化剤」において、使用するブリモニジン及び/又はその塩、水溶性高分子及びクロルヘキシジングルコン酸塩について、それらの種類、濃度、重量比、粘度、粘度安定性、粘度低下抑制の程度、製剤形態、用途等は「1.水性液剤」の欄に記載のものを単独又は組み合わせて採用し得る。また、本発明の含有量低下を抑制する方法において、水性液剤に配合可能なその他の添加剤及び薬理成分、pH、浸透圧、浸透圧比、点眼回数等についても、前記「1.水性液剤」の欄に記載のものを単独又は組み合わせて採用し得る。
【0102】
6.pHの安定化方法
本発明の第6の態様は、水溶性高分子を含有する水性液剤に、ブリモニジン及び/又はその塩とクロルヘキシジングルコン酸塩とを共存させる工程を含む、水溶性高分子を含む水性液剤におけるpHの安定化方法を提供する。
【0103】
[配合順序]
1つの実施形態において、水溶性高分子を含む水性液剤におけるpHの安定化方法は、
水溶性高分子を含有する水性液剤中に、ブリモニジン及び/又はその塩とクロルヘキシジングルコン酸塩とを配合して、ブリモニジン及び/又はその塩と水溶性高分子とクロルヘキシジングルコン酸塩とを水性液剤中に共存させることを含む。
【0104】
前記pHの安定化方法は、ブリモニジン及び/又はその塩と水溶性高分子とクロルヘキシジングルコン酸塩とを水性液剤中に共存させることにより実施され、該方法において、ブリモニジン及び/又はその塩、水溶性高分子、及びクロルヘキシジングルコン酸塩を水性液剤に配合する順序は特に限定されない。配合する際の各成分は、限定するものではないが、固体又は液体である。
【0105】
[水溶性高分子]
本発明のpHの安定化方法において、水溶性高分子の濃度は、限定するものではないが、例えば0.1w/v%〜5w/v%であり、好ましくは1w/v%〜5w/v%であり、より好ましくは2w/v%〜4w/v%である。
【0106】
1つの実施形態において、水溶性高分子は、好ましくはポリビニル系高分子化合物である。ポリビニル系高分子化合物は、限定するものではないが、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール又はカルボキシビニルポリマー(架橋ポリアクリル酸ポリマー等)であり、水性液剤のpH安定化の観点から、好ましくはポリビニルピロリドン(PVP)ある。これらのポリビニル系高分子化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。1つの実施形態において、ポリビニル系高分子化合物はPVPである。
【0107】
1つの実施形態において、PVAの濃度は、例えば、0.1w/v%〜5w/v%であり、好ましくは1w/v%〜5w/v%であり、より好ましくは2w/v%〜4w/v%であり、更に好ましくは3w/v%である。
【0108】
[重量比]
1つの実施形態において、本発明の水性液剤における、ブリモニジン及び/又はその塩と、水溶性高分子と、クロルヘキシジングルコン酸塩との重量比が1:1〜50:0.01〜0.1であり、好ましくは1:10〜50:0.02〜0.07、より好ましくは1:20〜40:0.02〜0.05である。この例において、水性液剤は、更に、ホウ酸及びホウ砂を含む(浸透圧比:0.9〜1.1、pH:6.7〜7.5)。
【0109】
[pH安定化の程度]
1つの実施形態において、pHの安定化の程度は、60℃にて2週間保管した後の水性液剤のpHと、保管前の当該水性液剤のpHとの差で表すことができる。当該pH安定化の程度は、pHの差が1.0以内、好ましくは0.5以内、より好ましくは0.3以内である。
【0110】
[pHの安定化剤]
第6の態様の1つの実施形態として、水溶性高分子を含む水性液剤用の「pHの安定化剤」であって、ブリモニジン及び/又はその塩とクロルヘキシジングルコン酸塩とのいずれか一方又は両方を含有するpHの安定化剤が提供される。前記pHの安定化は、限定するものではないが、液体又は固体(例えば粉剤又は錠剤)の形態であってよい。前記粉剤又は錠剤は、常法により製造することができる。1つの実施形態において、pHの安定化剤は、ブリモニジン及び/又はその塩とクロルヘキシジングルコン酸塩との両方を含有する。
【0111】
本発明に係る水性液剤における「pHの安定化方法」、又は「pHの安定化剤」において、使用するブリモニジン及び/又はその塩、水溶性高分子及びクロルヘキシジングルコン酸塩について、それらの種類、濃度、重量比、粘度、粘度安定性、粘度低下抑制の程度、製剤形態、用途等は、第6の態様として明記したものを除き、「1.水性液剤」の欄に記載のものを単独又は組み合わせて採用し得る。また、本発明のpHの安定化方法、又はpHの安定化剤において、水性液剤に配合可能なその他の添加剤及び薬理成分、pH、浸透圧、浸透圧比、点眼回数等についても、第6の態様として明記したものを除き、前記「1.水性液剤」の欄に記載のものを単独又は組み合わせて採用し得る。
【0112】
7.緑内障の治療方法
本発明の第7の態様は、ブリモニジン及び/又はその塩、水溶性高分子、及びクロルヘキシジングルコン酸塩を含有する水性液剤を、その必要のある対象の眼に投与することを含む、緑内障の治療方法を提供する。
【0113】
[投与方法]
1つの実施形態において、ブリモニジン及び/又はその塩、水溶性高分子、及びクロルヘキシジングルコン酸塩を含有する水性液剤は、点眼により、その必要のある対象者の眼に投与される。
【0114】
本発明に係る緑内障の治療方法において、使用するブリモニジン及び/又はその塩、水溶性高分子及びクロルヘキシジングルコン酸塩について、それらの種類、濃度、重量比、粘度、粘度安定性、粘度低下抑制の程度、製剤形態、用途等は「1.水性液剤」の欄に記載のものを単独又は組み合わせて採用し得る。また、本発明の緑内障の治療方法において、水性液剤に配合可能なその他の添加剤及び薬理成分、pH、浸透圧、浸透圧比、点眼回数等についても、前記「1.水性液剤」の欄に記載のものを単独又は組み合わせて採用し得る。
【0115】
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0116】
試験例1.粘度安定性試験(1)
[水性液剤の調製]
表1に示す処方に従って、水性液剤を調製した。各水性液剤は適量の塩化ナトリウムを添加することで等張化し、塩酸又は水酸化ナトリウムを用いてpH7.0に調整した。
【表1】

CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム): 第一工業製薬(株)製
クロルヘキシジングルコン酸塩: 大日本住友製薬(株)製
【0117】
[加速劣化試験]
0.22μmフィルターで濾過した水性液剤5mLを、5mL容の無色ガラスアンプルに充填した。各ガラスアンプルを卓上恒温恒湿器(NST−80、ナガノサイエンス(株))に入れ、遮光条件下、60℃で4週間保管した。
【0118】
[粘度測定]
水性液剤の粘度[mPa・s]は、日局一般試験法に定める粘度測定法 第2法 回転粘度計法(TVE−25形粘度計(コーンプレート)、TVE−25L、東機産業(株))に従って、25℃、回転速度50rpmにて測定した。なお、コーンロータは0.8°×R24(ロータコード:00)を用いた。粘度測定は、前記加速劣化試験の前後に実施した。水性液剤の粘度安定性(%)を下記式に従って算出した。
[数1]
粘度安定性[%]=保管後の水性液剤の粘度[mPa・s]/保管前の水性液剤の粘度[mPa・s]×100
【0119】
[試験結果]
得られた粘度安定性の結果を表1に示す。CMCを含有する水性液剤(01処方)の粘度は、加速劣化試験前は5.681[mPa・s]であり、加速劣化試験後は3.956[mPa・s]であった。01処方の粘度安定性は69.6%(=3.956[mPa・s]/5.681[mPa・s]×100)であり、70%を下回った。
【0120】
01処方にブリモニジン酒石酸塩を配合した02処方の粘度安定性は87.4%(=4.979[mPa・s]/5.698[mPa・s]×100)であり、01処方の粘度安定性と比べて、粘度安定性の向上が認められた。この結果は、ブリモニジン酒石酸塩が水溶性高分子を含有する水性液剤の粘度を安定化させることを示す。
【0121】
01処方にクロルヘキシジングルコン酸塩を0.0025w/v%及び0.005w/v%配合した03処方及び05処方の粘度安定性はそれぞれ80.7%(=4.677[mPa・s]/5.793[mPa・s]×100)及び83.6%(=4.803[mPa・s]/5.746[mPa・s]×100)であり、01処方の粘度安定性と比べて、粘度安定性の向上が認められた。これらの結果は、クロルヘキシジングルコン酸塩が水溶性高分子を含有する水性液剤の粘度を安定化させることを示す。
【0122】
01処方にブリモニジン酒石酸塩及びクロルヘキシジングルコン酸塩のいずれか一方のみを配合した処方(02処方、03処方及び05処方)では、90%を超える粘度安定性は示されなかった。また、01処方、03処方及び05処方の結果から、粘度安定性の向上幅は、クロルヘキシジングルコン酸塩の配合量を増やすほど小さくなった。しかしながら、05処方にブリモニジンを配合した06処方の粘度安定性は、05処方と比べると9%も向上し、粘度安定性は92.6%(=5.303[mPa・s]/5.726[mPa・s]×100)となり、90%を上回った。同様の結果が、03処方にブリモニジンを配合した04処方でも得られた。即ち、04処方の粘度安定性は03処方と比べると10.9%も向上し、粘度安定性は91.6%(=5.249[mPa・s]/5.728[mPa・s]×100)となり、90%を上回った。
【0123】
これらの結果は、ブリモニジン酒石酸塩とクロルヘキシジングルコン酸塩との併用が、水溶性高分子を含有する水性液剤に、優れた粘度安定性を付与すること示し、並びに、水溶性高分子を含有する水性液剤に両成分を配合することにより、優れた粘度安定性を有する水性液剤が提供されることを示す。
【0124】
製造例
本発明の水性液剤の具体的態様として、表2〜5に示す組成の水性液剤が挙げられる。なお、表2〜5において、各含有成分の含有量の単位は「g」である。
【0125】
【表2】
【0126】
【表3】
【0127】
【表4】
【0128】
【表5】
【0129】
試験例2.粘度安定性試験(2)
[水性液剤の調製]
表6に示す処方に従って水性液剤を調製した。各水性液剤は適量の塩化ナトリウムを添加することで等張化し、塩酸又は水酸化ナトリウムを用いてpH7.0に調整した。
【表6】

PVA(ポリビニルアルコール): 日本合成化学工業(株)製
HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース): 信越化学工業(株)製
クロルヘキシジングルコン酸塩: 大日本住友製薬(株)製
【0130】
[加速劣化試験及び粘度測定]
試験例1と同様に操作した。
【0131】
[試験結果]
得られた粘度安定性の結果を表6に示す。HPMCを含有する水性液剤である07処方の粘度安定性は、84.3%(=3.769[mPa・s]/4.473[mPa・s]×100)であった。一方、HPMCを含有する水性液剤に更にブリモニジン酒石酸塩及びクロルヘキシジングルコン酸を含有した水性液剤である08処方及び09処方の粘度安定性は、それぞれ91.7%(=3.898[mPa・s]/4.251[mPa・s]×100)及び91.6%(=3.792[mPa・s]/4.141[mPa・s]×100)であった。08処方及び09処方の粘度安定性は90%を上回った。これらの結果は、HPMCを含有する水性液剤において、ブリモニジン酒石酸塩とクロルヘキシジングルコン酸塩とを配合すると、優れた粘度安定性を付与すること示している。
【0132】
また、PVA、ブリモニジン酒石酸塩及びクロルヘキシジングルコン酸を含有する水性液剤である10処方の粘度安定性は、100.0%(=2.449[mPa・s]/2.448[mPa・s]×100)あった。この水性液剤が優れた粘度安定性を有すること示している。
【0133】
試験例3.粘度安定性試験(3)
表7に示す処方に従って水性液剤を調製した。各水性液剤は適量の塩化ナトリウムを添加することで等張化し、塩酸又は水酸化ナトリウムを用いてpH7.0に調整した。
【表7】

HA(ヒアルロン酸ナトリウム): 生化学工業(株)製
クロルヘキシジングルコン酸塩: 大日本住友製薬(株)製
【0134】
[加速劣化試験]
調製した水性液剤5mLを、5mL容の無色ガラスアンプルに充填した。各ガラスアンプルを卓上恒温恒湿器(NST−80、ナガノサイエンス(株))に入れ、遮光条件下、60℃で2週間保管した。
【0135】
[粘度測定]
試験例1と同様に操作した。
【0136】
[試験結果]
得られた粘度安定性の結果を表7に示す。HAを含有する水性液剤である11処方の粘度安定性は、75.4%(=1.518[mPa・s]/2.014[mPa・s]×100)であった。一方、HAを含有する水性液剤に更にブリモニジン酒石酸塩及びクロルヘキシジングルコン酸を含有した水性液剤である12処方の粘度安定性は、93.0%(=1.905[mPa・s]/2.049[mPa・s]×100)であった。これらの結果は、HAを含有する水性液剤において、ブリモニジン酒石酸塩とクロルヘキシジングルコン酸塩とを配合すると、優れた粘度安定性を付与すること示している。
【0137】
試験例4.ブリモニジン含有量に対する安定性試験
表8に示す処方に従って水性液剤を調製した。各水性液剤は適量の塩化ナトリウムを添加することで等張化し、塩酸又は水酸化ナトリウムを用いてpH7.0に調整した。
【表8】

CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム): 第一工業製薬(株)製
HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース): 信越化学工業(株)製
PVA(ポリビニルアルコール): 日本合成化学工業(株)製
HA(ヒアルロン酸ナトリウム): 生化学工業(株)製
クロルヘキシジングルコン酸塩: 大日本住友製薬(株)製
【0138】
[加速劣化試験]
各水性液剤5mLを、5mL容のポリエチレン容器に充填して密封し、60℃で2週間暗所に保管した。
【0139】
[含有量試験]
保管後の水性液剤を下記条件でHPLCに供し、ブリモニジンの含有量を分析した。
【0140】
<HPLCの条件>
・試料溶液の作製
各水性液剤を2mL正確に量り、精製水を加えて正確に20mLとし、試料溶液とした。
・標準溶液の作製
ブリモニジン酒石酸塩標準品を10mg精密に量り、精製水を加えて正確に100mLとし、標準溶液とした。
・液体クロマトグラフィーによる測定
試料溶液及び標準溶液25μLにつき、次の条件で液体クロマトグラフィーにより測定を行った。
【0141】
(測定条件)
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:230nm)
カラム:Symmetry C18、3.5μm、Φ4.6mm×150mm、Waters Corporation製
カラム温度:40℃
面積測定時間:60分
移動相A:4.3mMリン酸水溶液/メタノール/アセトニトリル(容積比:84/8/8)の混液
移動相B:4.3mMリン酸水溶液/メタノール/アセトニトリル(容積比:40/30/30)の混液
移動相の送液:移動相A及び移動相Bの混合比率を表9に示すように変えて直線濃度勾配制御する。
洗浄液:アセトニトリル/水(容積比:1/1)の混液
注入量:25μL
流量:1.0mL
【0142】
【表9】
【0143】
[試験結果]
得られた結果を表10に示す。ブリモニジン酒石酸塩及び水溶性高分子であるCMC、HPMC、PVAまたはHAを配合した各処方(13処方、15処方、17処方、19処方)と、これらにクロルヘキシジングルコン酸塩を加えた処方(14処方、16処方、18処方、20処方)とを比較すると、クロルヘキシジングルコン酸塩を加えた処方の方が、高い残存率[%](=[保管後の水性液剤におけるブリモニジン及び/又はその塩の含有量]/[保管前のブリモニジン及び/又はその塩の含有量]×100)を示した。これらの結果は、ブリモニジン酒石酸塩及び水溶性高分子を含有する水性液剤に、クロルヘキシジングルコン酸塩を配合することにより、ブリモニジンの分解が抑制され、優れた安定性を示すブリモニジン及び/又はその塩を含有する水性液剤が提供できることを示している。
【0144】
試験例5.pHに対する安定性試験
表10に示す処方に従って水性液剤を調製した。各水性液剤は適量の塩化ナトリウムを添加することで等張化し、塩酸又は水酸化ナトリウムを用いてpH7.0に調整した。
【表10】

PVP(ポリビニルピロリドン): BASFジャパン(株)製
【0145】
[加速劣化試験]
試験例3と同様に操作した。
【0146】
[pH測定]
水性液剤のpHはガラス電極を用いてpH計により測定した。
【0147】
[試験結果]
得られた結果を表10に示す。PVPを含有する水性液剤である21処方では、60℃で2週保管することによって、pHの低下が認められた。これに反して、PVPを含有する水性液剤に更にブリモニジン酒石酸塩及びクロルヘキシジングルコン酸を配合した水性液剤である22処方では、pHの低下が抑制されていた。これらの結果は、水溶性高分子を含有する水性液剤に、ブリモニジン酒石酸塩及びクロルヘキシジングルコン酸塩を配合することにより、pHの優れた安定性を有する水性液剤が提供できることを示している。