特許第6701503号(P6701503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6701503表示画面用粘着シート、積層体、表示体及び画面保護方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6701503
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】表示画面用粘着シート、積層体、表示体及び画面保護方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20200518BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20200518BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20200518BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20200518BHJP
   C09J 7/25 20180101ALI20200518BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20200518BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20200518BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20200518BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20200518BHJP
【FI】
   C09J7/38
   C09J11/06
   C09J133/00
   C09J175/04
   C09J7/25
   B32B27/18 A
   B32B27/00 M
   B32B27/30 A
   B32B27/40
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-71804(P2016-71804)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-179239(P2017-179239A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100154885
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 久美
(72)【発明者】
【氏名】戸田 航介
(72)【発明者】
【氏名】池田 文徳
(72)【発明者】
【氏名】内藤 真人
【審査官】 井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−145333(JP,A)
【文献】 特開2016−117827(JP,A)
【文献】 特開2012−167211(JP,A)
【文献】 特開2012−211305(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/021107(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 − 201/10
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材(A)の面上に、ウレタン系粘着剤及び紫外線吸収剤を含有する粘着剤組成物(x)から形成される粘着剤層(B1)を有粘着剤層(B1)と接する面とは反対側の透明基材(A)の面上に、更に粘着剤層(B2)を有し、紫外線吸収剤がトリアジン系紫外線吸収剤であり、紫外線吸収剤の含有量が、前記ウレタン系粘着剤100質量部に対して、0.1〜40質量部であり、粘着剤層(B2)が、アクリル系粘着剤を含有する粘着剤組成物(y)から形成され、波長380〜495nmの光線透過率が75%以下である表示画面用粘着シート。
【請求項2】
透明基材(A)が、ポリエステルフィルムである、請求項1に記載の表示画面用粘着シート。
【請求項3】
総厚が60〜250μmである、請求項1又は2に記載の表示画面用粘着シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の表示画面用粘着シートの粘着剤層(B2)上に、更に硬質平面板が積層されてなる、積層体。
【請求項5】
表示体モジュールの表示画面上に、請求項1〜のいずれか1項に記載の表示画面用粘着シート、又は請求項に記載の積層体を有する、表示体。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の表示画面用粘着シート、又は請求項に記載の積層体を、表示体モジュールの表示画面上に貼付して該表示画面を保護する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示画面用粘着シート、積層体、それらを用いた表示体及びその画面保護方法に関する。さらに詳しくは、視認性がよく、表示画面に容易に貼合することができ、ブルーライトを遮蔽することができる表示画面用粘着シート、積層体、それらを用いた表示体及びその画面保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、タブレット等の携帯情報端末機器が急速に普及している。これらの携帯情報端末機器は、多くがタッチパネル方式の液晶ディスプレイの表示画面を採用している。このため、表示画面が端末における本体前面のほぼ全面を占める構造を有している。ところが、このような液晶ディスプレイは、衝撃に脆弱であって、落下又は外部衝撃により壊れたり損傷したりする場合が多い。そのため、携帯情報端末機器のディスプレイパネルを保護するための保護フィルムが広く用いられている。
保護フィルムは、ディスプレイパネルに密着して衝撃吸収及びスクラッチ防止などの機能を提供するもので、最近、従来のフィルム基材に替わり、薄型の強化ガラスやガラス並の硬度を持ったフィルム基材による保護シートが登場し始めている。このような保護シートは、特にガラス基材を用いた場合には、直接粘着加工することができないために、ガラス基材に両面粘着シートを貼り合わせた構成になっている(例えば、特許文献1)。
特許文献1は、強化ガラスフィルムの下にPET層を有し、強化ガラスフィルムとPET層とを接着する接着層と、PET層を携帯情報端末機器の表面に貼り付ける貼着層とを有する保護フィルムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−242567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された保護フィルムは、視認性、表示画面への貼りやすさの点で、満足できるものではない。
ところで、このような表示装置の光源としてLEDが使用される場合、青色LEDも多く用いられることから、光源からの出射光線に含まれる380〜495nmの波長の青色光が強くなる。そして、かかる青色光は、ブルーライトと呼ばれ、可視光の中でも波長が短くかつ高エネルギーを有しており、網膜に潜在的に有害であると認識されている。
本発明は、このような状況下に事情に鑑みてなされたものであり、ヘーズを抑えることができるために視認性がよく、表示画面に容易に貼合することができ、ブルーライトを遮蔽することができる表示画面用粘着シート、積層体、それらを用いた表示体及びその画面保護方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ウレタン系粘着剤及び紫外線吸収剤を含有する粘着剤組成物から形成される粘着剤層を有する粘着シートにより、前記の特性を有する表示画面用粘着シートが容易に得られること、そしてこの粘着シートは、携帯情報端末機器、タッチパネル装置、中型及び大型の表示体などの部材として有用であることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0006】
すなわち、本発明は、
[1]透明基材(A)の面上に、ウレタン系粘着剤及び紫外線吸収剤を含有する粘着剤組成物(x)から形成される粘着剤層(B1)を有する、表示画面用粘着シート、
[2]前記紫外線吸収剤が、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、及びトリアジン系紫外線吸収剤から選ばれる1種以上である、上記[1]に記載の表示画面用粘着シート、
[3]前記紫外線吸収剤の含有量が、前記ウレタン系粘着剤100質量部に対して、0.1〜40質量部である、上記[1]又は[2]に記載の表示画面用粘着シート、
[4]透明基材(A)が、ポリエステルフィルムである、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の表示画面用粘着シート、
[5]粘着剤層(B1)と接する面とは反対側の透明基材(A)の面上に、更に粘着剤層(B2)を有する、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の表示画面用粘着シート、
[6]粘着剤層(B2)が、アクリル系粘着剤を含有する粘着剤組成物(y)から形成される、上記[5]に記載の表示画面用粘着シート、
[7]上記[5]又は[6]に記載の表示画面用粘着シートの粘着剤層(B2)上に、更に硬質平面板が積層されてなる、積層体。
[8]表示体モジュールの表示画面上に、上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の表示画面用粘着シート、又は上記[7]に記載の積層体を有する、表示体、及び
[9]上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の表示画面用粘着シート、又は上記[7]に記載の積層体を、表示体モジュールの表示画面上に貼付して該表示画面を保護する方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ヘーズを抑えることができるために視認性がよく、表示画面に容易に貼合することができ、ブルーライトを遮蔽することができる表示画面用粘着シート、積層体、それらを用いた表示体及びその画面保護方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
まず、本発明の表示画面用粘着シートについて説明する。
[表示画面用粘着シート]
本発明の表示画面用粘着シート(以下、単に「粘着シート」と称することがある。)は、透明基材(A)の面上に、ウレタン系粘着剤及び紫外線吸収剤を含有する粘着剤組成物(x)から形成される粘着剤層(B1)を有することを特徴とする。
【0009】
(透明基材(A))
本発明の粘着シートにおける透明基材(A)については、特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、環状オレフィン系フィルム等を挙げることができる。これらのプラスチックフィルムの中では、透明性の点で、ポリエステルフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
透明基材(A)の厚さは、特に制限はないが、好ましくは5〜500μmの範囲、より好ましくは20〜250μmの範囲である。この厚さが5μm以上であれば破断することなく、加工性が向上し、500μm以下であれば十分な柔軟性が得られ、加工性に優れる。
また、透明基材(A)は、その表面に設けられる粘着剤層(B1)や必要に応じて設けられる粘着剤層(B2)との密着性を向上させる目的で、所望により片面又は両面に、酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施したり、易接着層を形成したりしてもよい。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は基材フィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。
易接着層の材料としては、ポリエステル樹脂やウレタン樹脂等が挙げられる。
【0010】
(粘着剤層(B1))
本発明の粘着シートは、透明基材(A)の面上に、ウレタン系粘着剤及び紫外線吸収剤を含有する粘着剤組成物(x)から形成される粘着剤層(B1)を有する。粘着剤層(B1)を有することで、表示体モジュールの表示画面と貼合することができる。
【0011】
<ウレタン系粘着剤>
本発明に係る粘着剤組成物(x)は、粘着剤成分としてウレタン系粘着剤を含有する。ウレタン系粘着剤を含有することで、画面に濡れ広がりやすく、気泡が残留せずに、容易に貼付することができる。粘着剤組成物(x)に含まれる粘着剤成分は、ウレタン系粘着剤からなることが好ましい。
ウレタン系粘着剤としては、任意の適切なウレタン系樹脂からなるものが挙げられる。ウレタン系樹脂は、ポリオール(a)と多官能イソシアネート化合物(b)を含有する組成物を硬化させて得られる。
【0012】
ポリオール(a)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリオール(a)としては、水酸基を2個以上有するポリオールであれば、任意の適切なポリオールを採用し得る。このようなポリオール(a)としては、例えば、水酸基を2個有するポリオール(ジオール)、OH基を3個有するポリオール(トリオール)、水酸基を4個有するポリオール(テトラオール)、OH基を5個有するポリオール(ペンタオール)、水酸基を6個有するポリオール(ヘキサオール)などが挙げられる。
ポリオール(a)の数平均分子量(Mn)としては、好ましくは400〜20,000、より好ましくは500〜15,000、更に好ましくは600〜12,000である。
【0013】
ポリオール(a)としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ひまし油系ポリオールなどが挙げられる。
ポリエステルポリオールは、例えば、ポリオール成分と酸成分とのエステル化反応によって得ることができる。
ポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、オクタデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0014】
酸成分としては、例えば、コハク酸、メチルコハク酸、アジピン酸、ピメリック酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、1,14−テトラデカン二酸、ダイマー酸、2−メチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−エチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェエルジカルボン酸、これらの酸無水物などが挙げられる。
【0015】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、水、低分子ポリオール(プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなど)、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)、ジヒドロキシベンゼン(カテコール、レゾルシン、ハイドロキノンなど)などを開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加重合させることによって得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
ポリカプロラクトンポリオールとしては、例えば、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトンなどの環状エステルモノマーの開環重合により得られるカプロラクトン系ポリエステルジオールなどが挙げられる。
【0016】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記ポリオール成分と、ホスゲン、ジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネート、あるいは、エチレンカーボネート等の環式カーボネートとの反応生成物等が挙げられる。
ひまし油系ポリオールとしては、例えば、ひまし油脂肪酸と上記ポリオール成分とを反応させて得られるひまし油系ポリオールが挙げられる。具体的には、例えば、ひまし油脂肪酸とポリプロピレングリコールとを反応させて得られるひまし油系ポリオールが挙げられる。
【0017】
多官能イソシアネート化合物(b)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多官能イソシアネート化合物(b)としては、ウレタン化反応に用い得る任意の適切な多官能イソシアネート化合物を採用し得る。このような多官能イソシアネート化合物(b)としては、例えば、多官能脂肪族系イソシアネート化合物、多官能脂環族系イソシアネート、多官能芳香族系イソシアネート化合物などが挙げられる。
【0018】
多官能脂肪族系イソシアネート化合物としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
多官能脂環族系イソシアネート化合物としては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,3−シクロへキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
多官能芳香族系ジイソシアネート化合物としては、例えば、フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
多官能イソシアネート化合物(b)としては、上記のような各種多官能イソシアネート化合物のトリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する3量体なども挙げられる。また、これらを組み合わせて使用しても良い。
【0019】
具体的なウレタン系樹脂としては、例えば、ポリオール(a)と、多官能イソシアネート化合物(b)と、必要に応じて添加されるウレタン化触媒と、必要に応じて溶剤とを反応器に仕込んで反応して得られる水酸基含有ウレタン系プレポリマーの溶液に、更に多官能イソシアネート化合物(b)と、必要に応じて添加されるウレタン化触媒を添加したウレタン系粘着剤溶液を、基材に塗布し、乾燥し、架橋させたものが挙げられる。
【0020】
ウレタン化触媒としては、特に制限はないが、3級アミン系化合物、有機金属系化合物等が挙げられる。
3級アミン系化合物としては、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)等が挙げられる。
有機金属系化合物としては、ジブチル錫ジクロリド、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジブロミド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルフィド、トリブチル錫スルフィド、トリブチル錫オキシド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキシド、トリブチル錫エトキシド、ジオクチル錫オキシド、トリブチル錫クロリド、トリブチル錫トリクロロアセテート、2−エチルヘキサン酸錫等の錫系化合物、ジブチルチタニウムジクロリド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロリド等のチタン系化合物が挙げられる。なお、これらの触媒は、単独で又は2種以上併用して用いてもよい。
【0021】
当該反応において用いる触媒の添加量としては、反応性の観点から、ポリオール(a)又は水酸基含有ウレタン系プレポリマー100質量部に対して、好ましくは0.0001〜1質量部、より好ましくは0.005〜0.1質量部である。
また、当該反応において必要に応じて用いられる溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン類、ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で又は2種以上併用して用いてもよい。
【0022】
ウレタン系樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、凝集力と塗工適性のバランスの観点から、好ましくは1万〜30万、より好ましくは3万〜25万、更に好ましくは5万〜20万である。
なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0023】
粘着剤組成物(x)は、粘着剤層の厚さを薄くするために、有機溶媒で希釈することが好ましい。用いる有機溶媒としては、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等が挙げられる。これらの有機溶媒を配合して、粘着剤組成物を適度な固形分濃度とすることで、薄膜化した粘着剤層を形成することができる。粘着剤組成物(x)の固形分濃度としては、好ましくは5〜60質量%、より好ましくは10〜40質量%である。5質量%以上であれば、溶剤の使用量としては十分であり、60質量%以下であれば、適度な粘度となり、粘着剤溶液を塗布するに際して作業性が良好となる。
なお、粘着剤組成物(x)中に含まれる樹脂の生成に際し、生成した樹脂が有機溶媒に含有された状態である場合、同じ有機溶媒を用いて希釈し、上記固形分濃度となるように調製してもよい。
【0024】
<紫外線吸収剤>
本発明に係る粘着剤組成物(x)は、紫外線吸収剤を含有する。紫外線吸収剤を含有することで、表示画面からのブルーライトの透過を低減することができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン等が例示される。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては「Cyasorb UV−24」(Cytec社製)等が市販されている。
【0026】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール等が例示される。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として「チヌビン326」(BASFジャパン(株)製)等が市販されている。
【0027】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3−5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシ−3−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(3−オクチルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)−5−α−クミルフェニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(3−ノニルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)−5−α−クミルフェニル]−s−トリアジン2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(3−デシルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)−5−α−クミルフェニル]−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−アクリロイルオキシエトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン等が例示される。
トリアジン系紫外線吸収剤として「チヌビン460」、「チヌビン477」、「チヌビン479」(いずれもBASFジャパン(株)製)等が市販されている。
【0028】
サリチル酸系紫外線吸収剤としては、例えば、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等が例示される。
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート等が例示される。
これらの中で、ブルーライトの透過を効果的に抑制する観点から、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、及びトリアジン系紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、及びトリアジン系紫外線吸収剤がより好ましく、トリアジン系紫外線吸収剤が更に好ましい。
【0029】
紫外線吸収剤の含有量は、前記ウレタン系粘着剤100質量部(固形分)に対して、好ましくは0.1〜40質量部、より好ましくは1〜35質量部、更に好ましくは5〜30質量部、より更に好ましくは8〜25質量部である。前記紫外線吸収剤の含有量が、0.1質量部以上であれば、ブルーライトカット効果が得られ、40質量部以下であれば、ヘーズが小さく、視認性が得られる。
【0030】
(粘着剤組成物(x))
粘着剤層(B1)を形成する粘着剤組成物(x)としては、本発明の効果を損なわない範囲において、ウレタン系粘着剤以外の粘着剤成分を含有してもよい。この粘着剤成分としては、シリコーン系粘着剤及びアクリル系粘着剤等が挙げられる。シリコーン系粘着剤としては、特に制限はなく、例えば、オルガノポリシロキサンを主成分とするシリコーンゴムやシリコーンレジンを含有してなり、これをシロキサン系架橋剤、過酸化物系架橋剤などの架橋剤を添加して硬化したものなどの、従来公知のシリコーン系粘着剤の中から適宜選択することができる。アクリル系粘着剤としては、特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系共重合等の従来公知のアクリル系樹脂の中から適宜選択することができる。なお、これらの粘着剤成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
粘着剤組成物(x)には、本発明の効果を損なわない範囲において、汎用添加剤を含有してもよい。
汎用添加剤としては、例えば、粘着付与剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、顔料、染料、充填剤等が挙げられる。なお、これらの汎用添加剤は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
粘着剤組成物(x)中にこれらの汎用添加剤を含有する場合、粘着剤組成物(x)中のそれぞれの汎用添加剤の含有量は、粘着剤組成物(x)中の樹脂100質量部に対して、好ましくは0.0001〜60質量部、より好ましくは0.001〜50質量部、更に好ましくは0.01〜40質量部、より更に好ましくは0.1〜30質量部である。
【0032】
(粘着剤層(B2))
本発明の粘着シートは、粘着剤層(B1)と接する面とは反対側の透明基材(A)の面上に、更に粘着剤層(B2)を有することが好ましい。粘着剤層(B2)を有することで、硬質平面版を積層することができる。
粘着剤層(B2)は、樹脂成分としてアクリル系粘着剤を含有する粘着剤組成物(y)から形成されることが好ましい。
【0033】
<アクリル系粘着剤>
アクリル系粘着剤としては、任意の適切なアクリル系樹脂からなるものが挙げられる。
アクリル系樹脂に特に制限はないが、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が好ましい。
この(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、必要に応じて用いられる架橋性官能基含有エチレン性単量体や他の単量体との共重合体を好ましく挙げることができる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
【0034】
エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
必要に応じて用いられる架橋性官能基含有エチレン性単量体は、例えばヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基を分子内に有するエチレン性単量体であり、好ましくはヒドロキシ基含有エチレン性不飽和化合物、カルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物が用いられる。このような架橋性官能基含有エチレン性単量体の具体的な例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のカルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物が挙げられる。上記の架橋性官能基含有エチレン性単量体は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
必要に応じて用いられる他の単量体としては、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレートなどの脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン類;塩化ビニル、ビニリデンクロリドなどのハロゲン化オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体;ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどのジエン系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル系単量体;N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミドなどのN,N−ジアルキル置換アクリルアミド類などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
以上の(メタ)アクリル酸エステル、及び必要に応じて用いられる架橋性官能基含有エチレン性単量体や他の単量体を、それぞれ所定の割合で用い、従来公知の方法を用いて共重合を行い、重量平均分子量が、好ましくは30万〜150万程度、より好ましくは35万〜130万程度の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を製造する。
なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0037】
アクリル系樹脂は、架橋剤によって架橋構造を形成していてもよい。
架橋剤としては、従来アクリル系樹脂において架橋剤として慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。このような架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、アジリジン系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などが挙げられるが、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が、架橋性官能基としてヒドロキシ基を有する場合には、ポリイソシアネート化合物が好ましく、一方カルボキシル基を有する場合には、金属キレート化合物やエポキシ化合物が好ましい。
【0038】
ポリイソシアネート化合物の例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビュウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ひまし油などの低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などを挙げることができる。上記ポリイソシアネート化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
金属キレート化合物の例としては、金属原子がアルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、鉄、スズなどのキレート化合物があるが、性能の点からアルミニウムキレート化合物が好ましい。
アルミニウムキレート化合物としては、例えばジイソプロポキシアルミニウムモノオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムビスオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムモノオレエートモノエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノラウリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノステアリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノイソステアリルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムモノ−N−ラウロイル−β−アラネートモノラウリルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(イソブチルアセトアセテート)キレート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(2−エチルヘキシルアセトアセテート)キレート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(ドデシルアセトアセテート)キレート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(オレイルアセトアセテート)キレートなどが挙げられる。上記金属キレート化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
エポキシ化合物の例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、スピログリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジルアミノメチルシクロへキサン、テトラグリシジルキシレンジアミン、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン、ポリグリシジルメタキシレンジアミンなどが挙げられる。上記エポキシ化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
(粘着剤組成物(y))
粘着剤組成物(y)には、本発明の効果を損なわない範囲において、汎用添加剤を含有してもよい。
汎用添加剤の具体例及び含有量は、粘着剤組成物(x)で述べた説明と同じである。
粘着剤組成物(y)は、有機溶媒で希釈することが好ましい。用いる有機溶媒、粘着剤組成物(y)の固形分濃度及び、その具体的な態様は、粘着剤組成物(x)で述べた説明と同じである。
【0042】
(粘着シートの特性)
本発明の粘着シートは、総厚が好ましくは60〜400μm、より好ましくは100〜300μm、更に好ましくは120〜250μmである。総厚が60μm以上であれば、十分な追従性が得られ、400μm以下であれば、裁断加工適性や抜き加工適性が良好である。
本発明の粘着シートのヘーズは、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%以下、更に好ましくは3.0%以下である。なお、本発明において、上記ヘーズは、実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明の粘着シートにおける波長380〜495nmの光線透過率は、好ましくは85%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましく78%以下、より更に好ましく75%以下である。なお、本発明において、当該光線透過率は、実施例に記載の方法により測定することができる。本発明の粘着シートの波長380〜495nmの光線透過率が上記の範囲であれば、ブルーライトを効果的に遮蔽することができる。
【0043】
本発明の粘着シートの粘着剤層(B1)を被着体に貼合したときの粘着力は、好ましくは0.01〜1.0N/25mm、より好ましくは0.02〜0.75N/25mm、更に好ましくは0.03〜0.5N/25mmである。本発明の粘着シートの粘着剤層(B2)を被着体に貼合したときの粘着力は、好ましくは10〜40N/25mm、より好ましくは12〜35N/25mm、更に好ましくは15〜30N/25mmである。当該粘着力は、JIS Z0237:2009に準拠して、180°引き剥がし法により測定された値を意味する。
【0044】
(粘着シートの作製)
本発明の粘着シートの製造方法としては、特に制限はないが、例えば、透明基材(A)の一方の面に、粘着剤組成物(x)を直接塗布し、乾燥して粘着剤層(B1)を形成することにより、粘着シートを作製することができ、更に該粘着剤層(B1)上に剥離シートを貼り合わせてもよい。また、剥離シートの表面に粘着剤組成物(x)を直接塗布して粘着剤層(B1)を形成し、該粘着剤層(B1)上に透明基材(A)を貼り合わせて作製することもできる。
【0045】
本発明の粘着シートは、当該粘着シートが、粘着剤層(B1)、透明基材(A)及び粘着剤層(B2)の3層構造からなる粘着シートである場合、その製造方法としては、特に制限はなく、例えば、剥離シート上に、粘着剤組成物(x)を直接塗布し、粘着剤層(B1)を形成した粘着シートと、粘着剤組成物(y)を直接塗布し、粘着剤層(B2)を形成した粘着シートとをそれぞれ用意し、この2枚の粘着シートの粘着剤層を透明基材(A)の両面にそれぞれ貼り合わせて作製することができる。もしくは、透明基材(A)の一方の表面に、粘着剤組成物(x)を直接塗布し、もう一方の表面にと粘着剤組成物(y)を直接塗布し、乾燥して粘着剤層を形成し、更に形成した該粘着剤層上に剥離シートを貼り合わせてもよい。また、透明基材(A)の一方の表面と剥離シート上に形成した粘着剤層(B1)とを貼り合わせ、他方の面に粘着剤組成物(y)を直接塗布して粘着剤層(B2)を形成して作製することもできる。なお、本発明において、粘着剤層(B1)及び粘着剤層(B2)を形成する順序は特に限定されない。
【0046】
粘着剤組成物を透明基材(A)又は剥離シート上に塗布する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ロールコート法、ダイコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、カーテンコート法等が挙げられる。
なお、粘着剤組成物を塗布した後、溶剤や低沸点成分の残留を防ぐ観点から、80℃〜150℃程度の温度で、30秒〜5分間程度加熱し乾燥させることが好ましい。塗布装置としては、特に制限無く、公知のものを使用できる。
このようにして得られた本発明の粘着シートは、視認性に優れ、下記本発明の積層体及び表示体の作製用として用いることができる。
【0047】
[積層体]
本発明の粘着シートは、粘着剤層(B2)上に、更に硬質平面板を有する積層体とすることが好ましい。すなわち、本発明の積層体は、前述した本発明の表示画面用粘着シートの粘着剤層(B2)上に、硬質平面板が積層されてなる。本発明の積層体は、透明基材(A)を介して粘着剤層(B1)と、粘着剤層(B2)とが順に積層されてなり、粘着剤層(B2)の透明基材と接する面とは反対の面上に、更に硬質平面板が積層されてなる構造を有する。本発明においては、硬質平面板を有する積層体とすることで、表示体モジュールの表示画面を衝撃から保護することができ、このような積層体を部材として用いることにより、携帯情報端末機器や、静電容量方式タッチパネル装置、各種のフラットパネルディスプレイなどを提供することができる。
【0048】
(硬質平面板)
硬質平面板の材質としては、通常透明なガラス板や樹脂板が用いられる。上記ガラス板としては、例えばソーダライムガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、アルミノケイ酸ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英などからなるものを用いることができる。上記樹脂板としては、例えばアクリル樹脂板、ポリカーボネート板、TCA(トリアセチルセルロース)フィルムなどからなるものを用いることができる。
上記硬質平面板の厚さは、後述する積層体の用途にもよるが、好ましくは0.08〜5mm、より好ましくは0.2〜4mm、更に好ましくは0.4〜3mmである。
【0049】
[表示体]
本発明の表示体は、表示体モジュール、及び本発明の粘着シート、又は本発明の積層体の順で積層されてなることを特徴とする。本発明の粘着シート、又は本発明の積層体は、粘着剤層(B1)を介して表示体モジュールの表示画面に容易に貼合することができる。
前記表示体モジュールとしては、画像表示パネルを有する携帯情報端末機器などの電子端末用画像表示モジュール、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機又は無機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、表面電解ディスプレイ(SED)等の種々のフラットパネルディスプレイモジュール、静電容量方式タッチパネルモジュールなどを用いることができる。
本発明の表示体は、表示画面に対する視認性が良好であり、ブルーライトを遮蔽することができ、表示画面を衝撃から保護することができる。
【実施例】
【0050】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例における諸特性は、以下に示す方法に従って求めた。
【0051】
(1)各層の厚さ
各例で得られた樹脂シートの樹脂層の厚さを、JIS K 7130に準じて、定圧厚さ測定器(テクロック社製、製品名「PG−02」)で測定した。
【0052】
(2)粘着剤の重量平均分子量>
ゲル浸透クロマトグラフ装置を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
測定装置:製品名「HLC−8220GPC」、東ソー社製
カラム:製品名「TSKGel SuperHZM-M」、東ソー社製
展開溶媒:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/min
【0053】
(3)視認性評価(粘着シートのヘーズ)
各例で得られた粘着シートの剥離シートを取り除き、ヘーズメータ(日本電色工業(株)製、製品名「NDH2000」)を用い、日本工業規格JIS K 7136−2000「プラスチック―透明材料のヘーズの求め方」に準拠して粘着シートのヘーズ(%)を測定した。
【0054】
(4)ブルーライトカット効果の確認(粘着シートの波長380〜495nmの光線透過率)
各例で得られた粘着シートのブルーライトカット効果を以下の方法で評価した。
各例で得られた粘着シートの剥離シートを取り除き、分光光度計((株)島津製作所製、製品名「UV−3600」)を用い、波長380〜495nmの光線透過率を測定した。
【0055】
(5)表示画面に対する粘着シートの貼り易さ評価(表示画面への濡れ易さ評価)
表示画面用粘着シートを50mm×50mmに切断することにより、貼り易さを評価するための試験片とする。
試験片の粘着剤層(B1)から剥離フィルムを剥がし、試験片の粘着剤層(B1)を水平面に置いたガラス面に対して45度の角度で、試験片の1辺からガラス面に接触させ、試験片をガラス面に落とし、粘着剤層(B1)の全面がガラス面に濡れるまでの時間を測定する。
【0056】
実施例1
透明基材(A)として、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、製品名「ルミラーT−60」)の一方の面に、ウレタン系粘着剤100質量部(固形分)に対して更にベンゾフェノン系紫外線吸収剤10質量部を添加した粘着剤溶液を塗布し、乾燥することにより、厚さ10μmの粘着剤層(B1)を形成し、その面に剥離フィルムを積層した。
さらに、透明基材(A)の他方の面に、アクリル系粘着剤(2)の溶液を塗布し、乾燥することにより、厚さ100μmの粘着剤層(B2)を形成し、その面に剥離フィルムを積層することにより、表示画面用粘着シートを作製した。結果を表1に示す。
【0057】
実施例2〜4、比較例1及び2
粘着剤層(B1)を表1に記載のものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして表示画面用粘着シートを作製した。
【0058】
実施例、比較例で使用した粘着剤及び紫外線吸収剤は以下のとおりである。
ウレタン系粘着剤:
水酸基含有ウレタン系プレポリマー(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、製品名「US−1353」、固形分70質量%)100質量部、多官能イソシアネート化合物(東ソー(株)、製品名「コロネートHL」)6質量部、及び錫系化合物(固形分2.5質量%)1質量部を使用し、ウレタン系粘着剤を調製した。
アクリル系粘着剤(1):
アクリル系粘着剤(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、製品名「AS−425」)100質量部、及びイソシアネート架橋剤(東ソー(株)製、製品名「コロネートHL」)6質量部を使用し、アクリル系粘着剤(1)を調製した。
アクリル系粘着剤(2):
アクリル酸エステル共重合体(ブチルアクリレート98質量%、アクリル酸2質量%、重量平均分子量80万、固形分30質量%の酢酸エチル溶液) 100質量部、及びイソシアネート系架橋剤(東ソー(株)製、製品名「コロネートL)0.5質量部を使用し、アクリル系粘着剤(2)を調製した。
シリコーン系粘着剤:
付加反応型シリコーン(信越化学工業(株)製、製品名「X−40−3229」) 100質量部、及び白金系硬化触媒(信越化学工業(株)製、製品名「CAT−PL−50T) 0.017質量部を使用し、シリコーン系粘着剤を調製した。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(CYTEC社製、製品名「CYASORB UV−24」)
トリアジン系紫外線吸収剤(BASF社製、製品名「チヌビン477」)
【0059】
【表1】
【0060】
表1より、本発明に属する実施例1〜4は、ウレタン系粘着剤及び紫外線吸収剤を含有する粘着剤組成物から形成される粘着剤層(B1)を有することから、ヘーズを抑えることができるために視認性に優れ、ブルーライトの透過を遮蔽することができ、濡れ性に優れるために表示画面に容易に貼合することができることが分かる。比較例1は、粘着剤層(B1)にアクリル系粘着剤を含有する樹脂組成物から形成されているために、濡れ性が劣り、比較例2は、粘着剤層(B1)にシリコーン系粘着剤を含有する樹脂組成物から形成されているために、ヘーズが上昇し、視認性が劣る。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の表示画面用粘着シートは、ヘーズを抑えることができるために視認性がよく、表示画面に容易に貼合することができ、ブルーライトを遮蔽することができ、各種表示体の作製用として用いることができる。