(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱可塑性樹脂組成物が、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロンMXD6、およびナイロン6Tからなる群から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ用積層体。
熱可塑性エラストマー組成物が、熱可塑性樹脂成分と当該熱可塑性樹脂成分中に分散されたエラストマー成分とを含み、熱可塑性樹脂成分がポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロンMXD6およびナイロン6Tからなる群から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含み、エラストマー成分が臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体および無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種のエラストマーを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のタイヤ用積層体。
メチレンドナーが、変性エーテル化メチロールメラミン、パラホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン、ペンタメチレンテトラミン、およびヘキサメトキシメチルメラミンからなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のタイヤ用積層体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、熱可塑性樹脂フィルムとゴム組成物の層との間の接着強度をより一層改善することを目的として鋭意検討した結果、ゴム組成物が、特定量のフェノール−ホルムアルデヒド縮合物及びメチレンドナーを含み、さらに、特定量のジカルボン酸基及び/又はジカルボン酸無水物基を側鎖に有するゴムを少なくとも含む2種以上のゴムを含む場合に、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。ゴム組成物が、ジカルボン酸基及び/又はジカルボン酸無水物基を側鎖に有するゴムと、フェノール−ホルムアルデヒド縮合物及びメチレンドナーを含む場合には、ゴム組成物内にてジカルボン酸無水物がフェノール−ホルムアルデヒド縮合物およびメチレンドナーと反応することにより、加工性の低減や、フィルムとフェノール−ホルムアルデヒド縮合物及びメチレンドナーとの反応の阻害がもたらされることが予想されるが、本発明者は、ゴム組成物が特定量のジカルボン酸基及び/又はジカルボン酸無水物基を側鎖に有するゴムと、特定量のフェノール−ホルムアルデヒド縮合物及びメチレンドナーを含む場合に、ゴム組成物がジカルボン酸基及び/又はジカルボン酸無水物基を側鎖に有するゴムを含むが、フェノール−ホルムアルデヒド縮合物及びメチレンドナーを含まない場合及びゴム組成物がフェノール−ホルムアルデヒド縮合物及びメチレンドナーを含むが、ジカルボン酸基及び/又はジカルボン酸無水物基を側鎖に有するゴムを含まない場合と比べて、接着強度が向上するという予想外の効果を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、熱可塑性樹脂組成物または熱可塑性エラストマー組成物のフィルムと当該フィルムに積層されたゴム組成物の層とを含む積層体を加硫により一体化させてなるタイヤ用積層体であって、前記ゴム組成物が、
(A)2種以上のゴムを含むゴム成分、
(B)下記式(1):
【0006】
【化1】
【0007】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5は、独立に、水素、ヒドロキシル基、炭素原子数1〜8のアルキル基及び炭素原子数1〜8のエーテル基から選ばれる)
で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、
(c)メチレンドナー、及び
(d)加硫剤、
を含み、ゴム成分(A)が、ジカルボン酸基及び/又はジカルボン酸無水物基を側鎖に有するゴムをゴム成分(A)の合計量を基準として5〜40質量%の量で含み、縮合物(B)がゴム成分(A)100質量部に対して0.5〜20質量部の量で存在し、メチレンドナー(C)がゴム成分(A)100質量部に対して0.25〜200質量部の量で存在し、メチレンドナー(C)と縮合物(B)の質量比が0.5:1〜10:1であることを特徴とするタイヤ用積層体が提供される。
本発明によれば、さらに、上記の積層体から成る空気入りタイヤ用インナーライナー材が提供される。
本発明によれば、さらに、上記の積層体から成る空気入りタイヤ用インナーライナー材を含む空気入りタイヤが提供される。
【0008】
本発明は、具体的には、次の[1]〜[8]の態様を含む。
[1]熱可塑性樹脂組成物または熱可塑性エラストマー組成物のフィルムと当該フィルムに積層されたゴム組成物の層とを含む積層体を加硫により一体化させてなるタイヤ用積層体であって、ゴム組成物が、
(A)2種以上のゴムを含むゴム成分、
(B)下記式(1):
【0009】
【化2】
【0010】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5は、独立に、水素、ヒドロキシル基、炭素原子数1〜8のアルキル基及び炭素原子数1〜8のエーテル基から選ばれる)
で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、
(c)メチレンドナー、及び
(d)加硫剤、
を含み、ゴム成分(A)が、ジカルボン酸基及び/又はジカルボン酸無水物基を側鎖に有するゴムをゴム成分(A)の合計量を基準として5〜40質量%の量で含み、縮合物(B)がゴム成分(A)100質量部に対して0.5〜20質量部の量で存在し、メチレンドナー(C)がゴム成分(A)100質量部に対して0.25〜200質量部の量で存在し、メチレンドナー(C)と縮合物(B)の質量比が0.5:1〜10:1であることを特徴とするタイヤ用積層体。
[2]ジカルボン酸基及び/又はジカルボン酸無水物基を側鎖に有するゴムが無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体および無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする上記態様[1]に記載のタイヤ用積層体。
[3] ゴム成分(A)が、ジカルボン酸基及び/又はジカルボン酸無水物基を側鎖に有するゴムとジエン系ゴムを含む、上記態様[1]に記載のタイヤ用積層体。
[4]熱可塑性樹脂組成物が、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロンMXD6、およびナイロン6Tからなる群から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする、上記態様[1]〜[3]のいずれか1つに記載のタイヤ用積層体。
[5]熱可塑性エラストマー組成物が、熱可塑性樹脂成分と当該熱可塑性樹脂成分中に分散されたエラストマー成分とを含み、熱可塑性樹脂成分がポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロンMXD6およびナイロン6Tからなる群から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含み、エラストマー成分が臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体および無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種のエラストマーを含むことを特徴とする、上記態様[1]〜[4]のいずれか1つに記載のタイヤ用積層体。
[6]メチレンドナーが、変性エーテル化メチロールメラミン、パラホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン、ペンタメチレンテトラミン、およびヘキサメトキシメチルメラミンからなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする、上記態様[1]〜[5]のいずれか1つに記載のタイヤ用積層体。
[7]上記態様[1]〜[6]のいずれか1つに記載のタイヤ用積層体からなる空気入りタイヤ用インナーライナー材。
[8]上記態様[1]〜[6]のいずれか1つに記載のタイヤ用積層体からなる空気入りタイヤ用インナーライナー材を含む空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0011】
本発明のタイヤ用積層体は、熱可塑性樹脂組成物または熱可塑性エラストマー組成物のフィルムとゴム組成物の層との間で向上した接着強度を示す。本発明のタイヤ用積層体は、接着層を使用せずに、熱可塑性樹脂組成物または熱可塑性エラストマー組成物のフィルムとゴム組成物の層との間で優れた接着強度が達成されるため、積層体及びタイヤの製造工程を簡略化することができる。さらに、本発明のタイヤ用積層体は、熱可塑性樹脂組成物または熱可塑性エラストマー組成物のフィルムとゴム組成物の層とを含む積層体の加硫時に、ゴム組成物の層が、他の加硫可能なゴム部材と積層または隣接していると、本発明のタイヤ用積層体を構成するゴム組成物の層と他の加硫可能なゴム部材との間でも加硫反応が起こることによりゴム組成物の層と他のゴム部材との間でも強固な接着が達成される。従って、本発明によれば、特定量のジカルボン酸基及び/又はジカルボン酸無水物基を側鎖に有するゴムと、特定量のフェノール−ホルムアルデヒド縮合物と、特定量のメチレンドナーとを含む上記ゴム組成物の層を介して、熱可塑性樹脂組成物または熱可塑性エラストマー組成物のフィルムと、タイヤを構成する他のゴム部材とを強固に接着することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の積層体における熱可塑性樹脂組成物または熱可塑性エラストマー組成物のフィルムについて、熱可塑性樹脂組成物または熱可塑性エラストマー組成物を構成することができる熱可塑性樹脂の例としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリニトリル系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、ポリビニル系樹脂、セルロース系樹脂、フッ素系樹脂、イミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等を挙げることができる。熱可塑性樹脂組成物または熱可塑性エラストマー組成物は少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むことができる。
【0013】
ポリアミド系樹脂の例としては、ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66(N6/66)、ナイロン6/66/12(N6/66/12)、ナイロン6/66/610(N6/66/610)、ナイロンMXD6(MXD6)、ナイロン6T、ナイロン6/6T、ナイロン9T、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体等が挙げられる。
ポリエステル系樹脂の例としては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミド酸/ポリブチレートテレフタレート共重合体などの芳香族ポリエステル等が挙げられる。ポリニトリル系樹脂の例としては、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体等が挙げられる。ポリメタクリレート系樹脂の例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル等が挙げられる。ポリビニル系樹脂の例としては、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体等が挙げられる。セルロース系樹脂の例としては、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース等が挙げられる。フッ素系樹脂の例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフロロエチレン/エチレン共重合体(ETFE)等が挙げられる。イミド系樹脂の例としては、芳香族ポリイミド(PI)等が挙げられる。ポリスチレン系樹脂の例としては、ポリスチレン(PS)等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂の例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。なかでも、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロンMXD6及びナイロン6Tが、耐疲労性と空気遮断性の両立という点で好ましい。
【0014】
熱可塑性エラストマー組成物は、1または2種以上の熱可塑性樹脂中に分散された1または2種以上のエラストマーを含み、1または2種以上の熱可塑性樹脂がマトリックス相(または連続相)を構成し、エラストマーが分散相(または不連続相)を構成する。
【0015】
熱可塑性エラストマー組成物を構成することのできるエラストマーの例としては、ジエン系ゴム及びその水添物、オレフィン系ゴム、含ハロゲンゴム、シリコーンゴム、含イオウゴム、フッ素ゴム等を挙げることができる。ジエン系ゴム及びその水添物の例としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)(高シスBR及び低シスBR)、アクリルニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素化NBR、水素化SBR等が挙げられる。オレフィン系ゴムの例としては、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体(変性EEA)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニル又はジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー等が挙げられる。含ハロゲンゴムの例としては、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)や塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)等のハロゲン化ブチルゴム、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体(BIMS)、ハロゲン化イソブチレン−イソプレン共重合ゴム、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレン(M−CM)等が挙げられる。シリコーンゴムの例としては、メチルビニルシリコーンゴム、ジメチルシリコーンゴム、メチルフェニルビニルシリコーンゴム等が挙げられる。含イオウゴムの例としては、ポリスルフィドゴム等が挙げられる。フッ素ゴムの例としては、ビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコーン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム等が挙げられる。なかでも、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体及び無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体が、空気遮断性の観点から好ましい。
【0016】
本発明の積層体における熱可塑性樹脂組成物を構成することのできるエラストマーと熱可塑性樹脂との組み合わせは、限定するものではないが、ハロゲン化ブチルゴムとポリアミド系樹脂、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合ゴムとポリアミド系樹脂、ブタジエンゴムとポリスチレン系樹脂、イソプレンゴムとポリスチレン系樹脂、水素添加ブタジエンゴムとポリスチレン系樹脂、エチレンプロピレンゴムとポリオレフィン系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴムとポリオレフィン系樹脂、非結晶ブタジエンゴムとシンジオタクチックポリ(1,2−ポリブタジエン)、非結晶イソプレンゴムとトランスポリ(1,4−イソプレン)、フッ素ゴムとフッ素樹脂等が挙げられるが、空気遮断性に優れたブチルゴムとポリアミド系樹脂の組み合わせが好ましく、なかでも、変性ブチルゴムである臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合ゴムとナイロン6/66もしくはナイロン6又はナイロン6/66とナイロン6のブレンド樹脂との組み合わせが、耐疲労性と空気遮断性の両立という点で特に好ましい。
【0017】
熱可塑性エラストマー組成物は、少なくとも1種の熱可塑性樹脂と少なくとも1種のエラストマーとを、例えば、2軸混練押出機等で溶融混練し、マトリックス相を形成する熱可塑性樹脂中にエラストマー成分を分散相として分散させることにより、製造することができる。熱可塑性樹脂とエラストマーの質量比率は、限定するものではないが、好ましくは10/90〜90/10であり、より好ましくは15/85〜90/10である。
【0018】
熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、加工性、分散性、耐熱性、酸化防止性などの改善のために、例えば充填剤、補強剤、加工助剤、安定剤、酸化防止剤などの、樹脂組成物に一般的に配合される配合剤を含んでよい。熱可塑性エラストマー組成物のエラストマーは、本発明の効果を阻害しない範囲で、カーボンブラックやシリカなどのその他の補強剤(フィラー)、軟化剤、老化防止剤、加工助剤などの、ゴム組成物に一般的に配合される配合剤を含んでよい。
【0019】
本発明において、ゴム組成物の層を構成するゴム組成物は、
(A)2種以上のゴムを含むゴム成分、
(B)下記式(1):
【0021】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5は、独立に、水素、ヒドロキシル基、炭素原子数1〜8のアルキル基及び炭素原子数1〜8のエーテル基から選ばれる)
で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、
(c)メチレンドナー、及び
(d)加硫剤、
を含み、ゴム成分(A)が、ジカルボン酸基及び/又はジカルボン酸無水物基を側鎖に有するゴムをゴム成分(A)の合計量を基準として5〜40質量%の量で含み、縮合物(B)がゴム成分(A)100質量部に対して0.5〜20質量部の量で存在し、メチレンドナー(C)がゴム成分(A)100質量部に対して0.25〜200質量部の量で存在し、メチレンドナー(C)と縮合物(B)の質量比が0.5:1〜10:1であることを特徴とする。
【0022】
本発明において、ジカルボン酸基及び/又はジカルボン酸無水物基を側鎖に有するゴムの例としては、無水マレイン酸変性液状ポリイソプレンゴム、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体ゴム、無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体ゴム、無水マレイン酸変性液状ポリブタジエンゴムなどが挙げられる。ジカルボン酸基及び/又はジカルボン酸無水物基を側鎖に有するゴムは、ジカルボン酸及び/又はジカルボン酸無水物をゴムにグラフト化することによって製造することができる。ジカルボン酸基及び/又はジカルボン酸無水物基を側鎖に有するゴムは、は市販されており、例えば、酸無水物無水マレイン酸変性液状ポリイソプレンゴムは、(株)クラレからクラプレンLIR−403の商品名で入手可能であり、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体ゴムは三井化学(株)からタフマーMP0620の商品名で入手可能であり、無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体ゴムは三井化学(株)からタフマーMH7020の商品名で入手可能である。本発明において、ジカルボン酸基及び/又はジカルボン酸無水物基を側鎖に有するゴムの量は、ゴム成分(A)の合計量を基準として5〜40質量%である。ジカルボン酸基及び/又はジカルボン酸無水物基を側鎖に有するゴムの量が上記範囲の下限未満である場合には、熱可塑性樹脂組成物の層とゴム組成物の層の間で接着強度を十分に向上させることができず、ジカルボン酸基及び/又はジカルボン酸無水物基を側鎖に有するゴムの量が上記範囲の上限を超えると、ゴム組成物の加工中に焼け(スコーチとも呼ばれる)が発生し、加工性が低下する。
【0023】
ゴム成分(A)を構成するジカルボン酸基及び/又はジカルボン酸無水物基を側鎖に有するゴム以外のゴムの例としては、ジエン系ゴム及びその水添物、オレフィン系ゴム、含ハロゲンゴム、シリコーンゴム、含イオウゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。ジエン系ゴム及びその水添物の例としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)(高シスBR及び低シスBR)、アクリルニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素化NBR、水素化SBR等が挙げられる。オレフィン系ゴムの例としては、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体(変性EEA)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニル又はジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー等が挙げられる。含ハロゲンゴムの例としては、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)や塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)等のハロゲン化ブチルゴム、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体(BIMS)、ハロゲン化イソブチレン−イソプレン共重合ゴム、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレン(M−CM)等が挙げられる。シリコーンゴムの例としては、メチルビニルシリコーンゴム、ジメチルシリコーンゴム、メチルフェニルビニルシリコーンゴム等が挙げられる。含イオウゴムの例としては、ポリスルフィドゴム等が挙げられる。フッ素ゴムの例としては、ビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコーン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム等が挙げられる。なかでも、隣接ゴム材料との共架橋性の観点から、ジカルボン酸基及び/又はジカルボン酸無水物基を側鎖に有するゴム以外のゴムとしては、ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、含ハロゲンゴムが好ましく、より好ましくは、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、臭素化ブチルゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴムである。ゴム組成物を構成するゴム成分中のジエン系ゴムの割合は50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上であり、ジカルボン酸基及び/又はジカルボン酸無水物基を側鎖に有するゴム以外のゴムのすべてがジエン系ゴムであることがさらに好ましい。
【0024】
上記式(1)で表される化合物の1つの好ましい例は、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5のうち少なくとも1つが炭素原子数1〜8のアルキル基であり、残りが水素であるものである。式(1)で表される化合物の好ましい具体例の1つはクレゾールである。式(1)で表される化合物のもう1つの好ましい例は、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5のうち少なくとも1つがヒドロキシル基であり、残りが水素又は炭素原子数1〜8のアルキル基であるものである。式(1)で表される化合物の別の好ましい具体例はレゾルシンである。
【0025】
式(1)で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物としては、クレゾール−ホルムアルデヒド縮合物、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物等が挙げられる。また、これらの縮合物は、本発明の効果を損なわない範囲で、変性されていてもよい。例えば、エポキシ化合物で変性された変性レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物も本発明に使用することができる。これらの縮合物は、市販されており、本発明において、市販品を使用できる。
【0026】
式(1)で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物は、好ましくは、式(2)又は式(3)で表される化合物である。
【0028】
式中、nは1〜20の整数、好ましくは1〜10の整数、より好ましくは1〜5の整数である。
【0030】
式中、mは1〜20の整数、好ましくは1〜10の整数、より好ましくは1〜3の整数である。
【0031】
式(1)で表される化合物とホルムアルデヒドとの縮合物(以下、単に「縮合物」ともいう。)の配合量は、ゴム成分(A)100質量部に対して0.5〜20質量部であり、好ましくは1〜10質量部である。縮合物の配合量が少なすぎると、良好な接着を得るのに必要な熱量、時間が増大するため加硫効率が悪化し、逆に多すぎると、得られるゴム組成物の加硫伸びが損なわれ、破断しやすくなる。
【0032】
本明細書において、「メチレンドナー」とは、加熱等によりホルムアルデヒドを発生する塩基化合物を指し、例えば、ヘキサメチレンテトラミン、ペンタメチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、メチロールメラミン、エーテル化メチロールメラミン、変性エーテル化メチロールメラミン、エステル化メチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサキス(エトキシメチル)メラミン、ヘキサキス(メトキシメチル)メラミン、N,N’,N''−トリメチル−N,N’,N''−トリメチロールメラミン、N,N’,N''−トリメチロールメラミン、N−メチロールメラミン、N,N’−ビス(メトキシメチル)メラミン、N,N’,N''−トリブチル−N,N’,N''−トリメチロールメラミン、パラホルムアルデヒド等が挙げられる。なかでも、ホルムアルデヒドの放出温度の観点から、変性エーテル化メチロールメラミンが好ましい。
【0033】
メチレンドナー(C)の量は、ゴム成分100質量部に対して0.25〜200質量部であり、好ましくは0.5〜80質量部であり、さらに好ましくは1〜40質量部である。メチレンドナーの配合量が少なすぎると、ゴム組成物系内における樹脂反応にドナーが消費されて界面反応での反応が進まなくなり接着が悪化する。逆に多すぎると、ゴム組成物系内での反応が促進されすぎたり、被着対象の樹脂系内での架橋反応を誘発して接着が悪化する。
【0034】
メチレンドナー(C)と縮合物(B)の質量比は、0.5:1〜10:1、好ましくは1:1〜4:1、さらに好ましくは1:1〜3:1である。縮合物に対するメチレンドナーの割合が小さすぎると、ゴム組成物系内における樹脂反応にドナーが消費されて界面反応での反応が進まなくなり接着が悪化する。逆に大きすぎると、ゴム組成物系内での反応が促進されすぎたり、被着対象樹脂系内での架橋反応を誘発して接着が悪化する。
【0035】
加硫剤の例としては、無機系加硫剤と有機系加硫剤が挙げられる。無機系加硫剤の例としては、硫黄、一塩化硫黄、セレン、テルル、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、一酸化鉛等が挙げられ、有機系加硫剤の例としては、含硫黄有機化合物、ジチオカルバミン酸塩、オキシム類、テトラクロロ−p−ベンゾキノン、ジニトロソ化合物、変性フェノール樹脂、ポリアミン、有機過酸化物等が挙げられる。なかでも、硫黄、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)−ベンゼンのような有機過酸化物、臭素化アルキルフェノール−ホルムアルデヒド縮合物のような変性フェノール樹脂、酸化亜鉛、含硫黄有機化合物が好ましい。
【0036】
加硫促進剤としては、アルデヒド−アンモニア系、アルデヒド−アミン系、チオウレア系、グアニジン系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオカルバミン酸塩系、キサントゲン酸塩系が挙げられ、好ましくはチアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系である。チアゾール系加硫促進剤は、チアゾール構造を有する化合物であり、例えば、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾチアジルジスルフィド、メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、(ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、(N,N−ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール等が挙げられるが、なかでもジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィドが好ましい。スルフェンアミド系加硫促進剤は、スルフェンアミド構造を有する化合物であり、例えば、N−シクロヘキシルベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチルベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレンベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシルベンゾチアゾールスルフェンアミド、(モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等が挙げられるが、なかでもN−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドが好ましい。チウラム系加硫促進剤は、チウラム構造を有する化合物であり、例えば、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド等が挙げられるが、なかでもテトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィドが好ましい。
【0037】
熱可塑性樹脂組成物または熱可塑性エラストマー組成物のフィルムと当該フィルムに積層されたゴム組成物の層とを含む加硫前の積層体は、熱可塑性樹脂組成物のフィルムにゴム組成物を積層することによって製造することができる。限定するものではないが、より具体的には、次のようにして製造することができる。まず、熱可塑性樹脂組成物を、インフレーション成形装置、Tダイ押出機等の成形装置でフィルム状に成形して、熱可塑性樹脂組成物のフィルムを作製する。次に、ゴム組成物を、Tダイ押出機等で、前記フィルムの上に押出すと同時に積層して、積層体を製造する。
【0038】
本発明の積層体を使用して、常法により空気入りタイヤを製造することができる。例えば、タイヤ成形用ドラム上に、インナーライナー材として本発明の積層体を、熱可塑性樹脂組成物のフィルム側がタイヤ成形用ドラムの方を向くように置き、その上に未加硫ゴムからなるカーカス層、ベルト層、トレッド層等の通常のタイヤ製造に用いられる部材を順次貼り重ね、成形後、ドラムを抜き去ってグリーンタイヤとし、次いで、このグリーンタイヤを常法に従って加熱加硫することにより、空気入りタイヤを製造することができる。
熱可塑性樹脂組成物または熱可塑性エラストマー組成物のフィルムと当該フィルムに積層されたゴム組成物の層とを含む積層体の加硫による一体化は、従来の加熱加硫条件で実施できる。
【実施例】
【0039】
(1)フィルムの作製
表1に示す配合比率で原料を配合して熱可塑性樹脂組成物を調製し、その熱可塑性樹脂組成物をインフレーション成形装置で成形し、厚さ0.2mmのフィルムを作製した。作製したフィルムをフィルムAという。
【0040】
【表1】
【0041】
フィルムAの原料:
BIMS:臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体(エクソンモービルケミカル社製のExxpro(登録商標)3035)
酸化亜鉛:正同化学工業(株)製の亜鉛華3号
ステアリン酸:千葉脂肪酸(株)製の工業用ステアリン酸
ステアリン酸亜鉛:日油(株)製のステアリン酸亜鉛
熱可塑性樹脂:ナイロン6/66(宇部興産(株)製のUBEナイロン(登録商標)5033B)
変性EEA:無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体(アルケア社製のリルサンBESNOTL)
可塑剤:大八化学工業(株)製のBM−4
【0042】
(2)ゴム組成物の調製
下記の原料を表2
及び表3に示す配合比率でバンバリーミキサーにより配合し、比較例1〜4
、実施例1〜5及び参考例1〜10のゴム組成物を調製した。
ゴム組成物の原料:
SBR:日本ゼオン(株)製のNipol(登録商標)1502
NR:SIR−20
液状マレイン化IR:無水マレイン酸変性液状ポリイソプレンゴム((株)クラレ製のクラプレンLIR−403)
酸変性EPゴム:三井化学(株)製のタフマーMP0620
酸変性EBゴム:三井化学(株)製のタフマーMH7020
カーボンブラック:東海カーボン(株)社製シーストV
ステアリン酸:千葉脂肪酸(株)製の工業用ステアリン酸
アロマオイル:昭和シェル石油(株)製のデソレックス3号
酸化亜鉛:正同化学工業(株)製の亜鉛華3号
変性レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物:田岡化学工業(株)製のスミカノール620
メチレンドナー:変性エーテル化メチロールメラミン樹脂(田岡化学工業(株)製のスミカノール507AP)
硫黄:(株)軽井沢精錬所製の5%油展処理硫黄
加硫促進剤:ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド(大内新興化学工業(株)製のノクセラーDM)
【0043】
(3)積層体の作製
上記(1)で作製したフィルムAの上に、上記(2)で調製したゴム組成物を0.7mmの厚さで押出積層し積層体を作製した。
【0044】
(4)積層体の評価
作製した積層体について、下記の「剥離強度試験」を行い評価した。評価結果を表2
及び表3に示す。
[剥離強度試験]
積層体の試料を、加硫後、幅25mmに切断し、その短冊状試験片の剥離強度をJIS−K6256に従い測定した。比較例1について測定された剥離強度の値を基準として、比較例2〜4
、実施例1〜5及び参考例1〜10について測定された剥離強度(N/25mm)の値を指数で表した。
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
表2及び3から、ゴム組成物がフェノール−ホルムアルデヒド縮合物及びメチレンドナーを含むが、ジカルボン酸基及び/又はジカルボン酸無水物基を側鎖に有するゴムを含まない比較例1、及びゴム組成物がジカルボン酸基及び/又はジカルボン酸無水物基を側鎖に有するゴムを含むが、フェノール−ホルムアルデヒド縮合物及びメチレンドナーを含まない比較例2〜4と比べて、実施例1〜
5は、良好な剥離強度を示したこと、すなわち良好な接着強度を示したことが分かる。