(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の技術に用いられているCML差動バッファ部等のCML型の差動増幅回路は、回路から発生するノイズが小さく、かつ、外部から入力される同相ノイズを除去する能力に優れ、高速動作が可能であることから、超高速の分周回路や高速信号伝送用ドライバに使用されることがある。これらの用途では、各種のデューティ比の差動信号を伝送する場合がある。
【0005】
図7(a)に示す例では、2分周回路が正相入力信号INPおよび逆相入力信号INNからなる差動信号の2分周を行って、周波数が1/2の正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNを出力している。このような場合、2分周回路の出力振幅|OUTP−OUTN|の大小に拘わらず、OUTP>OUTNである期間Aと、OUTP<OUTNである期間Bが同じになり、2分周回路の出力信号のデューティ比は50%になる。
【0006】
これに対し、
図7(b)に示す例では、3分周回路が正相入力信号INPおよび逆相入力信号INNからなる差動信号の3分周を行って、周波数が1/3の正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNを出力している。このような場合、次の問題が発生する。まず、3分周回路は正相入力信号INPおよび逆相入力信号INNからなる差動信号の3分周を行っているのであるから、本来ならば
図7(b)上段に示すように、OUTP>OUTNである期間Aの長さと、OUTP<OUTNである期間Bの長さとの比が1:2である正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNが3分周回路から出力されるべきである。ところが、
図7(b)下段に示すように直流レベルのバランスが崩れ、期間Aの出力振幅|OUTP−OUTN|が小さく、逆に期間Bの出力振幅|OUTP−OUTN|が大きく、直流バランスが崩れ、期間AおよびBの長さの比が1:2でない正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNが3分周回路の出力段の差動増幅回路から出力されるのである。この問題は分周回路の分周比が3である場合に顕著に現れる。
【0007】
以下、
図8を参照し、この問題についてさらに詳細に説明する。
図8(a)に示す例では、差動増幅回路に与えられる正相入力信号INPおよび逆相入力信号INNに関して、INP>INNである期間A内の差動振幅|INP−INN|と、INP<INNである期間B内の差動振幅|INP−INN|とがほぼ等しい。このような場合、正相入力信号INPの直流レベル(平均レベル)と逆相入力信号INNの直流レベルとの間に大きな差がないので、正相入力信号INPおよび逆相入力信号INNに対する歪の少ない正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNが差動増幅回路から得られる。
【0008】
しかし、
図8(b)に例示するように、INP>INNである期間A内の差動振幅|INP−INN|がINP<INNである期間B内の差動振幅|INP−INN|に比べて顕著に小さい場合、正相入力信号INPの直流レベル(平均レベル)と逆相入力信号INNの直流レベルとの間に大きな差がある。このため、直流レベルが大きく隔たった正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNが差動増幅回路から得られる。そして、最悪の場合、
図8(b)に例示するように、互いにクロスせず、差動信号として機能しない正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNが差動増幅回路から得られるのである。これが差動信号の消失の問題である。
【0009】
上述した分周回路の例では、3分周回路の出力段の差動増幅回路に入力される差動信号に直流バランスの崩れが発生することにより、
図7(b)下段に示すような不適切な正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNが出力されることとなる。
【0010】
このような問題を回避するためには、伝送対象である差動信号を50%以外のデューティ比をも含む任意のデューティ比に調整する手段が必要である。
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示のデューティ補正付きレベル変換回路は、出力信号のデューティ比を50%にしか調整することができず、上述した問題を解決する手段となり得ない。
【0012】
本発明は、以上説明した事情に鑑みてなされたものであり、入力信号のデューティ比を50%以外のデューティ比を含む任意のデューティ比に調整して出力することができるデューティ比調整回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、正相入力信号および逆相入力信号を差動増幅して正相出力信号および逆相出力信号を出力するドライバ回路と、正相出力信号が第1のレベルである間、第1の電流を積分して第1の積分電圧を出力し、逆相出力信号が第1のレベルである間、第2の電流を積分して第2の積分電圧を出力する積分演算部と、目標デューティ比に応じて第1の電流および第2の電流を切り換えるデューティ比設定手段と、第1の積分電圧と第2の積分電圧との差分に応じて逆相出力信号に対する正相出力信号の出力オフセット電圧を補正するオフセット補正部とを具備することを特徴とするデューティ比調整回路を提供する。
【0014】
この発明によれば、目標デューティ比に応じてデューティ比設定手段が第1の電流および第2の電流を切り換え、この切り換えにより積分演算部が第1の電流の積分である第1の積分電圧と第2の電流の積分である第2の積分電圧とを出力し、オフセット補正部が第1の積分電圧と第2の積分電圧の差分に応じて出力オフセット電圧を補正する。この補正により、ドライバ回路が出力する正相出力信号および逆相出力信号のデューティ比を所望の値に近づけることができる。
【0015】
より好ましい態様においては、積分演算部は、第1のキャパシタと、第1の可変抵抗と、第2のキャパシタと、第2の可変抵抗とを具備し、正相出力信号が第1のレベルである間、第1の可変抵抗を介した第1の電流により第1のキャパシタの充電を行わせ、逆相出力信号が第1のレベルである間、第2の可変抵抗を介した第2の電流により第2のキャパシタの充電を行わせ、第1のキャパシタの充電電圧および第2のキャパシタの充電電圧を第1の積分電圧および第2の積分電圧として出力するものであり、デューティ比設定手段は、目標デューティ比に応じて第1の可変抵抗および第2の可変抵抗の各抵抗値を切り換える。
【0016】
この態様によれば、第1の可変抵抗および第2の可変抵抗の各抵抗値を切り換えることで、正相出力信号および逆相出力信号のデューティ比を所望の値に近づけることができる。
【0017】
より好ましい態様においては、正相入力信号および逆相入力信号のデューティ比に応じて第1の電流および第2の電流を補正する積分補正部を具備する。
【0018】
この態様によれば、積分補正部がオフセット補正部の過剰な出力オフセット電圧の補正を緩和する。そのため、正相出力信号および逆相出力信号のデューティ比を所望の値により近づけることができる。
【0019】
より好ましい態様においては、積分演算部は、第1の電流の経路に介挿された第1のトランジスタと第2の電流の経路に介挿された第2のトランジスタとを具備し、積分補正部は、第1および第2のトランジスタに供給する各ゲート電圧を制御することにより第1の電流および第2の電流を補正する。
【0020】
この態様によれば、積分演算部の第1のトランジスタと第2のトランジスタにより、正相出力信号および逆相出力信号のデューティ比を所望の値に近づけることができる。
【0021】
より好ましい態様においては、積分補正部は、正相入力信号が第2のレベルである期間に応じたゲート電圧を第1のトランジスタに供給し、逆相入力信号が第2のレベルである期間に応じたゲート電圧を第2のトランジスタに供給する。
【0022】
この態様によれば、正相出力信号および逆相出力信号のデューティ比を所望の値に近づけることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照し、この発明の実施形態について説明する。
【0025】
(A:構成)
図1は、この発明の一実施形態であるデューティ比調整回路100の構成を示す回路図である。デューティ比調整回路100は、正相入力信号INPおよび逆相入力信号INNのデューティ比を指定された目標デューティ比に調整し、正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNとして出力する回路である。
図1に示すように、デューティ比調整回路100は、ドライバ回路1、直流電圧オフセット補正部2、積分演算部3および積分補正部4を有する。
【0026】
ドライバ回路1は、正相入力信号INPおよび逆相入力信号INNを差動増幅して正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNを出力する。直流電圧オフセット補正部2は、ドライバ回路1において正相入力信号INPおよび逆相入力信号INNが一致している場合における正相出力信号OUTPの逆相出力信号OUTNに対する出力オフセット電圧VOFFSETを補正する回路である。積分演算部3は、正相出力信号OUTPが第1のレベル(本実施形態では、Hレベル)である期間、第1の電流I37の積分を行って、その積分値である第1の積分電圧V37を出力し、逆相出力信号OUTNが第1のレベル(本実施形態では、Hレベル)である期間、第2の電流I38の積分を行って、その積分値である第2の積分電圧V38を出力する回路である。上述した直流電圧オフセット補正部2は、この第1の積分電圧V37および第2の積分電圧V38の大小関係に応じて、ドライバ回路1に発生させる出力オフセット電圧VOFFSETを制御する。積分補正部4は、正相入力信号INPと逆相入力信号INNのデューティ比に応じて、積分演算部3の第1の電流I37および第2の電流I38を補正する。
【0027】
ドライバ回路1は、NチャネルのMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor;金属酸化膜半導体型の電界効果トランジスタであり、以下、単にトランジスタという)11および12と、抵抗13および14と、電流値I1の定電流源15とからなる差動増幅器である。ここで、Nチャネルトランジスタ11および12は、ソース同士が接続されており、定電流源15はこのソース同士の接続点と低電位電源VSSとの間に介挿されている。また、抵抗13はNチャネルトランジスタ11のドレインと高電位電源VDDとの間に介挿され、抵抗14はNチャネルトランジスタ12のドレインと高電位電源VDDとの間に介挿されている。Nチャネルトランジスタ11のゲートには正相入力信号INPが、Nチャネルトランジスタ12のゲートには逆相入力信号INNが入力される。そして、Nチャネルトランジスタ11のドレインは逆相出力信号OUTNの出力ノードとなっており、Nチャネルトランジスタ12のドレインは正相出力信号OUTPの出力ノードとなっている。
【0028】
直流電圧オフセット補正部2は、Nチャネルトランジスタ21および22と、これらのトランジスタのソース同士の接続点と低電位電源VSSとの間に介挿された電流値I2の定電流源23とにより構成されている。ここで、Nチャネルトランジスタ21のドレインは、ドライバ回路1のNチャネルトランジスタ11のドレインおよび抵抗13の接続点に接続されており、Nチャネルトランジスタ22のドレインは、ドライバ回路1のNチャネルトランジスタ12のドレインおよび抵抗14の接続点に接続されている。また、Nチャネルトランジスタ22のゲートには積分演算部3から第1の積分電圧V37が与えられ、Nチャネルトランジスタ21のゲートには積分演算部3から第2の積分電圧V38が与えられる。
【0029】
積分演算部3は、Nチャネルトランジスタ31および32と、Pチャネルトランジスタ33および34と、可変抵抗35および36と、キャパシタ37および38と、電流値がI3の定電流源39と、抵抗調整部30とを有する。ここで、Nチャネルトランジスタ31および32は、ソース同士が接続されており、このソース同士の接続点と低電位電源VSSの間に電流値I3の定電流源39が介挿されている。Nチャネルトランジスタ31のゲートには逆相出力信号OUTNが与えられ、Nチャネルトランジシタ32のゲートには正相出力信号OUTPが与えられる。Nチャネルトランジスタ31のドレインはPチャネルトランジスタ33のドレインに接続され、Nチャネルトランジスタ32のドレインはPチャネルトランジスタ34のドレインに接続されている。そして、Pチャネルトランジスタ33のソースと高電位電源VDDとの間には可変抵抗35が介挿されている。この可変抵抗35は、上述した第1の電流I37を調整するための手段である。また、Pチャネルトランジスタ34のソースと高電位電源VDDとの間には可変抵抗36が介挿されている。この可変抵抗36は、上述した第2の電流I38を調整するための手段である。
【0030】
ここで、Pチャネルトランジスタ33のゲートには積分補正部4から積分補正電圧V45が与えられ、Pチャネルトランジスタ34のゲートには積分補正部4から積分補正電圧V46が与えられる。そして、Nチャネルトランジスタ31およびPチャネルトランジスタ33のドレイン同士の接続点と低電位電源VSSとの間には、第1の電流I37を積分するための第1のキャパシタ37が介挿され、Nチャネルトランジスタ32およびPチャネルトランジスタ34のドレイン同士の接続点と低電位電源VSSとの間には、第2の電流I38を積分するための第2のキャパシタ38が介挿されている。上述したように、Nチャネルトランジスタ31は、逆相出力信号OUTNがゲートに与えられるので、この逆相出力信号OUTNが第2のレベル(本実施形態では、Lレベル)、正相出力信号OUTPが第1のレベル(本実施形態では、Hレベル)である間、OFFとなる。従って、第1のキャパシタ37は、正相出力信号OUTPが第1のレベル(本実施形態では、Hレベル)である間の第1の電流I37の積分を行う。また、Nチャネルトランジスタ32は、正相出力信号OUTPがゲートに与えられるので、この正相出力信号OUTPが第2のレベル(本実施形態では、Lレベル)、逆相出力信号OUTNが第1のレベル(本実施形態では、Hレベル)である間、OFFとなる。従って、第2のキャパシタ38は、逆相出力信号OUTNが第1のレベル(本実施形態では、Hレベル)である間の第2の電流I38の積分を行う。これらのキャパシタ37および38の各充電電圧は、上述した第1および第2の積分電圧V37およびV38として直流電圧オフセット補正部2に供給される。
【0031】
抵抗調整部30は、可変抵抗35および36の各抵抗値を調整することにより、第1の電流I37および第2の電流I38を調整する手段である。本実施形態では、可変抵抗35および36の抵抗値を調整することにより正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNのデューティ比を所望のデューティ比に制御する。具体的には、本実施形態では、例えばシミュレーションにより、正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNのデューティ比をDR1とするための可変抵抗35の抵抗値R35_1と可変抵抗36の抵抗値R36_1、デューティ比をDR2とする可変抵抗35の抵抗値R35_2と可変抵抗36の抵抗値R36_2、…、デューティ比をDRNとする可変抵抗35の抵抗値R35_Nと可変抵抗36の抵抗値R36_N、という具合に、所望のデューティ比を実現するための各可変抵抗の抵抗値の組が求められている。そして、可変抵抗35は、抵抗値R35_1、R35_2、…、R35_Nのうち所望のものへ切り換えが可能であり、可変抵抗36は、抵抗値R36_1、R36_2、…、R36_Nのうち所望のものへ切り換えが可能な構成となっている。抵抗調整部30は、正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNの目標デューティ比を指定するデューティ比指定信号を外部から受け取り、このデューティ比指定信号が示す目標デューティ比に対応した抵抗値に可変抵抗35および36の抵抗値を切り換える。
【0032】
積分補正部4は、Pチャネルトランジスタ41および42と、抵抗43および44と、キャパシタ45および46と、電流値I4の定電流源47とを有する。ここで、Pチャネルトランジスタ41および42は、ソース同士が接続されており、このソース同士の接続点と高電位電源VDDとの間に定電流源47が介挿されている。Pチャネルトランジスタ41のゲートには正相入力信号INPが与えられ、Pチャネルトランジスタ42のゲートには逆相入力信号INNが与えられる。そして、Pチャネルトランジスタ41のドレインと低電位電源VSSとの間には抵抗43およびキャパシタ45が並列に介挿され、Pチャネルトランジスタ42のドレインと低電位電源VSSとの間には抵抗44およびキャパシタ46が並列に介挿されている。これらのキャパシタ45および46の各充電電圧は、上述した積分補正電圧V45およびV46として積分演算部3に供給される。
以上が、デューティ比調整回路100の構成である。
【0033】
(B:動作)
次に、デューティ比調整回路100の動作について説明する。なお、以下では簡単のため、Nチャネルトランジスタ11および12の電気的特性は互いに等しく、Nチャネルトランジスタ21および22の電気的特性も互いに等しいものとする。
図2は、デューティ比調整回路100の各部の波形を示すタイムチャートである。
図2(a)は、デューティ比が50%の正相入力信号INPおよび逆相入力信号INNの波形を示しており、
図2(b)〜(d)は、直流電圧オフセット補正部2のNチャネルトランジスタ21および22のドレイン電流I21およびI22を各種変化させた場合の正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNの波形の変化の様子を示している。
【0034】
第1の積分電圧V37および第2の積分電圧V38が等しい状態では、ドライバ回路1のNチャネルトランジスタ11のドレインおよび抵抗13の接続点から直流電圧オフセット補正部2のNチャネルトランジスタ21のドレインに流れる電流I21と、ドライバ回路1のNチャネルトランジスタ12のドレインおよび抵抗14の接続点から直流電圧オフセット補正部2のNチャネルトランジスタ22のドレインに流れる電流I22が等しくなる。この場合、ドライバ回路1では、逆相出力信号OUTNに対する正相出力信号OUTPの出力オフセット電圧VOFFSETが0となり、
図2(b)に示すように、正相入力信号INPおよび逆相入力信号INNが互いにクロスするのに応じて正相出力信号OUTPと逆相出力信号OUTNが互いにクロスする。従って、正相入力信号INPおよび逆相入力信号INNのデューティ比が50%である場合には正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNのデューティ比は50%となる。
【0035】
これに対し、第1の積分電圧V37が第2の積分電圧V38よりも大きい状態では、電流I21よりも電流I22が大きくなる。この場合、ドライバ回路1では、逆相出力信号OUTNに対する正相出力信号OUTPの出力オフセット電圧VOFFSETが負の電圧値となり、
図2(c)に示すように、正相入力信号INPが第1のレベル(本実施形態では、Hレベル)、逆相入力信号INNが第2のレベル(本実施形態では、Lレベル)である期間よりも、正相出力信号OUTPが第1のレベル(本実施形態では、Hレベル)、逆相出力信号OUTNが第2のレベル(本実施形態では、Lレベル)である期間が短くなる。また、正相入力信号INPが第2のレベル(本実施形態では、Lレベル)、逆相入力信号INNが第1のレベル(本実施形態では、Hレベル)である期間よりも、正相出力信号OUTPが第2のレベル(本実施形態では、Lレベル)、逆相出力信号OUTNが第1のレベル(本実施形態では、Hレベル)である期間が長くなる。このように第1の積分電圧V37が第2の積分電圧V38よりも大きい状態では、直流電圧オフセット補正部2により、正相出力信号OUTP、逆相出力信号OUTNのデューティ比を正相入力信号INP、逆相入力信号INNのデューティ比よりも小さくする制御が行われる。
【0036】
また、第1の積分電圧V37が第2の積分電圧V38よりも小さい状態では、電流I21が電流I22よりも大きくなる。この場合、ドライバ回路1では、逆相出力信号OUTNに対する正相出力信号OUTPの出力オフセット電圧VOFFSETが正の電圧値となり、
図2(d)に示すように、正相入力信号INPが第1のレベル(本実施形態では、Hレベル)、逆相入力信号INNが第2のレベル(本実施形態では、Lレベル)である期間よりも、正相出力信号OUTPが第1のレベル(本実施形態では、Hレベル)、逆相出力信号OUTNが第2のレベル(本実施形態では、Lレベル)である期間が長くなる。また、正相入力信号INPが第2のレベル(本実施形態では、Lレベル)、逆相入力信号INNが第1のレベル(本実施形態では、Hレベル)である期間よりも、正相出力信号OUTPが第2のレベル(本実施形態では、Lレベル)、逆相出力信号OUTNが第1のレベル(本実施形態では、Hレベル)である期間が短くなる。このように第1の積分電圧V37が第2の積分電圧V38よりも小さい状態では、直流電圧オフセット補正部2により、正相出力信号OUTP、逆相出力信号OUTNのデューティ比を正相入力信号INP、逆相入力信号INNのデューティ比よりも大きくする制御が行われる。
以上が直流電圧オフセット補正部2により行われるドライバ回路1のデューティ比の制御である。
【0037】
次に
図2(c)および(c1)〜(c5)を参照し、積分演算部3の積分動作と直流電圧オフセット補正部2によるドライバ回路1のデューティ比の制御との関係について説明する。
図2(c1)に示す例では、可変抵抗35の抵抗値が可変抵抗36の抵抗値よりも小さく、可変抵抗35に流れる電流I35は可変抵抗36に流れる電流I36よりも大きい。そして、
図2(c2)に示す例では、
図2(c)に示すように、デューティ比が50%よりも小さい正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNが出力され、積分演算部3のNチャネルトランジスタ31および32のゲートに逆相出力信号OUTNおよび正相出力信号OUTPが各々与えられている。そして、
図2(c3)に示すように、OUTP>OUTNである期間は、第1の電流I37=I35の積分が第1のキャパシタ37により行われ、OUTP<OUTNである期間、第2の電流I38=I36の積分が第2のキャパシタ38により行われる。ここで、キャパシタ37および38とこれらのキャパシタに接続された抵抗(例えば可変抵抗35、36)の時定数は十分に大きい。このため、第1のキャパシタ37の充電電圧である第1の積分電圧V37は、OUTP>OUTNである期間の時間密度(すなわち、デューティ比)と第1の電流I37=I35の積に比例した直流電圧となる。また、第2のキャパシタ38の充電電圧である第2の積分電圧V38は、OUTP<OUTNである期間の時間密度(すなわち、1−デューティ比)と第2の電流I38=I36の積に比例した直流電圧となる。
図2(c4)に示す例では、第1の積分電圧V37が第2の積分電圧V38よりも大きくなっている。このため、
図2(c5)に示すように、直流電圧オフセット補正部2では、Nチャネルトランジスタ22のドレイン電流I22がNチャネルトランジスタ21のドレイン電流I21よりも大きくなる。
【0038】
Nチャネルトランジスタ22のドレイン電流I22がNチャネルトランジスタ21のドレイン電流I21よりも大きい場合、既に説明したように、ドライバ回路1の正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNのデューティ比を現状よりも小さくする制御が行われる。この制御によりOUTP>OUTNである期間が短くなり、OUTP<OUTNである期間が長くなると、第1の積分電圧V37が低下し、第2の積分電圧V38が上昇する。
【0039】
このような制御が繰り返される結果、第1の積分電圧V37と第2の積分電圧V38との差が次第に小さくなり、ドライバ回路1の正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNのデューティ比は、第1の電流I37=I35と第2の電流I38=I36の比に依存した値に収束する。具体的には、第1の電流I37を大きくし、第2の電流I38を小さくする程、正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNのデューティ比を小さくすることが可能である。
【0040】
以上、第1の電流I37が第2の電流I38よりも大きく、正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNのデューティ比を50%以下の値に調整する場合の動作を例に説明したが、第1の電流I37が第2の電流I38よりも小さく、正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNのデューティ比を50%以上の値に調整する場合の動作(
図2(d)参照)も同様である。この場合、第1の電流I37を小さくし、第2の電流I38を大きくする程、正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNのデューティ比を大きくすることが可能である。
【0041】
ところで、正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNの目標デューティ比が50%よりも小さく、かつ、正相入力信号INPおよび逆相入力信号INNのデューティ比も50%よりも小さいような場合、正相入力信号INPおよび逆相入力信号INNのデューティ比が50%の場合と同様なデューティ比の補正を行うと過剰な補正になる。また、正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNの目標デューティ比が50%よりも大きく、かつ、正相入力信号INPおよび逆相入力信号INNのデューティ比も50%よりも大きいような場合も、正相入力信号INPおよび逆相入力信号INNのデューティ比が50%の場合と同様なデューティ比の補正を行うと過剰な補正になる。そこで、積分補正部4は、このような過剰なデューティ比補正を緩和するため、正相入力信号INPと逆相入力信号INNのデューティ比に応じて積分演算部3の第1の電流I37および第2の電流I38の補正を行う。
【0042】
さらに詳述すると、積分補正部4では、正相入力信号INPが第2のレベル(この例ではLレベル)である期間、Pチャネルトランジスタ41がONとなり、キャパシタ45により定電流源47の電流I4の積分が行われる。また、積分補正部4では、逆相入力信号INNが第2のレベル(この例ではLレベル)である期間、Pチャネルトランジスタ42がONとなり、キャパシタ46により定電流源47の電流I4の積分が行われる。ここで、キャパシタ45および46とこれらのキャパシタに接続された抵抗(例えば抵抗43、44)の時定数は十分に大きい。このため、キャパシタ45の充電電圧である積分補正電圧V45は、正相入力信号INPが第2のレベルである期間の時間密度(すなわち、1−デューティ比)に比例した直流電圧となる。また、キャパシタ46の充電電圧である積分補正電圧V46は、逆相入力信号INNが第2のレベルである期間の時間密度(すなわち、デューティ比)に比例した直流電圧となる。
【0043】
正相入力信号INPおよび逆相入力信号INNのデューティ比が50%よりも小さい場合、積分補正電圧V45が積分補正電圧V46よりも高くなる。この場合、積分演算部3では、Pチャネルトランジスタ33のON抵抗がPチャネルトランジスタ34のON抵抗よりも高くなる。この結果、第2の電流I38よりも第1の電流I37の方がより抑制され、正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNのデューティ比を小さくする補正が過剰に行われることが防止される。
【0044】
また、正相入力信号INPおよび逆相入力信号INNのデューティ比が50%よりも大きい場合、積分補正電圧V46が積分補正電圧V45よりも高くなる。この場合、積分演算部3では、Pチャネルトランジスタ34のON抵抗がPチャネルトランジスタ33のON抵抗よりも高くなる。この結果、第1の電流I37よりも第2の電流I38の方がより抑制され、正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNのデューティ比を大きくする補正が過剰に行われることが防止される。
【0045】
以上のように、本実施形態によるデューティ比調整回路100では、正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNのデューティ比を50%以外も含めた任意の目標デューティ比に調整することができる。
【0046】
(C:シミュレーション)
本出願人は、デューティ比調整回路100の効果をシミュレーションにより確認した。正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNのデューティ比が30%となるように指定したデューティ比調整回路100の動作と、デューティ比調整回路100から直流電圧オフセット補正部2、積分演算部3および積分補正部4を取り除いた回路(以下、通常の差動増幅回路と呼ぶ)の動作とを、周波数を10GHzとしたシミュレーションにより比較した。このシミュレーションでは、正相入力信号INPおよび逆相入力信号INNとして矩形波を用いた。
【0047】
図3は、デューティ比が30%の正相入力信号INPおよび逆相入力信号INNに対するデューティ比調整回路100と通常の差動増幅回路の正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNをシミュレーションした結果を示すタイムチャートである。
図3(a)は、正相入力信号INPおよび逆相入力信号INNの波形を示しており、
図3(b)は、デューティ比調整回路100の正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNの波形を示しており、
図3(c)は、通常の差動増幅回路の正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNの波形を示している。デューティ比調整回路100の目標デューティ比は30%である。
図3(b)に示すように、デューティ比調整回路100の正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNのデューティ比は30%となった。また、
図3(c)に示すように、通常の差動増幅回路の正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNのデューティ比は29.2%となった。このようにデューティ比調整回路100と通常の差動増幅回路とのデューティ比に大きな差は見られない。
【0048】
図4は、デューティ比が50%の正相入力信号INPおよび逆相入力信号INNに対するデューティ比調整回路100と通常の差動増幅回路の正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNをシミュレーションした結果を示すタイムチャートである。
図4(a)は、正相入力信号INPおよび逆相入力信号INNの波形を示しており、
図4(b)は、デューティ比調整回路100の正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNの波形を示しており、
図4(c)は、通常の差動増幅回路の正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNの波形を示している。デューティ比調整回路100の目標デューティ比は30%である。
図4(b)に示すように、デューティ比調整回路100の正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNのデューティ比は35.6%となった。また、
図3(c)に示すように、通常の差動増幅回路の正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNのデューティ比は50%となった。このようにデューティ比調整回路100と通常の差動増幅回路とのデューティ比に大きな差が見られる。通常の差動増幅回路の正相出力信号OUTPおよび正相入力信号OUTNのデューティ比は、正相入力信号INPおよび逆相入力信号INNのデューティ比とほぼ一致する。デューティ比調整回路100の正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNのデューティ比は、目標デューティ比とほぼ一致する。
【0049】
図5は、デューティ比が20%の正相入力信号INPおよび逆相入力信号INNに対するデューティ比調整回路100と通常の差動増幅回路の正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNをシミュレーションした結果を示すタイムチャートである。
図5(a)は、正相入力信号INPおよび逆相入力信号INNの波形を示しており、
図5(b)は、デューティ比調整回路100の正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNの波形を示しており、
図5(c)は、通常の差動増幅回路の正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNの波形を示している。デューティ比調整回路100の目標デューティ比は30%である。
図5(b)に示すように、デューティ比調整回路100の正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNのデューティ比は26.3%となった。また、
図5(c)に示すように、通常の差動増幅回路の正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNのデューティ比は17.5%となった。このようにデューティ比調整回路100と通常の差動増幅回路とのデューティ比に大きな差が見られる。通常の差動増幅回路の正相出力信号OUTPおよび正相入力信号OUTNのデューティ比は、正相入力信号INPおよび逆相入力信号INNのデューティ比とほぼ一致する。デューティ比調整回路100の正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNのデューティ比は、目標デューティ比とほぼ一致する。
【0050】
図6は、上記のシミュレーション結果をまとめたグラフである。
図6の横軸は、正相入力信号INPおよび逆相入力信号INNのデューティ比を示した入力デューティ比であり、縦軸は、正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNのデューティ比を示した出力デューティ比である。
図6に示すように、通常の差動増幅回路では、入力デューティ比を様々な値に変化させると出力デューティ比も同様に変化する。一方、デューティ比調整回路では、入力デューティ比を様々な値に変化させても、出力デューティ比は目標デューティ比となる。以上のように、本実施形態によるデューティ比調整回路100では、正相入力信号INPおよび逆相入力信号INNのデューティ比に拘わらず、正相出力信号OUTPおよび逆相出力信号OUTNのデューティ比を50%以外も含めた任意の目標デューティ比に調整することができる。
【0051】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明には、これ以外にも他の実施形態が考えられる。例えば次の通りである。
(1)上記実施形態では、積分演算部3におけるNチャネルトランジスタ31および32のソースを共通の定電流源に接続したが、別個の定電流源に接続してもよい。
(2)上記実施形態では、積分補正部4におけるPチャネルトランジスタ41および42のソースを共通の定電流源に接続したが、別個の定電流源に接続してもよい。
(3)上記実施形態におけるPチャネルトランジスタをNチャネルトランジスタとし、NチャネルトランジスタをPチャネルトランジスタとし、高電位電源VDDと低電位電源VSSを相互に置き換えてもよい。
(4)上記実施形態では、トランジスタとしてMOSFETを用いたが、バイポーラトランジスタを用いてもよい。