(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固定部材(12)と、前記固定部材との間に圧縮室(15)を形成する可動部材(11)とを有し、前記可動部材が前記固定部材に対して旋回運動することにより、前記圧縮室を変化させて前記圧縮室内に低圧流体を吸入して圧縮して高圧流体を吐出する圧縮機構(10)を備え、
前記固定部材および前記可動部材のうちいずれか一方の部材には、中間圧注入孔(50b、51b)が形成されており、
前記低圧流体の圧力と前記高圧流体の圧力との間の圧力を有する流体を中間圧流体としたとき、前記圧縮室が前記低圧流体を前記高圧流体まで圧縮する圧縮過程の途中で前記中間圧注入孔から気相の前記中間圧流体を前記圧縮室内に注入し、この注入される流体とともに前記圧縮室内の流体を前記高圧流体まで圧縮する圧縮機であって、
前記可動部材が停止したときに、前記固定部材および前記可動部材のうち前記一方の部材以外の他方の部材が前記中間圧注入孔を閉塞して前記圧縮機構が逆回転することを抑制する圧縮機。
複数の巻線(49a、49b、49c)および永久磁石(22b)を有し、前記複数の巻線および前記磁石のうち一方が前記可動部材に支持されて、他方が前記固定部材に支持されている電動モータ部(20)と、
前記複数の巻線に電流を流して前記複数の巻線および前記永久磁石の間に発生される電磁力によって前記可動部材を旋回運動させる回転制御部(S100)と、
前記可動部材が停止したか否かを判定する停止判定部(S130)と、
前記可動部材が停止したと前記停止判定部が判定したときに、前記複数の巻線のうち予め決められた巻線に電流を流して前記予め決められた巻線および前記永久磁石の間に発生される電磁力によって前記可動部材が旋回運動して前記予め決められた位置に停止することにより、前記他方の部材が前記中間圧注入孔を塞ぐ閉塞制御部(S140)と、を備える請求項1に記載の圧縮機。
前記凸部は、前記固定部材および前記可動部材のうち少なくとも一方から前記旋回運動の中心線(S)を中心とする径方向に凸となるように形成されている請求項3に記載の圧縮機。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0014】
(第1実施形態)
図1〜
図4により、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態では、電動圧縮機1を、ヒートポンプ式給湯機にて給湯水を加熱するヒートポンプサイクル(蒸気圧縮式の冷凍サイクル)100に適用している。従って、本実施形態の電動圧縮機1にて圧縮される流体は、ヒートポンプサイクルの冷媒である。
【0015】
ヒートポンプサイクル100は、電動圧縮機1の圧縮室15にて圧縮過程の途中の冷媒に、サイクルの中間圧気相冷媒を合流させるガスインジェクションサイクル(エコノマイザ式冷凍サイクル)として構成されている。
【0016】
より具体的には、本実施形態のヒートポンプサイクル100は、
図1に示すように、電動圧縮機1、水−冷媒熱交換器2、第1膨張弁3、気液分離器4、第2膨張弁5、室外熱交換器6等を有している。
【0017】
水−冷媒熱交換器2は、電動圧縮機1の高圧冷媒流出口40aから吐出された冷媒と給湯水とを熱交換させて給湯水を加熱する加熱用熱交換器である。第1膨張弁3は、水−冷媒熱交換器2から流出した高圧冷媒を中間圧冷媒となるまで減圧させる高段側減圧手段であって、図示しない電子制御装置から出力される制御信号によってその作動が制御される電気式膨張弁である。
【0018】
気液分離器4は、第1膨張弁3にて減圧された中間圧冷媒の気液を分離する気液分離手段である。第2膨張弁5は、気液分離器4の液相冷媒流出口から流出した中間圧液相冷媒を低圧冷媒となるまで減圧させる低段側減圧手段であって、その基本的構成は第1膨張弁3と同様である。室外熱交換器6は、第2膨張弁5にて減圧された低圧冷媒を外気と熱交換させて蒸発させる吸熱用熱交換器である。
【0019】
室外熱交換器6の冷媒出口側には、電動圧縮機1の吸入ポート30aが接続され、気液分離器4の気相冷媒流出口には、電動圧縮機1の中間圧吸入ポート30bが接続されている。従って、本実施形態では、気液分離器4にて分離された中間圧気相冷媒が電動圧縮機1の圧縮室15にて圧縮過程の途中の冷媒に注入される。
【0020】
本実施形態のヒートポンプサイクル100では、冷媒として二酸化炭素を採用しており、電動圧縮機1の吐出ポートから第1膨張弁3入口側へ至るサイクルの高圧側冷媒の圧力が臨界圧力以上となる超臨界冷凍サイクルを構成している。さらに、冷媒には、電動圧縮機1内部の各摺動部位を潤滑する潤滑オイル(冷凍機油)が混入されており、この潤滑オイルの一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
【0021】
なお、ヒートポンプ式給湯機は、ヒートポンプサイクル100の他に、水−冷媒熱交換器2にて加熱された給湯水を貯湯する貯湯タンク、貯湯タンクと水−冷媒熱交換器2との間で給湯水を循環させる給湯水循環回路、および給湯水循環回路に配置されて給湯水を圧送する水ポンプ(いずれも図示せず)等を備えている。
【0022】
次に、
図2、
図3を用いて、電動圧縮機1の詳細構成を説明する。なお、
図2、
図3における上下の各矢印は、電動圧縮機1をヒートポンプ式給湯機に搭載した状態における上下の各方向を示している。
【0023】
本実施形態の電動圧縮機1は、いわゆるスクロール型の圧縮機であり、圧縮機構10、電動モータ部20、ハウジング30、および油分離器40等を有している。
【0024】
圧縮機構10は、圧縮対象流体である冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものである。電動モータ部20は、圧縮機構10を駆動する回転駆動力を出力する三相交流同期型電動機である。ハウジング30は、電動圧縮機1の外殻を形成するとともに、その内部に圧縮機構10および電動モータ部20等を収容するものである。油分離器40は、ハウジング30の外部に配置されて圧縮機構10にて圧縮された高圧冷媒から潤滑オイルを分離するものである。
【0025】
また、本実施形態の電動圧縮機1は、
図2に示すように、電動モータ部20から圧縮機構10へ回転駆動力を伝達する回転軸25が鉛直方向(上下方向)に延びて、圧縮機構10と電動モータ部20が鉛直方向に配置された、いわゆる縦置きタイプに構成されている。より具体的には、この電動圧縮機1では、圧縮機構10が電動モータ部20の下方側に配置されている。
【0026】
ハウジング30は、軸線Sが鉛直方向に延びる円筒状に形成されている筒状部材31と、筒状部材31の上端部を塞ぐ椀状の上蓋部材32と、筒状部材31の下端部を塞ぐ椀状の下蓋部材33とを有し、これらを一体に接合して密閉容器構造としたものである。
【0027】
筒状部材31、上蓋部材32および下蓋部材33は、いずれも鉄あるいは鉄系金属で形成されており、これらの部材はハウジング30への溶接等にて接合されている。
【0028】
ハウジング30の筒状部材31の側壁には、
図2および
図3に示すように、外部接続管310、311、312、313が貫通している。外部接続管310のうち軸線方向の中央側には径方向外側に突起するフランジ部320が設けられている。外部接続管310と同様に、外部接続管311、312、313には、それぞれ、フランジ部320が設けられている。本実施形態の外部接続管310、311、312、313には、吸入ポート30a、中間圧吸入ポート30b、高圧冷媒流出口40a、および潤滑オイル吸入ポート41aが形成されている。
【0029】
外部接続管310には、室外熱交換器6の冷媒出口からの低圧冷媒を圧縮機構10の圧縮室15側に流通させる冷媒流路310aが形成されている。冷媒流路310aの冷媒入口は、吸入ポート30aを構成している。吸入ポート30aは、室外熱交換器6から流出した低圧冷媒を圧縮機構10へ吸入させるための冷媒吸入口である。
【0030】
外部接続管311には、気液分離器4の気相冷媒流出口から流れる中間圧冷媒を第1、第2のインジェクション通路14a、14b側に流通させる冷媒流路311aが形成されている。冷媒流路311aの冷媒入口は、中間圧吸入ポート30bを形成している。
【0031】
中間圧吸入ポート30bは、気液分離器4の気相冷媒流出口から流出した中間圧気相冷媒を圧縮機構10の圧縮室15(本実施形態では、
図3に示す第1、第2圧縮室Va、Vb)にて圧縮過程の冷媒に合流させるための中間圧冷媒吸入口である。
【0032】
外部接続管312(
図2中鎖線で示す)には、吐出孔124から吐出される高圧冷媒を油分離器40の潤滑オイル吸入ポート40bに向けて流通させる冷媒流路が形成されている。
【0033】
外部接続管313には、油分離器40の油流出口431から流れる潤滑オイルを給油流路25a側に供給する潤滑オイル流路313aが形成されている。潤滑オイル流路313aの潤滑オイル入口は、潤滑オイル吸入ポート41aを形成している。潤滑オイル吸入ポート41aは、油分離器40から流れる潤滑オイルを圧縮機構10側に供給するための潤滑オイル吸入口である。
【0034】
電動モータ部20は、ステータ21とロータ22とを有して構成されている。ステータ21は、ステータコア21aおよびステータコイル21bを備える。ステータコア21aは、磁性体等から構成されているもので、ハウジング30の内壁に固定されている。ステータコイル21bは、ステータコア21aに巻回されている。ステータコイル21bは、ステータコア21a、ハウジング30等を介して固定スクロール12に支持されている。ステータコイル21bは、
図5に示すように、U相巻線49a、V相巻線49b、およびW相巻線49cから構成されている。U相巻線49a、V相巻線49b、およびW相巻線49cは、スター結線されている。
【0035】
ロータ22は、磁性体等から構成されて軸線Sを中心とする円筒状に形成されているロータコア22aと、ロータコア22aに埋め込まれている複数の永久磁石22bとを有している。複数の永久磁石22bは、それぞれ、ロータ22の複数の磁極を形成する。ロータ22の軸中心穴には回転軸25が圧入により固定されている。このことにより、複数の永久磁石22bは、ロータコア22aおよび回転軸25を介して可動スクロール11に支持されている。
【0036】
回転軸25は、略円筒状に形成されており、その両端部は、それぞれすべり軸受けにて構成された第1軸受部26、第2軸受部27に回転可能に支持されている。回転軸25の内部には、回転軸25の外表面と第1、第2軸受部26、27との摺動部位に潤滑オイルを供給するための給油流路25aが形成されている。
【0037】
第1軸受部26は、ハウジング30内の空間を電動モータ部20が配置される空間と圧縮機構10が配置される空間とに仕切るように固定されたミドルハウジング28に形成されており、回転軸25の下端側(圧縮機構10側)を回転可能に支持している。ミドルハウジング28は、ハウジング30の内壁に支持されている。第2軸受部27は、介在部材を介してハウジング30の筒状部材31に固定されており、回転軸25の上端側(圧縮機構10の反対側)を回転可能に支持している。
【0038】
圧縮機構10は、可動スクロール11と固定スクロール12とを有して構成されるスクロール型の圧縮機構である。
【0039】
可動スクロール11は、固定スクロール12に対して軸線方向一方側(
図2中上側)に配置されている可動部材である。軸線方向は、軸線Sが延びる方向である。軸線Sは、回転軸25の軸線に一致して、かつ可動スクロール11の旋回運動の中心線に一致する。
【0040】
可動スクロール11は、円板状の可動基板部111、および可動基板部111から固定スクロール12側(すなわち、軸線方向他方側)へ向かって突出して渦巻き状に形成されている可動歯部112を有している可動部材である。
【0041】
固定スクロール12は、円板状の固定基板部121、および固定基板部121から可動スクロール11側(すなわち、軸線方向一方側)へ向かって突出して渦巻き状に形成されている固定歯部122を有している固定部材である。
【0042】
固定スクロール12は、固定基板部121の外周側面がハウジング30の筒状部材31の内周側面に圧入されていることによって、ミドルハウジング28の下方側に固定されている。可動スクロール11は、ミドルハウジング28と固定スクロール12との間に形成される空間に配置されている。
【0043】
可動スクロール11および固定スクロール12は、それぞれの基板部111、121の板面が対向するように配置されているとともに、それぞれの歯部112、122同士が噛み合わされて、一方のスクロールの歯部の先端部が他方のスクロールの基板部に当接するように配置されている。
【0044】
これにより、それぞれの歯部112、122同士が複数箇所で接触し、それぞれの歯部112、122同士の間には、回転軸25の軸線の軸線方向から視たときに三日月形状に形成される圧縮室15が複数形成される。すなわち、圧縮機構10では、可動基板部111、可動歯部112、固定基板部121、および固定歯部122が複数の圧縮室15を形成している。
【0045】
なお、本実施形態の可動スクロール11および固定スクロール12は、アルミニウム等の金属により形成されている。
【0046】
図3では、図示の明確化のため、中間圧吸入ポート30bを介して流入した中間圧冷媒が注入される第1圧縮室Vaおよび第2圧縮室Vbを模式的に図示している。これらの第1圧縮室Vaおよび第2圧縮室Vbは、回転軸25の軸線Sに対して対称となる位置に形成されている。さらに、第1圧縮室Va内の冷媒圧力と第2圧縮室Vb内の冷媒圧力は同等となる。
【0047】
また、可動スクロール11の可動基板部111の上面側の中心部には、回転軸25の下端部(圧縮機構10側の端部)が挿入される円筒状のボス部113が形成されている。一方、回転軸25の下端部は、回転軸25の回転中心線に対して偏心した偏心部25bになっている。従って、可動スクロール11の可動基板部111のボス部113に、回転軸25の偏心部25bが挿入される。回転軸25の回転中心線は、ハウジング30の軸線Sに一致している。
【0048】
さらに、可動スクロール11およびミドルハウジング28の間には、可動スクロール11が偏心部25b周りに自転することを防止する図示しない自転防止機構が設けられている。このため、回転軸25が回転すると、可動スクロール11は偏心部25b周りに自転することなく、回転軸25の回転中心(すなわち、軸線S)を公転中心として旋回運動する。
【0049】
そして、この旋回運動により、前述した圧縮室が容積を縮小しながら、回転軸25回りに、外周側から中心側へ変位する。さらに、本実施形態では、それぞれのスクロールの歯部112、122の先端部に、チップシールを配置することにより、圧縮室15の機密性を向上させている。このようなチップシールとしては、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂で形成されたものを採用することができる。
【0050】
また、吸入ポート30aは、固定スクロール12の固定基板部121の冷媒吸入孔部128aを介して圧縮室15のうち最外周側に連通している。
【0051】
従って、本実施形態の固定スクロール12は、ハウジング30内に冷媒を流通させる通路を形成する通路形成部材としての機能を兼ね備えている。
【0052】
中間圧吸入ポート30bは、固定スクロール12および通路形成プレート14に形成された第1、第2インジェクション通路14a、14bを介して、圧縮室15のうち最外周側から中心側へ変位する過程の中間位置に位置付けられる第1圧縮室Va、第2圧縮室Vbに連通している。従って、本実施形態の通路形成プレート14は、固定スクロール12とともに、通路形成部材を構成している。
【0053】
この通路形成プレート14は、円板状の金属部材で形成されており、固定スクロール12の下方側の面にボルト締め等の固定手段によって固定されている。通路形成プレート14には、固定スクロール12側の面を凹ませること等によって、分岐部14c、第1インジェクション通路14a、第2インジェクション通路14bが形成されている。
【0054】
分岐部14cは、中間圧吸入ポート30bから吸入された中間圧冷媒の流れを分岐する部位である。第1インジェクション通路14aは、分岐部14cにて分岐された一方の中間圧冷媒を中間圧注入孔50b(
図4参照)側(すなわち、第1圧縮室Va側)へ導く冷媒通路である。第2インジェクション通路14bは、分岐部14cにて分岐された他方の中間圧冷媒を中間圧注入孔51b(
図4参照)側(すなわち、第2圧縮室Vb側)へ導く冷媒通路である。
【0055】
第1インジェクション通路14aには、第1逆止弁51が配置されている。第1逆止弁51は、中間圧吸入ポート30bから吸入された中間圧冷媒が中間圧注入孔50b(
図4参照)側に流通することを許容し、中間圧注入孔50bから中間圧吸入ポート30b側に中間圧冷媒が流通することを止める。
【0056】
第2インジェクション通路14bには、第2逆止弁52が配置されている。第2逆止弁52は、中間圧吸入ポート30bから吸入された中間圧冷媒が中間圧注入孔51b(
図4参照)側に流通することを許容し、中間圧注入孔51bから中間圧吸入ポート30b側に中間圧冷媒が流通することを止める。第1、第2逆止弁51、52は、板状部材で形成されたリード弁、およびリード弁が開閉する通路が形成されたシート部材によって構成されている。
【0057】
また、固定スクロール12の固定基板部121の中心部には、圧縮室15で圧縮された高圧冷媒が吐出される主吐出孔123(
図3参照)が形成されている。更に、その中央部分には、主吐出孔123よりも細く主吐出孔123を挟んで径方向外側に配置された一対の副吐出孔126(
図3参照)も形成されている。
【0058】
さらに、固定スクロール12の固定基板部121のうち主吐出孔123の下方側には、主吐出孔123と一対の副吐出孔126とに連通する吐出孔124(
図3参照)が形成されている。吐出孔124には、逆止弁16が設けられている。逆止弁16は、吐出孔124から圧縮室Va、Vb側への冷媒の逆流を防止する吐出弁(リード弁)と吐出弁の最大開度を規制するストッパとから構成されている。
【0059】
ここで、吐出孔124には、外部接続管312(
図2参照)が嵌め込まれている。外部接続管312には、吐出孔124から吐出される高圧冷媒を油分離器40の潤滑オイル吸入ポート40bに導く流路が形成されている。外部接続管312の高圧冷媒流出口と油分離器40の潤滑オイル吸入ポート40bとは冷媒配管によって接続されている。
【0060】
油分離器40は、鉛直方向に延びる筒状部材41を有し、その内部に形成された空間で圧縮機構10にて昇圧された冷媒を旋回させ、遠心力の作用によって気相冷媒と潤滑オイルとを分離するものである。
【0061】
油分離器40にて分離された高圧気相冷媒は、油分離器40の上方側に形成された高圧冷媒流出口40aから水−冷媒熱交換器2(すなわち、外部機器)側へ吐出される。一方、油分離器40のうち下方側部位は、冷媒から分離された潤滑油を貯める貯油タンクとしての役割を果たす。油分離器40の下蓋部材43には、貯められた潤滑油を油分離器40外部に流出させる油流出口431が形成されている。
【0062】
油流出口431には、油配管46が接続されている。油配管46は、油流出口431から可動側給油流路114に潤滑油を導く給油流路46aを備えるものである。油配管46は、外部接続管313に接続されている。油配管46は、外部接続管313の軸線方向一方側を径方向外側から覆うように形成されている。
【0063】
外部接続管313は、ハウジング30の筒状部材31を貫通し、固定基板部121の側面に形成された挿入穴129に挿入されている。本実施形態では、固定側給油流路127のうち外部接続管313の出口側には、潤滑油を濾過するフィルタ127aが配置されている。
【0064】
固定基板部121の内部には、油分離器40からの潤滑油が流れる固定側給油流路127が形成されている。可動基板部111の内部には、固定側給油流路127と間欠的に連通する可動側給油流路114が形成されている。固定側給油流路127の一端部は挿入穴129に連通している。固定側給油流路127の他端部は固定基板部121の上面(可動基板部111側の面)に開口している。
【0065】
可動側給油流路114の一端部は、固定側給油流路127の他端部と対向するように、可動基板部111の下面(固定基板部121側の面)に開口している。これにより、可動スクロール11の旋回運動に伴って可動側給油流路114の一端部が固定側給油流路127の他端部と重なったりずれたりすることとなるので、可動側給油流路114が固定側給油流路127と間欠的に連通する。
【0066】
固定側給油流路127のうち可動スクロール11側の端部には、筒状の間欠ピン50が収納されている。間欠ピン50は、固定側給油流路127に形成された収容部51aに収容されている。
【0067】
間欠ピン50は、油分離器40内の圧力、換言すれば圧縮室15で圧縮された高圧冷媒の圧力により可動スクロール11側に押圧される。これにより、間欠ピン50の上端面が可動スクロール11の下面(摺動面)に押し当てられる。
【0068】
このため、固定側給油流路127からの潤滑油が、固定スクロール12と可動スクロール11との間の僅かな間隙に漏れ出すことなく、間欠ピン50の内部を流れて可動側給油流路114に流入することができる。
【0069】
可動側給油流路114の他端部(固定側給油流路127と反対側の端部)は、可動スクロール11のボス部113の内面最下部に開口している。このため、可動側給油流路114が固定側給油流路127と連通すると、油分離器40からの潤滑油がボス部113と回転軸25の偏心部25bとの間の隙間に導入され、次いで回転軸25の下端部側から回転軸25の給油流路25aに流入する。
【0070】
回転軸25には、給油流路25aから可動スクロール11のボス部113に向かって径方向外側に延びる貫通孔255が形成されている。また、回転軸25には、
図2に示すように、給油流路25aからミドルハウジング28の軸受け26に向かって径方向外側に延びる貫通孔253と、給油流路25aから軸受け27に向かって径方向外側に延びる貫通孔257とが形成されている。
【0071】
このため、給油流路25aに流入した潤滑油は、これら貫通孔253、255、257を通じて、回転軸25とボス部113との間、回転軸25と軸受け26との間、および回転軸25と軸受け27との間の各摺動部(潤滑対象部位)に供給される。
【0072】
回転軸25と軸受け26との間に供給された潤滑油は、重力によってミドルハウジング28の中心孔を流下し、2枚のスラストプレート13、14の間に供給される。2枚のスラストプレート13、14の間に供給された潤滑油は、可動基板部111の外周側に形成された隙間(ミドルハウジング28の内周面との隙間)を流下し、次いで固定基板部121を上下方向に貫通する油流下流路(図示せず)を流下して、ハウジング30内の最下部に形成された貯油室35に至る。
【0073】
貯油室35は、固定スクロール12および通路形成プレート14の下方側に形成されている。通路形成プレート14には、上下方向に貫通する貫通孔181が形成されている。貫通孔181は、固定基板部121の冷媒吸入孔部128と連通している。貫通孔181には、貯油室35に貯められた潤滑油を吸い上げるパイプ182が下方側(貯油室35側)から挿入されている。貯油室35の潤滑油は、パイプ182、通路形成プレート14の貫通孔181、および固定基板部121の冷媒吸入孔部128を通じて圧縮室15に供給される。
【0074】
次に、本実施形態の電動圧縮機1の電気回路構成について
図5を参照して説明する。
【0075】
電動圧縮機1は、
図5に示すように、電圧センサ61a、61b、61c、電流センサ61d、インバータ回路62、および制御回路63を備える。
【0076】
インバータ回路62は、トランジスタSW1、SW2、SW3、SW4、SW5、SW6、および還流ダイオードD1、D2、D3、D4、D5、D6から構成される周知の駆動回路である。
【0077】
トランジスタSW1、SW2、SW3は、正極母線62aに接続されている。正極母線62aには、電源Baの正極電極が接続されている。トランジスタSW4、SW5、SW6は、負極母線62bに接続されている。負極母線62bには、電源Baの負極電極が接続されている。正極母線62aおよび負極母線62bは、インバータ回路62における2つの電源入力電極を構成している。
【0078】
トランジスタSW1、SW4は、正極母線62aおよび負極母線62bの間に直列接続されている。トランジスタSW2、SW5は、正極母線62aおよび負極母線62bの間に直列接続されている。トランジスタSW3、SW6は、正極母線62aおよび負極母線62bの間に直列接続されている。
【0079】
トランジスタSW1、SW4の間の共通接続端子T1は、ステータコイル49のW相巻線49cに接続されている。トランジスタSW2、SW5の間の共通接続端子T2は、ステータコイル49のV相巻線49bに接続されている。トランジスタSW3、SW6の間の共通接続端子T3は、ステータコイル49のU相巻線49aに接続されている。
【0080】
なお、トランジスタSW1、SW2、SW3、SW4、SW5、SW6としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の各種半導体スイッチング素子が用いられる。
【0081】
制御回路63は、マイクロコンピュータやメモリ等から構成されて、メモリに予め記憶されているコンピュータプログラムにしたがって、インバータ回路62を介して制御処理を実行する。制御回路63は、回転数制御処理を実行する際に、電子制御装置からの通信信号、電圧センサ61a、61b、61cの出力信号、および電流センサ61dの出力信号に基づいてインバータ回路62を介してロータ22を制御する。
【0082】
ここで、電圧センサ61aは、U相巻線49aの正極電極および負極電極の間の電圧を検出する。電圧センサ61bは、V相巻線49bの正極電極および負極電極の間の電圧を検出する。電圧センサ61cは、W相巻線49cの正極電極および負極電極の間の電圧を検出する。以下、U相巻線49a、V相巻線49b、W相巻線49cのそれぞれの正極電極および負極電極の間の電圧を端子間電圧という。
【0083】
電流センサ61dは、インバータ回路62の共通接続端子T1、T2、T3とU相巻線49a、V相巻線49b、W相巻線49cとの間に流れる三相交流電流を検出する。
【0084】
本実施形態のインバータ回路62および制御回路63は、ハウジング30の外側に装着されている。
【0085】
次に、本実施形態の電動圧縮機1の作動の概略を説明する。
【0086】
まず、ロータ22がU相巻線49a、V相巻線49b、W相巻線49cからの回転磁界に同期して回転すると、ロータ22の回転力が回転軸25を通して可動スクロール11に出力される。すると、可動スクロール11が固定スクロール12に対して旋回運動する。
【0087】
このとき、室外熱交換器6の冷媒出口から電動圧縮機1の吸入ポート30a、および冷媒吸入孔部128を通して圧縮室15に供給される。これと同時に、貯油室35の潤滑油がパイプ182、通路形成プレート14の貫通孔181および固定基板部121の冷媒吸入孔部128を通じて圧縮室15に供給される。
【0088】
これにより、可動基板部111、固定基板部121、可動歯部112、および固定歯部122によって形成された三日月状の圧縮室15が外周側から中心側へ容積を減少させつつ、外周側から中心側へ回転軸25を中心として旋回しながら移動する。この際に、低圧冷媒が流入した圧縮室15は、回転軸25の回転に伴って、その容積を縮小させながら移動する。
【0089】
この際、第1、第2圧縮室Va、Vb側の冷媒圧力P1よりも中間圧吸入ポート30b側の中間圧気相冷媒の圧力P2が高くなっている状態では、第1、第2圧縮室Va、Vb側の冷媒圧力P1と中間圧吸入ポート30b側の冷媒圧力P2との圧力差によって、第1、第2逆止弁51、52が開く。これにより、気液分離器4にて分離されて中間圧吸入ポート30bから吸入された中間圧気相冷媒が、中間圧注入孔50b、51bから第1、第2圧縮室Va、Vbへ注入される。
【0090】
さらに、回転軸25の回転に伴って圧縮室の容積が縮小し、第1、第2圧縮室Va、Vb側の冷媒圧力P1が中間圧吸入ポート30b側の冷媒圧力P2を上回ると、第1、第2圧縮室Va、Vb側の冷媒圧力P1と中間圧吸入ポート30b側の冷媒圧力P2との圧力差によって、第1、第2逆止弁51、52が閉じる。これにより、圧縮室Vc側から中間圧吸入ポート30b側へ冷媒が逆流してしまうことが防止される。
【0091】
さらに、回転軸25の回転に伴って圧縮室15が中心側の固定スクロール12の主吐出孔123へ連通する位置に移動し、圧縮室Vc内の高圧冷媒の圧力が吐出弁の開弁圧を超えると吐出弁が開く。
【0092】
これにより、高圧冷媒が吐出孔124へ吐出される。吐出孔124へ吐出された高圧冷媒は、遠心分離方式にて、油分離器40で潤滑オイルが分離されて、この潤滑オイルが除かれた高圧冷媒は、高圧冷媒流出口40aから水−冷媒熱交換器2の冷媒入口に吐出される。
【0093】
一方、高圧冷媒から分離された潤滑油は、重力によって油分離器40内部を流下して油分離器40内の下部に貯められる。油分離器40内に貯められた潤滑油は、回転軸25の給油流路25a側に間欠的に供給される。
【0094】
具体的には、上述のごとく、可動スクロール11の旋回運動に伴って可動スクロール11の可動側給油流路114が固定スクロール12の固定側給油流路127と間欠的に連通する。このとき、油分離器40内部の高圧圧力とハウジング30のうち軸受け27、26側の低圧圧力との差圧によって、油分離器40内に貯められた潤滑油が、油配管46の給油流路46a、外部接続管313の潤滑オイル流路313a、固定側給油流路127、および可動側給油流路114を通じて、可動スクロール11のボス部113と回転軸25の偏心部256との間の隙間に導入され、次いで回転軸25の下端部側から回転軸25の内部の給油流路25aに流入する。
【0095】
ここで、間欠ピン50は、油分離器40内の圧力、換言すれば圧縮室15で圧縮された高圧冷媒の圧力により可動スクロール11側に押圧される。これにより、間欠ピン50の上端面が可動スクロール11の下面(摺動面)に押し当てられる。
【0096】
このため、固定側給油流路127からの潤滑油が、間欠ピン50内の給油孔501を流れて可動側給油流路114に流入することができるので、回転軸25の給油流路25aへの潤滑油の供給を確実に行うことができる。
【0097】
回転軸25の給油流路25aに供給された潤滑油は、回転軸25の貫通孔255、256、257を通じて回転軸25と軸受け26との間、および回転軸25と軸受け27との間に供給される。これにより、回転軸25の摺動部(潤滑対象部位)で潤滑性を良好に維持できる。
【0098】
回転軸25と軸受け26との間に供給された潤滑油は、重力によってミドルハウジング29の中心孔を流下し、2枚のスラストプレート13、14の間に供給される。これにより、スラストプレート13、14同士の摺動部で潤滑性を良好に維持できる。
【0099】
2枚のスラストプレート13、14の間に供給された潤滑油は、可動基板部111の外周側に形成された隙間(ミドルハウジング29の内周面との隙間)を流下し、次いで固定基板部121を上下方向に貫通する油流下流路(図示せず)を流下して、ハウジング30内の最下部に形成された貯油室35に至る。
【0100】
以上の如く、本実施形態の電動圧縮機1の圧縮機構10は、低圧冷媒を吸入し、圧縮して高圧冷媒を吐出することができる。
【0101】
次に、本実施形態の制御回路63の回転制御処理について
図6を参照して説明する。
図6は、回転数制御処理を示すフローチャートである。制御回路63は、
図6のフローチャートにしたがって、回転数制御処理を実行する。回転数制御処理の実行は、電子制御装置からの制御開始指令によって開始される。
【0102】
まず、ステップ100(回転制御部)において、制御回路63は、回転数制御処理を実行する。具体的には、制御回路63は、インバータ回路62のトランジスタSW1、・・・SW6をスイッチング制御して、インバータ回路62の共通接続端子T1、T2、T3から三相交流電流がステータコイル49に流れる。このため、ステータコイル49において、U相巻線49a、V相巻線49b、W相巻線49cが回転磁界をロータ22の複数の磁極に与える。したがって、ロータ22は、回転軸25とともに、ステータコイル49から与えられた回転磁界に同期して回転する。
【0103】
このとき、制御回路63は、電流センサ61dにより検出される三相交流電流に基づいてロータ22の回転数を算出し、この算出される回転数を目標回転数に近づけるように、トランジスタSW1、・・・SW6をスイッチング制御してインバータ回路62から三相交流電流をステータコイル49に出力させる。このため、ステータコイル49から与えられた回転磁界に追従してロータ22を回転してロータ22の回転数が目標回転数に近づくことになる。
【0104】
このようなロータ22の回転に伴って、ロータ22がその回転力を回転軸25を通して可動スクロール11に出力する。このため、可動スクロール11が固定スクロール12に対して旋回運動する。したがって、上述の如く、圧縮機構10は、低圧冷媒を吸入し、圧縮して高圧冷媒を吐出する。
【0105】
次に、ステップ120において、制御回路63は、電子制御装置からの停止指令を受けた否かを判定する。
【0106】
制御回路63は、電子制御装置からの停止指令を受けたとき、ステップ120においてYESと判定する。このとき、制御回路63は、トランジスタSW1、SW2、SW3、SW4、SW5、SW6をオフする。このため、インバータ回路62の共通接続端子T1、T2、T3から三相交流電流がステータコイル49に流れることが停止される。よって、ステータコイル49からの回転磁界が発生することが停止される。
【0107】
その後、ステップ130(停止判定部)において、ロータ22が停止したか否かを判定する。具体的には、電圧センサ61a、61b、61cの出力信号に基づいて、U相巻線49aの端子間電圧、V相巻線49bの端子間電圧、およびW相巻線49cの端子間電圧のそれぞれが所定値未満であるか否かを判定する。
【0108】
ここで、ロータ22が回転しているとき、ロータ22の複数の磁極から発生される磁界に基づいて、U相巻線49a、V相巻線49b、W相巻線49cには、逆起電圧が誘導される。
【0109】
U相巻線49aの端子間電圧、V相巻線49bの端子間電圧、およびW相巻線49cの端子間電圧のそれぞれが所定値以上であるときには、ロータ22が停止していなく、ロータ22が回転しているとして、ステップ130でNOと判定する。これに伴い、ステップ130に戻る。このため、U相巻線49aの端子間電圧、V相巻線49bの端子間電圧、およびW相巻線49cの端子間電圧のそれぞれが所定値以上である限り、ステップ130のNO判定を繰り返す。
【0110】
その後、U相巻線49aの端子間電圧、V相巻線49bの端子間電圧、およびW相巻線49cの端子間電圧のそれぞれが所定値未満になると、ロータ22の停止を確認したとして、ステップ130でYESと判定する。
【0111】
次に、ステップ140(閉塞制御部)において、U相巻線49aおよびV相巻線49bに通電して、可動スクロール11によって中間圧注入孔50b、51bをそれぞれ塞ぐ処理を実行する。
【0112】
具体的には、トランジスタSW3、SW5をそれぞれオンし、かつトランジスタSW1、SW2、SW4、SW6をそれぞれオフする。このため、電源Baの正極電極からの電流が正極母線62a、トランジスタSW3、U相巻線49a、V相巻線49b、トランジスSW5、および負極母線62bを通して電源Baの負極電極に流れる。
【0113】
この際、U相巻線49aおよびV相巻線49bのそれぞれから磁界が発生する。このため、ロータ22は、U相巻線49aおよびV相巻線49bのそれぞれから磁界に基づく電磁力によって回転して、予め決められた位置で停止する。このようなロータ22の作動に伴って、可動スクロール11は、固定スクロール12に対して旋回運動して予め決められた位置で停止することになる。このとき、可動スクロール11の可動歯部112が、中間圧注入孔50b、51bを塞ぐことになる。
【0114】
以上説明した本実施形態によれば、電動圧縮機1は、固定スクロール12との間に圧縮室15を形成する可動スクロール11を有し、可動スクロール11が固定スクロール12に対して旋回運動することにより、圧縮室15内に低圧冷媒を吸入して圧縮して高圧冷媒を吐出するスクロール型の圧縮機構10を備える。固定スクロール12には、中間圧注入孔50b、51bが形成されている。圧縮機構10は、圧縮室15が低圧冷媒を高圧冷媒まで圧縮する圧縮過程の途中で中間圧注入孔50b、51bから中間圧冷媒を圧縮室15内に注入し、この注入される冷媒とともに圧縮室15内の冷媒を高圧冷媒まで圧縮する。
【0115】
制御回路63は、可動スクロール11が停止したと判定したときに、インバータ回路62を制御して、電源Baの正極電極および負極電極の間でU相巻線49a、およびV相巻線49bを介して電流を流す。このため、ロータ22は、U相巻線49aおよびV相巻線49bのそれぞれから磁界に基づく電磁力によって回転して、予め決められた位置で停止する。これにより、可動スクロール11は、固定スクロール12に対して旋回運動して予め決められた位置で停止する。このとき、可動スクロール11の可動歯部112が、中間圧注入孔50b、51bを塞ぐことになる。
【0116】
これにより、遮断弁を用いることなく、電動モータ部20により可動スクロール11を変位させて、中間圧注入孔50b、51bを閉塞することができる。
【0117】
(第2実施形態)
本第2実施形態では、上記第1実施形態において、可動スクロール11が中間圧注入孔50b、51bをそれぞれ塞いだ状態で、固定スクロール12と可動スクロール11とを接触させて可動スクロール11が移動することを抑える例について説明する。
【0118】
図7に本実施形態の圧縮機構10の断面であって、上記第1実施形態の
図4に対応する断面図である。
図8は
図7中VIII−VIII断面図である。
【0119】
固定スクロール12の固定歯部122には、凸部12aが設けられている。凸部12aは、可動スクロール11の可動基板部111側(すなわち、軸線方向一方側)に凸となるように形成されている。
【0120】
凸部12aのうち軸線方向一方側には、可動スクロール11の旋回方向に滑らかに傾斜する傾斜面12bが設けられている。可動スクロール11の旋回方向とは、圧縮機構10が冷媒を吸入し圧縮する際に、可動スクロール11が回転軸25の軸線Sを中心として旋回する方向(
図7中時計回り方向)のことである。可動スクロール11の旋回方向に対する反対方向を反旋回方向という。
【0121】
凸部12aのうち旋回方向には、軸線方向に平行であるストッパ面12cが設けられている。ストッパ面12cは、傾斜面12bに対して旋回方向に位置する。
【0122】
可動スクロール11の可動基板部111には、凸部11aが設けられている。凸部11aは、固定スクロール12の固定歯部122側(すなわち、軸線方向他方側)に凸となるように形成されている。凸部11aのうち反旋回方向には、可動スクロール11の旋回方向に滑らかに傾斜する傾斜面11bが設けられている。凸部11aのうち反旋回方向には、軸線方向に平行であるストッパ面11cが設けられている。ストッパ面11cは、傾斜面11bに対して反旋回方向に位置する。
【0123】
このように構成される本実施形態では、制御回路63が
図6のステップ140においてU相巻線49aおよびV相巻線49bに通電する処理を実行すると、U相巻線49aおよびV相巻線49bとロータ22との間の電磁力によってロータ22が回転して予め決められた位置で停止する。これに伴って、可動スクロール11の可動歯部112が、固定スクロール12に対して旋回運動して予め決められた位置で停止して中間圧注入孔50b、51bをそれぞれ塞ぐことになる。
【0124】
このとき、圧縮室15内の冷媒圧力が低くなるため、可動スクロール11が固定スクロール12に対して軸線方向で近づいた状態になる。このため、可動スクロール11の凸部11aのストッパ面11cが固定スクロール12の凸部12aのストッパ面12cに対して旋回方向に位置して、ストッパ面12cとストッパ面11cが接触する。つまり、可動スクロール11および固定スクロール12が凸部11a、凸部12aによって接触する。
【0125】
これにより、固定スクロール12の凸部12aのストッパ面12cおよび可動スクロール11の凸部11aのストッパ面11cの間に摩擦力が発生する。このことにより、可動スクロール11の静止トルクが増大化するため、可動スクロール11が反旋回方向に旋回することを抑制することになる。静止トルクとは、可動スクロール11が静止を維持しようとするトルクである。
【0126】
一方、制御回路63がステップ100において回転数制御処理を実行する際に、圧縮室15内の冷媒圧力により、可動スクロール11の凸部11aのストッパ面11cが固定スクロール12の固定歯部122の凸部12aのストッパ面12cに対して軸線方向に離れた状態で、可動スクロール11が固定スクロール12に対して旋回運動する。
【0127】
この際に、可動スクロール11の可動基板部111が凸部12aのうち傾斜面12bにて接触したり、固定スクロール12の固定歯部122が凸部11aのうち傾斜面11bにて接触したりするものの、凸部11aのストッパ面11cが凸部12aのストッパ面12cに接触しない。このため、可動スクロール11および固定スクロール12の摩擦力を小さくすることができるので、可動スクロール11は、固定スクロール12に対して円滑に旋回することができる。
【0128】
以上説明した本実施形態によれば、可動スクロール11が予め決められた位置で停止して可動歯部112が中間圧注入孔50b、51bを閉塞する際に、固定スクロール12の凸部12aのストッパ面12cに対して可動スクロール11の凸部11aのストッパ面11cが接触する。これにより、凸部12aのストッパ面12cおよび凸部11aのストッパ面11cの間の摩擦力が発生する。このことにより、可動スクロール11の静止トルクが増大化する。
【0129】
ここで、可動スクロール11の可動歯部112が中間圧注入孔50b、51bを塞いでも、圧縮室15内の冷媒圧力が高いと可動スクロール11に逆転力が発生する恐れがある。
逆転力とは、可動スクロール11が反旋回方向に旋回させる力である。
【0130】
そこで、本実施形態では、上述の如く、ストッパ面12c、11cの間の摩擦力によって可動スクロール11の静止トルクを増大化させる。このため、可動スクロール11が反旋回方向に旋回することを抑制することになる。
【0131】
(第3実施形態)
上記第2実施形態では、固定スクロール12の固定歯部122において軸線方向に凸となる凸部を設けた例について説明したが、これに代えて、本第3実施形態では、固定スクロール12の固定歯部122において回転軸25の軸線Sを中心とする径方向内側に凸となる凸部12dを設ける例について説明する。
【0132】
図9に本実施形態の圧縮機構10の断面であって、上記第1実施形態の
図4に対応する断面図である。
図10は
図9中A部分の拡大図である。
【0133】
固定スクロール12の固定歯部122には、径方向内側に凸となる凸部12dが設けられている。凸部12dのうち先端部に対して反旋回方向には、旋回方向に滑らかに傾斜する傾斜面12eが設けられている。本実施形態の可動スクロール11には、凸部が設けられていない。
【0134】
このように構成されている本実施形態では、制御回路63が上記第1実施形態と同様、U相巻線49aおよびV相巻線49bに通電する処理(
図6のステップ140)を実行すると、U相巻線49aおよびV相巻線49bとロータ22との間の電磁力によって可動スクロール11が固定スクロール12に対して旋回運動して予め決められた位置で停止して可動歯部112が中間圧注入孔50b、51bをそれぞれ塞ぐことになる。
【0135】
このとき、固定スクロール12の固定歯部122の凸部12dの先端側が可動スクロール11の可動基板部111の外周部に接触する。これにより、固定スクロール12の固定歯部122の凸部12dと可動スクロール11の可動基板部111との間の摩擦力が発生する。このことにより、可動スクロール11の静止トルクが増大化するため、可動スクロール11が反旋回方向に旋回することを抑制することになる。
【0136】
また、制御回路63がステップ100において回転数制御処理を実行する際に、可動スクロール11が固定スクロール12に対して旋回運動する。この際に、固定スクロール12の傾斜面12eに可動スクロール11の可動基板部111が接触することにより、可動スクロール11が固定スクロール12に対して滑らかに旋回運動する。
【0137】
以上説明した本実施形態によれば、固定スクロール12の固定歯部122には、径方向内側に凸となる凸部12dが設けられている。制御回路63が上記第1実施形態と同様、U相巻線49aおよびV相巻線49bに通電する処理(
図6のステップ140)を実行して、可動スクロール11が中間圧注入孔50b、51bを閉塞した状態で、固定スクロール12の凸部12dの先端部が可動スクロール11の可動歯部112に接触する。このため、固定スクロール12および可動スクロール11の間の摩擦力が発生する。このことにより、可動スクロール11の静止トルクが増大化するため、可動スクロール11が反旋回方向に旋回することを防止することができる。
【0138】
(他の実施形態)
(1)上記第1〜第3実施形態では、冷媒として二酸化炭素を採用した例について説明したが、これに代えて、冷媒として二酸化炭素以外の流体を用いてもよい。この場合、ヒートポンプサイクル100として超臨界冷凍サイクルを構成する場合に限らず、高圧冷媒の圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルをヒートポンプサイクル100として構成してもよい。
【0139】
(2)上記第1〜第3実施形態では、電動圧縮機1を冷凍サイクルに適用した例について説明したが、冷凍サイクル以外の装置に電動圧縮機1を適用してもよい。この場合、電動圧縮機1が圧縮する圧縮対象流体としては、冷媒以外のものでもよい。
【0140】
(3)上記第1〜第3実施形態では、固定スクロール12に中間圧注入孔50b、51bを設けた例について説明したが、これに代えて、可動スクロール11に中間圧注入孔50b、51bを設けてもよい。
【0141】
この場合、制御回路63は、可動スクロール11が停止したと判定したときに、インバータ回路62を制御して、電源Baの正極電極および負極電極の間でU相巻線49a、およびV相巻線49bを介して電流を流す。これにより、可動スクロール11は、ロータ22およびU相巻線49aおよびV相巻線49bの間の電磁力によって回転して、予め決められた位置で停止する。これにより、固定スクロール12の固定歯部122が中間圧注入孔50b、51b等を塞ぐことになる。
【0142】
(4)上記第1〜第3実施形態では、制御回路63がステップ140の制御処理を実行する際に、可動スクロール11が中間圧注入孔50b、51bを閉塞する例について説明したが、可動スクロール11が中間圧注入孔50b、51b、主吐出孔123、および副吐出孔126を閉塞してもよい。
【0143】
ここで、可動スクロール11が停止したとき、吐出孔124から主吐出孔123や副吐出孔126を介して圧縮室15内に高圧冷媒が戻ると、可動スクロール11が反旋回方向に回転する恐れがある。
【0144】
そこで、制御回路63は、可動スクロール11が停止したと判定した後、インバータ回路62を介して可動スクロール11を制御して主吐出孔123、および副吐出孔126をそれぞれ閉塞する。このため、可動スクロール11が停止したとき、吐出孔124から主吐出孔123や副吐出孔126を介して圧縮室15内に高圧冷媒が戻ることが抑制されるので、可動スクロール11に逆転力が発生することを抑制することができる。逆転力は、旋回方向に対する反対方向に可動スクロール11を回転させる回転力である。
【0145】
上記第1〜第3実施形態では、逆止弁16が吐出孔124内に配置されている。このため、吐出孔124から主吐出孔123や副吐出孔126を通して圧縮室15に冷媒が逆流することを防止することができる。したがって、可動スクロール11に逆転力が発生することをより一層抑制することができる。
【0146】
(5)上記第1〜第3実施形態では、本発明の圧縮機として、インバータ回路62および制御回路63を備える電動圧縮機1を用いた例について説明したが、これに代えて、インバータ回路62および制御回路63を備えない圧縮機を本発明の圧縮機としてもよい。
【0147】
(6)上記第1〜第3実施形態では、ステータコイル49に発生する逆起電圧に基づいてロータ22が停止したか否かを判定した例について説明したが、これに代えて、次の(6a)、(6b)のようにしてもよい。
(6a)ロータ22から漏れる磁界を検出する磁気センサを採用して、磁気センサの検出値に基づいてロータ22が停止したか否かを判定する。
(6b)光学式の回転センサを用いてロータ22が停止したか否かを判定する。
【0148】
(7)上記第1〜第3実施形態では、制御回路63がステップ140において、インバータ回路62のトランジスタSW3、SW5をそれぞれオンし、かつトランジスタSW1、SW2、SW4、SW6をそれぞれオフしてU相巻線49a、およびV相巻線49bに通電した例について説明したが、これに限らず、可動スクロール11の形状や、中間圧注入孔50b、51b等の位置によっては、次の(7a)〜(7h)のようにしてもよい。
(7a)トランジスタSW2、SW6をそれぞれオンし、かつトランジスタSW1、SW3、SW4、SW5をそれぞれオフする。このため、電源Baの正極電極からの電流が正極母線62a、トランジスタSW2、V相巻線49b、U相巻線49a、トランジスSW6、および負極母線62bを通して電源Baの負極電極に流れる。
(7b)トランジスタSW3、SW4をそれぞれオンし、かつトランジスタSW1、SW2、SW5、SW6をそれぞれオフする。このため、電源Baの正極電極からの電流が正極母線62a、トランジスタSW3、U相巻線49a、W相巻線49c、トランジスSW4、および負極母線62bを通して電源Baの負極電極に流れる。
(7c)トランジスタSW1、SW6をそれぞれオンし、かつトランジスタSW2、SW3、SW4、SW5をそれぞれオフする。このため、電源Baの正極電極からの電流が正極母線62a、トランジスタSW1、W相巻線49c、U相巻線49a、トランジスSW6、および負極母線62bを通して電源Baの負極電極に流れる。
(7d)トランジスタSW2、SW4をそれぞれオンし、かつトランジスタSW1、SW3、SW5、SW6をそれぞれオフする。このため、電源Baの正極電極からの電流が正極母線62a、トランジスタSW2、V相巻線49b、W相巻線49c、トランジスSW4、および負極母線62bを通して電源Baの負極電極に流れる。
(7e)トランジスタSW1、SW5をそれぞれオンし、かつトランジスタSW2、SW3、SW4、SW6をそれぞれオフする。このため、電源Baの正極電極からの電流が正極母線62a、トランジスタSW1、W相巻線49c、V相巻線49b、トランジスSW5、および負極母線62bを通して電源Baの負極電極に流れる。
(7f)トランジスタSW3、SW4、SW5をそれぞれオンし、かつトランジスタSW1、SW2、SW6をそれぞれオフする。
【0149】
このため、電源Baの正極電極から正極母線62a、トランジスタSW3、およびU相巻線49aに流れる電流のうち一部の電流が、V相巻線49b、トランジスSW5、および負極母線62bを通して電源Baの負極電極に流れる。これに加えて、電源Baの正極電極から正極母線62a、トランジスタSW3、およびU相巻線49aに流れる電流のうち一部の電流以外の残りの電流がW相巻線49c、トランジスSW4、負極母線62bを通して電源Baの負極電極に流れる。
(7g)トランジスタSW2、SW4、SW6をそれぞれオンし、かつトランジスタSW1、SW3、SW5をそれぞれオフする。
【0150】
このため、電源Baの正極電極から正極母線62a、トランジスタSW2、およびV相巻線49bに流れる電流のうち一部の電流が、トランジスSW6、U相巻線49a、負極母線62bを通して電源Baの負極電極に流れる。これに加えて、電源Baの正極電極から正極母線62a、トランジスタSW2、およびV相巻線49bに流れる電流のうち一部の電流以外の残りの電流がW相巻線49c、トランジスSW4、および負極母線62bを通して電源Baの負極電極に流れる。
(7h)トランジスタSW1、SW5、SW6をそれぞれオンし、かつトランジスタSW2、SW3、SW4をそれぞれオフする。
【0151】
このため、電源Baの正極電極から正極母線62a、トランジスタSW1、およびW相巻線49cに流れる電流のうち一部の電流が、U相巻線49a、トランジスSW6、負極母線62bを通して電源Baの負極電極に流れる。これに加えて、電源Baの正極電極から正極母線62a、トランジスタSW1、およびW相巻線49cに流れる電流のうち一部の電流以外の残りの電流がV相巻線49b、トランジスSW5、および負極母線62bを通して電源Baの負極電極に流れる。
【0152】
(8)上記第1〜第3実施形態では、電動モータ部20として、同期型電動機を用いた例について説明したが、これに限らず、直流電動機を用いてもよい。或いは、N≠3としたときのN相交流同期型電動機を電動モータ部20としてもよい。
【0153】
(9)上記第1〜第3実施形態では、U相巻線49a、V相巻線49b、W相巻線49cによってステータ21を構成し、かつ複数の永久磁石22bによってロータ22を構成した例について説明したが、これに代えて、次のようにしてもよい。
【0154】
すなわち、U相巻線49a、V相巻線49b、W相巻線49cによってロータ22を構成し、かつ複数の永久磁石22bによってステータ21を構成してもよい。つまり、U相巻線49a、V相巻線49b、W相巻線49cが可動スクロール11に支持されて、複数の永久磁石22bがハウジング30に支持されることになる。
【0155】
(10)上記第1〜第3実施形態では、U相巻線49a、V相巻線49b、W相巻線49cをスター結線したステータコイル21bを用いた例について説明したが、U相巻線49a、V相巻線49b、W相巻線49cをデルタ結線したステータコイル21bを用いてもよい。
【0156】
(11)上記第2実施形態では、可動スクロール11に軸線方向他方側に凸となる凸部11aを設け、固定スクロール12に軸線方向一方側に凸となる凸部12aを設けた例について説明したが、これに代えて、次の(11a)(11b)のようにしてもよい。
(11a)軸線Sを中心とする径方向内側に凸となる凸部11aを可動スクロール11に設け、軸線Sを中心とする径方向外側に凸となる凸部12aを固定スクロール12に設ける。
(11b)軸線Sを中心とする径方向外側に凸となる凸部11aを可動スクロール11に設け、軸線Sを中心とする径方向内側に凸となる凸部12aを固定スクロール12に設ける。
【0157】
(12)上記第3実施形態では、固定スクロール12に径方向内側に凸となる凸部12dを設けて、凸部12dの先端部を可動スクロール11に接触させる例について説明したが、これに代えて、次の(12a)(12b)(12c)(12e)のようにしてもよい。
(12a)固定スクロール12に径方向外側に凸となる凸部12dを設けて、凸部12dの先端部を可動スクロール11に接触させる。
(12b)可動スクロール11に径方向外側に凸となる凸部12dを設けて、凸部12dの先端部を固定スクロール12に接触させる。
(12c)可動スクロール11に径方向内側に凸となる凸部12dを設けて、凸部12dの先端部を固定スクロール12に接触させる。
(12d)固定スクロール12に軸線方向一方側に凸となる凸部12dを設けて、凸部12dの先端部を可動スクロール11に接触させる。
(12e)可動スクロール11に軸線方向他方側に凸となる凸部12dを設けて、凸部12dの先端部を固定スクロール12に接触させる。
【0158】
(13)上記第1〜第3実施形態では、電動モータ部20により可動スクロール11を変化させて、中間圧注入孔50b、51bを閉塞した例について説明したが、これに代えて、電動モータ部20以外の電動アクチュエータを採用し、この電動アクチュエータの駆動力によって可動スクロール11を変位させて、中間圧注入孔50b、51bを閉塞してもよい。
【0159】
(14)なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
(まとめ)
上記1〜3実施形態、各変形例、および他の実施形態の一部または全部に記載された第1の観点によれば、固定部材と、固定部材との間に圧縮室を形成する可動部材とを有し、可動部材が固定部材に対して旋回運動することにより、圧縮室を変化させて圧縮室内に低圧流体を吸入して圧縮して高圧流体を吐出する圧縮機構を備え、固定部材および可動部材のうちいずれか一方の部材には、中間圧注入孔が形成されており、圧縮室が低圧流体を高圧流体まで圧縮する圧縮過程の途中で中間圧注入孔から中間圧流体を圧縮室内に注入し、この注入される流体とともに圧縮室内の流体を高圧流体まで圧縮する圧縮機であって、可動部材が停止したときに、固定部材および可動部材のうち一方の部材以外に他方の部材が中間圧注入孔を閉塞する。
【0160】
第2の観点によれば、複数の巻線および永久磁石を有し、複数の巻線および磁石のうち一方が可動部材に支持されて、他方が固定部材に支持されている電動モータ部と、複数の巻線に電流を流して複数の巻線および永久磁石の間に発生される電磁力によって可動部材を旋回運動させる回転制御部と、可動部材が停止したか否かを判定する停止判定部と、可動部材が停止したと停止判定部が判定したときに、複数の巻線のうち予め決められた巻線に電流を流して予め決められた巻線および永久磁石の間に発生される電磁力によって可動部材が旋回運動して予め決められた位置に停止することにより、一方の部材が中間圧注入孔を塞ぐ閉塞制御部と、を備える。
【0161】
これにより、電動モータ部の駆動力を用いて一方の部材を変位させて中間圧注入孔を塞ぐことができる。
【0162】
第3の観点によれば、固定部材および可動部材のうち少なくとも一方には、他方に凸となる形状に形成されている凸部が設けられており、一方の部材により中間圧注入孔を塞いだ状態で、固定部材および可動部材が凸部によって接触する。
【0163】
これにより、固定部材および可動部材の間の摩擦力が発生して、圧縮室内の冷媒圧力により、可動部材が反旋回方向に旋回運動することを抑制することができる。
【0164】
第4の観点によれば、凸部は、固定部材および可動部材のうち少なくとも一方から旋回運動の中心線を中心とする径方向に凸となるように形成されている。
【0165】
第5の観点によれば、可動部材に回転力を出力して可動部材を旋回運動させる回転軸を備え、可動部材は、固定部材に対して回転軸の軸線方向一方側に配置されており、可動部材には、回転軸の軸線方向他方側に凸となるように形成されている凸部としての第1凸部が設けられており、固定部材は、回転軸の軸線方向一方側に凸となるように形成されている凸部としての第2凸部が設けられており、固定部材および可動部材のうちいずれか一方により中間圧注入孔を塞いだ状態で、第1凸部と第2凸部とが接触する。
【0166】
第6の観点によれば、一方の部材により中間圧注入孔を塞いだ状態で、固定部材および可動部材が凸部の先端側によって接触する。
【0167】
第7の観点によれば、圧縮機構が低圧流体を吸入して圧縮する際に可動部材が旋回する方向を旋回方向とし、旋回方向に対する反対方向を反旋回方向とし、第1凸部のうち反対方向には、第1面が設けられ、第2凸部のうち旋回方向には、第2面が設けられ、固定部材および可動部材のうちいずれか一方により中間圧注入孔を塞いだ状態で、第1凸部の第1面と第2凸部の第2面とが接触する。
【0168】
第8の観点によれば、可動部材に回転力を出力して可動部材を旋回運動させる回転軸を備え、可動部材は、固定部材に対して回転軸の軸線方向一方側に配置されている可動基板部と、可動基板部から回転軸の軸線方向他方側に突出して渦巻き状に形成されている可動歯部と、を備え、固定部材は、可動部材に対して回転軸の軸線方向他方側に配置されている固定基板部と、固定基板部から回転軸の軸線方向一方側に突出して渦巻き状に形成されている固定歯部と、を備え、固定部材および可動部材は、固定歯部と可動歯部とが噛み合うように配置されて、固定基板部、可動基板部、固定歯部、および可動歯部によって圧縮室を形成するスクロール型の圧縮機構を構成する。
【0169】
第9の観点によれば、可動部材が停止したときに、可動歯部および固定歯部のうち他方の部材の歯部によって中間圧注入孔を閉塞する。
【0170】
第10の観点によれば、一方の部材には、圧縮室内から高圧流体を外部機器側に吐出する高圧吐出孔が設けられており、圧縮室内から高圧流体が高圧吐出孔を通して外部機器の流体入口側に流れることを許容し、外部機器の流体入口側から高圧流体が高圧吐出孔を通して圧縮室内に流れることを止める逆止弁を備える。
【0171】
ここで、可動部材が停止したときに、外部機器側から流体が高圧吐出孔を介して圧縮室内に逆流すると、可動部材が反旋回方向に回転する恐れがある。
【0172】
これに対して、可動部材が停止したときに、逆止弁によって外部機器側から流体が高圧吐出孔を介して圧縮室内に逆流することを防ぐことができるので、可動部材が反旋回方向に回転することを未然に防ぐことができる。
【0173】
第11の観点によれば、低圧流体、中間圧流体、および高圧流体は、二酸化炭素からなる冷媒である。