【文献】
川口 敬宏、藤本 章宏、内尾 文隆,移動支援事業における知的障がい者のためのはぐれ防止システム,電気学会研究会資料,日本,一般社団法人電気学会,2016年 3月22日,第45頁−第50頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
子供や高齢者等が集団行動する場合、集団からはぐれた者の有無に留意する必要がある。特に、集団を引率する責任者が不在な場合、集団を構成する各自が集団からはぐれないように自ら周囲に気を配る必要がある。それでも、何かに気を取られている間に集団からはぐれてしまうこともある。そこで、集団からはぐれそうになった場合にアラームを発する携帯端末を所持していると安心である。そのような携帯端末システムに関する技術として、所定の無線信号を相互に送受信し、その電波強度に基づいて、所定距離以上離れたらアラームを発する技術がある(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載されている技術は、識別コードを含む無線信号を1台のマスタ子機と、前記マスタ子機と通信する複数の子機から成るシステムであって、アラームを発する一定距離(例えば、10m)は、前記マスタ子機と、各子機の距離に対応している。このため、アラームを発するエリアは、前記マスタ子機を中心とした比較的狭い略同心円(例えば、半径10m)に限定される。
【0004】
このため、例えば、一本道を1列で集団移動する際、各人の間が一定距離以内で集団からはぐれていない状態であっても、最遠の子機とマスタ子機との間が一定距離以上になって、アラームを誤報する可能性がある。また、前記マスタ子機は、集団の引率する者が所持する端末であって、引率者が存在する集団行動を前提にしている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る全体図であって、1は本発明の実施形態に係る携帯端末(以下、本端末と略すこともある)、2は本端末1が備える近距離無線通信機能による近距離通信可能範囲である。
【0011】
本端末1は、例えば、ネットワーク3(携帯電話網や無線LAN)を介して通信する携帯電話端末やスマートホンであって、ネットワーク3を介さずに近傍の他携帯端末とローカル通信する近距離無線通信機能(例えば、Bluetooth(登録商標))も備えている。そして、グループを形成する各携帯端末1−1〜1−Nは、近距離無線通信機能により相互に端末IDを通知し合い、近傍(近距離通信可能範囲2の範囲内)に存在する他携帯端末の在/不在を判定すると共に、受信した端末IDも近距離無線通信機能により近傍に存在する他携帯端末へ転送する。これにより、例えば、
図1の例で、携帯端末1−X以外は、各携帯端末1の端末IDが中継されるので、はぐれ状態にはなっていないことが分かる。これに対して、携帯端末1−Xは、自端末IDを送信しても他端末IDを受信しないので、近距離通信可能範囲2−Xの範囲内にグループを形成する他の携帯端末1が存在しておらず、自携帯端末が所謂はぐれた状態になっていることが分かる。そして、携帯端末1−Xは、自携帯端末がはぐれた状態になっている旨のアラームを表示すると共に、その旨を、ネットワーク3を介して予め設定された通報先(例えば、当該グループの代表者が保持する携帯端末1)へ通報する。なお、近距離通信可能範囲2の定義は、実際に端末IDを送受信できる限界の範囲でもよいし、電波強度が所定値(例えば、正常レベルの1/2のレベル)以上の範囲でもよい。
【0012】
図2は、本端末1の内部ブロック構成図である。本端末1は、端末制御部10,近距離無線通信部11,ネットワーク通信部12,はぐれ判定条件登録部13,自端末ID登録部14,他端末ID登録/記録部15,時計/タイマー16,操作部17,表示部18から構成される。
【0013】
端末制御部10は、本端末1の各部を制御すると共に、自携帯端末がグループの集団からはぐれた状態であるか否かを判定する(詳細は後述する)。
【0014】
近距離無線通信部11は、近傍の他携帯端末とローカルな近距離無線通信を実行する手段であり、所定の通信方式で端末IDや所定の情報を送受信する。この近距離無線通信方式は、Bluetooth(登録商標)等であり、通信可能範囲は数m〜10数mである。
【0015】
ネットワーク通信部12は、携帯電話網や無線LAN等のネットワーク3を介して所定の宛先と無線通信する手段である。
【0016】
はぐれ判定条件登録部13は、本端末1がN人グループの集団からはぐれた状態であるか否かを判定する条件を登録する手段である。はぐれ判定条件登録部13に登録する条件は、例えば、近距離無線通信部11を介して受信した他携帯端末の他端末IDの数をK(1≦K<N)とし、K<Kth(例えば、Kth=N/10)の場合に、自携帯端末がはぐれた可能性があると判定すればよい。また、特定の他端末ID(例えば、代表者が所持する携帯端末の端末ID)を受信していれば、それ以外の端末IDを受信していなくても、本端末1ははぐれた状態ではないと判定するようにしてもよい。
【0017】
自端末ID登録部14は、本端末1を識別する端末IDを登録する手段である。この端末IDは本端末1を識別できる情報であれば何でもよく、例えば、MACアドレス(Media Access Control address)やIPアドレス(Internet Protocol address)でもよい。
【0018】
他端末ID登録/記録部15は、本端末1と同じグループを形成する他携帯端末を識別する他端末IDを予め登録すると共に、受信した端末IDと当該端末IDに係る情報を記録する手段である。他端末IDの登録は、手入力でもよいし、近距離無線通信部11を介して登録してもよい。
【0019】
時計/タイマー16は、日付,時刻情報の提示および所定のタイミングからスタートして経過時間をカウントする手段である。
【0020】
操作部17は本端末1を操作する手段であり、キーボード,タブレット,マウス等の各種操作デバイスが適用可能である。
【0021】
表示部18は、各種の情報を表示する手段であり、LCD(Liquid Crystal Display),EL(Electro Luminescence)等の各種表示デバイスが適用可能である。
【0022】
図3は、
図1に示した携帯端末1−1,携帯端末1−2,携帯端末1−3,携帯端末1−Xの動作シーケンスの例である。
はぐれ確認タイミング(例えば、10分毎)が到来すると(S300)、各携帯端末1は自端末IDを送信しようとするが、
図3の例では、携帯端末1−1が先に、自端末ID(端末ID(1))を近距離無線送信し(S301)、その無線信号を検知している携帯端末1−1以外は近距離無線送信を開始しない。S301で送信された端末ID(1)を受信した、近距離通信可能範囲2−1の範囲内の携帯端末1−2は、受信した端末IDと携帯端末1−2自身の自端末IDを含む端末ID(1,2)を近距離無線送信する(S302)。
【0023】
同様に、S302で送信された端末ID(1,2)を受信した、近距離通信可能範囲2−2の範囲内の携帯端末1−3は、受信した各端末IDと自身の端末IDを含む端末ID(1,2,3)を近距離無線送信する(S303)。
【0024】
そして、S303で送信された端末ID(1,2,3)を受信した、近距離通信可能範囲2−3の範囲内の携帯端末1−2は、受信した端末ID(1,2,3)の内、S302で送信済みの端末ID(1,2)以外の、未送信な端末ID(3)のみを転送する(S304)。
【0025】
以上のような動作を、各通信可能範囲2の範囲内の携帯端末1間で繰り返すことにより、各通信可能範囲2をホッピングして繋がった各携帯端末1(
図1の例では、携帯端末1−X以外)は、携帯端末1−X以外の他端末IDの受信を記録する。なお、S304で、未送信な端末ID(3)のみを転送する理由は、受信した端末IDを無条件に全て転送してしまうとグループ内の無線転送が収束しないためである。また、各携帯端末1が他端末IDを受信した際に、無線信号を受信した旨を示すACK(ACKnowledgement)を送信しないのは、他端末IDを受信する毎にその都度ACKを送信するのは非効率であるためである。本実施例ではACKの代わりに端末IDを送信または転送する。
【0026】
これに対して、携帯端末1−Xは、はぐれ確認タイミングが到来して携帯端末1−X自身の端末ID(X)を送信しても(S305)、近距離通信可能範囲2−Xの範囲内に他の携帯端末1が存在していないので、他端末IDの受信を記録しない。
【0027】
はぐれ確認タイミングの継続時間(例えば、1分)が終了すると(S310)、各携帯端末1は自携帯端末がグループの集団からはぐれたか否かを判定する。携帯端末1−X以外は、携帯端末1−X以外の各端末IDを受信して記録いることから、自携帯端末は非はぐれ状態と判定する(S311,S312,S313)。
【0028】
携帯端末1−Xは、はぐれ確認タイミングの継続時間の間に他携帯端末の端末IDを1つも受信していないことから、自携帯端末がはぐれ状態にあると判定する(S314)。そして、自身がグループの集団からはぐれていると判定した携帯端末1−Xは、ネットワーク3を介して所定の通報先(ここでは、携帯端末1−1)宛てへ、はぐれた旨のヘルプ情報と自端末ID(X)を含むヘルプ(X)を送信する(S320)。なお、このヘルプ(X)の送信は自動的でもよいし、手動で起動してもよい。
【0029】
ヘルプ(X)を受信した携帯端末1−1は、携帯端末1−Xがはぐれた旨の情報を表示すると共に、受信したヘルプ(X)を近距離無線通信で転送する(S321)。そして、ヘルプ(X)を受信した携帯端末1−2も、携帯端末1−Xがはぐれた旨の情報を表示すると共に、受信したヘルプ(X)を近距離無線通信で転送する(S322)。以下、同様にして、非はぐれ状態の各携帯端末1は、上記の携帯端末1−Xがはぐれた旨の情報を表示する。これにより、携帯端末1−Xを所持するはぐれた者を、迅速かつ効率的に捜索できる。
【0030】
図4は、本端末1の動作フローチャートである。以下、
図1,
図2,
図3を併用して、本端末1の動作フローを詳細に説明する。本フローは本端末1の電源が投入された状態からスタートし(S400)、待機状態において、S410,S420,S440,S450の各NOを循環し、各イベントの発生を待つ。
【0031】
S410において、操作部17によりグループを構成する他携帯端末の端末ID(他端末ID)の登録操作または削除操作が為された場合(S410,YES)、端末制御部10は、近距離無線通信部11から自端末ID登録部14に記録されている自端末IDを送信し(S411)、タイマー1(例えば、1分)をスタートした上で(S412)、S413へ進む。
【0032】
S411で、自端末IDを送信するのは、他携帯端末に本端末1を同一グループとして登録または削除させるためであり、同一グループの全携帯端末が近傍(同じ近距離通信可能範囲2の範囲内)に集合してグループ端末を登録または削除する場合に便利である。
【0033】
なお、近距離無線通信部11が情報を送信する際、他携帯端末が送信した無線信号の搬送波(キャリア)の有無を確認し、キャリアを検出していないタイミングで送信を開始する。これは、一般的なLANにおけるCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)と同様の方式であり、無線信号の衝突,干渉を回避するためである。なお、搬送波の存在を確認した場合、そのタイミングでの送信を止め、所定時間後に送信するが、その際、ランダムなタイムウェイトの挿入により、再度の衝突を低減できる。
【0034】
S413において、近傍に存在する他携帯端末から他端末IDを受信した場合、または電話帳(図示せず)等に予め蓄積されている他端末IDのいずれかを指定する操作が為された場合(S413,YES)、端末制御部10は、受信した端末IDまたは指定された他端末IDを他端末ID登録/記録部15に登録し、または他端末ID登録/記録部15から削除し(S414)、S415へ進む。S413でNOの場合、S414をスキップしてS415へ進む。
S415において、他端末IDの登録または削除の終了操作が為された場合、あるいはタイマー1が満了した場合(S415,YES)、S410へ戻る。S415でNOの場合、S413へ戻り、S413以降の処理を繰り返す。
S420において、操作部17よりはぐれ確認操作が為された場合、または時計/タイマー16に予め設定したはぐれ確認タイミングが到来した場合(S420,YES)、自端末IDをキャリア未検出時に近距離無線送信し(S421)、タイマー2(例えば、1分)をスタートした上で(S422)、S423へ進む。
【0035】
S423において、他端末IDを受信した場合(S423,YES)、受信した他端末IDと受信日時を他端末ID登録/記録部15に記録し(S424)、S425へ進む。S423でNOの場合、S424,S425をスキップしてS426へ進む。
【0036】
S425において、端末制御部10は、受信した端末IDの内の未送信な端末ID(他端末ID登録/記録部15を参照)を近距離無線通信部11から送信し、S426へ進む。なお、キャリアを検出していないタイミングで送信を開始することは前述の通りである。
【0037】
S426において、操作部17よりはぐれ確認の終了操作が為された場合、またはタイマー2が満了した場合(S426,YES)、S430へ進む。S426でNOの場合、S423へ戻り、S423以降の処理を繰り返す。
S430において、端末制御部10は、他端末ID登録/記録部15を参照し、受信した他端末IDの数Kを計数し、K=0の場合、近傍に存在する同一グループの他携帯端末が皆無であることから、端末制御部10は、自携帯端末がグループの集団からはぐれた旨を表示部18に表示し、ネットワーク通信部12から予め定められた通報先へヘルプ情報を送信し(S431)、S410へ戻る。
【0038】
S430において、0<K<Kthの場合、近傍に存在する同一グループの他携帯端末の台数がKth台未満であることから、端末制御部10は、自携帯端末がグループの集団からはぐれそうな状態にある旨と、受信した他端末IDに係る情報(例えば、受信した端末IDに対応する個人名)を表示部18に表示し(S432)、S410へ戻る。
【0039】
S430において、K≧Kthの場合、近傍に存在する同一グループの他携帯端末の台数がKth台以上であることから、端末制御部10は、自端末はグループの集団内に居る旨と、受信した他端末IDに係る情報(例えば、近傍に居る個人名の一覧)または受信していない他端末IDに係る情報(例えば、近傍に居ない個人名の一覧)を表示部18に表示し(S433)、S410へ戻る。
ここで、Kthは、はぐれ/非はぐれを判定する任意の閾値であって、全台数N台に対する相対値等を予め設定しておけばよい。例えば、受信した他端末IDの数が全体の1割未満の時にはぐれた可能性を表示するのであれば、Vth=N/10とすればよい。
【0040】
S440において、近距離無線通信により、他端末IDを受信した場合(S440,YES)、端末制御部10は、受信した他端末IDと受信日時の情報を他端末ID登録/記録部15に記録し(S441)、自端末IDが送信済みでなければ(S442,NO)、S421へ進む。自端末IDが送信済みであれば(S442,YES)、S422へ進む。
【0041】
S422以降の処理は先に説明した通りである。これにより、予め設定されたはぐれ確認タイミング以外であっても、本端末1を所持する同一グループの各人は、いつでも操作部17を操作して、はぐれ確認の処理(S421以降の端末IDの送受信,記録,転送,はぐれ状況の表示)を起動できる。
【0042】
S450において、ヘルプ情報を受信した場合(S450,YES)、端末制御部10は、受信したヘルプ情報を表示部18に表示すると共に、受信したヘルプ情報を、近距離無線通信部11を介して近傍に存在する他携帯端末へ転送し(S451)、S410へ戻る。ここで、S450におけるヘルプ情報の受信は、ネットワーク3を介して送信されたヘルプ情報(他携帯端末におけるS431)の受信の場合と、近距離無線送信されたヘルプ情報(他携帯端末におけるS451)の受信の場合の、両方の場合を含む。これにより、グループの集団からはぐれた他携帯端末からのヘルプ情報は、非はぐれ状態の各携帯端末1で確実に共有される。
【0043】
以上、本発明の一実施の形態について説明した。本実施形態によれば、グループを構成する各携帯端末1が、1以上の他携帯端末を介して各端末IDを転送するので(マルチホップ式)、例えば、一本道を縦1列で集団移動するような、N台の携帯端末が一直線に並んだ、先頭と最後尾の携帯端末間がかなり離れた状態での集団行動にも適用できる。また、受信した端末IDの数に基づいて、各携帯端末1が自律的に、はぐれ/非はぐれを判定するので、マスタとなる携帯端末が不要であり、引率者が不在な集団行動に好適である。