(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、第1偏向面と第2偏向面とを備えた光学部材を鉛直軸周りに回転させ、レーザ光を上方向から光学部材に投光し、第1偏向面でレーザ光を水平方向に偏向する。
【0007】
また、特許文献1では、光学部材の回転中心の下方向に受光素子を配置するために、光学部材の側面を円筒状の回転体の天面に固定し、この回転体を中空モータを用いて回転させている。そして、水平方向からの反射光を第2偏向面でその回転中心の下方向に偏向して受光素子で受光している。
【0008】
しかし、中空モータは、円筒部の径方向内側に中空部分が存在するため、中空部分が存在しない通常のモータに比較して、モータが大型化し、かつ、重量が重くなる等の問題がある。そこで、中空モータではないモータを使用して、投光鏡面と受光鏡面とを1つの部材に備えた一体型ミラーを回転させる技術が望まれていた。
【0009】
ただし、一体型ミラーを回転させるために中空ではないモータを用いる場合、一体型ミラーを回転させる回転軸およびモータを、一体型ミラーの受光鏡面側において一体型ミラーの回転中心線上に配置することになる。また、受光器も一体型ミラーの受光鏡面側に配置する。よって、一体型ミラーを回転させる回転軸およびモータに阻害されて、一体型ミラーの受光鏡面により反射された反射光を受光器が受光できない恐れがある。
【0010】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、中空ではないモータを用いて一体型ミラーを回転させることができ、かつ、一体型ミラーを回転させる回転軸およびモータにより阻害されて、反射光が受光器に受光されなくなってしまうことを抑制するレーザレーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は独立請求項に記載の特徴の組み合わせにより達成され、また、下位請求項は、発明の更なる有利な具体例を規定する。特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0012】
上記目的を達成するための請求項1
、4、7に係る発明は、レーザ光を発生させる光源(10)と、
光源が発生させたレーザ光を偏向して投光する投光鏡面(21)と、レーザ光が外部の物体で反射して生じた反射光をレーザ光が投光鏡面に入射する方向とは反対方向に偏向する受光鏡面(22)とを一体成型された部材に備え、1軸周りに回転する一体型ミラー(20)と、
受光鏡面により反射された反射光を受光する受光器(40)と、
一体型ミラーを回転させるモータ(30)とを備えたレーザレーダ装置(1)であって、
モータにより回転させられ、一方の端が、一体型ミラーの回転中心において、受光鏡面により反射された反射光の進行方向側の端面に結合されたミラー回転軸(30a)と、
ミラー回転軸と交差する方向からモータを支持するモータ支持部材(32)とを備え、
モータは、受光鏡面により反射された反射光の焦点よりも受光鏡面側に配置されており、
受光器は、受光鏡面により反射された反射光が集光する位置に配置されている。
【0013】
従来、一体型ミラーを用いるレーザレーダ装置では、受光器の配置空間を確保するために、一体型ミラーの側面を円筒状の回転体により支持し、その円筒状の回転体を中空モータにより回転させる技術しか知られていない。
【0014】
しかし、本発明では、一体型ミラーの回転中心において、受光鏡面により反射された反射光の進行方向側の端面にミラー回転軸を結合しており、このミラー回転軸をモータにより回転させる。ミラー回転軸は、一体型ミラーの回転中心に結合される軸であることから、ミラー回転軸を回転させるモータには、中空ではないモータを用いることができる。
【0015】
ただし、ミラー回転軸とモータとにより一体型ミラーを回転させる場合、受光鏡面により反射された反射光の焦点はミラー回転軸と同一線上に位置する。そのため、反射光を受光する受光器と、ミラー回転軸およびモータとの配置が問題になる。
【0016】
そこで、本発明では、モータを、受光鏡面により反射された反射光の焦点よりも受光鏡面側に配置し、モータ支持部材により、ミラー回転軸と交差する方向からモータを支持する。これにより、受光器を、受光鏡面により反射された反射光が集光する位置に配置することができる。よって、ミラー回転軸およびモータにより阻害されて反射光が受光器に検出されないことを抑制できる。
さらに、請求項1に係る発明では、
一体型ミラーに入射するレーザ光の光軸が一体型ミラーの軸心と一致し、
投光鏡面は一体型ミラーの軸心と交差する位置に形成され、
受光器は一体型ミラーの軸心と交差する位置に配置されている。
【0017】
上記目的を達成するための請求項
9に係る発明は、レーザ光を発生させる光源(10)と、
光源が発生させたレーザ光を偏向して投光する投光鏡面(121)と、レーザ光が外部の物体で反射して生じた反射光をレーザ光が投光鏡面に入射する方向とは反対方向に偏向する受光鏡面(122)とを一体成型された部材に備え、1軸周りに回転する一体型ミラー(120)と、
受光鏡面により反射された反射光を受光する受光器(40)と、
一体型ミラーを回転させるモータ(130)とを備えたレーザレーダ装置(100)であって、
モータにより回転させられ、一方の端が、一体型ミラーの回転中心において、受光鏡面により反射された反射光の進行方向側の端面に結合されたミラー回転軸(150)と、
受光鏡面により反射された反射光の進行方向に配置され、受光鏡面により反射された反射光の進行方向を、ミラー回転軸と交差する方向に偏向する受光偏向ミラー(180)とを備え、
受光器は、受光偏向ミラーにより反射された反射光の進行方向に配置されている。
【0018】
本発明でも、一体型ミラーの回転中心において受光鏡面が反射光を偏向する方向の端面にミラー回転軸を結合しており、このミラー回転軸をモータにより回転させる。よって、モータには、中空ではないモータを用いることができる。
【0019】
さらに、本発明では、受光鏡面により反射された反射光の進行方向に受光偏向ミラーを備え、この受光偏向ミラーにより反射光をミラー回転軸と交差する方向に偏向する。受光偏向ミラーにより偏向された反射光の進行方向には、ミラー回転軸およびモータは存在しないので、受光器を配置することができる。そこで、本発明では、受光器を、受光偏向ミラーにより反射された反射光の進行方向に配置する。これにより、ミラー回転軸およびモータにより阻害されて反射光が受光器に検出されないことを抑制できる。
【0020】
請求項
2または4に係る発明では、受光鏡面は、一体型ミラーの回転中心を通る直径上に、ミラー回転軸が結合される部分よりも外周側を内側端として、この内側端から一体型ミラーの外周方向に延びる中央鏡面部(22a)を備える。
【0021】
中央鏡面部は、一体型ミラーの回転中心を通る直径上に備えられた鏡面部である。本発明では、ミラー回転軸が一体型ミラーの回転中心に結合されていても、一体型ミラーの回転中心を通る直径上に鏡面部があるため、受光器は反射光をより多く受光することができる。
【0022】
請求項
3または7に係る発明では、一体型ミラーのミラー回転軸が結合される側の端面において、ミラー回転軸が結合される部分を含む幅となっており、且つ、一体型ミラーのミラー回転軸が結合される側の端面の一方の端から他方の端まで延びる領域を中央領域としたとき、
受光鏡面は、中央領域を避けた位置に側方鏡面部(22b)を備える。
【0023】
一体型ミラーにミラー回転軸が結合される場合、ミラー回転軸が結合される部分には鏡面は形成できない。しかし、本発明では、側方鏡面部を備えているので、この側方鏡面部により、受光器へ反射光を集光することができる。
【0024】
請求項
8に係る発明では、受光鏡面は、中央領域を挟んで対称な一対の側方鏡面部を備える。
【0025】
本発明のように、一対の側方鏡面部を備えれば、側方鏡面部を1つのみ備える場合よりも、受光器は反射光をより多く受光することができる。
【0026】
請求項6に係る発明では、受光鏡面は、中央鏡面部に加えて、中央鏡面部の両側方に側方鏡面部(22b)を備え、
一体型ミラーは、中央鏡面部と側方鏡面部を連結する連結面(26c)を備えている。
【0027】
本発明では、受光鏡面は、一対の側方鏡面部と中央鏡面部を備えるので、受光器は多くの反射光を受光することができる。
【0028】
請求項7に係る発明では、投光鏡面は、
幅方向の長さが、中央鏡面部の幅方向長さ以下であり、
受光鏡面により偏向された反射光の進行方向側の端が、側方鏡面部の投光鏡面側の端よりも、受光鏡面により偏向された反射光の進行方向側に位置する。
【0029】
本発明のようにすれば、投光鏡面により偏向された反射光の進行方向における一体型ミラーの寸法を短くできる。
【0030】
請求項
9に係る発明では
、受光鏡面は、ミラー回転軸が一体型ミラーに結合されている部分よりも、受光鏡面により反射された反射光の進行方向に延びており、
ミラー回転軸と一体型ミラーとの対向部分に配置され、ミラー回転軸と一体型ミラーとを連結することで、ミラー回転軸とともに一体型ミラーを支持しており、ミラー回転軸の直径よりも厚さが薄いミラー支持板(160)を備える。
【0031】
このミラー支持板を備えることで、ミラー回転軸のみで一体型ミラーを支持するよりもミラー回転軸を細くできる。また、一体型ミラーにおいてミラー支持板が結合されている部分は、仮に鏡面としても、ミラー回転軸に阻害されて受光器に反射光を導くことができない部分である。したがって、ミラー支持板を備えてミラー回転軸を細くすることで、受光器に受光される反射光の受光量が多くなる。
【0032】
請求項
10に係る発明では、モータは、受光鏡面により反射された反射光の進行方向において、受光偏向ミラーよりも受光鏡面から遠い位置に配置されている。これにより、モータは、反射光が受光器に検出されることを阻害しないので、モータの大きさに制限がない。よって、汎用的であり安価なモータを利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態となるレーザレーダ装置1の光学系の部材を示す図である。レーザレーダ装置1は、光源10、回転ミラー20、モータ30、受光器40を備える。これらは、図示しない筐体内に収容されている。筐体には光が通過できる窓が取り付けられている。筐体は、
図1に示す構成を収容でき、かつ、窓が取り付けられていれば、形状はどのような形状でもよいので、図示を省略している。また、窓も種々の周知の形状、材質のものを用いることができるので、図示を省略している。
【0035】
[光学系の部材の説明]
光源10は、パルス状のレーザ光Lを発生させる部分であり、レーザダイオードあるいは発光ダイオードなどの発光素子を備える。発生させるレーザ光Lの波長には特に制限はなく、可視光でもよく、また、赤外光でもよい。また、発光素子に加えて、発光素子が発生したレーザ光の光束の進行方向を調整するコリメートレンズ等のレンズを備えていてもよい。光源10が発生したレーザ光Lは回転ミラー20の方向に向かう。
【0036】
回転ミラー20は、略円柱形の形状であり、軸心20cがレーザ光Lの光軸と一致するように配置されている。なお、軸心20cは、回転ミラー20の中心軸線であり、回転ミラー20の回転中心を通る仮想の直線である。
【0037】
レーザレーダ装置1は、これらレーザ光Lの光軸および回転ミラー20の軸心20cが鉛直方向になるように設置される。
図1に示すY軸方向は鉛直方向を意味する。また、
図1に示すZ軸方向は、レーザレーダ装置1の正面方向を意味する。レーザ光Lは、回転ミラー20により二次元的に走査され、Z軸方向はそのレーザ光Lの走査範囲の水平面内における中心方向でもある。X軸は、Z軸およびY軸に直交する軸である。
【0038】
回転ミラー20の下端面には、モータ30が配置されている。モータ30はモータ軸30aとモータ本体部30bとを備えている。モータ軸30aは回転ミラー20の下端面において軸心20cと一致する位置に結合されている。よって、モータ30は、回転ミラー20を、軸心20cを回転中心線として1軸周りに回転させる。また、回転ミラー20はモータ30により支えられていることになる。なお、本実施形態では、モータ軸30aがミラー回転軸に相当する。
【0039】
モータ本体部30bは、円柱形状であり、一方の端面からモータ軸30aが突き出している。モータ本体部30bは、モータ支持部材32により支持されている。モータ支持部材32は、矩形板状であり、モータ軸30aに交差する方向に延びている。モータ支持部材32の一方の端にモータ本体部30bが固定され、モータ支持部材32の他方の端は、図示しない筐体あるいは筐体に固定された梁等の筐体と一体化した部材に固定されている。
【0040】
受光器40は、回転ミラー20の軸心20c上であって、モータ30よりも回転ミラー20から離れた位置に配置されている。回転ミラー20の軸心20c上における受光器40の位置は、詳しくは、回転ミラー20により集光される反射光Rの焦点が、受光器40に一致する位置である。この反射光Rは、レーザ光Lが外部の物体で反射して生じた光である。
【0041】
筐体内には、これら光学系の部材の他に、光源10の発光制御、モータ30の回転制御、受光器40からの信号を検出して外部の物体を検出する処理を行う回路部も収容されている。
【0042】
[回転ミラー20の構成の詳細説明]
図2は回転ミラー20を斜め上方から見た斜視図であり、
図3は回転ミラー20を側方から見た図であり、
図4は回転ミラー20を斜め下方から見た図である。また、
図5は回転ミラー20を、
図2とは別の斜め上方視点から見た斜視図である。
【0043】
回転ミラー20の材質は、投光鏡面21、受光鏡面22以外は、たとえば光が透過しない樹脂であり、樹脂部分は一体成型される。樹脂に代えて金属を用いることもできる。投光鏡面21、受光鏡面22は、この一体成型された部材に形成されており、回転ミラー20は請求項の一体型ミラーに相当する。
【0044】
前述したように、回転ミラー20は、略円柱形状であり、円柱側面から受光鏡面22が形成されている部分が切り取られた形状となっている側面23を備える。
【0045】
回転ミラー20の上端面24は、その上端面24の外周部分となる円弧部24aと、その円弧部24aの内周に位置する内周部24bとを備えている。円弧部24aは、外周縁が側面23に連結しており、内周縁の直径が内周部24bの直径と等しい。
【0046】
円弧部24aと内周部24bは、同一平面上にはなく、内壁面25により円弧部24aの内周縁と内周部24bの外周縁とが接続されている。内壁面25は円弧部24aおよび内周部24bに対して垂直であり、内周部24bの外周縁から垂直に立ち上がっている。内周部24bから垂直に立ち上がっているため、回転ミラー20の上端側は凹みがある形状となっている。
【0047】
投光鏡面21は、軸心20cが通る位置に配置される。また、光源10が発生させるレーザ光Lの光軸はこの軸心20c上になる。投光鏡面21は平面かつ長方形状であり、一対の短辺の一方が、上端面24の内周部24bに連結している。投光鏡面21は、上端面24の内周部24bに連結している側の端である上端から他方の端である下端に向かうにつれて、下側に傾斜するとともに回転ミラー20の径方向外側に向かう。投光鏡面21の下端は、仕切り部26の上面26aに連結している。
【0048】
仕切り部26は、投光鏡面21と受光鏡面22とを仕切る部分であり、レーザ光Lの一部が窓で反射することで生じた内部反射光が、受光器40に検出されてしまうことを抑制するために、投光鏡面21と受光鏡面22との間を仕切っている。この受光鏡面22は、中央鏡面部22aと、一対の側方鏡面部22bを備える。
【0049】
仕切り部26は、一対の内側面26b、一対の外側面26c、外周端面26d、下端面26eも備える。受光鏡面22の中央鏡面部22aは、仕切り部26の1つの面を構成しており、一対の外側面26c、外周端面26d、下端面26eに連結する。
【0050】
一対の内側面26bは、互いに対向する平面であり、投光鏡面21、回転ミラー20の上端面24、仕切り部26の上面26a、外周端面26dに連結する。
【0051】
一対の外側面26cは、受光鏡面22の中央鏡面部22aと側方鏡面部22bを連結する平面であり、請求項の連結面に相当する。仕切り部26は、側方鏡面部22bに対して回転ミラー20の径方向外側に突き出している。
【0052】
外周端面26dは、側面23に連続する面であり、受光鏡面22の中央鏡面部22a、仕切り部26の上面26a、内側面26b、外側面26cに連結する。
【0053】
下端面26eは、回転ミラー20の下端面の一部であり、本体下端面27と同一平面上にある。本体下端面27は側面23と一対の側方鏡面部22bに連結する面である。下端面26eは、回転ミラー20の下端面の回転中心を含んでいる。したがって、モータ軸30aは、この下端面26eに結合される。
【0054】
モータ軸30aは、仕切り部26の下端面26eに結合されていることから、下端面26eの幅はモータ軸30aの径よりも長い。つまり、下端面26eはモータ軸30aが結合される部分を含む幅となっている。
【0055】
なお、下端面26eの幅方向は、回転ミラー20の下端面の中心から受光鏡面22の中央鏡面部22aに向かう方向に対して直交する方向であり、下端面26eにおいて幅を規定する一対の辺は平行である。
【0056】
中央鏡面部22aは、仕切り部26の下端面26eの外側端に連結されている。中央鏡面部22aはこの部分を内側端とし、外周端面26dに連結されている部分を外側端としている。前述のように、下端面26eは回転ミラー20の下端面の回転中心を含んでいる。よって、下端面26eの外側端に連結されているこの中央鏡面部22aは、回転ミラー20の下端面の回転中心を通る直径上において、モータ軸30aが結合される部分よりも外周側を内側端として、回転ミラー20の外周方向に延びていることになる。
【0057】
中央鏡面部22aは放物面形状であり、内側端から外側端に向かうに従い上下方向の位置が上方になる傾斜を有する。この傾斜および曲面形状は、中央鏡面部22aにより偏向された反射光Rが受光器40に集光されるように調整されている。
【0058】
側方鏡面部22bは、下端が本体下端面27に連結しており、上端へ向かうほど狭幅となる形状である。側方鏡面部22bの下端は、曲線形状であり、本体下端面27から仕切り部26が突き出している点を一方の端とする。
【0059】
本体下端面27において、仕切り部26の下端面26eを延長した部分を、本体中央領域27aとする。この本体中央領域27aと仕切り部26の下端面26eとを合わせた領域が、回転ミラー20の下端面の中央領域である。側方鏡面部22bは、この中央領域を避けた位置に形成されていることになる。
【0060】
側方鏡面部22bの下端は、回転ミラー20の下端において軸心20cを通り中央領域と直交する線、すなわち、回転ミラー20の下端面をレーザ光Lの投光方向の前側と投光方向の後側に区分する区分線27bよりも、レーザ光Lの投光方向後側に位置する。したがって、側方鏡面部22bは、下端が回転ミラー20の下端面において区分線27bよりも投光方向前側に位置する場合よりも、下端から上端までの長さが長くなり、その結果、側方鏡面部22bの面積が大きくなる。側方鏡面部22bの面形状も、中央鏡面部22aにより偏向された反射光Rが受光器40に集光されるように調整されている。
【0061】
中央鏡面部22aおよび側方鏡面部22bにより反射された反射光Rは、
図1に示すように、受光器40が配置されている位置に集光する。つまり、中央鏡面部22aおよび側方鏡面部22bは、反射光Rを受光器40へ集光する曲面となっており、受光器40は中央鏡面部22aおよび側方鏡面部22bにより反射された反射光Rの焦点に配置されている。また、モータ30は受光器40よりも回転ミラー20に近い位置にあるので、モータ30は、受光鏡面22により反射された反射光Rの焦点よりも受光鏡面22側に配置されていることになる。
【0062】
これら中央鏡面部22a、側方鏡面部22bと投光鏡面21との位置および大きさの関係を説明する。
図3から分かるように、
図3において左右方向である投光鏡面21の幅方向長さ、すなわち、投光鏡面21の短辺の長さは、中央鏡面部22aの幅方向長さよりも短い。
【0063】
また、投光鏡面21は、上端面24の内周部24bよりも下側に位置しており、仕切り部26が備える凹みに形成されている。ここで、仕切り部26は、中央鏡面部22aを形成するための部材でもある。また、回転ミラー20の下端面において軸心20cが通る部分にはモータ軸30aを結合するスペースを確保する必要がある。仕切り部26の下端面26eの一部がこのスペースになっている。
【0064】
中央鏡面部22aは、この下端面26eに下端が連結する。つまり、中央鏡面部22aは回転ミラー20の下端面の回転中心よりも径方向外側に下端がある。また、中央鏡面部22aは、受光器40に反射光Rを集光する必要性から傾斜が定まる。そのため、中央鏡面部22aの上端の上下方向位置は、側方鏡面部22bとは異なり、回転ミラー20の上端付近とはならず、回転ミラー20の上下方向において中央よりもやや下側となる。
【0065】
つまり、回転ミラー20において、中央鏡面部22aが形成されている部分は、その上側に中央鏡面部22aが形成されていない部分が存在する。そこで、投光鏡面21は、その上側部分が活用されて、回転ミラー20の上端面24よりも下側に形成されている。一方、側方鏡面部22bの下端は区分線27bよりもレーザ光Lの投光方向後側に位置しており、この側方鏡面部22bも、反射光Rを受光器40に集光するものであるので、側方鏡面部22bの傾斜は、中央鏡面部22aの傾斜に類似する。その結果、投光鏡面21の下端および上端は、側方鏡面部22bの上端よりも下側に位置する。
【0066】
[第1実施形態のまとめ]
この第1実施形態では、回転ミラー20の下端面の回転中心に、モータ30のモータ軸30aを結合しており、このモータ30により回転ミラー20を回転させる。モータ軸30aを備えているモータ30は中空モータではない。つまり、本実施形態では、中空ではないモータ30を用いて回転ミラー20を回転させている。
【0067】
また、本実施形態では、モータ30を、受光鏡面22により反射された反射光Rの焦点よりも受光鏡面22側に配置し、モータ支持部材32により、モータ軸30aと交差する方向からモータ30を支持する。これにより、受光器40を、受光鏡面22により反射された反射光Rが集光する位置に配置することができる。よって、モータ軸30aおよびモータ本体部30bにより阻害されて反射光Rが受光器40に検出されないことを抑制できる。
【0068】
また、本実施形態の受光鏡面22は中央鏡面部22aを備えるとともに、中央鏡面部22aの両側方に、一対の側方鏡面部22bを備える。よって、中央鏡面部22aのみ、あるいは、側方鏡面部22bのみを備える場合よりも、多くの反射光Rを受光器40に集光することができる。
【0069】
また、中央鏡面部22aは、仕切り部26の下端面26eの外端から回転ミラー20の外周側に向かって形成されており、この中央鏡面部22aを備える仕切り部26には、中央鏡面部22aの上側に中央鏡面部22aが形成されていない部分が存在する。投光鏡面21は、その上側部分が活用されて、回転ミラー20の上端面24よりも下側に形成されている。これにより、回転ミラー20の上下方向の寸法が短くなる。
【0070】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態を説明する。この第2実施形態以下の説明において、それまでに使用した符号と同一番号の符号を有する要素は、特に言及する場合を除き、それ以前の実施形態における同一符号の要素と同一である。また、構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分については先に説明した実施形態を適用できる。
【0071】
図6、
図7、
図8は第2実施形態となるレーザレーダ装置100の光学系の部材を示す図である。
図6はレーザレーダ装置100を斜め上から見た図であり、
図7はレーザレーダ装置100を側方から見た図であり、
図8はレーザレーダ装置100を
図6とは別の斜め上方視点から見た斜視図である。なお、
図7、
図8では光源10は省略している。
【0072】
第2実施形態のレーザレーダ装置100は、第1実施形態と同じ光源10と受光器40を備える。ただし受光器40の配置は第1実施形態と異なる。また、レーザレーダ装置100は、第1実施形態とは異なる回転ミラー120、モータ130を備える。さらに、レーザレーダ装置100は、ミラー回転軸150、ミラー支持板160、支持台170、折り返しミラー180、回路部190を備える。
【0073】
回転ミラー120の概略形状は、円柱の上端面に凹みが形成され、下端面が傾斜している形状である。以下、回転ミラー120の構成を詳細に説明する。回転ミラー120は、軸心120cがレーザ光Lの光軸と一致するように配置されている。レーザレーダ装置100は、レーザ光Lの光軸および回転ミラー120の軸心120cが鉛直方向になるように設置される。
【0074】
回転ミラー120には、投光鏡面121、受光鏡面122が形成されており、回転ミラー120の材質は、投光鏡面121、受光鏡面122以外は、たとえば光が透過しない樹脂であり、樹脂部分は一体成型される。なお、樹脂に代えて金属を用いることもできる。投光鏡面121、受光鏡面122は、この一体成型された部材に形成されており、回転ミラー120は請求項の一体型ミラーに相当する。
【0075】
回転ミラー120の側面123は、円柱側面から受光鏡面122が形成されている部分が切り取られた形状である。上端面124は円形から矩形が切り取られた形状である。切り取られた部分に投光鏡面121と仕切り部126が形成される。
【0076】
投光鏡面121は、軸心120cが通る位置に配置される。また、光源10が発生させるレーザ光Lの光軸はこの軸心120c上になる。投光鏡面121は平面かつ長方形状であり、一対の短辺の一方が、上端面124に連結している。投光鏡面121は、上端面124に連結している側の端から他方の端に向かうにつれて下側に傾斜している。そして、投光鏡面121の下端は、仕切り部126の下壁部126aに連結している。
【0077】
仕切り部126は、投光鏡面121と受光鏡面122とを仕切る部分である。なお、受光鏡面122は、一対の側方鏡面部122bを備える。
【0078】
仕切り部126は、下壁部126aの他に一対の側壁部126bを備える。下壁部126aは、上端面124に平行、かつ、投光鏡面121で偏向されたレーザ光Lの光軸にも平行になっている。光源10から投光鏡面121に向かうレーザ光Lの光軸が鉛直方向になるようにレーザレーダ装置100が配置された状態では、下壁部126aは水平になる。
【0079】
側壁部126bは、光源10から投光鏡面121に向かうレーザ光Lの光軸と、投光鏡面121で偏向されたレーザ光Lの光軸とを含む平面に平行に、側方鏡面部122bから突き出している。側壁部126bの端面は下壁部126aの端面と一致する。
【0080】
一対の側壁部126bの互いに対向する内側面は、回転ミラー120の中心方向に延びており、回転ミラー120の中心側の端において、投光鏡面121の傾斜している辺に連結している。
【0081】
ミラー回転軸150は、一方の端が回転ミラー120の下端面において軸心120cが通る部分に結合されている。ミラー回転軸150の他方の端は、モータ軸130aと一体回転する。なお、モータ軸130aが延伸されてミラー回転軸150として用いられてもよい。
【0082】
ミラー支持板160は、2つの直線状の辺と1つの曲線状の辺とにより囲まれた形状の平板状部材である。1つの直線状の辺はミラー回転軸150に結合されており、他の1つの直線上の辺がミラー回転軸150に直交する。曲線状の辺は回転ミラー120の側方鏡面部122bが形成されている面に結合している。ミラー支持板160が結合していることにより、受光鏡面122は2つの側方鏡面部122bに分けられている。これら2つの側方鏡面部122bは、ミラー支持板160を対称の軸として線対称な図形であり、ともに、受光器40が配置されている位置を焦点とするために、放物面形状となっている。側方鏡面部122bの下端は、ミラー回転軸150が回転ミラー120に結合されている部分よりも下方に位置しており、上端は、回転ミラー120の上端面124付近に位置する。
【0083】
ミラー支持板160とミラー回転軸150とにより回転ミラー120は支持されており、ミラー回転軸150がモータ130により回転させられると、回転ミラー120も回転する。
【0084】
ミラー支持板160によって回転ミラー120が支持されているので、ミラー回転軸150は、ミラー回転軸150のみにより回転ミラー120を支持する場合よりも細くすることができる。支持台170は、ミラー回転軸150を回転可能に支持している。
【0085】
モータ130は、支持台170の下側に配置されている。すなわち、モータ130は、支持台170から見て回転ミラー120とは反対側に配置されている。本実施形態のモータ130も、中空モータではなくモータ軸130aを備えている。
【0086】
折り返しミラー180は、円板の一部が切り取られた平板形状であり、回転ミラー120側の面が鏡面になっている。折り返しミラー180において切り取られた部分は、折り返しミラー180をミラー回転軸150に嵌め入れるための形状であり、その部分は、円板の外周端から円板の中心を含む長さであり、幅がミラー回転軸150の直径とほぼ等しい。
【0087】
この折り返しミラー180は、ミラー回転軸150に対して傾斜する角度で支持台170に対して固定されている。固定方法は特に限定はない。たとえば、鏡面とは反対側の面である裏面を支持する支持部材が支持台170などから突き出しており、その支持部材に折り返しミラー180の裏面を突き当てた状態で折り返しミラー180を固定すればよい。ミラー回転軸150は支持台170に対して相対回転可能であるので、ミラー回転軸150は、支持台170に固定されている折り返しミラー180に対しても相対回転する。
【0088】
折り返しミラー180は、受光鏡面122により反射された反射光Rの進行方向に配置されていることになり、受光鏡面122により反射された反射光Rの進行方向を、ミラー回転軸150と交差する方向に偏向する。この折り返しミラー180は請求項の受光偏向ミラーに相当する。
【0089】
第2実施形態において、受光器40は、折り返しミラー180により反射された反射光Rの進行方向において、その反射光Rの焦点に配置されている。よって、受光器40により反射光Rを受光することができる。
【0090】
回路部190は、光源10の発光制御、モータ130の回転制御、受光器40からの信号を検出して外部の物体を検出する処理を行う部分である。
【0091】
[第2実施形態のまとめ]
第2実施形態でも、回転ミラー120において受光鏡面122が反射光Rを偏向する方向の端面の回転中心、すなわち回転ミラー120の下端面の回転中心にミラー回転軸150を結合しており、このミラー回転軸150をモータ130により回転させる。よって、モータ130には、中空ではないモータを用いることができる。
【0092】
さらに、本実施形態では、受光鏡面122により反射された反射光Rの進行方向に折り返しミラー180を備え、この折り返しミラー180により反射光Rをミラー回転軸150と交差する方向に偏向する。折り返しミラー180により偏向された反射光Rの進行方向にはミラー回転軸150およびモータ130は存在しないので、受光器40を配置することができる。そこで、本実施形態では、受光器40を、折り返しミラー180により反射された反射光Rの進行方向に配置する。これにより、ミラー回転軸150およびモータ130により阻害されて反射光Rが受光器40に検出されないことを抑制できる。
【0093】
また、本実施形態では、モータ130を反射光Rの経路外に配置できる。よって、受光鏡面122により偏向された反射光Rがモータ130により阻害されて受光器40に検出されることがない。ミラー回転軸150は、反射光Rが受光器40に検出されることを阻害してしまうが、ミラー回転軸150の直径は、このミラー回転軸150をモータ軸とするモータよりも小さくなる。よって、モータにより反射光Rが受光器40に検出されることが阻害されなくなることで、受光器40に受光される反射光Rの受光量が多くなる。
【0094】
さらに、モータ130は、反射光Rが受光器40に検出されることを阻害しないので、モータ130の大きさに制限がない。よって、汎用的であり安価なモータを利用することができる。
【0095】
また、本実施形態では、ミラー回転軸150に加えて、回転ミラー120を支持するミラー支持板160を備えているので、ミラー回転軸150のみで回転ミラー120を回転させつつ支持する場合に比較してミラー回転軸150を細くできる。また、回転ミラー120においてミラー支持板160が結合している部分は、鏡面としていても、ミラー回転軸150に阻害されて受光器40に反射光Rを導くことができない部分である。したがって、ミラー支持板160を備えてミラー回転軸150を細くすることでも、受光器40に受光される反射光Rの受光量が多くなる。
【0096】
また、折り返しミラー180に、ミラー回転軸150に嵌め入れるために切り取られた部分を設けている。よって、支持台170にミラー回転軸150を取り付けた後で折り返しミラー180をミラー回転軸150に嵌め入れることができるので、組付け性が向上する。
【0097】
加えて、折り返しミラー180において切り取られた部分は、鏡面であったとしても、その部分で反射した反射光Rはミラー回転軸150により阻害されて受光器40に受光されない。この部分を切り取られた形状としているので、折り返しミラー180において切り取られた部分があることにより受光器40に受光される反射光Rの受光量が減少することも抑制されている。
【0098】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の変形例も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【0099】
<変形例1>
第1実施形態の回転ミラー20のように、軸心20cが通る部分が回転ミラー20の最も下側の端面である構成においても、第2実施形態のように、折り返しミラー180を設けて、反射光Rの進行方向を軸心20cと交差する方向に偏向し、折り返しミラー180により偏向された反射光Rの進行方向に受光器40を配置してもよい。
【0100】
<変形例2>
第2実施形態のように折り返しミラー180を備える構成において、第1実施形態の回転ミラー20およびモータ30を用い、モータ支持部材32によりモータ軸30aと交差する方向からモータ30を支持してもよい。
【0101】
<変形例3>
第1実施形態における受光鏡面22は放物面形状であったが、この受光鏡面22を平面とし、受光鏡面22と受光器40との間に放物面ミラーやレンズを配置して、受光鏡面22で反射した反射光Rを集光するようにしてもよい。
【0102】
<変形例4>
第2実施形態における受光鏡面122も平面とすることができる。この場合、折り返しミラー180を放物面形状としたり、あるいは、受光鏡面122と受光器40との間に放物面ミラーやレンズを配置して、受光鏡面122で反射した反射光Rを集光すればよい。